説明

一般化等価換算厚・等価弾性係数を用いた多層地盤上のパイルドラフト基礎の沈下・応力解析法

【課題】従来使用されてきている数値解析法は、パイルドラフト基礎地盤の各層ごとの剛性の影響を沈下・応力計算に組み込める閉じた形(closed form)の解析的表示を与えるものでなく、また定量的に精度の高い数値解析法とはなっていないのが現状である。
【解決手段】パイルドラフト基礎地盤の沈下・応力に関する算定法として、等価弾性解析法を新たに提案する。この解法では、まずパイルとラフトと原地盤から構成されるパイルドラフト基礎地盤に関して、等価弾性係数法を用いて、等価な複合地盤としてモデル化する。次に、等価換算厚法を用いて、複合地盤を等価多層地盤としてモデル化している。結果として、基礎設計に適用できうる簡便な閉じた形(closed form)の解が提示された。そして、パイルドラフト補強地盤と無補強地盤における構造特性の違いが、多層地盤の即時沈下及び圧密沈下の力学特性に及ぼす影響を明らかにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パイルドラフト基礎を有する多層地盤の沈下解析及び応力解析を行い、パイルドラフト基礎地盤における即時沈下、鉛直応力及び圧密沈下を算定する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パイルドラフト基礎は直接基礎と杭基礎の中間的基礎として位置付けられ、最近経済的に有利な基礎として注目を集めている。しかしながら、パイルドラフト基礎は構造的に複雑であり、そのような基礎を解析するために用いられる数値計算もまた複雑な手順を有しており、これまで提案されてきた解析法は比較的多くはない。まずRandolphとWroth(非特許文献1)は鉛直載荷を受ける杭について、杭の軸部(shaft)と底部(base)のそれぞれが負担する荷重の計算式を求め、杭の沈下解析法を提案した。Poulos(非特許文献2) は不均質地盤について単杭の解析法を示した。鉛直荷重を受ける杭群について、Chow(非特許文献3)は、Mindlin解を用いた混合法(hybrid method)を改良した解析法を提案した。HainとLee(非特許文献4)は杭と地盤の相互作用を表現するために、ラフトと杭(パイル)についてそれぞれ薄板有限要素法と境界要素法を用い、相互作用係数を考慮した解析法を示した。Randolph(非特許文献5,6)はパイルドラフト基礎の剛性とラフトとパイルの荷重分配を表す簡易式を提案した。Clancy とRandolph(非特許文献7,8)は有限要素法と弾性連続体法の混合法(hybrid method)によって、パイルドラフト基礎を解析した。Poulos(非特許文献9)はラフトについては差分法(finite difference method)を用い、パイルは境界要素法(boundary element method)を適用し、パイルとラフトの相互作用に関する解析法を提案した。TaとSmall(非特許文献10,11)及びSmall とZhang(非特許文献12)は多層地盤(layered soils)に関して、有限層(finite layer)と有限要素(finite element)を用いたパイルドラフト基礎の解析法を示した。Poulos et al. (非特許文献13) はパイルドラフト基礎の解析手法について、様々な比較を行った。Shen et al.(非特許文献14-16)は、ラフトの曲げ解析を考慮したパイルドラフト基礎の変分法による解析法を提案した。次に、ラフトの曲げ剛性を考慮する場合の内、剛性基礎における多層地盤の即時沈下量に関しては、近似的にラフトの曲げ剛性を考慮しない場合の解、即ち撓み性基礎における多層地盤の即時沈下量にπ/4の係数をかけることによって剛性基礎の即時沈下量とする近似手法が適用されている(非特許文献1, 43)。
【0003】
一方、日本においては、例えば建築基礎構造設計指針(非特許文献17)等において、パイルドラフト基礎の設計法はパイルドラフト基礎地盤に関する構造の複雑性のため確立されていないのが現状である。
【0004】
ラフトの曲げ剛性を考慮しない場合、即ち撓み性基礎における多層地盤の即時沈下量に関して、2層あるいは3層地盤の解析解がある(非特許文献18-35)。植下(非特許文献26~28)は多層弾性体に関する厳密解を求めることによって、Odemark(非特許文献29)の 近似法による変位解及びSteinbrenner(非特許文献30, 31) の近似式についてそれぞれの精度を明らかにした。遠藤(非特許文献32)は、二層地盤におけるBarber(非特許文献33) の方法を用いて等値弾性率を提案し、多層地盤に適用した。 また、Odemark(非特許文献29)、 上田ら(非特許文献34)、及びNascimento(非特許文献35)による近似計算法が提案されているが、問題点として繰り返し計算を行うため解が閉じた形(closed form)になっていないこと、及び応力計算には適用できないことが挙げられる。一方、建築基礎構造設計指針における即時沈下式(非特許文献17)が従来採用されているが、この即時沈下式は、多層地盤の境界条件を満足せず、厳密解を適切に表せないことが明らかになった(非特許文献36-40)。多層地盤の即時沈下量に関して、申請者(非特許文献36-40) は地盤の各層ごとの剛性の影響を適切に沈下量計算に組み込めるように、等価換算厚を二層地盤に適用したBarber(非特許文献33) の方法を多層地盤に一般化し、即時沈下量に関する近似計算式を提案した。最近、姫野(非特許文献41)、松井(非特許文献42)は多層地盤における弾性解析プログラムを開発し、既往の提示された即時沈下の厳密解に非常に近く、極めて精度の高い数値結果を示した。しかし、この解析方法は、基礎形状が円形のみに限定され、長方形の場合には適用できず、また、パイルとラフトと原地盤から構成され、水平方向に弾性係数が変化するようなパイルドラフト基礎地盤には使用できない。
【0005】
パイルドラフト基礎地盤に関する実験結果について報告例は比較的少ないが、細径鋼管に関して実験結果と解析結果が、西尾他(非特許文献44-47)によって報告された。
【0006】
基礎設計に関しては、簡便な閉じた形(closed form)の解が必要となるので、以前提案した二種類の解析方法(非特許文献36-40)、即ち、等価弾性係数法と等価換算厚法を併用したハイブリッド法である等価弾性解析法をパイルドラフト基礎地盤に対して新たに提案する。この解法では、まず、原地盤上にあるラフトと基礎根入れ深さに対応する層に関して、等価換算厚法による応力分散幅と等価弾性係数法を用いて、等価な複合地盤としてモデル化し、複合地盤と原地盤を多層地盤としてモデル化する。次にパイルに関しては、多層地盤に接する部分を要素分割し、パイルの長さ、ラフトとパイルの荷重分担比、および地盤とラフトとパイルの剛性の違いが、多層地盤の即時沈下及び荷重分担に関する力学特性に及ぼす影響を検討する。また、パイルドラフト基礎地盤の実験結果と比較し、提案された等価弾性解析法の有用性を明らかにする。
【0007】
粘性土に関しては、過圧密、正規圧密、圧密未了として分類される地盤の圧密状態を考慮した圧密降伏応力の推定法(非特許文献48)が提案され、その各式を用いた圧密沈下量の算定法(非特許文献49)が提示されている。圧密沈下量の計算においては、まず載荷重による地盤内の鉛直応力を正確に算定することが必要である。指針式による計算法(非特許文献17)では、地盤を等方等質弾性体としてモデル化しており、この場合の鉛直応力を採用し、圧密沈下式に代入することになるが、指針式による計算法では多層地盤の鉛直応力分布に関する厳密解を適切に表現できないことが分かった(非特許文献36-40)。
【0008】
一方、多層地盤を多層弾性体としてモデル化する場合は等方異質弾性体として仮定することが多く、層数が2〜3の多層弾性体においては鉛直応力の厳密解(非特許文献50-65)が提示されている。地盤が二層以上から構成される場合、境界条件を満足させるためには解析が非常に繁雑となるが、最近開発された姫野(非特許文献41)及び松井(非特許文献42)による多層地盤における弾性解析プログラムは、既往の提示された鉛直応力の厳密解に極めて近い、高精度の数値結果を与えている。しかし、この解析方法は、先に述べたように、基礎形状が円形のみに限定され、水平方向に弾性係数が変化するようなパイルドラフト基礎地盤には使用できない。さらに、基礎設計においては、簡便な閉じた形(closed form)の解が要望される。そこで、等価換算厚を直接用いた解法(非特許文献36-40) 並びに等価換算厚による応力分散幅を用いた解法(非特許文献36-40)を、それぞれパイルドラフト基礎地盤の鉛直応力解析に適用し、その有用性を検討する。
【非特許文献1】M.F. Randolph and C.P. Wroth, 'Analysis of deformation of vertically loaded piles', J.Geo. Engng Div., ASCE, 104(GT12), 1465-1488(1978).
【非特許文献2】H.G. Poulos, 'Settlement of single piles in nonhomogeneous soil', J.Geo. Engng Div., ASCE, 105(GT5), 627-641(1979).
【非特許文献3】Y.K. Chow, 'Analysis of vertically loaded pile groups', Int. J. Numer. Anal. Methods Geomech., 10(1), 59-72 (1986).
【非特許文献4】S.J. Hain and I.K. Lee, 'The analysis of flexible raft-pile systems', Geotechnique, 28(1), 65-83(1978).
【非特許文献5】M.F. Randolph, 'Design of piled raft foundations', Proc. of Int. Symp. On Recent developments in Laboratory and Field Tests and Analysis of Geotechinical Problems, Bangkok, 525-537(1983).
【非特許文献6】M.F. Randolph, 'Design methods for pile groups and piled rafts', Proc. 13h Int. Conf. on Soil Mech. and Found. Eng. New Delhi, 61-82(1994).
【非特許文献7】P. Clancy and M.F. Randolph, ' An approximate analysis procedure for piled raft foundations', Int. J. Numer. Anal. Methods Geomech., 17, 849-869 (1993).
【非特許文献8】P. Clancy and M.F. Randolph, 'Simple design tools for piled raft foundations', Geotechnique, 46(2), 313-328 (1996).
【非特許文献9】H.G. Poulos, 'An approximate numerical analysis of pile-raft interaction', Int. J. Numer. Anal. Methods Geomech., 18, 73-92 (1994).
【非特許文献10】L.D. Ta and J.C. Small, 'Analysis of piled raft systems in layered soils', Int. J. Numer. Anal. Methods Geomech., 20, 57-72 (1996).
【非特許文献11】L.D. Ta and J.C. Small, 'Analysis and performance of piled raft foundations on layered soils-case studies', Soils and Foundations, 38, No.4, 145-150(1998).
【非特許文献12】J.C. Small and H.H. Zhang, 'Behavior of piled raft foundations under lateral and vertical loading', Int. J. Geomech., 2(1), 29-45(2002).
【非特許文献13】H.G.Poulos, J.C.Small, L.D.Ta, J.Sinha and L.Chen, 'Comparison of some methods for analysis of piled rafts', Proc. 14th Int. Conf. on Soil Mech. and Found. Eng. Hamburg, 2, 1119-1124(1997).
【非特許文献14】W.Y. Shen, Y.K. Chow, and K.Y. Yong, 'Variational solution for vertically loaded pile groups in an elastic half-space', Geotechnique, 49(2), 199-213(1999).
【非特許文献15】W.Y. Shen, Y.K. Chow, and K.Y. Yong, 'A variational approach for the analysis of rectangular rafts on an elastic half-space', Soils and Foundations, 39, No.6, 25-32(1999).
【非特許文献16】W.Y. Shen, Y.K. Chow, and K.Y. Yong, 'A variational approach for the analysis of pile group-pile cap interaction', Geotechnique, 50(4), 349-357(2000).
【非特許文献17】日本建築学会:建築基礎構造設計指針(第2版), 339-348(2001).
【非特許文献18】Burmister, D.M.:The Theory of Stresses and Displacements in Layered Systems and Applications to the Design of Airport Runways, Proc. HRB, Vol.23, pp.126~148, 1943.
【非特許文献19】Burmister, D.M.: The General Theory of Stresses and Displacements in Layered Systems, J. Appl. Physics, Vol.16, No.2,3,5, 1945.
【非特許文献20】Burmister, D.M.: Evaluation of Pavement Systems of the WASHO Road Test by Layered System Methods, Highway Res. Board Bulletin 177, pp.26~54, 1958.
【非特許文献21】Fox, L.:Computation of Traffic Stresses in a Simple Road Structure, Proc. 2nd Int. Conf. on Soil Mechanics and Foundation Engineering, Vol.2, pp.236~246, 1948.
【非特許文献22】Schiffman, R.L.:The Numerical Solution for Stresses and Displacements in a Three-layer Soil System, Proc. 4th Int. Conf. Soil Mech. and Found. Eng., Vol.2, pp.169~173, 1957.
【非特許文献23】Kirk, J.M.:Beregning af Nedsyningen i lagdelte Systemer, Dansk Vejtidsskrift,Vol.38, No.12, pp.294~296, 1961.
【非特許文献24】Acum, W.E.A. and Fox, L.:Computation of Load Stresses in a Three Layer Elastic System, Geotechnique, Vol.2, 1951.
【非特許文献25】Jones, A.:Tables of Stresses in Three-Layer Elastic Systems, Highway Res. Board Bulletin 342, pp.176~214, 1962.
【非特許文献26】植下協・G. G. マイヤホフ:岩盤上土層表面における弾性変位について, 土木学会論文集, No.143, pp.9~15, 1967.
【非特許文献27】植下協・G. G. マイヤホフ:多層地盤における弾性変位について, 土木学会論文集, No.144, pp.20~26, 1967.
【非特許文献28】Ueshita, K. and Meyerhof, G. G.:Deflection of Multilayer Soil Systems, Journal of the Soil Mechanics and Foundations Division, ASCE, Vol.93, No.SM5, pp.257~282, 1967.
【非特許文献29】Odemark, N.:Investigations as to the Elastic Properties of Soils and Design of Pavements according to the Theory of Elasticity, Statens Vaginstitut, Meddelande, No.77, Stockholm,1949.
【非特許文献30】Steinbrenner, W.:Tafeln zur Setzungsberechnung, Die Stra゜e, Vol.1, 1934.
【非特許文献31】Steinbrenner, W.:Bodenmechanik und neizeitlicher Stra゜enbau, Symposium by 24 authors, Volk und Reich Verlag, Berlin, 1936.
【非特許文献32】遠藤 靖:アスファルト舗装の計算[2]、道路建設、7月号, pp.24~31, 1962.
【非特許文献33】Palmer, L. A. and Barber, E. S. :Soil Displacement under a Circular Loaded Area, Proc. Highway Res. Board, Vol.20, pp.279~286,1940.
【非特許文献34】上田嘉男・西中村和利・増井隆:撓み性舗装に対する層構造の考え方、第7回日本道路会議論文集, pp.432~435, 1963.
【非特許文献35】Nascimento, U., Seguro, J.M., da Costa, E., and Pinela, S.: A Method of Designing Pavements for Road and Airports, Proc. 5th Int.Conf. on Soil Mech. and Found. Eng., Vol. 2, pp.283~288, 1961.
【非特許文献36】平井弘義・亀井健史:多層地盤の許容応力度と沈下量の算定法に関する一提案, 第47回地盤工学シンポジウム, 平成14年度論文集, 地盤工学会, pp.61~68, 2002.
【非特許文献37】平井弘義・亀井健史:改良地盤の許容応力度と沈下量の算定法, 第48回地盤工学シンポジウム, 平成15年度論文集, 地盤工学会, pp.37~44, 2003.
【非特許文献38】平井弘義:改訂版「建築物のための改良地盤の設計及び品質管理指針」ッセメント系固化材を用いた深層・浅層混合処理工法ッにおける算定式の妥当性について、建築技術、No. 651, pp.168~170, 2004年4月.
【非特許文献39】平井弘義・亀井健史:多層地盤の沈下・応力・許容応力度に関する算定法, 日本建築学会構造系論文集, 第573号, pp.81~88, 2003年11月.
【非特許文献40】平井弘義・亀井健史:等価換算厚理論による多層地盤の沈下・応力・破壊・許容応力度に関する算定法, 日本建築学会構造系論文集, 第581号, pp.79~86, 2004年7月.
【非特許文献41】姫野賢治:多層弾性解析プログラム, Elastic Layer System Analysis, 1998.
【非特許文献42】松井邦人・Maina, J.W.: 多層弾性解析プログラム, General Analysis of Multi-layered Elastic Systems, 2004.
【非特許文献43】H.G.Poulos, 'Pile foundation analysis and design', John Wiley & Sons, 366-368(1980).
【非特許文献44】西尾博人、桑原文夫、長尾利昌、福田一久、真島正人、'細径鋼管で補強された地盤の鉛直載荷実験ッその1 地盤及び実験概要ッ'、第37回地盤工学研究発表会、1379-1380(2002).
【非特許文献45】西尾博人、桑原文夫、長尾利昌、福田一久、真島正人、'細径鋼管で補強された地盤の鉛直載荷実験ッその2 実験結果ッ'、第37回地盤工学研究発表会、1381-1382(2002).
【非特許文献46】西尾博人、桑原文夫、長尾利昌、福田一久、真島正人、'細径鋼管で補強された地盤の鉛直載荷実験ッその3 実験結果のシミュレーション解析ッ'、第38回地盤工学研究発表会、1547-1548(2003).
【非特許文献47】西尾博人、桑原文夫、長尾利昌、福田一久、真島正人、'細径鋼管で補強された地盤の鉛直載荷実験ッその4 沈下の簡易予測法ッ'、第38回地盤工学研究発表会、1549-1550(2003).
【非特許文献48】平井弘義・亀井健史:粘性土の圧密降伏応力の推定法に関する一提案, 土と基礎, 地盤工学会,Vol.50, No.5, Ser.No.532, pp.11~13, 2002.
【非特許文献49】平井弘義・亀井健史:サウンディング試験を用いた地盤の許容応力度の算定法に関する一提案, 日本建築学会構造系論文集, 第557号,pp.113~120, 2002年7 月.
【非特許文献50】Love, A. E. H.:The Stress Produced in a Semi-Infinite Solid by Pressure on part of Boundary, Phil. Trans. Roy. Soc., London, Series A., Vol.228, 1929.
【非特許文献51】Harr, M. E.:Foundations of Theoretical Soil Mechanics, McGraw-Hill, 1966.
【非特許文献52】Boussinesq, J.:Love, A.E.H., 1944, 参照.
【非特許文献53】Love, A.E.H.:A Treatise on the Mathematical Theory of Elasticity, 4th ed. Dover, New York, 1944
【非特許文献54】最上武雄:土質力学、技報堂出版, pp.221~330, 1969.
【非特許文献55】木村 孟:土の応力伝播, 鹿島出版会, pp.9~140, 1978.
【非特許文献56】宮本 博:3次元弾性論, 裳華房, pp.16~64, 1967.
【非特許文献57】Zienkiewicz, O.C.:The Finite Element Method, 3rd Edition, pp.119~134,1977.
【非特許文献58】Hirai, H. and Satake, M.:Stress Analysis of a Penny-Shaped Crack Located Between Two Spherical Cavities in an Infinite Solid, Journal of Applied Mechanics, Transactions of the ASME, Vol.47, No.4, pp.806~810, 1980.
【非特許文献59】Hirai, H. and Satake, M.:Stress Analysis of a Penny-Shaped Crack Located Between Two Oblate Spheroidal Cavities in an Infinite Solid, International Journal of Engineering Science, Vol.19, pp.1283~1291, 1981.
【非特許文献60】中原一郎他:弾性学ハンドブック, 朝倉書店, pp.281~470, 2001.
【非特許文献61】Hirai, H., Takahashi, M. and Yamada, M. :An Elastic-Plastic Constitutive Model for the Behavior of Improved Sandy Soils, Soils and Foundations, Vol.29, No.2, pp.69~84, 1989.
【非特許文献62】Yamaguchi, H.: Practical Formula of the Bearing Value for Two Layered Ground, Proc. 2nd Asian Regional Conf. SMFE, Vol. 1, pp.176~180, 1963.
【非特許文献63】山口柏樹:土質力学(第3版), 技報堂出版, pp.94~276, 1984.
【非特許文献64】Newmark, N.M.:Chart for Computing Vertical Pressures Beneath a Surface Loading, Univ. of Illinois, June, 1937.
【非特許文献65】Terzaghi, K.:Theoretical Soil Mechanics, John Wiley and Sons, New York, p.510, 1943.
【非特許文献66】K. Horikoshi and M.F. Randolph, 'Estimation of overall settlement of piled rafts', Soils and Foundations, 39, No.2, 59-68(1999).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
多層地盤におけるパイルドラフト基礎の即時沈下量に関して、弾性理論解による簡便式も提案されている(非特許文献1, 5, 6)が、一般化することによって多層地盤に適用するためには課題が多い。また、有限要素法あるいは境界要素法あるいは有限―境界混合要素法の数値計算法が提案されている(非特許文献2-4, 7-16)が、解が閉じた形(closed form)になっていないため、実務設計に適用するには簡易性および利便性の観点から問題が多い。実務設計に供用できるように、パイルドラフト基礎地盤における即時沈下量を閉じた形(closed form)で示した解析解は、パイルとラフトと地盤の構造的複雑性のために、これまで提案されていない。
【0010】
一方、多層地盤におけるパイルドラフト基礎下の鉛直応力の算定においては、多層地盤を通常、等方等質な一層弾性体としてモデル化して地盤の内部応力を計算しているが、この場合の鉛直応力分布は多層弾性体における鉛直応力の厳密解と比較して精度が著しく低いことが問題であった(非特許文献35-40)。このような従来使用されてきている理論式(非特許文献17)による近似解析法は、多層地盤の各層ごとの剛性の影響を定量的に応力計算に組み込めうる精度の高い数値解析法ではない。地盤が二層以上から構成される場合、境界条件を満足させるためには解析が非常に繁雑となるが、姫野(非特許文献23)及び松井(非特許文献24)による多層地盤における弾性解析プログラムによる鉛直応力算定法は、先に述べたように、基礎形状が円形のみに限定され、水平方向に弾性係数が変化するようなパイルドラフト基礎地盤には使用できない。さらに、基礎設計においては、簡便な閉じた形(closed form)の解である鉛直応力が要望されている。
【0011】
地盤中に地中構造物等を有する場合に関しては、平井(非特許文献58, 59)によって三次元弾性解析手法と厳密解が提案された。しかし、パイルドラフト基礎地盤を初め、多層地盤の三次元弾性解析(非特許文献54~56, 60)においては、境界条件を厳密に満足させるために、一般解に含まれる未定定数を正確に決定することが大変困難な問題となっている。そこで、申請者(非特許文献36-40) はBarber(非特許文献33)によって提案された二層地盤に関する近似計算法を多層地盤および改良地盤に一般化した近似解析法を提案したので、この解析法をさらにパイルドラフト地盤にも適用できるように発展させた算定法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち、請求項1は多層地盤におけるラフト基礎について、ラフト及びラフトに接する原地盤を水平方向の等価弾性係数を有する複合地盤としてモデル化を行い、モデル化した複合地盤のデータを用いて荷重〜即時沈下関係を計算することを特徴とする多層地盤におけるラフト基礎に関する等価弾性係数を用いたラフト基礎地盤の即時沈下算定法である。
【0013】
また、請求項2は多層地盤に対する等価換算厚を用いた等価多層地盤における沈下解析法を用いて、半無限等方等質弾性体に対するMindlinの解を半無限等方異質弾性体に一般化した解を得るとともに、当該解を用いて多層地盤におけるパイル基礎底面下の層の荷重〜即時沈下関係を計算することを特徴とする多層地盤に関する等価換算厚を用いたパイル基礎底面以下の多層地盤の即時沈下算定法である。
【0014】
請求項3は多層地盤におけるパイル基礎について、等方等質弾性体に対するRandolph and Wrothの解を等方異質弾性体に一般化した解を得るとともに、請求項2による多層地盤の即時沈下算定法を用いてパイルの荷重〜即時沈下関係の初期値とし、上記解を用いてパイル基礎の即時沈下量を計算することを特徴とする多層地盤におけるパイル基礎の等価弾性解析法を用いた即時沈下算定法である。
【0015】
請求項4は多層地盤におけるパイルドラフト基礎について、請求項1によるラフト等価弾性解析法と請求項3によるパイル等価弾性解析法を用いて、パイルドラフト基礎の即時沈下量を計算することを特徴とする多層地盤におけるパイルドラフト基礎の等価弾性解析法を用いた即時沈下算定法である。
【0016】
請求項5は多層地盤におけるパイルドラフト基礎に関して、ラフトとパイル及び原地盤のそれぞれの剛性の違いが鉛直応力に及ぼす影響を、等価多層地盤の等価弾性係数と等価換算厚を用いたハイブリッド法である等価弾性解析法によって定量化し、鉛直応力を計算することを特徴とする多層地盤におけるパイルドラフト基礎の等価弾性解析法を用いた鉛直応力算定法である。
【0017】
請求項6は多層地盤におけるパイルドラフト基礎に関して、等価多層地盤の等価弾性係数と等価換算厚を用いた応力分散幅による解析法を適用して、鉛直応力を計算することを特徴とする多層地盤におけるパイルドラフト基礎の等価換算厚を用いた応力分散幅法による鉛直応力算定法である。
【0018】
請求項7は圧密沈下量の数値計算に関して、請求項5と6に示す鉛直応力算定法を用いてパイルドラフト基礎地盤の鉛直応力を求め、それを用いて圧密沈下量を算定することを特徴とする多層地盤におけるパイルドラフト基礎の等価弾性解析法及び応力分散幅法による圧密沈下算定法である。
【発明の効果】
【0019】
パイルドラフト基礎の沈下と応力を算定するために、多層地盤におけるパイルドラフト基礎に関して、等価弾性理論を用いて等価多層地盤としてモデル化し、次のような成果が得られた。
1)多層地盤におけるラフト基礎について、ラフト及びラフトに接する原地盤に関する水平方向の等価弾性係数を有する等価弾性体としてモデル化を行い、荷重〜即時沈下関係を計算するため、多層地盤におけるラフト基礎に関する等価弾性係数を用いたラフト基礎地盤の即時沈下算定法を提案した。
2)多層地盤に対する等価換算厚を用いた等価多層地盤における沈下解析法を用いて、半無限等方等質弾性体に対するMindlinの解を半無限等方異質弾性体に一般化した解を提案し、多層地盤におけるパイル基礎底面下の層の荷重〜即時沈下関係を計算するため、多層地盤に関する等価換算厚を用いたパイル基礎底面以下の多層地盤の即時沈下算定法を提案した。
3)多層地盤におけるパイル基礎について、等方等質弾性体に対するRandolph and Wrothの解を等方異質弾性体に一般化した解を提案し、請求項2よる多層地盤の即時沈下算定法を用いてパイルの荷重〜即時沈下関係の初期値とし、パイル基礎の即時沈下量を計算するため、多層地盤におけるパイル基礎の等価弾性解析法を用いた即時沈下算定法を提案した。
4)多層地盤におけるパイルドラフト基礎について、請求項1によるラフト等価弾性解析法と請求項3によるパイル等価弾性解析法を用いて、パイルドラフト基礎の即時沈下量を計算するため、多層地盤におけるパイルドラフト基礎の等価弾性解析法を用いた即時沈下算定法を提案した。
5)多層地盤におけるパイルドラフト基礎に関して、ラフトとパイル及び原地盤のそれぞれの剛性の違いが鉛直応力に及ぼす影響を定量化するため、等価多層地盤の等価弾性係数と等価換算厚を用いたハイブリッド法である等価弾性解析法によって、鉛直応力を計算するため、多層地盤におけるパイルドラフト基礎の等価弾性解析法を用いた鉛直応力算定法を提案した。
6)多層地盤におけるパイルドラフト基礎に関して、等価多層地盤の等価弾性係数と等価換算厚を用いた応力分散幅による解析法を適用して鉛直応力を計算するため、多層地盤におけるパイルドラフト基礎の等価換算厚を用いた応力分散幅法による鉛直応力算定法を提案した。
7)圧密沈下量の数値計算に関して、請求項5と6に示す鉛直応力算定法を用いてパイルドラフト基礎地盤の鉛直応力を求め、それを用いて圧密沈下量を算定するため、多層地盤におけるパイルドラフト基礎の等価弾性解析法及び応力分散幅法による圧密沈下算定法を提案した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下図面及び表に基いて、本願発明である一般化された等価換算厚と等価弾性係数を用いたパイルドラフト基礎地盤の沈下・応力解析法について、実施の形態につき、詳細に説明する。
図1はx-y座標系において、短辺BR及び長辺LRのラフトとラフト要素i、及び直径dのパイル(杭)の節点jの配置を示し、ラフト要素iは短辺Bi及び長辺Liを有し、またパイル節点iを共有している。図2は地盤を構成する土質層の第1層から第n層までが、それぞれ厚さ4を有し、このような多層地盤においてラフト2は地表面1からの第1層と同じ深さ3にあり、底面の長辺5、厚さ6のパイルドラフト基礎に荷重7が作用している状態を示し、パイルドラフト下の地盤はラフト底面下のパイル8と原地盤の土質層である第2層から第n層から構成されている。
いま、図2に示されるように、地盤の層数と層厚4、砂質土と粘性土の区分並びに地表面1から第n層までについては、地盤の深さ方向に行われるサウンディング試験によって調査できる。
【0021】
ラフトについては、地表面1からラフト底面までの厚さ6、基礎底面の短辺と長辺5、及び形状・寸法が与えられるものとする。
【0022】
砂質土の単位体積重量、並びに粘性土の単位体積重量、自然含水比、液性限界、圧密降伏応力については、サウンディングによる試験結果からは直接求められないので、既往の土質データ及び解析手法を用いて推定し、既知量とする。
【0023】
サウンディング試験(標準貫入試験あるいはスウェーデン式サウンディング試験等)によって、各層の土質区分(砂質土と粘性土)とN値(ただし、スウェーデン式サウンディング試験においては、静的貫入抵抗WswとNswが分かれば、N値は間接的に既往の関係式を用いて推定できる)が与えられる。
【0024】
地盤内の砂質土については、試験で得られたN値を、既往の内部摩擦角の推定式に代入すると、砂質土に関する内部摩擦角の値が得られる。
【0025】
地盤内の粘性土に関して、N値と非排水せん断強さの関係は、既往の実験式により与えられるので、サウンディングによる試験結果から得られたN値を用いて、粘性土の非排水せん断強さは推定できうる。
【0026】
地盤の弾性係数に関して、砂質土及び粘性土の縦弾性係数(ヤング率)は、N値を用いて推定でき、また、ポアソン比は砂質土では0.27~0.30、粘性土では0.5と仮定できる。
【0027】
いま図3に示されるラフトと基礎根入れ深さに対応する層を、図4に示される等価地盤としてモデル化する場合について検討する。ここで原地盤の第j層の弾性係数をEj 、ポアソン比をνjと書くことにする。ラフト底面である第2層上部での短辺及び長辺の応力分散幅B2e及びL2eについて考えると、長辺LR,短辺BRの長方形ラフトにおいては、次式のように与えられる(非特許文献36-40)。
【数1】

ここに、等価換算厚H 1eは次のようになる。
【数2】

ここに、ER、νRはそれぞれラフトのヤング係数、ポアソン比である。この場合、等価弾性係数E1*、ν1* は、次のように書ける。
【数3】

ここに、BbLb/(B2eL2e)>1ならば、BbLb/(B2eL2e) =1とする。
図5は等価多層地盤について等価換算厚を有する等価一層弾性体を示している。 図5と図6には第j層の等価換算厚Hje'を用いた次式によって与えられる応力分散幅が示されている。
【数4】

ここに
【数5】

また、Em≧Enの場合、次式となる。(非特許文献10, 11)
【数6】

一方、Em≦Enの場合、Hn=∞かつEn =∞において等価換算厚はTerzaghiによって提案された鉛直応力の形(非特許文献46)を考慮することによって与えられ、Em=EnにおいてはHme= Hmであることを考慮すれば次式を仮定することができる。
【数7】

【0028】
さて、ラフトのi要素の節点iにおいて荷重Ptiを受ける場合、ラフトが分担する荷重をPRiと書けば、ラフト底面と多層地盤第2層目の接点であるラフトのj要素のj節点における沈下量wRjiは、図7の中に示されたパラメータを用いれば次のように書ける。
【数8】

ここに、FRjiは次のようになる。
【数9】

ここに、

は長さ係数であり、図7に長さ係数mjilが示されている。
【数10】


【数11】

ここにm=Ljil / Bjil , n= z / Bjil (l=1~4)
ゆえに、ラフトのi要素の節点iにおける荷重PRiをN個の全節点に作用する荷重について合計すると、ラフトのj要素と多層地盤第2層目との接点であるj節点における沈下量wRjは次のように書ける。
【数12】

【0029】
次に図8に示すようにパイルを多層地盤の層数に対応するように要素分割した場合を考える。いま、PpmはPsmとPbm(m=2~k-1)の和に等しいことを考慮すれば、ラフトのi要素の節点iにおいて荷重Ptiを受ける場合、ラフトのj要素の節点jと同じ位置にある節点jのパイルが分担する荷重をPPjiと書けば、節点jにおけるパイルの沈下量wPjiは次のように書ける。
【数13】

ここに、FPjは次のようになる。
【数14】

ここに
【数15】

によって与えられる漸化式からF2が求められるので、[数14]よりFpjが算定される。
ここに、
【数16】

ここに、
【数17】

【数18】

ここに等価換算厚Hje'(j=k~n)は[数6]と[数7]によって与えられ、Fkは半無限等方等質弾性体に対するMindlinの解を、多層地盤である半無限等方異質弾性体に一般化した形であり、本願発明において提案されたものである。また
【数19】

ここに
【数20】

ここに
【数21】

ここにhは地盤面からパイル底面下の要素mまでの等価換算厚[数6]と[数7]による深さであり、 z1はパイル底面直下の層上端から要素mまでの等価換算厚[数6]と[数7]による深さである。
ゆえに、ラフトのi要素の節点iにおける荷重Ptiに対して、ラフトのj要素の節点jにおいて節点jのパイルが分担する荷重Ppjiにより生じる沈下量wPjiに関して、N個の全節点に作用する荷重について合計すると、j節点のパイル上面における沈下量wPjは次のように書ける。
【数22】

【0030】
いま、改めて節点1〜Mまでをラフト要素の中にパイルがあるパイル節点とし、節点M+1〜Nまでをラフト要素の中にパイルがない地盤節点とすると、パイル節点において[数8]と[数13]はラフトとパイルの接合点における沈下量の適合条件より等しくなり、次式が得られる。
【数23】

次に、ラフト要素iの節点iに作用する荷重Ptiはラフト要素iの節点iにおける分担荷重PRiとパイル節点jの分担荷重PPjiに分解できるので、次式を得る。
【数24】

よって、[数23]と[数24]を用いれば、次式を得る。
【数25】

ゆえに、[数25]を[数23]に代入するとPPjiが得られ、さらに[数12]と[数22]によってそれぞれラフトのj要素と多層地盤第2層目との接合面のj節点における沈下量wRjとラフトのj要素とパイルとの接合面のj節点における沈下量wPjが与えられる。節点1〜Mまでをラフト要素の中にパイルがあるパイル節点とし、節点M+1〜Nまでをラフト要素の中にパイルがない地盤節点としているので、ラフト要素においてパイル節点の即時沈下量wPjと地盤節点の即時沈下量wSjは[数12]と[数22]から次のように書ける。
【数26】

【0031】
次に、弾性係数En 、ポアソン比νnの半無限弾性体では、荷重qを受ける長辺L, 短辺Bの撓み性長方形基礎において隅角部の直下で鉛直距離zにおける増加鉛直応力Δσv' (非特許文献30, 31) は以下のように表される。
【数27】

ここに、m=L / B , n= z / Bである。
また、荷重qを受ける半径aの円形基礎において中央部の直下で鉛直距離zにおける増加鉛直応力Δσv' (非特許文献50, 51) は、次式のように表現できる。
【数28】

等価換算厚[数6]と[数7]を[数27]あるいは[数28]に代入すれば、図5の各層における増加鉛直応力Δσv'は求められ、この値は図4,5,6における各層の増加鉛直応力Δσv'となる。
一方、力の釣り合い条件式より、基礎底面下部の第j層上部での増加鉛直応力Δσv'は次式のようになる。
【数29】

等価換算厚[数6]と[数7]を用いた応力分散幅の[数4]を[数29]に代入すれば、図5の第j層上部における増加鉛直応力Δσv'は求められ、この値は図4,5,6に示される多層地盤の第j層上部における増加鉛直応力Δσv' となる。
次に、弾性係数En 、ポアソン比νnの半無限弾性体で、荷重qbを受ける半径rbのパイル底面から中央部直下で鉛直距離z1おける増加鉛直応力Δσz は以下のように表される。
【数30】

ここに
【数31】

ここにz1とz2は[数21]によって与えられる。[数30]に[数6]と[数7]によって与えられる等価換算厚を代入すれば、パイル底面下の増加鉛直応力Δσzは[数30]から算定でき、図5の各層における増加鉛直応力Δσzは求められ、この値は図4,5,6における各層の増加鉛直応力Δσzとなる。
【0032】
粘性土の圧密沈下量Scは、次式(非特許文献17) のように表される。
【数32】

ここに、Cs: 膨張指数(再圧縮指数ともいう。記号Cr), Cc: 圧縮指数, H: 層の厚さ, e0: 間隙比, σv'1:建設前の有効上載圧, σvc' :圧密降伏応力Δσv': 増加鉛直応力である。建設前の有効上載圧σv'1 は、地盤を構成する土層の深さと単位体積重量及び地下水位がわかれば求められる。圧密降伏応力σvc' に関しては、非特許文献48においてサウンディング試験を用いた推定法が提案されている。各層における増加鉛直応力Δσv' は[数27]〜[数30]を用いて求められる。ゆえに、[数32]によって、圧密沈下量は算定できることになる。
【0033】
次に、ラフトの曲げモーメントは次のようになる。
【数33】

ここに、曲げ剛性Dは次のように与えられる。
【数34】

[数33]においてwRとして[数26]を代入すれば、ラフトの曲げモーメントが得られる。[数33]は差分法を用いれば、解が求められる。
【0034】
多層地盤におけるパイルドラフト基礎の即時沈下に関して、[非特許文献43〜47]は細径鋼管による補強地盤の実験結果を示している。図9は無補強地盤とパイルドラフトによる補強地盤について、実験結果とシミュレーション結果との比較である。S1-E~S3-Eは無補強地盤の実験結果であり、S1-S~S3-Sは無補強地盤のシミュレーション結果である。また、S1P-E~S3P-Eは補強地盤の実験結果であり、S1P-S~S3P-Sは補強地盤のシミュレーション結果である。補強地盤及び無補強地盤について、シミュレーション結果は実験結果を定性的かつ定量的に適切な精度で表現していることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】パイルドラフト基礎のラフトとパイルの配置を示す図面である。
【図2】多層地盤におけるパイルドラフト基礎のラフトとパイルの断面AAでの断面を示す図面である。
【図3】多層地盤におけるラフトの断面を示す図面である。
【図4】ラフトに対する等価弾性係数を有する等価多層地盤を示す図面である。
【図5】等価多層地盤に関する等価換算厚を有する等価一層弾性体と応力分散幅を示す図面である。
【図6】等価多層地盤の応力分散幅を示す図面である。
【図7】ラフト要素iの節点iにおける荷重が節点jに及ぼす影響を算定するための長さ係数を示す図面である。
【図8】多層地盤におけるパイルの要素分割を示す図面である。
【図9】無補強地盤と補強地盤について時間と沈下量の関係を示す図面である。
【符号の説明】
【0036】
1 地表面
2 ラフト
3 地表面からラフト底面までの深さ
4 第i層の厚さ
5 ラフト底面の長辺
6 ラフトの厚さ
7 荷重
8 パイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層地盤におけるラフト基礎について、ラフト及びラフトに接する原地盤を水平方向の等価弾性係数を有する複合地盤としてモデル化を行い、モデル化した複合地盤のデータを用いて荷重〜即時沈下関係を計算すること、
を特徴とする多層地盤におけるラフト基礎に関する等価弾性係数を用いたラフト基礎地盤の即時沈下算定法。
【請求項2】
多層地盤に対する等価換算厚を用いた等価多層地盤における沈下解析法を用いて、半無限等方等質弾性体に対するMindlinの解を半無限等方異質弾性体に一般化した解を得るとともに、当該解を用いて多層地盤におけるパイル基礎底面下の層の荷重〜即時沈下関係を計算すること、
を特徴とする多層地盤に関する等価換算厚を用いたパイル基礎底面以下の多層地盤の即時沈下算定法。
【請求項3】
多層地盤におけるパイル基礎について、等方等質弾性体に対するRandolph and Wrothの解を等方異質弾性体に一般化した解を得るとともに、請求項2による多層地盤の即時沈下算定法を用いてパイルの荷重〜即時沈下関係の初期値とし、上記解を用いてパイル基礎の即時沈下量を計算すること、
を特徴とする多層地盤におけるパイル基礎の等価弾性解析法を用いた即時沈下算定法。
【請求項4】
多層地盤におけるパイルドラフト基礎について、請求項1によるラフト等価弾性解析法と請求項3によるパイル等価弾性解析法を用いて、パイルドラフト基礎の即時沈下量を計算すること、
を特徴とする多層地盤におけるパイルドラフト基礎の等価弾性解析法を用いた即時沈下算定法。
【請求項5】
多層地盤におけるパイルドラフト基礎に関して、ラフトとパイル及び原地盤のそれぞれの剛性の違いが鉛直応力に及ぼす影響を、等価多層地盤の等価弾性係数と等価換算厚を用いたハイブリッド法である等価弾性解析法によって定量化し、鉛直応力を計算すること、
を特徴とする多層地盤におけるパイルドラフト基礎の等価弾性解析法を用いた鉛直応力算定法。
【請求項6】
多層地盤におけるパイルドラフト基礎に関して、等価多層地盤の等価弾性係数と等価換算厚を用いた応力分散幅による解析法を適用して、鉛直応力を計算すること、
を特徴とする多層地盤におけるパイルドラフト基礎の等価換算厚を用いた応力分散幅法による鉛直応力算定法。
【請求項7】
圧密沈下量の数値計算に関して、請求項5と6に示す鉛直応力算定法を用いてパイルドラフト基礎地盤の鉛直応力を求め、それを用いて圧密沈下量を算定すること、
を特徴とする多層地盤におけるパイルドラフト基礎の等価弾性解析法及び応力分散幅法による圧密沈下算定法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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