説明

一般的なビデオカメラ回路を利用したテレシネ装置

【課題】フィルムの撮影コマ数とビデオ信号のフレ−ム数の差を自動的に補間し、一般的なビデオカメラの回路を使ってビデオ信号に変換すること。そしてフィルム映像をテレビで見たり、ビデオテ−プやDVDに録画したり、コンピュ−タに取り込むことを可能とすること。
【解決方法】パルス制御部(17)で生成したフィルム再生パルス(20)を基準とし、ビデオフレ−ムパルス(21)またはビデオフィ−ルドパルス(23)を比較し、パルスが一致したときにステッピングモ−タ制御パルス(22)を生成する。一致しないときは、直後のビデオフレ−ムパルス(21)またはビデオフィ−ルドパルス(23)からステッピングモ−タ制御パルス(22)を生成する。このステッピングモ−タ制御パルス(22)でフィルムをコマ送りしてフィルムとビデオ信号の1秒間の再生画像数の差を自動的に補間するとともに、一般的なビデオカメラ回路でフィルムの画像をビデオ信号として出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、8ミリフィルム、16ミリフィルム、35ミリフィルムなどのム−ビ−フィルム(以下「フィルム」という。)をビデオ信号のフレ−ムまたはフィ−ルドタイミングに合うようにパルスを生成してコマ送り制御することで画像を補間し、一般的なビデオカメラ回路を利用してアナログまたはデジタルビデオ信号に変換するテレシネ装置に関する物である。
【背景技術】
【0002】
フィルム、特に8ミリフィルム用の映写機は1980年代を最後に製造されていない。現在、8ミリフィルムを再生するには、製造から20年以上経過した映写機を使うか、ビデオ変換業者などに依頼して有料でビデオやDVDに変換するしかない。製造から20年以上経過した映写機は老朽化が進んでおり大半が何らかの補修を要すると思われるが、すでにほとんどのメ−カ−で正式サポ−トを終了している。
つまり、一般の人はフィルムを持っていても映写機が壊れてしまうと映写する手段がなくなってしまう。そして、フィルムをビデオ信号に変換するテレシネ装置は、高価な業務用しか存在しないことから、映写機を代替する装置の入手もできない。
フィルムの撮影コマ数は1秒間に16、18、24コマ等、幾種類かあるが、いずれもビデオ信号(NTSCは1秒間に30フレ−ム、PAL、SECAMは25フレ−ム)とは一致しないため、フィルムの1コマをビデオ信号の1フレ−ムあるいは2フレ−ムと、単純に置き換えるだけでは役に立たない。
【0003】
フィルムの撮影コマ数とビデオ信号のフレ−ム数の差を補間する方式や変換方法及びテレシネ装置は数多く発明されているが、それらのほとんどがフィルムは一定の速度で送り、ビデオ信号化の段階で補間する方式で、毎秒24コマの16ミリフィルムより大きなサイズのフィルムを扱う業務用のためのものである。例えば特開2002−359775や特開2002−77832、特開2001−103373等がこの方式に該当する。
本人発明の特願2004−57008の「8ミリフィルムビデオ変換装置」は、これらの業務用テレシネ装置よりは小型で安価なテレシネ装置を提供するものだが、フィルムを一定の速度で送り、ビデオ信号化の段階で補間する方式に変わりはない。
このようにビデオ信号化の段階で補間する方式では一般的なビデオカメラ回路がそのまま利用できないので専用の回路を開発する必要があり、低価格化にも限界がある。
補間をビデオ信号化の段階ではなくフィルムをコマ送りする段階で行うことができれば、ビデオ信号化に一般的なビデオカメラ回路をそのまま利用することができ、装置のさらなる低価格化が計れるはずである。
【0004】
フィルムのコマ送りを制御してフィルムの映像をビデオ信号化する方法として、例えば特開平11−32255や特開平10−126685があるが、フィルムのコマ送り速度とビデオ信号化の同期を取ることで画質の向上を図っているが、フィルムをリアルタイムで再生し、フィルムの撮影コマ数とビデオ信号のフレ−ム数の差を自動的に補間するものではない。つまり、映画などのフィルムをリアルタイムでビデオ信号化する目的のものではない。
現在、フィルムをコマ送りする段階で撮影コマ数とビデオ信号のフレ−ム数の差を補間し、一般的なビデオカメラ回路をそのまま利用してビデオ信号に変換する方式のテレシネ装置は存在しない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フィルムの撮影コマ数とビデオ信号のフレ−ム数の差をフィルムをコマ送りする段階で自動的に補間し、一般的なビデオカメラの回路を使ってフリッカのないビデオ信号に変換すること。そして、フィルム映像をテレビで鑑賞したり、ビデオテ−プやDVDに録画したり、コンピュ−タに取り込むことを可能とすること。
【課題を解決するための手段】
【0006】
8ミリフィルム、16ミリフィルム、35ミリフィルムなどのム−ビ−フィルムを、フィルムの再生速度(フィルム再生パルス)とビデオフレ−ムの信号(ビデオフレ−ムパルス)あるいはビデオフィ−ルドの信号(ビデオフィ−ルドパルス)を比較して生成したパルス(以下「ステッピングモ−タ制御パルス」という。)でステッピングモ−タを制御してコマ送りすることにより、フィルムとビデオ信号の1秒間の再生画像数の差を自動的に補間しながら再生する。そして一般的なビデオカメラ回路を利用してフィルムの画像をアナログビデオ信号またはデジタルビデオ信号として出力するテレシネ装置を実現する。
フィルムの駆動系や光学系の寸法調節や制御プログラム調整により、各種規格のフィルムに対応可能なテレシネ装置の製作も容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明を実施することにより、アナログビデオ信号またはデジタルビデオ信号を出力する小型で安価なテレシネ装置が実現する。映写機の老朽化等により再生できず、保管されたままになっている記録フィルムを手軽にテレビで見ることができるようになるだけでなく、ビデオテ−プやDVDに録画したり、コンピュ−タに取り込むみ編集したりできるようになる。また新しい記録媒体に映像を移し替えることにより記録の永続を図ることができる。そして、一般家庭だけでなく、図書館や公民館、学校や各種施設、各種法人や団体など、いろいろな場所で再生できずに眠っている貴重な歴史的記録映像や視聴覚素材、研究資料などを蘇らせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【実施例1】
【0008】
フィルム(1)はリ−ルA(2)から送られ、リ−ルB(3)に巻き取られる。リ−ルA(2)にはフィルム巻き戻し用モ−タ(4)、リ−ルB(3)にはフィルム巻き取り用モ−タ(5)が取り付けられている。
リ−ルA(2)とリ−ルB(3)の間にはフィルムをコマ送りするステッピングモ−タ(6)、コマ送りによるフィルムの脈動を緩衝するテンションロ−ラ(7)、(8)、光源(9)とビデオカメラユニット(10)、フィルム速度検出ロ−ラ(11)、音声再生用磁気ヘッド(12)、ガイドロ−ラ(13)等が配置される。
付随する電子回路は、ビデオカメラユニット(10)、ビデオ信号変換部(14)、音声回路部(15)、出力端子部(16)、パルス制御部(17)などで構成される。(図1参照)
【0009】
フィルムの再生を開始すると、パルス制御部(17)からのモ−タ制御信号でリ−ルB(3)のモ−タ(5)が回転してフィルムを巻き取り、ステッピングモ−タ制御パルス(22)でステッピングモ−タ(6)がフィルムをコマ送りする。フィルム(1)の画像は光源(9)からの光で再生され、コマ送りと同期したタイミングでビデオカメラユニット(10)で撮影し、ビデオ信号変換部(14)を経由してビデオ映像化される。
【0010】
フィルムの再生速度は、パルス制御部(17)でフィルム再生速度設定ボタン(18)で設定された速度に応じたフィルム再生パルス(20)を生成し、このパルスを基準にモ−タを制御する信号やステッピングモ−タ制御パルス(22)を生成してリ−ルB(3)のモ−タ(5)やステッピングモ−タ(6)を制御する。
フィルムはリ−ルA(2)側のテンションロ−ラ(7)とリ−ルB(3)側のテンションロ−ラ(8)の間ではステッピングモ−タ制御パルス(22)によってコマ送りされるが、リ−ルB(3)側のテンションロ−ラ以後では、安定した音声再生のために、フィルム速度検出ロ−ラ(11)によってリ−ルB(3)のモ−タ(5)を制御し、脈動のない均一な速度に保持される。
【0011】
ビデオの方式がNTSCの場合、フィルムのコマ送りを制御するステッピングモ−タ制御パルス(22)は、パルス制御部(17)で生成されたフィルム再生パルス(20)と30分の1秒間隔のビデオフレ−ムパルス(21)または60分の1秒間隔のビデオフィ−ルドパルス(23)から以下のような方法で生成される。(図2参照)
画像の補間をフレ−ム単位で行う場合、ステッピングモ−タ制御パルス(22)は、フィルム再生パルス(20)を基準に、ビデオフレ−ムパルス(21)が一致したとき生成する。一致しないときは、直後のビデオフレ−ムパルス(21)を検出して生成する。
例えばフィルム再生速度が毎秒18コマ(フィルム再生パルスが18分の1秒)のとき、ビデオフレ−ムパルス(21)との比較で生成されるステッピングモ−タ制御パルス(22)の間隔は、15分の1、15分の1、30分の1の繰り返しになる。つまり、ビデオフレ−ムパルス(21)の2、4、5、7、9、10、12、14、15、17、19、20、22、24、25、27、29、30番目がステッピングモ−タ制御パルス(22)となり、2フレ−ム、2フレ−ム、1フレ−ムの繰り返しでフィルムの画像をビデオ信号に変換する。
【0012】
フィ−ルド単位(プログレッシブ方式)で補間する場合、ステッピングモ−タ制御パルス(22)はフィルム再生パルス(20)を基準に、ビデオフィ−ルドパルス(23)が一致したとき生成する。一致しないときは、直後のビデオフィ−ルドパルス(23)を検出して生成する。
例えばフィルム再生速度が毎秒18コマ(フィルム再生パルスが18分の1秒)のとき、ビデオフィ−ルドパルス(23)との比較で生成されるステッピングモ−タ制御パルス(22)の間隔は、15分の1秒、20分の1秒、20分の1秒の繰り返しになる。つまり、ビデオフィ−ルドパルス(23)の4、7、10、14、17、20、24、27、30、34、37、40、44、47、50、54、57、60番目がステッピングモ−タ制御パルス(22)となり、4フィ−ルド、3フィ−ルド、3フィ−ルドの繰り返しでフィルムの画像をビデオ信号に変換する。
【0013】
フィルム再生パルス(20)、ビデオフレ−ムパルス(21)、ビデオフィ−ルドパルス(23)ステッピングモ−タ制御パルス(22)は、パルス制御部(17)で同一クロックを基準に生成されるため、フィルムのコマ送りタイミングとビデオカメラユニット(10)のシャッタ−タイミングは正確に一致する。ただし、フィルムをコマ送り中の画像がビデオ信号に取り込まれないように、光源(9)は高速点滅が可能なLED等を用いて、ステッピングモ−タ制御パルス(22)あるいはビデオフレ−ムパルス(21)、またはビデオフィ−ルドパルス(23)に同期させてフィルムのコマ送りに要する時間だけ消灯する。光源(9)の消灯時間は、LED等の特性やステッピングモ−タの仕様により決定する。また、ビデオカメラユニット(10)のシャッタ−タイミングは最良なビデオ信号が得られるように調整する。このシャッタ−タイミングは光源(9)の光量およびビデオカメラユニット(10)やビデオ信号変換部(14)に使用する回路の仕様により決定する。
【0014】
フィルム再生速度が毎秒18コマ以外でも、同様の原理により自動的にステッピングモ−タ制御パルスが生成できる。(図3参照)
また、PAL、SECAMの25フレ−ムのビデオ信号についても同様の原理により自動的にステッピングモ−タ制御パルスを生成できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】 全体構成図
【図2】 ステッピングモ−タ制御パルス生成タイミング(毎秒18コマ→NTSC)
【図3】 ステッピングモ−タ制御パルス生成タイミング(毎秒24コマ→NTSC)
【符号の説明】
【0016】
(1) フィルム
(2) リ−ルA
(3) リ−ルB
(4) フィルム巻き戻し用モ−タ
(5) フィルム巻き取り用モ−タ
(6) ステッピングモ−タ
(7) テンションロ−ラ
(8) テンションロ−ラ
(9) 光源
(10) ビデオカメラユニット
(11) フィルム速度検出ロ−ラ
(12) 音声再生用磁気ヘッド
(13) ガイドロ−ラ
(14) ビデオ信号変換部
(15) 音声回路部
(16) 出力端子部
(17) パルス制御部
(18) フィルム再生速度設定ボタン
(19) 同期パルス
(20) フィルム再生パルス
(21) ビデオフレ−ムパルス
(22) ステッピングモ−タ制御パルス
(23) ビデオフィ−ルドパルス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
8ミリフィルム、16ミリフィルム、35ミリフィルムなどのム−ビ−フィルムを、フィルムの再生速度(フィルム再生パルス)とビデオフレ−ムの信号(ビデオフレ−ムパルス)あるいはビデオフィ−ルドの信号(ビデオフィ−ルドパルス)を比較して生成したパルスでステッピングモ−タを制御してコマ送りすることにより、フィルムとビデオ信号の1秒間の再生画像数の差を自動的に補間しながら再生する。そして一般的なビデオカメラ回路を利用してフィルムの画像をアナログビデオ信号またはデジタルビデオ信号として出力するテレシネ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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