説明

一貫構造設計と意匠3次元CADの整合チェック補助装置

【課題】建築意匠設計用3次元ソフトと法で決められた建築物の強度基準に則り強度安全評価を行う一貫構造設計計算ソフト間の設計者相互の情報とデータのやり取りを軽減する手段を提供する。
【解決手段】3次元ソフトから一貫構造設計計算ソフトへのデータ変換の際、一貫構造設計計算で必要となる構造要素の断面寸法、軸芯等、全てのデータをPCにより完全自動変換することが望ましいが難しいため、3次元ソフトの持っているデータで自動変換可能部分を抽出変換し、一貫構造設計計算ソフトのPC画面に表示することにより可視化し、不足しているデータを構造設計者の判断によって手直しすることにより、従来構造設計者が3次元CAD図面を見ながら変換入力し作成していた構造設計図面の作成を軽減短縮する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、法で決められた建築物の強度基準に則り建築物の強度安全評価を行う際、電子計算機(以後、周辺機器を含め電子計算機の規模の大小にかかわらずPCと記す)を用い3次元CADソフトで設計された建築物の3次元CADソフト意匠データから建築物の構造を構成する床、壁、天井、柱、梁、筋交い等(以後、建築物の構造を構成する床、壁、天井、柱、梁、筋交い等を構造要素と記す)の構造要素データを抽出し、一貫構造設計計算ソフトのデータとして読み込み可能なデータに変換し、3次元CADソフトによる建築物の意匠設計から一貫構造設計計算ソフトによる強度安全性確認までの一連の作業負担を軽減することを目的とした一貫構造設計計算ソフトの整合チェック補助装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年建築業界ではBIM(Building Inormation Modeling)と言うことで3次元の形状情報と建築設計、施工の全行程を通した属性情報を合わせもつ建物情報モデルへの移行に努力を重ねている。この様な時代背景の中、建築設計者は、PCの3次元CADソフトを用い建築物の意匠と使用時の機能を考慮して建築物の設計を行い(以後、3次元CADソフトを用い建築物の意匠と使用時の機能を考慮して建築物の設計を行う段階を意匠設計と記す)、意匠設計後、設計された建築物は、建築物が法に基づいた強度安全性を持ったものか否かを設計条件、部材設定、部材配置、室用途指定、荷重設定、応力解析、断面算定、保有耐力計算を一連で処理する一貫構造設計計算ソフトで評価している(以後、建築物が法に基づいた強度安全性を持ったものか否かを荷重設定、応力解析、断面算定、保有耐力計算を一連で行う一貫構造設計計算ソフトで評価する段階を構造設計と記す)。
3次元CADソフトで設計された建築物の強度安全性を一貫構造設計計算ソフトで評価する場合、3次元CADソフトで設計された建築構造物の床、壁、天井、柱、梁、筋交い等の構造要素データを抽出し一貫構造設計計算ソフトで計算可能な構造要素データに変換しなくてはならないが、現在このデータの変換作業は、構造設計者が、意匠設計図面(PC表示装置画面上の図を含む)を参照しながら一貫構造設計計算ソフト用の構造図面として技術的に適切であるか技術的な判断を加え入力変換作業を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】平成12年建設省告示1358号 第2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この構造設計者による3次元CADソフトのデータから一貫構造設計計算ソフトのデータへの入力変換作業を完全にPCを用い自動で行うことができれば構造設計者の作業が軽減されるが、現在のところ、3次元CADソフトメーカごとにデータ保存の方法が異なること、および、3次元CADソフトと一貫構造設計計算ソフトとの構造要素に対する寸法基準位置の決め方が異なること等により3次元CADソフトから一貫構造設計計算ソフトへ構造要素データの完全な形での自動変換は、難しい状況にある。
【0005】
さらに建築設計においては、しばしば起きることであるが、なんらかの理由により意匠設計に設計変更が生じた場合、一貫構造設計計算ソフトの構造図面を全面的に入力し直し建築物の強度安全性を再計算しなくてはならないことが発生する。現実の建築業界では、外観的な美観や建築物の居住環境を考慮し自由な発想で建築物の設計を行う意匠設計者と意匠設計された建築物に対して法で決められた建築物の強度基準に則り強度安全性確認を行う構造設計者は、分業化されており意匠設計が先行され、その後に構造設計を行う手順から、構造設計段階で意匠設計に強度不足が生じた場合、意匠設計者と構造設計者が調整を行うことが必要となり、この工程間の調整や設計変更等による労力を極力最小限におさえる必要性に迫られている。そこで本発明は、上記課題を解決するため構造設計者が意匠設計図面を参照し入力変換しなくてはならない労力を最小限におさえて作業が軽減でき、かつ構造設計者と意匠設計者とのコミュニケーションツールとなるような一貫構造設計と意匠3次元CADの整合チェック補助装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1では、構造設計者が意匠設計図面を参照し入力変換しなくてはならない労力を最小限におさえ作業を軽減することに対しては、PCで3次元CADソフトを用いて設計された3次元CADソフト建築図面データから柱、梁、壁等の構造要素ごとに記録あるいは定義されている通り、構造要素の寸法、配置基準、基点を抽出し、抽出した3次元CADソフト建築図面データを3次元CADソフトの絶対座標のデータのまま一貫構造設計計算ソフトの躯体ファイルの一部として保存し、柱、梁、壁等の構造要素の断面データは、一貫構造設計計算ソフトの構造要素の断面を定義している断面表の形式に変換して一貫構造設計計算の躯体データファイルの一部として変換保存し、一貫構造設計計算ソフトの躯体ファイルに取り込まれた3次元CADソフトのデータから一貫構造設計計算ソフトのPC表示用データを生成し、構造図面としてどの程度の情報が、取り込めたかを設計者がPC画面上に表示した伏図や軸組図で確認し、伏図や軸組図の柱、梁等の軸芯のずれ等、自動で変換修正できる部分は、自動で変換修正し、PC画面上に表示された3次元CADソフトのデータから一貫構造設計計算ソフト用データに変換されたPCに表示された伏図や軸組図の不十分な部分を設計者が検討しながら追加修正を加え、一貫構造設計計算ソフトの計算用の構造図面として完成させ、その後一貫構造設計計算を行うこととした。
【0007】
さらに請求項2では、3次元CADソフトの建築図面データから一貫構造設計計算ソフトが読み込み可能な表示用データに変換し一貫構造設計計算ソフトの構造図面としてPC画面に表示した伏図、軸組図に構造設計者が追加修正を加え一貫構造設計計算ソフトの計算用の構造図面として完成させた伏図、軸組図と一貫構造設計計算ソフトの計算結果をPC画面に表示した伏図、軸組図を重ね合せ、一貫構造設計計算結果と3次元CADソフトの意匠設計建築図面との図面の相違あるいは断面不整合をPC画面に上で確認検討し、一貫構造設計計算の結果を3次元CADソフトの建築図面へフードバックする情報を検討でき、3次元CADソフトから一貫構造設計計算ソフトにデータ変換する過程で作成する各段階で作成される各種伏図、軸組図相互を重ね合せ表示し3次元CADソフトの建築図面へのフードバック情報を検討でき、さらに、一貫構造設計計算結果の断面不整合アラームを構造要素ごとに一覧表に表示し参照しながら3次元CADソフトの建築図面へのフードバック情報を検討できる方法とした。
【0008】
次に、請求項3では、請求項1および請求項2を一貫構造設計計算ソフト内の一連の手順に組み込むことにより、法で定められた建築物の強度安全性確認と3次元CADへのフィードバック情報検討を一連の行為として行うことができる方法とした。
【発明の効果】
【0009】
本発明により構造設計者が意匠設計図面を参照し入力変換しなくてはならない労力を最小限におさえ、構造設計者の作業軽減でき、かつ構造設計者と意匠設計者とのコミュニケーションツールとすることができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一貫構造設計と意匠3次元CADの整合チェック補助装置フローの説明図。
【図2】本発明の実施するための形態における一貫構造設計計算ソフト配置基準の層、通り、節点の説明図。
【図3】同じ実施するための形態における3次元CADソフトデータから取り込まれて一貫構造設計計算ソフトの画面に表示された3次元CAD未加工画像の説明図。
【図4】同じ実施するための形態における一貫構造設計計算ソフト用に柱、梁等の軸芯を合わせるよう一部自動変換した構造図の説明図。
【図5】同じ実施するための形態における一貫構造設計計算ソフトの計算データとして完成した構造図の説明図。
【図6】同じ実施するための形態における一貫構造設計計算ソフトの計算結果を表示した構造図の設計図。
【図7】同じ実施するための形態における図5と図6を重ね合せ表示し比較検討のための説明図。
【図8】同じ実施するための形態における図3と図6重ね合せ表示し3次元CADの未加工構造図と一貫構造設計計算結果の構造図を比較検討のための説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一貫構造設計と意匠3次元CADの整合チェック補助装置を具体化した実施形態について図1から図8に基づいて説明する。図1は、一貫構造設計と意匠3次元CADの整合チェック補助装置の手順をフローにしたもので、最初にフロー全体の流れを説明し、その後に各々の流れのステップに従い詳しく説明を行う。
本発明は、図1のStp1で作業を開始し、Stp2で意匠設計者は、建築物の3次元CADソフト図面を作成する。Step3でその3次元CADソフト図面データから柱、梁、壁等の構造要素ごとに3次元CADソフトで定義されている通り、構造要素の寸法、配置基準、基点を抽出し、Stp4では、抽出した3次元CADソフト図面データを3次元CADソフトの絶対座標のデータのまま一貫構造設計計算ソフトの躯体ファイルの一部として保存するが、構造要素の断面データは、一貫構造設計計算ソフトの構造要素の断面を定義し保管している断面表の形式に変換して一貫構造設計計算の躯体データファイルの一部として変換保存する。Stp5では、Stp4で一貫構造設計計算ソフトの3次元CADソフト図面データとして躯体ファイルの一部として保存された座標データを読み出し、一貫構造設計計算ソフト特有の構造要素の位置を指定する層、通り、(層、通り等については、後に詳述する)柱の軸芯のずれ等を自動で修正する指示をPCに与え一貫構造設計計算ソフトの計算形式に近い未完成の躯体モデルのPC表示用データを生成する。次に、Stp6では、Stp5で作成された未完成の躯体モデルのPC表示用データを表示参照しながら構造設計者は、一貫構造設計計算ソフトの構造図面として計算可能なデータ、すなわち層、通り、節点を定義し、構造図面を手直し入力し躯体モデルを完成させる。Stp6で作成された一貫構造設計計算ソフトの躯体モデルデータをStp7で一貫構造設計計算を開始し、Stp8で一貫構造設計計算行うための構造要素の設定、室用途指定、荷重設定等一貫構造設計計算に必要な条件設定を追加し構造設計計算を行う。一貫構造設計計算ソフトは一貫構造設計計算の結果である応力解析、断面算定、保有耐力計算が設計条件を満たすまでStp7からStp9が繰り返され,Stp9の判定で一貫構造設計計算が設計条件を満たすとStp10に進む。Stp10においては、ステップのStp6で作成された一貫構造設計計算ソフトの躯体モデルデータと一貫構造設計計算結果のデータを用いPCの画面に重ね合せ描画表示し、視覚的に矛盾を把握できるとともにStp11で一貫構造設計計算結果とStp6で作成された一貫構造設計計算ソフトの躯体モデルデータとの矛盾点である構造要素の寸法不足等の断面等不整合アラームを一覧表で表示する。Stp12では、一貫構造設計計算結果に不都合がある場合には、Stp2に戻り、一貫構造設計計算ソフトで不都合が生じた部分を意匠設計者にフィードバックし、意匠設計者は、フードバックされた情報をもとに3次元CADソフト図面に変更を加えることが繰り返され、Stp12の判定で不都合がなくなればStp13の終了となる。
【0012】
以上が、大きな流れである。以下に図1のStp1から各ステップを追って詳細を説明する。Stp1は、フロー上の開始であるから実質的な作業、動作はない。Stp2は、意匠設計者が外観的な美観を考慮した意匠および建築物の居住環境を考慮し自由な発想で建築物の設計を行う意匠設計段階を示しており、意匠設計者は、デザイン性が要求されるため描画性に重点が置かれた3次元CADソフトを使用し意匠設計を行う。しかしながら、建築物は、意匠設計された建築物に対して法で決められた建築物の強度基準に則り強度安全性確認を行う一貫構造設計計算を行わなくてはならない。現在、意匠設計と構造設計とは分業化されており意匠設計が先行され、その後に構造設計者が構造設計計算ソフトを使い強度安全性確認を行う手順となっている。
【0013】
3次元CADソフトで意匠設計された3次元CADソフトの意匠データが完全にPCを用い一貫構造設計計算ソフトのデータに自動変換できれば理想的であるが、現在のところ、3次元CADソフトのメーカごとにデータ保存の方法が異なること、および、3次元CADソフトと一貫構造設計計算ソフトとの構造要素に対する寸法基準位置の取り方が異なること等により完全な形での自動変換が難しい状況にある。3次元CADソフトと一貫構造設計計算ソフトの大きな違いは、3次元CADソフトは、デザイン性を要求されるため描画機能に重点が置かれ、建築物の構造要素等を含めた全ての部材は、3次元CADソフトの絶対座標軸原点からの各XYZ軸方向への座標で描画配置されるために座標数値を入力すれば寸法指定上配置の制限がなく描画できる。
【0014】
一方、3次元CADソフトに対し一貫構造設計計算ソフトは、建築構造物の強度計算に重点を置ことから、建築物躯体モデルにおける構造要素相互の接合関係を明確化する目的で
構造要素の配置に際して絶対座標を使わず、一貫構造設計計算ソフト特有の構造要素の位置を指定する層、通り、節点を定義して配置する制限を加えている。以下に一貫構造設計計算ソフトの構造要素の位置を指定する層、通り、節点について図2を用い簡単に説明を加える。図2に示すXYZ軸座標において地面に平行な面をXY軸が含まれる平面とし、そのXY軸が含まれる平面と平行な面を層と呼び、層Z0と定義する。その層Z0平面上に構造要素等を配置する基準となるY軸に平行でY軸のプラスマイナス無限大方向まで伸びている軸X1、軸X2等を構造要素の配置上必要な数、配置上必要なX軸方向の座標間隔で定義し、通りX1、通りX2等と呼ぶ。さらに、層Z0平面上に構造要素等を配置する基準となるX軸に平行でX軸のプラスマイナス無限大方向まで伸びている軸Y1、軸Y2等を構造要素の配置上必要な数、配置上必要なY軸方向の座標間隔で定義し、通りY1、通りY2等と呼ぶ。この結果として、層Z0上には通りX1、X2等と通りY1、Y2等の直交交差する碁盤の目が構成される。この通りX1、X2等と通りY1、Y2等の交差する交点を節点と呼ぶ。さらに、Z軸方向に床、天井を配置するために層Z0から設計者が望む間隔で層Z0に平行な面としての層Z1、層Z2等、層を定義する。この定義された層Z1、Z2等には、層Z0で定義した通りX1、X2等と通りY1、Y2等の交差する碁盤の目が構成される。層Z0、Z1、Z2等の通りは、自動でコピー構成しても、各層で設計者が定義し直しても良い。例えば、Z0を1階の床、Z1を2階の床(1階の天井)、Z2を3階の床(2階の天井)とかんがえればよい。その結果XYZ座標上の立体に層と通りと節点が作る立体の格子状の網目が構成される。この図2に示した層Z0と層Z1のX1とY1の通りには、壁、梁、筋交い等が配置され、層Z0のX1とY1の交点の節点と層Z1のX1とY1の交点の節点間に、層Z0、層Z1に垂直な柱に相当するものが配置出来ることになる。基本的には一貫構造設計計算ソフトは、層上に作られた通り、節点以外に構造要素等を配置できないソフトとなっている。層、通りは、当然のことながら一貫構造設計計算ソフトの作業中どの時点でも追加できる。一貫構造設計計算ソフトの中には、X1、X2等の間隔、Y1、Y2等の間隔およびZ0、Z1等の間隔を等間隔に決め、その決められた間隔で配置されるソフトとX、Yの通りとZ間の間隔が、自由な寸法が定義できるソフトがあるが、基本的な問題ではない。したがって、3次元CADソフトから一貫構造設計計算ソフトへのデータ変換は、絶対座標から格子状の層、通り、節点へのデータ形式の変換と考えてよい。
【0015】
次にStp3で3次元CADソフトを用いて設計された3次元CADソフト図面データから柱、梁、壁等の構造要素ごとに定義されている通り、構造要素の寸法、配置基準、基点を抽出する。3次元CADソフト図面データでも3次元CADソフトのメーカにより柱、梁、壁等の構造要素ごとに定義された通り、構造要素の寸法、配置基準、基点のデータの並びに相違があり、通りの定義のできるもの、通りの定義できないもの様々であり、通りが定義できる3次元CADソフトにもかかわらず設計者によっては、通りを定義せずに描画している場合もあるが、同一メーカの3次元CADソフトデータ内は、同一の配置規則で配列されているので3次元CADメーカごとの対応は必要となるが、構造要素ごとに定義されている通り、構造要素の寸法、配置基準、基点を抽出することができる。
【0016】
Stp4では、Stp3で抽出された柱、梁、壁等の構造要素ごとに定義されている通り、構造要素の寸法、配置基準、基点の抽出データは、Stp3で抽出した3次元CADソフト図面データを3次元CADソフトの絶対座標のデータのまま一貫構造設計計算ソフトの躯体ファイルの一部として保存するが、構造要素の断面データは、一貫構造設計計算ソフトの構造要素の断面を定義している断面表の形式に変換して一貫構造設計計算の躯体データファイルの一部として変換保存される。Stp3で抽出された柱、梁、壁等の構造要素ごとに定義されている通り、構造要素の寸法、配置基準、基点の抽出データが、3次元CADソフトの絶対座標のデータのまま一貫構造設計計算ソフトの躯体ファイルの一部として保存する理由は、後述するStp10等で、一貫構造設計計算の結果と3次元CADソフトの図と重ねて表示する際、一貫構造設計計算結果を絶対座標表示に変換し表示するため、3次元CADソフトから抽出したデータを変換する必要がないためである。同様に、構造要素の断面データが、一貫構造設計計算ソフトの構造要素の断面を定義している断面表の形式に変換して一貫構造設計計算の躯体データファイルの一部として変換保存される理由は、Stp11で断面不整合のアラームを出すために一貫構造設計計算結果と比較する際、断面表の形式と合わせることにより比較が容易になるからである。
【0017】
Stp5では、先ずStp4で一貫構造設計計算ソフトの躯体ファイルに取り込まれた3次元CADソフトのデータから一貫構造設計計算ソフトの表示用データを生成し、一貫構造設計計算用の構造図面としてどの程度の情報が、取り込めたかをPC画面上に表示して確認する。例えば、Stp4で取り込まれStp5で一貫構造設計計算ソフトの表示用データとして生成された表示結果が、図3の示す図であるとする。図3は、Stp5で一貫構造設計計算ソフトの表示用データを生成された後は、一貫構造設計計算ソフト使用時のどの段階でも図3を呼び出すことができ、3次元CADソフトの原データとして構造要素の相互距離、構造要素の寸法を確認することができる。また図3は、灰色の太線で描かれているが、これは、以後構造設計結果の各種伏図と重ね合わせた場合に灰色の太線中に黒色の細線を重ね合せて説明する説明の都合上便利なように灰色の太線で描かれている。実際のPC画面上では、色分け等も考えられるし、図3の様に太線で描き細線と区別する等の方法がある。以後、他の灰色の太線で描かれている図については、同様の解釈と考えて説明する。
【0018】
図3の柱1aの中心は、通りXbとは一致しているが通りYaとはずれており、柱1bの中心は、通りXbとは一致しているが通りYbとはずれており、柱1cの中心は、通りXaとずれているが通りYbとは一致している場合、各柱の中心と通りのずれの修正範囲の量を構造設計者が寸法数値することにより構造設計者の指定寸法範囲内であれば、あるいは通りを指定することによってPCの命令により、図3に示す中心のずれた柱1a、1b、1cは、図4に示す柱1a4、1b4、1c4に移動し、柱と通りXa、Xb、Ya、Ybが一致するような構造図に自動変更が可能である。この自動修正の際、図3の梁2aと梁2bは、柱1a4、1b4、1c4に移動により柱間距離が変わるために一貫構造設計計算ソフトの規則に基づき従来の柱に接した形で自動的に長さを変え図4の梁2a4と梁2b4に書き換えられる。この修正命令は、柱の中心を合わせるだけでなく必要に応じ、全ての柱の外壁面を合わせる等構造設計者の要望により柱が通りと一致させない方法も可能であり構造設計者が修正された図4に相当する図を見ながら判断する場合に役に立つ。
【0019】
次にStp6では、Stp5で修正された図4の不十分な部分を検討し、構造設計者が修正する。例えば図4の柱1eの場合、どこの梁ともつながらず孤立している。一貫構造設計計算ソフトにおいては、柱は層と層の間を結び立っており、何がしかの梁で他の柱あるいは梁と連結していなくてはならないことになっている。そこで、構造設計者は、図4において図5で示す柱1eの中心を通る通りXcと通りYcを定義し柱1eを梁2dと連結させる梁2e5を加え修正を行い一貫構造設計計算用の躯体モデルの構造図として完成させる。図5の柱、梁等の構造要素の断面寸法は、3次元CADソフトで設計された意匠図面の断面寸法と変えておらず、3次元CADソフトで設計された意匠図面の強度に関する構造部分を保存したデータと考えてよいように構造設計者は変更を加える。ここまでのStp2からStp6までの説明では、建築物の平面図に相当する伏図のみで説明したが、Stp2からStp6までの検討を側面図に相当する軸組図においても行うことによって立体としての一貫構造設計計算用の躯体モデルの構造図として完成させる。
【0020】
完成した構造図のデータをもとにStp7からStp9にかけて建築物の法に基づいた安全が満足されるまで、建築物の構造要素の断面寸法等を自動的に変更し一貫構造設計計算が繰り返し行われる。その建築物の計算結果は、躯体データとして保管され、その計算結果はPC画面表示用の絶対座標に変換されPC画面上に表示された図が、図6であるとする。図6は、本来実線で表すところであるが、説明の都合上、柱、梁を破線で表示している。実際のPC画面表示は、破線表示に限らず線の色を変えるとか、柱、梁の矩形の内側を色分けするとかの見やすい方法が考えられる。この一貫構造設計計算は、本発明に関するだけでなく一般の建築構造物においても行われる法に基づいた建築物の安全評価で一般的なものであるので本文で詳述しない。
【0021】
次にStp10では、Stp6で完成させた一貫構造設計計算用の躯体モデルの構造図の図5と一貫構造設計計算の計算結果を反映した図6をPC画面上に重ねて表示した図7を表示し、3次元CADソフトで設計された意匠設計図が、法に基づいた一貫構造設計計算上も安全であるか否か比較検討を行い、安全であることを確認する。例えば、図7において灰色太実線で表示された柱1a4は、3次元CADソフトで描かれた柱と考えてよく、破線で表示された柱1a6は、一貫構造設計計算の結果であるが、柱1a4の面積が、柱1a6より大きく描かれていると言うことは、3次元CADソフトで意匠設計された図面が、安全側に設計されていると言うことが分かる。一方、同様に図7において灰色太実線で表示された柱1b4は、3次元CADソフトで描かれた柱と考えてよく、破線で表示された柱1b6は、一貫構造設計計算の結果であるが、柱1b4の断面積が、柱1b6より小さく描かれていると言うことは、3次元CADソフトで意匠設計された図面が、強度を満たしておらず、計算の結果柱1b4断面積を柱1b6の断面積まで大きくするように読み取れる。このように図から読み取れると同時に、Stp11では、構造要素ごとに一覧表に表示し、断面寸法が小さく強度不足の構造要素については赤字で表示する等、断面不整合アラームを出し表示する。さらに、3次元CADソフトの図の状態を保持しているStp5で生成した表示用データ図3と一貫構造設計計算の計算結果を反映した図6をPC画面上に重ねて表示した図8を表示することにより、一貫構造設計計算を行うために3次元CADソフトの図面位置からある程度の距離移動した柱、梁等の移動量や安全評価のために柱、梁等の断面変更を総合的に比較検討することができる。
【0022】
Stp12で断面不整合アラームが出た場合には、構造設計者は、意匠設計者と調整し、Stp2に戻り意匠設計者が3次元CADソフトの図面で不整合部分の構造要素の断面寸法を大きくする等の必要な変更を行い、あるいは、あまりにもむだに太い柱を細くする等の処置を行い、再度Stp2からStp12を繰り返しStp12の断面不整合アラームが問題なくなるまで繰り返し3次元CADソフトの意匠図面と一貫構造設計計算ソフトの安全性評価の一連の設計作業がStp13で終了となる。
【実施例】
【0023】
一貫構造設計計算ソフト
【産業上の利用可能性】
【0024】
建築物の構造計算に関するソフトおよび建築物の構造計算ソフトを利用する建築設計業務。
【符号の説明】
【0025】
Stp1 開始
Stp2 3次元CAD図面を作成
Stp3 柱、梁、壁等構造部材ごとに3次元CADで定義されている通り、構造要素の配置基準、基点を抽出
Stp4 抽出した3次元CADデータを座標データのまま、 および断面データは一貫構造設計計算ソフトの 形式に変換して躯体ファイルの一部として変換保存
Stp5 保存した座標データから通り、軸芯のずれ、等を作り出す指示を 与え一貫構造設計計算ソフト表示用のデータを生成
Stp6 生成データを画面に表示し表示された図を 参照し一貫構造設計計算データを作成
Stp7 構造計算開始
Stp8 一貫構造設計計算
Stp9 判定
Stp10 一貫構造設計計算結果と3次元表示データを重ねて表示し確認
Stp11 断面等不整合アラーム表示
Stp12 判定
Stp13 終了
X 座標軸X
Y 座標軸Y
Z 座標軸Z
X1 層上のY軸に平行な通り
X2 層上のY軸に平行な通り
Y1 層上のX軸に平行な通り
Y2 層上のX軸に平行な通り
Z0 地表に平行な層
Z1 地表に平行なZ0とある間隔離れた層
Z2 地表に平行なZ1とある間隔離れた層
X0,Y0,Z0 層Z0上の通りX0と通りY0との交点の節点
X0,Y0,Z1 層Z1上の通りX0と通りY0との交点の節点
X0,Y0,Z2 層Z2上の通りX0と通りY0との交点の節点
1a 3次元CADソフト変換位置データのままの構造図の柱
1b 3次元CADソフト変換位置データのままの構造図の柱
1c 3次元CADソフト変換位置データのままの構造図の柱
1d 3次元CADソフト変換位置データのままの構造図の柱
1e 3次元CADソフト変換位置データのままの構造図の柱
2a 3次元CADソフト変換位置データのままの構造図の梁
2b 3次元CADソフト変換位置データのままの構造図の梁
2c 3次元CADソフト変換位置データのままの構造図の梁
2d 3次元CADソフト変換位置データのままの構造図の梁
Xa 3次元CADソフト変換位置データのままの構造図の通り
Xb 3次元CADソフト変換位置データのままの構造図の通り
Ya 3次元CADソフト変換位置データのままの構造図の通り
Yb 3次元CADソフト変換位置データのままの構造図の通り
1a4 3次元CADソフト変換データの軸芯位置を自動で通りに一致させた柱
1b4 3次元CADソフト変換データの軸芯位置を自動で通りに一致させた柱
1c4 3次元CADソフト変換データの軸芯位置を自動で通りに一致させた柱
2a4 1a4、1b4の柱の移動に伴って移動した梁
2b4 1b4、1c4の柱の移動に伴って移動した梁
2e5 3次元CADソフト変換データの孤立した柱1eに構造設計者が設けた梁
Xc 3次元CADソフト変換データの孤立した柱1eの中心を設けるためと柱1eに架けた梁2e5を設けるために定義した通り
Yc 3次元CADソフト変換データの孤立した柱1eの中心を設けるために定義した通り
1a6 一貫構造設計計算の結果、断面が変化した柱
1b6 一貫構造設計計算の結果、断面が変化した柱
2a6 一貫構造設計計算の結果、梁長が変化した梁
2b6 一貫構造設計計算の結果、梁長が変化した梁
2d6 一貫構造設計計算の結果、梁長が変化した梁



【特許請求の範囲】
【請求項1】
PCを用い3次元CADソフトで設計された3次元CADソフト建築図面データから柱、梁、壁等の構造要素ごとに記録あるいは定義されている通り、構造要素の寸法、配置基準、基点を抽出し、抽出した3次元CADソフト建築図面データを3次元CADソフトの絶対座標のデータのまま一貫構造設計計算ソフトの躯体ファイルの一部として保存し、柱、梁、壁等の構造要素の断面データは、一貫構造設計計算ソフトの構造要素の断面を定義している断面表の形式に変換して一貫構造設計計算の躯体データファイルの一部として変換保存し、一貫構造設計計算ソフトの躯体ファイルに取り込まれた3次元CADソフトのデータから一貫構造設計計算ソフトのPC表示用データを生成し、構造図面としてどの程度の情報が、取り込めたかを設計者がPC画面上に表示した伏図や軸組図で確認し、伏図や軸組図の柱、梁等の軸芯のずれ等、自動で変換修正できる部分は、自動で変換修正し、PC画面上に表示された3次元CADソフトのデータから一貫構造設計計算ソフト用データに変換されたPCに表示された伏図や軸組図の不十分な部分を設計者が検討しながら追加修正を加え一貫構造設計計算ソフトの構造図面として完成させることができる一貫構造設計と意匠3次元CADの整合チェック補助装置。
【請求項2】
3次元CADソフトの建築図面データから一貫構造設計計算ソフトが読み込み可能な表示用データに変換し、一貫構造設計計算ソフトの構造図面としてPC画面に表示した伏図、軸組図に構造設計者が、追加修正を加え一貫構造設計計算ソフトの計算用の構造図面として完成させた伏図、軸組図と一貫構造設計計算ソフトの計算結果をPC画面に表示した伏図、軸組図を重ね合せ、一貫構造設計計算結果と3次元CADソフトの意匠設計建築図面との図面の相違あるいは断面不整合をPC画面に上で確認検討し、一貫構造設計計算の結果を3次元CADソフトの建築図面へフードバックする情報を検討でき、3次元CADソフトから一貫構造設計計算ソフトにデータ変換する過程で作成する各段階で作成される各種伏図、軸組図相互を重ね合せ表示し3次元CADソフトの建築図面へのフードバック情報を検討でき、さらに、一貫構造設計計算結果の断面不整合アラームを構造要素ごとに一覧表に表示し参照しながら3次元CADソフトの建築図面へのフードバック情報を検討できる一貫構造設計と意匠3次元CADの整合チェック補助装置。
【請求項3】
請求項1および請求項2を一貫構造設計計算ソフト内の一連の手順に組み込むことにより、法で定められた建築物の強度安全性確認と3次元CADへのフィードバック情報検討を一連の行為として行うことができる装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−41418(P2013−41418A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177859(P2011−177859)
【出願日】平成23年8月16日(2011.8.16)
【出願人】(711007699)
【Fターム(参考)】