説明

一軸偏心ねじポンプ

【課題】ステータを外筒とライニング部材とに容易に分別することが可能であり、ライニング部材の位置ずれ、変形、及びこれらに伴う偏摩耗の発生や吐出量の不安定化などの問題を解消可能な一軸偏心ねじポンプの提供を目的とした。
【解決手段】ステータ20は、内周面が雌ねじ型となるように一体形成された筒状のライナー部22と外筒部24とを有する。ライナー部22の両端部には、径方向外側に向けて突出したフランジ部26,26が設けられており、これらの間に外筒装着部28が設けられている。外筒部24は、外筒装着部28に非接着状態で装着されており、両端部がフランジ部26,26に当接している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外筒部とライニング部とに分割可能なステータを備えた一軸偏心ねじポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に開示されているように、内周面を雌ねじ形状に形成したステータの内部に、雄ねじ形状に形成したロータを挿入した構造の一軸偏心ねじポンプと称されるポンプが提供されている。このポンプにおいて採用されているステータの多くは、金属製の外筒内にゴムや樹脂などによって形成されたライニング部材を挿入した構造とされている。従来技術において採用されているステータは、外筒とライニング部材とを接着などによって固定することにより、両者の位置ずれやライニング部材の位置ずれが防止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−344587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
昨今、環境問題への配慮が求められており、一軸偏心ねじポンプにおいても上述したステータを構成する外筒とライニング部材とを容易に分別回収可能な構造とすることが望まれている。しかし、従来技術のように外筒とライニング部材とを接着によって固定している場合は、両者を分離するために相当の手間を要するという問題がある。一方、分別回収の手間を考慮してライニング部材に対して外筒を単に非接着状態で装着する構成としただけでは、ライニング部材が軸方向及び周方向に位置ずれや変形を起こす等の問題が発生し、一軸偏心ねじポンプの稼働状態を安定化させる上で様々な懸念が生じる可能性がある。具体的には、ライニング部材が軸方向に伸縮することにより、ライニング部材の内部に形成された貫通孔の径が部位によって不均一となり、偏摩耗の発生や、吐出量が不安定になるなどの問題が生じうる。
【0005】
そこで、本発明は、ステータを外筒とライニング部材とに容易に分別することが可能であり、ライニング部材の位置ずれ、変形、及びこれらに伴う偏摩耗の発生や吐出量の不安定化などの問題を解消可能な一軸偏心ねじポンプの提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決すべく提供される本発明の一軸偏心ねじポンプは、雄ねじ型のロータと、前記ロータを挿通可能なステータとを有し、前記ステータが、内周面が雌ねじ型となるように一体形成された筒状のライナー部と、前記ライナー部の外周に対して押圧状態で装着された外筒部とを有している。本発明の一軸偏心ねじポンプは、前記ライナー部の両端部に、径方向外側に向けて突出した鍔状部が設けられており、前記鍔状部の間に前記外筒部が配され、前記鍔状部に対して前記外筒部の端部が当接している。
【0007】
本発明の一軸偏心ねじポンプに採用されているステータは、ライナー部に対して外筒部を押圧状態で装着したものであり、接着剤を用いることなくライナー部と外筒部とが一体化されている。そのため、本発明の一軸偏心ねじポンプは、ステータを、ライナー部と外筒部とに容易に分別し、回収やリサイクルすることが可能である。
【0008】
本発明の一軸偏心ねじポンプは、ライナー部の両端部に設けられた鍔状部同士の間に外筒部が配されており、更に外筒部の端部を鍔状部に対して当接させた構造とされている。そのため、外筒部がライナー部の軸方向への収縮を防止するための支柱的な役割を果たし、ライナー部の内径を略均一に維持させうる。これにより、ライナー部の偏摩耗を回避し、吐出量を安定化させることが可能となる。
【0009】
また、本発明の一軸偏心ねじポンプは、雄ねじ型のロータと、前記ロータを挿通可能なステータとを有し、前記ステータが、内周面が雌ねじ型となるように一体形成された筒状のライナー部と、前記ライナー部に対して非接着状態で装着され前記ライナー部の外周を覆う外筒部とを有する。本発明の一軸偏心ねじポンプは、前記ライナー部の両端部に、径方向外側に向けて突出した鍔状部が設けられており、前記鍔状部の間に前記外筒部が配されており、前記鍔状部に対して前記外筒部の端部が当接している。
【0010】
本発明の一軸偏心ねじポンプに採用されているステータは、ライナー部に対して外筒部が非接着状態で装着されているため、両者を容易に分別回収することが可能である。また、本発明の一軸偏心ねじポンプは、ライナー部の両端部に設けられた鍔状部同士の間に外筒部が配され、外筒部の端部が鍔状部に対して当接した構造であるため、ライナー部が軸方向に収縮するのを防止しうる。これにより、ライナー部の内径を部位によらず略均一に維持することが可能となり、ライナー部の偏摩耗を回避し、吐出量の安定化を図ることが可能となる。
【0011】
本発明の一軸偏心ねじポンプは、前記外筒部が、周方向に複数の外筒構成体に分割可能なものであることが好ましい。
【0012】
かかる構成によれば、ライナー部に対する外筒部の脱着作業をより一層容易なものとすることが可能である。なお、前記外筒部を複数の外筒構成体によって構成する場合は、外筒構成体同士をクランプ結合により一体化することにより、外筒部の脱着作業を一層容易に実施可能としうる。
【0013】
上述した本発明の一軸偏心ねじポンプは、前記ステータの一端側にエンドスタッドが配置され、前記ステータの他端側を接続するポンプケーシングの端部と前記エンドスタッドとをねじ杆により連結して締め付けることにより、前記ステータが前記エンドスタッドとともにポンプケーシングに一体に連結されており、前記エンドスタッド及びポンプケーシングの端部に、前記外筒部の端部が当接した構成とすることが可能である。
【0014】
かかる構成とした場合は、ねじ杆により連結して締め付けることによりエンドスタッドとポンプケーシングとの間に作用する締結力(挟持力)がライナー部よりも外筒部に優先的に作用し、ライナー部が前記締結力によって軸方向に圧縮されるのを防止できる。これにより、本発明の一軸偏心ねじポンプでは、ライナー部の内径をより一層部位によらず略均一に維持することが可能となる。従って、本発明によれば、ライナー部の偏摩耗を回避し、吐出量の安定化を図ることが可能となる。
【0015】
また、本発明の一軸偏心ねじポンプは、前記エンドスタッド及び/又は前記ポンプケーシングの端部に、前記鍔状部を嵌込可能な嵌込部を設け、前記嵌込部において、前記エンドスタッド及び/又は前記ポンプケーシングと前記外筒部との間に前記鍔状部を挟み込んだ構成とすることが望ましい。
【0016】
かかる構成とすることにより、ライナー部の位置ずれをより一層確実に防止することができ、一軸偏心ねじポンプの稼働状態の安定化に資することが可能となる。
【0017】
本発明の一軸偏心ねじポンプは、前記ライナー部の外観形状が多角形状のものであってもよい。
【0018】
かかる構成とすることにより、ライナー部の周方向への位置ズレを防止し、一軸偏心ねじポンプの稼働状態を一層安定化させることが可能となる。
【0019】
また、本発明の一軸偏心ねじポンプは、前記外筒部が前記ライナー部の外形に沿う形状に屈曲しているものであることが好ましい。
【0020】
かかる構成とすることにより、ライナー部の周方向への位置ズレをより一層確実に防止可能となり、一軸偏心ねじポンプの稼働状態をさらに安定化させうる。
【0021】
本発明の一軸偏心ねじポンプは、前記外筒部の内周側に突起が設けられており、前記突起が前記ライナー部の外周面に押圧された状態で接触しているものであってもよい。
【0022】
かかる構成によれば、ライナー部の外周面に突起が押圧により係止された状態になり、ライナー部の位置ずれを確実に防止可能であり、前記ライナー部の外観形状が円筒状のものである場合のようにライナー部の位置ズレが懸念される場合に特に有効である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ステータを外筒とライニング部材とに容易に分別することが可能であり、ライニング部材の位置ずれ、変形、及びこれらに伴う偏摩耗の発生や吐出量の不安定化などの問題を解消可能な一軸偏心ねじポンプを提供しうる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態にかかる一軸偏心ねじポンプを示す断面図である。
【図2】(a)は図1のα部拡大図、(b)は図1のβ部拡大図である。
【図3】ステータの分解斜視図である。
【図4】図1の一軸偏心ねじポンプにおいて採用されているステータを示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は(a)のA−A断面図である。
【図5】図3のステータに採用されているライナー部を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は(b)のC−C断面図、(d)は(a)のB−B断面図である。
【図6】外筒構成体をクランプ結合する際の把持部に対する挟持片の取り付け方法を説明する説明図である。
【図7】変形例に係るステータの分解状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
続いて、本発明の一実施形態に係る一軸偏心ねじポンプ10について、図面を参照しつつ詳細に説明する。一軸偏心ねじポンプ10は、いわゆる回転容積型のポンプであり、図1に示すように、ステータ20や、ロータ50、動力伝達機構70などを備えた構成とされている。また、一軸偏心ねじポンプ10は、金属製で筒状のポンプケーシング12とエンドスタッド13とを備え、両者をステーボルト18(ねじ杆)を介して接続して一体化した構造とされている。一軸偏心ねじポンプ10は、エンドスタッド13に第1開口14aを有し、ポンプケーシング12の外周部分に第2開口14bを有する。第一開口14aは、一軸偏心ねじポンプ10の軸方向に貫通した貫通孔とされている。第2開口14bは、ポンプケーシング12の長手方向中間部分に位置する中間部12aにおいてポンプケーシング12の内部空間に連通している。
【0026】
第1,2開口14a,14bは、それぞれ一軸偏心ねじポンプ10の吸込口および吐出口として機能する部分である。さらに詳細に説明すると、本実施形態の一軸偏心ねじポンプ10は、ロータ50を正方向に回転させることにより、第1開口14aが吐出口として機能し、第2開口14bが吸込口として機能するように流体を圧送することが可能である。またこれとは逆に、一軸偏心ねじポンプ10は、ロータ50を逆方向に回転させることにより、第1開口14aが吸込口として機能し、第2開口14bが吐出口として機能するように流体を圧送させることが可能である。
【0027】
図1及び図2に示すように、ポンプケーシング12は、一軸偏心ねじポンプ10の組み立て状態においてエンドスタッド13側を向く部分(端部12b)に、断面形状が段状になるように形成された嵌込部12cを有する。また、エンドスタッド13についても、一軸偏心ねじポンプ10の組み立て状態においてポンプケーシング12側を向く部分(端部13a)に、断面形状が段状になるように形成された嵌込部13bを有する。嵌込部12c,13bは、それぞれ後に詳述するステータ20のフランジ部26を嵌め込むために設けられた部分である。嵌込部12c,13bの幅h1(軸方向の長さ)は、フランジ部26の厚み(軸方向の長さ)と略同一であり、嵌込部12c,13bが設けられた部分における開口径h2は、フランジ部26の外径と略同一である。
【0028】
一軸偏心ねじポンプ10は、ポンプケーシング12とエンドスタッド13との間に、ステータ20を取り付けるためのステータ取付部15を有する。一軸偏心ねじポンプ10は、ステータ取付部15にステータ20を配した状態でステーボルト18を装着することにより、ポンプケーシング12とエンドスタッド13とがステータ20を介して連結され、上述した第1,2開口14a,14b間を繋ぐ一連の流路が形成された状態になる。
【0029】
ステータ20は、一軸偏心ねじポンプ10において最も特徴的な部分であり、図1、図3及び図4に示すように、ライナー部22と外筒部24とに大別される。ライナー部22は、ゴムに代表される弾性体や樹脂などにより、一体的に形成されたものである。ライナー部22の材質は、一軸偏心ねじポンプ10を用いて移送する被搬送物である流体の種類や性状などにあわせて適宜選択される。
【0030】
ライナー部22は、径方向外側に向けて突出したフランジ部26,26(鍔状部)を軸方向の両端部に有し、フランジ部26,26間に外筒部24を装着するための外筒装着部28を備えた筒体である。ライナー部22は、フランジ部26,26及び外筒装着部28を一体的に形成したものであり、フランジ部26,26と外筒装着部28との境界部分には段差30を有する。フランジ部26,26は外観形状(断面形状)が略円形とされており、外筒装着部28は外観形状(断面形状)が多角形状(本実施形態では略正十角形状)とされている。また、上述したようにフランジ部26,26の厚みは、ポンプケーシング12及びエンドスタッド13の端部12b,13aに設けられている嵌込部12c,13bの幅h1と略同一とされており、フランジ部26,26の外径は、それぞれポンプケーシング12及びエンドスタッド13の端部12b,13aに設けられている嵌込部12c,13bの開口径h2と略同一とされている。
【0031】
ライナー部22の内周面32は、多段の雌ねじ形状とされている。さらに具体的には、ライナー部22の内部には、ライナー部22の長手方向に沿って伸び、所定のピッチでねじれた雌ねじ形状の貫通孔34が設けられている。貫通孔34は、ライナー部22の長手方向のいずれの位置において断面視しても、その断面形状(開口形状)がほぼ長円形となるように形成されている。
【0032】
図3及び図4に示すように、外筒部24は、上述したライナー部22の外筒装着部28においてライナー部22の外周を覆い、非接着状態で装着されるものである。具体的には、外筒部24は、ライナー部22の外周に押圧状態で装着されるものであり、接着剤を用いなくてもライナー部22と一体化され、周方向及び軸方向の双方に位置決めされた状態になる。
【0033】
外筒部24は、複数(本実施形態では2つ)の外筒構成体36,36と、クランプ38,38とによって構成されている。外筒構成体36,36は、それぞれライナー部22の外筒装着部28において周方向に略半分の領域に覆い被さる金属製の部材であり、外筒装着部28に沿う形状となるように湾曲(屈曲)している。そのため、外筒構成体36を外筒装着部28に装着することにより、外筒構成体36が周方向に回り止めされた状態になる。また、図4(c)に示すように、外筒構成体36の厚みは、ライナー部22においてフランジ部26と外筒装着部28との間に形成された段差30よりも大きい。そのため、外筒装着部28に外筒構成体36を装着すると、図1及び図4に示すように、外筒構成体36がフランジ部26よりもライナー部22の径方向外側に向けて張り出した状態になる。
【0034】
また、外筒構成体36の長さは、外筒装着部28の長さと略同一である。そのため、外筒装着部28に外筒構成体36を装着すると、図1、図2及び図4に示すようにライナー部22の段差30が形成された部分において外筒構成体36の両端部がフランジ部26,26に対して当接した状態になる。そのため、外筒部24は、ライナー部22に対して外筒構成体36を装着した状態において軸方向(長手方向)に向けて圧縮応力が作用した場合に、この応力を外筒構成体36によって受け止め、ライナー部22の圧縮変形や、ライナー部22内に形成された貫通孔34の変形を防止することができる。
【0035】
外筒装着部28の周方向両端部には、把持部40,40が長手方向に向けて延びるように形成されている。把持部40,40の一端側には、ピン挿通孔42,42が設けられており、他端側には係合溝44,44が形成されている。ピン挿通孔42,42及び係合溝44,44は、それぞれ後に詳述するクランプ38,38を装着するために使用するものである。係合溝44は、把持部40の縁から斜め後方(前記他端側)に向けて延びるように形成されている。
【0036】
クランプ38は、断面形状が略「コ」字型の挟持片46と、ピン48とを備えている。挟持片46は、外筒装着部28に外筒構成体36を装着する際に、重ね合わせた状態になっている把持部40,40を挟み込むようにして装着されるものである。挟持片46は、把持部40と略同一の長さを有し、その長手方向一端側にはピン挿通孔46aが設けられ、他端側には突起46bが設けられている。挟持片46は、図6において矢印Xによって示すように突起46bを把持部40において斜め方向に延びるように形成された係合溝44に沿ってスライドさせ、突起46bが係合溝44の端部に突き当たった状態において、矢印Yによって示すように突起46bを中心として回動させることにより、ピン挿通孔46aをフランジ40,40側のピン挿通孔42,42と連通した状態とすることができる。この状態においてピン48をピン挿通孔46a,42,42に亘って挿通することにより、クランプ38によってフランジ40,40が挟持され、固定された状態(クランプ結合された状態)とすることができる。
【0037】
ステータ20は、ライナー部22に対して外筒構成体36,36を被せ、把持部40,40をクランプ38,38によって結合した状態とされて使用される。ステータ20は、ポンプケーシング12において第1開口14aに隣接する位置にあるステータ取付部12b内に組み込まれる。具体的には、ステータ20は、ポンプケーシング12及びエンドスタッド13に設けられた嵌込部12c,13bにライナー部22の両端に設けられたフランジ部26,26を差し込み、エンドスタッド13と中間部12aとの間(ステータ取付部12b)に挟み込むとともに、エンドスタッド13とポンプケーシング12の本体部分とに亘ってステーボルト18を取り付けて締め付けることにより固定されている。
【0038】
上述したようにしてステータ20が取り付けられると、図2(a)に示すように、ライナー部22の一端側において一方のフランジ部26がエンドスタッド13と外筒部24との間に挟み込まれた状態になる。また、図2(b)に示すように、他端側においては、他方のフランジ部26が中間部12aと外筒部24との間に挟み込まれた状態になる。さらに、外筒部24については、一端側においてフランジ部26及びエンドスタッド13の端部に当接し、他端側においてフランジ部26及びポンプケーシング12の端部に当接した状態になる。そのため、ステータ20は、ライナー部22及び外筒部24の双方ともポンプケーシング12のステータ取付部12b内において位置ずれ等を起こさない。
【0039】
図1に示すように、ロータ50は、金属製の軸体であり、1条で多段の偏心した雄ねじ形状とされている。ロータ50は、長手方向のいずれの位置で断面視しても、その断面形状がほぼ真円形となるように形成されている。ロータ50は、上述したステータ20に形成された貫通孔34に挿通され、貫通孔34の内部において自由に偏心回転可能とされている。
【0040】
ロータ50をステータ20のライナー部22に形成された貫通孔34内に挿通すると、ロータ50の外周面52とステータ20の内周面32とが両者の接線にわたって当接した状態になる。また、この状態において、ステータ20の内周面32と、ロータ50の外周面との間には、流体搬送路60が形成される。
【0041】
流体搬送路60は、ステータ20やロータ50の長手方向に向けて螺旋状に延びている。また、流体搬送路60は、ロータ50をステータ20の貫通孔34内において回転させると、ステータ20内を回転しながらステータ20の長手方向に進む。そのため、ロータ50を回転させると、ステータ20の一端側から流体搬送路60内に流体を吸い込むと共に、この流体を流体搬送路60内に閉じこめた状態でステータ20の他端側に向けて移送し、ステータ20の他端側において吐出させることが可能である。すなわち、ロータ50を正方向に回転させると、第2開口14bから吸い込んだ流体を圧送し、第1開口14aから吐出することが可能である。また、ロータ50を逆方向に回転させると、第1開口14aから吸い込んだ流体を第2開口14bから吐出することが可能である。
【0042】
動力伝達機構70は、ポンプケーシング12の外部に設けられたモータなどの動力源(図示せず)から上述したロータ50に対して動力を伝達するために設けられている。動力伝達機構70は、動力接続部72と偏心回転部74とを有する。動力接続部72は、ポンプケーシング12の長手方向の一端側、さらに詳細には上述したエンドスタッド13やステータ取付部12bが設けられたのとは反対側(以下、単に「基端側」とも称す)に設けられた軸収容部12c内に設けられている。また、偏心回転部74は、軸収容部12cとステータ取付部12bとの間に形成された中間部12aに設けられている。
【0043】
動力接続部72は、ドライブシャフト76を有し、これが2つの軸受78a,78bによって自由に回転可能なように支持されている。ドライブシャフト76は、ポンプケーシング12の基端側の閉塞部分から外部に取り出されており、動力源に接続されている。そのため、動力源を作動させることにより、ドライブシャフト76を回転させることが可能である。動力接続部72が設けられた軸収容部12cと中間部12aとの間には、例えばメカニカルシールやグランドパッキンなどからなる軸封装置80が設けられており、これにより中間部12a側から軸収容部12c側に被搬送物たる流体が漏れ出さない構造とされている。
【0044】
偏心回転部74は、上述したドライブシャフト76とロータ50とを動力伝達可能なように接続する部分である。偏心回転部74は、連結軸82と、2つの連結体84,86とを有する。連結軸82は、従来公知のカップリングロッドや、スクリューロッドなどによって構成されいる。連結体84は連結軸82とロータ50とを連結するものであり、連結体86は連結軸82とドライブシャフト76とを連結するものである。連結体84,86は、いずれも従来公知のユニバーサルジョイントなどによって構成されており、ドライブシャフト76を介して伝達されてきた回転動力をロータ50に伝達し、ロータ50を偏心回転させることが可能である。
【0045】
上述したように、本実施形態の一軸偏心ねじポンプ10のステータ20は、一体形成されたライナー部22に対して外筒部24が非接着状態で装着されている。具体的には、外筒構成体26,26の把持部40,40にクランプ38を装着することによって発生する挟持力の影響により、外筒部24に対してライナー部22の径方向内側方向への押圧力が作用する。外筒部24は、この押圧力によってライナー部22の外周に押圧状態で装着されており、ライナー部22の軸方向及び周方向に位置決めされた状態になっている。従って、一軸偏心ねじポンプ10は、外筒構成体36,36及びクランプ38,38を取り外すことによりライナー部22と外筒部24とに容易に分別し、回収することが可能であり、環境問題に対して十分な配慮を払うことが可能となる。
【0046】
また、一軸偏心ねじポンプ10は、ライナー部22の両端部に設けられたフランジ部26の間に存在する外筒装着部28が外筒部24によって覆われ、外筒部24の端部がフランジ部26に対して当接した構造とされており、ライナー部22が軸方向に収縮するのを防止しうる。すなわち、外筒部24が、ライナー部22の軸方向への収縮を防止するための支柱的役割を果たす。これにより、吐出圧の影響などによりステータ20に対して軸方向への圧縮力が作用したとしてもライナー部22の内径を部位によらず略均一に維持することが可能となり、ライナー部22の偏摩耗を回避し、吐出量の安定化を図ることが可能となる。
【0047】
一軸偏心ねじポンプ10は、外筒部24が、周方向に複数の外筒構成体36に分割可能なものであるため、ライナー部22に対する外筒部24の脱着作業を容易に実施可能である。また、上述した外筒部24は、外筒構成体36同士をクランプ38を用いて結合(クランプ結合)させて一体化したものであり、把持部40,40に対して挟持片46及びピン48を着脱するだけで外筒部24を着脱することが可能である。
【0048】
なお、本実施形態では、外筒部24を2つの外筒構成体36によって構成した例を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、さらに多数の外筒構成体36によって構成されるものであってもよい。また、本実施形態では、外筒構成体36,36を周方向2カ所においてクランプ38によって結合した例を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば外筒構成体36,36の周方向一端側を蝶番などによって連結し、他端側をクランプ38や他の手法によって連結した構造とすることも可能である。さらに、本実施形態では、挟持片46及びピン48によって構成されたクランプ38を外筒構成体36,36を結合するために用いた例を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、外筒構成体36,36を位置ずれしないように固定可能なものであれば、他のいかなる手法によって外筒構成体36,36を結合することとしてもよい。
【0049】
本実施形態の一軸偏心ねじポンプ10は、ステータ20の一端側にエンドスタッド13が配置されており、ステータ20がステーボルト18によって発生する締結力を用いてエンドスタッド13とともにポンプケーシング12に一体に連結されている。また、ステータ20は、外筒部24がエンドスタッド13及びポンプケーシング12の端部12b,13aに当接した状態となっている。従って、ステータ20を組み付けた状態において、ステーボルト18による締結力がライナー部22よりも外筒部24に優先的に作用することになり、ライナー部22に対して軸方向に大きな圧縮力が作用することや、ライナー部22が圧縮変形することを防止できる。またこれにより、ライナー部22の偏摩耗を防止し、吐出量を安定化することが可能となる。
【0050】
本実施形態の一軸偏心ねじポンプ10は、ポンプケーシング12の端部12b及びエンドスタッド13の端部13aに、フランジ部26を嵌込可能な嵌込部12c,13bが設けられており、これらに嵌め込まれたライナー部22のフランジ部26が、外筒部24と、エンドスタッド13及びポンプケーシング12との間に挟み込まれている。これにより、ライナー部22の軸方向への位置ずれを確実に防止することが可能であり、一軸偏心ねじポンプ10の稼働状態をより一層安定化させることが可能である。
【0051】
上述したように、ライナー部22の外筒装着部28は、外観形状が多角形状(本実施形態では略十角形)とされている。さらに、外筒構成体36,36は、ともに外筒装着部28に沿う形状に屈曲しており、クランプ38によって把持部40を把持し、結合することにより外筒装着部28と略同一形状(本実施形態では略正十角形)で筒状の外筒部24が形成される。これにより、ライナー部22に対して周方向への荷重が作用してもライナー部22のみが周方向に位置ずれを起こすのを防止し、一軸偏心ねじポンプ10の稼働状態の安定化を図ることが可能となる。
【0052】
なお、本実施形態では、ライナー部22が外筒部24に対して位置ずれを起こすのを防止すべく、外筒装着部28及び外筒部24をそれぞれ多角形状に形成した例を例示したが、周方向への位置ずれを防止可能な他の構成を採用した場合や、周方向への位置ずれまで考慮しなくても良い場合などは、上述したものとは相違する構成としてもよい。具体的には、外筒装着部28及び外筒部24は、それぞれ略同一の断面形状を有するものであったが、例えば外筒装着部28を略正十角形とし外筒部24を略正十二角形とするなど、ライナー部22の回り止めとして機能する範疇において両者の断面形状が相違していてもよい。
【0053】
また、外筒部24の内周側に突起90を設けた構成とし、外筒装着部28に外筒部24を装着することにより前述した突起90がライナー部22の外周面に押圧された状態で接触するような構成としてもよい。かかる構成によれば、ライナー部22の外周面に突起90が引っかかり、ライナー部22の周方向及び軸方向への位置ずれを防止することができる。このように突起90を設ける構成は、本実施形態のように外筒装着部28や外筒部24を多角形状とした場合だけでなく、ライナー部22の外観形状が円筒状である場合のようにライナー部22の位置ズレが懸念される場合にも有効である。
【符号の説明】
【0054】
10 一軸偏心ねじポンプ
12 ポンプケーシング
12b 端部
12c 嵌込部
13 エンドスタッド
13b 嵌込部
15 ステータ取付部
20 ステータ
22 ライナー部
24 外筒部
26 フランジ部(鍔状部)
28 外筒装着部
36 外筒構成体
50 ロータ
90 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄ねじ型のロータと、
前記ロータを挿通可能なステータとを有し、
前記ステータが、内周面が雌ねじ型となるように一体形成された筒状のライナー部と、
前記ライナー部の外周に対して押圧状態で装着された外筒部とを有し、
前記ライナー部の両端部に、径方向外側に向けて突出した鍔状部が設けられており、
前記鍔状部の間に前記外筒部が配され、前記鍔状部に対して前記外筒部の端部が当接していることを特徴とする一軸偏心ねじポンプ。
【請求項2】
雄ねじ型のロータと、
前記ロータを挿通可能なステータとを有し、
前記ステータが、内周面が雌ねじ型となるように一体形成された筒状のライナー部と、
前記ライナー部に対して非接着状態で装着され、前記ライナー部の外周を覆う外筒部とを有し、
前記ライナー部の両端部に、径方向外側に向けて突出した鍔状部が設けられており、
前記鍔状部の間に前記外筒部が配され、前記鍔状部に対して前記外筒部の端部が当接していることを特徴とする一軸偏心ねじポンプ。
【請求項3】
前記外筒部が、周方向に複数の外筒構成体に分割可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の一軸偏心ねじポンプ。
【請求項4】
前記ステータの一端側にエンドスタッドが配置され、
前記ステータの他端側を接続するポンプケーシングの端部と前記エンドスタッドとをねじ杆により連結して締め付けることにより、前記ステータが前記エンドスタッドとともにポンプケーシングに一体に連結されており、
前記エンドスタッド及びポンプケーシングの端部に、前記外筒部の端部が当接していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の一軸偏心ねじポンプ。
【請求項5】
前記エンドスタッド及び/又は前記ポンプケーシングの端部に、前記鍔状部を嵌込可能な嵌込部が設けられており、
前記嵌込部において、前記エンドスタッド及び/又は前記ポンプケーシングと前記外筒部との間に前記鍔状部が挟み込まれていることを特徴とする請求項4に記載の一軸偏心ねじポンプ。
【請求項6】
前記ライナー部の外形が多角形状であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の一軸偏心ねじポンプ。
【請求項7】
前記外筒部が前記ライナー部の外形に沿う形状に屈曲していることを特徴とする請求項6に記載の一軸偏心ねじポンプ。
【請求項8】
前記外筒部の内周側に突起が設けられており、
前記突起が前記ライナー部の外周面に押圧された状態で接触していることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の一軸偏心ねじポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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