説明

万能ウイルス様粒子(VLP)インフルエンザワクチン

本明細書に記載するのは、切断、再設計、または改変された1つまたは複数のHA分子をその表面に提示するインフルエンザウイルス様粒子(VLP)である。また、こうしたVLPの製造方法および使用方法も記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その開示内容を本明細書に援用する、どちらも2010年2月18日に出願された米国仮特許出願第61/305,768号明細書および米国仮特許出願第61/305,759号明細書の優先権を主張する。
【0002】
連邦政府の委託研究に関する記載
該当なし。
【0003】
ウイルス様粒子(VLP)を含むインフルエンザ抗原タンパク質について記載し、こうしたVLPの産生方法および使用方法についても記載する。
【背景技術】
【0004】
インフルエンザウイルス(A型、B型およびC型)は、ヒトおよび他の哺乳類種ならびに鳥種の呼吸器感染症の原因因子である。このウイルスの生活環に特有の生物学的および疫学的特徴により、新たなウイルス株の急速な抗原進化、および持続的出現が引き起こされ、特にA型ウイルスにおいてそうである。この抗原変異体の持続的出現により、季節性インフルエンザのエピデミック、および不規則な間隔での世界的なパンデミックが起こる。例年のインフルエンザのエピデミックは毎年、米国だけで約36,000人、世界全体で250,000人の死亡と関連しており、同時に莫大な健康および経済上の負担の原因となっている。パンデミックインフルエンザはヒトの健康の重大な脅威となっており、1918年のパンデミックのような世界的な現象は、5,000万人の死亡、および壊滅的な社会経済的影響の原因となった。
【0005】
インフルエンザウイルスは、分節した一本鎖RNAゲノムを有し、オルトミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)に属する。インフルエンザAウイルスは、ビリオン粒子の表面に2つの主要な糖タンパク質、ヘマグルチニン(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)を提示し、これらの2つの分子の抗原性に基づき16種のHAサブタイプ(H1〜H16)および9種のNAサブタイプ(N1〜N9)に分類される。インフルエンザ感染後の主な免疫応答は、表面糖タンパク質HAおよびNAを標的とする。HAに対する抗体は、細胞表面受容体に対するウイルス結合を阻止し、ウイルスの侵入および感染を防止することができる。しかしながら、この応答は次第に無効になり、抗原ドリフト(突然変異の蓄積)または抗原シフト(遺伝子再集合による入れ替わり)に起因する新たな抗原変異体から保護することができない。
【0006】
現在、季節性またはパンデミックインフルエンザ疾患を制御する最も効果的な介入の1つは、予防的ワクチン接種である。この実施には、最も新しいヒトウイルス分離株で製剤化されたワクチンを感受性の被検体に毎年投与する必要がある。こうしたワクチンは通常、各々孵化鶏卵または培養細胞で増殖させた個々のウイルスから調製され、その後ワクチン接種率を高める最終的なワクチン製剤にブレンドされる。インフルエンザウイルスの抗原変異が頻繁に起こるため、ワクチンは、ワクチンの防御効果を維持するため定期的に再製剤化して新たな抗原変異体を取り込む必要がある。
【0007】
したがってワクチンの有効性は、ワクチンとヒトに流行するウイルス株との抗原類似性の程度による。さらに、高齢者などワクチン接種した人の一定の割合は、最新のワクチンで防御免疫を誘導できない。
【0008】
ファージディスプレイ抗体ライブラリーを用いて行われた最近の研究から、広範囲のインフルエンザウイルスサブタイプの感染を阻止できる広い中和抗体が明らかになった(Jianhua Sui et.al.(2009)Nat.Structural & Mol.Biol.16:265−273)。広範囲のウイルスを中和するこうした抗体の能力は、ウイルス感染またはワクチン接種により誘導される主な中和メカニズムである受容体結合の阻止ではなく、HA分子のステム領域に存在する高度に保存されたサブドミナントエピトープと反応し、膜融合を阻害することにより感染を阻止することによって生じる。これらの高度に保存されたサブドミナントエピトープを提示するワクチンが設計されれば、広範囲のインフルエンザサブタイプから保護することができる広い中和免疫応答が惹起される。
【0009】
最新のワクチンの製剤化に必要なウイルス成分を産生するには、選択したウイルスを孵化鶏卵または培養細胞に感染させることにより増殖する。このプロセスは、細胞表面に受容体を含むシアル酸にHA分子を介して結合するウイルスの能力、侵入、ウイルス複製、および卵または培養細胞の液体からのウイルス子孫の単離に依存する。ウイルスHAの切断、再操作または改変を行えば、受容体結合を阻止することになり、ウイルス複製およびこうしたワクチンの製造を妨げることと考えられる。
【0010】
インフルエンザVLPは、2種、3種または4種のウイルス遺伝子(M1、M2、HAおよびNA)の同時発現により産生されるものであり、M1、M2または(類似の基質タンパク質)HAおよびNAが構造の主要かつ本質的な成分である。たとえば、米国特許出願公開第2008/0031895号明細書および同第2009/0022762号明細書を参照されたい。これらの遺伝子をコードするDNA配列は、細胞に同時にまたは連続的にトランスフェクトされ、転写され、そのそれぞれのタンパク質に翻訳されて、それらがウイルス様粒子に自己集合する。ウイルスとは異なり、受容体結合およびウイルス侵入に使用されるHAの領域を修飾しても、細胞からのVLPの産生、アセンブリーまたは放出は阻害されない。すなわち、VLPを産生すれば、分子の遺伝的に多様なイムノドミナント領域を含むHAの大部分の欠失および改変が可能になるのに対し、ウイルスの複製方法はこれらの修飾を許容するものではない。また、同様の修飾は、やはりVLPワクチンの表面に提示されるNA分子に導入することもできる。
【0011】
しかしながら、インフルエンザワクチン組成物、ならびにこうした組成物を製造および使用する方法が依然として求められている。
【発明の概要】
【0012】
本明細書に記載するのは、少なくとも1つの切断型および/またはハイブリッドインフルエンザ抗原タンパク質(たとえば、HAまたはNA)を含むウイルス様粒子(VLP)である。また、こうしたVLPを含む組成物のほか、こうしたVLPの製造方法および使用方法についても記載する。本明細書に記載のVLPはウイルス遺伝子材料を有しておらず、したがって複製したり、または感染を引き起こしたりすることができない。一方、VLPは野生型ビリオンと形態学的類似性、生化学的類似性および抗原類似性があるため、高い免疫抗原性を示し、有効な防御免疫応答を惹起することができる。VLPは、ビリオンを不活化したワクチンと異なり、感染性ではなく化学的処理の必要がないため、ネイティブなコンフォメーションを維持している。さらに、本発明は、現在のインフルエンザウイルスおよび進化するインフルエンザウイルスから広く保護することによりインフルエンザワクチンを毎シーズン製剤化することに伴う問題も解決する。
【0013】
このため、一態様では、本明細書に開示されるのは、本明細書において提供されるのはウイルス様粒子(VLP)であることを含み、少なくとも1つの基質タンパク質(たとえば、M1などのインフルエンザ基質タンパク質、トゴ(thogoto)基質タンパク質およびRSV基質タンパク質);および修飾インフルエンザポリペプチド(たとえば、HAまたはNAなどの糖タンパク質)を含み、その修飾がインフルエンザ(たとえば、HA)ポリペプチドの膜貫通および細胞質尾部ドメインの外側に1つまたは複数のアミノ酸残基の欠失を含むウイルス様粒子(VLP)である。ある種の実施形態では、欠失は、少なくとも150の連続したアミノ酸残基の欠失を含む。他の実施形態では、欠失は、連続していない2つ以上の欠失を含む。なおさらなる実施形態では、インフルエンザポリペプチド(たとえば、HA)は、1つまたは複数のアミノ酸突然変異(置換および/または付加)、たとえば、修飾インフルエンザポリペプチド(たとえば、HA)に、少なくとも1つのタンパク質分解開裂部位および/または少なくとも1つのリンカーが挿入されている実施形態を含む。リンカーは既知のリンカー配列でもよいし、あるいは本明細書に記載の分子を使用して新規に作製してもよい。本明細書に開示されたVLPのいずれかでは、VLPは多価であってもよい、すなわち、本明細書に記載するような野生型および/または修飾インフルエンザポリペプチドの任意の組み合わせを含め、複数のインフルエンザ抗原タンパク質を含んでもよい。さらに、本明細書に記載のVLPのいずれかでは、修飾インフルエンザ(たとえば、HAまたはNA)ポリペプチドの膜貫通および/または細胞質ドメインは、修飾インフルエンザポリペプチドと異なる株またはサブタイプ由来の膜貫通および/または細胞質ドメインで置換されている。さらに、本明細書に記載のVLPのいずれかは、別のインフルエンザタンパク質、たとえば1つまたは複数の別の野生型基質タンパク質(M1および/またはM2)、1つまたは複数の別の改変(変異および/またはハイブリッド)基質タンパク質(M1および/またはM2)、1つまたは複数の野生型抗原性糖タンパク質(HAおよび/またはNA)、1つまたは複数のハイブリッド抗原性糖タンパク質(HAおよび/またはNA)、1つまたは複数の修飾抗原性糖タンパク質(HAおよび/またはNA)、1つまたは複数のハイブリッドおよび修飾抗原ポリペプチド(HAおよび/またはNA)、1つまたは複数のヌクレオプロテイン(NP)、1つまたは複数のPB1タンパク質、1つまたは複数のPB2タンパク質、1つまたは複数のPAタンパク質、およびこれらの組み合わせをさらに含んでいてもよい。ある種の実施形態では、VLPは、2つ以上の抗原性糖タンパク質(修飾または野生型の任意の組み合わせ)がVLPの表面に発現する(たとえば、その結果、免疫応答を引き起こす)という点で多価である。本明細書に記載のVLPのいずれかは、VLPのアセンブリーおよび放出を可能にする条件下で真核細胞(たとえば、酵母細胞、昆虫細胞、両生類細胞、トリ細胞、植物細胞または哺乳動物細胞)に発現させることができる。
【0014】
別の態様では、本明細書に記載するのは、上記のようなVLPのいずれかを含む宿主細胞である。ある種の実施形態では、宿主細胞は、VLPのポリペプチドをコードする1つまたは複数のベクターからの、本明細書に記載するようなVLPのアセンブリーおよび放出を可能にする。ある種の実施形態では、真核細胞は、酵母細胞、昆虫細胞、両生類細胞、トリ細胞、植物細胞または哺乳動物細胞からなる群から選択される。
【0015】
なお別の態様では、本明細書で提供するのは、本明細書に記載のVLPのいずれかを産生する方法であって、少なくとも1つの基質タンパク質および少なくとも1つの修飾インフルエンザ(たとえば、HA)ポリペプチドをコードする1つまたは複数のベクターを好適な宿主細胞にトランスフェクトするステップ、およびVLPの形成を可能にする条件下でタンパク質の組み合わせを発現させるステップを含む方法である。VLPのいずれかでは、基質タンパク質は、インフルエンザM1タンパク質でも、トゴ(thogoto)基質タンパク質でも、RSV基質タンパク質でもよい。他の実施形態では、別のベクターまたは同じベクターが別のタンパク質、たとえば別のインフルエンザタンパク質(たとえば、NAタンパク質等)をコードしていてもよい。ある種の実施形態では、少なくとも1つのベクターが、インフルエンザM2タンパク質をコードする配列を含む。発現ベクターはプラスミドでも、ウイルスベクターでも、バキュロウイルスベクターでも、または非ウイルスベクターでもよい。ベクターは、VLPのタンパク質の1つをコードしていても、2つ以上をコードしていても、または全部をコードしていてもよい。本明細書に記載のVLPの産生方法のいずれかでは、ベクターの1つまたは複数を宿主細胞に安定にトランスフェクトしてもよい。ある種の実施形態では、少なくとも1つの基質タンパク質および修飾インフルエンザHAポリペプチドが別々のベクターにコードされ、修飾インフルエンザHAポリペプチドタンパク質をコードするベクターをトランスフェクトする前に少なくとも1つの基質タンパク質をコードするベクターを細胞に安定にトランスフェクトする。ベクターがコードするタンパク質は、全長野生型、全長ミュータント、切断型野生型、切断型ミュータント、ならびに/または、全長および/もしくは切断型野生型タンパク質または変異タンパク質を含むハイブリッドタンパク質であってもよい。細胞は、真核細胞、たとえば、酵母細胞でも、昆虫細胞でも、両生類細胞でも、トリ細胞でも、植物細胞でも、または哺乳動物細胞でもよい。ある種の実施形態では、少なくとも1つのMタンパク質は、インフルエンザ基質タンパク質を含む。
【0016】
なおさらなる態様では、本明細書に記載するのは、本明細書に記載するような少なくとも1つのVLPを含む免疫原性組成物である。ある種の実施形態では、免疫原性組成物は、アジュバントをさらに含む。本明細書に記載の免疫原性組成物のいずれかは、異なる修飾インフルエンザ(たとえば、HA)ポリペプチドを含む少なくとも2つのVLPを含んでもよい。ある種の実施形態では、この組成物は、各VLPが異なる修飾HAタンパク質を含む少なくとも2つのVLP、または2つ以上の改変HAまたはNA糖タンパク質をその表面に提示する単一のVLP(たとえば、。多価のVLP)を含む(comprises and contains)。なおさらなる実施形態では、免疫原性組成物は、アジュバントをさらに含む。
【0017】
なおさらなる態様では、本明細書で提供するのは、被検体内でインフルエンザに対する免疫応答を引き起こす方法であって、被検体に本明細書に記載するような有効量のVLPおよび/または免疫原性組成物を被検体(たとえば、ヒト)に投与することを含む方法である。ある種の実施形態では、組成物を粘膜投与、皮内投与、皮下投与、筋肉内投与、または経口投与する。ある種の実施形態では、この方法は、インフルエンザの複数の株またはサブタイプに対する免疫応答を引き起こし、それにより被検体を様々なインフルエンザウイルスによるインフルエンザ感染から、および/または長期間(2つ以上のインフルエンザ(flu)シーズン)にわたり保護する「万能」ワクチンを与える。
【0018】
本方法のいずれかは、複数回の投与(たとえば、反復投与スケジュール)を含んでもよい。
【0019】
別の態様では、本明細書に記載するようなインフルエンザVLPを産生するパッケージング細胞株を提供する。この細胞株に少なくとも2つのMタンパク質をコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドを安定にトランスフェクトして、安定にトランスフェクトされていない1つまたは複数のインフルエンザタンパク質をコードする配列をこの細胞に導入し、発現させると、細胞がVLPを産生する。ある種の実施形態では、M1および/またはM2をコードする配列をパッケージング細胞株に安定に組み込み、VLPの表面に発現する修飾HAタンパク質をコードする配列を細胞に導入してVLPを形成する。他の実施形態では、修飾HAタンパク質の1つまたは複数をコードする配列を細胞に安定に組み込み、パッケージング細胞株を形成し、少なくとも2つのMタンパク質をコードする配列を導入するとVLPが形成される。パッケージング細胞は、昆虫細胞でも、植物細胞でも、哺乳動物細胞でも、細菌細胞でも、または真菌細胞でもよい。ある種の実施形態では、パッケージング細胞は哺乳動物(たとえば、ヒト)細胞株である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、HA1配列の一部を除去し、シグナルペプチドとHA1分子の残りの部分との間に挿入を導入した改変HA分子構造の模式図を示す。模式図および配列に記載されているようにジスルフィドの結合形成を防止するため、突然変異を導入する。分子のHA2部分は、膜貫通および細胞質ドメインを含むその全体が維持される。このコンストラクトは、「1TA」(配列番号1および2)とする。
【図2】図2は、シグナルペプチドの除去後のNH2末端配列が、保存されたエピトープの一部を形成する配列、および鎖間のジスルフィド結合を形成するためのC20残基を含む第2の改変HA分子の模式図を示す。これは、切断されたHA1の部分(R241〜L333)、および全HA2フラグメントと遺伝的に連鎖している。このコンストラクトは、「2TA」(配列番号3および4)とする。
【図3】図3は、改変HAの模式的構造を示す。この場合、シグナルペプチドの除去後のΝH2末端部分(D17〜P65)が、設計された12アミノ酸のリンカー(DIGPGKVGYGPG、配列番号11)を介して切断されたHA1の領域(M281〜R346)に連結され、この全フラグメントが、V412からD412への、およびL419からG419への突然変異を導入してタンパク質凝集を防止した完全なHA2(G347〜I568)に結合している。このコンストラクトは、「3TA」(配列番号5および6)とする。
【図4】図4は、HA2フラグメントの、シグナルペプチドの除去後の全アミノ酸配列を包含する切断型HA分子(細胞外、膜貫通および細胞質ドメインを含むG347〜I568の模式図を示す。このコンストラクトは、「4TA」(配列番号7および8)とする。
【図5A】図5Aは、HA1の配列内に2つ(1つはP65位とL66位との間、およびもう1つはI280位とM281位との間)のタンパク質分解開裂部位(各々PQRERRRKR、配列番号12である10アミノ酸のインサート)を導入して再操作したHA分子の模式図である。このコンストラクトは、「5TA」(配列番号9および10)とする。
【図5B】図5Bは、HA1の配列内に2つ(1つはP65位とL66位との間、およびもう1つはI280位とM281位との間)のタンパク質分解開裂部位(各々PQRERRRKR、配列番号12である10アミノ酸のインサート)を導入して再操作したHA分子の模式図である。発現して修飾HAがそのネイティブなコンフォメーションにフォールディングした後、最もドミナントな高度に可変性の抗原部位を提示するこの構造の球状頭部をプロテアーゼ処理により除去して、広い防御免疫応答を惹起する高度に保存されたサブドミナントエピトープを露出することができる。この構造は、C20とC483との間の鎖内ジスルフィド結合により維持される。このコンストラクトは、「5TA」(配列番号9および10)とする。
【図6】図6のパネルIは、VLP産生のため、図示した調節エレメントの下、決められた位置にインフルエンザ遺伝子を有する、哺乳動物細胞の例示的なDNAベクターの模式図である。図6のパネルIIは、VLP産生のため、図示した調節エレメントの下、決められた位置にインフルエンザ遺伝子を有する、バキュロウイルス−昆虫細胞発現系の例示的なDNAベクターの模式図である。
【図7A】図7Aは、VLPの持続的産生のため、哺乳動物細胞へのベクターのトランスフェクション、タンパク質の発現、および安定にトランスフェクトされた細胞株の選択に利用した戦略の例を図示する。
【図7B】図7Bは、VLPの持続的産生のため、哺乳動物細胞へのベクターのトランスフェクション、タンパク質の発現、および安定にトランスフェクトされた細胞株の選択に利用した戦略の例を図示する。
【図8】図8Aは、一次抗体として抗M2抗体、および二次抗体としてフルオレセインFITC標識抗マウスを用いた、M1/M2が安定にトランスフェクトされた哺乳動物細胞の蛍光活性化細胞分類法(FACS)の結果を示す。図8Aは、未染色の対照である。図8Bは、一次抗体として抗M2抗体、および二次抗体としてフルオレセインFITC標識抗マウスを用いた、M1/M2が安定にトランスフェクトされた哺乳動物細胞の蛍光活性化細胞分類法(FACS)の結果を示す。図8Bはアイソタイプコントロールを示す。図8Cは、一次抗体として抗M2抗体、および二次抗体としてフルオレセインFITC標識抗マウスを用いた、M1/M2が安定にトランスフェクトされた哺乳動物細胞の蛍光活性化細胞分類法(FACS)の結果を示す。図8Cは、M2の表面発現に対して染色したアイソタイプコントロールを示す。
【図9A】図9Aは、M1/M2が安定にトランスフェクトされた哺乳動物細胞の細胞ライセートのウエスタンブロットを示す。図9Aは、MDCK細胞のタンパク質レベルを示す(レーン1は通常のMDCK細胞の結果を示し、レーン2はM1/M2タンパク質を構成的に発現するMDCK細胞の結果を示す。
【図9B】図9Bは、M1/M2が安定にトランスフェクトされた哺乳動物細胞の細胞ライセートのウエスタンブロットを示す。図9BはCHO細胞の結果を示す。レーン1は陰性対照(CHO細胞ライセート)を示し、レーン2はインフルエンザウイルスPR8を感染させたCHO細胞を示し、レーン3はM1/M2を構成的に発現するCHO細胞(クローン1)を示し、レーン4はM1/M2を構成的に発現するCHO細胞(クローン2)を示す。
【図10】図10は、M1/M2およびNA/HA(改変)をトランスフェクトした哺乳動物細胞の細胞ライセートのウエスタンブロットを示す。図10はCHO細胞ライセートおよび濃縮/精製された培養上清のタンパク質レベルを示す。レーン1はインフルエンザウイルス対照(HA5/NA1の再集合PR8)、レーン2は陰性対照としてトランスフェクトされなかったCHO細胞、レーン3および5はM1/M2をNA/HA改変5TAと一緒にトランスフェクトしたCHO細胞ライセート(レーン3)、およびNA/HA改変3TA(レーン5)と一緒にトランスフェクトしたCHO細胞ライセートである。レーン4および6はそれぞれ、M1/M2をNA/改変HA−5TAと一緒にトランスフェクトしたCHO細胞の濃縮/精製された培養上清、およびNA/改変HA−3TAと一緒にトランスフェクトしたCHO細胞の濃縮/精製された培養上清を示す。
【図11】図11は、CHO細胞で産生され、M1/M2−NA/HAトランスフェクト細胞の培養上清から精製されたVLPの電子顕微鏡写真像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施には、他に記載がない限り、当該技術分野の技術の範囲内にある化学、生化学、分子生物学、免疫学および薬理学の従来の方法を利用する。こうした技術は、文献に詳細に説明されている。たとえば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition(Easton,Pennsylvania:Mack Publishing Company,1990);Methods In Enzymology(S.Colowick and N.Kaplan,eds.,Academic Press,Inc.);およびHandbook of Experimental Immunology,Vols.I−IV(D.M.Weir and C.C.Blackwell,eds.,1986,Blackwell Scientific Publications);Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2nd Edition,1989);Short Protocols in Molecular Biology,4th ed.(Ausubel et al.eds.,1999,John Wiley & Sons);Molecular Biology Techniques:An Intensive Laboratory Course,(Ream et al.,eds.,1998,Academic Press);PCR(Introduction to Biotechniques Series),2nd ed.(Newton & Graham eds.,1997,Springer Verlag);Fundamental Virology,Second Edition(Fields & Knipe eds.,1991,Raven Press,New York)を参照されたい。
【0022】
本明細書に引用する刊行物、特許および特許出願についてはすべて、その全体を本明細書に援用する。
【0023】
本明細書および添付の特許請求の範囲に使用する場合、単数形「a」、「an」および「the」は、内容により明らかに他の意味に解すべき場合を除き、複数のものを含む。したがって、たとえば、「a VLP」という場合は、2つ以上のそうしたVLPの混合物を含む。
【0024】
定義
本明細書で使用する場合、「サブウイルス粒子」「ウイルス様粒子」または「VLP」という用語は、複製しないウイルス殻をいう。VLPは一般に、以下に限定されるものではないが、カプシドタンパク質、コートタンパク質、殻タンパク質、表面タンパク質および/もしくはエンベロープタンパク質と呼ばれるタンパク質などの1つまたは複数のウイルスタンパク質、またはこれらのタンパク質に由来する粒子形成ポリペプチドからなる。VLPは、適切な発現系でタンパク質を組換え発現させると、自然に形成され得る。特定のVLPを産生する方法は、当該技術分野において公知であり、以下でより詳細に考察する。ウイルスタンパク質の組換え発現後のVLPの存在については、電子顕微鏡、生物物理学的特徴付けおよび同種のものなどにより当該技術分野において公知の従来の技術を用いて検出することができる。たとえば、Baker et al.,Biophys.J.(1991)60:1445−1456;Hagensee et al.,J.Virol.(1994)68:4503−4505を参照されたい。たとえば、VLPは、密度勾配遠心分離により単離し、および/または特徴的な密度バンディング(たとえば、実施例)により特定することができる。あるいは、対象のVLP調製物のガラス化した水性サンプルを用いて低温電子顕微鏡観察を行い、適切な撮影条件下で画像を記録してもよい。VLP精製の別の方法として、親和性法、イオン交換法、サイズ排除法および逆相法などのクロマトグラフィー技術があるが、これに限定されるものではない。
【0025】
本明細書に使用する場合、「ハイブリッド」または「キメラ」という用語は、分子(たとえば、タンパク質またはVLP)が、少なくとも2つの異なるタンパク質の各部分を含むことをいう。たとえば、ハイブリッドインフルエンザHAタンパク質とは、インフルエンザHAタンパク質の少なくとも一部(たとえば1つまたは複数の抗原決定基を含む一部)、および異種のタンパク質(たとえば、異なるインフルエンザタンパク質または異なるウイルスタンパク質、たとえばRSVまたはVSVタンパク質の細胞質および/または膜貫通ドメイン)の一部を含むタンパク質をいう。本明細書に記載するようなハイブリッド分子は、別の異種のポリペプチド(全長またはその一部)に融合した全長タンパク質、および異種のポリペプチド(全長またはその一部)に融合したタンパク質の一部を含んでもよいことが明らかであろう。また、ハイブリッドは、野生型配列、または異種のドメインの任意の1つ、一部または全部の変異配列を含んでもよいことも明らかであろう。
【0026】
特定のウイルスタンパク質に由来する「粒子形成ポリペプチド」とは、VLPの形成に有利に働く条件下でVLPを形成する能力を有する、全長またはほぼ全長のウイルスタンパク質、およびそのフラグメント、または内部欠失を持つウイルスタンパク質を意味する。したがって、このポリペプチドは、当該分子の全長配列、フラグメント、切断された部分配列のほか、アナログおよび前駆体形態を含んでもよい。このためこの用語は、ポリペプチドがVLPを形成する能力を保持する限り、配列に対する欠失、付加および置換を意図している。よって、この用語は、ウイルス分離株の間ではコートタンパク質の変異が起こることが多いため、特定のポリペプチドの自然変異を含む。また、この用語は、当該タンパク質がVLPを形成する能力を保持する限り、そのタンパク質において自然に発生しない欠失、付加および置換も含む。好ましい置換は、性質上保存的なものである、すなわち、側鎖に関連しているアミノ酸の群内で起こる置換である。具体的には、アミノ酸は一般に4つの群:(1)酸性−アスパルテートおよびグルタメート;(2)塩基性−リジン、アルギニン、ヒスチジン;(3)非極性−アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン;および(4)非荷電極性−グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン トレオニン、チロシンに分けられる。フェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシンを芳香族アミノ酸に分類することもある。
【0027】
「抗原」とは、宿主の免疫系を刺激して液性および/または細胞性の抗原特異的応答を生じさせる1つまたは複数のエピトープ(線状、立体構造またはその両方)を含む分子をいう。この用語は、「免疫原」という用語と同義で使われる。通常、B細胞エピトープは、少なくとも約5アミノ酸を含むものであるが、3〜4という少ないアミノ酸であってもよい。CTLエピトープなどのT細胞エピトープは少なくとも約7〜9アミノ酸を、ヘルパーT細胞エピトープは少なくとも約12〜20アミノ酸を含む。通常、エピトープは、9、10、12または15アミノ酸など約7〜15アミノ酸を含む。この用語は、タンパク質が本明細書で定義した免疫学的応答を惹起する能力を維持する限り、天然配列と比較して欠失、付加および置換(一般に性質上保存的)などの修飾を含むポリペプチドを含む。これらの修飾は、部位特異的変異誘発によるなど人為的なものであってもよいし、または抗原を産生する宿主の突然変異によるなど偶発的なものであってもよい。
【0028】
抗原または組成物に対する「免疫学的応答」とは、被検体において目的の組成物中に存在する抗原に対して液性および/または細胞性免疫応答を生じさせることをいう。本開示においては、「液性免疫応答」とは、抗体分子が関与する免疫応答をいい、「細胞性免疫応答」とは、Tリンパ球および/または他の白血球が関与するものをいう。細胞性免疫の1つの重要な側面として、細胞溶解性T細胞(「CTL」)による抗原特異的応答が挙げられる。CTLは、主要組織適合性複合体(MHC)がコードし、細胞表面に発現するタンパク質と共に提示されるペプチド抗原に対して特異性を有する。CTLは、細胞内の微生物の破壊、またはそうした微生物に感染した細胞の溶解を誘導および促進するのを助ける。細胞性免疫のもう1つの側面として、ヘルパーT細胞抗原特異的応答が挙げられる。ヘルパーT細胞は、表面にMHC分子と共にペプチド抗原を提示する細胞に対する非特異的エフェクター細胞の機能を刺激し、その活性を亢進するのを助ける働きをする。また、「細胞性免疫応答」は、サイトカイン、ケモカイン、ならびにCD4+およびCD8+T細胞に由来するものなど活性化T細胞および/または他の白血球により産生される他のそうした分子の産生もいう。このため、免疫学的応答は、以下の作用:B細胞による抗体の産生;および/または目的の組成物またはワクチンに存在する抗原に特異的なサプレッサーT細胞および/またはγΔT細胞の活性化の1つまたは複数を含み得る。これらの応答は、感染性を中和し、および/または抗体−補体または抗体依存性細胞傷害(ADCC)を媒介し、免疫された宿主を保護する働きをし得る。こうした応答は、当該技術分野において周知の標準的なイムノアッセイおよび中和アッセイを用いて判定することができる。
【0029】
「免疫原性組成物」は、組成物が被検体に投与されると、被検体に目的の抗原分子に対する液性および/または細胞性免疫応答を生じさせる抗原分子を含む組成物である。
【0030】
「実質的に精製された」は一般に、ある物質がその物質が存在するサンプルの過半の割合を有するように物質(化合物、ポリヌクレオチド、タンパク質、ポリペプチド、ポリペプチド組成物)を単離することをいう。典型的には、サンプル中の実質的に精製された構成成分は、サンプルの50%、好ましくは80%〜85%、一層好ましくは90〜95%を構成する。目的のポリヌクレオチドおよびポリペプチドを精製する技術は、当該技術分野において公知であり、たとえば、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーおよび密度による沈降が挙げられる。
【0031】
「コード配列」または選択されたポリペプチド「をコードする」配列とは、適切な調節配列(または「制御エレメント」)の制御下に置くと、インビボでポリペプチドに転写され(DNAの場合)、翻訳される(mRNAの場合)核酸分子をいう。コード配列の境界は、5’(アミノ)末端の開始コドン、および3’(カルボキシ)末端の翻訳終止コドンにより決定される。コード配列は、以下に限定されるものではないが、ウイルス、原核生物または真核生物のmRNA由来のcDNA、ウイルスまたは原核生物DNA由来のゲノムDNA配列、さらに合成DNA配列を含んでもよい。転写終結配列は、コード配列の3’側に位置してもよい。
【0032】
典型的な「制御エレメント」として、転写プロモーター、転写エンハンサーエレメント、転写終結シグナル、ポリアデニル化配列(翻訳終止コドンの3’側に位置する)、翻訳の開始を最適化する配列(コード配列の5’側に位置する)、および翻訳終結配列、ならびに/またはオープンクロマチン構造を制御する配列エレメントがあるが、これに限定されるものではない たとえば、McCaughan et al.(1995)PNAS USA 92:5431−5435;Kochetov et al(1998)FEBS Letts.440:351−355を参照されたい。
【0033】
「核酸」分子は、以下に限定されるものではないが、原核生物の配列、真核生物のmRNA、真核生物のmRNA由来のcDNA、真核生物(たとえば、哺乳動物)DNA由来のゲノムDNA配列、さらに合成DNA配列を含んでもよい。この用語にはさらに、DNAおよびRNAの既知の塩基アナログのいずれかを含む配列も含まれる。
【0034】
「作動可能に連結された」とは、その記載された各要素がその通常の機能を発揮するように構成されている各エレメントの配置をいう。したがって、コード配列に作動可能に連結された個々のプロモーターは、活性化されるとコード配列を発現させることができる。プロモーターは、コード配列の発現を誘導するように機能する限り、コード配列と隣接させる必要はない。このため、たとえば、プロモーター配列とコード配列との間に転写されるが翻訳されない介在配列が存在してもよく、このプロモーター配列がコード配列に「作動可能に連結された」と見なされることに変わりはない。
【0035】
本明細書で使用する場合、核酸分子について記載する「組換え体」とは、その起源または操作によって、(1)ポリヌクレオチドが本来結合するポリヌクレオチドの全部または一部と結合していない、および/または、(2)ポリヌクレオチドが本来連結するポリヌクレオチド以外のポリヌクレオチドに連結しているゲノム由来、cDNA由来、半合成由来または合成由来のポリヌクレオチドを意味する。タンパク質またはポリペプチドについて使用する「組換え体」という用語は、組換えポリヌクレオチドの発現により産生されるポリペプチドを意味する。「組換え宿主細胞」、「宿主細胞」、「細胞」、「細胞株」、「細胞培養物」、および単細胞体として培養された原核微生物または真核細胞株を示す他のこうした用語は同義で使われ、組換えベクターまたは他のトランスファーDNAの被導入体として使用することができる、または使用されてきた細胞をいい、かつ最初にトランスフェクトされた細胞の子孫を含む。単一の親細胞の子孫は、偶発的または人為的突然変異により最初の親と形態またはゲノムもしくは全DNAが必ずしも完全に同一でなくてもよいことが理解されよう。所望のペプチドをコードするヌクレオチド配列が存在するなど適切な特性を特徴とするため、親と十分に類似している親細胞の子孫は、この定義が意図している子孫に含まれ、上記の用語に包含される。
【0036】
アミノ酸配列の「類似性」を判定する技術は、当該技術分野において周知である。一般に、「類似性」は、適切な場所の2つ以上のポリペプチドのアミノ酸とアミノ酸を正確に比較した場合に、アミノ酸が同一であるか、または電荷または疎水性など類似の化学的および/または物理的性質を有することを意味する。その後比較したポリペプチド配列間のいわゆる「類似率」を決定することができる。また、核酸およびアミノ酸配列の同一性を判定する技術は当該技術分野において周知であり、その遺伝子のmRNAのヌクレオチド配列を(通常cDNA中間体を介して)決定すること、およびそれがコードするアミノ酸配列を決定すること、およびこれをもう1つのアミノ酸配列と比較することを含む。一般に、2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の「同一性」とはそれぞれ、ヌクレオチドとヌクレオチドとの正確な一致度またはアミノ酸とアミノ酸との正確な一致度をいう。
【0037】
2つ以上のポリヌクレオチド配列は、その「同一率」を判定することにより比較することができる。同様に2つ以上のアミノ酸配列も、その「同一率」を判定することにより比較することができる。2つの配列の同一率は一般に、核酸配列かペプチド配列かを問わず、整列させた2つの配列間でマッチングしている正確な数を、短いほうの配列の長さで割り、その商に100を掛けたものとして記載される。核酸配列の適切なアライメントは、Smith and Waterman,Advances in Applied Mathematics 2:482−489(1981)の局所的相同性アルゴリズムにより得られる。このアルゴリズムは、Dayhoff,Atlas of Protein Sequences and Structure,M.O.Dayhoff ed.,5 suppl.3:353−358、National Biomedical Research Foundation,Washington,D.C.,USAにより開発され、Gribskov,Nucl.Acids Res.14(6):6745−6763(1986)により標準化されたスコアリングマトリクスを用いてペプチド配列に応用してもよい。配列間の同一率または類似率の計算に好適なプログラムは一般に、当該技術分野において公知である。
【0038】
「ベクター」は、遺伝子配列を標的細胞に移すことができる(たとえば、細菌プラスミドベクター、ウイルスベクター、非ウイルスベクター、粒子状キャリアおよびリポソーム)。典型的には、「ベクターコンストラクト」、「発現ベクター」および「遺伝子導入ベクター」は、宿主細胞に1つまたは複数の目的の配列の発現を誘導することができる任意の核酸コンストラクトを意味する。したがって、この用語は、ウイルスベクターだけでなく、クローニングビヒクルおよび発現ビヒクルを含む。この用語は、「核酸発現ベクター」および「発現カセット」という用語と同義に使用される。
【0039】
「被検体」は、以下に限定されるものではないが、ヒト、および他の霊長類、たとえばチンパンジーおよび他の類人猿ならびにサル種などの非ヒト霊長類;農用動物、たとえばウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギおよびウマ;家庭で飼育される哺乳動物、たとえばイヌおよびネコ;実験動物、たとえばマウス、ラットおよびモルモットなどの齧歯動物;トリ、たとえば家庭で飼育されるトリ、野生のトリおよび猟鳥、たとえばニワトリ、シチメンチョウ、および他の家禽、アヒル、ガチョウおよび同種のものなどの脊椎動物亜門に属する任意の動物を意味する。この用語は、特定の年齢を示すものではない。したがって、成体個体および新生個体の両方を包含することを意図している。上述の系は、上記の脊椎動物種のいずれかに使用することを意図している。これらの脊椎動物の免疫系がどれも同様に働くためである。
【0040】
「薬学的に許容される」または「薬理学的に許容される」は、ある材料が生物学的またはその他の点で望ましいこと、すなわち、製剤または組成物として許容できない生物学的作用を何ら引き起こすことなく、または材料が含まれる組成物の要素のいずれとも有害な相互作用を引き起こすことなく材料を個体に投与することができることを意味する。
【0041】
本明細書で使用する場合、「処置」とは、(i)伝統的なワクチンと同様の感染または再感染の予防、(ii)症状の抑制または消失、および(iii)目的の病原体の実質的または完全な排除のいずれかをいう。処置は予防的(感染の前)に行っても、または治療的(感染後)に行ってもよい。
【0042】
本明細書で使用する場合、「アジュバント」という用語は、製剤中の特定の免疫原(たとえばVLP)と組み合わせて使用して場合、免疫応答を増強するか、あるいは、他の点で変化または修飾する化合物をいう。免疫応答の修飾としては、抗体および細胞性免疫応答のどちらか一方あるいは両方の特異性の強化または拡大が挙げられる。また、免疫応答の修飾は、ある種の抗原特異的免疫応答を低下または抑制することも意味する。
【0043】
本明細書で使用する場合、「有効用量」は一般に、免疫を誘導する、感染症を予防および/または軽減する、または感染症の少なくとも1つの症状を緩和する、および/または別の用量のVLPの有効性を高めるのに十分な本発明のVLPの量をいう。有効用量とは、感染症の発現を遅延させる、または最小限に抑えるのに十分なVLPの量をいう場合がある。また、有効用量は、感染症の処置または管理において治療効果が得られるVLPの量をいうこともある。さらに、有効用量は、感染症の処置または管理において治療効果が得られる、本発明のVLP単独、または他の治療剤と組み合わせた量でもある。また、有効用量は、将来の感染性因子との接触に対して被検体自身の(たとえば、ヒトの)免疫応答を増強するのに十分な量であってもよい。免疫のレベルは、たとえば、プラーク中和アッセイ、補体結合アッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ、またはマイクロ中和アッセイで、たとえば、中和分泌および/または血清抗体の量を測定することによりモニターすることができる。ワクチンの場合、「有効用量」は、疾患を予防する、および/または症状の重症度を緩和する量である。
【0044】
本明細書で使用する場合、「有効量」という用語は、所望の生物学的作用を実現するのに必要または十分なVLPの量をいう。有効量の組成物は、選択した結果を達成する量と考えられ、こうした量は、当業者であれば、通常の実験に基づいて決定することができる。たとえば、感染症を予防、処置および/または軽減する有効量は、本発明のVLPに接触すると免疫系の活性化を引き起こし、その結果抗原特異的な免疫応答を生じさせるのに必要な量であってもよい。また、この用語は、「十分な量」と同義である。
【0045】
本明細書で使用する場合、「多価」という用語は、VLPが複数の種類または株の感染性因子に対して複数の抗原タンパク質を有することをいう。
【0046】
本明細書で使用する場合、「免疫刺激因子」という用語は、身体自体の化学的メッセンジャー(サイトカイン)により免疫応答を増強する化合物をいう。これらの分子は、免疫賦活活性、免疫増強活性およびプロ炎症性活性を持つ様々なサイトカイン、リンホカインおよびケモカイン、たとえばインターフェロン、インターロイキン(たとえば、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−12、IL−13);増殖因子(たとえば、顆粒球−マクロファージ(GM)−コロニー刺激因子(CSF));ならびに他の免疫賦活分子、たとえばマクロファージ炎症性因子、Flt3リガンド、B7.1;B7.2等を含む。免疫刺激因子分子は、本発明のVLPと同じ製剤で投与してもよいし、あるいは別々に投与してもよい。免疫賦活作用を引き起こすには、タンパク質またはタンパク質をコードする発現ベクターのどちらを投与してもよい。
【0047】
本明細書で使用する場合、「防御免疫応答」または「防御応答」という用語は、脊椎動物(たとえば、ヒト)に見られ、感染症の予防もしくは軽減、またはその少なくとも1つの症状の緩和を行う、感染性因子に対する抗体が介在する免疫応答をいう。本発明のVLPは、たとえば、感染性因子を中和する、感染性因子の細胞への進入を阻止する、前記感染性因子の複製を阻止する、および/または宿主細胞を感染および破壊から保護する抗体の産生を刺激するができる。また、この用語は、脊椎動物(たとえば、ヒト)に見られ、インフルエンザ感染の予防もしくは軽減、またはその少なくとも1つの症状の緩和を行う、感染性因子に対するTリンパ球および/または他の白血球が介在する免疫応答をいうこともある。
【0048】
本明細書で使用する場合、「抗原製剤」または「抗原組成物」という用語は、脊椎動物、たとえば哺乳動物に投与すると、免疫応答を誘導する調製物をいう。
【0049】
本明細書で使用する場合、「ワクチン」という用語は、脊椎動物に投与することができる形態であり、かつ免疫を誘導する、感染症を予防および/または軽減する、および/または感染症の少なくとも1つの症状を緩和する、および/または別の用量のVLPの有効性を高めるのに十分な防御免疫応答を誘導する本発明のVLPを含む製剤をいう。典型的には、ワクチンは、本発明の組成物を懸濁または溶解させる通常の食塩水または緩衝水溶液媒体を含む。この形態では、本発明の組成物を、感染症の予防、軽減、またはその他点での処置に使用すると都合がよいことがある。ワクチンは、宿主に導入すると、以下に限定されるものではないが、抗体および/もしくはサイトカインの産生、ならびに/または、細胞傷害性T細胞、抗原提示細胞、ヘルパーT細胞、樹状細胞の活性化、ならびに/または他の細胞応答などの免疫応答を誘導することができる。
【0050】
全体の概要
本明細書に記載するのは、インフルエンザ感染からのヒトの保護、および/またはヒトの処置に使用することができるインフルエンザVLPである。特に、本明細書に記載するのは、ウイルスのイムノドミナント領域および/または超可変領域(たとえば、抗原部分)の一部を形成または構成するアミノ酸残基およびペプチド配列の欠失により様々な異なるインフルエンザ(flu)ウイルスに対して強い免疫学的防御応答を誘導するVLPインフルエンザワクチンである。これにより、本来免疫学的に隠れたエピトープがドミナントになり、高い免疫抗原性を示すようになる。
【0051】
構造修飾HA分子を作製するには、この糖タンパク質をコードするDNA配列を、切断、挿入、突然変異またはこれらの組み合わせにより改変HA分子の合成のためのオープンリーディングフレーム(ORF)を設定して再編成する。上述のように、前述のVLPを含む本明細書に記載のVLPは、ウイルス感染、または別のワクチン組成物または製剤による免疫化により刺激される応答と比較して異なる免疫応答を誘導する。このVPLワクチンにより誘導される広い中和反応は、複数のインフルエンザウイルス株またはサブタイプの異なるサブタイプから保護する。
【0052】
ウイルス様粒子
インフルエンザタンパク質をコードする配列が真核細胞に発現すると、そのタンパク質は、非感染性ウイルス様粒子(VLP)に自己集合することが明らかにされている。Latham & Galarza(2001)J.Virol.75(13):6154−6165;Galarza et al.(2005)Viral.Immunol.18(1):244−51;ならびに米国特許出願公開第2008/0233150号明細書;米国特許出願公開第2008/0031895号明細書および米国特許出願公開第2009/0022762号明細書を参照されたい。
【0053】
本開示は、真核細胞の形質膜のインフルエンザVLPであって、修飾インフルエンザ抗原タンパク質をその表面に持つVLPに関する。このVLPは、単独で、または1つもしくは複数の別のVLPおよび/またはアジュバントと組み合わせて、インフルエンザ感染を防止する免疫応答を刺激する。
【0054】
本明細書に記載のVLP(サブウイルス構造ワクチン(SVSV)ともいう)は典型的には、基質タンパク質M(M1とも呼ばれる)および任意選択的に、M2タンパク質をコードする遺伝子の天然および/または変異核酸配列から作られるウイルスタンパク質からなる。基質タンパク質Mは、起こり得るすべての多価サブウイルス構造ワクチンの組み合わせを形成する一般的な要素である。M1およびM2タンパク質は、どのようなウイルスに由来するものでもよい。ある種の実施形態では、VLPのM1および/またはM2タンパク質は、インフルエンザ基質タンパク質に由来する。他の実施形態では、VLPのM1および/またはM2タンパク質は、RSVまたはトゴ(thogoto)ウイルスに由来する。M1および/またはM2タンパク質は、たとえば本明細書、または米国特許出願公開第2008/0031895号明細書および米国特許出願公開第2009/0022762号明細書に開示されているように修飾(変異)されていてもよい。
【0055】
ワクチンの表面に取り込まれるエンベロープウイルスについては、同一ファミリーに由来するインフルエンザタンパク質を選択しても、または異なるファミリーに由来するインフルエンザタンパク質を選択してもよい。同一ワクチン粒子へのインフルエンザタンパク質の取り込みは、これらのタンパク質をコードする核酸を変化させることにより細胞質尾部および膜貫通アミノ酸配列を共通の糖タンパク質のものに置換することで促進することができる。このアプローチは、可能である多くの多価サブウイルスワクチンの組み合わせの設計を可能にする。
【0056】
1.修飾インフルエンザ抗原ポリペプチド
上述のように、本明細書に記載のVLPは、修飾(たとえば、切断、欠失、ハイブリッド等)インフルエンザ抗原ポリペプチドを含む。
【0057】
ある種の実施形態では、修飾インフルエンザ抗原は、ヘマグルチニン(HA)ポリペプチドである。ヘマグルチニン(HA)分子の主な機能は、ウイルス感染の開始の重要なステップである受容体結合と膜融合活性とである。さらに、HAは、中和抗体が産生されるウイルスの主要表面抗原でもある。前駆体分子(HA0)は、2つのポリペプチド(HA1)および(HA2)に開裂し、単一のジスルフィド結合により共有結合する。HA0の開裂は、ウイルス感染性に必須の本質的なプロセスであり、HA2サブユニットのNH2末端の融合ペプチドが活性化し、HAの融合能を活性化する。
【0058】
HA構造の最も重要な免疫ドミナント抗原部位は分子の頭にあり、主にHA1サブユニットにより形成される。突然変異によるこれらの抗原領域の変化(抗原ドリフト)またはHAの入れ替わり(抗原シフト)により、ウイルスは、宿主の中和抗体から逃れ、新しい細胞の感染を開始する。構造のステム部分には、これらの部位だけでなく、高度に保存されたサブドミナントエピトープも存在する。しかしながら、免疫の階層のため、これらの部位は免疫系により大部分が認識されず、顕著な抗体反応を起こすことができない。それでも、これらの領域を標的とする抗体は、膜融合を阻害し、したがってウイルスの侵入を阻害することにより感染を阻止することができる。
【0059】
このため、本発明に記載するワクチンは、主要なイムノドミナントエピトープを欠損し、分子のステム部分に存在するサブドミナント抗原部位を主に提示する、切断して再設計した改変HA分子をVLPに発現させることに基づく。これらの構造修飾HAは、ウイルス様粒子(VLP)の表面に取り込まれて単一の非感染性保護粒子(SNIPP)インフルエンザワクチンを形成する。
【0060】
ある態様では、修飾(改変)HAポリペプチドは、たとえば、HA1およびHA2サブユニットの代替構造に結合した移行シグナル配列を含む短いNH2末端領域を維持したまま、イムノドミナントエピトープの一部または全部を除去することにより、HA1ドメインの一部を欠損している。欠失(切断)は、任意の長さ、たとえば10〜300塩基対(またはこの間の任意の値、たとえば、10塩基対、15塩基対、20塩基対、25塩基対、50塩基対、75塩基対、100塩基対、125塩基対、150塩基対、175塩基対、200塩基対、225塩基対、250塩基対、275塩基対、300塩基対またはそれ以上の塩基対)であってもよい。さらに、欠失は連続した塩基対であってもよいし、あるいは、HAポリペプチドの様々な領域の塩基対を除去してもよく、たとえばN末端の10以上の塩基対と、分子の中央領域(たとえば、移行シグナル配列のC末端側の10以上の塩基対の領域)の別の塩基対(10〜300またはさらにそれ以上)とを除去する。他の修飾として、以下に限定されるものではないが、リンカーの付加、ポリペプチドの1つまたは複数の残基の突然変異、および同種のものがある。HA分子の特定の修飾はDNAレベルで容易に行うことができ、その後VLPのアセンブリーに必要な遺伝子と共にサブクローニングする。
【0061】
よって、VLP中に得られるインフルエンザ抗原タンパク質(たとえば、HA)は、任意のやり方、たとえば1つまたは複数のアミノ酸の欠失および/または1つのアミノ酸の突然変異により修飾することができる。
【0062】
一実施形態では、HAポリペプチドのN末端に近いアミノ酸を除去することによりインフルエンザHAポリペプチドを修飾する。たとえば、野生型HA配列のUniProt KB Q6DQ33の番号でいうと、残基H24〜G240を除去してもよい。任意選択的に、アミノ酸D17〜Y23および分泌シグナル配列を保持したまま、HA1のNH2末端の他の部分を除去する。保持した短い配列は、C483との鎖間のジスルフィド結合の形成を促進し、分子を安定化する残基C20を維持している。HA1の残りの領域(R241−L333)は、C318とジスルフィド結合を形成し、折れ曲がりを保持する残基C294が組み込まれた一連のβシートを形成する。任意選択的に、C290位の残基をGに変異させて、C294またはC318のどちらかとのジスルフィド結合形成の可能性を阻止する。
【0063】
他の実施形態では、修飾(改変)HAは、ジスルフィド結合を促進する残基(たとえば、野生型HA配列のUniProt KB Q6DQ33の番号でいうと、C20およびC483)を含むHA1のNH2末端(たとえば、野生型HA配列のUniProt KB Q6DQ33の番号でいうと、D17〜P65)を含む。こうした修飾HAポリペプチドについては、HA1の別の領域、たとえば、酵素切断部位、およびC58とのジスルフィド結合の形成を促進する未変化のC290を含む、野生型HA配列のUniProt KB Q6DQ33の番号でいうと、残基241〜346に結合していてもよい。
【0064】
なお他の実施形態では、HA1のNH2末端部分(野生型HA配列のUniProt KB Q6DQ33の番号でいうと、D17〜P65)を含む修飾HAを提供する。任意選択的に、シグナルペプチドの開裂後、このフラグメントを、たとえばペプチドリンカーによりHA1の別の部分(たとえば、野生型HA配列のUniProt KB Q6DQ33の番号でいうと、M281〜R346)に結合してもよい。どのような長さのどのようなペプチドリンカーを使用してもよい。ある種の実施形態では、ペプチドリンカーは、5〜25アミノ酸(その間の任意の数字を含む)、たとえば12アミノ酸のリンカー(DIGPGKVGYGPG、配列番号11)である。このコンストラクトでは、ジスルフィド結合の形成を促進する残基が維持される(たとえば、野生型HA配列のUniProt KB Q6DQ33の番号でいうと、C20−C483、C294−C318およびC58−C290の対合残基)。
【0065】
本明細書に記載の修飾HA1ポリペプチド(フラグメント)のいずれかは、膜貫通ドメインおよび細胞質尾部を含むHA2フラグメント(たとえば、野生型HA配列のUniProt KB Q6DQ33の番号でいうと、残基G347〜I568を含むHA2フラグメント))に作動可能に連結してもよい。実施例1および図を参照されたい。さらに、HA2ポリペプチドの1つまたは複数のアミノ酸に突然変異、たとえば、タンパク質凝集を阻害または予防する残基の突然変異(たとえば、野生型HA配列のUniProt KB Q6DQ33の番号でいうと、V412からD412およびL419からG419)を導入してもよい。たとえば、図3を参照されたい。
【0066】
なおさらなる実施形態では、修飾HAは、分泌シグナルペプチドに結合したHA2の全フラグメントからなる。このコンストラクトは、分泌シグナル配列、HA2細胞外(たとえば、野生型HA配列のUniProt KB Q6DQ33の番号でいうと、347〜520)膜貫通および細胞質(たとえば、野生型HA配列のUniProt KB Q6DQ33の番号でいうと、521〜568)ドメインを含む。他の改変HAの場合と同様に、シグナルペプチドは転写/転位の際に除去され、VLPワクチンに取り込まれるHA2構造には存在しない。HA2サブユニットのカルボキシル末端の膜貫通ドメインおよび細胞質尾部は、M1タンパク質が由来するインフルエンザウイルスの類似の配列、またはM1アナログと最もよく相互作用する配列で置換してもよいことが明らかであろう。たとえば、図4を参照されたい。
【0067】
別の実施形態では、タンパク質の配列内に2つ以上の12merの連続塩基性タンパク質分解開裂部位を挿入することによりHAを修飾する。野生型HA配列のUniProt KB Q6DQ33の番号でいうと、好適な挿入部位の非限定的な例として、P65とL66との間および/またはI280とM281との間が挙げられる。さらに、ネイティブなタンパク質分解開裂部位(KKR〜GGG)の1つまたは複数の残基を変異させて、この位置での開列を防止してもよい。この分子をプロテアーゼ処理すると、HAの球状頭部が除去され、HA2ステムおよび残りのHA1部分により形成される保存されたエピトープが露出される。たとえば、図5Aおよび図5Bを参照されたい。
【0068】
2.ポリペプチドをコードする配列
本明細書に記載するように産生されるVLPは、標準的な組換え技術を用いて調製すると都合がよい。VLP形成タンパク質をコードするポリヌクレオチドを宿主細胞に導入し、細胞にタンパク質を発現させると、VLPにアセンブルする。
【0069】
VLPを形成し、および/または、VLPに取り込まれる分子(修飾抗原(たとえば、HA)ポリペプチドを含む構造および/または抗原ポリペプチド)をコードするポリヌクレオチド配列は、遺伝子を発現する細胞由来のcDNAおよびゲノムライブラリーをスクリーニングするか、または遺伝子を含むことが分かっているベクターからその遺伝子を誘導することなどにより、組換え方法を用いて得ることができる。たとえば、天然または変異細胞産物をコードする配列を含むプラスミドについては、A.T.C.C.などの寄託機関または商業的供給源から取得することができる。目的のヌクレオチド配列を含むプラスミドは、適切な制限酵素で消化することができ、標準的な分子生物学技術を用いてそのヌクレオチド配列を含むDNAフラグメントを遺伝子導入ベクターに挿入すればよい。
【0070】
あるいは、cDNA配列は、cDNAまたはゲノムDNAのフェノール抽出およびPCRなどの標準的な技術を用いて、配列を発現するかまたは配列を含む細胞から取得してもよい。たとえば、DNAの採取および単離に使用される技術について記載したSambrook et al.、上掲を参照されたい。簡単に説明すると、目的の遺伝子を発現する細胞由来のmRNAを逆転写酵素で逆転写すればよい。次いで所望の配列の各側の配列に相補的なオリゴヌクレオチドプライマーを用いて一本鎖cDNAをPCRにより増幅する(米国特許第4,683,202号明細書、同第4,683,195号明細書および同第4,800,159号明細書を参照、さらにPCR Technology:Principles and Applications for DNA Amplification、Erlich(ed.),Stockton Press,1989)も参照)。
【0071】
また、目的のヌクレオチド配列は、DNA合成機(たとえば、ABI,Foster City,Calif.から入手することができるApplied Biosystems Model 392 DNA Synthesizer)を用いてクローニングではなく合成して作製してもよい。ヌクレオチド配列は、所望の発現産物に適切なコドンを用いて設計することができる。標準的な方法により調製された重複オリゴヌクレオチドから完全な配列を構築し、完全なコード配列に構築する。たとえば、Edge(1981)Nature 292:756;Nambair et al.(1984)Science 223:1299;Jay et al.(1984)J.Biol.Chem.259:6311を参照されたい。
【0072】
本明細書に記載のVLPは典型的には、M1、および少なくとも1つの修飾インフルエンザ(たとえば、HA抗原)、任意選択的にM2タンパク質をコードする配列を細胞に発現させることにより形成される。発現タンパク質は、VLPの表面に抗原性糖タンパク質が存在するVLPに自己集合する。
【0073】
ある種の実施形態では、マトリクスをコードする配列は、RSV基質タンパク質である。他の実施形態では、マトリクスをコードする配列は、インフルエンザ基質タンパク質である。また、マトリクスをコードする配列は、1つまたは複数の突然変異(修飾)、たとえば米国特許出願公開第2008/0031895号明細書および米国特許出願公開第2009/0022762号明細書に記載されているような修飾基質タンパク質を含んでもよいことも明らかであろう。本明細書に記載のVLPは、他のインフルエンザタンパク質(野生型、修飾型(ミュータント)および/または野生型もしくはミュータントのハイブリッド)をさらに含んでもよい。
【0074】
本明細書に記載のVLPに使用されるタンパク質のいずれかは、ハイブリッド(またはキメラ)タンパク質であってもよい。ポリペプチドの全部または一部が、他のウイルス由来の配列および/または他のインフルエンザ株由来の配列で置換されていてもよいことが明らかであろう。例示的な一実施形態では、VLPのタンパク質のいずれかは、膜貫通および/または細胞質尾部ドメイン、たとえばHAまたはNAなどインフルエンザタンパク質由来のドメインをコードする異種配列を含むという点でハイブリッドであってもよい。たとえば、米国特許出願公開第2008/0031895号明細書および米国特許出願公開第2009/0022762号明細書を参照されたい。
【0075】
好ましくは、インフルエンザVLPの形成に利用する配列は、天然インフルエンザポリヌクレオチド配列に対して約60%〜80%(または61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%および79%などその間の任意の値)の配列同一性を示し、一層好ましくはその配列は、天然ポリヌクレオチド配列に対して約80%〜100%(または81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%および99%などその間の任意の値)の配列同一性を示す。
【0076】
本明細書に記載の配列のいずれかは、他の配列をさらに含んでもよい。たとえば、ワクチンの効力をさらに高めるため、ハイブリッド分子を発現させ、サブウイルス構造に取り込ませる。これらのハイブリッド分子は、DNAレベルで基質タンパク質遺伝子をコードする配列をアジュバントまたは免疫調節部分をコードする配列と結合することにより作製する。サブウイルス構造の形成の際に、これらのハイブリッドタンパク質は、M1または任意のM2がアジュバント分子を有するかどうかに応じて粒子内または粒子上に取り込まれる。1つまたは複数のポリペプチド免疫調節ポリペプチド(たとえば、下記に詳述するアジュバント)がVLPの本明細書に記載の配列に取り込まれると、効力が高まり、したがって防御免疫応答の刺激に必要な抗原の量を減少させる可能性がある。あるいは、下記のように、本明細書に記載の配列からVLPを産生した後、VLP含有組成物に1つまたは複数の他の分子(ポリペプチドまたは小分子)を含めてもよい。
【0077】
これらのサブウイルス構造体は、感染性ウイルス核酸を含まず、感染性ではないため、化学的な不活性化の必要がない。化学的処理を行わなければ、ネイティブなエピトープおよびタンパク質のコンフォメーションが維持され、ワクチンの免疫原性特性が高まる。
【0078】
本明細書に記載の配列は、任意の組み合わせで相互に作動可能に連結してもよい。たとえば、1つまたは複数の配列を同じプロモーターおよび/または異なるプロモーターから発現させてもよい。下記のように、各配列を1つまたは複数のベクターに組み込んでもよい。
【0079】
2.発現ベクター
VLPに取り込まれるように、所望のポリペプチドをコードする配列を含むコンストラクトを合成したら、コンストラクトを任意の好適な発現用ベクターまたはレプリコンにクローニングしてもよい。多くのクローニングベクターが当業者に公知であり、当業者であれば、発現に関する本明細書の教示内容および当該技術分野において公知の情報に照らして任意の特定の宿主細胞型に適切なベクターおよび制御エレメントを容易に選択することができる。一般に、Ausubel et al,上掲またはSambrook et al,上掲を参照されたい。
【0080】
本明細書に記載するようにVLPにアセンブルする配列の発現に使用できるベクターの非限定的な例として、ウイルス系ベクター(たとえば、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス)、バキュロウイルスベクター(実施例を参照されたい)、プラスミドベクター、非ウイルスベクター、哺乳動物ベクター、哺乳動物の人工染色体(たとえば、リポソーム、粒子状キャリア等)およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0081】
発現ベクターは典型的には、コード配列、および好適な宿主でのコード領域の発現を可能にする発現制御エレメントを含む。制御エレメントは一般には、プロモーター、翻訳開始コドンのほか、翻訳および転写終結配列、ならびにインサートをベクターに導入するための挿入部位を含む。翻訳制御エレメントについては、M.Kozakが概説している(たとえば、Kozak,M.,Mamm.Genome 7(8):563−574,1996;Kozak,M.,Biochimie 76(9):815−821,1994;Kozak,M.,J Cell Biol 108(2):229−241,1989;Kozak,M.,and Shatkin,A.J.,Methods Enzymol 60:360−375,1979)。
【0082】
たとえば、哺乳動物細胞の典型的な発現プロモーターには特に、SV40初期プロモーター、CMV前初期プロモーターなどのCMVプロモーター(CMVプロモーターはイントロンAを含んでもよい)、RSV、HIV−LTR、マウス乳癌ウイルスLTRプロモーター(MMLV−LTR)、FIV−LTR、アデノウイルス主要後期プロモーター(Ad MLP)、および単純ヘルペスウイルスプロモーターがある。また、哺乳動物の発現にはマウスのメタロチオネイン遺伝子由来のプロモーターなど他の非ウイルスプロモーターも使用される。典型的には、転写終結配列およびポリアデニル化配列も存在し、翻訳終止コドンの3’側に位置する。好ましくは、コード配列の5’側に位置する、翻訳の開始を最適化するための配列も存在する。転写ターミネーター/ポリアデニル化シグナルの例として、Sambrook, et al.,上掲に記載されているようなSV40に由来するもののほか、ウシ成長ホルモンターミネーター配列が挙げられる。また、本明細書に記載するようなコンストラクトに、スプライス供与部位およびスプライス受容部位を含むイントロンを設計してもよい(Chapman et al.,Nuc.Acids Res.(1991)19:3979−3986)。
【0083】
また、本明細書では、哺乳動物のコンストラクトの発現レベルを高めるためエンハンサーエレメントを使用してもよい。例として、Dijkema et al.,EMBO J.(1985)4:761に記載されているようなSV40初期遺伝子エンハンサー、Gorman et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1982b)79:6777に記載されているようなラウス肉腫ウイルスの末端反復配列(LTR)由来のエンハンサー/プロモーター、およびBoshart et al.,Cell(1985)41:521に記載されているようなヒトCMV由来のエレメント、たとえばCMVイントロンA配列に含まれるエレメント(Chapman et al.,Nuc.Acids Res.(1991)19:3979−3986)が挙げられる。
【0084】
1つまたは複数のベクターが、VLPに取り込まれるタンパク質をコードする1つまたは複数の配列を含んでもよいことが明らかであろう。たとえば、1つのベクターが、VLPに見出されるタンパク質をすべてコードする配列を有していてもよい。あるいは、複数のベクターを使用してもよい(たとえば、各々が1つのポリペプチドをコードする配列をコードする複数のコンストラクト、または各々が1つまたは複数のポリペプチドをコードする配列をコードする複数のコンストラクト)。1つのベクターが複数のポリペプチドをコードする配列を含む実施形態では、それらの配列は、同じベクター内で同一の転写制御エレメント(たとえば、プロモーター)に作動可能に連結しても、または異なる転写制御エレメント(たとえば、プロモーター)に作動可能に連結してもよい。さらに、ベクターは、別の遺伝子発現制御配列、たとえば導入遺伝子のサイレンシングを防止し、染色体の組み込み部位と関係なく一定かつ安定した高レベルの遺伝子発現をもたらすクロマチンオープニングエレメントを含んでもよい。これは、ハウスキーピング遺伝子に近接して位置し、ベクター内で染色体の導入遺伝子の位置に関係なく、組み込まれた導入遺伝子周囲に転写活性なオープンクロマチン環境を作り、転写およびタンパク質発現を最大化するDNA配列モチーフである。
【0085】
さらに、非インフルエンザタンパク質をコードする1つまたは複数の配列、たとえば、以下に限定されるものではないが、免疫調節分子(たとえば、以下に記載するアジュバント)、たとえば、免疫調節オリゴヌクレオチド(たとえば、CpGs)、サイトカイン、無毒化細菌毒素および同種のものを含むおよび/またはコードする配列を発現させ、VLPに取り込ませもよい。
【0086】
3.VLPの産生
上述のように、真核宿主細胞に発現したインフルエンザタンパク質は、非感染性ウイルス様粒子(VLP)に自己集合することが明らかになっている。これを踏まえ、次に本明細書に記載の配列および/またはベクターを使用して適切な宿主細胞を形質転換する。本明細書に記載のVLPを形成するタンパク質をコードするコンストラクトは、様々な異なる細胞型、以下に限定されるものではないが、昆虫細胞、真菌(酵母)細胞および哺乳動物細胞を用いてインフルエンザVLPを産生するための効率的な手段となる。
【0087】
好ましくは、サブウイルス構造ワクチンは、トランスフェクション、連続細胞株の樹立(標準的なプロトコルを用いる)および/または当業者に公知の目的のインフルエンザ遺伝子を有するDNAコンストラクトの感染を行ってから、真核細胞に産生する。サブウイルス構造の形成に必要なタンパク質の発現レベルは、選択した遺伝子の転写を誘導する真核プロモーターまたはウイルスプロモーターの配列最適化により最大化する。サブウイルス構造ワクチンは培養基に放出され、そこから精製され、その後ワクチンとして製剤化される。サブウイルス構造体は感染性でなく、したがってVLPの不活性化は、一部の死菌ウイルスワクチンと同様に必要ない
【0088】
本明細書に記載するような配列から発現したインフルエンザポリペプチドは、抗原性糖タンパク質を表面に提示するVLPに自己集合する能力があるため、こうしたVLPは所望の配列を共導入することにより多くの宿主細胞で産生することができる。(たとえば、1つまたは複数の発現ベクター内の)配列は、様々に組み合わせて宿主細胞に安定におよび/または一過性に組み込んでもよい。
【0089】
好適な宿主細胞には、細菌細胞、哺乳動物細胞、バキュロウイルス/昆虫細胞、酵母細胞、植物細胞およびアフリカツメガエル(Xenopus)細胞があるが、これに限定されるものではない。
【0090】
たとえば、多くの哺乳動物細胞株が当該技術分野において公知であり、初代細胞のほか、アメリカンタイプカルチャーコレクション(A.T.C.C.)から入手可能な不死化細胞株、たとえば、以下に限定されるものではないが、MDCK、BHK、VERO、MRC−5、WI−38、HT1080、293、293T、RD、COS−7、CHO、Jurkat、HUT、SUPT、C8166、MOLT4/clone8、MT−2、MT−4、H9、PM1、CEM、骨髄腫細胞(たとえば、SB20細胞)、およびCEMX174(こうした細胞株は、たとえばA.T.C.C.から入手可能)が挙げられる。
【0091】
同様に、本発現コンストラクトには、細菌宿主、たとえばE.コリ(E.coli)、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)およびストレプトコッカス・エスピーピー(Streptococcus spp.)も使用される。
【0092】
本開示に有用な酵母宿主として特に、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・マルトーサ(Candida maltosa)、ハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、クリベロマイセス・フラジリス(Kluyveromyces fragilis)、クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)、ピキア・ギレリモンディ(Pichia guillerimondii)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)およびヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)が挙げられる。真菌宿主には、たとえば、アスペルギルス属(Aspergillus)がある。
【0093】
バキュロウイルスベクターと使用される昆虫細胞として特に、アエデス・アエギプチ(Aedes aegypti)、オートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)、カイコ(Bombyx mori)、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)およびトリコプルシア・ニ(Trichoplusia ni)が挙げられる。Latham & Galarza(2001) J.Virol.75(13):6154−6165;Galarza et al.(2005)Viral.Immunol.18(1):244−51;ならびに米国特許出願公開第2005/50186621号明細書および米国特許出願公開第2006/0263804号明細書を参照されたい。
【0094】
上述の配列の1つまたは複数を発現する細胞株は、本明細書に記載された開示を踏まえ、VLPのタンパク質をコードする1つまたは複数の発現ベクターコンストラクトを安定に組み込むことにより容易に作製することができる。安定に組み込まれたインフルエンザ配列の発現を調節するプロモーターは構成的でも、または誘導的でもよい。こうして、基質タンパク質の1つまたは複数の両方を安定に組み込み、本明細書に記載の配列(たとえば、ハイブリッドタンパク質)を宿主細胞に導入し、ポリヌクレオチドがコードするタンパク質を発現させると、抗原性糖タンパク質を提示する複製しないウイルス粒子が形成される。
【0095】
ある種の実施形態では、抗原性の異なる2つ以上のインフルエンザタンパク質を安定に発現する哺乳動物細胞株を作製する。こうした細胞株に、M1、M2および/または別の糖タンパク質(たとえば、同一もしくは異なるウイルス株由来)をコードする配列を導入して本明細書に記載するようなVLPを産生する。あるいは、M1タンパク質(および、任意選択的にM2)を安定に産生する細胞株を作製し、選択した株由来のインフルエンザ抗原タンパク質をコードする配列を細胞株に導入し、所望の抗原性糖タンパク質を提示するVLPを産生してもよい。
【0096】
VLP産生細胞株が由来する親細胞株は、たとえば、哺乳動物細胞株、昆虫細胞株、酵母細胞株、細菌細胞株など上述のどのような細胞から選択してもよい。好ましい実施形態では、細胞株は哺乳動物細胞株(たとえば、293、RD、COS−7、CHO、BHK、MDCK、MDBK、MRC−5、VERO、HT1080および骨髄腫細胞)である。哺乳動物細胞を用いてインフルエンザVLPを産生すると、(i)VLPが形成され、(ii)適切な翻訳後修飾(グリコシル化、パルミチル化)および出芽が起こり、(iii)非哺乳動物細胞汚染物質が存在せず、(iv)精製しやすくなる。
【0097】
また、細胞株を作製するだけでなく、インフルエンザをコードする配列を宿主細胞に一過性に発現させてもよい。好適な組換え発現宿主細胞系には、当該技術分野において周知の細菌発現系、哺乳動物発現系、バキュロウイルス/昆虫発現系、ワクシニア発現系、セムリキ森林ウイルス(SFV)発現系、アルファウイルス属(たとえば、シンドビス、ベネズエラウマ脳炎(VEE))発現系、哺乳動物発現系、酵母発現系およびアフリカツメガエル(Xenopus)発現系があるが、これに限定されるものではない。特に好ましい発現系は、哺乳動物細胞株、ワクシニア系、シンドビス系、昆虫系および酵母系である。
【0098】
多くの好適な発現系が市販されており、たとえば、バキュロウイルス発現(Reilly,P.R.,et al.,BACULOVIRUS EXPRESSION VECTORS:A LABORATORY MANUAL(1992);Beames,et al.,Biotechniques 11:378(1991);Pharmingen;Clontech,Palo Alto,Calif.))、ワクシニア発現系(Earl,P.L.,et al.,「Expression of proteins in mammalian cells using vaccinia」In Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubel,et al.Eds.),Greene Publishing Associates & Wiley Interscience,New York(1991);Moss,B.,et al.,米国特許第5,135,855号明細書、1992年8月4日発行)、細菌を用いた発現(Ausubel,F.M.,et al.,CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY,John Wiley and Sons,Inc.,Media PA;Clontech)、酵母を用いた発現(本明細書に援用するRosenberg,S.and Tekamp−Olson,P.,米国再発行特許第35,749号明細書、1998年3月17日発行;本明細書に援用するShuster,J.R.,米国特許第5,629,203号明細書、1997年5月13日発行;Gellissen,G.,et al.,Antonie Van Leeuwenhoek,62(1−2):79−93(1992);Romanos,M.A.,et al.,Yeast 8(6):423−488(1992);Goeddel,D.V.,Methods in Enzymology 185(1990);Guthrie,C,and G.R.Fink,Methods in Enzymology 194(1991))、哺乳動物細胞を用いた発現(Clontech;Gibco−BRL,Ground Island,N.Y.;たとえば、チャイニーズハムスターの卵巣(CHO)細胞株(Haynes,J.,et al.,Nuc.Acid.Res.11:687−706(1983);1983,Lau,Y.F.,et al.,Mol.Cell.Biol.4:1469−1475(1984);Kaufman,R.J.,「Selection and coamplification of heterologous genes in mammalian cells」,in Methods in Enzymology,vol.185,pp537−566.Academic Press,Inc.,San Diego Calif.(1991))、ならびに植物細胞を用いた発現(植物クローニングベクター,Clontech Laboratories,Inc.,Palo−Alto,Calif.,およびPharmacia LKB Biotechnology,Inc.,Pistcataway,N.J.;Hood,E.,et al.,J.Bacteriol.168:1291−1301(1986);Nagel,R.,et al.,FEMS Microbiol.Lett.67:325(1990);An,et al.,「Binary Vectors」、およびPlant Molecular Biology Manual A3:l−19(1988);Miki,B.L.A.,et al.,pp.249−265における他のもの、およびPlant DNA Infectious Agents(Hohn,T.,et al.,eds.)Springer−Verlag,Wien,Austria,(1987);Plant Molecular Biology:Essential Techniques,P.G.Jones and J.M.Sutton,New York,J.Wiley,1997;Miglani,Gurbachan Dictionary of Plant Genetics and Molecular Biology,New York,Food Products Press,1998;Henry,R.J.,Practical Applications of Plant Molecular Biology,New York,Chapman & Hall,1997)における他のものが挙げられる。
【0099】
サブウイルス構造ワクチンの形成に必要なタンパク質をコードする変異遺伝子を含む発現ベクターを宿主細胞に導入し、その後必要なレベルで発現させると、サブウイルス構造ワクチンがアセンブルし、次いで細胞表面から培養基に放出される(図7)。
【0100】
選択した発現系および宿主に応じて、粒子形成ポリペプチドが発現してVLPが形成され得る条件下で、発現ベクターにより形質転換された宿主細胞を増殖させることによりVLPを産生する。どの増殖条件を選択するのがよいかは当該技術分野の技術の範囲内である。VLPを形成し、細胞内に維持する場合、細胞を溶解してもVLPを実質的にインタクトな状態に維持する化学的、物理的または機械的手段を用いて細胞を破壊する。こうした方法は当業者に公知であり、たとえば、Protein Purification Applications:A Practical Approach,(E.L.V.Harris and S.Angal,Eds.,1990)に記載されている。あるいは、VLPを分泌させ、周囲の培養基から回収してもよい。
【0101】
次いで密度勾配遠心分離、たとえば、スクロースグラジエント、PEG沈殿、ペレット化および同種のもの(たとえば、Kirnbauer et al.J.Virol.(1993)67:6929−6936を参照されたい)のほか、標準的な精製技術、たとえば、イオン交換およびゲル濾過クロマトグラフィーなどにより、粒子をその完全性を失わないようにする方法を用いて単離する(または実質的に精製する)。
【0102】
組成物
本明細書に記載するように産生されるVLPを使用して被検体に投与すると、免疫応答を惹起することができる。上記で論じたように、VLPは、様々な抗原(たとえば、1つまたは複数の株または分離株由来の1つまたは複数の修飾インフルエンザ抗原)を含んでもよい。精製されたVLPは、通常ワクチン組成物の形態で脊椎動物被検体に投与してもよい。また、混合ワクチンを使用してもよく、こうしたワクチンは、たとえば、インフルエンザもしくは他の生物に由来する他のサブユニットタンパク質および/またはこうした抗原をコードする遺伝子送達ワクチンを含む。
【0103】
VLP免疫刺激(またはワクチン)組成物は、様々な賦形剤、アジュバント、キャリア、補助物質、調節剤および同種のものを含んでもよい。免疫刺激組成物は、免疫学的応答を惹起するのに十分な量のVLP/抗原を含む。適切な有効量は、当業者であれば決定することができる。こうした量は、通常の試験で決定できる比較的広い範囲となり、一般にVLP/抗原約0.1μg〜約10mg(またはそれ以上)、一層好ましくは約1μg〜約300μg程度の量である。
【0104】
サブウイルス構造ワクチンは細胞培養基から精製し、適切な緩衝液とa)防腐剤または抗生物質;b)タンパク質または有機化合物を含む安定剤;c)ワクチンの効力を高め、免疫応答(液性および細胞性)を調節するアジュバントまたは免疫調節剤;またはd)免疫系の特定の細胞に対するワクチン抗原の提示を増強する分子などの添加剤と共に製剤化する。このワクチンは、調製物の適切な保管を図り、有効期間を最大化するため凍結乾燥(freeze−dried)(凍結乾燥(lyophilized))形態で調製してもよい。これにより、免疫原性、効力および有効性を維持したまま長期間にわたりワクチンの貯蔵が可能になる。
【0105】
本明細書に記載の組成物には、キャリアが任意選択的に存在する。キャリア自体は典型的には、組成物を投与される個体に有害な抗体の産生を誘導しない分子である。好適なキャリアは典型的には、大きくてゆっくりと代謝される巨大分子、たとえばタンパク質、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマー、脂質凝集体(油滴またはリポソームなど)、および不活性ウイルス粒子である。粒子状キャリアの例として、ポリメチルメタクリレートポリマーに由来するもののほか、ポリ(ラクチド)に由来する微小粒子およびポリ(ラクチド−コ−グリコリド)に由来する微小粒子(PLGと呼ばれる)がある。たとえば、Jeffery et al.,Pharm.Res.(1993)10:362−368;McGee J P,et al.,J Microencapsul.14(2):197−210,1997;O’Hagan D T,et al.,Vaccine 11(2):149−54,1993を参照されたい。こうしたキャリアは、当業者によく知られている。
【0106】
加えて、これらのキャリアは、免疫刺激薬(「アジュバント」)の役割を果たしてもよい。例示的なアジュバントとして、(1)アルミニウム塩(ミョウバン)、たとえば水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム等;(2)水中油型エマルジョン製剤(ムラミルペプチド(下記を参照されたい)または細菌の細胞壁成分など他の特定の免疫刺激薬を含むあるいは含まない)、たとえば(a)5%スクアレン、0.5%Tween80および0.5%Span85(必須ではないが、任意選択的に様々な量のMTP−PE(下記を参照されたい)を含む)を含み、Model 110Yマイクロフルイダイザー(Micro fluidics,Newton,Mass.)などのマイクロフルイダイザーを用いてサブミクロンの粒子に製剤化されたMF59(国際公開第90/14837号パンフレット)、(b)10%スクアラン、0.4%Tween80、5%プルロニックブロックポリマーL121およびthr−MDP(下記を参照されたい)を含み、サブミクロンのエマルジョンに高圧乳化するかまたはボルテックスしてより大きな粒度のエマルジョンにしたSAFおよび(c)2%スクアレン、0.2%Tween80、ならびにモノホスホリ脂質A(MPL)、トレハロースジミコレート(TDM)および細胞壁骨格(CWS)からなる群の1つまたは複数、好ましくはMPL+CWS(Detoxu)の細菌の細胞壁成分を含むRibi(商標)アジュバント系(RAS)、(Ribi Immunochem,Hamilton,MT);(3)Stimulon(商標).(Cambridge Bioscience,Worcester,Mass.)などのサポニンアジュバントを使用してもよいし、またはそれからISCOM(免疫刺激複合体)など粒子を生成してもよい;(4)完全フロイントアジュバント(CFA)および不完全フロイントアジュバント(IFA);(5)サイトカイン、たとえばインターロイキン(IL−1、IL−2等)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、腫瘍壊死因子(TNF)、βケモカイン(MIP、1−α、1−β Rantes等);(6)細菌のADPリボシル化トキシンの無毒化ミュータント、たとえばコレラ毒素(CT)、百日咳毒素(PT)またはE.コリ(E.coli)易熱性毒素(LT)、特にLT−K63(63番目の野生型アミノ酸がリジンで置換されている)LT−R72(72番目の野生型アミノ酸がアルギニンで置換されている)、CT−S109(109番目の野生型アミノ酸がセリンで置換されている)およびPT−K9/G129(9番目の野生型アミノ酸がリジンで置換され、129番目の野生型アミノ酸がグリシンで置換されている)(たとえば、国際公開第93/13202号パンフレットおよび国際公開第92/19265号パンフレットを参照されたい);ならびに(7)免疫刺激薬として働き組成物の有効性を高める他の物質があるが、これに限定されるものではない。
【0107】
ムラミルペプチドには、N−アセチル−ムラミル−L−トレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アクテイル−ノルムラミル−L−アラニル−D−イソグルアトム(nor−MDP)、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルアトミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−フイドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(MTP−PE)等があるが、これに限定されるものではない。
【0108】
本明細書での使用に好適な免疫調節分子の例として、上述および以下のアジュバントがある:IL−1およびIL−2(Karupiah et al.(1990)J.Immunology 144:290−298、Weber et al.(1987)J.Exp.Med.166:1716−1733、Gansbacher et al.(1990)J.Exp.Med.172:1217−1224、および米国特許第4,738,927号明細書−);IL−3およびIL−4(Tepper et al.(1989)Cell 57:503−512、Golumbek et al.(1991)Science 254:713−716、および米国特許第5,017,691号明細書);IL−5およびIL−6(Brakenhof et al.(1987)J.Immunol.139:4116−4121、および国際公開第90/06370号パンフレット);IL−7(米国特許第4,965,195号明細書);IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12およびIL−13(Cytokine Bulletin,Summer 1994);IL−14およびIL−15;αインターフェロン(Finter et al.(1991)Drugs 42:749−765、米国特許第4,892,743号明細書および同第4,966,843号明細書、国際公開第85/02862号パンフレット、Nagata et al.(1980)Nature 284:316−320、Familletti et al.(1981)Methods in Enz.78:387−394、Twu et al.(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:2046−2050およびFaktor et al.(1990)Oncogene 5:867−872);β−インターフェロン(Seif et al.(1991)J.Virol.65:664−671);γ−インターフェロン(Watanabe et al.(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:9456−9460,Gansbacher et al.(1990)Cancer Research 50:7820−7825,Maio et al.(1989)Can.Immunol.Immunother.30:34−42および米国特許第4,762,791号明細書および同第4,727,138号明細書);G−CSF(米国特許第4,999,291号明細書および同第4,810,643号明細書);GM−CSF(国際公開第85/04188号パンフレット);腫瘍壊死因子(TNF)(Jayaraman et al.(1990)J.Immunology 144:942−951);CD3(Krissanen et al.(1987)Immunogenetics 26:258−266);ICAM−1(Altman et al.(1989)Nature 338:512−514,Simmons et al.(1988)Nature 331:624−627);ICAM−2、LFA−1、LFA−3(Wallner et al.(1987)J.Exp.Med.166:923−932);MHCクラスI分子、MHCクラスII分子、Β7.1−β2−ミクログロブリン(Parnes et al.(1981)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:2253−2257);カルネキシンなどのシャペロン;ならびにMHC結合トランスポータータンパク質またはそのアナログ(Powis et al.(1991)Nature 354:528−531)。また、免疫調節因子は、これらの分子のアゴニストでも、アンタゴニストでも、またはリガンドでもよい。たとえば、受容体の可溶形態は、多くの場合、因子自体の変異形態と同様にこれらの種類の因子のアンタゴニストとして挙動することがある。
【0109】
上記の物質をコードする核酸分子のほか、本発明に使用するのに有利な他の核酸分子については、たとえば、アメリカンタイプカルチャーコレクションなどの寄託機関、またはBritish Bio−Technology Limited(Cowley,Oxford England)などの商業的供給源のような様々な供給源から容易に取得することができる。代表的な例として、BBG12(127アミノ酸の成熟タンパク質を含むGM−CSF遺伝子を含む)、BBG6(γインターフェロンをコードする配列を含む)、A.T.C.C.寄託番号39656(TNFをコードする配列を含む)、A.T.C.C.寄託番号20663(α−インターフェロンをコードする配列を含む)、A.T.C.C.寄託番号31902、31902および39517(β−インターフェロンをコードする配列を含む)、A.T.C.C.寄託番号67024(インターロイキン−1bをコードする配列を含む)、A.T.C.C.寄託番号39405、39452、39516、39626および39673(インターロイキン−2をコードする配列を含む)、A.T.C.C.寄託番号59399、59398および67326(インターロイキン−3をコードする配列を含む)、A.T.C.C.寄託番号57592(インターロイキン−4をコードする配列を含む)、A.T.C.C.寄託番号59394および59395(インターロイキン−5をコードする配列を含む)、ならびにA.T.C.C.寄託番号67153(インターロイキン−6をコードする配列を含む)が挙げられる。
【0110】
上記のポリペプチドの1つまたは複数をコードするプラスミドは適切な制限酵素で消化することができ、目的の特定の遺伝子を含むDNAフラグメントは標準的な分子生物学技術を用いて遺伝子導入ベクター(たとえば、上記のような発現ベクター)に挿入することができる。(たとえば、Sambrook et al.,上掲、またはAusubel et al.(eds)Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing and Wiley−Interscienceを参照されたい)。
【0111】
投与
VLP、およびそうしたVLPを含む組成物は、たとえば、非経口注射(たとえば皮下、腹腔内、静脈内、筋肉内または間質の組織腔)、または直腸投与、経口投与(たとえば錠剤、噴霧剤)、経膣投与、局所投与、経皮投与(たとえば国際公開第99/27961号パンフレットを参照)または経皮投与(たとえば国際公開第02/074244号パンフレットおよび国際公開第02/064162号パンフレット)、経鼻投与(たとえば国際公開第03/028760号パンフレット)、点眼投与、点耳投与、経肺投与または他の粘膜投与など任意の送達方法で被検体に投与してもよい。同一または異なる経路で反復投与を行ってもよい。好ましい実施形態では、投与を経鼻で行う。
【0112】
VLP(およびVLPを含む組成物)は、他のワクチンの送達より前に投与しても、それと同時に投与しても、またはそれより後に投与してもよい。また、VLPの投与部位は、投与される他のワクチン組成物と同一でも、または異なってもよい。
【0113】
VLP組成物による投薬処置は単回投与スケジュールでも、または反復投与スケジュールでもよい。反復投与スケジュールは、ワクチンの一次接種コースで1〜10回投与を行い、次いでその後免疫応答を維持および/または増強するように選択した時間間隔でさらに投与する、たとえば二次投与の場合1〜4ヶ月で投与し、さらに必要な場合、それに続いて後数ヶ月後投与するスケジュールである。また、投薬処置は、少なくともある程度、その方式の効力、利用したワクチン送達、その被検体の必要性により決定され、開業医の判断により左右されることがある。
【0114】
本明細書で言及した特許、特許出願および刊行物はすべて、その全体を本明細書に援用する。
【0115】
理解しやすいように図面および例によりある程度詳細に開示を行ってきたが、本開示の精神または範囲を逸脱することなく様々な変更および修正を実施できることが当業者には明らかであろう。このため、前述の開示および下記の例は、限定的に解釈してはならない。したがって、開示された修飾について所定の野生型HA配列(たとえば、UniProt KB Q6DQ33)を用いて番号付けを行ったが、対応する突然変異を他のHA配列において容易に作製することができることが明らかであろう。
【実施例】
【0116】
実施例1:切断して再設計した改変HA分子の作製
様々な修飾HA分子を以下の通り設計した。
【0117】
HA1フラグメントの一部(H23〜G240の217aa)を除去することにより、改変HA分子を作製した。その際、分泌シグナル配列の除去後、NH2末端のアミノ酸D17〜Y23を維持した。この短い配列は、C483との鎖間のジスルフィド結合の形成を促進し、分子を安定化する残基C20を保持していた。HA1の残りの領域R241〜L333は、C318とジスルフィド結合を形成し、折れ曲がりを保持する残基C294が組み込まれた一連のβシートを形成する。さらに、C290位の残基をGに変異させて、C294またはC318のどちらかとのジスルフィド結合形成の可能性を阻止した。このHA1フラグメントは、膜貫通ドメインおよび細胞質尾部を含む全HA2フラグメントと遺伝的に連鎖していた。
【0118】
得られたコンストラクトを「1TA改変HA」と名付け、図1に示す。このコンストラクトのDNA配列およびアミノ酸配列は、以下の通りである。
改変HA 1TAのヌクレオチド配列(配列番号1):
ATGGAGAAAATAGTGCTTCTTTTTGCAATAGTCAGTCTTGTTAAAAGTGATCAGATTTGCATTGGTTACAGGATGGAGTTCTTCTGGACAATTTTAAAGCCGAATGATGCAATCAACTTCGAGAGTAATGGAAATTTCATTGCTCCAGAATATGCATACAAAATTGTCAAGAAAGGGGACTCAACAATTATGAAAAGTGAATTGGAATATGGTAACGGAAACACCAAGTGTCAAACTCCAATGGGGGCGATAAACTCTAGCATGCCATTCCACAATATACACCCTCTCACCATTGGGGAATGCCCCAAATATGTGAAATCAAACAGATTAGTCCTTGCGACTGGGCTCAGAAATAGCCCTCAAAGAGAGAGAAGAAGAAAAAAGAGAGGATTATTTGGAGCTATAGCAGGTTTTATAGAGGGAGGATGGCAGGGAATGGTAGATGGTTGGTATGGGTACCACCATAGCAATGAGCAGGGGAGTGGGTACGCTGCAGACAAAGAATCCACTCAAAAGGCAATAGATGGAGTCACCAATAAGGTCAACTCGATCATTGACAAAATGAACACTCAGTTTGAGGCCGTTGGAAGGGAATTTAACAACTTAGAAAGGAGAATAGAGAATTTAAACAAGAAGATGGAAGACGGGTTCCTAGATGTCTGGACTTATAATGCTGAACTTCTGGTTCTCATGGAAAATGAGAGAACTCTAGACTTTCATGACTCAAATGTCAAGAACCTTTACGACAAGGTCCGACTACAGCTTAGGGATAATGCAAAGGAGCTGGGTAACGGTTGTTTCGAGTTCTATCATAAATGTGATAATGAATGTATGGAAAGTGTAAGAAATGGAACGTATGACTACCCGCAGTATTCAGAAGAAGCGAGACTAAAAAGAGAGGAAATAAGTGGAGTAAAATTGGAATCAATAGGAATTTACCAAATACTGTCAATTTATTCTACAGTGGCGAGTTCCCTAGCACTGGCAATCATGGTAGCTGGTCTATCCTTATGGATGTGCTCCAATGGGTCGTTACAATGCAGAATTTGCATTTAA
改変HA−1TAのアミノ酸配列(配列番号2):
MEKIVLLFAIVSLVKSDQICIGYRMEFFWTILKPNDAINFESNGNFIAPEYAYKIVKKGDSTIMKSELEYGNGNTKCQTPMGAINSSMPFHNIHPLTIGECPKYVKSNRLVLATGLRNSPQRERRRKKRGLFGAIAGFIEGGWQGMVDGWYGYHHSNEQGSGYAADKESTQKAIDGVTNKVNSIIDKMNTQFEAVGREFNNLERRIENLNKKMEDGFLDVWTYNAELLVLMENERTLDFHDSNVKNLYDKVRLQLRDNAKELGNGCFEFYHKCDNECMESVRNGTYDYPQYSEEARLKREEISGVKLESIGIYQILSIYSTVASSLALAIMVAGLSLWMCSNGSLQCRICI。
【0119】
C483とのジスルフィド結合を促進するC20と、高度に保存されたエピトープの形成に寄与する部分とを含むHA1のNH2末端(D17〜P65)を包含するように、もう1つの改変HAを設計した。これは、酵素切断部位、およびC58とのジスルフィド結合の形成を促進する未変化のC290を含む残りのHA1部分241〜346位に結合していた。このHA1フラグメントは、膜貫通および細胞質ドメインを含む全HA2フラグメント(G347〜I568)と遺伝的に連鎖していた。
【0120】
このコンストラクトを改変HA「2TA」と名付け、図2に示す。DNA配列およびアミノ酸配列を下記に示す。
改変HA−2TAのヌクレオチド配列(配列番号3):
ATGGAGAAAATAGTGCTTCTTTTTGCAATAGTCAGTCTTGTTAAAAGTGATCAGATTTGCATTGGTTACCATGCAAACAACTCGACAGAGCAGGTTGACACAATAATGGAAAAGAACGTTACTGTTACACATGCCCAAGACATACTGGAAAAGAAACACAACGGGAAGCTCTGCGATCTAGATGGAGTGAAGCCTAGGATGGAGTTCTTCTGGACAATTTTAAAGCCGAATGATGCAATCAACTTCGAGAGTAATGGAAATTTCATTGCTCCAGAATATGCATACAAAATTGTCAAGAAAGGGGACTCAACAATTATGAAAAGTGAATTGGAATATGGTAACTGCAACACCAAGTGTCAAACTCCAATGGGGGCGATAAACTCTAGCATGCCATTCCACAATATACACCCTCTCACCATTGGGGAATGCCCCAAATATGTGAAATCAAACAGATTAGTCCTTGCGACTGGGCTCAGAAATAGCCCTCAAAGAGAGAGAAGAAGAAAAAAGAGAGGATTATTTGGAGCTATAGCAGGTTTTATAGAGGGAGGATGGCAGGGAATGGTAGATGGTTGGTATGGGTACCACCATAGCAATGAGCAGGGGAGTGGGTACGCTGCAGACAAAGAATCCACTCAAAAGGCAATAGATGGAGTCACCAATAAGGTCAACTCGATCATTGACAAAATGAACACTCAGTTTGAGGCCGTTGGAAGGGAATTTAACAACTTAGAAAGGAGAATAGAGAATTTAAACAAGAAGATGGAAGACGGGTTCCTAGATGTCTGGACTTATAATGCTGAACTTCTGGTTCTCATGGAAAATGAGAGAACTCTAGACTTTCATGACTCAAATGTCAAGAACCTTTACGACAAGGTCCGACTACAGCTTAGGGATAATGCAAAGGAGCTGGGTAACGGTTGTTTCGAGTTCTATCATAAATGTGATAATGAATGTATGGAAAGTGTAAGAAATGGAACGTATGACTACCCGCAGTATTCAGAAGAAGCGAGACTAAAAAGAGAGGAAATAAGTGGAGTAAAATTGGAATCAATAGGAATTTACCAAATACTGTCAATTTATTCTACAGTGGCGAGTTCCCTAGCACTGGCAATCATGGTAGCTGGTCTATCCTTATGGATGTGCTCCAATGGGTCGTTACAATGCAGAATTTGCATTTAA
改変HA−2TAのアミノ酸配列(配列番号4):
MEKIVLLFAIVSLVKSDQICIGYHANNSTEQVDTIMEKNVTVTHAQDILEKKHNGKLCDLDGVKPRMEFFWTILKPNDAINFESNGNFIAPEYAYKIVKKGDSTIMKSELEYGNCNTKCQTPMGAINSSMPFHNIHPLTIGECPKYVKSNRLVLATGLRNSPQRERRRKKRGLFGAIAGFIEGGWQGMVDGWYGYHHSNEQGSGYAADKESTQKAIDGVTNKVNSIIDKMNTQFEAVGREFNNLERRIENLNKKMEDGFLDVWTYNAELLVLMENERTLDFHDSNVKNLYDKVRLQLRDNAKELGNGCFEFYHKCDNECMESVRNGTYDYPQYSEEARLKREEISGVKLESIGIYQILSIYSTVASSLALAIMVAGLSLWMCSNGSLQCRICI
【0121】
もう1つの改変HAを図3に示す。このコンストラクトは、シグナルペプチドの開裂後、設計された12aaのペプチドリンカー(DIGPGKVGYGPG、配列番号11)を介してHA1の別の部分(M281〜R346)に結合したHA1のNH2末端部分(D17〜P65)を含む。このコンストラクトでは、ジスルフィド結合の形成を促進するC20−C483、C294−C318およびC58−C290の対合残基が維持されている。全HA2領域(G347〜I568)は、HA1フラグメントと遺伝的に連鎖していた。また、HA2にはV412からD412へ、およびL419からG419への突然変異を導入してタンパク質凝集を防止した。
【0122】
このコンストラクトは「3TA改変HA」とし、模式図を図3に示す。3TA分子のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を下記に示す。
改変HA−3TAのヌクレオチド配列(配列番号5):
ATGGAGAAAATAGTGCTTCTTTTTGCAATAGTCAGTCTTGTTAAAAGTGATCAGATTTGCATTGGTTACCATGCAAACAACTCGACAGAGCAGGTTGACACAATAATGGAAAAGAACGTTACTGTTACACATGCCCAAGACATACTGGAAAAGAAACACAACGGGAAGCTCTGCGATCTAGATGGAGTGAAGCCTGACATAGGACCAGGAAAGGTAGGATACGGACCAGGAATGAAAAGTGAATTGGAATATGGTAACTGCAACACCAAGTGTCAAACTCCAATGGGGGCGATAAACTCTAGCATGCCATTCCACAATATACACCCTCTCACCATTGGGGAATGCCCCAAATATGTGAAATCAAACAGATTAGTCCTTGCGACTGGGCTCAGAAATAGCCCTCAAAGAGAGAGAAGAAGAAAAAAGAGAGGATTATTTGGAGCTATAGCAGGTTTTATAGAGGGAGGATGGCAGGGAATGGTAGATGGTTGGTATGGGTACCACCATAGCAATGAGCAGGGGAGTGGGTACGCTGCAGACAAAGAATCCACTCAAAAGGCAATAGATGGAGTCACCAATAAGGTCAACTCGATCATTGACAAAATGAACACTCAGTTTGAGGCCGACGGAAGGGAATTTAACAACGGAGAAAGGAGAATAGAGAATTTAAACAAGAAGATGGAAGACGGGTTCCTAGATGTCTGGACTTATAATGCTGAACTTCTGGTTCTCATGGAAAATGAGAGAACTCTAGACTTTCATGACTCAAATGTCAAGAACCTTTACGACAAGGTCCGACTACAGCTTAGGGATAATGCAAAGGAGCTGGGTAACGGTTGTTTCGAGTTCTATCATAAATGTGATAATGAATGTATGGAAAGTGTAAGAAATGGAACGTATGACTACCCGCAGTATTCAGAAGAAGCGAGACTAAAAAGAGAGGAAATAAGTGGAGTAAAATTGGAATCAATAGGAATTTACCAAATACTGTCAATTTATTCTACAGTGGCGAGTTCCCTAGCACTGGCAATCATGGTAGCTGGTCTATCCTTATGGATGTGCTCCAATGGGTCGTTACAATGCAGAATTTGCATTTAA
改変HA−3TAのアミノ酸配列(配列番号6):
MEKIVLLFAIVSLVKSDQICIGYHANNSTEQVDTIMEKNVTVTHAQDILEKKHNGKLCDLDGVKPDIGPGKVGYGPGMKSELEYGNCNTKCQTPMGAINSSMPFHNIHPLTIGECPKYVKSNRLVLATGLRNSPQRERRRKKRGLFGAIAGFIEGGWQGMVDGWYGYHHSNEQGSGYAADKESTQKAIDGVTNKVNSIIDKMNTQFEADGREFNNGERRIENLNKKMEDGFLDVWTYNAELLVLMENERTLDFHDSNVKNLYDKVRLQLRDNAKELGNGCFEFYHKCDNECMESVRNGTYDYPQYSEEARLKREEISGVKLESIGIYQILSIYSTVASSLALAIMVAGLSLWMCSNGSLQCRICI
【0123】
修飾インフルエンザHAのもう1つの例を図4に示す(「4TA」と名付けた)。このコンストラクトは、HA2フラグメント(細胞外領域(残基347〜520)、および分泌シグナルペプチドに結合した膜貫通および細胞質ドメイン(残基521〜568)ドメインを含む。シグナルペプチドは転写/転位の際に除去され、VLPワクチンに取り込まれるHA2構造には存在しない(他の改変HAの場合と同様)。さらに、HA2サブユニットのカルボキシル末端の膜貫通ドメインおよび細胞質尾部は任意選択的に、M1タンパク質が由来するインフルエンザウイルスの類似の配列、またはM1アナログと最もよく相互作用する配列で置換されている。こうした分子のコンタクトは粒子のアセンブリーおよび放出を増強する。4TA分子のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を下記に示す。
改変HA−4TAのヌクレオチド配列(配列番号7):
ATGGAGAAAATAGTGCTTCTTTTTGCAATAGTCAGTCTTGTTAAAAGTGGATTATTTGGAGCTATAGCAGGTTTTATAGAGGGAGGATGGCAGGGAATGGTAGATGGTTGGTATGGGTACCACCATAGCAATGAGCAGGGGAGTGGGTACGCTGCAGACAAAGAATCCACTCAAAAGGCAATAGATGGAGTCACCAATAAGGTCAACTCGATCATTGACAAAATGAACACTCAGTTTGAGGCCGTTGGAAGGGAATTTAACAACTTAGAAAGGAGAATAGAGAATTTAAACAAGAAGATGGAAGACGGGTTCCTAGATGTCTGGACTTATAATGCTGAACTTCTGGTTCTCATGGAAAATGAGAGAACTCTAGACTTTCATGACTCAAATGTCAAGAACCTTTACGACAAGGTCCGACTACAGCTTAGGGATAATGCAAAGGAGCTGGGTAACGGTTGTTTCGAGTTCTATCATAAATGTGATAATGAATGTATGGAAAGTGTAAGAAATGGAACGTATGACTACCCGCAGTATTCAGAAGAAGCGAGACTAAAAAGAGAGGAAATAAGTGGAGTAAAATTGGAATCAATAGGAATTTACCAAATACTGTCAATTTATTCTACAGTGGCGAGTTCCCTAGCACTGGCAATCATGGTAGCTGGTCTATCCTTATGGATGTGCTCCAATGGGTCGTTACAATGCAGAATTTGCATTTAA
改変HA−4TAのアミノ酸配列(配列番号8):
MEKIVLLFAIVSLVKSGLFGAIAGFIEGGWQGMVDGWYGYHHSNEQGSGYAADKESTQKAIDGVTNKVNSIIDKMNTQFEAVGREFNNLERRIENLNKKMEDGFLDVWTYNAELLVLMENERTLDFHDSNVKNLYDKVRLQLRDNAKELGNGCFEFYHKCDNECMESVRNGTYDYPQYSEEARLKREEISGVKLESIGIYQILSIYSTVASSLALAIMVAGLSLWMCSNGSLQCRICI
【0124】
もう1つの例では、タンパク質の配列内に1つまたは複数の開裂部位を挿入することによりインフルエンザHAポリペプチドを改変する。図5A(「5TA」と名付けた)に示すように、例示的な挿入部位として、P65とL66との間および/またはI280とM281との間が挙げられる。図5はまた例示的な12残基の開裂部位(たとえば、12merの連続塩基性タンパク質分解開裂部位)を示す。また、ネイティブなタンパク質分解開裂部位(KKR〜GGG)の3残基の突然変異を含む別の変化を加えて、この位置での開裂を防止してもよい。この分子をプロテアーゼ処理すると(図5Bを参照されたい)、HAの球状頭部が除去され、HA2ステムおよび残りのHA1部分により形成される保存されたエピトープが露出される。5TA分子のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を下記に示す。
改変HA−5TAのヌクレオチド配列(配列番号9):
ATGGAGAAAATAGTGCTTCTTTTTGCAATAGTCAGTCTTGTTAAAAGTGATCAGATTTGCATTGGTTACCATGCAAACAACTCGACAGAGCAGGTTGACACAATAATGGAAAAGAACGTTACTGTTACACATGCCCAAGACATACTGGAAAAGAAACACAACGGGAAGCTCTGCGATCTAGATGGAGTGAAGCCTCCACAGAGAGAAAGAAGAAGAAAGAAGAGACTAATTTTGAGAGATTGTAGCGTAGCTGGATGGCTCCTCGGAAACCCAATGTGTGACGAATTCATCAATGTGCCGGAATGGTCTTACATAGTGGAGAAGGCCAATCCAGTCAATGACCTCTGTTACCCAGGGGATTTCAATGACTATGAAGAATTGAAACACCTATTGAGCAGAATAAACCATTTTGAGAAAATTCAGATCATCCCCAAAAGTTCTTGGTCCAGTCATGAAGCCTCATTAGGGGTGAGCTCAGCATGTCCATACCAGGGAAAGTCCTCCTTTTTCAGAAATGTGGTATGGCTTATCAAAAAGAACAGTACATACCCAACAATAAAGAGGAGCTACAATAATACCAACCAAGAAGATCTTTTGGTACTGTGGGGGATTCACCATCCTAATGATGCGGCAGAGCAGACAAAGCTCTATCAAAACCCAACCACCTATATTTCCGTTGGGACATCAACACTAAACCAGAGATTGGTACCAAGAATAGCTACTAGATCCAAAGTAAACGGGCAAAGTGGAAGGATGGAGTTCTTCTGGACAATTTTAAAGCCGAATGATGCAATCAACTTCGAGAGTAATGGAAATTTCATTGCTCCAGAATATGCATACAAAATTGTCAAGAAAGGGGACTCAACAATTCCACAGAGAGAAAGAAGAAGAAAGAAGAGAATGAAAAGTGAATTGGAATATGGTAACTGCAACACCAAGTGTCAAACTCCAATGGGGGCGATAAACTCTAGCATGCCATTCCACAATATACACCCTCTCACCATTGGGGAATGCCCCAAATATGTGAAATCAAACAGATTAGTCCTTGCGACTGGGCTCAGAAATAGCCCTCAAAGAGAGAGAAGAAGAAAGAAGAGAGGATTATTTGGAGCTATAGCAGGTTTTATAGAGGGAGGATGGCAGGGAATGGTAGATGGTTGGTATGGGTACCACCATAGCAATGAGCAGGGGAGTGGGTACGCTGCAGACAAAGAATCCACTCAAAAGGCAATAGATGGAGTCACCAATAAGGTCAACTCGATCATTGACAAAATGAACACTCAGTTTGAGGCCGTTGGAAGGGAATTTAACAACTTAGAAAGGAGAATAGAGAATTTAAACAAGAAGATGGAAGACGGGTTCCTAGATGTCTGGACTTATAATGCTGAACTTCTGGTTCTCATGGAAAATGAGAGAACTCTAGACTTTCATGACTCAAATGTCAAGAACCTTTACGACAAGGTCCGACTACAGCTTAGGGATAATGCAAAGGAGCTGGGTAACGGTTGTTTCGAGTTCTATCATAAATGTGATAATGAATGTATGGAAAGTGTAAGAAATGGAACGTATGACTACCCGCAGTATTCAGAAGAAGCGAGACTAAAAAGAGAGGAAATAAGTGGAGTAAAATTGGAATCAATAGGAATTTACCAAATACTGTCAATTTATTCTACAGTGGCGAGTTCCCTAGCACTGGCAATCATGGTAGCTGGTCTATCCTTATGGATGTGCTCCAATGGGTCGTTACAATGCAGAATTTGCATTTAA
改変HA−5TAのアミノ酸配列(配列番号10):
MEKIVLLFAIVSLVKSDQICIGYHANNSTEQVDTIMEKNVTVTHAQDILEKKHNGKLCDLDGVKPPQRERRRKKRLILRDCSVAGWLLGNPMCDEFINVPEWSYIVEKANPVNDLCYPGDFNDYEELKHLLSRINHFEKIQIIPKSSWSSHEASLGVSSACPYQGKSSFFRNVVWLIKKNSTYPTIKRSYNNTNQEDLLVLWGIHHPNDAAEQTKLYQNPTTYISVGTSTLNQRLVPRIATRSKVNGQSGRMEFFWTILKPNDAINFESNGNFIAPEYAYKIVKKGDSTIPQRERRRKKRMKSELEYGNCNTKCQTPMGAINSSMPFHNIHPLTIGECPKYVKSNRLVLATGLRNSPQRERRRKKRGLFGAIAGFIEGGWQGMVDGWYGYHHSNEQGSGYAADKESTQKAIDGVTNKVNSIIDKMNTQFEAVGREFNNLERRIENLNKKMEDGFLDVWTYNAELLVLMENERTLDFHDSNVKNLYDKVRLQLRDNAKELGNGCFEFYHKCDNECMESVRNGTYDYPQYSEEARLKREEISGVKLESIGIYQILSIYSTVASSLALAIMVAGLSLWMCSNGSLQCRICI
【0125】
これらの改変構造は典型的には、HA1ドメインの大部分を欠損し、イムノドミナントエピトープの大半を除去してあるが、HA1およびHA2サブユニットの代替構造に結合した移行シグナル配列を含む短いNH2末端領域を維持している。HA分子の特定の修飾をDNAレベルで行い、その後VLPのアセンブリーに必要な遺伝子の組み合わせと共にサブクローニングする。
【0126】
真核発現系において修飾HA遺伝子単独で、またはM1(または機能的に類似の基質タンパク質)、M2、NAおよびNPと共に、すなわち組み合わせて修飾HA遺伝子を合成すると、その表面に様々な修飾HA分子を提示する小胞粒子またはウイルス様粒子(VLP)が産生される。修飾HAの構造により、様々なインフルエンザウイルスサブタイプおよび抗原変異体に対して強力で広い防御免疫応答をこの構造内で引き起こすことができる保存されたサブドミナントエピトープの抗原プロファイルが示される。
【0127】
したがって、このワクチンは、新たなミュータントに効果がある広範囲の保護作用を与え、その有効性を長期間持続させる。上記に詳述したように、適切なVLPを産生して評価する様々な方法が当業者に公知である。たとえば、修飾HAをコードするDNA配列などVLPの形成に必要な遺伝子は、真核細胞を用いて発現させることができる。VLPの産生には、以下に限定されるものではないが、プラスミド、ベクター、ウイルス、または単一もしくは複数の遺伝子を細胞に導入して発現させる他の方法を用いるバキュロウイルス/昆虫細胞系、一過性にまたは安定にトランスフェクトされた哺乳動物細胞、酵母細胞、植物細胞または原核細胞など他の組換え発現系を使用する。産生されたVLPについて、イムノドミナント領域およびサブドミナント領域を認識する抗体との反応性を試験する。保存されたサブドミナントエピトープを認識する抗体と反応する修飾HAを有するVLP構造体を使用して動物を免役し、野生型のインタクトなウイルスに対する血清の中和能、およびマウスおよびフェレットの攻撃ウイルスに対して広い防御免疫応答を惹起する能力を評価する。
【0128】
また上記のように、記載したVLPワクチン(本明細書に記載するようなA型およびB型ウイルスの修飾HAとアセンブルしたVLPを用いて製剤化したもの)でヒトまたはインフルエンザに対して感受性がある他の種を免疫化すると、A型およびB型インフルエンザウイルスのサブタイプおよび抗原変異体ならびにそれらの抗原変異体から保護できる広い中和免疫応答が惹起される。
【0129】
実施例2:特有のHA分子を提示するウイルス様粒子(VLP)を産生するための、複数の遺伝子を有する哺乳動物のDNAプラスミドベクターまたは組換えバキュロウイルスの作製
この例では、VLPの産生に必要なコンストラクトの作製について記載する。作製されるコンストラクトの一般的な構造を図6に示す。遺伝子発現の高度で持続可能なレベルだけでなく、安定にトランスフェクトされた細胞の産生速度をも高める特有の調節配列を含む哺乳動物プラスミド(ベクター、図6、パネルI)に目的の遺伝子をサブクローニングする。VLPを産生する別の方法は、バキュロウイルス−昆虫細胞発現系の利用である。作製されるコンストラクトの全体的な構造を図6のパネルIIに示す。
【0130】
遺伝子各々が哺乳動物プロモーター(CMVプロモーターまたはプロモーターA)の転写制御下となるように、適切な制限部位を使用してインフルエンザM1およびM2遺伝子を哺乳動物プラスミド発現ベクターに連続的にサブクローニングした。さらに、インフルエンザM1およびM2遺伝子をクローニングしたプラスミドは、抗生物質選択マーカー(たとえば、ハイグロマイシン、ピューロマイシンまたはネオマイシン)と、各遺伝子の上流に、哺乳動物染色体内にDNAが組み込まれた後にオープンクロマチン状態を維持する特定の配列とを含んでいた。したがって、これらのコンストラクトは、一過性または安定なタンパク質発現実験を行うのに好適なものである。
【0131】
蛍光セルソーティングを用いた、安定にトランスフェクトされた哺乳動物細胞の選択の例を図8A〜図8Cに示す。さらに、安定にトランスフェクトされたMDCKおよびCHO細胞のM1/M2タンパク質の発現レベルをぞれぞれ図9Aおよび図9Bに示す。
【0132】
遺伝子が各々哺乳動物プロモーター(CMVプロモーターまたはプロモーターA)の転写制御下となるように、適切な制限部位を用いて改変HAおよびNA遺伝子を別の哺乳動物プラスミド発現ベクターにサブクローニングした。
【0133】
各コンストラクトの完成後、制限酵素解析およびシーケンシングにより遺伝子の方向性および完全性を確認した。MAX Efficiency Stbl2コンピテントE.コリ(E.Coli)細胞を形質転換し、maxi−prepによるDNA調製(Qiagen,Valencia,CA)を行って各コンストラクトのプラスミドDNAをさらに増幅した。分光光度法によりプラスミドDNAの濃度を判定した。一過性トランスフェクションは環状DNAを利用して行ったのに対し、安定な細胞株を産生するためのトランスフェクションは、I−SceI制限酵素で切断した直鎖DNAを用いて行った。
【0134】
昆虫細胞を用いてVLPを産生するためバキュロウイルストランスファーベクターを作製した。図6のパネルIIに図示するように4つのインフルエンザ遺伝子を単一のプラスミドにサブクローニングし、バキュロウイルスプロモーターの転写制御下とした。前述のつのように、制限酵素解析およびシーケンシングにより遺伝子の方向性および完全性を確認した。maxi−prepによるDNA調製を行ってプラスミドDNAをさらに増幅した。直線化したバキュロウイルスDNAとトランスファーベクター(4つのインフルエンザ遺伝子を有する)をSf9昆虫細胞にコトランスフェクトすると、VLPワクチンを産生するための組換えバキュロウイルスが作製される。
【0135】
実施例3:エレクトロポレーションによる哺乳動物細胞へのDNAプラスミドのトランスフェクション
実施例2に記載されているような所望のベクターの作製後、ベクターを利用して哺乳動物細胞(CHO、Vero、MDCK、WI−38またはMRC5)でVLPを産生した。
【0136】
安定にトランスフェクトされた細胞を作製するため、直線化したDNAをエレクトロポレーションにより細胞に導入した。簡単に説明すると、DNAのエレクトロポレーションの24時間前に、24時間で80〜85%コンフルエントな単層が形成されるように、選択した細胞を約4百万個の細胞濃度でT−175フラスコに播種した。エレクトロポレーションの前に、細胞単層を8mlの1×PBS(Gibco)で1回洗浄してから、4mlの1×トリプシン−EDTA(Gibco)で処理し、5分間37℃でインキュベートした。フラスコに10%FBS(Invitrogen,San Diego,CA)を含む6mlのDMEM(Gibco)を加えて細胞を再懸濁し、チューブに集め、その後500×gで5分間遠心分離によりペレット状にした。細胞ペレットを5mlの氷冷1×RPMI1640(Cellgro,Mediatech,Manassas,VA)で2回洗浄し、次いで500μlの氷冷1×RPMIに再懸濁した。
【0137】
細胞懸濁液に、M1/M2を発現する6gの直線化したプラスミド、またはM1/M2とNA/改変HAを発現するプラスミドを加え、ピペッティングにより穏やかに混合し、次いで0.4cmギャップエレクトロポレーションキュベット(Bio−Rad,Hercules,CA)に移した。キュベットをBio−Rad Gene Pulsarに入れ、以下のパラメーター:400V、960μFを用いて細胞にエレクトロポレーションを行った。エレクトロポレーションを行った細胞を室温で5分間維持し、次いで10%FBSおよびペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco)を含むDMEMを含む6ウェルプレートに移し、37℃、5%CO2でインキュベートした。エレクトロポレーションから6時間後、培地を吸引し、細胞を1×PBSで1回洗浄し、新鮮培地を加えた。抗生物質選択が開始されるまで37℃、5%COで細胞をインキュベートした。
【0138】
懸濁液細胞、たとえばCHO細胞株のエレクトロポレーションには、改変プロトコルを使用した。トリプシン処理を必要とすることなく、細胞を培養容器から直接集めた。その後、上記のようなステップを行った。
【0139】
実施例4:化学的方法による哺乳動物細胞へのDNAプラスミドのトランスフェクション
トランスフェクションのため、5mlのCHO−S−SFM II培地(CHO細胞)、または5%ウシ胎仔血清(FBS)(Invitrogen,Carlsbad,CA)を補充した10mlのDMEM(Vero、MDCK、MRC5、WI−38)を用いて哺乳動物細胞(CHO、Vero、MDCK、MRC5またはWI−38)を1.5×10〜2.5×10細胞/mlの密度で適切な培養容器(CHO細胞の場合、25cm2フラスコ、またはVero、MDCK、MRC5またはWI−38細胞の場合75cm2フラスコ)に蒔いて調製した。トランスフェクション手順の開始の24時間前に接着細胞(Vero、MDCK、MRC5、WI−38)を蒔いた。
【0140】
このステップ後、プラスミドDNAとリポフェクタミンとのDNA−脂質複合体形成反応を準備した。一方のチューブで目的のプラスミドDNAまたはその混合物を500μlのOpti−MEM培地で希釈し、他方のチューブで20μlのリポフェクタミン2000を480μlのOpti−MEM培地(Invitrogen,Carlsbad,CA)で希釈した。リポフェクタミン−OptiMEM混合物を室温で5分間インキュベートした。
【0141】
このステップ後、プラスミドDNA−OptiMEM混合物をリポフェクタミン−OptiMEM混合物と組み合わせて、反応を室温で20分間進行させた。次いでDNA−リポフェクタミン複合体を、上記のように既に蒔いてあった細胞に加えた。CHO細胞の場合、DNA−リポフェクタミン複合体の添加から5時間後、25cm2フラスコの内容物の2.5mlを別の25cm2フラスコに移し、両方のフラスコに4.5mlのCHO−S−SFM II培地を加えた。培養フラスコ内で接着細胞を維持し、5mlの新鮮な培地を加えた。細胞への毒性があることを証明できた抗生物質をDNA−脂質複合体に取り込ませることにより細胞の内部に送達することができたため、トランスフェクションプロセスに使用した試薬または培地は、抗生物質をまったく含んでいなかった。
【0142】
目的のタンパク質を一過性に発現させてVLPを産生するため、DNAがネイティブな環状形態であるDNA−脂質複合体の形態でプラスミドを細胞に導入した。トランスフェクト細胞のライセートおよび培養上清におけるVLPタンパク質の発現をトランスフェクションから72〜96時間後に評価した。
【0143】
目的のプラスミドに細胞の染色体DNAを組み込み、連続的なタンパク質発現状態を確立する、安定にトランスフェクトされた細胞を作製するため、細胞に導入したプラスミドが直鎖構造であること以外はトランスフェクションの手順に従った。目的の遺伝子をクローニングしたプラスミドは、抗生物質耐性マーカー、たとえばハイグロマイシン、ピューロマイシンまたはネオマイシンをさらに含む。このため、トランスフェクションから48〜96時間後に、プラスミドにより送達される耐性遺伝子に基づき最適な抗生物質を培養基に加えて細胞を選択した。選択から8〜10日後、蛍光活性化セルソーター(FACS)を用いて表面タンパク質の発現および検出に基づき、抗生物質の存在下で増殖した細胞を単離した。
【0144】
実施例5:タンパク質の一過性発現のための環状DNAのトランスフェクション、および改変HAを提示するVLPのアセンブリー
エレクトロポレーションあるいは化学的トランスフェクションにより未切断環状プラスミドの組み合わせを哺乳動物細胞に導入してVLP産生の評価を行った。この例では、M1/M2ベクターをNA/HA(改変、図1)と組み合わせて、上述の2つのトランスフェクション方法のどちらかにより哺乳動物細胞(CHO、MDCK、MRC5またはWI−38)に送達した。
【0145】
細胞ライセート、培養上清および濃縮精製された上清のウエスタンブロット解析から、図10に示すようにこれらのタンパク質が細胞に発現し、培養基に放出されることが明らかになった。さらに、ネガティブ染色電子顕微鏡観察およびクライオ電子顕微鏡法により、これらの細胞に産生および放出され濃縮および精製した材料を調べた。これらの研究から、インフルエンザウイルスなどのエンベロープウイルス粒子に似たウイルス様粒子の存在が明らかになった(図11)。
【0146】
実施例6:安定にトランスフェクトされた哺乳動物細胞を作製するための、直線化したDNAのトランスフェクション
直線化したプラスミドDNAを哺乳動物細胞にトランスフェクトすると、プラスミドが宿主細胞のゲノムに組み込まれる。実施例1に記載したコンストラクトのいずれかの直鎖形態を送達すると、プラスミドが組み込まれ、その後ベクターDNAが有する遺伝子が発現する。この戦略により、目的の遺伝子産物を構成的に発現する安定にトランスフェクトされた細胞株の産生が可能になる。
【0147】
このアプローチに従い、直線化したM1/M2ベクター(図6A)をエレクトロポレーションまたは化学的トランスフェクションによりMDCK細胞、Vero細胞またはCHO細胞に導入した。このステップ後、プラスミドが有する抗生物質耐性遺伝子に基づいて選択した1種の抗生物質(ハイグロマイシン、ピューロマイシンまたはネオマイシン)で細胞を処理した。M1/M2ベクターはハイグロマイシン耐性遺伝子を含んでおり、したがってこのプラスミドをトランスフェクトした細胞をその抗生物質で処理して安定にトランスフェクトされた細胞株を選択した。抗生物質の存在下で増殖した細胞について、その表面でのM2タンパク質の発現を蛍光活性化セルソーター(FACS)を用いて試験し、クローニングした。
【0148】
図8は、細胞集団の一部がM2タンパク質を発現することを明らかにする、M1/M2をトランスフェクトしたCHO細胞のFACSヒストグラムを示す。複数の細胞クローンを増殖させ、M1およびM2タンパク質の両方の発現をウエスタンブロットによりさらに解析した。
【0149】
さらに、図9AおよびBに示すように、選択したM1/M2が安定にトランスフェクトされたMDCKおよびCHO細胞株は、これらのタンパク質を構成的に発現する。これらの細胞株に、特有のHA分子を提示するインフルエンザウイルス様粒子のアセンブリーおよび放出のためNA/HA(改変)(図1〜5)を有するベクターをトランスフェクトしてもよい。
【0150】
実施例7:安定にトランスフェクトされた哺乳動物細胞の選択
次いで目的の遺伝子をコードする直線化したプラスミドをトランスフェクトした哺乳動物細胞を抗生物質処理に付し、トランスフェクトされたプラスミドが宿主細胞ゲノムに組み込まれた細胞を選別した。トランスフェクトされたプラスミド は、ハイグロマイシン、ピューロマイシンまたはネオマイシンのいずれかに耐性を付与する抗生物質耐性カセットを含む。
【0151】
トランスフェクションから約48〜72時間後、細胞培養基に適切な濃度の抗生物質(400ug/mlのハイグロマイシン、10ug/mlのピューロマイシンまたは10ug/mlのネオマイシン)を加えて細胞に選択圧をかけ、この培地でトランスフェクト細胞を数回にわたり継代した。このプロセスにより、トランスフェクトされたプラスミドから染色体に遺伝子が組み込まれた細胞のみが生存することができ、残りの集団から選別された。
【0152】
実施例8:M1/M2をトランスフェクトした細胞の蛍光活性化セルソーター(FACS)解析
上記のように得た細胞を組織培養フラスコから回収し、500×gで5分間連続遠心分離により3回洗浄し、続いてリン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)に再懸濁した。3回目の洗浄の後、細胞をカウントし、それぞれ5×10細胞の3つのアリコートに分けた。細胞表面のM2発現でソートすることになっていた第1のアリコートは、PBSで1:500に希釈した抗M2モノクローナル抗体(Abcam Inc,Cambridge,MA)と室温で1時間インキュベートした。第2のアリコートは、PBSで1:200に希釈したインフルエンザAヌクレオプロテインに対するモノクローナル抗体(Meridian Life Sciences,Saco,ME)と室温で1時間インキュベートした。このアリコートは、フローサイトメトリー実験のアイソタイプコントロールとした。第3のアリコートは、本実験の未染色の対照とした。
【0153】
それぞれの抗体とのインキュベーション後、細胞をPBSで3回洗浄し、PBSで1:100に希釈したフルオレセインイソチオシアネート(FITC)標識抗マウス抗体(Abcam Inc,Cambridge,MA)と室温で1時間インキュベートした。これらの処理後、細胞をPBSで3回洗浄し、3mlを最終容量とした細胞培養基に再懸濁した。次いでこれらのサンプルをMoFloセルソーターで解析した。
【0154】
特有の緑色蛍光スペクトルで判定して細胞表面に高レベルのM2タンパク質を発現した細胞を1細胞/ウェルとして、各ウェルに100μlの細胞培養基を含む96ウェルプレートにソートした。図8は、M1/M2トランスフェクト細胞を用いて行ったソーティング実験を示す。
【0155】
この選択方法は、本明細書に記載のコンストラクトのいずれか(たとえば、図1〜5)をトランスフェクトした細胞の同定および単離に応用される。NA/HA改変1(図1)を有するDNAベクターをトランスフェクトした細胞は、細胞表面に表示されるNAおよびHAタンパク質の両方を発現するため、これらのタンパク質を持続的に発現する安定にトランスフェクトされたクローンの同定および単離が可能になる。HAによる選択には、改変HA分子の保存されたエピトープを認識する広い中和モノクローナル抗体を使用する。第1の安定にトランスフェクトされた細胞株の作製後、第2のトランスフェクションを行い、この基礎となる細胞株の宿主ゲノムに遺伝子のもう1つの組を導入し、組み込む。この戦略を図7Bに示す。さらに、2回目のトランスフェクションで作製された安定にトランスフェクトされた細胞株の同定および選択をFACS分析により行う。図6に示すベクターコンストラクト(パネルIに示すコンストラクト)により送達されるNAを含むまたは含まない改変HAの5つのコンストラクトは、表面分子であり、細胞膜に提示され、したがって改変HA分子を含むVLPを持続的に産生する安定にトランスフェクトされた細胞株を同定および選択するFACS戦略に好適である。
【0156】
実施例9:安定にトランスフェクトされ、構成的に産生されるM1およびM2インフルエンザタンパク質のエンドポイントクローニングおよび増殖
安定にトランスフェクトされた細胞集団からクローン細胞株を取得するため、エンドポイントクローニングを実施した。細胞を回収し、血球計数器を用いてカウントした。次いで最終濃度が10細胞/mlになるように適切な量の培養基で細胞を希釈した。この細胞調製物を穏やかに撹拌して細胞が均一に分布するようにしてから、100μl/ウェルで滅菌96ウェルプレートに蒔いた。次いでプレートを5%CO2の湿潤雰囲気、37℃でインキュベートし、クローンの細胞増殖について定期的にモニターした。活発に増殖している細胞を含むウェルを一定期間にわたり特定した。これらのウェルのクローン細胞が約70〜80%コンフルエントになったとき、6ウェルプレート、25cmおよび75cmフラスコに連続継代してスケールアップした。
【0157】
実施例10:タンパク質発現の解析
トランスフェクトされた哺乳動物細胞の細胞ペレットおよび上清についてタンパク質発現の解析を行った。トランスフェクトされた(Tranfected)細胞を回収し、1×PBSで洗浄し、RIPA緩衝液[トリス−HCl(pH7.4)50mM、塩化ナトリウム150mM、EDTA1mM、1%トリトンX−100、1%NP−40、0.1%硫酸ドデシルナトリウム]に再懸濁し、次いで凍結融解サイクルにより破壊し、ピペッティングし、最後にその後使用するまで−20℃で保存した。各サンプルの総タンパク質濃度をBradford法により推定した。簡単に説明すると、10μlのサンプルを、室温に予め温めておいた1.0mlの1×Bradford色素試薬(Bio−Rad Inc.,Hercules,CA)に加えた。次いでこの反応混合物を激しく振盪して均一な溶液を得た。分光光度計を使用して595nmの波長で各サンプルの吸光度を測定した。Bradfordアッセイを用いて既知濃度のウシ血清アルブミンの595nmの吸光度を測定してプロットした標準曲線を用いて各サンプルのタンパク質濃度を判定した。
【0158】
ウエスタンブロット解析のため、等量のタンパク質をSDS−PAGEにロードし、125Vで1.5時間電気泳動により分離した。その後、タンパク質をニトロセルロースまたはPVDF膜にエレクトロブロットし、以下のステップ:ブロッキング、一次抗体とのインキュベーション、洗浄、西洋わさびペルオキシダーゼコンジュゲート二次抗体とのインキュベーション、再度洗浄、最後に化学発光基質との反応およびシグナル検出を含むウエスタンブロット手順に付した。
【0159】
実施例11:インフルエンザM1およびM2タンパク質を持続的に発現する細胞株の選択
M1およびM2インフルエンザ遺伝子を有する直線化したDNAベクターを、MDCK細胞およびCHO細胞にエレクトロポレーションによりトランスフェクトした。ハイグロマイシンによる選択後、細胞を抗体の組み合わせ(最初に一次抗体として、細胞表面に発現したM2タンパク質と反応した抗M2マウスモノクローナル、続いて二次抗体としてフルオレッセインコンジュゲート抗マウス抗体)で標識してから、蛍光活性化セルソーター(FACS)を用いて単細胞クローンを単離した。
【0160】
ソートした単細胞を増殖し、ウエスタンブロットによりM1およびM2タンパク質の発現をさらに評価した。細胞を溶解し、SDS−PAGE(10〜20%)にロードし、電気泳動により分離した。タンパク質をPVDF膜に転写し、4%脱脂乳で1時間ブロッキングした。次いで膜をマウスモノクローナル抗M1タンパク質(1:40,000希釈)およびマウスモノクローナル抗M2タンパク質(1:1000希釈)(Abcam、クローン14C2)と一晩インキュベートした。膜を1×TBSTで5分間3回洗浄し、次いで西洋わさびペルオキシダーゼコンジュゲートヤギ抗マウスIgG(2%脱脂乳で1:50,000希釈)(Thermo Scientific,Rockford,IL)と1時間インキュベートした。膜を1×TBSTで10分間3回洗浄し、続いてSuperSignal West Pico化学発光基質(Thermo Scientific,Rockford,IL)と5分インキュベーションした。膜をHyBIot CLオートラジオグラフィーフィルム(Denville Scientific,Metuchen,NJ)に密着させた。
【0161】
図9Aレーン3に示すように、MDCK細胞ライセートには、分子量(MW)約27kDAのM1タンパク質、およびMW約11kDAのM2タンパク質に対応する2つの主要なバンドが出現したのに対し、トランスフェクトされなかった対照は、これらのタンパク質の存在を示さなかった。レーン1はタンパク質マーカー、レーン2はインフルエンザM1およびM2タンパク質を発現しないMDCK細胞(陰性対照)、レーン3はインフルエンザM1およびM2タンパク質を構成的に発現するMDCK細胞である。図9Bに示すように同じプラスミドをCHO細胞に導入した場合、さらにVERO細胞でも、同様の結果が得られた。
【0162】
実施例12
M1/M2を産生する細胞における改変HA/NAタンパク質の発現
NAを含むまたは含まない改変HA分子(図6パネルI−HA/NA)を有するDNAベクターを、M1/M2DNAベクター(図1−パネルI−M1/M2)と一緒に、あるいは、M1/M2を発現している細胞にトランスフェクトすると、これらのタンパク質が発現し、タンパク質は、細胞ライセートだけでなく、細胞上清および濃縮精製された上清にも存在した。
【0163】
これらのサンプルのウエスタンブロット解析を図10に示し、これにより、トランスフェクト細胞にM1、M2およびHAタンパク質が発現することが示される。
【0164】
実施例13
ネガティブ染色電子顕微鏡観察によるインフルエンザVLPの調査
トランスフェクト細胞の上清を200,000×g、4℃で1.5時間超遠心に付した。超遠心後のペレットをPBSに再懸濁し、再懸濁したペレットの20μlを電子顕微鏡観察用に確保した。この20μlのサンプルを4%パラホルムアルデヒドで固定してから、固定材料の5μlを200メッシュのカーボンコートしたグリッド(EMS,Hatfield,PA)に載せ、グリッドを5分間カバーし、次いで水で3回洗浄した。この後、コートしたグリッドに2%酢酸ウラニルを、グリッドを酢酸ウラニルで過剰染色しないように素早く5滴滴下した。グリッドから過剰な溶液をブロットし、次いで風乾してからこれをJOEL JEM 100CX透過型電子顕微鏡に導入した。サンプルは、60,000×〜100,000×の倍率で観察した。
【0165】
図11は、M1/M2−HA/NA CHO細胞の精製された上清から得られた画像を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの基質タンパク質;および
修飾インフルエンザHAポリペプチドを含み、前記修飾は、前記HAポリペプチドの膜貫通および細胞質尾部ドメインの外側に1つまたは複数のアミノ酸残基の欠失を含むことを特徴とする
ウイルス様粒子(VLP)。
【請求項2】
請求項1に記載のVLPにおいて、前記欠失は少なくとも150アミノ酸の残基の欠失を含むことを特徴とするVLP。
【請求項3】
請求項1または2に記載のVLPにおいて、前記修飾インフルエンザHAポリペプチドの少なくとも1つの残基が変異していることを特徴とするVLP。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載のVLPにおいて、少なくとも1つのタンパク質分解開裂部位または少なくとも1つのリンカーが前記修飾インフルエンザHAポリペプチドに挿入されていることを特徴とするVLP。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載のVLPにおいて、前記修飾インフルエンザHAポリペプチドの前記膜貫通ドメインは前記修飾インフルエンザHAポリペプチドと異なる株もしくはサブタイプ由来のHA膜貫通ドメインで置換されている、および/または、前記修飾インフルエンザHAポリペプチドの前記細胞質ドメインは前記修飾インフルエンザHAポリペプチドと異なる株またはサブタイプ由来のHA細胞質ドメインで置換されていることを特徴とするVLP。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載のVLPにおいて、別のインフルエンザタンパク質、たとえば1つまたは複数の野生型基質タンパク質、1つまたは複数の変異基質タンパク質、1つまたは複数のハイブリッド基質タンパク質、1つまたは複数の変異およびハイブリッド基質タンパク質 1つまたは複数の野生型抗原性糖タンパク質、1つまたは複数の修飾抗原性糖タンパク質、1つまたは複数のハイブリッド抗原性糖タンパク質、1つまたは複数の修飾およびハイブリッド抗原性糖タンパク質、1つまたは複数のヌクレオプロテイン(NP)、1つまたは複数のPB1タンパク質、1つまたは複数のPB2タンパク質、1つまたは複数のPAタンパク質またはこれらの組み合わせをさらに含むことを特徴とするVLP。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載のVLPにおいて、前記VLPはVLPのアセンブリーおよび放出を可能にする条件下で真核細胞に発現することを特徴とするVLP。
【請求項8】
請求項7に記載のVLPにおいて、前記真核細胞は酵母細胞、昆虫細胞、両生類細胞、トリ細胞、植物細胞または哺乳動物細胞からなる群から選択されることを特徴とするVLP。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか1項に記載のVLPを産生する方法において、
少なくとも1つの基質タンパク質および少なくとも1つの修飾インフルエンザHAポリペプチドをコードする1つまたは複数のベクターを好適な宿主細胞にトランスフェクトするステップと、VLPの形成を可能にする条件下で前記タンパク質の組み合わせを発現させるステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、少なくとも1つの基質タンパク質はインフルエンザM1タンパク質、トゴ(thogoto)基質タンパク質およびRSV基質タンパク質からなる群から選択され、さらに少なくとも1つのベクターが任意選択的にインフルエンザM2タンパク質をコードする配列をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項9または10に記載の方法において、前記1つまたは複数のベクターは前記宿主細胞に安定にトランスフェクトされ、任意選択的に前記少なくとも1つの基質タンパク質および前記修飾インフルエンザHAポリペプチドが別々のベクターにコードされ、さらに前記少なくとも1つの基質タンパク質をコードする前記ベクターは、前記修飾インフルエンザHAポリペプチドタンパク質をコードする前記ベクターをトランスフェクトする前に前記細胞に安定にトランスフェクトされることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1〜8の何れか1項に記載の少なくとも1つのVLP、および任意選択的にアジュバントをさらに含むことを特徴とする免疫原性組成物。
【請求項13】
請求項12に記載の免疫原性組成物において、前記組成物は異なる修飾インフルエンザHAポリペプチドを含む少なくとも2つのVLPを含むことを特徴とする免疫原性組成物。
【請求項14】
被検体内でインフルエンザに対する免疫応答を引き起こす方法において、請求項1〜8の何れか1項に記載のVLPまたは請求項12もしくは13に記載の免疫原性組成物を有効量で前記被検体に投与することを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、前記組成物は粘膜投与、皮内投与、皮下投与、筋肉内投与または経口投与されることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項14または15に記載の方法において、前記免疫応答はインフルエンザの複数の株またはサブタイプから前記被検体を保護することを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2013−520167(P2013−520167A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553903(P2012−553903)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【国際出願番号】PCT/US2011/000300
【国際公開番号】WO2011/102900
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(512212069)テクノヴァックス,インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】TECHNOVAX,INC.
【Fターム(参考)】