説明

三層積層体布帛

【課題】裏面の引っ掛かりや摩耗に対する物性と風合いが良い三層積層体布帛であり、外観品位が良く衣類にしたときに着用しやすく、動きやすい積層体を提供すること。
【解決手段】表面層1として織物、編物、不織布の群から選ばれる一種を使用し、中層2に樹脂フィルムを使用し、裏面層3に33デシテックス以下の合成繊維マルチフィラメント糸条からなり6.45cm2 当たりの編目数が5,500〜12,000個のシングル丸編地を使用し、これらが積層されてなり、該裏面層の平均摩擦係数が0.05〜0.19であることを特徴とする三層積層体布帛。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防風性、防水性、透湿防水性に優れ、雨具、登山着、スポーツウェア、作業着などの各種衣料用として好適に用いられる三層の積層体布帛に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から防風性や防水性、透湿防水性などが要求される衣料用途向けの布帛として、織物や編物または不織布などの生地の片面にコーティングもしくはラミネートの手段で樹脂フィルムを積層し、要求性能を満たした二層積層体からなる布帛が提案されている。
【0003】
しかし、織物や編物または不織布などの生地とフィルムを積層した二層積層布帛の場合、樹脂フィルムが剥離や損傷しやすく、そのため、性能が低下してしまうことや、樹脂フィルムが肌に直接接触した際にべたつき触感が良くないという問題があった。
【0004】
そうした問題を解決するため、織物や編物または不織布などの生地が積層されていないフィルムの面にも、織物や編物または不織布などの生地を積層させて三層の積層体とし、それにより樹脂フィルムの剥離や損傷、べたつきを抑えた布帛が提供されている。
【0005】
例えば、撥水性ナイロンタフタ、親水性ポリウレタン樹脂で処理された多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜(フィルム)およびナイロントリコット編地を積層した三層積層体布帛が提案されている(特許文献1)。
【0006】
このような三層積層体布帛で裏面として使用する生地には、三層積層体の厚みや目付を増加させないように薄く軽いことや、あるいは肌に接触した際のべたつきを抑えることが求められる。そのために生地表面に編組織上、凹凸構造があるトリコット編地が使用されることが多い。しかし、裏面にトリコット編地を使用する場合、トリコット編地の凹凸構造に面ファスナーのフック側(クラレファスニング(株)製「NEW ECO MAGIC」)やボタンなどが引っ掛かりやすく、摩耗によって劣化するという重大な問題があった。
【0007】
また、可撓性の防水透湿性フィルムに織物が積層されている積層体であって、該織物は平織組織からなりかつ該積層体を繊維製品に加工する際に目止め処理が施される側に積層されていて、該織物を構成する経糸および緯糸のそれぞれのカバーファクターの合計値が700〜1,300、該経糸および緯糸の繊度が55デシテックス以下であるという三層積層体布帛が提案されている(特許文献2(段落0055等参照))。
【0008】
この三層積層体の布帛は、例えば裏面として織物が使用されていることにより、摩耗による劣化を抑えることができる。しかし、織物は編物より風合いが硬い傾向にあるため、肌面となる裏面に使用することは好ましくない。また、織物はその重量を軽くするために密度を低下させると、外観品位が悪くなり、また風合いがさらに悪くなるという問題がある。
【0009】
また、基布の片面に透湿防水層を積層し、さらにその上に、総繊度が16デシテックス以下の加工糸を用いてなる布帛Aを積層した三層構造の透湿防水性布帛が提案されている(特許文献3)。
【0010】
しかし、この特許文献3に提案されている透湿防水布帛は、軽量性に優れることを特徴とするもので、布帛Aが織物の場合は風合いに問題があり、編物の場合は引っ掛かりや摩擦により劣化するという物性面の問題がある。
【0011】
以上のように、裏面の引っ掛かりや摩耗に対する物性と風合いの全てが良いという三層積層体布帛は、いまだ実現されていないのが実状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開昭55−7483号公報
【特許文献2】特許第4048229号公報
【特許文献3】特開2010−201811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、上述したような点に鑑み、積層体の裏面の引っ掛かりや摩耗に対する物性と風合いの問題を解決し、衣類にしたときに着やすく、動きやすい三層積層体布帛を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
かかる目的を達成するために、本発明の三層積層体布帛は、以下の(1)の構成を有するものである。
(1)表面層として織物、編物、不織布の群から選ばれる一種を使用し、中層に樹脂フィルムを使用し、裏面層に33デシテックス以下の合成繊維マルチフィラメント糸条からなり6.45cm2 当たりの編目数が5,500〜12,000個のシングル丸編地を使用し、これらが積層されてなり、該裏面層の平均摩擦係数が0.05〜0.19であることを特徴とする三層積層体布帛。
【0015】
また、かかる本発明の三層積層体布帛において、好ましくは以下の(2)〜(6)のいずれかの構成からなるものである。
(2)上記合成繊維マルチフィラメント糸条が、捲縮を有さないストレートヤーンであることを特徴とする上記(1)記載の三層積層体布帛。
(3)前記三層積層体布帛の裏面層の平均表面粗さが、7μm以下であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の三層積層体布帛。
(4)前記シングル丸編地のカバーファクター(CF)が、400〜900の範囲であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の三層積層体布帛。
(5)前記三層積層体布帛の目付が、50〜150g/m2 であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の三層積層体布帛。
(6)前記三層積層体布帛の厚さが、0.08〜0.6mmであることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の三層積層体布帛。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、防風性、防水性、透湿防水性に優れた三層積層体布帛が得られる。
【0017】
本発明の三層積層体布帛を用いることにより、裏面(肌面)において、面ファスナーやボタンなどによる引っ掛かりが少なく、耐摩耗性に優れ、また、表面および裏面の風合いも良いので、雨具、スポーツウェア、作業着、アウトドアウェア、レジャーウェアなどに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に用いられるシングル丸編地の表面(ニードルループ面)の模式図である。
【図2】本発明に用いられるシングル丸編地の裏面(シンカーループ面)の模式図である。
【図3】本発明に用いられるシングル丸編地を巾方向に引っ張ったときの状態を示した模式図である。
【図4】本発明の三層積層体布帛の構造の1例をモデル的に示した概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の三層積層体布帛について、図面を用いながら詳細に説明する。
【0020】
本発明の三層積層体布帛は、表面層として織物、編物、不織布の群から選ばれる一種を使用し、中層に樹脂フィルムを使用し、裏面層に33デシテックス以下の合成繊維マルチフィラメント糸条からなり6.45cm2 当たりの編目数が5,500〜12,000個のシングル丸編地を使用し、これらが積層されてなり、該裏面層の平均摩擦係数が0.05〜0.19であることを特徴とする。
【0021】
シングル丸編地は、編目で生地が構成され、図1に示したように、構成糸Aの連結がルーズに動くことができるため柔らかい風合いとなる。さらにシングル丸編地は、表面(ニードルループ面)が図1に示すように編目の隙間はあるものの平滑な構造であり、裏面(シンカーループ面)が図2に示すように編目の連結部が凸部となる凹凸構造を呈している。
【0022】
本発明の三層積層体布帛では、シングル編地の裏面である凹凸構造のある面を接着面として中層の樹脂フィルムと積層する。そのため、積層したときに凸部のみ接着されるため、丸編地の柔らかい風合いを残すことができる。
【0023】
なお、従来からの一般的な丸編地では面ファスナーなどに対する物性が悪い(面ファスナーに引っかかりやすい)ものであった。その点を改善するため、本発明において積層体布帛の裏面層に使用する生地は、特にシングル丸編地であって、編地面積6.45cm2 当たりの編目数が5,500〜12,000個のものを使用することが重要である。6.45cm2 あたりの編目数とは、2.54cm当たりのウエル数と2.54cm当たりのコース数を掛け算した値であり、この編目数が多ければ編目の間隔が狭く詰まった生地になり、少なければ編目の間隔が広く粗い生地となる。
【0024】
すなわち、シングル丸編地は平滑な表面を有しているといっても、編目数が5,500個未満になると編目の間隔が広くなりすぎるため、面ファスナーなどに引っ掛かりやすくなり物性が悪くなってしまう。編目数を多くすれば編目の間隔が狭くなるため引っかかりなどに対する物性は良くなる(引っかかりにくくなる)ものの、12,000個よりも多いと目付が重く肉厚になり過ぎ、積層体布帛全体に与える影響が大きくなってしまう。
【0025】
編地面積6.45cm2 当たりの編目数は、6,000〜11,500個の範囲内であることが好ましく、さらに、6,500〜11,000個の範囲内であることがより好ましい。
【0026】
また、2.54cm当たりのウエル数は72個よりも多いことが好ましい。ウエル数とコース数ともに個数が多い方が平滑になり物性に良い影響を与えるが、ウエル数の方が特に影響を及ぼす。ウエル数が少なくなるということは幅方向に引っ張られ編目が広がることになり、図3に示すように隙間Dが広がり、表面にも凹凸構造がある生地となってしまうので好ましくない。すなわち、表面にも凹凸構造ができることにより、面ファスナーなどに対する物性が悪くなり滑らかさも失われてしまうので好ましくない。
【0027】
シングル丸編地を構成する編糸は、33デシテックス以下の合成繊維マルチフィラメント糸であることが重要である。33デシテックスを越えて太くなると目付が重く肉厚になりすぎ、積層体布帛全体に与える影響が大きくなってしまう。編糸の繊度は23デシテックス以下4デシテックス以上であることが好ましく、17デシテックス以下7デシテックス以上であることがより好ましい。
【0028】
該合成繊維マルチフィラメント糸の単繊維繊度は、0.4〜10デシテックスの範囲であることが好ましく、1.2〜8デシテックスの範囲であることがより好ましい。単繊維繊度が10デシテックス以下であることにより裏面の風合いがより柔らかい積層体布帛を得ることができる。単繊維繊度が0.4デシテックス未満になると糸が細すぎるため、引っ掛かりや摩耗に対する物性の悪いものとなってしまう。
【0029】
合成繊維は、特に限定されるものではないが、強度、耐久性、加工性、コストの観点からポリエステル繊維またはポリアミド繊維であることが好ましい。
【0030】
該合成繊維マルチフィラメント糸は、捲縮加工や嵩高加工などの高次加工がされていないストレートヤーンである生糸、あるいは、捲縮加工や嵩高加工などの高次の糸加工がされた仮撚り加工捲縮糸や空気混繊嵩高糸、あるいは撚糸などを使用することができる。特に、裏地を面ファスナーなどが引っかかりにくく、かつ滑らかな表面にするためには単繊維がバラけにくく集束性の良い糸を使用することが好ましい。中でもストレートヤーンである生糸を好ましく使用することができ、生糸を使用することにより、引っかかりや摩耗に対する物性や衣料にしたときの着用のしやすさ、動きやすさをさらに向上させることができる。なお、ストレートヤーンである生糸とは、製糸段階で集束性をもたせるために圧空の噴射で付与される軽い交絡程度の交絡を持つものをも含む概念である。
【0031】
シングル丸編地は、編機の選択・編み条件の設定を行い製編し、染色加工でウエル数とコース数の設定に合う条件で染色することにより、目的の編目数に仕上げることができる。
【0032】
編機は、46ゲージ以上のシングル丸編機を用いて編成することが好ましく、60ゲージ以上のシングル丸編機を用いることがより好ましい。46ゲージ未満の編機を使用した場合、目的のウエル数とコース数を得ることができないか、もしくは上述した図3に示した編目の間隙Dが広がってしまうことが起きるため引っ掛かりや摩耗に対する物性の良いシングル丸編地を得ることができなくなり好ましくない。編組織は天竺、鹿の子、メッシュ、ハーフなど特に限定されないが、目付、厚み、表面摩擦係数の低さ、コストを考慮すると天竺組織であることが好ましい。
【0033】
染色加工は、従来から知られている染色方法で加工することができる。
【0034】
本発明の三層積層体布帛の表面層に使用する生地は、織物、編物、不織布のいずれか一種である。組織は特に限定されないが、織物としては、平織、綾織、朱子織、ななこ織、急斜文織、よこ二重織、たて二重織などを使用することができ、編物としては、緯編地である平編(天竺)、鹿の子編、リブ編、両面編(スムース)、パール編、ポンチローマ編、ミラノリブ編、ブリスター編など、縦編地であるシングルデンビ編、シングルコード編、シングルアトラス編、ハーフトリコット編、ダブルデンビ編、サテン編などを使用することができ、不織布としては、短繊維不織布、長繊維不織布、乾式不織布、湿式不織布などを使用することができる。また、前記表面層に使用する生地の構成素材は、綿、麻などの天然繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維などの合成繊維などから、その積層体布帛が使用される用途に応じて選定することができる。例えば、本発明の三層積層体布帛を強度、耐久性、軽量性などが重視される登山着に使用する場合は、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維などから構成された織物を使用することが好ましく、ストレッチ性、軽量性などが重視されるスポーツウェアに使用する場合は、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維などから構成された編物を使用することが好ましい。また、該生地に対しては、必要に応じて従来から知られている撥水処理加工、制電処理加工などを施してもよい。
【0035】
本発明の三層積層体布帛の中層に使用する樹脂フィルムは、従来から知られている各種の樹脂フィルムを使用することができる。樹脂フィルムの材料としては、例えば、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、含フッ素系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂などがあり、使用する用途に応じて適宜選択すればよい。厚さは、3〜100μmであることが好ましく、より好ましくは5〜50μmである。目付は、3〜60g/m2 の範囲内であることが好ましく、より好ましくは3〜50g/m2 の範囲内である。
【0036】
例えば、透湿防水性の衣料に用いる場合は、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル樹脂、含フッ素系樹脂などからなる透湿防水性フィルムを使用することが好ましい。また、透湿防水性フィルムには湿式製法により製造される多孔質樹脂薄膜と、乾式製法により製造される親水性無孔質樹脂薄膜とに分けられ、それぞれ以下のような特徴に基づいて使い分けるとよい。
【0037】
多孔質樹脂薄膜は、その内部に超微細で均一に分散する多数の気孔が、互いに連通した状態で形成されている連続気泡体であり、その孔幅が略0.3〜3μmのものであることが好ましい。水蒸気の粒径は略0.4nm程度であり、雨や水の粒径は略0.1〜3mm程度の範囲であるため、気孔の孔幅より粒径の小さい水蒸気は通過し、気孔の孔幅より粒径の大きい雨や水の浸透は阻止できることにより優れた透湿防水性を発揮する。
【0038】
また、親水性無孔質樹脂薄膜は、上記した多孔質樹脂薄膜とは異なり連続気泡状の多数の気孔を有しておらず、内部に親水性を有した親水基を持つことにより透湿機能が確保されている。親水性無孔質樹脂薄膜の片面側の水蒸気濃度が上昇すると、薄膜内部の親水基により薄膜内へ水蒸気が取りこまれ、さらに、薄膜内の水蒸気は水蒸気濃度の低い他面側へ移行する。このように親水性無孔質樹脂薄膜は、自己の親水基により水蒸気を通過させることで優れた透湿防水性を発揮する。
【0039】
本発明において、樹脂フィルムと、織物、編物、不織布から選ばれるいずれか一種の表地およびシングル丸編地である裏地とを積層する手法は、表地または裏地の布帛に直接コーティングする方法や、皮膜(フィルム)を作製し布帛に接着剤などで接着するラミネート法など、従来から知られている製造法を用いて積層することができる。
【0040】
直接コーティングする方法とは、目的に応じた樹脂を布帛の一面に均一な薄膜状に直接塗工し皮膜化(フィルム化)することであり、水中を通過させ皮膜化する湿式と乾燥することによって皮膜化する乾式がある。樹脂を塗工する方法としては、一般的にはナイフオーバーロールコーティング、ダイレクトロールコーティング、リバースロールコーティング、グラビアコーティングなどがあり、そのコーティング処方を利用し所望の膜厚となるように塗工すればよい。
【0041】
ラミネート法とは、目的に応じた樹脂を予め皮膜化し、その上に接着剤を塗工して布帛を積層することである。接着剤を塗工する方法としては、一般的にはナイフオーバーロールコーティング、ダイレクトロールコーティング、リバースロールコーティング、グラビアコーティングなどがあり、そのコーティング処方を利用し所望の膜厚、被覆率となるように塗工すればよい。
【0042】
接着剤は、熱可塑性樹脂接着剤の他、熱や光などとの反応をして硬化する硬化性樹脂接着剤など、従来から知られているものを使用することができる。例えば、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、あるいはポリオレフィン樹脂などがある。特に、本発明の三層積層体布帛を透湿防水性の衣類に用いる場合は、透湿性の高いものが好ましい。
【0043】
接着剤による被覆率は、特に限定されないが、高い方が剥離強度は高くなる。例えば、本発明の三層積層体布帛を透湿防水性の衣類に用いる場合、高透湿性の接着剤であれば100%被覆の全面接着でも問題はないが、透湿性と耐水性の両立を考えると一般的には40〜80%の被覆率とすることが好ましい。被覆率が100%の全面接着としたい場合はナイフコーターなどを用い、被覆率が40〜80%とコントロールする場合はグラビアコーターなどを用いて実施することができる。グラビアコーターは、表面にドット状の凹部を彫刻したロールを用い、その凹部に接着剤を入れ樹脂フィルムに転移して加工する方法で凹部の面積および深さ、凹部間の間隔を調整することにより被覆率を自由に設定することができる。
【0044】
上記の方法を用いて、表面層に織物、編物、不織布の群の中から選ばれる一種を採用し、中層に樹脂フィルムを採用し、裏面層に33デシテックス以下の合成繊維マルチフィラメント糸条からなり6.45cm2 当たりの編目数が5,500〜12,000個のシングル丸編地を採用して、図4のように三層に積層して本発明の三層積層体布帛を得ることができる。
【0045】
さらに本発明の三層積層体布帛は、その裏面層の平均摩擦係数μが0.05〜0.19の範囲内にあることが重要であり、特に平均摩擦係数μが0.07〜0.18の範囲であることがより好ましい。平均摩擦係数μとは、摩擦の大きさを示し数値が小さいほど摩擦は少なく滑りの良い生地であるということである。平均摩擦係数μを0.19以下にすることにより、滑りが良くなり、着用しやすく動きやすくするという裏地の特性をより発揮することができ、また、滑りが良いことにより面ファスナーやボタンなどに擦れても、傷つきにくいものとなる。一方、0.05未満になると滑りが良くなりすぎるため、縫製時にパーツがずれやすくなるなど加工性が低下してしまうので好ましくない。
【0046】
ここで、平均動摩擦係数μとはKES風合いシステムの表面試験機により縦方向と横方向の動摩擦係数を測定し、平均した値である。衣類にした場合、一方方向に動くわけではないため、縦方向と横方向の動摩擦係数を平均した値で評価をしている。
【0047】
本発明の三層積層体布帛は、その裏面層の平均表面粗さが7μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましい。平均表面粗さとは、生地表面の凹凸構造の差を示し、数値が大きいほど凹凸の差があることになる。7μmを越えると表面の凹凸構造の差がありすぎるため、面ファスナーなどに引っ掛かりやすく物性が悪くなってしまう。また、手で触れたときざらざらしていると感じるようになってしまう。平均表面粗さの下限は0.8μm程度までである。
【0048】
ここで、平均表面粗さとはKES風合いシステムの表面試験機により縦方向と横方向の表面粗さを測定し、平均した値である。衣類にした場合、一方方向に動くわけではないため、縦方向と横方向の表面粗さを平均した値を求めて評価をしている。
【0049】
本発明の三層積層体布帛に使用するシングル丸編地は、カバーファクター(CF)が400〜900の範囲であることが好ましく、450〜850の範囲であることがより好ましい。カバーファクターは下記の式にて算出することができる。
CF = { √T × W }+ { √T × C }
CF: カバーファクター
T : 構成糸の繊度(デシテックス)
W : 生地のヨコの長さ2.54cmあたりのウエル数
C : 生地のタテの長さ2.54cmあたりのコース数
カバーファクターが400未満になると編地密度が低くなり過ぎるため、引っ掛かりや摩耗に対する物性や滑りが悪くなり、900を越えると編地密度が高くなり過ぎるため、目付が重く積層体布帛全体に与える影響が大きくなってしまう。
【0050】
本発明の三層積層体布帛は、全体の目付が50〜150g/m2 の範囲であることが好ましく、60〜140g/m2 の範囲であることがより好ましい。150g/m2 を越えると衣類にしたときにかなり重くなり着心地が悪くなるので、用途によって好ましくない場合が多い。50g/m2 未満になると、軽すぎるため、引裂強度などが弱くなり衣類にしたときに傷みやすいものになってしまうことから、用途面で好ましくない場合がある。
【0051】
本発明の三層積層体布帛は、厚さが0.08〜0.6mmの範囲であることが好ましく、0.1〜0.5mmの範囲であることがより好ましい。0.6mmを越えると厚すぎるため、衣類にして着用したときに動きにくいものとなってしまうので用途面で制約が生ずる。0.08mm未満になると薄すぎるため、引裂強度などの物理特性が低下し衣類にしたときに傷みやすく好ましくない。
【0052】
また、本発明の三層積層体布帛は、裏面層の摩擦係数の平均偏差が0.027以下であることが好ましく、0.023以下であることがより好ましい。摩擦係数の平均偏差とは、摩擦係数の変動を示し数値が大きくなるほど、ざらつきを感じるようになる。摩擦係数の平均偏差が0.027を越えるとざらつきが大きくなり過ぎるため、手で触れたり、着用したときに不快に感じるようになってしまう場合がある。
【0053】
ここで、摩擦係数の平均偏差とはKES風合いシステムの表面試験機により縦方向と横方向の摩擦係数平均偏差を測定し、平均した値である。衣類にした場合、一方方向に動くわけではないので、縦方向と横方向の摩擦係数の平均偏差を平均した値で評価をする。
【0054】
本発明の三層積層体布帛は、平均曲げ剛性が0.8〜18gf・cm2/cmの範囲であることが好ましく、0.1〜15gf・cm2/cmの範囲であることがより好ましい。平均曲げ剛性とは、生地の曲げ硬さを示し数値が小さいほど柔らかい生地となる。平均曲げ剛性が18gf・cm2/cmを越えると生地が硬くなりすぎるため、衣類にして着用したときに動きにくいものとなってしまう。0.8gf・cm2/cm未満になると生地が柔らかくなりすぎるため、引裂きや破裂などの強度が低下し、衣類に適さないものとなってしまう。
【0055】
ここで、平均曲げ剛性とはKES風合いシステムの純曲げ試験機により縦方向と横方向の曲げ剛性を測定し、平均した値である。衣類にした場合、一方方向に曲げる力が働くわけではないため、縦方向と横方向の曲げ剛性を平均した値を評価している。
【実施例】
【0056】
以下、実施例に基づいてさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の各物性は下記の方法により測定したものである。
【0057】
(1)6.45cm2 当たりの編目数
編地の2.54cmあたりのウエル数とコース数とを掛け算することにより算出し、編目数とした。測定にあたっては、平置きした生地の2.54cmあたりのウエル数とコース数を数え、各5箇所を測定し、平均値の小数点以下を四捨五入して求めた。
【0058】
(2)平均摩擦係数
KES風合いシステムに基づき、表面試験機KES−FB4(カトーテック(株)製)を用い測定した。20℃×65%RHの環境下で20×20cmの試験片を20gfの張力をかけ取り付け、0.5mmφのピアノ線を5×5mmに10本面上に巻いた接触子に50gfで試料に圧着させ、0.1cm/秒の一定速度で水平に移動させ摩擦係数(MIU)を測定する。上記方法で布帛のタテ、ヨコの摩擦係数(MIU)を測定し、各5回の合計10回の平均値を算出し平均摩擦係数とした。
【0059】
(3)平均表面粗さ
KES風合いシステムに基づき、表面試験機KES−FB4(カトーテック(株)製)を用い測定した。20℃×65%RHの環境下で20×20cmの試験片を20gfの張力をかけ取り付け、0.5mmφのピアノ線を5mm幅に1本折り曲げた接触子に10gfで試料に圧着させ、0.1cm/秒の一定速度で水平に移動させ表面粗さ(SMD)測定する。上記方法で布帛の縦、横の表面粗さ(SMD)を測定し、各5回で合計10回の平均値を算出し平均表面粗さ(μm)とした。
【0060】
(4)摩擦係数の平均偏差
KES風合いシステムに基づき、表面試験機KES−FB4(カトーテック(株)製)を用い測定した。20℃×65%RHの環境下で20×20cmの試験片を20gfの張力をかけ取り付け、0.5mmφのピアノ線を5×5mmに10本面上に巻いた接触子に50gfで試料に圧着させ、0.1cm/秒の一定速度で水平に移動させ摩擦係数の平均偏差(MMD)を測定する。上記方法で布帛の縦、横の摩擦係数の平均偏差(MMD)を測定し、各5回で合計10回の平均値を算出し摩擦係数の平均偏差とした。
【0061】
(5)平均曲げ剛性
KES風合いシステムに基づき、純曲げ試験機KES−FB2(カトーテック(株)製)を用いて測定した。20℃×65%RHの環境下で20×20cmの試験片を有効試料長20×1cmで把持し、最大曲率±2.5cm-1の条件下で曲げたときの曲率が±0.5〜±1.5cm-1の単位幅あたりの曲げモーメントの変化分を曲率で割り算した値を測定した。上記方法で布帛の縦、横の曲げ剛性を測定し、各5回で合計10回の平均値を算出し平均曲げ剛性(gf・cm2/cm)とした。
【0062】
(6)目付
JIS L 1096に基づき、試験片の単位面積あたりの質量(g/m2 )を測定した。
【0063】
(7)厚さ
JIS L 1096に基づき、試験片の厚さを測定した。測定には、ダイヤルシックネスゲージ((株)尾崎製作所 製「型式 H−2.4N」)を用いた。
【0064】
(8)面ファスナーに対する耐久度
JIS L 0849に記載される摩擦試験機II形の摩擦子に、面ファスナーのフック側(クラレファスニング(株)製「NEW ECO MAGIC」)を試験台側に向けて装着し、試験片台には積層体布帛の裏面層(肌面層)を摩擦子側に向けて装着した。ただし、摩擦子に装着する面ファスナーは、フック列と往復運動方向とが平行になるように装着した。また、試験片に伸縮性がある場合は、両面テープを利用して試験台に貼り合わせた。
【0065】
この状態で摩擦子には2Nの荷重をかけ、生地のタテ方向およびヨコ方向各3枚をそれぞれ100回摩擦した。試験片の摩擦された部位の状態を次の4段階で評価し、タテ方向およびヨコ方向それぞれの平均値を算出し、小数点以下を四捨五入した。
≪評価基準≫1級:生地組織の崩れている面積が摩擦された部分の内10%以上のもの
2級:生地組織の崩れている面積が摩擦された部分の内10%未満のもの
3級:生地組織は崩れていないが、多少の毛羽立ちがあるもの
4級:変化がないもの
【0066】
(9)風合い
風合いの評価は、男女10名が積層体布帛の裏面の触り心地を次の4段階で評価した。
≪評価基準≫1級:触り心地が悪い
2級:触り心地がどちらかといえば悪い
3級:触り心地がどちらかといえば良い
4級:触り心地が良い
【0067】
(10)積層体布帛としての総合評価
≪評価基準≫ ○:積層体布帛として優れている
×:積層体布帛として優れていない
【0068】
実施例1
表面層用として、経糸および緯糸ともに56デシテックス、24フィラメントのナイロン生糸(ストレート糸)で構成した平織組織の織物(目付:54g/m2 )にフッ素系撥水剤で撥水処理をした織物生地を準備した。
【0069】
中層用として、ポリウレタン系樹脂製の親水性無孔質樹脂フィルム(目付:13g/m2 )を準備した。
【0070】
上記織物生地の片面に、上記ポリウレタン系樹脂製の親水性無孔質樹脂フィルムをラミネート法によりポリウレタン系接着剤を用いて接着して二層積層布帛を得た。
【0071】
さらに、その二層積層布帛のフィルム面にポリウレタン系接着剤を被覆率45%となるようにグラビアコーターによりグラビアプリントして、裏面層用として準備した17デシテックス、7フィラメントのナイロン生糸を使用した天竺組織の丸編地を貼り合わせて、本発明の三層積層体布帛(目付:101g/m2 、厚さ:0.19mm)を得た。
【0072】
裏面層に使用したシングル丸編地は、60ゲージ30インチの編機を使用して製編し、通常の染色加工法で78ウエル/2.54cm、86コース/2.54cm、編目数6,708個/6.45cm2 に仕上げたものであり、カバーファクターは676であった。
【0073】
この三層積層体布帛の裏面層の摩擦係数は0.127、また、裏面層の平均表面粗さは2.37μmであった。この三層積層体布帛の評価結果等を表、表21に示す。
【0074】
実施例2
表面層用として、経糸および緯糸ともに22デシテックス、20フィラメントのナイロン生糸で構成された平織組織の織物(目付:38g/m2 )にフッ素系撥水剤で撥水処理をした織物生地を準備した。
【0075】
中層用として、ポリウレタン系樹脂製の親水性無孔質樹脂フィルム(目付:13g/m2 )を準備した。
【0076】
上記織物生地の片面に、上記ポリウレタン系樹脂製の親水性無孔質樹脂フィルムをラミネート法によりポリウレタン系接着剤を用いて接着して二層積層布帛を得た。
【0077】
さらに、その二層積層布帛のフィルム面にポリウレタン系接着剤を被覆率45%となるようにグラビアコーターによりグラビアプリントして、裏面層用として準備した8デシテックス、5フィラメントのナイロン生糸を使用した天竺組織の丸編地を貼り合わせて、本発明の三層積層体布帛(目付:74g/m2 、厚さ:0.14mm)を得た。
【0078】
裏面層に使用したシングル丸編地は、60ゲージ30インチの編機を使用して製編し、通常の染色加工法で82ウエル/2.54cm、91コース/2.54cm、編目数7,462個/6.45cm2 に仕上げたものであり、カバーファクターは489であった。
【0079】
この三層積層体布帛の裏面の摩擦係数は0.159、また、裏面層の平均表面粗さは4.61μmであった。この三層積層体布帛の評価結果等を表1、表2に示す。
【0080】
実施例3
表面層用として、経糸および緯糸ともに33デシテックス、34フィラメントのナイロン生糸で構成された平織組織の織物(目付:40g/m2 )にフッ素系撥水剤で撥水処理をした織物生地を準備した。
【0081】
中層用として、ポリウレタン系樹脂製の親水性無孔質樹脂フィルム(目付:13g/m2 )を準備した。
【0082】
上記織物生地の片面に、上記ポリウレタン系樹脂製の親水性無孔質樹脂フィルムをラミネート法によりポリウレタン系接着剤を用いて接着して二層積層布帛を得た。
【0083】
さらに、その二槽積層布帛のフィルム面にポリウレタン系接着剤を被覆率45%となるようにグラビアコーターによりグラビアプリントして、裏面層用として準備した22デシテックス、12フィラメントのポリエステル生糸を使用した天竺組織の丸編地を貼り合わせて、本発明の三層積層体布帛(目付:99g/m2 、厚さ:0.2mm)を得た。
【0084】
裏面層に使用したシングル丸編地は、46ゲージ30インチの編機を使用して製編し、通常の染色加工法で81ウエル/2.54cm、91コース/2.54cm、編目数7,371個/6.45cm2 に仕上げたものであり、カバーファクターは807であった。
【0085】
この三層積層体布帛の裏面層の摩擦係数は0.148、また、裏面層の平均表面粗さは2.64μmであった。この三層積層体布帛の評価結果等を表1、表2に示す。
【0086】
実施例4
表面層用として、22デシテックス、24フィラメントのポリエステル仮撚加工捲縮糸で構成されたスムース組織の丸編地(目付:56g/m2 )にフッ素系撥水剤で撥水処理した編物生地を準備した。
【0087】
中層用として、ポリウレタン系樹脂製の親水性無孔質樹脂フィルム(目付:13g/m2 )を準備した。
【0088】
上記編物生地の片面に、上記ポリウレタン系樹脂製の親水性無孔質樹脂フィルムをラミネート法によりポリウレタン系接着剤を用いて接着して二層積層布帛を得た。
【0089】
さらに、その二層積層布帛のフィルム面にポリウレタン系接着剤を被覆率45%となるようにグラビアコーターによりグラビアプリントして、裏面層用として準備した22デシテックス、12フィラメントのポリエステル生糸を使用した天竺組織の丸編地を貼り合わせて、本発明の三層積層体布帛を(目付:117g/m2 、厚さ:0.34mm)を得た。
【0090】
裏面層に使用したシングル丸編地は、46ゲージ30インチの編機を使用して製編し、通常の染色加工法で84ウエル/2.54cm、95コース/2.54cm、編目数7,980個/6.45cm2 に仕上げたものであり、カバーファクターは840であった。
【0091】
この三層積層体布帛の裏面層の摩擦係数は0.168、また、裏面層の平均表面粗さは1.76μmであった。この三層積層体布帛の評価結果等を表1、表2に示す。
【0092】
比較例1
表面層用として、経糸および緯糸ともに22デシテックス20フィラメントのナイロン生糸で構成された平織組織の織物(目付:38g/m2 )を準備した。
【0093】
中層用として、ポリウレタン系樹脂製の親水性無孔質樹脂フィルム(目付:13g/m2 )を準備した。
【0094】
上記織物生地の片面に、上記ポリウレタン系樹脂製の親水性無孔質樹脂フィルムをラミネート法によりポリウレタン系接着剤を用いて接着して二層積層布帛を得た。
【0095】
さらに、その二層積層布帛のフィルム面にポリウレタン系接着剤を被覆率45%となるようにグラビアコーターによりグラビアプリントして、裏面層用として準備した22デシテックス、24フィラメントのポリエステル仮撚り加工捲縮糸を使用した天竺組織の丸編地を貼り合わせて三層積層体布帛(目付:94g/m2 、厚さ:0.26mm)を得た。
【0096】
裏面層に使用したシングル丸編地は、46ゲージ30インチの編機を使用して製編し、通常の染色加工法で62ウエル/2.54cm、84コース/2.54cm、編目数5208個/6.45cm2 に仕上げたものであり、カバーファクターは685であった。
【0097】
この三層積層体布帛の裏面層の摩擦係数は0.239、また、裏面層の平均表面粗さは5.27μmであった。この三層積層体布帛の評価結果等を表1、表2に示す。
【0098】
比較例2
表面層用として、経糸および緯糸ともに56デシテックス、24フィラメントのナイロン生糸で構成された平織組織の織物(目付:54g/m2 )にフッ素系撥水剤で撥水処理した織物生地を準備した。
【0099】
中層用として、ポリウレタン系樹脂製の親水性無孔質樹脂フィルム(目付:13g/m2 )を準備した。
【0100】
上記織物生地の片面に、上記ポリウレタン系樹脂製の親水性無孔質樹脂フィルムをラミネート法によりポリウレタン系接着剤を用いて接着して二層積層布帛を得た。
【0101】
さらに、その二層積層布帛のフィルム面にポリウレタン系接着剤を被覆率45%となるようにグラビアコーターによりグラビアプリントして、裏面層用として準備した44デシテックス、34フィラメントのナイロン仮撚り加工捲縮糸を使用した天竺組織の丸編地を貼り合わせて三層積層体布帛(目付:142g/m2 、厚さ:0.42mm)を得た。裏面層に使用したシングル丸編地は、40ゲージ30インチの編機を使用して製編し、通常の染色加工法で64ウエル/2.54cm、80コース/2.54cm、編目数5120個/6.45cm2 に仕上げたものであり、カバーファクターは955であった。
【0102】
この三層積層体布帛の裏面層の摩擦係数は0.248、また、裏面層の平均表面粗さは5.18μmであった。この三層積層体布帛の評価結果等を表1、表2に示す。
【0103】
比較例3
表面層用として、経糸および緯糸ともに22デシテックス、20フィラメントのナイロン生糸で構成された平織組織の織物(目付:38g/m2 )にフッ素系撥水剤で撥水処理した織物生地を準備した。
【0104】
上記織物生地の片面に、上記ポリウレタン系樹脂製の親水性無孔質樹脂フィルム(目付:13g/m2 )をラミネート法によりポリウレタン系接着剤を用いて接着して二層積層布帛を得た。
【0105】
さらに、その二層積層布帛のフィルム面にポリウレタン系接着剤を被覆率45%となるようにグラビアコーターによりグラビアプリントして、裏面層用として準備した8デシテックス、5フィラメントのナイロン仮撚り加工捲縮糸を使用したダブルデンビ組織の経編地を貼り合わせて、三層積層体布帛(目付:79g/m2 、厚さ:0.15mm)を得た。裏面層に使用した経編地は、トリコット編機を使用して製編し、通常の染色加工法で45ウエル/2.54cm、64コース/2.54cm、編目数2880個/6.45cm2 に仕上げたものであり、カバーファクターは308であった。
【0106】
この三層積層体布帛の裏面の摩擦係数は0.205、裏面層の平均表面粗さは、10.46μmであった。この三層積層体布帛の評価結果を表1、表2に併せて示す。
【0107】
【表1】

【0108】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の三層積層体布帛は、耐摩耗性に優れ、また表面および裏面の風合いも良いので、雨具、スポーツウェア、作業着、アウトドアウェア、レジャーウェアなどの各種の衣料用途等に使用することができる。
【0110】
特に衣料用途以外では、テント、バッグ、寝袋などの分野で好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0111】
1:積層体布帛の表面層
2:積層体布帛の中層
3:積層体布帛の裏面層
A:編地の構成糸
D:編目の間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面層として織物、編物、不織布の群から選ばれる一種を使用し、中層に樹脂フィルムを使用し、裏面層に33デシテックス以下の合成繊維マルチフィラメント糸条からなり6.45cm2 当たりの編目数が5,500〜12,000個のシングル丸編地を使用し、これらが積層されてなり、該裏面層の平均摩擦係数が0.05〜0.19であることを特徴とする三層積層体布帛。
【請求項2】
前記合成繊維マルチフィラメント糸条が、捲縮を有さないストレートヤーンであることを特徴とする請求項1記載の三層積層体布帛。
【請求項3】
前記三層積層体布帛の裏面層の平均表面粗さが、7μm以下であることを特徴とする請求項1または2記載の三層積層体布帛。
【請求項4】
前記シングル丸編地のカバーファクター(CF)が、400〜900の範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の三層積層体布帛。
【請求項5】
前記三層積層体布帛の目付が、50〜150g/m2 であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の三層積層体布帛。
【請求項6】
前記三層積層体布帛の厚さが、0.08〜0.6mmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の三層積層体布帛。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−135968(P2012−135968A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290433(P2010−290433)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【特許番号】特許第4805408号(P4805408)
【特許公報発行日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(597052053)ミツカワ株式会社 (14)
【Fターム(参考)】