説明

三次元形状造形物の製造方法および製造装置

【課題】効率的な原料粉末供給を可能とする三次元形状造形物の製造方法を提供すること。
【解決手段】(i)原料粉末から成る粉末層の所定箇所に光ビームを照射してその所定箇所の原料粉末を焼結又は溶融固化させて固化層を形成する工程、および、(ii)得られた固化層の上に新たな粉末層を形成し、新たな粉末層の所定箇所に光ビームを照射して更なる固化層を形成する工程を繰り返して行う三次元形状造形物の製造方法であって、光ビームの照射位置データに基づいて、新たな粉末層のうちの必要な造形領域を特定し、その特定された造形領域に原料粉末を局所的に供給することを特徴とする三次元形状造形物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元形状造形物の製造方法および製造装置に関する。より詳細には、本発明は、粉末層の所定箇所に光ビームを照射することによる固化層形成を繰り返し実施することによって複数の固化層が積層一体化した三次元形状造形物を製造する方法に関すると共に、そのような製造を実施するための製造装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、原料粉末に光ビームを照射して三次元形状造形物を製造する方法(一般的には「粉末焼結積層法」と称される)が知られている。かかる方法では、「(i)粉末層の所定箇所に光ビームを照射することによって、かかる所定箇所の粉末を焼結又は溶融固化させて固化層を形成し、(ii)得られた固化層の上に新たな粉末層を敷いて同様に光ビームを照射して更に固化層を形成する」といったことを繰り返して三次元形状造形物を製造している(特許文献1または特許文献2参照)。原料粉末として金属粉末やセラミック粉末などの無機質の粉末を用いた場合では、得られた三次元形状造形物を金型として用いることができ、樹脂粉末やプラスチック粉末などの有機質の原料粉末を用いた場合では、得られた三次元形状造形物をモデルとして用いることができる。このような製造技術によれば、複雑な三次元形状造形物を短時間で製造することが可能である。
【0003】
支持部材上で三次元形状造形物を製造する場合を例にとると、図1に示すように、まず、所定の厚みt1の粉末層22をブレード23によって造形プレート21上に形成する(図1(a)参照)。次いで、光ビームを粉末層22の所定箇所に照射して、その照射された粉末層の部分から固化層24を形成する。そして、形成された固化層24の上に新たな粉末層22を敷いて再度光ビームを照射して新たな固化層を形成する。このような固化層の形成を繰り返し実施すると、複数の固化層24が積層一体化した三次元形状造形物を得ることができる(図1(b)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表平1−502890号公報
【特許文献2】特開2000−73108号公報
【特許文献3】特開2002−115004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図1に示す粉末層形成の態様は、スキージング用ブレード23によってかき出して一定量の原料粉末を材料タンクから造形プレート側へと運ぶ態様であるが、本願発明者らは以下の懸念事項があることを見出した(図26参照)。

・原料粉末の供給が造形領域と関係の無い領域にまで行われる。従って、“関係の無い領域”に供される余分な原料粉末を材料タンクに仕込んでおく必要がある。

・造形物の大きさに拘わらず、一定の量の原料粉末を造形テーブルに供給するので、使用量の調節が難しい。

・造形部の形状は、下段側の層から上段側の層へと移行するにつれて変化し得るが、層毎に造形領域の形状やサイズが変化しても一定量の原料粉末が造形テーブルに供給される。

・造形完了後においては、造形に寄与しなかった原料粉末を回収する必要があり手間がかかってしまう(例えば図26(a)に示すように、余剰粉末は回収タンクへと落ちることになるが、常に一定量の原料粉末を供給する場合では回収される余剰粉末量が多くなってしまう)。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みて為されたものである。即ち、本発明の課題は、原料粉末の効率的な供給を可能とする三次元形状造形物の製造方法および製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、
(i)原料粉末から成る粉末層の所定箇所に光ビームを照射してその所定箇所の原料粉末を焼結又は溶融固化させて固化層を形成する工程、および
(ii)得られた固化層の上に新たな粉末層を形成し、新たな粉末層の所定箇所に光ビームを照射して更なる固化層を形成する工程
を繰り返して行う三次元形状造形物の製造方法であって、
光ビームの照射位置データに基づいて、新たな粉末層のうちの必要な造形領域を特定し、その特定された造形領域に原料粉末を局所的に供給することを特徴とする、三次元形状造形物の製造方法が提供される。
【0008】
ある好適な態様では、特定された造形領域が複数独立して存在しており、その独立した造形領域間の離隔距離が所定の閾値よりも大きい場合、各造形領域を別個の領域と見なして個別に原料粉末を供給する一方、独立した造形領域間の離隔距離が所定の閾値よりも小さい場合、各造形領域を全体として1つの領域と見なして原料粉末を供給する。
【0009】
ある好適な態様では、「幅寸法が可変自在な原料供給ブレード」または「可動自在に設けられた原料供給ユニット」を用いて、特定された造形領域にのみ原料粉末を局所的に供給する。例えば、光ビームの照射位置データに基づいて特定された造形領域のサイズに合うように、原料供給ブレードの幅寸法を変えてよい。また、光ビームの照射位置データに基づいて特定された造形領域の上方へと原料供給ユニットを移動させ、その後、原料供給ユニットを通じて“特定された造形領域”に原料粉末を局所的に供給してもよい。
【0010】
本発明では上記製造方法を実施するための製造装置も提供される。かかる製造装置は、原料粉末から成る粉末層を造形テーブル上に形成する粉末層形成手段と、粉末層の所定箇所に光ビームを照射して前記所定箇所の原料粉末を焼結又は溶融固化させて固化層を形成する固化層形成手段とを有して成り、粉末層形成手段による粉末層の形成と、固化層形成手段による固化層の形成とを繰り返すことにより複数の固化層が積層一体化された三次元形状造形物を製造するための装置であって、
光ビームの照射位置データに基づいて各粉末層の造形領域を特定する原料供給領域演算部を有して成り、
粉末層形成手段が特定された造形領域へと原料粉末を局所的に供給する構成を有していることを特徴としている。
【0011】
ある好適な態様では、粉末層形成手段が、幅寸法が可変自在な原料供給ブレードまたは可動自在に設けられた原料供給ユニットを有して成る。
【0012】
「幅寸法が可変自在な原料供給ブレード」についていえば、例えば、本発明に係る三次元形状造形物の製造装置における粉末層形成手段が、
原料粉末を上下に昇降させる粉末テーブルを備えた原料粉末タンク、および
造形テーブル上に配された造形プレート上において粉末層を形成するための均しブレード
を有して成り、
均しブレードが、原料粉末タンクから「粉末層および/または固化層が形成されることになる造形テーブル」に向かってスライド移動することができ、かつ、スライド移動する方向に垂直な方向のブレード幅寸法が可変自在となっている。
【0013】
また、「可動自在に設けられた原料供給ユニット」についていえば、例えば、本発明に係る三次元形状造形物の製造装置における粉末層形成手段が、原料粉末を一時的に貯留して供給するための原料供給デバイスを有して成り、その原料供給デバイスが、
原料粉末を一時的に貯留するための貯留タンク部
貯留タンク部からの原料粉末の排出を可能とする原料排出部、および
原料排出部の開口を開閉自在とする蓋
を有して成り、
原料供給デバイス自体が造形テーブル上にて自在に移動できるようになっている。
【0014】
原料供給デバイスの態様においては、原料排出部が“原料粉末の排出方向”を変えることができるように回転自在に構成されていてよい。また、貯留タンク部は原料排出部と分離自在に設けられていてもよい。更には、原料供給デバイスが貯留タンク部から供給された原料粉末を均すためのスキージを更に有して成っていてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の製造方法および製造装置では、特定された造形領域にのみ原料粉末を局所的に供給することができるので、無駄となる余分な原料粉末を減じることができる。より具体的に説明すると、本発明においては、固化層の上に粉末層を新たに形成する際、造形物の作成位置及び造形物の現在実行中の光ビーム照射位置データに基づき、実行中の層における原料粉末の供給領域を特定し、その特定された領域に対し粉末供給を行う。つまり、本発明では実行中の層データに基づいて材料供給を行っており、その結果、あくまでも必要な領域にのみ原料粉末を供給して新たな粉末層を逐次形成するので、無駄となる材料が少なくなる。
【0016】
例えば、本発明の製造方法および製造装置では、以下の事項が可能となり得る。

・造形領域と関係の無い領域への原料粉末供給を抑制できるので、過剰な原料粉末を材料タンクに予め仕込んでおく必要がなくなる。

・造形物の断面サイズに応じて原料粉末を供給するので、粉末使用量の調節が可能となる。例えば、下段側から上段側へと層移行するに際して層毎に造形領域の形状やサイズが大きく変化する場合であっても、その変化に応じた量の原料粉末を供給することができる。

・造形完了後に回収される余剰粉末量を減じることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】光造形複合加工機の動作を模式的に示した断面図
【図2】光造形装置の態様を模式的に表した斜視図(図2(a):切削機構を備えた複合装置、図2(b):切削機構を備えていない装置)
【図3】粉末焼結積層法が行われる態様を模式的に示した斜視図
【図4】粉末焼結積層法が実施される光造形複合加工機の構成を模式的に示した斜視図
【図5】光造形複合加工機の動作のフローチャート
【図6】光造形複合加工プロセスを経時的に表した模式図
【図7】層毎に造形領域サイズが変化する態様を示した模式図
【図8】層毎に造形領域形状・サイズが変化する態様を示した模式図
【図9】光ビームの照射位置データに基づいて造形領域を特定する態様を示した模式図およびフローチャート
【図10】造形領域が複数独立して存在している場合における供給領域の特定手法を示した模式図
【図11】「幅寸法が可変自在な原料供給ブレード」の態様を模式的に示した斜視図
【図12】幅寸法がそれぞれ異なる複数枚のサブ・ブレードから構成された均しブレード機構の態様を示した模式図
【図13】幅寸法がそれぞれ異なる複数枚のサブ・ブレードから構成された均しブレード機構の態様を示した模式図(13(a):サブ・ブレード23aが機能している態様、13(b):サブ・ブレード23bが機能している態様、13(c):サブ・ブレード23cが機能している態様)
【図14】拡張ブレードから構成された均しブレード機構の態様を示した模式図
【図15】拡張ブレードから構成された均しブレード機構の態様を示した模式図(図15(a):拡張ブレードが折りたたまれた状態、図15(b):対を成す拡張ブレードの一方が取り出された状態、図15(c):対を成す拡張ブレードの他方が取り出された状態、図15(d)、拡張ブレードが全て取り出された状態)
【図16】「一時的に貯留された原料粉末の供給を可能とする可動自在な原料供給デバイス」の態様を模式的に示した斜視図
【図17】「一時的に貯留された原料粉末の供給を可能とする可動自在な原料供給デバイス」の構成を示した模式図
【図18】可動自在な原料供給ユニットの態様を例示した模式図
【図19】据付け型のメインタンクが設けられた原料供給デバイスの態様を模式的に示した斜視図
【図20】スキージを備えた原料供給デバイスの態様を模式的に示した斜視図
【図21】原料粉末が予め仕込まれる貯留タンク部から構成された原料供給デバイスの態様を模式的に示した斜視図
【図22】原料粉末が予め仕込まれる貯留タンク部から構成された原料供給デバイスであって、原料排出部と貯留タンク部とが相互に分離自在に設けられている原料供給デバイスの態様を模式的に示した斜視図
【図23】原料粉末供給の始点・終点を制御する態様を説明するための図
【図24】「幅寸法が可変自在な原料供給ブレード」に用いられるデータの処理フロー例
【図25】「可動自在に設けられた原料供給ユニット」に用いられるデータの処理フロー例
【図26】従前の粉末層形成態様における問題点を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、図面を参照して本発明をより詳細に説明する。
【0019】
本明細書において「粉末層」とは、例えば「金属粉末などの原料粉末から成る金属粉末層」または「樹脂粉末などの原料粉末から成る樹脂粉末層」などを指している。また「粉末層の所定箇所」とは、製造される三次元形状造形物の領域を実質的に意味している。従って、かかる所定箇所に存在する粉末に対して光ビームを照射することによって、その粉末が焼結又は溶融固化して三次元形状造形物の形状を構成することになる。更に「固化層」とは、粉末層が金属粉末層である場合には「焼結層」を実質的に意味しており、粉末層が樹脂粉末層である場合には「硬化層」を実質的に意味している。
【0020】
[粉末焼結積層法]
まず、本発明の製造方法の前提となる粉末焼結積層法について説明する。説明の便宜上、材料粉末タンクから原料粉末を供給し、均し板を用いて原料粉末を均して粉末層を形成する態様を前提として粉末焼結積層法を説明する。また、粉末焼結積層法に際しては造形物の切削加工をも併せて行う複合加工の態様を例に挙げて説明する(つまり、図2(b)ではなく図2(a)に表す態様を前提として説明する。しかしながら、本発明は、切削機構を具備しない図2(b)に示す態様であっても実現可能であることを付言しておく。)図1,3および4には、粉末焼結積層法と切削加工とを実施できる光造形複合加工機の機能および構成が示されている。光造形複合加工機1は、「金属粉末を所定の厚みで敷くことによって粉末層を形成する粉末層形成手段2」と「外周が壁27で囲まれた造形タンク29内において上下に昇降する造形テーブル20」と「造形テーブル20上に配され造形物の土台となる造形プレート21」と「光ビームLを任意の位置に照射する固化層形成手段3」と「造形物の周囲を削る切削手段4」とを主として備えている。粉末層形成手段2は、図1に示すように、「外周が壁26で囲まれた原料粉末タンク28内において上下に昇降する粉末テーブル25」と「造形プレート上に粉末層22を形成するための均し板23」とを主として有して成る。固化層形成手段3は、図3および図4に示すように、「光ビームLを発する光ビーム発振器30」と「光ビームLを粉末層22の上にスキャニング(走査)するガルバノミラー31(スキャン光学系)」とを主として有して成る。必要に応じて、固化層形成手段3には、光ビームスポットの形状を補正するビーム形状補正手段(例えば一対のシリンドリカルレンズと、かかるレンズを光ビームの軸線回りに回転させる回転駆動機構とを有して成る手段)やfθレンズなどが具備されている。切削手段4は、「造形物の周囲を削るミーリングヘッド40」と「ミーリングヘッド40を切削箇所へと移動させるXY駆動機構41(41a,41b)」とを主として有して成る(図3および図4参照)。
【0021】
光造形複合加工機1の動作を図1、図5および図6を参照して詳述する。図5は、光造形複合加工機の一般的な動作フローを示しており、図6は、光造形複合加工プロセスを模式的に簡易に示している。
【0022】
光造形複合加工機の動作は、粉末層22を形成する粉末層形成ステップ(S1)と、粉末層22に光ビームLを照射して固化層24を形成する固化層形成ステップ(S2)と、造形物の表面を切削する切削ステップ(S3)とから主に構成されている。粉末層形成ステップ(S1)が粉末層形成手段による動作・ステップに相当し、固化層形成ステップ(S2)が固化層形成手段による動作・ステップに相当する。粉末層形成ステップ(S1)では、最初に造形テーブル20をΔt1下げる(S11)。次いで、粉末テーブル25をΔt1上げた後、図1(a)に示すように、均し板23を、矢印A方向に移動させ、粉末テーブル25に配されていた粉末(例えば「平均粒径5μm〜100μm程度の鉄粉」)を造形プレート21上へと移送させつつ(S12)、所定厚みΔt1に均して粉末層22を形成する(S13)。次に、固化層形成ステップ(S2)に移行し、光ビーム発振器30から光ビームL(例えば炭酸ガスレーザ(500W程度)、Nd:YAGレーザ(500W程度)、ファイバレーザ(500W程度)または紫外線など)を発し(S21)、光ビームLをガルバノミラー31によって粉末層22上の任意の位置にスキャニングし(S22)、粉末を溶融させ、固化させて造形プレート21と一体化した固化層24を形成する(S23)。光ビームは、空気中を伝達させることに限定されず、光ファイバーなどで伝送させてもよい。
【0023】
固化層24の厚みがミーリングヘッド40の工具長さ等から求めた所定厚みになるまで粉末層形成ステップ(S1)と固化層形成ステップ(S2)とを繰り返し、固化層24を積層する(図1(b)参照)。尚、新たに積層される固化層は、焼結又は溶融固化に際して、既に形成された下層を成す固化層と一体化することになる。
【0024】
積層した固化層24の厚みが所定の厚みになると、切削ステップ(S3)へと移行する。図1および図6に示すような態様ではミーリングヘッド40を駆動させることによって切削ステップの実施を開始している(S31)。例えば、ミーリングヘッド40の工具(ボールエンドミル)が直径1mm、有効刃長さ3mmである場合、深さ3mmの切削加工ができるので、Δt1が0.05mmであれば、60層の固化層を形成した時点でミーリングヘッド40を駆動させる。XY駆動機構41(41a,41b)によってミーリングヘッド40を矢印X及び矢印Y方向に移動させ、積層した固化層24から成る造形物の表面を切削加工する(S32)。そして、三次元形状造形物の製造が依然終了していない場合では、粉末層形成ステップ(S1)へ戻ることになる。以後、S1乃至S3を繰り返して更なる固化層24を積層することによって、三次元形状造形物の製造を行う(図6参照)。
【0025】
固化層形成ステップ(S2)における光ビームLの照射経路と、切削ステップ(S3)における切削加工経路とは、予め三次元CADデータから作成しておく。この時、等高線加工を適用して加工経路を決定する。例えば、固化層形成ステップ(S2)では、三次元CADモデルから生成したSTLデータを等ピッチ(例えばΔt1を0.05mmとした場合では0.05mmピッチ)でスライスした各断面の輪郭形状データを用いる。
【0026】
[本発明の製造方法]
本発明の製造方法は、上述した粉末焼結積層法のなかでも、特に粉末層の形成態様に特徴を有している。具体的には、光ビームの照射位置データに基づいて、新たな粉末層のうちの造形領域を特定し、その特定された造形領域にのみ原料粉末を局所的に供給する。
【0027】
これは、下段側から上段側へと層移行する層毎に造形領域の形状やサイズが大きく変化することを特に考慮したものである。例えば、図7に示すような造形モデル(円錐形状造形物)を例にとると、上層になるほど、造形断面が小さくなっている。つまり、上層になるほど、光ビーム照射面積が小さくなり、それゆえ、供給すべき材料粉末は少なくてもよい。図7で示した例では、1つの形状が変化していく造形領域断面しか現れないが、図8のような造形モデルの場合では、下層側では1つ、上層側では2つの造形領域に分かれることになる。下層側から上層側へと移行する三次元形状物の造形に際しては造形領域断面が多岐にわたるのが一般的である。つまり、各層で必要となる粉末供給位置および粉末供給量は変わることになる。適切な位置に適切な量の原料粉末を供給するには、処理層の形状データを参照し、そのデータに基づいて粉末材料供給を制御する必要がある。
【0028】
本発明は上記のような事項を特に考慮したものであり、それゆえ、光ビームの照射位置データに基づいて、新たに形成する粉末層のうちで特に必要な造形領域を特定し、その特定された造形領域にピンポイントで原料粉末の供給を行う。
【0029】
具体的には、固化層の上に新たな粉末層を形成する際、造形物の作成位置及び造形物の現在実行中の光ビーム照射位置データに基づき、実行中の層における原料粉末の供給領域を特定し、その特定された領域に対し新たな原料粉末の供給を行う。光ビーム照射用データからは、造形モデルの外形・輪郭を判断できるところ、その外形・輪郭の形状は各層で異なり得る。それゆえ、そのような“各層で形状が異なる”光ビーム照射用データに基づいて、必要な領域にのみ原料粉末の供給を局所的に行う。
【0030】
特に、光ビーム照射用の輪郭データを用いると、図9(a)に示すように、“始点”と“終点”とが重なれば一つの独立した領域と判断することができる。図9(b)に関連するフローを示す。図9(b)に示されるように、まず、光ビーム照射用データ(輪郭データ)を解析することによって、独立造形領域を判別する。次いで、原料供給手段の作動系への座標変換を行って(例えば、原料供給ユニット移動系への座標変換を行う)、原料供給手段の作動データや移動データなどの制御データを作成する(例えば、可変自在な原料供給ブレードの幅寸法変更データや移動データを作成したり、あるいは、可動自在な原料供給ユニットの移動制御データや蓋開閉制御データなどを作成したりする)。このような制御データに基づいて原料供給手段を作動させることによって、必要な造形領域にのみ原料粉末を供給することができる(“可変ブレード用データ”や“可動供給デバイス用データ”のフローチャートについては後述でも詳述する)。
【0031】
特定された造形領域が複数独立して存在している場合には、その独立しているそれぞれの領域の大きさや相互の離隔距離などに基づいて原料供給を行うことが好ましい。例えば、造形領域間の離隔距離が所定の閾値よりも大きい場合、各造形領域を別個の領域と見なして個別に原料粉末を供給してよい。その一方で、造形領域間の離隔距離が所定の閾値よりも小さい場合には、各造形領域をまとめて1つの領域と見なして原料粉末供給を行ってよい。このような態様では、仮に原料供給制御分解能よりも小さい微小領域が生じたとしても、無駄な原料供給動作を極力減じることができる。
【0032】
図10(a)および(b)を用いて詳述する。例えば、光ビーム照射位置データに基づき、処理しようとする層に複数の焼結エリア(≒造形領域)がある場合、各々の焼結エリアにて外接する四角形を考える。そして、それぞれの四角形の距離が一定以上離れていれば独立に個々に粉末供給を行う。逆に、“四角形の距離”が一定未満の場合あるいは一方の焼結エリアが他方の焼結エリアに一部もしくは全て包含されている場合では、それらをまとめて1つの粉末供給エリアとみなして粉末供給を行う。例えば図10(a)に示すように「焼結エリアA」「焼結エリアB」および「焼結エリアC」が存在する場合を想定する。造形座標系においては、焼結エリアAの最大座標値(Xamax,Yamax)/最小座標値(Xamin,Yamin)あり、焼結エリアBの最大座標値(Xbmax,Ybmax)/最小座標値(Xbmin,Ybmin)あり、焼結エリアCの最大座標値(Xcmax,Ycmax)/最小座標値(Xcmin,Ycmin)ある。但し、Xamin>Xbmaxである。かかる場合において、離隔距離の閾値をAとして、Xamin−Xbmax<Aの場合には、両エリアは互いに近い位置関係にあると判断して同一粉末供給エリアとして扱う。つまり、両者の領域を1つにまとめて(Xamax,Yamax)、(Xbmin,Ybmin)を頂点とする長方形の粉末供給エリアとする。逆に、仮にXamin−Xbmax≧Aの場合であったとすると、両エリアは互いに遠い位置関係にあると判断して、それぞれを独立した別個の粉末供給エリアとする(例えば、焼結エリアA,Bと焼結エリアCとは互いに遠い位置関係にあるので、別個の粉末供給エリアとすることができる)。
【0033】
また、例えば、図10(b)に示すように「焼結エリアA」「焼結エリアB」および「焼結エリアC」が存在する場合を想定する。つまり、焼結エリアAの外接長方形が焼結エリアBの外接長方形に包接されており、焼結エリアCが焼結エリアAおよびBと離れている場合を想定する。かかる場合では、AとBについて全体として焼結エリアBの焼結エリアとみなして粉末供給を行う。つまり、焼結エリアAの粉末供給を焼結エリアBの粉末供給に含めて行う。
【0034】
必要な造形領域にのみ原料粉末の供給を行う具体的態様としては、幅寸法が可変自在な原料供給ブレードを用いた態様であってよい。具体的には、原料粉末タンクから造形テーブルに向かってスライド移動できる均しブレードであって、そのスライド移動する方向に対して垂直な方向のブレード幅寸法が可変自在となっているブレードを用いてよい。例えば、原料供給ブレード23’が、図11、12および13に示されるように、その幅寸法がそれぞれ異なる複数枚のサブ・ブレード(23a,23b,23c,・・・)から構成されていてよい。かかる場合、各々のサブ・ブレード(23a,23b,23c,・・・)は昇降自在に設けられており、“特定された造形領域のサイズ”に応じて、適した幅寸法のサブ・ブレードが他のサブ・ブレードよりも下方に位置付けられて原料供給が行われる。また、図14および図15に示すように、拡張ブレードM,Nによって幅寸法が可変自在となった原料供給ブレードを用いてもよい。かかる場合でも“特定された造形領域のサイズ”に応じて、拡張ブレードM,Nのスライド変位の程度によって好適なブレード幅寸法を選択することができる。上記のようなブレード態様では、“特定された造形領域のサイズ”に合った幅寸法で原料粉末を供給しつつ粉末の平滑化も行うことができる、即ち、必要な限定的な領域に対して材料粉末層を局所的に形成することができる。
【0035】
必要な造形領域にのみ原料粉末の供給を行う他の具体的態様としては、可動自在に設けられた原料供給ユニットを用いた態様を挙げることができる。具体的には、図16および図17に示されるように、原料粉末を一時的に貯留して供給するための可動自在な原料供給デバイス60を用いて“特定された造形領域”に原料粉末を供給してよい。かかる態様では、原料粉末を貯留する原料供給デバイスが実際に必要な領域にまで自ら移動することによって、より細かい造形領域に対しても原料粉末の供給を行うことができる。例えば、原料供給デバイスが“特定された造形領域の上方”またはその近傍へと移動し、次いで、そのデバイスの原料貯留タンクの排出口を開閉操作することによって、必要な領域にのみ局所的に原料粉末を供給することができる(例えば図18参照)。
【0036】
[本発明の製造装置]
本発明の製造装置は、上記の製造方法を実施するための装置である。従って、かかる装置は、光ビームの照射位置データに基づいて粉末層における造形領域を特定する原料供給領域演算部を有して成り、粉末層形成手段が、その特定された造形領域に原料粉末を局所的に供給するための構成を有している。
【0037】
原料供給領域演算部は、コンピュータにより構成されたものであってよく、例えば少なくともCPUおよび記憶装置部(例えば一次記憶装置部および/または二次記憶装置部)などを備えたコンピュータにより構成されることが好ましい。このような原料供給領域演算部では、図9(b)で示したようなフローが実行される。つまり、まず、光ビーム照射用データ(輪郭データ)が解析されることによって、独立造形領域が判別され、次いで、原料供給手段の作動系への座標変換を行って、原料供給手段の作動データや移動データなどの制御データを作成する。作成された制御データは、特定された造形領域への原料粉末供給に資するべく粉末層形成手段(例えば上述の原料供給ブレードや原料供給ユニットなどの可変・可動な部分)の作動・制御に使用される。ちなみに、「幅寸法が可変自在な原料供給ブレード」に用いられるデータの処理フロー例を図24に示すと共に、「可動自在に設けられた原料供給ユニット」に用いられるデータの処理フロー例を図25に示しておく。
【0038】
粉末層形成手段は、原料粉末を局所的に供給できる構成を有しており、例えば、「幅寸法が可変自在な原料供給ブレード」または「可動自在に設けられた原料供給ユニット」を有して成っていてよい。つまり、このような態様は、粉末層形成手段が“可変自在な部分”または“可動自在な部分”を有している態様といえる。
【0039】
(幅寸法が可変自在な原料供給ブレード)
「幅寸法が可変自在な原料供給ブレード」の態様を例示すると、“原料粉末を均して粉末層を形成する均し板”がその寸法を適宜変えることができるように構成されていることが好ましい。特に、均し板がスライド移動する方向に対して垂直な方向の幅寸法が可変自在となっていることが好ましい。かかる場合、粉末層形成手段は、図11に示すように、「原料粉末を上下に昇降させる粉末テーブルを備えた原料粉末タンク28」および「造形テーブル20上に配された造形プレート上において粉末層22を形成するための均しブレード機構23’であって、粉末層および/または固化層が形成されることになる造形テーブル20側へとスライド移動することができ、かつ、スライド移動する方向に垂直な方向のブレード幅寸法が可変自在となっている均しブレード機構23’」を有しているといえる。
【0040】
例えば、均しブレード機構23’は、図12および13に示されるように、その幅寸法がそれぞれ異なる複数枚のサブ・ブレード(23a,23b,23c)から構成されていてよい。かかる場合、各々のサブ・ブレードは昇降自在に設けられており、“特定された造形領域”に応じて、適した幅寸法のサブ・ブレードが選択される。具体的には、選択されたサブ・ブレードが他のサブ・ブレードよりも下方に位置付けられて材料供給に供される。図示される態様では、均しブレード機構23’が、幅寸法の異なる3つのサブ・ブレード(23a,23b,23c)から構成されており、それぞれが昇降自在に設けられている。例えばサブ・ブレード23aの下端エッジが最も下方に位置するように変化した場合では、そのサブ・ブレードの幅寸法Waに相当する原料粉末が造形領域へと押し出されて均されることになる(図12および図13(a)参照)。同様に、サブ・ブレード23bの下端エッジが最も下方に位置するように変化した場合では、そのサブ・ブレードの幅寸法Wbに相当する原料粉末が造形領域へと押し出されて均され(図12および図13(b)参照)、また、サブ・ブレード23cの下端エッジが最も下方に位置するように変化した場合では、そのサブ・ブレード23cの幅寸法Wcに相当する原料粉末が造形領域へと押し出されて均されることになる(図12および図13(c)参照)。このようにして、“特定された造形領域”のサイズに応じて、適した幅寸法のサブ・ブレードを適宜機能させればよい。サブ・ブレードの個数は、特に制限はなく、2〜15個程度が好ましく、例えば3個〜6個程度であってよい。
【0041】
均しブレード機構23’は、図14および図15に示すように、その幅寸法を可変自在に変化させる拡張ブレートM,Nから構成されていてもよい。かかる均しブレード機構23’では、図15(a)に示すように、基本ブレード(23L)に加えて拡張ブレードM(23M)および拡張ブレードN(23N)が設けられている。対を成す拡張ブレードの一方の拡張ブレードM(23M)は、基本ブレード(23L)の背面のa方向側に設けられており、他方の拡張ブレードN(23N)は、基本ブレード(23L)の背面のb方向側に設けられている。拡張ブレードM(23M)は、a方向にスライド自在に設けられている。その結果、拡張ブレードM(23M)が図15(b)に示すようにa方向にスライド変位すると、基本ブレード(23L)の幅を補うようにブレードの幅寸法が全体として増すことになる。同様に、拡張ブレードN(23N)は、b方向にスライド自在に設けられている。その結果、拡張ブレードN(23N)が図15(c)に示すようにb方向にスライド変位すると、基本ブレード(23L)の幅を補うようにブレードの幅寸法が全体として増すことになる。つまり、そのような拡張ブレードのスライド変位を制御することによって、ブレード全体の幅寸法を適宜変えることができる。これは、“特定された造形領域”のサイズに応じて、それに適した幅寸法に調整できることを意味している。拡張ブレードMまたはNの個数はそれぞれ1つに限定されず、それぞれ2つ以上であってもよく(例えばそれぞれ2〜8程度であってよく、好ましくはそれぞれ2〜4程度である)。拡張ブレードの個数が増えると、更に精度良くブレード全体の幅寸法を調整することができる。例えば図15に示される態様では、拡張ブレードMおよびNがそれぞれ2つ設けられている。かかる態様では、第2の拡張ブレードM(23M’)が第1の拡張ブレードM(23M)よりも大きくa方向にスライド変位できるように設けられていることが好ましい(図15(d)参照)。これにより、第2の拡張ブレードM(23M’)および第1の拡張ブレードM(23M)のそれぞれのスライド変位量を適当に組み合わせることによって、より多くのブレード幅寸法を実現することができる。同様にして、第2の拡張ブレードN(23N’)が第1の拡張ブレードN(23N)よりも大きくb方向にスライド変位できるように設けられていることが好ましい(図15(d)参照)。これにより、第2の拡張ブレードN(23N’)および第1の拡張ブレードN(23N)のスライド変位量を適当に組み合わせることによって、より多くのブレード幅寸法を実現することができる。
【0042】
(可動自在に設けられた原料供給ユニット)
「可動自在に設けられた原料供給ユニット」の態様を例示する。可動自在な原料供給ユニットは、原料粉末の一時的な貯留機能を有する原料供給デバイスから構成されていることが好ましい。つまり、一時的に貯留された原料粉末の供給を可能とする可動自在な原料供給デバイスを用いて“特定された造形領域”へと原料粉末を供給する態様が好ましい。かかる態様では、原料供給ユニット、特に可動自在な原料供給デバイスの貯留タンクが実際に必要な領域へと移動することで、より細かい領域に対して原料粉末を供給することができる。つまり、図18(a)および図18(b)に示すように、可動自在な原料供給デバイス60が「原料粉末の一時的貯留を可能とする原料タンク」を有して成ることが好ましい。原料粉末は、その一時的な貯留を可能とする原料供給デバイスのタンク61に蓄えられるところ、そのタンク61自体が「造形テーブルの上方領域を自在に移動可能な駆動テーブル」に対して取り付けられていることが好ましい。そして、タンク61には造形領域に対して粉末を排出するための排出口が設けられており、その排出口には外部からの信号によって開閉自在に作動する弁が設けられていることが好ましい。このような態様では、上記駆動テーブルと開閉弁によって、所望の造形領域に対して局所的に原料粉末を供給することができる。
【0043】
一時貯留タンク61には運転前に事前に原料粉末が充填される。1回の造形において、成分や粒径の異なる複数種類の材料を用いる場合では、一時貯留タンク61を複数設けてもよい。
【0044】
タンク61は原料粉末供給のバッファの意味合いも含んでいる。例えば、図18(b)に示すように、チャンバー50の外側に据付け型の材料メインタンク53を設けておき、それとタンク61とを相互に屈曲可能なホース54などで連結してよい。かかる場合、エア圧などによって材料メインタンク53から材料一時タンク61へと原料粉末を適宜フレキシブルに搬送することができる。図19には、据付け型の材料メインタンク53が設けられた原料供給デバイス60の別の態様を示しておく。ちなみに、原料供給の速度次第では、一時貯留タンク61を省略して材料メインタンク53を直接的に原料供給デバイスの排出口に連結させてもよい。
【0045】
原料供給デバイス60について更に詳述する。図17に示すように、原料供給デバイス60は、「原料粉末を一時的に貯留するための貯留タンク部62」、「貯留タンク部からの原料粉末の供給を可能とする原料排出部64」および「原料排出部64の開口を開閉自在とする蓋66」を有して成ることが好ましい。かかる場合、原料排出部64における開口部65が“閉”となった原料供給デバイス60を“特定された造形領域の上方”またはその近傍に移動させた後、かかる開口部65を一時的に“開”にすることによって、必要な領域に必要な量の原料粉末を局所的に供給することができる。
【0046】
図17に示されるように、原料供給デバイス60は、貯留タンク部62から供給された原料粉末を均すためのスキージ67を更に有して成っていてもよい。これにより、原料供給デバイスからの供給時に多少の厚さバラツキがあったとしても、所望の厚さで原料粉末層を平滑化することができる。スキージ67は、その下端エッジが開口部65に隣接するように原料排出部64の背面側に設けられることが好ましい(図17参照)。尚、スキージを備えた態様としては、図20に示すような態様であってもよい。
【0047】
更にいえば、原料供給デバイス60は、貯留タンク部62および/または原料排出部64に振動を付与できる機能を有していることが好ましい。これにより、貯留タンク部や原料排出部の内壁に残留し得る粉末を振り落とすことができ、詰まりに起因する材料供給量の減少を好適に回避できるからである。例えば、図17に示すように、貯留タンク部62の外壁面に振動子69を設けてもよい。同様の趣旨により、原料排出部64が開口部65のクリーニング機構を有していてもよい。かかるクリーニング機構は、特に、材料の吸湿などに起因した固化による詰まりが防止されるような機構であることが好ましい。
【0048】
原料供給デバイス60は、図16および図17に示される態様に限定されず、図21および図22に示されるような態様であってもかまわない。図21および図22に示される態様では、貯留タンク部62が外部の原料供給部とつながっていない。それゆえ、図21および図22に示される原料供給デバイス60においては、造形に先立って原料粉末が予め仕込まれた貯留タンク部62を用意しておく。図22(a)に示されるように、貯留タンク部62は原料排出部64と分離自在に設けられていてよい。つまり、貯留タンク部62が原料排出部64から取り外し可能となっていてよい。かかる場合は、原料粉末が仕込まれる貯留タンク部62のみを新たに取り換えることが可能であり(図22(b)参照)、また、排出部は動かさなくて良くなり、取り替えごとの位置決め調整が不要となる。取り替えに際しては、ボトル形態を有した取替え用の貯留タンク部62の蓋62aを外した後、その貯留タンク部62を逆さにして原料排出部64へとセットする。セットすれば、原料排出部64に設けられたピン(図示せず)が、貯留タンク部62の封止膜62bを突き破ることになり、その結果、原料粉末が原料排出部64へと供給される。つまり、ピンが立っていれば、貯留タンク部62の口部の封止膜62bに穴が空けられることになり、その状態から貯留タンク部62を回転して取り付けると、その穴が大きくなるので、かかる穴を介して貯留タンク部62の原料粉末を原料排出部64へと供給することができる。更には、図22(c)に示されるように、原料排出部64が原料粉末の排出向きを変えることができるように回転自在に構成されていてもよい。具体的には、原料排出部64のノズル部64aが吐出口を下向きにして“首を振るように”回転自在となっていてよい(換言すれば、ノズル吐出口から排出される原料粉末の向きが種々の放射方向となるように回転自在となっていてよい)。これによって、ピンポイントで供給したい領域に原料粉末を局所的に供給することができる。特に、ノズル部64aに弁が設けられ、所望のタイミングで信号を与えて弁の開閉を行う場合では、原料粉末供給のタイミングを更に好適にコントロールすることができる。
【0049】
原料供給デバイス60は、等速供給機能を有していてもよい。具体的には、原料供給デバイス60は、造形領域に対する原料供給の始点・終点を少しオーバーさせ、原料粉末供給が等速になるように開口部65・ノズル部64aなどの開閉動作を制御する機能を有していてもよい(図23参照)。これについて詳述する。例えば図23(a)に示すように原料供給デバイス60が供給領域の上方を移動する場合を考えてみると、「ある移動速度に達するまでの速度立上がり時期」および「移動停止する際の速度立下がり時期」においては、通常(等速度時期)よりも多く原料粉末が供給されてしまうことになる(図23(b)参照)。そこで、事前に所定の速度に達するまでに進む移動量を求めておき、移動開始点をずらしておく。そして、一定速度になる位置で開口して粉末供給を開始し、その一定速度が保たれた時期において閉口を行う(図23(c)参照)。つまり、少し“オーバーラン”した態様でもって材料供給を行う。このような態様では、加減時の材料放出量のバラツキを効果的に抑えることができる。
【0050】
以上、本発明の好適な実施形態を中心に説明してきたが、本発明はこれに限定されず、種々の改変がなされ得ることを当業者は容易に理解されよう。
【0051】
例えば、ブレードや原料供給デバイスの移動及び原料粉末開口部の開閉タイミングなどをモデル形状の最外郭(輪郭)データに基づいて行ってもよい。かかる場合、領域パターンが単純となり、動作データを簡略化することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 光造形複合加工機
2 粉末層形成手段
3 光ビーム照射手段
4 切削手段
8 ヒューム
19 粉末/粉末層(例えば金属粉末/金属粉末層)
20 造形物支持部材(造形物テーブル)
21 造形プレート
22 粉末層(例えば金属粉末層または樹脂粉末層)
23 スキージング用ブレード
23’ 均しブレード機構
23a,23b,23c サブ・ブレード
23L 基本ブレード
23M,23M’ 拡張ブレード
23N,23N’ 拡張ブレード
24 固化層(例えば焼結層)
25 粉末テーブル
26 粉末材料タンクの壁部分
27 造形タンクの壁部分
28 原料粉末タンク
29 造形タンク
30 光ビーム発振器
31 ガルバノミラー
40 ミーリングヘッド
41 XY駆動機構
50 チャンバー
52 光透過窓またはレンズ
53 材料メインタンク
54 ホース
60 可動自在な原料供給デバイス
61 材料一時タンク部
62 貯留タンク部
62a 蓋
62b 封止膜
64 原料排出部
64a ノズル部
65 開口部
67 スキージ
69 振動子
L 光ビーム
100 三次元形状造形物
200 成形品又は樹脂原料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)原料粉末から成る粉末層の所定箇所に光ビームを照射して前記所定箇所の原料粉末を焼結又は溶融固化させて固化層を形成する工程、および
(ii)得られた固化層の上に新たな粉末層を形成し、前記新たな粉末層の所定箇所に光ビームを照射して更なる固化層を形成する工程
を繰り返して行う三次元形状造形物の製造方法であって、
前記光ビームの照射位置データに基づいて、前記新たな粉末層のうちの造形領域を特定し、該特定された造形領域に原料粉末を局所的に供給することを特徴とする、三次元形状造形物の製造方法。
【請求項2】
前記特定された造形領域が複数独立して存在しており、前記独立した造形領域間の離隔距離が所定の閾値よりも大きい場合、各造形領域を別個の領域と見なして個別に原料粉末を供給する一方、前記独立した造形領域間の離隔距離が所定の閾値よりも小さい場合、各造形領域を全体として1つの領域と見なして原料粉末を供給することを特徴とする、請求項1に記載の三次元形状造形物の製造方法。
【請求項3】
幅寸法が可変自在な原料供給ブレードまたは可動自在に設けられた原料供給ユニットを用いて、前記特定された造形領域に前記原料粉末を局所的に供給することを特徴とする、請求項1または2に記載の三次元形状造形物の製造方法。
【請求項4】
前記特定された造形領域のサイズに合うように、前記原料供給ブレードの幅寸法を変えることを特徴とする、請求項3に記載の三次元形状造形物の製造方法。
【請求項5】
前記原料供給ユニットを前記特定された造形領域の上方に移動させてから該原料供給ユニットから前記特定された造形領域へと前記原料粉末を供給することを特徴とする、請求項3に記載の三次元形状造形物の製造方法。
【請求項6】
原料粉末から成る粉末層を造形テーブル上に形成する粉末層形成手段と、前記粉末層の所定箇所に光ビームを照射して前記所定箇所の原料粉末を焼結又は溶融固化させて固化層を形成する固化層形成手段とを有して成り、前記粉末層形成手段による粉末層の形成と、前記固化層形成手段による固化層の形成とを繰り返すことにより複数の固化層が積層一体化された三次元形状造形物を製造するための装置であって、
前記光ビームの照射位置データに基づいて各粉末層における造形領域を特定する原料供給領域演算部を有して成り、
前記粉末層形成手段が、前記特定された造形領域へと前記原料粉末を局所的に供給する構成を有していることを特徴とする、三次元形状造形物の製造装置。
【請求項7】
前記粉末層形成手段が、幅寸法が可変自在な原料供給ブレードまたは可動自在に設けられた原料供給ユニットを有して成ることを特徴とする、請求項6に記載の三次元形状造形物の製造装置。
【請求項8】
前記粉末層形成手段が、
前記原料粉末を上下に昇降させる粉末テーブルを備えた原料粉末タンク、および
前記造形テーブル上に配された造形プレート上に前記粉末層を形成するための均しブレード
を有して成り、
前記均しブレードは、前記粉末層および/または前記固化層が形成されることになる造形テーブルに向かってスライド移動することができ、該スライド移動する方向に垂直な方向のブレード幅寸法が可変自在となっていることを特徴とする、請求項6または7に記載の三次元形状造形物の製造装置。
【請求項9】
前記粉末層形成手段が、前記原料粉末を一時的に貯留して供給するための原料供給デバイスを有して成り、該原料供給デバイスが、
前記原料粉末を前記一時的に貯留するための貯留タンク部
前記貯留タンク部に前記貯留された前記原料粉末を排出するための原料排出部、および
前記原料排出部の開口を開閉自在とする蓋
を有して成り、
前記原料供給デバイスが、前記造形テーブル上にて移動できるように可動自在となっていることを特徴とする、請求項6または7に記載の三次元形状造形物の製造装置。
【請求項10】
前記原料排出部は、前記原料粉末の排出方向を変えることができるように回転自在に構成されていることを特徴とする、請求項9に記載の三次元形状造形物の製造装置。
【請求項11】
前記貯留タンク部は前記原料排出部と分離自在に設けられていることを特徴とする、請求項9または10に記載の三次元形状造形物の製造装置。
【請求項12】
前記原料供給デバイスが、前記貯留タンク部から供給された前記原料粉末を均すためのスキージを更に有して成ることを特徴とする、請求項9〜11のいずれかに記載の三次元形状造形物の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−246541(P2012−246541A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119923(P2011−119923)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】