説明

三次元測定探触体

【課題】 位置決め誤差のおそれなしに位置決めを実施することができる、割り出しされた複数の方向に向けることのできるトリガ付探触子を提供する。
【解決手段】 固定部品(250)と、固定部品に対して第1軸の周囲を回転可能である可動部品(210)と、可動部品の回転を禁止する固定位置に、軸方向の弾性手段と、固定部品と可動部品との間に6つの接触点を画定している割出部品と、固定部品から可動部品を解除することにより、第1軸の周囲で可動部品が回転することを可能にするための、弾性手段に対抗しているアクチュエータとを含み、可動部品が、固定位置にあるときには、6つの接触点と弾性手段との接続を除いて、固定部品と可動部品との間に、接触箇所が存在しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数方向に沿って空間内で方向付けることができるトリガ付探触子に関するものである。
この探触子は、より詳細には、加工品または仕掛かり品の三次元測定のために、手動もしくは自動測定機械に、または、例えばフライス盤のような工作機械に使用するためのものであるが、それに限定されない。
【背景技術】
【0002】
トリガ付探触子は、機械部品の寸法または表面の正確な検査のために、それに限定されないが、機械部品の生産ライン上で広く用いられる測定器具である。
トリガ付探触子はまた、複雑な形状の部品を三次元で測定することにより、それらを複製したり、またはモデル化したりするためにも用いられる。
【0003】
一般的に、トリガ付探触子は、測定機械または工作機械に固定するための固定部品と、測定対象物に接触させるための可動接触ロッドとを含み、該可動接触ロッドは、細長いロッドの先端にボールを一つ取り付けたものである。
【0004】
たいていの用途分野において、トリガ付探触子は、例えば機械の軸上に配置された位置エンコーダなどの手動または自動測定システムを用いて、その位置を空間内で正確に求めることができる機械の可動アームに固定される。
可動アームは、空間内を移動して、探触子の接触ロッドを測定対象物または被測定表面に接触させる。
接触の際に、偏向力が接触ロッドに加わり、接触ロッドをその初期の静止位置から動かす。
接触ロッドが少しでも動くと、センサーが反応して電気信号を発生する。
該電気信号は、光信号の形で使用者に送られるか、機械の制御ソフトウェアに送られ、そこで測定システムのデータを用いて所与の座標系における接触点の座標を決定する。
このために、先行技術では、電気機械式センサーもしくは光学センサー、またはさまざまな原理に基づく移動センサー、例えば、歪みゲージを含んだセンサーが用いられる。
【0005】
三次元トリガ付探触子の場合、接触ロッドと探触子の固定部品との接続は、通常Boysの結合原理にしたがって、例えば、固定機構と接触ロッドとの間に6つの接触点を画定するように、6つのボールの上に置かれた3本の円筒状ピンによって実現される。
しかしながら、二次元および一次元探触子も知られている。
【0006】
くぼみと隆起のある、複雑な形状の部品を測定するために探触子を用いるとき、探触子の固定部品または接触ロッドが測定対象物の部品と衝突することなしに、接触ロッドを測定対象物の表面全体と接触させることは困難または不可能である。
この不都合を解消するために、接触ロッドを空間内の複数の方向に向けることを可能にする探触子が知られている。
可能な方向全体を扱うために、一般的に二つの独立した回転軸が必要である。
このタイプの一つの探触子が、欧州特許出願公開第0392660号明細書に記載されている。
【0007】
好適には、回転軸は、十分に多数ではあるが有限個の、正確に再現可能な所定の静止位置を備えているという意味で、割り出されることが望ましい。
この配置のおかげで、接触ロッドの方向を変えるたびに、測定機械を再度調整する必要がなくなる。
【特許文献1】欧州特許出願公開第0392660号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
測定の間、上述の先行技術の探触子の方向付けを可能にする軸は、所定の割出位置の一つに固定される。
探触子の異なる方向付けが要求されるとき、操作員は、このために備えられたノブまたはレバーを操作して軸を手動で解除し、必要に応じて探触子を方向付けするが、初期の固定位置にノブまたはレバーを再度位置付けることによって、軸を再びロックしなければならない。
これらの操作は、例えば、第2軸の位置決めの際に、第1軸が不意に動いた結果、位置決めの誤差を招く可能性がある。
【0009】
上述の探触子のもう一つの短所は、ロックおよび解除作業には固定用ノブに外部トルクを加える必要があり、その外部トルクが探触子とその支えによって測定機械の可動アームに伝達されることである。
このトルクは、探触子の支えに機械的応力を引き起こし、探触子全体を動かすおそれがある。
この不都合を回避するために、操作員は固定用ノブを操作するときに探触子が動かないように保持しなければならず、そのため片手での操作が困難または不可能になる。
【0010】
本発明の一つの目的は、位置決め誤差のおそれなしに信頼できる仕方で位置決めを実施することができる、割り出しされた複数の方向に向けることのできるトリガ付探触子を提案することである。
【0011】
本発明のもう一つの目的は、先行技術の制限のないトリガ付探触子を提案することである。
【0012】
本発明のもう一つの目的は、先行技術の探触子よりも操作が簡単な、割り出しされた複数の方向に向けることのできるトリガ付探触子を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、これらの目的は独立請求項の対象である装置によって達成され、引用請求項は本発明の随意の特徴を示している。
【0014】
すなわち、本発明の課題を解決するための手段は、添付図面の番号を参照すると、次のとおりである。
【0015】
第1に、
測定装置に対して測定探触体(30)を方向付けるための配向自在なトリガ付探触子(20)であって、
固定部品(250)と、
固定部品(250)に対して第1軸(211)の周囲を回転可能である、固定部品(250)に接続された可動部品(210)と、
可動部品(210)の回転を禁止する固定位置に、可動部品(210)を維持するための、軸方向の弾性手段(235)と、
可動部品(210)が固定位置にあるときに、可動部品(210)の所定の再現可能な複数の角度位置を画定するための、固定部品(250)と可動部品(210)との間に6つの接触点を画定している割出部品(256、217)と、
固定部品(250)から可動部品(210)を解除することにより、第1軸(211)の周囲で可動部品(210)が回転することを可能にするための、弾性手段に対抗しているアクチュエータ(300)とを含んでおり、
前記可動部品(210)が、固定位置にあるときに、6つの接触点と弾性手段との接続を除いて、固定部品(250)と可動部品(210)との間に、接触箇所が存在しないことを特徴とする、トリガ付探触子。
第2に、
前記固定部品(250)が、測定探触体(30)を測定装置に固定するための支持ロッド(251)を含み、
前記弾性手段が、支持ロッド(251)の内部空間内に軸方向に配置され、かつ、第1軸(211)と芯出しされたロッド(219)によって可動部品(210)に接続されている円筒状のバネを含んでいることを特徴とする、上記第1に記載の探触子。
第3に、
前記固定部品(250)に対して前記可動部品(210)を回転させるために、固定部品(250)と可動部品(210)との間に、軸受(313)を介在させたことを特徴とする、上記第1に記載の探触子。
第4に、
前記アクチュエータ(300)が、前記可動部品(210)と一体化しており、
可動部品(210)が固定位置にあるとき、固定部品(250)からアクチュエータ(300)を復帰させるために、少なくとも一つの復帰装置(336)を含んでいることを特徴とする、上記第1に記載の探触子。
第5に、
前記可動部品(210)に対して第2可動部品(220)を回転させるための第2軸(212)によって、可動部品(210)に接続された、第2可動部品(220)と、
第2可動部品(220)の回転を禁止する固定位置に第2可動部品(220)を維持するための、前記弾性手段とは独立して作動可能な第2弾性手段(225)とを含んでいることを特徴とする、上記第1に記載の探触子。
第6に、
前記可動部品(210)および/または前記第2可動部品(220)の解除が、第1軸(211)または第2軸(212)の方向への移動によって実施されることを特徴とする、上記第5に記載の探触子。
第7に、
前記第2可動部品(220)に固定された測定探触体(30)を含んでいることを特徴とする、上記第1に記載の探触子。
第8に、
アクチュエータ(300)および/または第2アクチュエータ(400)が、アクチュエータ(300)または第2アクチュエータ(400)にかけられた、ほぼ対称で対抗する二つの外力の作用によって、可動部品(210)または第2可動部品(220)を解除することを特徴とする、上記第5に記載の探触子。
第9に、
アクチュエータ(300)および/または第2アクチュエータ(400)が、アクチュエータ(300)または第2アクチュエータ(400)にかけられた外力のトルクの作用によって、可動部品(210)または第2可動部品(220)を回転駆動することを特徴とする、上記第8に記載の探触子。
第10に、
アクチュエータ(300)および/または第2アクチュエータ(400)が、対称で対抗する二つの外力が停止すると、その作用を停止するようになっていることを特徴とする、上記第8に記載の探触子。
第11に、
アクチュエータ(300)および/または第2アクチュエータ(400)が、可動部品(210)または第2可動部品(220)を解除するのに必要な力の強さを減じるために、減速機構を含んでいることを特徴とする、上記第8に記載の探触子。
第12に、
前記二つの外力が、第1軸(211)に対してほぼ垂直な方向を有し、前記二つの外力を受けるのが、第1軸(211)に対して直径方向に対抗する位置で前記探触子に配置された、少なくとも二つのボタンによるものであることを特徴とする、上記第8に記載の探触子。
第13に、
前記可動部品(210)または前記第2可動部品(220)の角度位置を示すための、一つまたは複数の窓を含んでいることを特徴とする、上記第5に記載の探触子。
第14に、
前記可動部品(210)に対するアクチュエータ(300)の作用が、可動部品(210)に対して弾性手段によってかけられた力にほぼ軸合わせされ、かつ相対していることを特徴とする、上記第5に記載の探触子。
第15に、
前記第2可動部品(220)に対する第2アクチュエータ(400)の作用が、前記第2可動部品(220)に対して前記第2弾性手段(225)によってかけられた力にほぼ軸合わせされ、かつ相対していることを特徴とする、上記第5に記載の探触子。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、位置決め誤差のおそれなしに信頼できる仕方で位置決めを実施することができる、割り出しされた複数の方向に向けることのできるトリガ付探触子を提案することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明によるトリガ付探触子の一つの実施態様の斜視図である。
【図2】図1に示した本発明によるトリガ付探触子の縦断面図である。
【図3】図1に示した本発明によるトリガ付探触子から第2水平軸を解除するのに用いられる、割出および減速機構を有するアクチュエータの正面図である。
【図4】図3に示すアクチュエータの位置をずらして見た正面図である。
【図5】図5は、固定部品の斜視図である。
【図6】図1のトリガ付探触子の軸の周囲の可動部品を示す斜視図である。
【図7】図1のトリガ付探触子から軸を解除するのに用いられる、割出および減速機構を有するアクチュエータの正面図である。機構を有するアクチュエータの斜視図である。
【図8】トリガ付探触子の組立の一過程における、割出および減速機構を有するアクチュエータと測定探触体の斜視図である。
【図9】ロック位置での図1のトリガ付探触子の縦断面図である。
【図10】解除位置での図1のトリガ付探触子の縦断面図である。
【符号の説明】
【0018】
20 トリガ付探触子
30 接触ロッド
41 窓
47 スケール
50 パイロットランプ

210 可動部品
211 第1軸
212 第2軸
214 ロッド
217 割出部品
218 ネジ
219 ロッド
220 第2可動部品
225 圧縮バネ
226 割出ボール
235 円筒状バネ
250 固定部品
251 支持ロッド
256 ボール

300 アクチュエータ
304 旋回軸
306 レバー
307 ローラ
310 押ボタン
313 軸受
314 支持リング
330 環状保護膜
336 戻バネ

400 第2アクチュエータ
410 ボタン
411 ボタン
430 レバー
440 アーム
450 レバー
460 ロッド
461 ピン
470 部品
475 第2バネ
【実施例】
【0019】
本発明は、付属の図面を参照して、例として挙げられた、下記の説明を読むことによっていっそう明らかになるものである。
【0020】
図1に示した本発明の第1実施態様は、固定部品250を含むトリガ付探触子20であり、該固定部品250は、支持ロッドであるネジ付ロッド251または別の既知の固定手段によって測定機械の可動アームに固定するためのものである。
固定部品250の詳細は、図5に示されている。
【0021】
固定部品250は、下面に割出部品としてのボール256を有しており、該ボール256は円周に沿って規則的に配置され、かつ部分的に下方に突出している。
ボール256は、後述のごとく、探触子20の第1軸211に対して割り出され、15度で離隔された、24の位置を画定している。
割り出し位置の所望の数にしたがって、異なる数のボールを用いてよいことは明らかである。
【0022】
用途に応じて、本発明の探触子20は、空間内の任意の方向で用いることができる。
便宜上、図2を参照して、探触子20の幾何的軸に相当する、探触子の第1回転軸である第1軸211を指すのに「垂直」という用語を、それに直交する第2軸回転軸である第2軸212を指すのに「水平」という用語を今後用いることにする。
これらの用語は、図において用いられる図示方向、とくに2本の第1軸211および第2軸212が示されている図2において用いられる図示方向を指すものとする。
【0023】
便宜上、探触子の2本の軸とさまざまな部品とを、今後「第1」と「第2」という用語で指すものとする。
しかしながら、これらの用語を本発明が二つの軸を備えた装置に限定されるという意味で理解してはならず、本発明は、1本、3本または任意の数の回転軸を備えた探触子も含むものである。
さらに、「第1」と「第2」という用語は、部品間のなんらかの順序または従属関係を意味するものではなく、本発明の装置の部品を区別するための単なる指標としてここで用いられるものである。
【0024】
図6および図8に示した、可動部品210は、その上面に3本の円筒状ピンによる割出部品217を具備している。
図9に示す、弾性手段としての円筒状バネ235は、ロッド219によって、可動部品210を固定部品250に対して引き寄せている。
この状況において、割出部品217のそれぞれは、ボール256の二つに押し付けられており、これにより生じた6つの接触点が、正確かつ再現可能な仕方で固定部品250と可動部品210との相対的な位置を決定している。
【0025】
固定部品250は回転対称であるため、可動部品210は、探触子の幾何的軸に相当する、第1軸211の周囲に、相互に15度で離隔された、24の割り出し位置を取ることができる。
他の同等の配置によって、例えば、ボールを可動部品に配置し、ピンを固定部品に配置することによっても、もしくはピンまたはボールの球状または円筒状の表面を斜面に代えることによっても、またはさらにそれぞれがボールの一つと一つの接触点しか持たない6本の円筒状ピンを用いても、同じ結果を得ることができるだろう。
円筒状バネ235を、同等の弾性手段、例えば、板バネあるいは弾性合成材料で製作された部品に代えることもできるだろう。
【0026】
図7、図8、図9ならびに図10に示した解除機構であるアクチュエータ300は、第1軸211の周囲での可動部品210の回転を可能にする。
アクチュエータ300は、4つのレバー306を備え、該レバーは、図7に示した、4つの押ボタン310と4つのローラ307によって駆動される。
【0027】
対向する二つの押ボタン310を押すと、レバー306は、旋回軸304の周囲を回転し、図9のロック位置を解除して、図10に示したような、ほぼ垂直の位置を取るまでになるのであり、図10は、解除位置にある第1軸211の割り出し機構を示すものである。
【0028】
解除位置において、ローラ307は、支持リング314を押し、玉軸受である軸受313によって、可動部品210から固定部品250を軸方向に離隔する。
離隔位置において、図9および図10に示したボール256は、割出部品217に触れることなしにピンの上を越え、第1軸211の周囲の回転が可能になる。
【0029】
ボール256に対する割出部品217の押し付け力は、測定の間に可動部品210が不意に動くのを防止するために十分な程度大きい必要がある。
この特定の実施態様において、割出バネである円筒状バネ235を、例えば、およそ30Nの全押し付け力に、すなわち6つの接触点のそれぞれについて約10Nに現寸決定するのだが、なぜなら押し付けは軸に対して60度で実施されるからである。
【0030】
30Nの力を押ボタン310に直接かけることは困難であろう。
この理由のために、レバー306の寸法と、旋回軸304の位置は、押ボタン310にかかる放射状方向の力と円筒状バネ235の弾性に対抗する軸方向の力との間に十分な減速比を与えるように選択される。
例えば、1:2の減速比は、押ボタン310にかかる操作力が約15Nであること、すなわち、およそ1.5Kgfであることを意味し、この力は、使用者がたいした困難なしにかけることができるものである。
押ボタン310の行程は、この減速比で、数ミリメートルに抑えられる。
【0031】
上述の数値は、説明した実施態様にとくに適した例として解釈しなければならない。
状況に応じて、例えば、探触子の質量と寸法に応じて、異なる値を選択することも可能であろう。
【0032】
第1軸211の周囲の可動部品210の解除を確実に行うためには、対抗する二つの押ボタン310を同時に操作することが必要である。
このようにして、探触子にかけられたこれらの外力はほぼ対抗し、第1軸211に対して垂直であり、合成力と合成トルクはほぼゼロであり、探触子の一切の予想外の運動が防止される。
【0033】
押ボタン310が放射状方向に沿って押されている間、操作員は接線方向に同じボタンを操作して、第1軸211の周囲で可動部品210を回転させることができる。
この操作は直感的なものであり、片手の2本の指で実現できる。
この条件において、ボール256と割出部品217との間の離隔は、割出表面の一切の接触や摩擦を防止するのに十分な程度あり、それによって割出位置での位置決めの正確さが守られる。
したがって、探触子の解除から回転に移行し、ついで探触子を再度ロックするために押ボタン310を緩める必要はない。
【0034】
減速比と使用する材料の摩擦係数は、アクチュエータ300が逆転可能で、押ボタン310への圧力が除かれると、可動部品210が自然に割出位置に復帰するように選択され、それによって自由位置で不意に使用されることが防止される。
【0035】
アクチュエータ300によって発生する、固定部品250と可動部品210との間の離隔力は、自由位置での摩擦のない回転を確実に行うように、割出バネである円筒状バネ235によってかけられロッド214およびロッド219によって伝達される力にほぼ軸合わせされ、かつ対抗している。
【0036】
有利には、例えば、スラスト玉軸受などの軸受313を、第1軸211の周囲での回転の際の摩擦を減じるように、固定部品250と可動部品210との間に導入する。
例えば、玉軸受またはころ軸受などの、別のタイプの軸受もスラスト玉軸受の代わりに用いることができるだろう。
【0037】
図9に示す、ロック位置において、ローラ307は、復帰装置である戻バネ336によって、支持リング314から離されている。
わずかな遊び(図示せず)がローラ307と支持リング314との間に存在するが、これは空間内の探触子の方向にかかわらず存在する。
【0038】
このようにして、静止位置で、ボール256と割出部品217との間の6つの接触点だけが、割出バネである円筒状バネ235の作用に対する反作用を構成する。
正確さにとっては当然マイナスになるような何らかの応力を生じる可能性のある、他の一切の部品は、固定部品250と可動部品210との間で接触したままにならない。
【0039】
他方で、割出バネの力は、正確に前記6つの接触点の重心に、かつ第1軸211に対応して、ロッド214およびロッド219によってかけられ、最適な押し付けを確実に行うようになっている。
【0040】
割出バネである円筒状バネ235は、支持ロッド251の内部に好適には収納されることで、きわめて長く、したがって、ばね定数の低いバネが使えるようになっており、それによって作業工程全体にわたって一定の牽引力が保証される。
割り出し力は、ロッド214の末端のネジ218の使用によって、または別の同等の手段によって、容易に調節することができる。
例えば、キャップを開けるだけで、探触子を分解することなしに、外部から容易に、ネジ218に手が届く。
【0041】
可動部品210は、第1軸211に垂直な回転軸である第2軸212の周囲を回転することができるようになっている、第2可動部品220に接続されており、該可動部品220には、図2に示すごとく、既知のタイプの測定探触体としての接触ロッド30が固定されている。
【0042】
第2可動部品220は、第2弾性手段としての圧縮バネ225によって、第2軸212により画定された軸方向に、可動部品210に対して押し付けられる。
割出ボール226のクラウンが、第2可動部品220の垂直面の上に実現され、可動部品210の隣接する面に配置された3本の円筒状ピン(図示せず)と相互作用することで、可動部品210の回転について先に説明したのと同様に、正確に再現可能な所定の数の割出位置を画定する。
【0043】
可能な変形例において、それぞれが一つの接触点しか持たない六本の円筒状ピンを用いることができる。
【0044】
第2可動部品220の解除回転システムである第2アクチュエータ400は、図3および図4に示されている。
解除は、二つのボタン410およびボタン411を押すことで実施される。
ボタン410にかけられた軸方向の力は、部品470の周囲を軸方向に摺動することができ、2本のレバー430およびレバー450、ならびに水平方向のアーム440によって伝達され、倍増され、ピン461およびロッド460によって圧縮バネ225にかけられて、圧縮バネ225を圧縮するようになっており、それによって第2可動部品220と可動部品210との間の接触力がなくなる。
この実施態様において、可動部品210の場合のように、例えば、1:2の操作力の減速比を得るように、レバー430、レバー450のアームの寸法を選択する。
ボタン410と部品470との間に位置する、第2バネ475は、第2可動部品220を図2では右に向かって軸方向に押して、その回転を可能にする。
【0045】
ボタン410を押すと、第2可動部品220は図2の右に移動するため、ピンと割出ボール226はもはや接触し合うことはなく、第2可動部品220は第2軸212の周囲を回転することができる。
回転は、図示されていないピンによって部品470に角度が一体化された、ボタン410を介して操作員によって行われる。
【0046】
ボタン410に対向するボタン411は、ボタン410にかかる力に対抗する力をかけるために指に受面を提供することと、2本の指で第2可動部品220の回転を容易にすることの二重の役割がある。
ボタン411は、実際、第2可動部品220と角度が一体化され、それと共に回転駆動される。
ほぼ対抗する二つの力を用いることによって、探触子の支えに応力を伝達して探触子全体を動かすことを防止する。
【0047】
ロッド460を介した、第2可動部品220に対するボタン410の作用は、圧縮バネ225によってかかる力にほぼ軸合わせされ、かつ対抗しているので、停止のない、直進運動が保証される。
【0048】
接触ロッド30によって発生した電気信号は、発光ダイオードによるパイロットランプ50(図1参照)によって発せられた光信号の形で使用者に送られるか、または機械の制御ソフトウェアに送られ、そこで測定システムのデータを用いて、所与の座標系における接触点の座標を決定する。
【0049】
第2可動部品220は、この実施態様において、90度の全角度に対して、相互に15度で離隔された7つの割出位置を取ることができる。
この角度は、可動部品210について可能な360度の回転と組み合わせて、半空間内に均一に配分された一定数の方向に接触ロッド30を向けることを可能にする。
しかしながら、一般的な数の割出位置とそれらの相互間の任意の離隔とをもって、本発明の装置を実現することも可能である。
【0050】
次に図10を参照しつつ説明すると、押ボタン310は、ゴム製またはエラストマ製の環状保護膜330に囲まれており、この膜の役割は、内部の機構を汚れや埃から保護するだけでなく、操作員の手の熱が内部の割出機構に伝達されないようにもすることである。
熱伝導は、割り出しの精度に悪影響を及ぼすことがある。
同じ目的のために、第2軸212の回転および解除に用いられる、ボタン410およびボタン411も、好適には断熱特性の優れた合成材料で実現することが望ましい。
【0051】
図1および図8に示すごとく、固定部品250に窓41が備えられていることにより、可動部品210に刻印または印刷されたスケール47上の、第1軸211に対する相対的回転角を読み取ることができるようになっている。
【0052】
第2軸212に対する相対的回転角は、ボタン411の外部クラウンに開けられた二つの窓で読み取ることができる。
探触子の可能なあらゆる方向で、最適な見やすさを可能にするために、この場合少なくとも二つの窓が必要である。
【0053】
接触ロッド30は、測定対象物の表面に少しでも接触すると反応し、電気パルスを発生する。
パルスは、測定機械の制御装置と接続するために、図示していない電子処理回路およびコネクタを介して、パイロットランプ50に伝達される。
この実施態様において、パイロットランプは発光ダイオードを含んでいるが、例えば、シート状または糸状の電気発光部品のような、代案として既知の他の発光材を含むこともできる。
発光ダイオードには光の光学拡散器がかぶせられていることにより、発せられた光を広い観察角度範囲で知覚できるようになっている。
【0054】
本発明の一つの代替実施態様において、パイロットランプ50を、考えられるそれぞれの観察角度から少なくとも一つのランプが見えるように、探触子の異なる場所に配置された、複数個のランプに代えることができる。
【0055】
本発明の装置のもう一つの変形例において、パイロットランプ50は一つまたは複数の光の導体を含んでいて、探触子の表面の異なる場所から一つまたは複数の光源によって発生した光を発することで、光表示が考えられるそれぞれの観察角度から見えるようになっている。
【0056】
本発明はまた、軸の回転および解除が、例えば、モーターおよび/または電気ソレノイドなどの自動アクチュエータによって作動される実施態様も含んでいる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定装置に対して測定探触体を方向付けるための配向自在なトリガ付探触子であって、
固定部品と、
固定部品に対して第1軸の周囲を回転可能である、固定部品に接続された可動部品と、
可動部品の回転を禁止する固定位置に、可動部品を維持するための、軸方向の弾性手段と、
可動部品が固定位置にあるときに、可動部品の所定の再現可能な複数の角度位置を画定するための、固定部品と可動部品との間に6つの接触点を画定している割出部品と、
固定部品から可動部品を解除することにより、第1軸の周囲で可動部品が回転することを可能にするための、弾性手段に対抗しているアクチュエータとを含んでおり、
前記可動部品が、固定位置にあるときに、6つの接触点と弾性手段との接続を除いて、固定部品と可動部品との間に、接触箇所が存在しないことを特徴とする、トリガ付探触子。
【請求項2】
前記固定部品が、測定探触体を測定装置に固定するための支持ロッドを含み、
前記弾性手段が、支持ロッドの内部空間内に軸方向に配置され、かつ、第1軸と芯出しされたロッドによって可動部品に接続されている円筒状のバネを含んでいることを特徴とする、請求項1に記載の探触子。
【請求項3】
前記固定部品に対して前記可動部品を回転させるために、固定部品と可動部品との間に、軸受を介在させたことを特徴とする、請求項1に記載の探触子。
【請求項4】
前記アクチュエータが、前記可動部品と一体化しており、
可動部品が固定位置にあるとき、固定部品からアクチュエータを復帰させるために復帰装置を含んでいることを特徴とする、請求項1に記載の探触子。
【請求項5】
前記可動部品に対して第2可動部品を回転させるための第2軸によって、可動部品に接続された、第2可動部品と、
第2可動部品の回転を禁止する固定位置に第2可動部品を維持するための、前記弾性手段とは独立して作動可能な第2弾性手段とを含んでいることを特徴とする、請求項1に記載の探触子。
【請求項6】
前記可動部品および/または前記第2可動部品の解除が、第1軸または第2軸の方向への移動によって実施されることを特徴とする、請求項5に記載の探触子。
【請求項7】
前記第2可動部品に固定された測定探触体を含んでいることを特徴とする、請求項1に記載の探触子。
【請求項8】
アクチュエータおよび/または第2アクチュエータが、アクチュエータまたは第2アクチュエータにかけられた、対称で対抗する二つの外力の作用によって、可動部品または第2可動部品を解除することを特徴とする、請求項5に記載の探触子。
【請求項9】
アクチュエータおよび/または第2アクチュエータが、アクチュエータまたは第2アクチュエータにかけられた外力のトルクの作用によって、可動部品または第2可動部品を回転駆動することを特徴とする、請求項8に記載の探触子。
【請求項10】
アクチュエータおよび/または第2アクチュエータが、対称で対抗する二つの外力が停止すると、その作用を停止するようになっていることを特徴とする、請求項8に記載の探触子。
【請求項11】
アクチュエータおよび/または第2アクチュエータが、可動部品または第2可動部品を解除するのに必要な力の強さを減じるために、減速機構を含んでいることを特徴とする、請求項8に記載の探触子。
【請求項12】
前記二つの外力が、第1軸に対して垂直な方向を有し、前記二つの外力を受けるのが、第1軸に対して直径方向に対抗する位置で前記探触子に配置された、少なくとも二つのボタンによるものであることを特徴とする、請求項8に記載の探触子。
【請求項13】
前記可動部品または前記第2可動部品の角度位置を示すための、一つまたは複数の窓を含んでいることを特徴とする、請求項5に記載の探触子。
【請求項14】
前記可動部品に対するアクチュエータの作用が、可動部品に対して弾性手段によってかけられた力に軸合わせされ、かつ相対していることを特徴とする、請求項5に記載の探触子。
【請求項15】
前記第2可動部品に対する第2アクチュエータの作用が、前記第2可動部品に対して前記第2弾性手段によってかけられた力に軸合わせされ、かつ相対していることを特徴とする、請求項5に記載の探触子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−30186(P2006−30186A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−199892(P2005−199892)
【出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【出願人】(503395793)
【氏名又は名称原語表記】TESA S.A.
【Fターム(参考)】