三軸試験用供試体の作製方法
【課題】 粒度を変化させることなく供試体を水で確実に飽和させることができると共に、供試体の粒度差により供試体の飽和速度に差が生じることがない三軸試験用供試体を作製する方法を提供する。
【解決手段】 粒度を調整した試料Xを5つの脱気用容器1の収容部7に分けて入れ、脱気用容器1の開口部を蓋体3で覆った状態で収容部7の内部の空気を真空ポンプPで吸引して、収容部7に負圧を作用させる。この後、収容部7の試料Xを、内壁をゴム製メンブレン21で覆った供試体作製用の型枠20の内部に移して、その内部に下部側から堆積させ、一つの脱気用容器1の試料Xを入れ終える毎に試料Xをランマー28で突き固める。脱気用容器1の収容部7から型枠20の内部に試料Xを移す工程と、この試料Xを突き固めする工程は交互に行い、5つの脱気用容器1の収容部7に入れた試料Xを全て突き固めする。型枠20を用いて作製した供試体Yは、三軸試験装置30に設置した後、真空ポンプPで低めの負圧を作用させながら脱気水を供給する。
【解決手段】 粒度を調整した試料Xを5つの脱気用容器1の収容部7に分けて入れ、脱気用容器1の開口部を蓋体3で覆った状態で収容部7の内部の空気を真空ポンプPで吸引して、収容部7に負圧を作用させる。この後、収容部7の試料Xを、内壁をゴム製メンブレン21で覆った供試体作製用の型枠20の内部に移して、その内部に下部側から堆積させ、一つの脱気用容器1の試料Xを入れ終える毎に試料Xをランマー28で突き固める。脱気用容器1の収容部7から型枠20の内部に試料Xを移す工程と、この試料Xを突き固めする工程は交互に行い、5つの脱気用容器1の収容部7に入れた試料Xを全て突き固めする。型枠20を用いて作製した供試体Yは、三軸試験装置30に設置した後、真空ポンプPで低めの負圧を作用させながら脱気水を供給する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土の強度を測定する三軸試験に使用する供試体の作製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
三軸試験に使用する供試体は、試験条件により、水を供給して飽和させる場合と、水で飽和させない場合とがある。
【0003】
水で飽和させた供試体の作製方法について、図13〜図17を参照して以下に説明する。なお、図13に上記供試体の作製方法をフロー図で示した。
【0004】
まず、図14に示すように、供試体を作製するための円筒状をなす型枠120を板状部材126の型枠設置部124に固定する。この固定は、型枠設置部124に形成されている凹所124aに型枠120を嵌合することにより行う。また、型枠120の内壁は、型枠120を型枠設置部124に固定後、ゴム製メンブレン121で覆う。
【0005】
次に、図14に示すように、型枠120の内部に水を張る。この後、粒度を調整した試料Q(以下、散点模様で示す)を、柄杓127を用いて型枠120の内部に入れ、型枠120の内部の下部側(図面下側)から層状に積み重ねる(図13のS1工程およびS2工程)。なお、「粒度を調整した試料Q」とは、試料Qを構成する大小様々な粒子の構成比率(粒度分布)を、三軸試験の試験条件に適した比率(分布)にすることを指す。
【0006】
次に、図15に示すように、上部側(図面上側)から型枠120の内部にランマー128(突き固め用の機械)を挿入する。このランマー128を矢印Dで示す鉛直方向に何度も動かして試料Qを上部側から何度も突くことにより、試料Qの突き固めを行う(図13のS3工程)。なお、突き固め時に試料Qに加わる圧力を均一にするために、型枠120の内部に移した試料は、移した都度突き固める。つまり、供試体の作製に使用する試料Qの全てを型枠120の内部に移してからこの試料Qを突き固めるのではなく、一定量の試料Qを型枠120の内部に移す毎にこの試料Qの突き固めを行う。上記の工程により、図16に示すように、未飽和の供試体R(以下、散点模様で示す)を作製することができる。なお、供試体Rにおいて、突き固めを行った段階の境界線を点線で示し、後の図17および図18においても同様とする。
【0007】
図16に示す工程を経て作製した供試体R(未飽和状態)は、図17に示すように、三軸試験装置130に設置する(図13のS4工程)。この三軸試験装置130は、上盤141と、台座142と、ペデスタル133と、キャップ134と、支柱132とで主要部が構成されている。ペデスタル133は台座142に固定されており、キャップ134は、上盤141の中心部を貫通して載荷装置(図示省略)に連結されている。
【0008】
台座142からペデスタル133に亘って脱気水供給孔135および二酸化炭素(CO2)供給孔136が形成され、上盤142には二つの吸引孔137、138が形成されている。また、キャップ134には、吸引孔139が形成されている。この吸引孔139と上盤141の吸引孔138は連結部材140(チューブなど)で連通されている。
【0009】
上述したように、図16に示す工程で完成した供試体Rは、三軸試験装置130へ設置する。この設置は、供試体Rを型枠120ごと三軸試験装置130に移動させてペデスタル133に固定した後、型枠120を取り外すことにより行う。なお、供試体Rをペデスタル133に固定した後、上盤141と台座142との間の空間は、鋼製の円筒カプセル131で密封する。
【0010】
上記のようにして三軸試験装置130に設置した供試体Rには、台座142の二酸化炭素供給孔136から二酸化炭素を供給して、供試体Rの内部の空隙に存在する空気を二酸化炭素に置換する(図13のS5工程)。次いで、台座142の脱気水供給孔135から脱気水を供給して、供試体内部の二酸化炭素を脱気水に溶解させることで供試体Rを水で飽和させる(特許文献1参照)。
【0011】
上記工程は、常圧下で行う場合、供試体Rの内部の空隙に脱気水が浸入しにくく、この結果、供試体Rを脱気水で飽和させるのに必要な時間が長くなることが懸念される。そのため、上記工程は、特許文献2に開示された供試体の作製方法のように、真空ポンプPを用いて、吸引孔137、138、139から供試体Rの内部およびセル内部(円筒カバー131で密封された空間)の空気を吸引して、供試体Rに負圧(吸引力)を作用させながら行う(図13のS5工程)。これにより、脱気水による供試体Rの飽和速度(飽和が進行する速さ)を向上させる。
【0012】
上記の工程において、連結部材140で連結された吸引孔138、139を介して供試体Rの内部の空気を吸引する際の負圧は、例えば−90kN/m2とする。また、吸引孔137を介してセル内部の空気を吸引する際の負圧は、例えば−70kN/m2とする。以上のようにして作製した供試体Rを用いて三軸試験を行う(図13のS6工程)。なお、負圧は上述のようにマイナス値で示され、マイナス値の絶対値が大きいほど、負圧が高いことを意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2006− 8455号公報
【特許文献2】特開2003−121433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記した従来の三軸試験用供試体の作製方法では、供試体Rに真空ポンプPで高い負圧を作用させながら脱気水を供給して飽和させる。そのため、上記した負圧の作用時に、供試体Rを構成する細かい粒子が供試体Rの外部へ吸引されて、供試体Rの粒度が変化してしまうおそれがある。これは、供試体Rの強度の低下に繋がる。
【0015】
上記課題を解決する手段としては、図18に示すように、吸引孔137からセル内部の空気を吸引せず、吸引孔138、139から−20kN/m2の低い負圧で供試体Rの内部の空隙に存在する空気を吸引する方法が考えられる。
【0016】
しかし、この方法であると、吸引する際の負圧が低いため、供試体Rを脱気水で飽和させるのに必要な時間が長くなるという問題がある。
【0017】
また、前記した従来の技術では、供試体Rに大きい粒子が多く含まれている場合、供試体Rの内部の空隙が大きくなって空隙に存在する空気が吸引されやすくなるため、供試体Rは飽和されやすい。しかし、供試体Rに小さい粒子が多く含まれている場合、供試体Rの内部の空隙が小さくなって空隙に存在する空気が吸引されにくくなるため、供試体Rは飽和されにくい。つまり、前記した従来の技術であると、供試体Rの粒度の違いにより、供試体Rの飽和速度に差が生じやすくなる。
【0018】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、粒度を変化させることなく供試体を水で確実に飽和させることができると共に、供試体の粒度差により供試体の飽和速度に差が生じることがない三軸試験用供試体を作製する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の課題を解決するための本発明は、土の強度を測定する三軸試験に使用する供試体を作製する方法であって、粒度を調整した試料を複数の脱気用容器に設けた収容部に分けて入れると共に、この試料を水に浸した状態にする工程と、各々の前記収容部に負圧を作用させる工程と、各々の前記収容部から供試体作製用の型枠の内部に前記試料を順次移して前記型枠の内部に積み重ねる工程と、前記型枠の内部に移した試料を突き固める工程とから成ることを特徴とする。ここで、「脱気用容器の収容部に負圧を作用させる」とは、脱気用容器の収容部に存在する空気を真空ポンプ(脱気用ポンプ)などで吸引して、吸引力を作用させることを指す。
【0020】
この場合、供試体を作製するための試料を、脱気用容器を用いて水で飽和させるため、突き固めて作製した供試体は、水で飽和された状態になる。そのため、突き固めにより作製した供試体は、三軸試験装置に設置した後、従来のように、負圧を作用させながら脱気水を加えて飽和させる工程が不要になる。そのため、この従来の方法を適用することにより、供試体の粒度が変化することがない。なお、複数の脱気用容器の収容部に分けて入れた試料は、水で浸した状態にするため、脱気用容器の収容部に負圧を作用させた際にも、水圧の作用で、負圧の影響を受けにくい。そのため、試料を構成する細かい粒子が収容部に存在する空気と共に収容部の外部へ吸引されて、試料の粒度が変化することがない。
【0021】
前記試料を型枠の内部に移した試料は、移した都度突き固めるのが望ましい。これは、複数の脱気用容器の収容部に入れた試料を全て枠型に移した後に試料の突き固めを行うと、突き固め時に試料に加わる圧力が、積み重ねた試料の下層側まで行き届かず、試料を均一に突き固めするのが困難になるためである。
【0022】
前記脱気用容器の収容部に作用させる負圧は、−90kN/m2〜−100kN/m2とするのが望ましい。ここで、負圧は上述のようにマイナス値で示され、マイナス値の絶対値が大きいほど、負圧が高いことを意味し、以下も同様とする。負圧が−90kN/m2よりも低いと、負圧が低すぎて、試料を脱気水で飽和させるのに必要な時間が長くなるおそれがある。一方、負圧が−100kN/m2よりも高いと、負圧が高すぎて、脱気用容器の収容部に存在する水が、収容部に存在する空気と共に収容部の外部へ吸引されて、試料を水で飽和させるのが困難になるおそれがある。
【0023】
前記脱気用容器の収容部に入れる試料の層厚は、試料の最大粒径の2倍〜2.5倍とするのが望ましい。ここで、「試料の最大粒径」とは、試料を構成する粒子のうち最も大きい粒子の直径を指す。脱気用容器の収容部に入れる試料の層厚が試料の最大粒径の2.0倍よりも小さいと、層厚が薄すぎて、試料を水に浸した状態にするのが困難になるおそれがある。一方、脱気用容器の収容部に入れる試料の層厚が試料の最大粒径の2.5倍よりも大きいと、層厚が厚すぎて、試料全体を飽和させるのに必要な時間が長くなるおそれがある。
【0024】
前記型枠は、円筒状とし、前記脱気用容器の収容部に入れる試料の分量は、この試料により作製する前記供試体の直径が試料の最大粒径の4倍〜5倍となるようにするのが望ましい。試料により作製する供試体の直径が試料の最大粒径の4倍よりも小さい場合、供試体が小さすぎて、三軸試験時に供試体に鉛直荷重を加えた際、供試体が型崩れすることが懸念される。一方、試料により作製する供試体の直径が試料の最大粒径の5倍よりも大きい場合、供試体が大きくなりすぎて、三軸試験時に供試体に鉛直荷重を加えた際、供試体全体に圧力を均等に加えるのが困難になることが懸念される。
【0025】
これまでに述べた発明において、前記負圧は、複数の前記脱気用容器の収容部に同時に作用させるのが望ましい。この場合、複数の脱気用容器の収容部に入れた試料を同時に飽和させることができるため、試料を飽和させるのに必要な時間を削減することができる。
【0026】
前記突き固めにより作製した前記供試体は、三軸試験装置に設置した後、脱気水を供給するのが望ましい。この場合、供試体Yを確実に飽和させることができるため、三軸試験の測定値の信頼性を向上させることができる。
【0027】
上記した本発明において、脱気水の供給は、前記供試体に二酸化炭素を供給した後に行うのが望ましい。この場合、二酸化炭素の供給後に供試体に供給される脱気水は、二酸化炭素と容易に置換するため、三軸試験装置に設置した供試体を脱気水で飽和させやすくなる。
【0028】
さらに、三軸試験装置に設置した供試体に脱気水を供給する前記した本発明において、脱気水の供給は、供試体に負圧を作用させた状態で行うのが望ましい。ここで、「供試体に負圧を作用させる」とは、供試体内部に残存する空気を真空ポンプなどで吸引して、供試体に吸引力を作用させることを指す。
【0029】
この場合、供試体内部の空隙に万が一空気が残存していても、この空気は、供試体外部へ吸引される。そのため、供試体内部の空隙に残存した空気と水が置換されやすくなる。この結果、三軸試験装置に設置した供試体を脱気水で飽和させるのが極めて容易になる。
【0030】
上記発明において、前記負圧は、供試体に断続的に作用させるのが望ましい。この場合、供試体を構成する細かい粒子が、負圧作用時に、供試体内部の空隙に残存する空気や供試体に供給される脱気水と共に供試体外部へ吸引されにくくなるため、供試体の粒度が変化するのを防止することができる。これにより、供試体の強度を確保することができる。
【0031】
さらに、前記した本発明において、供試体に作用させる負圧は、−20kN/m2〜−30kN/m2とするのが望ましい。負圧が−20kN/m2よりも低いと、負圧が低すぎて、脱気水で供試体を飽和させるのに必要な時間が長くなるおそれがある。一方、負圧が−30kN/m2よりも高いと、負圧が高すぎて、供試体を構成する細かい粒子が、供試体内部の空隙に残存する空気や供試体に供給される脱気水と共に供試体外部へ吸引されやすくなるため、供試体の粒度を変化させてしまうおそれがある。これは、供試体の強度の低下に繋がる。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係る三軸試験用供試体の作製方法は、供試体を作製するための試料を、脱気用容器を用いて水で飽和させるため、試料を突き固めて作製する供試体は、水で飽和された状態になる。そのため、本発明により作製した供試体は、三軸試験装置に設置後、従来のように、供試体に負圧を作用させながら脱気水を供給して飽和させる工程が不要になる。このため、上述した従来の方法により、供試体を構成する細かい粒子が、供試体内部の空隙に存在する空気や供試体に供給される脱気水と共に供試体外部へ吸引されて、供試体の粒度が変化する問題が生じることがない。この結果、供試体の強度を確保することができる。
【0033】
このように、本発明では、三軸試験装置に設置する供試体を飽和させる必要がないため、供試体の粒度の違いにより、供試体の飽和速度に差が生じるという従来の問題が生じることがない。また、本発明では、試料を水で浸した状態で飽和させるため、試料の粒度の違いによる飽和速度の差が生じにくい。
【0034】
さらに、脱気用容器に分けて入れた試料は、水で浸した状態にするため、脱気用容器の収容部に負圧を作用させた際、試料から細かい粒子が空気と共に吸引されて、試料の粒度が変化することがない。
【0035】
なお、脱気用容器の収容部に入れた試料は、水で浸した状態にするため、収容部に負圧を作用させた際にも、水圧の作用により、負圧の影響を受けにくい。そのため、収容部に作用させる負圧は高め(−100kN/m2程度)に設定することができる。この結果、試料を飽和させるのに必要な時間を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施形態を示すもので、三軸試験用供試体の作製方法を示すフロー図である。
【図2】図1の示す作製方法に使用する脱気用容器を示す斜視図である。
【図3】図2の本体部の平面図である。
【図4】脱気用容器の収容部に試料を入れる工程を説明する断面図である。
【図5】図4に示す本体部の開口部を蓋体で覆った状態を示す断面図である。
【図6】図5に示す脱気用容器を真空ポンプに取り付けた連結部材に並列接続して、その脱気用容器の収容部に負圧を作用させる工程を説明する断面図である。
【図7】供試体を作製する型枠を固定した状態を説明する斜視図である。
【図8】図7の固定方法を説明する斜視図である。
【図9】供試体を作製する型枠の内部に脱気用容器の収容部で飽和させた試料を移す工程を説明する断面図である。
【図10】供試体を作製する型枠の内部に移した試料を突き固めする工程を説明する断面図である。
【図11】図10の工程により、型枠の内部に供試体を作製した状態を示す断面図である。
【図12】図11で作製した供試体を三軸試験装置に設置して、さらに脱気水で飽和させる工程を説明する断面図である。
【図13】従来の三軸試験用供試体の作製方法を示すフロー図である。
【図14】図13に示す従来の供試体の作製方法において、供試体を作製する型枠に試料を入れる工程を説明する断面図である。
【図15】図14に示す工程の後、試料を突き固めする工程を説明する断面図である。
【図16】図15の工程により、型枠の内部に供試体を作製した状態を示す断面図である。
【図17】図16で作製した供試体を三軸試験装置に設置して、供試体に高負圧を作用させながら脱気水を供給して供試体を飽和させる工程を説明する断面図である。
【図18】図16で作製した供試体を三軸試験装置に設置して、供試体に低負圧を作用させながら脱気水を供給して供試体を飽和させる工程を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に本発明の実施の形態について、添付の図面(図1〜図12)を参照して説明する。なお、本実施形態に係る三軸試験用供試体の作製方法を図1にフロー図で示した。
【0038】
まず、粒度を調整した試料(以下、試料Xとする)と、5つの図2に示す脱気用容器1を用意する(図1の工程S1)。
【0039】
脱気用容器1は、図2に示すように、上端に開口部を有する有底円筒状の本体部2と、底板5と、蓋体3とを主要部とする。本体部2は、内部に凹所4を有し、この凹所4には、試料Xを収容する収容部7として、上端に開口部を有する有底円筒状のプラスチック製バケツを本体部2から取り外し可能に嵌合する。収容部7の底面7aと本体部2の凹所4の底面4aは接触させた状態とする。
【0040】
また、本体部2は、開口部を蓋体3で覆い、反開口部側の端部を底板5に固定する。底板5には本体部2を移動させるための移動用キャスタ6を取り付ける。蓋体3の中心部には、底板5側とは反対側に突出する凸状の突起3aを設け、この突起3aには、T字状のコネクタ9を取り付ける。このコネクタ9から突起3aを介して蓋体3まで、コネクタ9と本体部2の凹所4を連通させる吸引孔8を形成する。また、コネクタ9には、このコネクタ9と他部材(真空ポンプや他の脱気用容器など)とを連結する連結部材10(チューブなど)が取り付けられている。なお、図3に本体部2を開口部側から見た平面図を示す。
【0041】
次に、図4〜図6に示すように、5つの脱気用容器1の収容部7に水を張り、その後、各脱気用容器1の収容部7に柄杓11を用いて前記した試料X(以下、散点模様で示す)を分けて入れ、この試料Xを水で浸した状態にする(図1の工程S2)。なお、5つの脱気用容器1の収容部7に入れる試料Xは、本実施形態では等しくする。上記の工程の後、図5に示すように、本体部2の開口部を蓋体3で覆い、この蓋体3に取り付けられたコネクタ9と真空ポンプP(脱気ポンプ)を連結部材10で連結する。なお、本実施形態では、図6に示すように、真空ポンプPに取り付けられた連結部材10に、コネクタ9を介して5つの脱気用容器1を並列接続する。
【0042】
上記の状態で真空ポンプPを作動させて、5つの脱気用容器1の収容部7に存在する空気を同時に吸引して、図6に示すように、各脱気用容器1の収容部7に−100kN/m2の負圧(吸引力)を作用させる(図1の工程S2)。これにより、収容部7に存在する空気が吸引されるため、試料Xの内部の空隙に存在する空気が、収容部7の水に置換されて、試料Xが水で飽和される。なお、収容部7に張る水の種類は、特に限定されるものではないが、脱気水を利用すると、収容部7に存在する空気が少なくなるため、上記飽和に要する時間を削減することができる。
【0043】
次に、図7に示すように、板状部材26に形成された型枠設置部24に三軸試験用供試体を作製するための円筒状の型枠20を嵌合して固定し、この後、型枠20の内壁をゴム製メンブレン21で覆う。この型枠20は、鉛直方向と直交する方向(図面左右側)で二つに等割が可能である。上述した型枠20の型枠設置部24への固定は、図8に示すように、板状部材26の型枠設置部24の中心部に形成された凹部24aに、2つの型枠構成部材20a、20bを矢印Aおよび矢印Bで示すように嵌合して、環状に連結させることにより行う。
【0044】
型枠構成部材20bの端部には、ボルト固定部22bを設けられ、このボルト固定部22bにはボルト23が固定されている。また、型枠構成部材20aの端部には、ボルト挿通孔25が形成されたボルト固定部22aが設けられている。型枠構成部材20a、20bを型枠設置部24の凹部24aに嵌合した後、型枠構成部材20bのボルト23の端部を型枠構成部材20aのボルト挿通孔25に挿通して、その端部を図7に示すようにナット12で締め付ける。これにより、型枠構成部材20aと型枠構成部材20bを密着させると共に、互いに分離するのを防止することができる。
【0045】
次に、図9に示すように、円筒状をなす型枠20の内部に、5つの脱気用容器1のうち一つにいれた試料Xと同程度の量の水を張り、脱気用容器1の収容部7に入れた試料X(水で飽和済み:図6参照)を、空気が混入しないように柄杓27を用いて静かに型枠20の内部に移す。これにより、試料Xを、型枠20の内部に下側(図面下側)から層状に積み重ねていく(図1の工程S3)。なお、型枠20の内部に試料Xを静かに移す方法としては、試料Xを、柄杓27を用いて型枠20の内部に張った水につけ、その後、試料Xを水中で自然落下させる方法がある。また、上述の作業の際、型枠20の上部から水が溢れ出ないように、適宜水を排出しながら行う。さらに、型枠20の内部に張る水は、脱気水を使用する。これにより、型枠20の内部に移す試料X(水で飽和済み)に空気が混入するのを防止することができる。
【0046】
5つの脱気用容器1のうち、1つの脱気用容器1の試料を型枠20に移し終えた後、図10に示すように、上部側(図面上側)から型枠20の内部にランマー28を挿入する。このランマー28を矢印Cで示す鉛直方向に何度も動かして試料Xを上部側から何度も突くことにより、この試料Xの突き固めを行う(図1の工程S4)。さらに、5つの脱気用容器1の収納部7に分けて入れた試料Xは、型枠20の内部に全て移すと共に、全て突き固めを行う必要がある。そのため、本実施形態では、脱気用容器1の試料Xを型枠20に移す工程と、前記突き固めの工程とを交互(計5回)に行うことで、型枠20の内部に試料Xを積み重ねる。このように突き固めを行うことにより、試料Xを均等に突き固めることができる。上記突き固めにより、図11に示すように、三軸試験用供試体Y(以下、散点模様で示す)を完成させる。なお、供試体Yにおいて、突き固めを行った段階の境界線、つまり、1つの脱気用容器1の試料Xを型枠20に移し終えた段階の境界線を点線で示し、後の図12においても同様とする。
【0047】
次に、完成した供試体Yを型枠20ごと三軸試験装置に移動させて、図12に示すように、供試体Yを三軸試験装置に設置する(図1の工程S5)。
【0048】
三軸試験装置30は、上盤41と、台座42と、ペデスタル33と、キャップ34と、支柱32とで主要部が構成される。ペデスタル33は台座42に固定されており、キャップ34は、上盤41を貫通して載荷装置(図示省略)に連結されている。
【0049】
また、台座42からペデスタル33に亘って脱気水供給孔35および二酸化炭素(CO2)供給孔36が形成され、上盤42には二つの吸引孔37、38が形成されている。また、キャップ34には、吸引孔39が形成されている。なお、この吸引孔39と上盤41の吸引孔38は連結部材40(チューブなど)で連結されている。
【0050】
上述した供試体Yの三軸試験装置30への設置は、突き固めして作製した供試体Y(図11参照)を型枠20ごと三軸試験装置30に移動させてペデスタル33に固定した後、型枠20を取り外すことにより行う。供試体Yをペデスタル33に固定した後、上盤41と台座42との間の空間は、鋼製の円筒カプセル31で密封する。
【0051】
上記のようにして三軸試験装置に設置した供試体Yには、台座42の二酸化炭素供給孔36から二酸化炭素を供給して、供試体Yの内部の空隙に残存する空気を二酸化炭素に置換する。次いで、台座42の脱気水供給孔35から脱気水を供給して、供試体Yの内部の空隙に存在する二酸化炭素を脱気水に溶解させる。また、上記操作は、連結部材40で連結された吸引孔38、39から供試体Yの内部の空気を吸引することで、供試体Yに負圧(吸引力)を作用させた状態で行う。この負圧は、−20kN/m2〜−30kN/m2とする。
【0052】
以上の工程を経て作製した供試体Yを用いて三軸試験を行う(図1の工程S6)。なお、図1に示すフロー図では、三軸試験装置30に設置した後の供試体Yに脱気水や二酸化炭素を供給する工程は、本実施形態においては必ずしも必要ではないので、省略している。
【0053】
本実施形態の場合、供試体Yを作製するための試料Xを、複数の脱気用容器1(図6参照)を用いて水で飽和させるため、この飽和した試料Xを突き固めて作製した供試体Yは、三軸試験装置に設置した後、従来のように、負圧を作用させながら脱気水を供給する工程が不要になる。そのため、供試体に負圧を作用させることで、供試体Yを構成する細かい粒子が、供試体Yの内部の空隙に存在する空気や供試体Yに供給される脱気水と共に供試体Yの外部へ吸引されて、供試体Yの粒度が変化することがない。この結果、供試体Yの強度を確保することができる。
【0054】
上記のように、三軸試験装置に設置する供試体Yは、既に水で飽和された状態であるため、必ずしもこの供試体Yを脱気水で飽和させる必要がない。そのため、供試体Yの粒度の違いにより、供試体Yの飽和速度に差が生じるという従来の問題が生じることがない。また、供試体Yを作製するための試料Xは、水で浸した状態で飽和させるため、試料Xの粒度の違いによる飽和速度の差が生じにくい。
【0055】
さらに、脱気用容器1の収容部7に入れた試料Xは、水で浸した状態にするため、水圧の作用を受けて、収容部7に作用させる負圧の影響を受けにくい。そのため、試料Xが脱気用容器1の収容部7の外部へ吸引されて、試料Xの粒度が変化することがない。
【0056】
なお、脱気用容器1の収容部7に入れた試料Xは、水で浸した状態にするため、収容部7に負圧を作用させた際にも、水圧の作用により、負圧の影響を受けにくい。そのため、収容部に作用させる負圧は高め(−100kN/m2程度)に設定することができる。この結果、試料Xを飽和させるのに必要な時間を削減することができる。
【0057】
脱気用容器1の収容部7に作用させる負圧は、本実施形態の場合、−90kN/m2〜−100kN/m2にするため、適度な時間で試料Xを水で飽和させることができる。負圧が−90kN/m2よりも低い(マイナス値で表される負圧の絶対値が小さい)と、負圧が低すぎて、試料Xを水で飽和させるのに必要な時間が長くなるおそれがある。一方、負圧が−100kN/m2よりも高い(マイナス値で表される負圧の絶対値が大きい)と、負圧が高すぎて、脱気用容器1の収容部7に存在する水が、収容部7の空気と共に収容部7の外部へ吸引されて、試料Xを水で飽和させるのが困難になるおそれがある。
【0058】
また、本実施形態では、脱気用容器1の収容部7に入れる試料Xの層厚は、試料の最大粒径(試料を構成する粒子のうち最も大きい粒子の直径)の2倍〜2.5倍にする。そのため、試料Xを効率よく水で飽和させることができる。脱気用容器1の収容部7に入れる試料Xの層厚が試料Xの最大粒径の2.0倍よりも小さいと、層厚が薄すぎて、試料Xを水で浸した際、試料Xを構成する細かい粒子が水中に浮遊するおそれがある。これは、試料Xを水で浸すのが困難になる原因となる。一方、脱気用容器1の収容部7に入れる試料Xの層厚が試料Xの最大粒径の2.5倍よりも大きいと、層厚が厚すぎて、試料Xの全体を水で飽和させるのに必要な時間が長くなるおそれがある。
【0059】
さらに、本実施形態、型枠20は円筒状とし(図7参照)、脱気用容器1の収容部7に入れる試料Xの分量は、この試料Xにより作製する供試体Yの直径が試料Xの最大粒径の4倍〜5倍となるようにする。このため、三軸試験時に型崩れしにくく、かつ、三軸試験で信頼性の高い測定値を得ることができる供試体Yを作製することができる。試料Xにより作製する供試体Yの直径が試料Xの最大粒径の4倍よりも小さい場合、供試体Yが小さすぎて、三軸試験時に供試体Yに鉛直荷重を加えた際、供試体Yが型崩れすることが懸念される。一方、試料Xにより作製する供試体Yの直径が試料Xの最大粒径の5倍よりも大きい場合、供試体Yが大きくなりすぎて、三軸試験時に供試体Yに鉛直荷重を加えた際、供試体Yの全体に圧力を均等に加えるのが困難になることが懸念される。
【0060】
複数の脱気用容器1の収容部7に負圧を作用させる方法としては、真空ポンプを1つの脱気用容器1のみに連結して負圧を作用させ、作業が終了すると、真空ポンプPを別の脱気用容器1に連結して負圧を作用させ、これを脱気用容器1の数だけ(本実施形態であれば、5回)繰り返す方法がある。しかし、本実施形態のように、真空ポンプPに取り付けられた連結部材10に、コネクタ9を介して5つの脱気用容器1を並列接続すると、真空ポンプPの作動により、全ての脱気用容器1の収容部7に同時に負圧を作用させることができる。そのため、5つの脱気用容器1に入れた試料Xを水で飽和させるのに必要な時間を削減することができる。また、この場合、5つの脱気用容器1の収容部7に均等負圧(本実施形態では−100kN/m2)を作用させることができる。
【0061】
このように、5つの脱気用容器1の収容部7に均等負圧を作用させる場合、本実施形態のように、各脱気用容器1の収容部7に入れる試料Xを等しくすると、試料Xを飽和させるのに必要な時間を等しくすることができる。また、各脱気用容器1に入れた試料Xの飽和状態を等しくすることができる。
【0062】
なお、本実施形態の場合、三軸試験装置30に設置した供試体Yは、水で飽和された状態であるため、従来のように脱気水を供給する必要がない。しかし、本実施形態のように、三軸試験装置30に設置した後の供試体Yにも脱気水を供給することにより、万が一、供試体Yの内部の空隙に空気が残存していたとしても、供試体Yの内部の空気を脱気水と置換できる。そのため、供試体Yを水で確実に飽和させることができる。この結果、三軸試験の測定値の信頼性を向上させることができる。
【0063】
また、本実施形態では、三軸試験装置に設置した供試体Yに二酸化炭素を供給した後に供試体Yへ脱気水を供給するため、供試体Yを飽和させるのに必要な時間を削減することができる。これは、供試体Yに二酸化炭素を供給すると、供試体Yの内部の空隙に残存する空気が二酸化炭素に置換され、この状態で脱気水を供給することにより、二酸化炭素が脱気水に溶けて、二酸化炭素と脱気水を容易に置換することができるためである。
【0064】
また、供試体Yへの脱気水を供給は、供試体Yに負圧を作用させた状態、つまり、真空ポンプPを用いて吸引孔38、39から供試体Yの内部の空隙に存在する空気を吸引した状態で行う。この場合、供試体Yの内部の空隙に万が一空気が残存していても、この空気は、吸引孔38、39を介して供試体Yの外部へ吸引されるため、供試体Yの内部の空隙に残存した空気と脱気水が置換されやすくなる。この結果、供試体Yを脱気水で飽和させるのが極めて容易になる。
【0065】
三軸試験装置30に設置した供試体Yに真空ポンプPで負圧を作用させる際、この負圧は、供試体Yに断続的に作用させる。この場合、負圧作用時に、供試体Yを構成する細かい粒子が、供試体Yの内部の空隙に存在する空気や供試体Yに供給される脱気水と共に吸引孔38、39を介して供試体Yの外部へ吸引されることがない。この結果、供試体Yの粒度が変化するのを防止して、供試体Yの強度を向上させることができる。
【0066】
さらに、供試体Yに作用させる負圧は、−20kN/m2〜−30kN/m2とするため、強度に優れ、かつ、三軸試験で信頼性の高い測定値を得ることができる供試体Yを作製することができる。負圧が−20kN/m2よりも低いと、負圧が低すぎて、脱気水で供試体Yを飽和させるのに必要な時間が長くなるおそれがある。一方、負圧が−30kN/m2よりも高いと、負圧が高すぎて、供試体Yの内部の空隙に残存する空気や供試体Yに供給される脱気水と共に、供試体Yの細かい粒子が吸引孔38、39を介して供試体Yの外部へ吸引されて、供試体Yの粒度を変化させてしまうおそれがある。これは、供試体Yの強度の低下に繋がる。
【0067】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、これはあくまで例示であり、特許請求の範囲に記載の技術的思想を逸脱しないのであれば、適宜変更が可能である。
【0068】
例えば、本実施形態では、図2に示すように、脱気用容器1の本体部2に形成した凹所4に、試料Xを入れるための収容部7としてプラスチック製のバケツを使用した。この場合、水で飽和させた試料Xを型枠20に移す際、収納部7を本体部2の凹所4から取り外して行うことができるため、供試体Yを作成する際の作業性(作業のしやすさ、作業効率)が向上する。しかし、本体部2の凹所4の材質を適宜選択するなどして、凹所4を、試料Xを入れる収容部とすることもできる。
【0069】
また、型枠20は、本実施形態のような組立て式のものに限らず、本発明の目的を達成することができるのであれば、組立て式でない型枠など、特に限定されるものではない。さらに、試料Xを突き固めする手段は、ランマーのような突き固め用の機械を使用する方法に限られず、試験条件によっては、先端が円盤状の突き棒を用いて、人手で突き固めをするようにしてもよい。
【0070】
そして、脱気用容器1は、本実施形態のような形状に限られず、既に述べた本発明の作用および効果を得ることができるのであれば、特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0071】
1 脱気用容器
4 凹所
7 収容部
20 型枠(供試体作製用)
30 三軸試験装置
X 試料
Y 供試体
【技術分野】
【0001】
本発明は、土の強度を測定する三軸試験に使用する供試体の作製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
三軸試験に使用する供試体は、試験条件により、水を供給して飽和させる場合と、水で飽和させない場合とがある。
【0003】
水で飽和させた供試体の作製方法について、図13〜図17を参照して以下に説明する。なお、図13に上記供試体の作製方法をフロー図で示した。
【0004】
まず、図14に示すように、供試体を作製するための円筒状をなす型枠120を板状部材126の型枠設置部124に固定する。この固定は、型枠設置部124に形成されている凹所124aに型枠120を嵌合することにより行う。また、型枠120の内壁は、型枠120を型枠設置部124に固定後、ゴム製メンブレン121で覆う。
【0005】
次に、図14に示すように、型枠120の内部に水を張る。この後、粒度を調整した試料Q(以下、散点模様で示す)を、柄杓127を用いて型枠120の内部に入れ、型枠120の内部の下部側(図面下側)から層状に積み重ねる(図13のS1工程およびS2工程)。なお、「粒度を調整した試料Q」とは、試料Qを構成する大小様々な粒子の構成比率(粒度分布)を、三軸試験の試験条件に適した比率(分布)にすることを指す。
【0006】
次に、図15に示すように、上部側(図面上側)から型枠120の内部にランマー128(突き固め用の機械)を挿入する。このランマー128を矢印Dで示す鉛直方向に何度も動かして試料Qを上部側から何度も突くことにより、試料Qの突き固めを行う(図13のS3工程)。なお、突き固め時に試料Qに加わる圧力を均一にするために、型枠120の内部に移した試料は、移した都度突き固める。つまり、供試体の作製に使用する試料Qの全てを型枠120の内部に移してからこの試料Qを突き固めるのではなく、一定量の試料Qを型枠120の内部に移す毎にこの試料Qの突き固めを行う。上記の工程により、図16に示すように、未飽和の供試体R(以下、散点模様で示す)を作製することができる。なお、供試体Rにおいて、突き固めを行った段階の境界線を点線で示し、後の図17および図18においても同様とする。
【0007】
図16に示す工程を経て作製した供試体R(未飽和状態)は、図17に示すように、三軸試験装置130に設置する(図13のS4工程)。この三軸試験装置130は、上盤141と、台座142と、ペデスタル133と、キャップ134と、支柱132とで主要部が構成されている。ペデスタル133は台座142に固定されており、キャップ134は、上盤141の中心部を貫通して載荷装置(図示省略)に連結されている。
【0008】
台座142からペデスタル133に亘って脱気水供給孔135および二酸化炭素(CO2)供給孔136が形成され、上盤142には二つの吸引孔137、138が形成されている。また、キャップ134には、吸引孔139が形成されている。この吸引孔139と上盤141の吸引孔138は連結部材140(チューブなど)で連通されている。
【0009】
上述したように、図16に示す工程で完成した供試体Rは、三軸試験装置130へ設置する。この設置は、供試体Rを型枠120ごと三軸試験装置130に移動させてペデスタル133に固定した後、型枠120を取り外すことにより行う。なお、供試体Rをペデスタル133に固定した後、上盤141と台座142との間の空間は、鋼製の円筒カプセル131で密封する。
【0010】
上記のようにして三軸試験装置130に設置した供試体Rには、台座142の二酸化炭素供給孔136から二酸化炭素を供給して、供試体Rの内部の空隙に存在する空気を二酸化炭素に置換する(図13のS5工程)。次いで、台座142の脱気水供給孔135から脱気水を供給して、供試体内部の二酸化炭素を脱気水に溶解させることで供試体Rを水で飽和させる(特許文献1参照)。
【0011】
上記工程は、常圧下で行う場合、供試体Rの内部の空隙に脱気水が浸入しにくく、この結果、供試体Rを脱気水で飽和させるのに必要な時間が長くなることが懸念される。そのため、上記工程は、特許文献2に開示された供試体の作製方法のように、真空ポンプPを用いて、吸引孔137、138、139から供試体Rの内部およびセル内部(円筒カバー131で密封された空間)の空気を吸引して、供試体Rに負圧(吸引力)を作用させながら行う(図13のS5工程)。これにより、脱気水による供試体Rの飽和速度(飽和が進行する速さ)を向上させる。
【0012】
上記の工程において、連結部材140で連結された吸引孔138、139を介して供試体Rの内部の空気を吸引する際の負圧は、例えば−90kN/m2とする。また、吸引孔137を介してセル内部の空気を吸引する際の負圧は、例えば−70kN/m2とする。以上のようにして作製した供試体Rを用いて三軸試験を行う(図13のS6工程)。なお、負圧は上述のようにマイナス値で示され、マイナス値の絶対値が大きいほど、負圧が高いことを意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2006− 8455号公報
【特許文献2】特開2003−121433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記した従来の三軸試験用供試体の作製方法では、供試体Rに真空ポンプPで高い負圧を作用させながら脱気水を供給して飽和させる。そのため、上記した負圧の作用時に、供試体Rを構成する細かい粒子が供試体Rの外部へ吸引されて、供試体Rの粒度が変化してしまうおそれがある。これは、供試体Rの強度の低下に繋がる。
【0015】
上記課題を解決する手段としては、図18に示すように、吸引孔137からセル内部の空気を吸引せず、吸引孔138、139から−20kN/m2の低い負圧で供試体Rの内部の空隙に存在する空気を吸引する方法が考えられる。
【0016】
しかし、この方法であると、吸引する際の負圧が低いため、供試体Rを脱気水で飽和させるのに必要な時間が長くなるという問題がある。
【0017】
また、前記した従来の技術では、供試体Rに大きい粒子が多く含まれている場合、供試体Rの内部の空隙が大きくなって空隙に存在する空気が吸引されやすくなるため、供試体Rは飽和されやすい。しかし、供試体Rに小さい粒子が多く含まれている場合、供試体Rの内部の空隙が小さくなって空隙に存在する空気が吸引されにくくなるため、供試体Rは飽和されにくい。つまり、前記した従来の技術であると、供試体Rの粒度の違いにより、供試体Rの飽和速度に差が生じやすくなる。
【0018】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、粒度を変化させることなく供試体を水で確実に飽和させることができると共に、供試体の粒度差により供試体の飽和速度に差が生じることがない三軸試験用供試体を作製する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の課題を解決するための本発明は、土の強度を測定する三軸試験に使用する供試体を作製する方法であって、粒度を調整した試料を複数の脱気用容器に設けた収容部に分けて入れると共に、この試料を水に浸した状態にする工程と、各々の前記収容部に負圧を作用させる工程と、各々の前記収容部から供試体作製用の型枠の内部に前記試料を順次移して前記型枠の内部に積み重ねる工程と、前記型枠の内部に移した試料を突き固める工程とから成ることを特徴とする。ここで、「脱気用容器の収容部に負圧を作用させる」とは、脱気用容器の収容部に存在する空気を真空ポンプ(脱気用ポンプ)などで吸引して、吸引力を作用させることを指す。
【0020】
この場合、供試体を作製するための試料を、脱気用容器を用いて水で飽和させるため、突き固めて作製した供試体は、水で飽和された状態になる。そのため、突き固めにより作製した供試体は、三軸試験装置に設置した後、従来のように、負圧を作用させながら脱気水を加えて飽和させる工程が不要になる。そのため、この従来の方法を適用することにより、供試体の粒度が変化することがない。なお、複数の脱気用容器の収容部に分けて入れた試料は、水で浸した状態にするため、脱気用容器の収容部に負圧を作用させた際にも、水圧の作用で、負圧の影響を受けにくい。そのため、試料を構成する細かい粒子が収容部に存在する空気と共に収容部の外部へ吸引されて、試料の粒度が変化することがない。
【0021】
前記試料を型枠の内部に移した試料は、移した都度突き固めるのが望ましい。これは、複数の脱気用容器の収容部に入れた試料を全て枠型に移した後に試料の突き固めを行うと、突き固め時に試料に加わる圧力が、積み重ねた試料の下層側まで行き届かず、試料を均一に突き固めするのが困難になるためである。
【0022】
前記脱気用容器の収容部に作用させる負圧は、−90kN/m2〜−100kN/m2とするのが望ましい。ここで、負圧は上述のようにマイナス値で示され、マイナス値の絶対値が大きいほど、負圧が高いことを意味し、以下も同様とする。負圧が−90kN/m2よりも低いと、負圧が低すぎて、試料を脱気水で飽和させるのに必要な時間が長くなるおそれがある。一方、負圧が−100kN/m2よりも高いと、負圧が高すぎて、脱気用容器の収容部に存在する水が、収容部に存在する空気と共に収容部の外部へ吸引されて、試料を水で飽和させるのが困難になるおそれがある。
【0023】
前記脱気用容器の収容部に入れる試料の層厚は、試料の最大粒径の2倍〜2.5倍とするのが望ましい。ここで、「試料の最大粒径」とは、試料を構成する粒子のうち最も大きい粒子の直径を指す。脱気用容器の収容部に入れる試料の層厚が試料の最大粒径の2.0倍よりも小さいと、層厚が薄すぎて、試料を水に浸した状態にするのが困難になるおそれがある。一方、脱気用容器の収容部に入れる試料の層厚が試料の最大粒径の2.5倍よりも大きいと、層厚が厚すぎて、試料全体を飽和させるのに必要な時間が長くなるおそれがある。
【0024】
前記型枠は、円筒状とし、前記脱気用容器の収容部に入れる試料の分量は、この試料により作製する前記供試体の直径が試料の最大粒径の4倍〜5倍となるようにするのが望ましい。試料により作製する供試体の直径が試料の最大粒径の4倍よりも小さい場合、供試体が小さすぎて、三軸試験時に供試体に鉛直荷重を加えた際、供試体が型崩れすることが懸念される。一方、試料により作製する供試体の直径が試料の最大粒径の5倍よりも大きい場合、供試体が大きくなりすぎて、三軸試験時に供試体に鉛直荷重を加えた際、供試体全体に圧力を均等に加えるのが困難になることが懸念される。
【0025】
これまでに述べた発明において、前記負圧は、複数の前記脱気用容器の収容部に同時に作用させるのが望ましい。この場合、複数の脱気用容器の収容部に入れた試料を同時に飽和させることができるため、試料を飽和させるのに必要な時間を削減することができる。
【0026】
前記突き固めにより作製した前記供試体は、三軸試験装置に設置した後、脱気水を供給するのが望ましい。この場合、供試体Yを確実に飽和させることができるため、三軸試験の測定値の信頼性を向上させることができる。
【0027】
上記した本発明において、脱気水の供給は、前記供試体に二酸化炭素を供給した後に行うのが望ましい。この場合、二酸化炭素の供給後に供試体に供給される脱気水は、二酸化炭素と容易に置換するため、三軸試験装置に設置した供試体を脱気水で飽和させやすくなる。
【0028】
さらに、三軸試験装置に設置した供試体に脱気水を供給する前記した本発明において、脱気水の供給は、供試体に負圧を作用させた状態で行うのが望ましい。ここで、「供試体に負圧を作用させる」とは、供試体内部に残存する空気を真空ポンプなどで吸引して、供試体に吸引力を作用させることを指す。
【0029】
この場合、供試体内部の空隙に万が一空気が残存していても、この空気は、供試体外部へ吸引される。そのため、供試体内部の空隙に残存した空気と水が置換されやすくなる。この結果、三軸試験装置に設置した供試体を脱気水で飽和させるのが極めて容易になる。
【0030】
上記発明において、前記負圧は、供試体に断続的に作用させるのが望ましい。この場合、供試体を構成する細かい粒子が、負圧作用時に、供試体内部の空隙に残存する空気や供試体に供給される脱気水と共に供試体外部へ吸引されにくくなるため、供試体の粒度が変化するのを防止することができる。これにより、供試体の強度を確保することができる。
【0031】
さらに、前記した本発明において、供試体に作用させる負圧は、−20kN/m2〜−30kN/m2とするのが望ましい。負圧が−20kN/m2よりも低いと、負圧が低すぎて、脱気水で供試体を飽和させるのに必要な時間が長くなるおそれがある。一方、負圧が−30kN/m2よりも高いと、負圧が高すぎて、供試体を構成する細かい粒子が、供試体内部の空隙に残存する空気や供試体に供給される脱気水と共に供試体外部へ吸引されやすくなるため、供試体の粒度を変化させてしまうおそれがある。これは、供試体の強度の低下に繋がる。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係る三軸試験用供試体の作製方法は、供試体を作製するための試料を、脱気用容器を用いて水で飽和させるため、試料を突き固めて作製する供試体は、水で飽和された状態になる。そのため、本発明により作製した供試体は、三軸試験装置に設置後、従来のように、供試体に負圧を作用させながら脱気水を供給して飽和させる工程が不要になる。このため、上述した従来の方法により、供試体を構成する細かい粒子が、供試体内部の空隙に存在する空気や供試体に供給される脱気水と共に供試体外部へ吸引されて、供試体の粒度が変化する問題が生じることがない。この結果、供試体の強度を確保することができる。
【0033】
このように、本発明では、三軸試験装置に設置する供試体を飽和させる必要がないため、供試体の粒度の違いにより、供試体の飽和速度に差が生じるという従来の問題が生じることがない。また、本発明では、試料を水で浸した状態で飽和させるため、試料の粒度の違いによる飽和速度の差が生じにくい。
【0034】
さらに、脱気用容器に分けて入れた試料は、水で浸した状態にするため、脱気用容器の収容部に負圧を作用させた際、試料から細かい粒子が空気と共に吸引されて、試料の粒度が変化することがない。
【0035】
なお、脱気用容器の収容部に入れた試料は、水で浸した状態にするため、収容部に負圧を作用させた際にも、水圧の作用により、負圧の影響を受けにくい。そのため、収容部に作用させる負圧は高め(−100kN/m2程度)に設定することができる。この結果、試料を飽和させるのに必要な時間を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施形態を示すもので、三軸試験用供試体の作製方法を示すフロー図である。
【図2】図1の示す作製方法に使用する脱気用容器を示す斜視図である。
【図3】図2の本体部の平面図である。
【図4】脱気用容器の収容部に試料を入れる工程を説明する断面図である。
【図5】図4に示す本体部の開口部を蓋体で覆った状態を示す断面図である。
【図6】図5に示す脱気用容器を真空ポンプに取り付けた連結部材に並列接続して、その脱気用容器の収容部に負圧を作用させる工程を説明する断面図である。
【図7】供試体を作製する型枠を固定した状態を説明する斜視図である。
【図8】図7の固定方法を説明する斜視図である。
【図9】供試体を作製する型枠の内部に脱気用容器の収容部で飽和させた試料を移す工程を説明する断面図である。
【図10】供試体を作製する型枠の内部に移した試料を突き固めする工程を説明する断面図である。
【図11】図10の工程により、型枠の内部に供試体を作製した状態を示す断面図である。
【図12】図11で作製した供試体を三軸試験装置に設置して、さらに脱気水で飽和させる工程を説明する断面図である。
【図13】従来の三軸試験用供試体の作製方法を示すフロー図である。
【図14】図13に示す従来の供試体の作製方法において、供試体を作製する型枠に試料を入れる工程を説明する断面図である。
【図15】図14に示す工程の後、試料を突き固めする工程を説明する断面図である。
【図16】図15の工程により、型枠の内部に供試体を作製した状態を示す断面図である。
【図17】図16で作製した供試体を三軸試験装置に設置して、供試体に高負圧を作用させながら脱気水を供給して供試体を飽和させる工程を説明する断面図である。
【図18】図16で作製した供試体を三軸試験装置に設置して、供試体に低負圧を作用させながら脱気水を供給して供試体を飽和させる工程を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に本発明の実施の形態について、添付の図面(図1〜図12)を参照して説明する。なお、本実施形態に係る三軸試験用供試体の作製方法を図1にフロー図で示した。
【0038】
まず、粒度を調整した試料(以下、試料Xとする)と、5つの図2に示す脱気用容器1を用意する(図1の工程S1)。
【0039】
脱気用容器1は、図2に示すように、上端に開口部を有する有底円筒状の本体部2と、底板5と、蓋体3とを主要部とする。本体部2は、内部に凹所4を有し、この凹所4には、試料Xを収容する収容部7として、上端に開口部を有する有底円筒状のプラスチック製バケツを本体部2から取り外し可能に嵌合する。収容部7の底面7aと本体部2の凹所4の底面4aは接触させた状態とする。
【0040】
また、本体部2は、開口部を蓋体3で覆い、反開口部側の端部を底板5に固定する。底板5には本体部2を移動させるための移動用キャスタ6を取り付ける。蓋体3の中心部には、底板5側とは反対側に突出する凸状の突起3aを設け、この突起3aには、T字状のコネクタ9を取り付ける。このコネクタ9から突起3aを介して蓋体3まで、コネクタ9と本体部2の凹所4を連通させる吸引孔8を形成する。また、コネクタ9には、このコネクタ9と他部材(真空ポンプや他の脱気用容器など)とを連結する連結部材10(チューブなど)が取り付けられている。なお、図3に本体部2を開口部側から見た平面図を示す。
【0041】
次に、図4〜図6に示すように、5つの脱気用容器1の収容部7に水を張り、その後、各脱気用容器1の収容部7に柄杓11を用いて前記した試料X(以下、散点模様で示す)を分けて入れ、この試料Xを水で浸した状態にする(図1の工程S2)。なお、5つの脱気用容器1の収容部7に入れる試料Xは、本実施形態では等しくする。上記の工程の後、図5に示すように、本体部2の開口部を蓋体3で覆い、この蓋体3に取り付けられたコネクタ9と真空ポンプP(脱気ポンプ)を連結部材10で連結する。なお、本実施形態では、図6に示すように、真空ポンプPに取り付けられた連結部材10に、コネクタ9を介して5つの脱気用容器1を並列接続する。
【0042】
上記の状態で真空ポンプPを作動させて、5つの脱気用容器1の収容部7に存在する空気を同時に吸引して、図6に示すように、各脱気用容器1の収容部7に−100kN/m2の負圧(吸引力)を作用させる(図1の工程S2)。これにより、収容部7に存在する空気が吸引されるため、試料Xの内部の空隙に存在する空気が、収容部7の水に置換されて、試料Xが水で飽和される。なお、収容部7に張る水の種類は、特に限定されるものではないが、脱気水を利用すると、収容部7に存在する空気が少なくなるため、上記飽和に要する時間を削減することができる。
【0043】
次に、図7に示すように、板状部材26に形成された型枠設置部24に三軸試験用供試体を作製するための円筒状の型枠20を嵌合して固定し、この後、型枠20の内壁をゴム製メンブレン21で覆う。この型枠20は、鉛直方向と直交する方向(図面左右側)で二つに等割が可能である。上述した型枠20の型枠設置部24への固定は、図8に示すように、板状部材26の型枠設置部24の中心部に形成された凹部24aに、2つの型枠構成部材20a、20bを矢印Aおよび矢印Bで示すように嵌合して、環状に連結させることにより行う。
【0044】
型枠構成部材20bの端部には、ボルト固定部22bを設けられ、このボルト固定部22bにはボルト23が固定されている。また、型枠構成部材20aの端部には、ボルト挿通孔25が形成されたボルト固定部22aが設けられている。型枠構成部材20a、20bを型枠設置部24の凹部24aに嵌合した後、型枠構成部材20bのボルト23の端部を型枠構成部材20aのボルト挿通孔25に挿通して、その端部を図7に示すようにナット12で締め付ける。これにより、型枠構成部材20aと型枠構成部材20bを密着させると共に、互いに分離するのを防止することができる。
【0045】
次に、図9に示すように、円筒状をなす型枠20の内部に、5つの脱気用容器1のうち一つにいれた試料Xと同程度の量の水を張り、脱気用容器1の収容部7に入れた試料X(水で飽和済み:図6参照)を、空気が混入しないように柄杓27を用いて静かに型枠20の内部に移す。これにより、試料Xを、型枠20の内部に下側(図面下側)から層状に積み重ねていく(図1の工程S3)。なお、型枠20の内部に試料Xを静かに移す方法としては、試料Xを、柄杓27を用いて型枠20の内部に張った水につけ、その後、試料Xを水中で自然落下させる方法がある。また、上述の作業の際、型枠20の上部から水が溢れ出ないように、適宜水を排出しながら行う。さらに、型枠20の内部に張る水は、脱気水を使用する。これにより、型枠20の内部に移す試料X(水で飽和済み)に空気が混入するのを防止することができる。
【0046】
5つの脱気用容器1のうち、1つの脱気用容器1の試料を型枠20に移し終えた後、図10に示すように、上部側(図面上側)から型枠20の内部にランマー28を挿入する。このランマー28を矢印Cで示す鉛直方向に何度も動かして試料Xを上部側から何度も突くことにより、この試料Xの突き固めを行う(図1の工程S4)。さらに、5つの脱気用容器1の収納部7に分けて入れた試料Xは、型枠20の内部に全て移すと共に、全て突き固めを行う必要がある。そのため、本実施形態では、脱気用容器1の試料Xを型枠20に移す工程と、前記突き固めの工程とを交互(計5回)に行うことで、型枠20の内部に試料Xを積み重ねる。このように突き固めを行うことにより、試料Xを均等に突き固めることができる。上記突き固めにより、図11に示すように、三軸試験用供試体Y(以下、散点模様で示す)を完成させる。なお、供試体Yにおいて、突き固めを行った段階の境界線、つまり、1つの脱気用容器1の試料Xを型枠20に移し終えた段階の境界線を点線で示し、後の図12においても同様とする。
【0047】
次に、完成した供試体Yを型枠20ごと三軸試験装置に移動させて、図12に示すように、供試体Yを三軸試験装置に設置する(図1の工程S5)。
【0048】
三軸試験装置30は、上盤41と、台座42と、ペデスタル33と、キャップ34と、支柱32とで主要部が構成される。ペデスタル33は台座42に固定されており、キャップ34は、上盤41を貫通して載荷装置(図示省略)に連結されている。
【0049】
また、台座42からペデスタル33に亘って脱気水供給孔35および二酸化炭素(CO2)供給孔36が形成され、上盤42には二つの吸引孔37、38が形成されている。また、キャップ34には、吸引孔39が形成されている。なお、この吸引孔39と上盤41の吸引孔38は連結部材40(チューブなど)で連結されている。
【0050】
上述した供試体Yの三軸試験装置30への設置は、突き固めして作製した供試体Y(図11参照)を型枠20ごと三軸試験装置30に移動させてペデスタル33に固定した後、型枠20を取り外すことにより行う。供試体Yをペデスタル33に固定した後、上盤41と台座42との間の空間は、鋼製の円筒カプセル31で密封する。
【0051】
上記のようにして三軸試験装置に設置した供試体Yには、台座42の二酸化炭素供給孔36から二酸化炭素を供給して、供試体Yの内部の空隙に残存する空気を二酸化炭素に置換する。次いで、台座42の脱気水供給孔35から脱気水を供給して、供試体Yの内部の空隙に存在する二酸化炭素を脱気水に溶解させる。また、上記操作は、連結部材40で連結された吸引孔38、39から供試体Yの内部の空気を吸引することで、供試体Yに負圧(吸引力)を作用させた状態で行う。この負圧は、−20kN/m2〜−30kN/m2とする。
【0052】
以上の工程を経て作製した供試体Yを用いて三軸試験を行う(図1の工程S6)。なお、図1に示すフロー図では、三軸試験装置30に設置した後の供試体Yに脱気水や二酸化炭素を供給する工程は、本実施形態においては必ずしも必要ではないので、省略している。
【0053】
本実施形態の場合、供試体Yを作製するための試料Xを、複数の脱気用容器1(図6参照)を用いて水で飽和させるため、この飽和した試料Xを突き固めて作製した供試体Yは、三軸試験装置に設置した後、従来のように、負圧を作用させながら脱気水を供給する工程が不要になる。そのため、供試体に負圧を作用させることで、供試体Yを構成する細かい粒子が、供試体Yの内部の空隙に存在する空気や供試体Yに供給される脱気水と共に供試体Yの外部へ吸引されて、供試体Yの粒度が変化することがない。この結果、供試体Yの強度を確保することができる。
【0054】
上記のように、三軸試験装置に設置する供試体Yは、既に水で飽和された状態であるため、必ずしもこの供試体Yを脱気水で飽和させる必要がない。そのため、供試体Yの粒度の違いにより、供試体Yの飽和速度に差が生じるという従来の問題が生じることがない。また、供試体Yを作製するための試料Xは、水で浸した状態で飽和させるため、試料Xの粒度の違いによる飽和速度の差が生じにくい。
【0055】
さらに、脱気用容器1の収容部7に入れた試料Xは、水で浸した状態にするため、水圧の作用を受けて、収容部7に作用させる負圧の影響を受けにくい。そのため、試料Xが脱気用容器1の収容部7の外部へ吸引されて、試料Xの粒度が変化することがない。
【0056】
なお、脱気用容器1の収容部7に入れた試料Xは、水で浸した状態にするため、収容部7に負圧を作用させた際にも、水圧の作用により、負圧の影響を受けにくい。そのため、収容部に作用させる負圧は高め(−100kN/m2程度)に設定することができる。この結果、試料Xを飽和させるのに必要な時間を削減することができる。
【0057】
脱気用容器1の収容部7に作用させる負圧は、本実施形態の場合、−90kN/m2〜−100kN/m2にするため、適度な時間で試料Xを水で飽和させることができる。負圧が−90kN/m2よりも低い(マイナス値で表される負圧の絶対値が小さい)と、負圧が低すぎて、試料Xを水で飽和させるのに必要な時間が長くなるおそれがある。一方、負圧が−100kN/m2よりも高い(マイナス値で表される負圧の絶対値が大きい)と、負圧が高すぎて、脱気用容器1の収容部7に存在する水が、収容部7の空気と共に収容部7の外部へ吸引されて、試料Xを水で飽和させるのが困難になるおそれがある。
【0058】
また、本実施形態では、脱気用容器1の収容部7に入れる試料Xの層厚は、試料の最大粒径(試料を構成する粒子のうち最も大きい粒子の直径)の2倍〜2.5倍にする。そのため、試料Xを効率よく水で飽和させることができる。脱気用容器1の収容部7に入れる試料Xの層厚が試料Xの最大粒径の2.0倍よりも小さいと、層厚が薄すぎて、試料Xを水で浸した際、試料Xを構成する細かい粒子が水中に浮遊するおそれがある。これは、試料Xを水で浸すのが困難になる原因となる。一方、脱気用容器1の収容部7に入れる試料Xの層厚が試料Xの最大粒径の2.5倍よりも大きいと、層厚が厚すぎて、試料Xの全体を水で飽和させるのに必要な時間が長くなるおそれがある。
【0059】
さらに、本実施形態、型枠20は円筒状とし(図7参照)、脱気用容器1の収容部7に入れる試料Xの分量は、この試料Xにより作製する供試体Yの直径が試料Xの最大粒径の4倍〜5倍となるようにする。このため、三軸試験時に型崩れしにくく、かつ、三軸試験で信頼性の高い測定値を得ることができる供試体Yを作製することができる。試料Xにより作製する供試体Yの直径が試料Xの最大粒径の4倍よりも小さい場合、供試体Yが小さすぎて、三軸試験時に供試体Yに鉛直荷重を加えた際、供試体Yが型崩れすることが懸念される。一方、試料Xにより作製する供試体Yの直径が試料Xの最大粒径の5倍よりも大きい場合、供試体Yが大きくなりすぎて、三軸試験時に供試体Yに鉛直荷重を加えた際、供試体Yの全体に圧力を均等に加えるのが困難になることが懸念される。
【0060】
複数の脱気用容器1の収容部7に負圧を作用させる方法としては、真空ポンプを1つの脱気用容器1のみに連結して負圧を作用させ、作業が終了すると、真空ポンプPを別の脱気用容器1に連結して負圧を作用させ、これを脱気用容器1の数だけ(本実施形態であれば、5回)繰り返す方法がある。しかし、本実施形態のように、真空ポンプPに取り付けられた連結部材10に、コネクタ9を介して5つの脱気用容器1を並列接続すると、真空ポンプPの作動により、全ての脱気用容器1の収容部7に同時に負圧を作用させることができる。そのため、5つの脱気用容器1に入れた試料Xを水で飽和させるのに必要な時間を削減することができる。また、この場合、5つの脱気用容器1の収容部7に均等負圧(本実施形態では−100kN/m2)を作用させることができる。
【0061】
このように、5つの脱気用容器1の収容部7に均等負圧を作用させる場合、本実施形態のように、各脱気用容器1の収容部7に入れる試料Xを等しくすると、試料Xを飽和させるのに必要な時間を等しくすることができる。また、各脱気用容器1に入れた試料Xの飽和状態を等しくすることができる。
【0062】
なお、本実施形態の場合、三軸試験装置30に設置した供試体Yは、水で飽和された状態であるため、従来のように脱気水を供給する必要がない。しかし、本実施形態のように、三軸試験装置30に設置した後の供試体Yにも脱気水を供給することにより、万が一、供試体Yの内部の空隙に空気が残存していたとしても、供試体Yの内部の空気を脱気水と置換できる。そのため、供試体Yを水で確実に飽和させることができる。この結果、三軸試験の測定値の信頼性を向上させることができる。
【0063】
また、本実施形態では、三軸試験装置に設置した供試体Yに二酸化炭素を供給した後に供試体Yへ脱気水を供給するため、供試体Yを飽和させるのに必要な時間を削減することができる。これは、供試体Yに二酸化炭素を供給すると、供試体Yの内部の空隙に残存する空気が二酸化炭素に置換され、この状態で脱気水を供給することにより、二酸化炭素が脱気水に溶けて、二酸化炭素と脱気水を容易に置換することができるためである。
【0064】
また、供試体Yへの脱気水を供給は、供試体Yに負圧を作用させた状態、つまり、真空ポンプPを用いて吸引孔38、39から供試体Yの内部の空隙に存在する空気を吸引した状態で行う。この場合、供試体Yの内部の空隙に万が一空気が残存していても、この空気は、吸引孔38、39を介して供試体Yの外部へ吸引されるため、供試体Yの内部の空隙に残存した空気と脱気水が置換されやすくなる。この結果、供試体Yを脱気水で飽和させるのが極めて容易になる。
【0065】
三軸試験装置30に設置した供試体Yに真空ポンプPで負圧を作用させる際、この負圧は、供試体Yに断続的に作用させる。この場合、負圧作用時に、供試体Yを構成する細かい粒子が、供試体Yの内部の空隙に存在する空気や供試体Yに供給される脱気水と共に吸引孔38、39を介して供試体Yの外部へ吸引されることがない。この結果、供試体Yの粒度が変化するのを防止して、供試体Yの強度を向上させることができる。
【0066】
さらに、供試体Yに作用させる負圧は、−20kN/m2〜−30kN/m2とするため、強度に優れ、かつ、三軸試験で信頼性の高い測定値を得ることができる供試体Yを作製することができる。負圧が−20kN/m2よりも低いと、負圧が低すぎて、脱気水で供試体Yを飽和させるのに必要な時間が長くなるおそれがある。一方、負圧が−30kN/m2よりも高いと、負圧が高すぎて、供試体Yの内部の空隙に残存する空気や供試体Yに供給される脱気水と共に、供試体Yの細かい粒子が吸引孔38、39を介して供試体Yの外部へ吸引されて、供試体Yの粒度を変化させてしまうおそれがある。これは、供試体Yの強度の低下に繋がる。
【0067】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、これはあくまで例示であり、特許請求の範囲に記載の技術的思想を逸脱しないのであれば、適宜変更が可能である。
【0068】
例えば、本実施形態では、図2に示すように、脱気用容器1の本体部2に形成した凹所4に、試料Xを入れるための収容部7としてプラスチック製のバケツを使用した。この場合、水で飽和させた試料Xを型枠20に移す際、収納部7を本体部2の凹所4から取り外して行うことができるため、供試体Yを作成する際の作業性(作業のしやすさ、作業効率)が向上する。しかし、本体部2の凹所4の材質を適宜選択するなどして、凹所4を、試料Xを入れる収容部とすることもできる。
【0069】
また、型枠20は、本実施形態のような組立て式のものに限らず、本発明の目的を達成することができるのであれば、組立て式でない型枠など、特に限定されるものではない。さらに、試料Xを突き固めする手段は、ランマーのような突き固め用の機械を使用する方法に限られず、試験条件によっては、先端が円盤状の突き棒を用いて、人手で突き固めをするようにしてもよい。
【0070】
そして、脱気用容器1は、本実施形態のような形状に限られず、既に述べた本発明の作用および効果を得ることができるのであれば、特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0071】
1 脱気用容器
4 凹所
7 収容部
20 型枠(供試体作製用)
30 三軸試験装置
X 試料
Y 供試体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
土の強度を測定する三軸試験に使用する供試体を作製する方法であって、
粒度を調整した試料を複数の脱気用容器に設けた収容部に分けて入れると共に、この試料を水に浸した状態にする工程と、各々の前記収容部に負圧を作用させる工程と、各々の前記収容部から供試体作製用の型枠の内部に前記試料を順次移して前記型枠の内部に積み重ねる工程と、前記型枠の内部に移した試料を突き固める工程とから成ることを特徴とする三軸試験用供試体の作製方法。
【請求項2】
前記型枠の内部に移した試料を移した都度突き固める請求項1に記載の三軸試験用供試体の作製方法。
【請求項3】
前記負圧は、−90kN/m2〜−100kN/m2とする請求項1又は2に記載の三軸試験用供試体の作製方法。
【請求項4】
前記脱気用容器の収容部に入れる試料の層厚は、試料の最大粒径の2倍〜2.5倍とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の三軸試験用供試体の作製方法。
【請求項5】
前記型枠は、円筒状とし、前記脱気用容器の収容部に入れる試料の分量は、この試料により作製する前記供試体の直径が試料の最大粒径の4倍〜5倍となるようにする請求項1〜4のいずれか一項に記載の三軸試験用供試体の作製方法。
【請求項6】
前記負圧は、複数の前記脱気用容器の収容部に同時に作用させる請求項1〜5のいずれか一項に記載の三軸試験用供試体の作製方法。
【請求項7】
前記突き固めにより作製した供試体は、三軸試験装置に設置した後、脱気水を供給する請求項1〜6のいずれか一項に記載の三軸試験用供試体の作製方法。
【請求項8】
前記脱気水の供給は、前記供試体に二酸化炭素を供給した後に行う請求項7に記載の三軸試験用供試体の作製方法。
【請求項9】
前記脱気水の供給は、前記供試体に負圧を作用させた状態で行う請求項7又は8に記載の三軸試験用供試体の作製方法
【請求項10】
前記負圧は、前記供試体に断続的に作用させる請求項9に記載の三軸試験用供試体の作製方法。
【請求項11】
前記負圧は、−20kN/m2〜−30kN/m2とする請求項9又は10に記載の三軸試験用供試体の作製方法。
【請求項1】
土の強度を測定する三軸試験に使用する供試体を作製する方法であって、
粒度を調整した試料を複数の脱気用容器に設けた収容部に分けて入れると共に、この試料を水に浸した状態にする工程と、各々の前記収容部に負圧を作用させる工程と、各々の前記収容部から供試体作製用の型枠の内部に前記試料を順次移して前記型枠の内部に積み重ねる工程と、前記型枠の内部に移した試料を突き固める工程とから成ることを特徴とする三軸試験用供試体の作製方法。
【請求項2】
前記型枠の内部に移した試料を移した都度突き固める請求項1に記載の三軸試験用供試体の作製方法。
【請求項3】
前記負圧は、−90kN/m2〜−100kN/m2とする請求項1又は2に記載の三軸試験用供試体の作製方法。
【請求項4】
前記脱気用容器の収容部に入れる試料の層厚は、試料の最大粒径の2倍〜2.5倍とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の三軸試験用供試体の作製方法。
【請求項5】
前記型枠は、円筒状とし、前記脱気用容器の収容部に入れる試料の分量は、この試料により作製する前記供試体の直径が試料の最大粒径の4倍〜5倍となるようにする請求項1〜4のいずれか一項に記載の三軸試験用供試体の作製方法。
【請求項6】
前記負圧は、複数の前記脱気用容器の収容部に同時に作用させる請求項1〜5のいずれか一項に記載の三軸試験用供試体の作製方法。
【請求項7】
前記突き固めにより作製した供試体は、三軸試験装置に設置した後、脱気水を供給する請求項1〜6のいずれか一項に記載の三軸試験用供試体の作製方法。
【請求項8】
前記脱気水の供給は、前記供試体に二酸化炭素を供給した後に行う請求項7に記載の三軸試験用供試体の作製方法。
【請求項9】
前記脱気水の供給は、前記供試体に負圧を作用させた状態で行う請求項7又は8に記載の三軸試験用供試体の作製方法
【請求項10】
前記負圧は、前記供試体に断続的に作用させる請求項9に記載の三軸試験用供試体の作製方法。
【請求項11】
前記負圧は、−20kN/m2〜−30kN/m2とする請求項9又は10に記載の三軸試験用供試体の作製方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2010−181232(P2010−181232A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23921(P2009−23921)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】
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