説明

上ノズル

【課題】ガス吹き込み用耐火物を備えた上ノズルにおいて、吹き込みガスの背圧の低下を抑制すること。
【解決手段】耐火れんがからなるノズル本体11のノズル孔12側にガス吹き込み用耐火物13が組み込まれており、ガス吹き込み用耐火物13の少なくとも外側面が金属板14で包囲されている上ノズル10Aにおいて、金属板14の下面に面してガスシール用耐火れんが18を配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融金属の流量制御を行うスライディングノズル装置の上プレートの上面に接合される上ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
スライディングノズル装置は、溶融金属の流量制御を正確に行うことができるため、各種の溶融金属容器に広く利用されている。スライディングノズル装置は、一般的に2〜3枚のプレートを備え、一番上の上プレートの上面に上ノズルが接合される。
【0003】
上ノズルとしては、そのノズル孔を通過する溶融金属流にガスを吹き込むためにガス吹き込み用耐火物を備えたものが知られている(例えば特許文献1)。ガス吹き込み用耐火物からノズル孔に向けてガスを吹き込むことで、上ノズルのノズル孔の壁面、及びスライディングノズル装置の下面側に接合される下ノズルや浸漬ノズルのノズル孔の壁面にアルミナ等の介在物が付着することを防止する。
【0004】
このようなガス吹き込み用耐火物を備えた上ノズルの従来例を図2に示す。上ノズル10Bのノズル本体11は耐火れんがからなり、そのノズル本体11のノズル孔12側の下部にガス吹き込み用耐火物13が組み込まれている。ガス吹き込み用耐火物13は、その外側面全体と上面及び下面の一部が金属板14で包囲されている。金属板14とガス吹き込み用耐火物13との接合部分にはモルタル15が施工される。また、金属板14とガス吹き込み用耐火物13との間にはガスプール16が設けられ、このガスプール16にガス導管17を接続してガスを供給する。ガスプール16にガス吹き込み用耐火物13のスリット13aが連通しており、スリット13aからノズル孔12に向けてガスが吹き込まれる。
【0005】
ガス吹き込み用耐火物13は、ノズル本体11への組み込みを容易に行うことができるように、ノズル本体11の下方の開口部から装着するようにしている。このため、ガス吹き込み用耐火物13の下面は上ノズル10Bの下面側に露出する。したがって、上ノズル10Bをスライディングノズル装置の上プレート20に接合する際には、ガス吹き込み用耐火物13の下面が上プレート20の上面にモルタル21を介して接合される。なお、金属板14とノズル本体11との間にもモルタル15が施工される。
【0006】
しかし、上ノズル10Bでは、ガス吹き込み用耐火物13を金属板14で包囲することで、ガスリークを抑えるようにしているものの、実操業においては、依然としてガスリークが原因と見られる吹き込みガスの背圧の経時的な低下が発生しているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−61595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、ガス吹き込み用耐火物を備えた上ノズルにおいて、吹き込みガスの背圧の低下を抑制することにある、
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者が実際に図2に示す上ノズル10Bを実操業に供し、使用後の上ノズル10Bを観察したところ、金属板14が大きく変形していることから、ガスリークのおもな原因は金属板14の熱膨張であると考えられた。すなわち、金属板14は耐火物よりも熱膨張率が大きいため、金属板14が使用中に大きく熱膨張し、モルタルシールを壊して隙間が生じ、その隙間を経路としてガスリークが発生すると考えられた。
【0010】
本発明者は、この金属板14の熱膨張による隙間の発生現象に着目して検討を重ねた。その結果、金属板14の上面及び側面は、耐火れんがからなるノズル本体11で押さえ込まれているので、その部分にガスリークの原因となる隙間が発生する可能性は低く、ガスリークの原因となる隙間は、金属板14の下面側で発生しやすいと考えられた。すなわち、金属板14の下面側には、モルタル21が介在しており、このモルタル21としては、従来、上ノズル10Bの交換作業を容易にするため、低強度及び低接着性で可縮性のあるモルタルが使用されていることから、金属板14が下方に膨張したときに押しつぶされ、その結果、金属板14の下面と上プレート20の上面との間に隙間が発生し、その隙間を経路としてガスリークが発生すると考えられた。
【0011】
そこで、本発明者は、金属板14の下面に面してモルタルではなく、別途、ガスシール用として耐火れんがを配置することで、ガスリークを抑制しようと考え、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、スライディングノズル装置の上プレートの上面に接合される上ノズルであって、耐火れんがからなるノズル本体のノズル孔側にガス吹き込み用耐火物が組み込まれており、前記ガス吹き込み用耐火物の少なくとも外側面が金属板で包囲されている上ノズルにおいて、前記金属板の下面に面してガスシール用耐火れんがを配置したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の上ノズルでは、金属板の下面に面してガスシール用耐火れんがを配置したことで、金属板が下方に膨張することを抑え込むことができるので、金属板の下面側においてガスリークの原因となる隙間が発生することを抑制できる。これにより、吹き込みガスの背圧の低下を抑制でき、操業の安定化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の上ノズルの一実施形態を示す。
【図2】ガス吹き込み用耐火物を備えた上ノズルの従来例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の上ノズルの一実施形態を示す。図1に示す上ノズル10Aのノズル本体11は耐火れんがからなり、そのノズル本体11のノズル孔12側の下部にガス吹き込み用耐火物13が組み込まれている。ガス吹き込み用耐火物13は、その外側面全体と上面及び下面の一部が金属板14で包囲されている。金属板14とガス吹き込み用耐火物13との接合部分にはモルタル15が施工される。また、金属板14とガス吹き込み用耐火物13との間にはガスプール16が設けられ、このガスプール16にガス導管17を接続してガスを供給する。ガスプール16にガス吹き込み用耐火物13のスリット13aが連通しており、スリット13aからノズル孔12に向けてガスが吹き込まれる。
【0016】
ガス吹き込み用耐火物13は、ノズル本体11への組み込みを容易に行うことができるように、ノズル本体11の下方の開口部から装着するようにしている。さらに、ガス吹き込み用耐火物13の下方からガスシール用耐火れんが18を装着する。このガスシール用耐火れんが18は、金属板14の下面に面し、かつ金属板14の下面とガス吹き込み用耐火物13の下面とを跨ぐように配置される。このようにガス吹き込み用耐火物13及びガスシール用耐火れんが18を組み込んだ上ノズル10Aは、その下面(ノズル本体11及びガスシール用耐火れんが18の下面)が上プレート20の上面にモルタル21を介して接合される。
【0017】
ノズル本体11及びガスシール用耐火れんが18としては、アルミナ-カーボン質、高アルミナ質などの一般的に上ノズルとして使用されている耐火れんがを使用することができる。ガスシール用耐火れんが18の厚みは、ガスシール機能を十分に果たすために5mm以上とすることが好ましい。
【0018】
モルタル15、21の種類は特に限定されないが、モルタル15としては、水ガラスなどをバインダーに使用した、熱間でのシール性を考慮したものが好ましい。また、モルタル21としては、上ノズル10Aやガス吹き込み用耐火物13の交換作業を容易にするため、一般的に耐火物接合に使用される粘土を配合したモルタル等の低強度及び低接着性で作業性に優れたモルタルが好ましい。
【実施例】
【0019】
図1に示した本発明の上ノズルを実操業に供し、吹き込みガスの背圧挙動を調査した。また、比較例として図2に示した従来の上ノズルも実操業に供し、吹き込みガスの背圧挙動を調査した。図1及び図2において、ノズル本体11及びガスシール用耐火れんが18としては、アルミナ-カーボン系耐火れんがを使用した。ガスシール用耐火れんが18の厚みは、15mmとした。また、モルタル15としては、アルミナ粉末を水ガラス系バインダーで混ぜた高シール性モルタルを使用し、モルタル21としては、アルミナ-シリカ-カーボン系の一般的に耐火物接合に使用される粘土系モルタルを使用した。
【0020】
本発明の実施例と比較例における吹き込みガスの背圧挙動の調査結果を表1に示す。表1において背圧低下発生率とは、5NL/minのガスを吹き込んだ場合、そのガスの背圧が0.05MPaを下回った比率を示し、分母となる試験数はいずれも100とした。
【0021】
【表1】

【0022】
表1に示すとおり、本発明の実施例では、背圧が0.05MPaを下回ることはなく、良好な結果であった。
【符号の説明】
【0023】
10A,10B 上ノズル
11 ノズル本体
12 ノズル孔
13 ガス吹き込み用耐火物
14 金属板
15 モルタル
16 ガスプール
17 ガス導管
18 ガスシール用耐火れんが
20 上プレート
21 モルタル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライディングノズル装置の上プレートの上面に接合される上ノズルであって、耐火れんがからなるノズル本体のノズル孔側にガス吹き込み用耐火物が組み込まれており、前記ガス吹き込み用耐火物の少なくとも外側面が金属板で包囲されている上ノズルにおいて、前記金属板の下面に面してガスシール用耐火れんがを配置したことを特徴とする上ノズル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−200747(P2012−200747A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66230(P2011−66230)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000170716)黒崎播磨株式会社 (314)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】