説明

上吊式引戸装置

【課題】引戸の開閉動作のときに、引戸に斜め方向の力がかかっても、戸車の浮き上がりを抑制し、引戸を円滑に移動することができる上吊式引戸装置を提供すること。
【解決手段】引戸Dの上部に配設した吊具ユニット10をレール2に走行自在に取り付けて引戸Dを開閉するようにし、吊具ユニットの本体11に、レール2の走行面2Aを走行する走行用戸車3と、レール2の内天面2Bに当接可能にしたガイド用戸車4と、走行用戸車3とガイド用戸車4との高さ方向の間隔を調整するレベル調整機構5とを備えるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上吊式引戸装置に関し、特に、開閉時に引戸のぶれを抑制することのできる上吊式引戸装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の上吊式引戸装置80は、図6〜図8に示すように、引戸Dの上部に配設したブラケット81をブラケット81に回動自在に配設した戸車82を介してレール2に走行自在に取り付けて引戸Dを開閉するようにしている。
【0003】
レール2は、壁面の開放部(出入口部)に取り付ける上枠85、下枠86及び左右の両竪枠87、87からなる枠部材の上枠85に固定され、開放側を下向きにした断面C字状構造とし、レール2の下方両端から内側に向かって突設する走行面2Aに、戸車82が載置される。
【0004】
レール2は、一般に、戸車82を載置した後にボルト等の固定手段により上枠85に固定される。
また、引戸Dは、上枠85に固定されたレール2に戸車82を介して取り付けられたブラケット81とビス等の適宜手段で連結するようにしている(例えば、特許文献1〜2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−288951号公報
【特許文献2】特開2005−351081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、この上吊式引戸装置80は、戸車82の上部(頂点部)と、レール2の内天面2Bとの間に距離Sの隙間がある。
そして、引戸Dを開閉動作するときは、通常、引戸Dの取っ手をもって行うが、使用者が取っ手にかける力は、必ずしも引戸Dの開閉方向と平行(水平方向)とはならず、若干上下に傾くこととなる。
そのため、図8に示すように、引戸Dの開閉動作のときに、引戸Dにかかる斜め方向の力によって、レール2内を走行する戸先側又は戸尻側の戸車82の一方はレールの走行面2Aと当接するものの、他方はレール2の走行面2Aから浮き上がることとなる。
これによって、引戸Dは傾いた状態で開閉動作されることとなり、異音が発生したり、戸車82やレール2が破損したりするという問題があった。
【0007】
また、上吊式引戸の場合、レール2の下面と引戸Dの上面との間に隙間が生じ、引戸Dによって仕切られる室内から室外又は室外から室内への明かり漏れが生じるという問題もあった。
【0008】
さらに、上吊式引戸の場合、対向する一対の戸車82を配設したブラケットの重心を通る鉛直線と引戸Dの重心を通る鉛直線とを一致させるように取り付けるものであるが、レール2の走行面2Aが、図7(b)に示すように、若干傾いていると、対向する一対の戸車82が、レール2の走行面2Aと均等に当接せず、一方の走行面2Aに引戸Dが偏った状態となり、戸車82と当接する走行面2Aに引戸Dの全荷重かかる場合があり、レール2の破損や、開閉動作時に、ブラケット81とレール2又は戸車82の側面とレール2とが接触して異音が発生することがあるという問題もあった。
【0009】
本発明は、上記従来の上吊式引戸装置の有する問題点に鑑み、上吊式引戸装置において、引戸の開閉動作のときに、引戸に斜め方向の力がかかっても、戸車の浮き上がりを抑制し、引戸を円滑に移動することができる上吊式引戸装置を提供することを第1目的とする。
【0010】
また、レールの下面と引戸の上面との隙間を可及的に小さくして明かり漏れを抑えることを第2の目的とする。
【0011】
さらに、通常一致する対向する一対の戸車の重心を通る鉛直線と引戸の重心を通る鉛直線とを変位させ、レールが傾いているときでも、レールの走行面に、対向する一対の走行用戸車を均等に当接させることができるようにすることを第3の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記第1の目的を達成するため、本発明の上吊式引戸装置は、引戸の上部に配設した吊具ユニットをレールに走行自在に取り付けて引戸を開閉するようにした上吊式引戸装置において、前記吊具ユニットの本体に、前記レールの走行面を走行する走行用戸車と、前記レールの内天面に当接可能にしたガイド用戸車と、走行用戸車とガイド用戸車との高さ方向の間隔を調整するレベル調整機構とを備えるようにしたことを特徴とする。
【0013】
この場合において、前記レベル調整機構を、引戸の開閉方向に漸次高さが変わる傾斜面に沿って、前記ガイド用戸車を配設した第1の移動ブロックを第1のねじ部材により、吊具ユニットの本体に対して相対的に移動させることによって、上下方向に変位させるように構成することができる。
【0014】
また、上記第2の目的を達成するため、前記吊具ユニットの本体を、引戸に固定した内部に引戸の開閉方向に漸次高さが変わる傾斜面を形成した取付部材に、前記傾斜面に摺接する第2の移動ブロック及び第2のねじ部材を介して取り付け、該第2の移動ブロックを第2のねじ部材により、取付部材に対して相対的に移動させることによって、上下方向に変位させる上下方向調整機構を設けることができる。
【0015】
また、上記第3の目的を達成するため、前記吊具ユニットの本体を、引戸に固定した内部に引戸の木口面に対して角度をもった鉛直方向の平行に対向する傾斜面を形成した取付部材に、前記傾斜面に摺接する第3の移動ブロック及び第3のねじ部材を介して取り付け、該第3の移動ブロックを第3のねじ部材によって相対的に移動させることによって、引戸の木口面と平行方向に変位させる水平方向調整機構を設けることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の上吊式引戸装置によれば、引戸の上部に配設した吊具ユニットをレールに走行自在に取り付けて引戸を開閉するようにし、前記吊具ユニットの本体に、前記レールの走行面を走行する走行用戸車と、前記レールの内天面に当接可能にしたガイド用戸車と、走行用戸車とガイド用戸車との高さ方向の間隔を調整するレベル調整機構とを備えるようにすることにより、引戸の開閉動作のときに、引戸にかかる力が、引戸の開閉方向と平行にならずに傾くこととなっても、走行用戸車と高さ方向の間隔が調整されたガイド用戸車が、すぐにレールの内天面と当接し、引戸の傾きを最小限に抑え、戸車の浮き上がりを抑制し、引戸を円滑に移動することができ、また、がたつきが少ないことから、戸車やレールの破損を有効に防止することができる。
【0017】
また、前記レベル調整機構を、引戸の開閉方向に漸次高さが変わる傾斜面に沿って、前記ガイド用戸車を配設した第1の移動ブロックを第1のねじ部材により、吊具ユニットの本体に対して相対的に移動させることによって、上下方向に変位させるように構成することにより、ガイド用戸車を配設したブロックが、傾斜面に沿って上下方向に変位するため、ガイド用戸車とレール内天面との隙間の微調整を容易に行うことができる。
【0018】
また、前記吊具ユニットの本体を、引戸に固定した内部に引戸の開閉方向に漸次高さが変わる傾斜面を形成した取付部材に、前記傾斜面に摺接する第2の移動ブロック及び第2のねじ部材を介して取り付け、該第2の移動ブロックを第2のねじ部材により、取付部材に対して相対的に移動させることによって、上下方向に変位させる上下方向調整機構を設けることにより、引戸をレールに吊り下げた後に、引戸の上面とレールの下面との間に生じる隙間を可及的に小さくすることができ、引戸によって仕切られる室内から室外又は室外から室内への明かり漏れを最小限に抑えることができる。
【0019】
また、前記吊具ユニットの本体を、引戸に固定した内部に引戸の木口面に対して角度をもった鉛直方向の平行に対向する傾斜面を形成した取付部材に、前記傾斜面に摺接する第3の移動ブロック及び第3のねじ部材を介して取り付け、該第3の移動ブロックを第3のねじ部材によって相対的に移動させることによって、引戸の木口面と平行方向に変位させる水平方向調整機構を設けることにより、引戸を、レールに載置される走行用戸車に対して、引戸の木口面と平行な水平方向に変位させることができ、これによって、上枠に取り付けたレールの走行面が正確に水平となっていない場合でも、対向する一対の走行用戸車の重心を通る鉛直線に対して、引戸の重心を通る鉛直線の位置を変位させ、レールの走行面に、対向する一対の走行用戸車が均等に当接させることができ、レールの破損や異音の発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の上吊式引戸装置の一実施例を示す要部拡大図である。
【図2】同上吊式引戸装置の吊具ユニットと取付部材とを示し、(a)平面図、(b)は正面図、(c)は側面図、(d)は底面図、(e)は(a)のX−X断面図、(f)は第1の移動ブロックの斜視図である。
【図3】吊具ユニットの本体を示し、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)はねじ部材の取り付け要領を説明する斜視図である。
【図4】同装置のレベル調整機構によって、ガイド用戸車を上方向に変位させた説明図で、(a)は一部切り欠き断面の正面図、(b)は一部切り欠きの側面図である。
【図5】同装置の上下方向調整機構及び水平方向調整機構の作動を説明する説明図で、(a)は上下方向調整機構によって、引戸を上方向に移動させた一部切り欠き断面の正面図、(b)はその側面図、(c)は水平方向調整機構によって、引戸を木口面と平行な水平方向に移動させた一部切り欠き断面の正面図、(d)はその底面図、(e)は(c)のY−Y断面図である。
【図6】従来の上吊式引戸装置を示す正面図である。
【図7】同上吊式引戸装置を示し、(a)は一部切り欠き断面の全体側面図、(b)はレールが傾いて取り付けられた場合を示す要部の側面図である。
【図8】同上吊式引戸装置の引戸の開閉動作のときに、斜め方向の力が加わった状態を示し、(a)は正面図、(b)は戸先側及び戸尻側の戸車を示す一部切り欠き断面の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の上吊式引戸装置の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0022】
図1〜図5に、本発明の上吊式引戸装置の一実施例を示す。
この上吊式引戸装置1は、引戸Dの上部に配設した吊具ユニット10をレール2に走行自在に取り付けて引戸Dを開閉するようにし、吊具ユニットの本体11に、レール2の走行面2Aを走行する走行用戸車3と、レール2の内天面2Bに当接可能にしたガイド用戸車4と、走行用戸車3とガイド用戸車4との高さ方向の間隔を調整するレベル調整機構5とを備えるようにしている。
【0023】
レール2は、従来例と同様に、開放側を下向きにした断面C字状構造とし、走行用戸車3が、レール2の下方両端から内側に向かって突設する走行面2Aに載置され、走行面2Aに載置された走行用戸車3の上部と距離Sの隙間を有する内天面2Bとから構成されている。
【0024】
吊具ユニットの本体11は、その上部に、レール2の走行面2Aを走行する走行用戸車3を回動自在に配設するとともに、レール2の内天面2Bに当接可能にしたガイド用戸車4を、レベル調整機構5により、走行用戸車3とガイド用戸車4との高さ方向の間隔を調整することによって、ガイド用戸車4の頂部とレール2の内天面2Bとの間隔を調整することができるように配設されている。
走行用戸車3及びガイド用戸車4の吊具ユニットの本体11への配設数は、特に限定されるものではないが、本実施例においては、走行用戸車3を吊具ユニットの本体11の上部両端に1つずつ、ガイド用戸車4を走行用戸車3の間に1つ配設するようにしている。
【0025】
レベル調整機構5は、走行用戸車3とガイド用戸車4との高さ方向の間隔を調整するもので、これによって、ガイド用戸車4の頂部とレール2の内天面2Bとの間隔を調整することができるものであれば、特に限定されるものではないが、本実施例においては、引戸Dの開閉方向に漸次高さが変わる傾斜面51Aに沿って、ガイド用戸車4を配設した第1の移動ブロック50を第1のねじ部材S1により、吊具ユニットの本体11に対して相対的に移動させることによって、上下方向に変位させるように構成している。
【0026】
具体的には、引戸Dの開閉方向と平行に回動自在に配設したねじ部材S1が螺合するねじ孔51Bと傾斜面51Aとを形成した傾斜ブロック51と、傾斜面51Aと摺接する摺接面50Aを備えたガイド用戸車4を配設した第1の移動ブロック50とから構成する。
第1の移動ブロック50及び傾斜ブロック51は、吊具ユニットの本体11の走行用戸車3、3間の切り欠かれた部分(上部の中央部)に配置し、傾斜ブロック51のねじ孔51Bは、ねじ部材S1と螺合し、ガイド用戸車4を配設した第1の移動ブロック50は、吊具ユニットの本体11の上部の切り欠いた中央部の側面との間で、図2(a)に示すように、蟻溝とほぞによって、上下方向の変位を許容して、抜け落ちることを防止するとともに、摺接面50Aを傾斜ブロック51の傾斜面51Aに当接するよう配置されている。
ねじ部材S1は、ドライバ等の工具によって回動させることができるとともに、第1の移動ブロック50を相対的に移動させることができるよう、回動させても頭部が移動しないように、図2、図3に示すように、半面を開放するように、U字状に切り欠いたねじ部材収納空間12Aに収納し、ドライバ等の工具による回動作業は許容するために、外部からねじ部材S1頭部の十字穴やすりわり部分(本実施例では十字穴)を覗かせるものの、吊具ユニットの本体11の突起部13Aによって、頭部の軸方向の移動を規制するようにしている。
【0027】
また、第1の移動ブロック50は、図2(f)に示すように、ねじ部材S1の頭部と傾斜ブロック51との間に位置させる場合には、その下面に、ねじ部材S1のねじ部分が挿通されるように切欠部50Bを形成するようにしている。
そして、ねじ部材S1を回動させることによって傾斜ブロック51が、引戸Dの開閉方向と平行に変位し、図例右側に変位することによって、傾斜面51Aに摺接する摺接面50Aが上方向への力を受けて、第1の移動ブロック50は上方に変位する。
これにより、走行用戸車3とガイド用戸車4との高さ方向の間隔が調整されることとなり、レール2の走行面2Aに載置されている走行用戸車3に対して、ガイド用戸車4が上下方向に移動し、ガイド用戸車4とレール2の内天面2Bとの間隔が調整される。
【0028】
ガイド用戸車4は、走行用戸車3とガイド用戸車4との高さ方向の間隔が調整によって、レール2の内天面2Bと当接するまで上方に変位させてもよいが、温度変化による熱膨張によって、引戸Dの作動に支障をきたすことがないように、若干の隙間が生じるように調整することが好ましい。
これにより、引戸Dにかかる力が、引戸Dの開閉方向と平行にならずに傾くこととなっても、ガイド用戸車4が、すぐにレール2の内天面2Bと当接し、引戸Dの傾きを最小限に抑え、走行用戸車3やレール2の破損を有効に防止することができる。
【0029】
また、吊具ユニットの本体11を、引戸Dに固定した内部に引戸Dの開閉方向に漸次高さが変わる傾斜面60を形成した取付部材20に、傾斜面60に摺接する第2の移動ブロック61及び第2のねじ部材S2を介して取り付け、第2の移動ブロック61を第2のねじ部材S2により、取付部材20に対して相対的に移動させることによって、上下方向に変位させる上下方向調整機構6を設けることができる。
【0030】
具体的には、吊具ユニットの本体11の下部に、図3(a)に示すように、取付部材20を取り付けるための空間である取付部14を、吊具ユニットの本体11の下部両端から延設されるフランジ11A、11Aと吊具ユニットの本体11の下部によって区画して形成し、取付部材20を第2の移動ブロック61及び第2のねじ部材S2を介して取り付ける。
【0031】
取付部材20は、内部に傾斜面60を形成する傾斜空間21を有し、傾斜空間21を貫通する引戸Dの開閉方向と平行な貫通孔22を形成している。
貫通孔22は、ねじ部材S2が挿通され移動する空間として機能する。
そして、傾斜空間21内に、第2の移動ブロック61を備え、第2の移動ブロック61を傾斜面60に沿って相対的に移動させるようにしている。
【0032】
第2の移動ブロック61は、引戸Dの開閉方向と平行にねじ孔61Aを螺刻し、フランジ11A、11Aに懸架されるねじ部材S2をねじ孔61Aに螺合し、ねじ部材S2を回動することによって、傾斜面60と摺接しながら引戸Dの開閉方向と平行に変位し、取付部材20を介して、引戸Dを上下方向に変位させる。
傾斜面60は、本実施例においては、図に示すように、平行に対向するように形成しているが、取付部材20が引戸Dの自重を受けるため、図例左側に設けるだけで引戸Dを上下方向に変位させることができる。
【0033】
傾斜空間21は、取付部材20の巾方向(水平方向)に貫通するように形成し、第2の移動ブロック61を傾斜空間21内で上下に等しい隙間をもたせた状態で位置させ、貫通孔22から挿通するねじ部材S2をねじ孔61Aに螺合する。
そして、取付部材20を取付部14に位置させるときに、ねじ部材S2をフランジ11A、11Aに形成したねじ部材収納空間12Bの奥に位置させる。
ねじ部材収納空間12Bは、ねじ部材収納空間12Aと同様に、半面を開放するように、U字状に切り欠いて構成し、ねじ部材S1と同様に、吊具ユニットの本体11の突起部13Bによって、ドライバ等の工具による回動作業は許容するものの、ねじ部材S2の軸方向の移動を規制するようにしている。
このように、ねじ部材収納空間12Bを水平方向に切り欠いても、第2の移動ブロック61は、傾斜面60から鉛直方向にしか力が加わらないため、取付部材20の上下方向の変位には問題は生じない。
【0034】
また、吊具ユニットの本体11を、引戸Dに固定した内部に引戸Dの木口面に対して角度をもった鉛直方向の平行に対向する傾斜面70、70を形成した取付部材20に、前記傾斜面70、70に摺接する第3の移動ブロック71及び第3のねじ部材S3を介して取り付け、第3の移動ブロック71を第3のねじ部材S3によって相対的に移動させることによって、引戸Dの木口面と平行方向に変位させる水平方向調整機構7を設けることができる。
【0035】
具体的には、上下方向調整機構6を設ける取付部材20と同様に、取付部材20を、吊具ユニットの本体11の下部両端から延設されるフランジ11A、11Aと吊具ユニットの本体11の下部によって区画して形成した取付部14に取り付け、取付部材20を第3の移動ブロック71及び第3のねじ部材S3を介して取付部材20に取り付ける。
【0036】
取付部材20は、内部に引戸Dの木口面に対して角度をもった鉛直方向の平行に対向する傾斜面70、70を形成する傾斜空間23を有し、傾斜空間23を貫通する引戸Dの開閉方向と平行な貫通孔24を形成している。
貫通孔24は、ねじ部材S3が挿通され移動する空間として機能する。
そして、傾斜空間23内に、第3の移動ブロック71を備え、第3の移動ブロック71を傾斜面70、70に沿って相対的に移動させるようにしている。
【0037】
第3の移動ブロック71は、引戸Dの開閉方向と平行にねじ孔71Aを螺刻し、フランジ11A、11Aに懸架されるねじ部材S3がねじ孔71Aに螺合され、ねじ部材S3を回動することによって、傾斜面70、70と摺接しながら引戸Dの木口面と平行な水平方向に変位し、取付部材20を介して、引戸Dを木口面と平行な水平方向に変位させる。
水平方向調整機構7の取付部材20に形成する傾斜面は、引戸Dの自重による作用を受けないため、傾斜面60と異なり、平行に対向して設ける必要がある。
【0038】
傾斜空間23は、取付部材20の下面側を開放するよう有底状に形成し、第3の移動ブロック71を底面視して傾斜面70、70以外の対向面と等しい隙間をもたせた状態で位置させ、貫通孔24から挿通するねじ部材S3を螺合し、取付部材20を取付部14に位置させるときに、ねじ部材S3をフランジ11A、11Aに形成したねじ部材収納空間12Cの奥に位置させる。
ねじ部材収納空間12Cは、上下方向調整機構6と同様に、半面を開放するように、U字状に切り欠いて構成し、ねじ部材S1、S2と同様に、吊具ユニットの本体11の突起部13Cによって、ドライバ等の工具による回動作業は許容するものの、ねじ部材S3の軸方向の移動を規制するようにしている。
このように、ねじ部材収納空間12Cを水平方向に切り欠いた場合、第2の移動ブロック61とは異なり、第3の移動ブロック71は、傾斜面70、70から水平方向の力が加わるため、取付部材20の水平方向の一方の変位に支障をきたすこととなる。
そのため、図3(c)に示すように、ねじ部材S3の頭部近傍を塞ぐ蓋部材74を配設し、第3の移動ブロック71を介して、ねじ部材S3にかかる水平方向の力を受けるようにして、第3の移動ブロック71の水平方向の変位に支障をきたさないようにしている。
【0039】
上下方向調整機構6及び水平方向調整機構7は、いずれか一方のみを設けることもできるが、図5に示すように、両方を設けることによって、1つの吊具ユニット10で引戸Dの上下方向及び木口面に対して平行な水平方向の調整を行うことができる。
【0040】
次に、この上吊式引戸装置1のレベル調整機構5、上下方向調整機構6及び水平方向調整機構7による調整方法を説明する。
【0041】
レベル調整機構5は、吊具ユニット10をレール2に取り付けた後であれば、吊具ユニット10と引戸Dとを連結する前後のいずれに行ってもよく、本実施例においては、引戸Dと連結した後に調整するようにした例を示す。
【0042】
まず、吊具ユニット10をレール2に取り付けた状態は、図1に示すように、ガイド用戸車4とレール2の内天面2Bとの間には距離Sの隙間がある。本実施例においては、ガイド用戸車4と外径が等しい走行用戸車3との高さ方向(鉛直方向)の間隔はこの状態で0で、高さ方向の間隔の距離をSとすることでガイド用戸車4とレール2の内天面2Bとが当接する。
【0043】
そして、図4に示すように、ねじ部材S1をドライバ等の工具で回動して、傾斜ブロック51の傾斜面51Aを、図例右側に移動させることによって、傾斜面51Aに当接している第1の移動ブロック50の摺接面50Aに上方向の力が加わり、第1の移動ブロック50は上方向に移動する。
【0044】
これによって、走行用戸車3とガイド用戸車4との間隔が調整され、ガイド用戸車4とレール2の内天面2Bとの隙間が小さくなり(又は当接し)、引戸Dの開閉動作のときに、引戸Dにかかる力が、引戸Dの開閉方向と平行にならずに傾くこととなっても、ガイド用戸車4が、すぐにレール2の内天面2Bと当接し(又は当接した状態であるから)、引戸Dの傾きを最小限に抑え、走行用戸車3の浮き上がりを抑制し、引戸を円滑に移動することができ、また、がたつきが少ないことから、走行用戸車3やレール2の破損を有効に防止することができる。
【0045】
上下方向調整機構6及び水平方向調整機構7による調整は、レール2の下面と引戸Dの上面との隙間の調整及び対向する一対の走行用戸車3の重心(吊具ユニット10の重心)を通る鉛直線と引戸Dの重心を通る鉛直線とを変位させるために行うものであるため、吊具ユニット10と引戸Dとを連結した後に行う。
【0046】
まず、上下方向調整機構6は、図5(a)〜図5(b)に示すように、ねじ部材S2をドライバ等の工具で回動して、第2の移動ブロック61を傾斜面60に沿って移動させ、第2の移動ブロック61を取付部材20に対して相対的に下方に移動させる。
これによって、吊具ユニットの本体11において、上下方向の位置が固定されているねじ部材S2と螺合している第2の移動ブロック61よりも取付部材20が上方に移動することとなり、引戸Dも上方に移動し、レール2の下面と引戸Dの上面との間に生じる隙間を可及的に小さくすることができ、引戸Dによって仕切られる室内から室外又は室外から室内への明かり漏れを最小限に抑えることができる。
【0047】
また、水平方向調整機構7は、図5(c)〜図5(e)に示すように、ねじ部材S3をドライバ等の工具で回動して、第3の移動ブロック71を傾斜面70、70に沿って移動させ、第3の移動ブロック71を取付部材20に対して相対的に木口面と平行な水平方向に移動させる。
【0048】
本実施例においては、図5(d)に示すように、引戸Dが側面視して右に移動するように調整し、吊具ユニット10の重心を通る鉛直線G1に対して、引戸Dの重心を通る鉛直線G2を距離Lだけずらすようにする。
これによって、側面視して若干左肩上がりに傾いているレール2の走行面2Aに対応し、レール2の走行面2Aに、対向する一対の走行用戸車3を均等に当接させることができ、レールの破損や異音の発生を抑えることができる。
【0049】
以上、本発明の上吊式引戸装置について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の上吊式引戸装置は、開閉動作時の力が斜め方向にかかっても、戸先側又は戸尻側の走行用戸車の一方が浮き上がって引戸が傾いた状態で移動することがないという特性を有していることから、レールの内天面と戸車との間に隙間のある上吊式引戸の用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0051】
1 上吊式引戸装置
10 吊具ユニット
11 吊具ユニットの本体
2 レール
2A 走行面
2B 内天面
3 走行用戸車
4 ガイド用戸車
5 レベル調整機構
6 上下方向調整機構
60 傾斜面
61 第2の移動ブロック
7 水平方向調整機構
70 傾斜面
71 第3の移動ブロック
20 取付部材
S1 第1のねじ部材
S2 第2のねじ部材
S3 第3のねじ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
引戸の上部に配設した吊具ユニットをレールに走行自在に取り付けて引戸を開閉するようにした上吊式引戸装置において、前記吊具ユニットの本体に、前記レールの走行面を走行する走行用戸車と、前記レールの内天面に当接可能にしたガイド用戸車と、走行用戸車とガイド用戸車との高さ方向の間隔を調整するレベル調整機構とを備えるようにしたことを特徴とする上吊式引戸装置。
【請求項2】
前記レベル調整機構を、引戸の開閉方向に漸次高さが変わる傾斜面に沿って、前記ガイド用戸車を配設した第1の移動ブロックを第1のねじ部材により、吊具ユニットの本体に対して相対的に移動させることによって、上下方向に変位させるように構成したことを特徴とする請求項1記載の上吊式引戸装置。
【請求項3】
前記吊具ユニットの本体を、引戸に固定した内部に引戸の開閉方向に漸次高さが変わる傾斜面を形成した取付部材に、前記傾斜面に摺接する第2の移動ブロック及び第2のねじ部材を介して取り付け、該第2の移動ブロックを第2のねじ部材により、取付部材に対して相対的に移動させることによって、上下方向に変位させる上下方向調整機構を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の上吊式引戸装置。
【請求項4】
前記吊具ユニットの本体を、引戸に固定した内部に引戸の木口面に対して角度をもった鉛直方向の平行に対向する傾斜面を形成した取付部材に、前記傾斜面に摺接する第3の移動ブロック及び第3のねじ部材を介して取り付け、該第3の移動ブロックを第3のねじ部材によって相対的に移動させることによって、引戸の木口面と平行方向に変位させる水平方向調整機構を設けたことを特徴とする請求項1、2又は3記載の上吊式引戸装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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