説明

上皮成長因子受容体キナーゼ阻害剤に対する抗癌応答を予測する生物学的マーカー

本発明は、EGFRキナーゼ阻害剤による癌患者の治療の有効性を予測する診断方法及び予後の方法を提供する。上皮及び/又は間葉バイオマーカーの発現レベルを測定することによって、腫よう細胞が上皮間葉転換(EMT)を起こすかどうかを評価することを含み、EMTを起こす腫よう細胞はEGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する感受性が実質的に低い、EGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう細胞増殖の感受性を予測する方法を提供する。上記方法論を取り入れた、EGFRキナーゼ阻害剤を用いて癌患者を治療する改善された方法も提供する。さらに、EGFRキナーゼ阻害剤に対する腫ようの応答性を予示する新しいバイオマーカーを特定する方法も提供する。また、EMTを起こした腫よう細胞の、EGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する、感受性を回復する薬剤を特定する方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌患者を診断し、治療する方法を対象とする。特に、本発明は、上皮成長因子受容体(EGFR)キナーゼ阻害剤を用いた治療から最も利点を得る患者を判定する方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
癌は、未制御の増殖、分化の欠如、及び局所組織に浸潤し、転移する能力を特徴とする、細胞の広範な悪性腫ようの一般名である。これらの新生物悪性腫ようは、体内のあらゆる組織及び器官において多様な罹患率で発症する。
【0003】
種々の癌を治療するために、複数の治療薬が過去数十年にわたって開発されてきた。最も一般に使用される抗癌剤タイプとしては、DNAアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、イホスファミド)、代謝拮抗剤(例えば、メトトレキセート、葉酸塩拮抗物質及び5−フルオロウラシル、ピリミジン拮抗物質)、微小管分裂剤(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、パクリタキセル)、DNAインターカレーター(例えば、ドキソルビシン、ダウノマイシン、シスプラチン)、ホルモン療法(例えば、タモキシフェン、フルタミド)などが挙げられる。
【0004】
上皮成長因子受容体(EGFR)ファミリーは、分化、増殖などの細胞応答に関与する4種類の密接に関係した受容体(HER1/EGFR、HER2、HER3及びHER4)を含む。EGFRキナーゼ又はそのリガンドTGF−アルファの過剰発現は、乳癌、肺癌、結腸直腸癌、卵巣癌、腎細胞癌、ぼうこう癌、頭頚部癌、グリア芽細胞腫及び星状細胞腫を含めて、多数の癌に付随することが多く、これらの腫ようの悪性増殖の一因であると考えられる。EGFR遺伝子における特定の欠失変異(EGFRvIII)によって、細胞の腫よう原性が増加することも見出された。EGFRによって刺激されるシグナル伝達経路の活性化は、潜在的に癌促進性である複数のプロセス、例えば増殖、血管新生、細胞運動性及び浸潤、アポトーシスの減少並びに薬剤耐性の誘導を促進する。HER1/EGFR発現の増大は、疾患の進行、転移及び予後不良と関連することが多い。例えば、NSCLC及び胃癌において、HER1/EGFR発現の増大は、高い転移率、腫よう分化不良、及び腫よう増殖の増大と相関することが判明した。
【0005】
受容体の内因性タンパク質チロシンキナーゼ活性を活性化する変異、及び/又は下流のシグナル伝達を増加させる変異が、NSCLC及びグリア芽細胞腫において認められた。しかし、EGF受容体阻害剤、例えばエルロチニブ(TARCEVA(商標))又はゲフィチニブ(IRESSA(商標))に対する感受性を付与する原理機序としての変異の役割には議論の余地がある。最近、完全長EGF受容体の変異体がEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤ゲフィチニブに対する応答性を予測することが報告された(Paez, J.G. et al. (2004) Science 304:1497−1500;Lynch, T.J. et al. (2004) N. Engl. J. Med. 350:2129−2139)。細胞培養試験によれば、EGF受容体の変異体を発現する細胞系(すなわちH3255)は、EGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤ゲフィチニブによる増殖阻害に対して感受性がより高く、野生型EGF受容体を発現する腫よう細胞系を阻害するには、はるかに高濃度のゲフィチニブが必要であった。これらの知見は、EGF受容体の特定の変異体がEGF受容体阻害剤に対してより大きな感受性を示し得ることを示唆しているが、完全に非応答性の表現型を特定してはいない。
【0006】
EGFRのキナーゼ活性を直接阻害する化合物、及びEGFRの活性化を遮断することによってEGFRキナーゼ活性を抑制する抗体を、抗腫よう剤として使用するための開発は、鋭意研究されている領域である(de Bono J.S. and Rowinsky, E.K. (2002) Trends in Mol. Medicine 8:S19−S26;Dancey, J. and Sausville, E.A. (2003) Nature Rev. Drug Discovery 2:92−313)。幾つかの研究によって、一部のEGFRキナーゼ阻害剤が、他のある種の抗癌薬若しくは治療又は化学療法薬若しくは治療と併用したときに、腫よう細胞又は新形成の死滅を改善し得ることが示され、開示され、又は示唆された(例えば、Herbst, R.S. et al. (2001) Expert Opin. Biol. Ther. 1:719−732;Solomon, B. et al (2003) Int. J. Radiat. Oncol. Biol. Phys. 55:713−723;Krishnan, S. et al. (2003) Frontiers in Bioscience 8, e1−13;Grunwald, V. and Hidalgo, M. (2003) J. Nat. Cancer Inst. 95:851−867;Seymour L. (2003) Current Opin. Investig. Drugs 4(6):658−666;Khalil, M.Y. et al. (2003) Expert Rev. Anticancer Ther.3:367−380;Bulgaru, A.M. et al. (2003) Expert Rev. Anticancer Ther.3:269−279;Dancey, J. and Sausville, E.A. (2003) Nature Rev. Drug Discovery 2:92−313;Ciardiello, F. et al. (2000) Clin. Cancer Res. 6:2053−2063及び米国特許出願公開第2003/0157104号)。
【0007】
エルロチニブ(例えば、TARCEVA(商標)又はOSI−774としても知られるエルロチニブHCl)は、経口用EGFRキナーゼ阻害剤である。インビトロで、エルロチニブは、結腸直腸癌及び乳癌を含めて、幾つかのヒト腫よう細胞系において、EGFRキナーゼに対して実質的な阻害活性を示し(Moyer J.D. et al. (1997) Cancer Res. 57:4838)、前臨床評価によって、EGFRを発現する幾つかのヒト腫よう異種移植片に対する活性が実証された(Pollack, V.A. et al (1999) J. Pharmacol. Exp. Ther. 291:739)。より最近では、エルロチニブは、第I相及び第II相試験において、頭頚部癌(Soulieres, D., et al. (2004) J. Clin. Oncol. 22:77)、NSCLC(Perez−Soler R, et al. (2001) Proc. Am. Soc. Clin. Oncol. 20:310a, abstract 1235)、CRC(Oza, M., et al. (2003) Proc. Am. Soc. Clin. Oncol. 22:196a, abstract 785)及びMBC(Winer, E., et al. (2002) Breast Cancer Res. Treat. 76:5115a, abstract 445)を含めて、幾つかの適応症において有望な活性を示した。第III相試験において、エルロチニブ単独療法は、進行性難治性NSCLC患者において、有意に延命し、疾患の進行を遅延させ、肺癌に関連した症候の悪化を遅延させた(Shepherd, F. et al. (2004) J. Clin. Oncology, 22:14S(July 15 Supplement), Abstract 7022)。エルロチニブの臨床試験データの大部分はNSCLCにおける使用に関係しているが、第I/II相試験の予備的結果によって、CRC(Oza, M., et al. (2003) Proc. Am. Soc. Clin. Oncol. 22:196a, abstract 785)及びMBC(Jones, R.J., et al. (2003) Proc. Am. Soc. Clin. Oncol. 22:45a, abstract 180)を含めて、広範なヒト固形腫ようタイプの患者において、エルロチニブ及びカペシタビン/エルロチニブ併用療法の有望な活性が実証された。2004年11月に、米国食品医薬品局(FDA)は、少なくとも1つの化学療法計画が失敗した後の局所進行性又は転移性非小細胞肺癌(NSCLC)患者の治療にTARCEVA(商標)を認可した。TARCEVA(商標)は、第III相臨床試験において進行性NSCLC患者を延命させた、上皮成長因子受容体(EGFR)クラスの唯一の薬物である。
【0008】
抗新生物薬は、非悪性細胞に対するその毒性の割に治療指数が広く、癌細胞を選択的に死滅させることが理想的である。また、抗新生物薬は、該薬物に長時間暴露した後でも、悪性細胞に対してその効力を保持することが理想的である。残念ながら、現行の化学療法のいずれも、かかる理想的な特性を持たない。むしろ、大部分は、極めて狭い治療指数を有する。また、致死濃度をわずかに下回る化学療法薬に暴露された癌細胞は、かかる薬剤に対して耐性を獲得することが極めて多く、幾つかの他の抗腫よう薬に対しても交差耐性を獲得することが頻繁にある。さらに、任意の所与の癌タイプに対して、特定の治療に応答する可能性がある患者を予測することは、EGFRキナーゼ阻害剤などのより新しい遺伝子標的療法でも不可能であることが多く、したがって、最も有効な療法を見出すためにかなりの試行錯誤を必要とし、患者に対してかなりのリスクと不快感を与えることが多い。
【0009】
したがって、新形成及び他の増殖性障害に対するより効果的な治療、及びどの腫ようがどの治療に応答するかを決定するより有効な手段が求められている。既存薬物の治療効力を高める戦略は、その投与スケジュールの変更が必要であり、他の抗癌剤又は生化学的調節剤との併用も必要である。併用療法は、各薬剤単体の治療上妥当な用量を使用するよりも、効力が大きく、副作用が減少し得る方法としてよく知られている。多剤併用の効力が相加的である(併用の効力が各薬物単体の効果の合計にほぼ等しい。)場合もあるが、効果が相乗的である(併用の効力が、単体投与された各薬物の効果の合計よりも大きい。)場合もある。
【0010】
エルロチニブなどの標的特異的治療手法は、一般に、従来の細胞毒性薬よりも毒性が低く、したがって併用投薬計画に使用するのに向いている。ベバシズマブ(Mininberg, E.D., et al. (2003) Proc. Am. Soc. Clin. Oncol. 22:627a, abstract 2521)及びゲムシタビン(Dragovich, T.,(2003) Proc. Am. Soc. Clin. Oncol. 22:223a, abstract 895)と組み合わせたエルロチニブの第I/II相試験において有望な結果が認められた。NSCLC第III相試験における最近のデータによれば、標準化学療法と組み合わせた第1選択エルロチニブ又はゲフィチニブは、生存を改善しなかった(Gatzemeier, U., (2004) Proc. Am. Soc. Clin. Oncol. 23:617 (Abstract 7010);Herbst, R.S., (2004) Proc. Am. Soc. Clin. Oncol. 23:617(Abstract 7011);Giaccone, G., et al. (2004) J. Clin. Oncol. 22:777;Herbst, R., et al. (2004) J. Clin. Oncol. 22:785)。しかし、すい癌の第III相試験によれば、ゲムシタビンと組み合わせた第1選択エルロチニブは生存を改善した(OSI Pharmaceuticals/Genentech/Roche Pharmaceuticals Press Release, 9/20/04)。
【0011】
幾つかのグループが、EGFR阻害剤に対する患者の応答を予測するバイオマーカー候補を検討した(例えば、国際公開第2004/063709号、同2005/017493号、同2004/111273号、同2004/071572号、同2005/117553号及び同2005/070020号並びに米国特許出願公開第2005/0019785号及び同2004/0132097号参照)。しかし、EGFRキナーゼ阻害剤による患者の治療において開業医を手引することができる診断試験又は予後の試験はまだ出現していない。
【0012】
大部分の癌転移中には、腫よう細胞において、上皮間葉転換(EMT)として知られる重要な変化が生じる(Thiery, J.P. (2002) Nat. Rev. Cancer 2:442−454;Savagner, P. (2001) Bioessays 23:912−923;Kang Y. and Massague, J. (2004) Cell 118:277−279;Julien−Grille, S., et al. Cancer Research 63:2172−2178;Bates, R.C. et al. (2003) Current Biology 13:1721−1727;Lu Z., et al. (2003) Cancer Cell. 4(6):499−515))。上皮細胞は、堅固に結合し、方向性を示し、間葉細胞を生じる。間葉細胞は、より緩く結合し、方向性がなく、移動能を有する。この間葉細胞は、最初の腫ようを包囲する組織中に拡散し、腫ようから分離し、血管及びリンパ管に侵入し、新しい場所に移行し、そこで分裂し、別の腫ようを形成し得る。EMTは、胚形成中を除いて、正常細胞中では生じない。通常の状況では、TGF−βは増殖抑制物質として作用する。しかし、癌転移中には、TGF−βはEMTを促進すると考えられる。
【0013】
したがって、かかる阻害剤を単剤として使用しても、他の抗癌剤と併用しても、任意の特定の癌患者に対する最適な治療様式を決定する改善された方法に対して、また、癌患者に対するより有効な治療計画にかかる決定を組み入れることに対して、重大な要望が依然として存在する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、EGFRキナーゼ阻害剤による癌患者の治療の有効性を予測する診断方法及び予後の方法を提供する。EGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう細胞増殖の感受性が、かかる腫よう細胞がEMTを起こすかどうかに依存するという驚くべき発見に基づいて、EGFRキナーゼ阻害剤に対する腫よう細胞の感受性を予測する上皮及び/又は間葉バイオマーカーを測定する方法を考案した。
【課題を解決するための手段】
【0015】
したがって、本発明は、腫よう細胞によって発現される上皮バイオマーカーのレベルを評価すること、及びEGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう細胞増殖の感受性を予測することを含み、腫よう細胞上皮バイオマーカーの高い発現レベルがEGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する高い感受性と相関する、EGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう細胞増殖の感受性を予測する方法を提供する。
【0016】
本発明は、腫よう細胞によって発現される間葉バイオマーカーのレベルを評価すること、及びEGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう細胞増殖の感受性を予測することを含み、腫よう細胞間葉バイオマーカーの高い発現レベルがEGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する低い感受性と相関する、EGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう細胞増殖の感受性を予測する方法も提供する。
【0017】
上記方法論を取り入れた、EGFRキナーゼ阻害剤を用いて癌患者を治療する改善された方法も提供する。したがって、本発明は、さらに、腫よう細胞が上皮間葉転換を起こすかどうかを評価することによって、EGFRキナーゼ阻害剤に対する患者の想定される応答性を診断する段階と、EGFRキナーゼ阻害剤の治療有効量を前記患者に投与する段階とを含む、患者における腫よう又は腫よう転移を治療する方法も提供する。
【0018】
さらに、EGFRキナーゼ阻害剤に対する腫ようの応答性を予示する新しい上皮又は間葉バイオマーカーを特定する方法も提供する。
【0019】
したがって、例えば、本発明は、さらに、腫よう性症状の患者から得られた新生細胞含有試料中の上皮バイオマーカー候補のレベルを測定すること、及び患者から得られた試料中の前記上皮バイオマーカー候補のレベルとEGFRキナーゼ阻害剤による腫よう性症状の治療の有効性との相関を求めることを含み、上皮バイオマーカーの高いレベルとEGFRキナーゼ阻害剤による腫よう性症状のより有効な治療との相関によって、前記上皮バイオマーカーが、EGFRキナーゼ阻害剤による腫よう性症状のより有効な治療の指標になることが示される、EGFRキナーゼ阻害剤を用いた腫よう性症状のより有効な治療の指標になる上皮バイオマーカーを特定する方法も提供する。
【0020】
本発明は、さらに、(a)腫よう性症状の患者から得られた新生細胞含有試料中の間葉バイオマーカー候補のレベルを測定すること、及び(b)患者から得られた試料中の前記間葉バイオマーカー候補のレベルとEGFRキナーゼ阻害剤による腫よう性症状の治療の有効性との相関を求めることを含み、間葉バイオマーカーの高いレベルとEGFRキナーゼ阻害剤による腫よう性症状のさほど有効でない治療との相関によって、前記間葉バイオマーカーが、EGFRキナーゼ阻害剤による腫よう性症状のさほど有効でない治療の指標になることが示される、EGFRキナーゼ阻害剤を用いた腫よう性症状のさほど有効でない治療の指標になる間葉バイオマーカーを特定する方法も提供する。
【0021】
また、EMTを起こした腫よう細胞の、EGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する、感受性を回復する薬剤を特定する方法も提供する。したがって、例えば、本発明は、腫よう細胞が、以前に上皮間葉転換した腫よう細胞として特徴づけられ、前記腫よう細胞の試料をEGFRキナーゼ阻害剤と接触させること、前記腫よう細胞の同一試料を試験薬剤の存在下でEGFRキナーゼ阻害剤と接触させること、EGFRキナーゼ阻害剤によって媒介される増殖阻害を試験薬剤の存在下と非存在下で比較すること、並びに試験薬剤がEGFRキナーゼ阻害剤に対する腫よう細胞増殖の感受性を高める薬剤であるかどうかを判定することを含む、EGFRキナーゼ阻害剤に対する腫よう細胞増殖の感受性を高める薬剤を特定する方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
動物における「癌」という用語は、抑制されない増殖、不死、転移能、急速な成長及び増殖速度、ある種の特徴的な形態など、発癌細胞の典型的な特性を有する細胞の存在を指す。癌細胞は、腫ようの形態であることが多いが、かかる細胞は、動物内に単独で存在し得、又は白血病細胞などの独立細胞として血中を循環し得る。
【0023】
本明細書では「異常な細胞増殖」とは、別段の記載がないかぎり、正常な調節機構とは無関係である細胞増殖(例えば、接触阻止の喪失)を指す。「異常な細胞増殖」としては、(1)変異チロシンキナーゼの発現又は受容体チロシンキナーゼの過剰発現によって増殖する腫よう細胞(腫よう)、(2)異常なチロシンキナーゼ活性化が起こる他の増殖性疾患の良性及び悪性細胞、(4)受容体チロシンキナーゼによって増殖するあらゆる腫よう、(5)異常なセリン/トレオニンキナーゼ活性化によって増殖するあらゆる腫よう並びに(6)異常なセリン/トレオニンキナーゼ活性化が起こる他の増殖性疾患の良性及び悪性細胞、の異常な増殖などが挙げられる。
【0024】
本明細書では「治療する」という用語は、別段の記載がないかぎり、患者における腫よう、腫よう転移又は他の発癌細胞若しくは新生細胞の進行の逆転、緩和、阻害、或いは腫よう、腫よう転移又は他の発癌細胞若しくは新生細胞の増殖の部分的又は完全な抑制を意味する。本明細書では「治療」という用語は、別段の記載がないかぎり、治療行為を指す。
【0025】
「治療方法」という句又はその等価な句は、例えば、癌に適用するときには、動物における癌細胞数を減少させる、若しくはゼロにするように設計された、又は癌の症候を軽減するように設計された手順若しくは方針を指す。癌又は別の増殖性障害の「治療方法」は、癌細胞若しくは他の障害が実際に除去されること、細胞数若しくは障害が実際に抑制されること、又は癌若しくは他の障害の症候が実際に軽減することを必ずしも意味しない。癌を治療する方法は、成功の可能性が低い場合でも実施され、動物の病歴及び推定余命を考慮して、それでも全体として有益な方針と考えられるものであることが多い。
【0026】
「治療有効薬剤」という用語は、研究者、獣医師、医師又は他の臨床家によって求められる、組織、系、動物又はヒトの生物学的又は医学的応答を誘発する組成物を意味する。
【0027】
「治療有効量」又は「有効量」という用語は、研究者、獣医師、医師又は他の臨床家によって求められる、組織、系、動物又はヒトの生物学的又は医学的応答を誘発する対象化合物又は組合せの量を意味する。
【0028】
以下の本明細書の実施例に示すデータによれば、細胞培養又はインビボで増殖された、野生型EGFRを含む、NSCLC、すい癌細胞などの腫よう細胞は、上皮間葉転換(EMT)を起こしたかどうかによって、EGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対してある範囲の感受性を示す。EMT前には、腫よう細胞は、エルロチニブHCl(TARCEVA(商標))などのEGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対して感受性が極めて高いが、EMTを起こした腫よう細胞は、かかる化合物による阻害に対する感受性がかなり低い。このデータは、EMTが、EGFRキナーゼ阻害剤に対する腫ようの感受性レベルを決定する「全般的な生物学的スイッチ」であり得ることを示している。EMT現象の前に、又はそれに続いて、腫よう細胞によって発現される、細胞に特徴的であるバイオマーカーのレベルを測定することによって、EGFRキナーゼ阻害剤に対する腫ようの感受性レベルを評価できることが実証された。例えば、E−カドヘリンなどの上皮バイオマーカーの腫よう細胞発現レベルが高いことは、EMTをまだ起こしていない細胞を示し、EGFRキナーゼ阻害剤に対する高い感受性と相関する。逆に、ビメンチン、フィブロネクチンなどの間葉バイオマーカーの腫よう細胞発現レベルが高いことは、EMTを起こした細胞を示し、EGFRキナーゼ阻害剤に対する低い感受性と相関する。したがって、これらの知見は、腫よう増殖に対するEGFRキナーゼ阻害剤の効果を予測する貴重な新しい診断法の基礎を形成し得るものであり、患者に対して最も適切な治療を選択するのに役立つ追加のツールを腫よう専門医に提供することができる。
【0029】
したがって、本発明は、腫よう細胞によって発現される上皮バイオマーカーのレベルを評価すること、及びEGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう細胞増殖の感受性を予測することを含み、腫よう細胞上皮バイオマーカーの高い発現レベルがEGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する高い感受性と相関する、EGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう細胞増殖の感受性を予測する方法を提供する。上皮バイオマーカーの好ましい例としてはE−カドヘリン及びBrk(すなわちPTK−6)が挙げられる(表1参照)。本発明による方法に利用することができる上皮バイオマーカーの追加の例としては、γ−カテニン(すなわち、ジャンクションプラコグロビン)、α−カテニン(すなわちα1、α2又はα3カテニン)、ケラチン8、ケラチン18、コネキシン31、プラコフィリン3、stratafin 1、ラミニンアルファ−5及びST14(表1参照)が挙げられる。
【0030】
本発明は、腫よう細胞によって発現される間葉バイオマーカーのレベルを評価すること、及びEGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう細胞増殖の感受性を予測することを含み、腫よう細胞間葉バイオマーカーの高い発現レベルがEGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する低い感受性と相関する、EGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう細胞増殖の感受性を予測する方法も提供する。間葉バイオマーカーの好ましい例としてはビメンチン及びフィブロネクチンが挙げられる(表1参照)。本発明による方法に利用することができる間葉バイオマーカーの追加の例としては、フィブリリン−1、フィブリリン−2、コラーゲンアルファ−2(IV)、コラーゲンアルファ−2(V)、LOXL1、ニドジェン、C11orf9、テネイシン、N−カドヘリン及び胚性EDBフィブロネクチン、チューブリンアルファ−3及びエピモルフィンが挙げられる(表1参照)。
【0031】
本発明の実施においては、好ましい上皮バイオマーカーを用いると、EGFRキナーゼ阻害剤に対して感受性が高い腫よう細胞における発現レベルは、一般に、バイオマーカーを、例えば特異的抗バイオマーカー抗体を検出に用いて、極めて容易に検出することができるような高いレベルである。好ましい上皮バイオマーカーを用いると、EGFRキナーゼ阻害剤に対して感受性の比較的低い腫よう細胞における発現レベルは、一般に、バイオマーカーが、類似の手順を用いて、検出されたとしてもわずかであるような低いレベルである(例えば、以下の本明細書の実施例に記載のデータにおいて、図2B、3及び5中の感受性の高い腫よう細胞と感受性の比較的低い腫よう細胞のE−カドヘリンレベルを比較されたい。)。
【0032】
しかし、他のさほど好ましくない上皮バイオマーカーの場合には、EGFRキナーゼ阻害剤に対して感受性の比較的低い腫よう細胞におけるバイオマーカー発現レベルは、容易に検出可能であり得るが、それでも、EGFRキナーゼ阻害剤に対して感受性が高い腫よう細胞よりもかなり低い発現レベルである(例えば、以下の本明細書の実施例に記載のデータにおいて、図2B中の感受性の比較的低い腫よう細胞H1703又はSW1573と感受性の高い腫よう細胞H441、H358、H322及びH292のα−カテニンレベルを比較されたい。)。
【0033】
同様に、本発明の実施においては、好ましい間葉バイオマーカーを用いると、EGFRキナーゼ阻害剤に対して感受性の比較的低い腫よう細胞における発現レベルは、一般に、バイオマーカーを、例えば特異的抗バイオマーカー抗体を検出に用いて、極めて容易に検出することができるような高いレベルである。好ましい間葉バイオマーカーを用いると、EGFRキナーゼ阻害剤に対して感受性の比較的高い腫よう細胞における発現レベルは、一般に、バイオマーカーが、類似の手順を用いて、検出されたとしてもわずかであるような低いレベルである(例えば、以下の本明細書の実施例に記載のデータにおいて、図2B、3及び5中の感受性の高い腫よう細胞と感受性の比較的低い腫よう細胞のフィブロネクチン又はビメンチンレベルを比較されたい。)。
【0034】
また、他のさほど好ましくない間葉バイオマーカーの場合には、EGFRキナーゼ阻害剤に対して感受性の比較的高い腫よう細胞におけるバイオマーカー発現レベルは、容易に検出可能であり得るが、それでも、EGFRキナーゼ阻害剤に対して感受性の比較的低い腫よう細胞よりもかなり低い発現レベルである。
【0035】
任意の所与の上皮又は間葉バイオマーカーの場合、EGFRキナーゼ阻害剤に対して感受性の比較的低い腫よう細胞と感受性の高い腫よう細胞の発現レベルの範囲は、例えば、本明細書に記載の腫よう細胞パネル上で試験することによって(例えば、図2B)、又は腫ようがEGFRキナーゼ阻害剤(例えば、TARCEVA(商標))に対してある範囲の感受性を示す患者から得られた腫よう生検の試験によって、当業者によって容易に評価することができる。
【0036】
本発明に関連して、EGFRキナーゼ阻害剤に対して感受性の比較的低い腫よう細胞の割合が比較的小さい場合には、単一のバイオマーカーレベルのみを評価する状況において、腫よう細胞によって発現される上皮又は間葉バイオマーカーのレベルを評価することを含む、EGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう細胞増殖の感受性を予測する上記方法は、腫よう細胞増殖が、EGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対して感受性が高いことを誤って予測する恐れがある。例えば、以下の本明細書の実施例に記載のデータにおいて、H460腫よう細胞中の上皮バイオマーカーγ−カテニン及びα−カテニンのレベル、又はH1703細胞中の間葉バイオマーカーフィブロネクチンのレベルは、EGFRキナーゼ阻害剤に対する高い感受性を誤って予測する(図2B参照)。したがって、かかる誤った予測に基づいて、医師は、EGFRキナーゼ阻害剤を用いて少数の患者を治療する恐れがあり、腫ようは、阻害剤に対して感受性を示さない恐れがある。しかし、腫よう細胞の大多数(例えば、以下の本明細書の実施例に記載のデータから、少なくとも90%)では、単一のバイオマーカー発現レベルの評価によって、EGFRキナーゼ阻害剤に対する感受性レベルが正確に予測されると期待される。
【0037】
また、本発明に関連して最も重要なことには、上記方法によって試験したとき(単一のバイオマーカーレベルのみを評価する場合)、腫よう細胞増殖がEGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対して低感受性であるという誤った予測を与える、EGFRキナーゼ阻害剤に対して感受性が高い腫よう細胞は見出されなかった。したがって、本明細書に記載の試験方法を利用することによって、患者がEGFRキナーゼ阻害剤による治療から利点を得ることができる場合に、医師がかかる治療を差し控えることはないはずである。
【0038】
また、医薬分野の当業者は、特に診断テスト及び治療用物質(therapeutics)による治療の適用に関して、生体系は幾らか可変であり、完全に予測可能では必ずしもなく、したがって多数の良好な診断テスト又は治療用物質が無効である場合もあることを理解している。したがって、試験結果、患者の症状及び病歴並びに主治医の経験に基づいて、個々の患者に最適な治療コースを決定するのは、最終的には主治医の判断による。例えば、診断テスト又は他の判定基準から得られるデータに基づいて、腫ようがEGFRキナーゼ阻害剤に対して特に感受性であると予測されないときでも、特に、他の明白な治療選択肢の全部若しくは大部分が失敗した場合、又は別の治療と併用したときにある相乗作用が予測される場合には、医師がEGFRキナーゼ阻害剤を用いて患者を治療することを選択する場合さえある。EGFRキナーゼ阻害剤は、薬物クラスとして、癌治療に使用されるより伝統的な化学療法又は細胞毒性薬などの多数の他の抗癌薬よりも比較的耐容性が良好であることから、EGFRキナーゼ阻害剤はより実行可能な選択肢になっている。
【0039】
E−カドヘリンなどの本発明における使用に適切な上皮バイオマーカーの好ましい例は、上記方法に使用したときに(単一のバイオマーカーレベルのみを評価する場合)、誤った予測をもたらさない。
【0040】
また、本発明は、腫よう細胞における1種類を超えるバイオマーカーレベルの発現レベルの同時評価を利用する追加の方法も提供する。(以下に記述する)これらの方法の好ましい実施形態においては、単一のバイオマーカー発現レベルを評価する上記方法の幾つかの場合と同様に、誤った予測のレベルがない。
【0041】
したがって、本発明は、腫よう細胞によって発現される1種類以上の(又は1パネルの)上皮バイオマーカーのレベルを評価すること、及びEGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう細胞増殖の感受性を予測することを含み、腫よう細胞上皮バイオマーカー全部の同時の高い発現レベルがEGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する高い感受性と相関する、EGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう細胞増殖の感受性を予測する方法を提供する。この方法の好ましい一実施形態においては、上皮バイオマーカーはE−カドヘリン及びBrkを含み、2種類の腫よう細胞上皮バイオマーカーの同時の高い発現レベルは、EGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する高い感受性と相関する。この方法の別の好ましい実施形態においては、上皮バイオマーカーはE−カドヘリン及びγ−カテニンを含み、2種類の腫よう細胞上皮バイオマーカーの同時の高い発現レベルは、EGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する高い感受性と相関する。後半の2つの好ましい実施形態においては、両方のバイオマーカーの高い発現レベルが、高い感受性を示すのに必要であることに注意されたい。
【0042】
本発明は、腫よう細胞によって発現される1種類以上の(又は1パネルの)間葉バイオマーカーのレベルを評価すること、及びEGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう細胞増殖の感受性を予測することを含み、腫よう細胞間葉バイオマーカー全部の同時の低い又は検出不可能な発現レベルがEGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する高い感受性と相関する、EGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう細胞増殖の感受性を予測する方法も提供する。この方法の好ましい一実施形態においては、間葉バイオマーカーはビメンチン及びフィブロネクチンを含み、2種類の腫よう細胞間葉バイオマーカーの同時の低い又は検出不可能な発現レベルは、EGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する高い感受性と相関する。後半の好ましい実施形態においては、両方のバイオマーカーの低い又は検出不可能な発現レベルが、高い感受性を示すのに必要であることに注意されたい。
【0043】
本発明は、腫よう細胞によって発現される上皮バイオマーカーのレベルを評価すること、腫よう細胞によって発現される間葉バイオマーカーのレベルを評価すること、及びEGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう細胞増殖の感受性を予測することを含み、上皮バイオマーカー発現レベルと間葉バイオマーカー発現レベルとの高い比がEGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する高い感受性と相関する、EGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう細胞増殖の感受性を予測する方法も提供する。この方法の好ましい一実施形態においては、上皮バイオマーカーはE−カドヘリンを含み、間葉バイオマーカーはフィブロネクチンを含む。この方法の別の好ましい実施形態においては、上皮バイオマーカーはBrkを含み、間葉バイオマーカーはフィブロネクチンを含む。この方法の別の好ましい実施形態においては、上皮バイオマーカーはE−カドヘリンを含み、間葉バイオマーカーはビメンチンを含む。この方法の別の好ましい実施形態においては、上皮バイオマーカーはγ−カテニンを含み、間葉バイオマーカーはフィブロネクチンを含む。
【0044】
本発明は、腫よう細胞によって発現される1種類以上の(又は1パネルの)上皮バイオマーカーのレベルを評価すること、及びEGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう増殖の感受性を予測することを含み、腫よう細胞上皮バイオマーカー全部の同時の高い発現レベルがEGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する高い感受性と相関する、EGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう増殖の感受性を予測する方法も提供する。この方法の好ましい一実施形態においては、上皮バイオマーカーはE−カドヘリン及びBrkを含み、2種類の腫よう細胞上皮バイオマーカーの同時の高い発現レベルは、EGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する高い感受性と相関する。この方法の別の好ましい実施形態においては、上皮バイオマーカーはE−カドヘリン及びγ−カテニンを含み、2種類の腫よう細胞上皮バイオマーカーの同時の高い発現レベルは、EGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する高い感受性と相関する。後半の2つの好ましい実施形態においては、両方のバイオマーカーの高い発現レベルが、高い感受性を示すのに必要であることに注意されたい。
【0045】
本発明は、腫よう細胞によって発現される1種類以上の(又は1パネルの)間葉バイオマーカーのレベルを評価すること、及びEGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう増殖の感受性を予測することを含み、腫よう細胞間葉バイオマーカー全部の同時の低い又は検出不可能な発現レベルがEGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する高い感受性と相関する、EGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう増殖の感受性を予測する方法も提供する。この方法の好ましい一実施形態においては、間葉バイオマーカーはビメンチン及びフィブロネクチンを含み、2種類の腫よう細胞間葉バイオマーカーの同時の低い又は検出不可能な発現レベルは、EGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する高い感受性と相関する。後半の好ましい実施形態においては、両方のバイオマーカーの低い又は検出不可能な発現レベルが、高い感受性を示すのに必要であることに注意されたい。
【0046】
本発明は、腫よう細胞によって発現される上皮バイオマーカーのレベルを評価すること、腫よう細胞によって発現される間葉バイオマーカーのレベルを評価すること、及びEGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう増殖の感受性を予測することを含み、上皮バイオマーカー発現レベルと間葉バイオマーカー発現レベルとの高い比がEGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する高い感受性と相関する、EGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう増殖の感受性を予測する方法も提供する。この方法の好ましい一実施形態においては、上皮バイオマーカーはE−カドヘリンを含み、間葉バイオマーカーはフィブロネクチンを含む。この方法の別の好ましい実施形態においては、上皮バイオマーカーはBrkを含み、間葉バイオマーカーはフィブロネクチンを含む。この方法の別の好ましい実施形態においては、上皮バイオマーカーはE−カドヘリンを含み、間葉バイオマーカーはビメンチンを含む。この方法の別の好ましい実施形態においては、上皮バイオマーカーはγ−カテニンを含み、間葉バイオマーカーはフィブロネクチンを含む。
【0047】
本発明は、腫よう細胞によって発現される1種類以上の(又は1パネルの)上皮バイオマーカーのレベルを評価すること、及び腫ようがEGFRキナーゼ阻害剤による治療に有効に応答するかどうかを予測することを含み、腫よう細胞上皮バイオマーカー全部の同時の高い発現レベルがEGFRキナーゼ阻害剤による治療に有効に応答する腫ようと相関する、癌患者が、EGFRキナーゼ阻害剤による治療に有効に応答する腫ように罹患しているかどうかを予測する方法も提供する。この方法の好ましい一実施形態においては、上皮バイオマーカーはE−カドヘリン及びBrkを含み、2種類の腫よう細胞上皮バイオマーカーの同時の高い発現レベルは、EGFRキナーゼ阻害剤による治療に有効に応答する腫ようと相関する。この方法の別の好ましい実施形態においては、上皮バイオマーカーはE−カドヘリン及びγ−カテニンを含み、2種類の腫よう細胞上皮バイオマーカーの同時の高い発現レベルは、EGFRキナーゼ阻害剤による治療に有効に応答する腫ようと相関する。後半の2つの好ましい実施形態においては、両方のバイオマーカーの高い発現レベルが、EGFRキナーゼ阻害剤による治療に有効に応答する腫ようを示すのに必要であることに注意されたい。
【0048】
本発明は、腫よう細胞によって発現される1種類以上の(又は1パネルの)間葉バイオマーカーのレベルを評価すること、及び腫ようがEGFRキナーゼ阻害剤による治療に有効に応答するかどうかを予測することを含み、腫よう細胞間葉バイオマーカー全部の同時の低い又は検出不可能な発現レベルがEGFRキナーゼ阻害剤による治療に有効に応答する腫ようと相関する、癌患者が、EGFRキナーゼ阻害剤による治療に有効に応答する腫ように罹患しているかどうかを予測する方法も提供する。この方法の好ましい一実施形態においては、間葉バイオマーカーはビメンチン及びフィブロネクチンを含み、2種類の腫よう細胞間葉バイオマーカーの同時の低い又は検出不可能な発現レベルは、EGFRキナーゼ阻害剤による治療に有効に応答する腫ようと相関する。後半の好ましい実施形態においては、両方のバイオマーカーの低い又は検出不可能な発現レベルが、EGFRキナーゼ阻害剤による治療に有効に応答する腫ようを示すのに必要であることに注意されたい。
【0049】
本発明は、腫よう細胞によって発現される上皮バイオマーカーのレベルを評価すること、腫よう細胞によって発現される間葉バイオマーカーのレベルを評価すること、及び腫ようがEGFRキナーゼ阻害剤による治療に有効に応答するかどうかを予測することを含み、上皮バイオマーカー発現レベルと間葉バイオマーカー発現レベルとの高い比がEGFRキナーゼ阻害剤による治療に有効に応答する腫ようと相関する、癌患者が、EGFRキナーゼ阻害剤による治療に有効に応答する腫ように罹患しているかどうかを予測する方法も提供する。この方法の好ましい一実施形態においては、上皮バイオマーカーはE−カドヘリンを含み、間葉バイオマーカーはフィブロネクチンを含む。この方法の別の好ましい実施形態においては、上皮バイオマーカーはBrkを含み、間葉バイオマーカーはフィブロネクチンを含む。この方法の別の好ましい実施形態においては、上皮バイオマーカーはE−カドヘリンを含み、間葉バイオマーカーはビメンチンを含む。この方法の別の好ましい実施形態においては、上皮バイオマーカーはγ−カテニンを含み、間葉バイオマーカーはフィブロネクチンを含む。
【0050】
本発明の方法に関連して、腫よう細胞によって発現されるバイオマーカーは、腫よう細胞の転換状態を示す分子マーカー及び細胞マーカーを含むことができる。好ましい実施形態においては、バイオマーカーは、腫ようの特定の転換状態、すなわち上皮若しくは間葉特性を示す腫ように特徴的な個々のマーカータンパク質、又はそれをコードするmRNAである。別の実施形態においては、ある種の状況において、バイオマーカーは、上皮状態又は間葉状態に特徴的である細胞の巨大分子によって、腫よう細胞中に形成される特徴的な形態学的パターンであり得る。
【0051】
【表1】

1. NCBI GeneID番号は、NCBI Entrez Geneデータベース記録由来のバイオマーカー遺伝子の一意の識別名である(National Center for Biotechnology Information (NCBI), U.S. National Library of Medicine, 8600 Rockville Pike, Building 38A, Bethesda, MD 20894;Internet address http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)。
【0052】
2. NCBI RefSeq(基準配列)はバイオマーカー遺伝子によって発現される配列の例である。
【0053】
表1に、本明細書に記載の本発明の方法の実施に使用することができる分子バイオマーカーの例をコードする遺伝子を列挙する。分子バイオマーカーは、これらの遺伝子の変異体、例えば、発現mRNA又はタンパク質、スプライスバリアント、同時翻訳及び翻訳後修飾タンパク質、多形変異体などを含めて、これらの遺伝子によって発現される任意の生成物を含むことができる。一実施形態においては、バイオマーカーは、フィブロネクチン1遺伝子によって発現されるスプライスバリアントである胚性EDBフィブロネクチンである(Kilian, O. et al. (2004) Bone 35(6):1334−1345)。フィブロネクチンのこの胎性形態(fetal form)を決定する考えられる利点は、間葉様腫ようを周囲の間質組織から容易に区別することができることである。追加の実施形態においては、バイオマーカーは、ヒト遺伝子産物の動物相同体であり得る(例えば、イヌ、マウス、ラット、ウサギ、ネコ、サル、類人猿由来など)。
【0054】
本明細書に記載の方法においては、腫よう細胞は、典型的には、癌、前癌状態又は別の形態の異常細胞増殖と診断された患者、及び治療を要する患者から得られる。癌は、肺癌(例えば、非小細胞肺癌(NSCLC))、すい癌、頭頚部癌、胃癌、乳癌、結腸癌、卵巣癌、又は本明細書に記載の以下の種々の他の癌のいずれかであり得る。癌は、好ましくは、EGFRキナーゼ阻害剤を用いて治療可能であることが知られている癌である。
【0055】
本発明の方法においては、バイオマーカー発現レベルは、発現レベルがEMTを通して一定である対照分子と比較して評価することができ、又は分子バイオマーカー(例えば、GAPDH、β−アクチン、チューブリンなどの「ハウスキーピング」遺伝子)によって示される上皮若しくは間葉転換状態を発現する腫よう細胞を比較したときに評価することができる。バイオマーカー発現レベルは、腫よう細胞バイオマーカーのもう一方のタイプと比較して(すなわち、上皮対間葉)、又は同じ組織の非腫よう細胞中のバイオマーカーレベルと比較して、又はアッセイ基準として使用される別の細胞若しくは組織源と比較して評価することもできる。
【0056】
本発明の方法においては、腫よう細胞によって発現される上皮又は間葉バイオマーカーのレベルは、以下により詳細に記述するように、例えば、ELISA、RIA、免疫沈降、免疫ブロット、免疫蛍光顕微鏡検査、RT−PCR、in situハイブリダイゼーション、cDNAマイクロアレイなどを含めて、遺伝子の発現レベルを測定する、当分野では公知の標準バイオアッセイ手順のいずれかを用いることによって評価することができる。
【0057】
本発明の方法においては、腫よう細胞上皮又は間葉バイオマーカーの発現レベルは、好ましくは腫よう生検を分析することによって評価される。しかし、別の実施形態においては、腫よう細胞バイオマーカーの発現レベルは、腫よう又は腫よう細胞から生じる検出可能なレベルのバイオマーカーを含む体液又は排せつ物において評価することができる。本発明において有用である体液又は排せつ物としては、血液、尿、唾液、便、胸膜液、リンパ液、痰、腹水、前立腺液、脳脊髄液(CSF)、任意の他の体分泌物又はその誘導体などが挙げられる。血液とは、全血、血しょう、血清又は血液の任意の誘導体を含むものとする。かかる体液又は排せつ物中の腫よう上皮又は間葉バイオマーカーの評価は、観血的な試料採取方法が不適当又は不都合である状況において好ましいことがある。
【0058】
本発明の方法においては、腫よう細胞は、肺癌腫よう細胞(例えば、非小細胞肺癌(NSCLC))、すい癌腫よう細胞、乳癌腫よう細胞、頭頚部癌腫よう細胞、胃癌腫よう細胞、結腸癌腫よう細胞、卵巣癌腫よう細胞、又は本明細書に記載の以下の種々の他の癌のいずれかに由来する腫よう細胞であり得る。腫よう細胞は、好ましくは、固形腫よう由来の全腫よう細胞がそうであるように、EGFRキナーゼを発現することが知られているタイプ又は予想されるタイプである。EGFRキナーゼは、野生型でも変異体でもよい。
【0059】
本発明の方法においては、EGFRキナーゼ阻害剤は、本明細書に記載の以下の任意のEGFRキナーゼ阻害剤であり得るが、好ましくは、薬理学的に許容されるその塩又は多形体を含めて、(エルロチニブ、OSI−774又はTARCEVA(商標)(エルロチニブHCl)としても知られる6,7−ビス(2−メトキシエトキシ)−4−キナゾリン−4−イル]−(3−エチニルフェニル)アミンである。
【0060】
以下の方法は、本発明による方法の追加の具体的実施形態である。
【0061】
本発明は、腫よう細胞によって発現される上皮バイオマーカーのレベルを評価すること、及びEGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう増殖の感受性を予測することを含み、腫よう細胞上皮バイオマーカーの高い発現レベルがEGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう増殖の高い感受性と相関する、EGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう増殖の感受性を予測する方法を提供する。
【0062】
本発明は、腫よう細胞によって発現される間葉バイオマーカーのレベルを評価すること、及びEGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう増殖の感受性を予測することを含み、腫よう細胞間葉バイオマーカーの高い発現レベルがEGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう増殖の低い感受性と相関する、EGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう増殖の感受性を予測する方法を提供する。
【0063】
本発明は、腫よう細胞によって発現される上皮バイオマーカーのレベルを評価すること、及び腫ようがEGFRキナーゼ阻害剤による治療に有効に応答するかどうかを予測することを含み、腫よう細胞上皮バイオマーカーの高い発現レベルが、EGFRキナーゼ阻害剤による治療に有効に応答する腫ようと相関する、癌患者が、EGFRキナーゼ阻害剤による治療に有効に応答する腫ように罹患しているかどうかを予測する方法を提供する。
【0064】
本発明の方法においては、腫ようは、肺癌腫よう(例えば、非小細胞肺癌(NSCLC))、すい癌腫よう、乳癌腫よう、頭頚部癌腫よう、胃癌腫よう、結腸癌腫よう、卵巣癌腫よう、又は本明細書に記載の以下の種々の他の癌のいずれかに由来する腫ようであり得る。腫ようは、好ましくは、全固形腫ようがそうであるように、細胞がEGFRキナーゼを発現することが知られているタイプ又は予想されるタイプである。EGFRキナーゼは、野生型でも変異体でもよい。
【0065】
本発明は、腫よう細胞によって発現される間葉バイオマーカーのレベルを評価すること、及び腫ようがEGFRキナーゼ阻害剤による治療に有効に応答するかどうかを予測することを含み、腫よう細胞間葉バイオマーカーの高い発現レベルが、EGFRキナーゼ阻害剤による治療に有効に応答する腫ようと相関する、癌患者が、EGFRキナーゼ阻害剤による治療にさほど有効に応答しない腫ように罹患しているかどうかを予測する方法を提供する。
【0066】
本発明は、少なくとも1種類の上皮バイオマーカーポリペプチドの腫よう細胞レベルを測定すること、少なくとも1種類の対照ポリペプチドの腫よう細胞レベルを測定すること、少なくとも1種類の上皮バイオマーカーポリペプチドの腫よう細胞レベルを少なくとも1種類の対照ポリペプチドの腫よう細胞レベルと比較することを含み、腫よう細胞バイオマーカーポリペプチドと腫よう細胞対照ポリペプチドの高い比が、EGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう細胞増殖の高い感受性を予測する、EGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう細胞増殖の感受性を予測する方法を提供する。この方法では、有用である上皮バイオマーカーポリペプチドの例としては、E−カドヘリン、γ−カテニン、ケラチン8、ケラチン18、コネキシン31、プラコフィリン3、stratafin 1、ラミニンアルファ−5、ST14及びBrkが挙げられる。
【0067】
本発明は、ポリペプチドをコードする少なくとも1種類の上皮バイオマーカーポリヌクレオチドの腫よう細胞レベルを測定すること、少なくとも1種類の対照ポリヌクレオチドの腫よう細胞レベルを測定すること、ポリペプチドをコードする少なくとも1種類の上皮バイオマーカーポリヌクレオチドの腫よう細胞レベルを少なくとも1種類の対照ポリヌクレオチドの腫よう細胞レベルと比較することを含み、腫よう細胞バイオマーカーポリヌクレオチドと腫よう細胞対照ポリヌクレオチドの高い比が、EGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう細胞増殖の高い感受性を予測する、EGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう細胞増殖の感受性を予測する方法を提供する。この方法では、上皮バイオマーカーポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの例としては、E−カドヘリン、γ−カテニン、ケラチン8、ケラチン18、コネキシン31、プラコフィリン3、stratafin 1、ラミニンアルファ−5、ST14及びBrkが挙げられる。
【0068】
本発明は、少なくとも1種類の間葉バイオマーカーポリペプチドの腫よう細胞レベルを測定すること、少なくとも1種類の対照ポリペプチドの腫よう細胞レベルを測定すること、少なくとも1種類の間葉バイオマーカーポリペプチドの腫よう細胞レベルと少なくとも1種類の対照ポリペプチドの腫よう細胞レベルを比較することを含み、腫よう細胞バイオマーカーポリペプチドと腫よう細胞対照ポリペプチドの低い比が、EGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう細胞増殖の高い感受性を予測する、EGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう細胞増殖の感受性を予測する方法を提供する。この方法では、有用である間葉バイオマーカーポリペプチドの例としては、ビメンチン及びフィブロネクチンが挙げられる。
【0069】
本発明は、ポリペプチドをコードする少なくとも1種類の間葉バイオマーカーポリヌクレオチドの腫よう細胞レベルを測定すること、少なくとも1種類の対照ポリヌクレオチドの腫よう細胞レベルを測定すること、ポリペプチドをコードする少なくとも1種類の間葉バイオマーカーポリヌクレオチドの腫よう細胞レベルを少なくとも1種類の対照ポリヌクレオチドの腫よう細胞レベルと比較することを含み、腫よう細胞バイオマーカーポリヌクレオチドと腫よう細胞対照ポリヌクレオチドの低い比が、EGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう細胞増殖の高い感受性を予測する、EGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう細胞増殖の感受性を予測する方法を提供する。この方法では、バイオマーカーポリヌクレオチドによってコードされる有用なポリペプチドの例としては、ビメンチン及びフィブロネクチンが挙げられる。
【0070】
本発明は、少なくとも1種類の上皮バイオマーカーポリペプチドの腫よう細胞レベルを測定すること、少なくとも1種類の上皮バイオマーカーポリペプチドの非腫よう細胞レベルを測定すること、少なくとも1種類の上皮バイオマーカーポリペプチドの腫よう細胞レベルを少なくとも1種類の上皮バイオマーカーポリペプチドの非腫よう細胞レベルと比較することを含み、腫よう細胞バイオマーカーポリペプチドと非腫よう細胞バイオマーカーポリペプチドの高い比が、EGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう細胞増殖の高い感受性を予測する、EGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう細胞増殖の感受性を予測する方法を提供する。この方法では、有用である上皮バイオマーカーポリペプチドの例としては、E−カドヘリン、γ−カテニン、ケラチン8、ケラチン18、コネキシン31、プラコフィリン3、stratafin 1、ラミニンアルファ−5、ST14及びBrkが挙げられる。
【0071】
本発明は、ポリペプチドをコードする少なくとも1種類の上皮バイオマーカーポリヌクレオチドの腫よう細胞レベルを測定すること、ポリペプチドをコードする少なくとも1種類の上皮バイオマーカーポリヌクレオチドの非腫よう細胞レベルを測定すること、ポリペプチドをコードする少なくとも1種類の上皮バイオマーカーポリヌクレオチドの腫よう細胞レベルとポリペプチドをコードする少なくとも1種類の上皮バイオマーカーポリヌクレオチドの非腫よう細胞レベルを比較することを含み、腫よう細胞バイオマーカーポリヌクレオチドと非腫よう細胞バイオマーカーポリヌクレオチドの高い比が、EGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう細胞増殖の高い感受性を予測する、EGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう細胞増殖の感受性を予測する方法を提供する。この方法では、上皮バイオマーカーポリヌクレオチドによってコードされる有用なポリペプチドの例としては、E−カドヘリン、γ−カテニン、ケラチン8、ケラチン18、コネキシン31、プラコフィリン3、stratafin 1、ラミニンアルファ−5、ST14及びBrkが挙げられる。
【0072】
本発明は、少なくとも1種類の間葉バイオマーカーポリペプチドの腫よう細胞レベルを測定すること、少なくとも1種類の間葉バイオマーカーポリペプチドの非腫よう細胞レベルを測定すること、少なくとも1種類の間葉バイオマーカーポリペプチドの腫よう細胞レベルと少なくとも1種類の間葉バイオマーカーポリペプチドの非腫よう細胞レベルを比較することを含み、腫よう細胞バイオマーカーポリペプチドと非腫よう細胞バイオマーカーポリペプチドの低い比が、EGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう細胞増殖の高い感受性を予測する、EGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう細胞増殖の感受性を予測する方法を提供する。この方法では、有用である間葉バイオマーカーポリペプチドの例としては、ビメンチン及びフィブロネクチンが挙げられる。
【0073】
本発明は、ポリペプチドをコードする少なくとも1種類の間葉バイオマーカーポリヌクレオチドの腫よう細胞レベルを測定すること、ポリペプチドをコードする少なくとも1種類の間葉バイオマーカーポリヌクレオチドの非腫よう細胞レベルを測定すること、ポリペプチドをコードする少なくとも1種類の間葉バイオマーカーポリヌクレオチドの腫よう細胞レベルをポリペプチドをコードする少なくとも1種類の間葉バイオマーカーポリヌクレオチドの非腫よう細胞レベルと比較することを含み、腫よう細胞バイオマーカーポリヌクレオチドと非腫よう細胞バイオマーカーポリヌクレオチドの低い比が、EGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう細胞増殖の高い感受性を予測する、EGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう細胞増殖の感受性を予測する方法を提供する。この方法では、バイオマーカーポリヌクレオチドによってコードされる有用なポリペプチドの例としては、ビメンチン及びフィブロネクチンが挙げられる。
【0074】
本発明は、少なくとも1種類の上皮バイオマーカーポリペプチドの腫よう細胞レベルを測定すること、少なくとも1種類の間葉バイオマーカーポリペプチドの腫よう細胞レベルを測定すること、少なくとも1種類の上皮バイオマーカーポリペプチドのレベルを少なくとも1種類の間葉バイオマーカーポリペプチドのレベルと比較することを含み、上皮バイオマーカーポリペプチドと間葉バイオマーカーポリペプチドの高い比が、EGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう細胞増殖の高い感受性を予測する、EGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう細胞増殖の感受性を予測する方法を提供する。この方法では、有用である上皮バイオマーカーポリペプチドの例としては、E−カドヘリン、γ−カテニン、ケラチン8、ケラチン18、コネキシン31、プラコフィリン3、stratafin 1、ラミニンアルファ−5、ST14及びBrkが挙げられる。この方法では、有用である間葉バイオマーカーポリペプチドの例としては、ビメンチン及びフィブロネクチンが挙げられる。
【0075】
本発明は、ポリペプチドをコードする少なくとも1種類の上皮バイオマーカーポリヌクレオチドの腫よう細胞レベルを測定すること、ポリペプチドをコードする少なくとも1種類の間葉バイオマーカーポリヌクレオチドの腫よう細胞レベルを測定すること、(c)少なくとも1種類の上皮バイオマーカーポリヌクレオチドのレベルを少なくとも1種類の間葉バイオマーカーポリヌクレオチドのレベルと比較することを含み、上皮バイオマーカーポリヌクレオチドと間葉バイオマーカーポリヌクレオチドの高い比が、EGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう細胞増殖の高い感受性を予測する、EGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう細胞増殖の感受性を予測する方法を提供する。この方法では、上皮バイオマーカーポリヌクレオチドによってコードされる有用なポリペプチドの例としては、E−カドヘリン、γ−カテニン、ケラチン8、ケラチン18、コネキシン31、プラコフィリン3、stratafin 1、ラミニンアルファ−5、ST14及びBrkが挙げられる。この方法では、間葉バイオマーカーポリヌクレオチドによってコードされる有用なポリペプチドの例としては、ビメンチン及びフィブロネクチンが挙げられる。
【0076】
本発明は、患者試料中の間葉バイオマーカーの発現レベルを対照非癌試料中のバイオマーカーの正常発現レベルと比較することを含み、正常レベルに対する患者試料中の間葉バイオマーカーの発現レベルの有意な増加によって、EGFRキナーゼ阻害剤による治療に有効に応答する可能性が低い癌に患者が罹患していることが示される、EGFRキナーゼ阻害剤による治療に有効に応答する癌に癌患者が罹患しているかどうかを評価する方法を提供する。この方法では、有用である間葉バイオマーカーの例としては、ビメンチン及びフィブロネクチン並びにこれらのタンパク質をコードする核酸が挙げられる。
【0077】
本発明は、患者試料中の上皮バイオマーカーの発現レベルを対照非癌試料中のバイオマーカーの正常発現レベルと比較することを含み、正常レベルに対する患者試料中の上皮バイオマーカーの発現レベルの有意な減少によって、EGFRキナーゼ阻害剤による治療に有効に応答する可能性が低い癌に患者が罹患していることが示される、EGFRキナーゼ阻害剤による治療に有効に応答する癌に癌患者が罹患しているかどうかを評価する方法を提供する。この方法では、有用である上皮バイオマーカーの例としては、E−カドヘリン、γ−カテニン、ケラチン8、ケラチン18、コネキシン31、プラコフィリン3、stratafin 1、ラミニンアルファ−5、ST14及びBrk並びにこれらのタンパク質をコードする核酸が挙げられる。
【0078】
本発明は、患者試料中の上皮バイオマーカーの発現レベルを患者試料中の間葉バイオマーカーの発現レベルと比較することを含み、上皮バイオマーカーの発現レベルと間葉バイオマーカーの発現レベルの高い比によって、EGFRキナーゼ阻害剤による治療に有効に応答する可能性が高い癌に患者が罹患していることが示される、EGFRキナーゼ阻害剤による治療に有効に応答する癌に癌患者が罹患しているかどうかを評価する方法を提供する。この方法では、有用である上皮バイオマーカーの例としては、E−カドヘリン、γ−カテニン、ケラチン8、ケラチン18、コネキシン31、プラコフィリン3、stratafin 1、ラミニンアルファ−5、ST14及びBrk並びにこれらのタンパク質をコードする核酸が挙げられる。この方法では、有用である間葉バイオマーカーの例としては、ビメンチン及びフィブロネクチン並びにこれらのタンパク質をコードする核酸が挙げられる。
【0079】
患者試料に関する上記方法のいずれかにおいて、かかる試料の例は腫よう生検であり得る。
【0080】
本発明は、(a)ヒト対象の細胞から生じるヒト核酸又はタンパク質を含む生体物質の試料を採取すること、(b)試料中の1種類以上の上皮細胞バイオマーカータンパク質又は1種類以上の上皮細胞バイオマーカータンパク質特異的mRNAの発現レベルを定量的又は半定量的に測定すること、及び(c)(b)における発現レベルを正常対照におけるバイオマーカー発現レベルと、又は試料中の対照ポリペプチド若しくは核酸のレベルと比較することを含み、対照レベルに対する、1種類以上の上皮細胞バイオマーカータンパク質又は1種類以上の上皮細胞バイオマーカータンパク質特異的mRNAの発現の低下によって、ヒト対象においてEGFRキナーゼ阻害剤による治療に有効に応答する可能性が低い腫ようの存在が示される、ヒト対象において腫ようがEGFRキナーゼ阻害剤による治療に対して応答性であるかどうかを判定する方法を提供する。
【0081】
本発明は、(a)ヒト対象の細胞から生じるヒト核酸又はタンパク質を含む生体物質の試料を採取すること、(b)試料中の1種類以上の間葉細胞バイオマーカータンパク質又は1種類以上の間葉細胞バイオマーカータンパク質特異的mRNAの発現レベルを定量的又は半定量的に測定すること、及び(c)(b)における発現レベルを正常対照におけるバイオマーカー発現レベルと、又は試料中の対照ポリペプチド若しくは核酸のレベルと比較することを含み、対照レベルに対する、1種類以上の間葉細胞バイオマーカータンパク質又は1種類以上の間葉細胞バイオマーカータンパク質特異的mRNAの発現の増加によって、ヒト対象においてEGFRキナーゼ阻害剤による治療に有効に応答する可能性が低い腫ようの存在が示される、ヒト対象において腫ようがEGFRキナーゼ阻害剤による治療に対して応答性であるかどうかを判定する方法を提供する。
【0082】
本発明は、腫よう細胞中の1種類以上の上皮バイオマーカーのレベルを測定すること、前記レベルを非腫よう対照における上皮バイオマーカー発現レベルと、又は腫よう試料中の対照ポリペプチド若しくは核酸のレベルと比較すること、及び腫よう細胞が比較的高いレベルの1種類以上の上皮バイオマーカーを含むかどうかを判定することを含み、高いレベルによって、腫よう患者がEGFRキナーゼ阻害剤療法によって比較的長い延命効果を示すことが示される、腫よう患者がEGFRキナーゼ阻害剤療法によって比較的長い延命効果を示す可能性を判定する方法を提供する。
【0083】
本発明は、腫よう細胞中の1種類以上の間葉バイオマーカーのレベルを測定すること、前記レベルを非腫よう対照における間葉バイオマーカー発現レベルと、又は腫よう試料中の対照ポリペプチド若しくは核酸のレベルと比較すること、及び腫よう細胞が比較的低いレベルの1種類以上の間葉バイオマーカーを含むかどうかを判定することを含み、低いレベルによって、腫よう患者がEGFRキナーゼ阻害剤療法によって比較的長い延命効果を示すことが示される、腫よう患者がEGFRキナーゼ阻害剤療法によって比較的長い延命効果を示す可能性を判定する方法を提供する。
【0084】
本発明は、腫よう細胞中の1種類以上の上皮バイオマーカーのレベルを測定すること、前記レベルを非腫よう対照における上皮バイオマーカー発現レベルと、又は腫よう試料中の対照ポリペプチド若しくは核酸のレベルと比較すること、及び腫よう細胞が比較的高いレベルの1種類以上の上皮バイオマーカーを含むかどうかを判定すること、腫よう細胞中の1種類以上の間葉バイオマーカーのレベルを測定すること、前記レベルを非腫よう対照における間葉バイオマーカー発現レベルと、又は腫よう試料中の対照ポリペプチド若しくは核酸のレベルと比較すること、及び腫よう細胞が比較的い低レベルの1種類以上の間葉バイオマーカーを含むかどうかを判定することを含み、1種類以上の上皮バイオマーカーの高いレベル及び1種類以上の間葉バイオマーカーの低いレベルによって、腫よう患者がEGFRキナーゼ阻害剤療法によって比較的長い延命効果を示すことが示される、腫よう患者がEGFRキナーゼ阻害剤療法によって比較的長い延命効果を示す可能性を判定する方法を提供する。
【0085】
本発明は、新生細胞に関連する上皮バイオマーカーレベルを測定すること、及び前記上皮バイオマーカーレベルを非腫よう性上皮バイオマーカー基準レベルと、又は新生細胞に関連する対照ポリペプチド若しくは核酸のレベルと比較することを含み、新生細胞に関連する上皮バイオマーカーレベルの低下が前記患者の生存の低下と相関する、EGFRキナーゼ阻害剤療法に対して腫よう性症状の患者の生存についての予後を判定する方法を提供する。
【0086】
本発明は、新生細胞に関連する間葉バイオマーカーレベルを測定すること、及び前記間葉バイオマーカーレベルを非腫よう性間葉バイオマーカー基準レベルと、又は新生細胞に関連する対照ポリペプチド若しくは核酸のレベルと比較することを含み、新生細胞に関連する間葉バイオマーカーレベルの増加が前記患者の生存の低下と相関する、EGFRキナーゼ阻害剤療法に対して腫よう性症状の患者の生存についての予後を判定する方法を提供する。
【0087】
腫よう細胞上皮又は間葉バイオマーカー発現の評価では、腫よう細胞又はこれらの腫よう細胞によって産生されるタンパク質若しくは核酸を含む患者試料を本発明の方法に使用することができる。これらの実施形態においては、腫よう細胞試料、例えば、患者から得られた腫よう生検、又は腫よう由来の材料を含む他の患者試料(例えば、血液、血清、尿又は本明細書の上記他の体液若しくは排せつ物)中のマーカーの量(例えば、絶対量又は濃度)を評価することによって、バイオマーカーの発現レベルを評価することができる。細胞試料は、試料中のマーカー量を評価する前に、採取後の種々の周知の調製及び保存技術(例えば、核酸及び/又はタンパク質抽出、固定、保存、凍結、限外ろ過、濃縮、蒸発、遠心分離など)に供することができることは言うまでもない。同様に、腫よう生検も、採取後の調製及び保存技術、例えば、固定に供することができる。
【0088】
本発明の方法においては、バイオマーカータンパク質を発現する腫よう細胞の表面に提示される少なくとも1個の部分を有するバイオマーカータンパク質の発現を検出することができる。マーカータンパク質又はその一部が細胞表面に露出しているかどうかを判定することは当業者には簡単なことである。例えば、免疫学的方法を使用して、ホールセル上のかかるタンパク質を検出することができ、又は周知のコンピュータ配列解析法を使用して、少なくとも1個の細胞外ドメイン(すなわち、分泌タンパク質及び少なくとも1個の細胞表面ドメインを有するタンパク質を含む。)の存在を予測することができる。マーカータンパク質を発現する細胞の表面に提示される少なくとも1個の部分を有するマーカータンパク質の発現は、腫よう細胞を必ずしも溶解せずに(例えば、タンパク質の細胞表面ドメインに特異的に結合する標識抗体を用いて)検出することができる。
【0089】
本発明に記載のバイオマーカーの発現は、転写された核酸又はタンパク質の発現を検出する多種多様な周知の方法のいずれかによって評価することができる。かかる方法の非限定的例としては、分泌された、細胞表面タンパク質、細胞質タンパク質又は核タンパク質を検出する免疫学的方法、タンパク質精製方法、タンパク質の機能又は活性アッセイ、核酸ハイブリダイゼーション法、核酸逆転写方法及び核酸増幅方法が挙げられる。
【0090】
一実施形態においては、バイオマーカーの発現は、腫よう細胞において通常受ける翻訳後修飾(例えばグリコシル化、リン酸化、メチル化など)の全部又は一部を起こすバイオマーカータンパク質を含めて、バイオマーカータンパク質又はその断片と特異的に結合する、抗体(例えば、放射性標識、発色団標識、蛍光団標識又は酵素標識抗体)、抗体誘導体(例えば、基質若しくはタンパク質との複合抗体又はタンパク質−リガンド対{例えばビオチン−ストレプトアビジン}のリガンド)又は抗体断片(例えば、単鎖抗体、単離抗体超可変ドメインなど)を用いて評価される。
【0091】
別の実施形態においては、バイオマーカーの発現は、患者試料中の細胞からmRNA/cDNA(すなわち、転写ポリヌクレオチド)を調製することによって、また、mRNA/cDNAをバイオマーカー核酸又はその断片の補体である基準ポリヌクレオチドとハイブリッド化することによって、評価される。cDNAは、基準ポリヌクレオチドとのハイブリダイゼーション前に、種々のポリメラーゼ連鎖反応法のいずれかによって増幅してもよい。1種類以上のバイオマーカーの発現は、同様に、バイオマーカーの発現レベルを評価する定量PCRによって検出することができる。或いは、本発明のバイオマーカーの変異体又は変種(例えば、一塩基多形体、欠失体など)を検出する多数の公知の方法のいずれかを使用して、患者におけるバイオマーカーの存在を検出することができる。
【0092】
関係する実施形態においては、試料から得られた転写ポリヌクレオチドの混合物を、バイオマーカー核酸の少なくとも一部(例えば、少なくとも7、10、15、20、25、30、40、50、100、500以上のヌクレオチド残基)と相補的又は相同であるポリヌクレオチドが固定された基質と接触させる。相補的又は相同のポリヌクレオチドが、基質上で異なって検出可能である(例えば、異なる発色団若しくは蛍光団を用いて検出可能である、又は異なる選択位置に固定されている)場合には、複数のバイオマーカーの発現レベルを、単一の基質(例えば、選択位置に固定されたポリヌクレオチドの「遺伝子チップ」マイクロアレイ)を用いて同時に評価することができる。1種類の核酸と別の核酸のハイブリダイゼーションを含むバイオマーカー発現評価方法を使用するときには、厳密なハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイゼーションを実施することが好ましい。
【0093】
本発明の方法において本発明の複数のバイオマーカーを使用するときには、患者試料中の各バイオマーカーの発現レベルを、単一反応混合物中(すなわち、各バイオマーカーに対する異なる蛍光プローブなどの試薬を用いて)又はバイオマーカーの1種類以上に対応する個々の反応混合物中の、同じタイプの非癌試料中の複数のバイオマーカーの各々の正常発現レベルと比較することができる。
【0094】
正常(すなわち非癌)ヒト組織におけるバイオマーカー発現レベルは、種々の方法で評価することができる。一実施形態においては、この正常発現レベルは、非癌性であると考えられる細胞部分におけるバイオマーカーの発現レベルを評価し、次いでこの正常発現レベルを腫よう細胞部分における発現レベルと比較することによって評価される。交互に、特に、本明細書に記載の方法を定常的に実施した結果としてさらなる情報が利用可能になるので、本発明のバイオマーカーの正常発現の集団平均値を使用することができる。他の実施形態においては、「正常」バイオマーカー発現レベルは、非癌患者から得られた患者試料中の、患者における癌の発症が疑われる前に患者から得られた患者試料からの、保存された患者試料などからの、バイオマーカーの発現を評価することによって求めることができる。
【0095】
生体試料中のバイオマーカータンパク質又は核酸の有無を検出する例示的な方法は、生体試料(例えば、腫ように関連する体液)を被検者から採取すること、及び生体試料をポリペプチド又は核酸(例えば、mRNA、ゲノムDNA又はcDNA)を検出することができる化合物又は検出剤と接触させることを含む。したがって、本発明の検出方法を使用して、例えば生体試料中の、mRNA、タンパク質、cDNA又はゲノムDNAをインビトロ及びインビボで検出することができる。例えば、mRNAを検出するインビトロ技術としては、ノーザンブロット法及びin situハイブリダイゼーションが挙げられる。バイオマーカータンパク質を検出するインビトロ技術としては、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ウエスタンブロット法、免疫沈降、免疫蛍光などが挙げられる。ゲノムDNAを検出するインビトロ技術としては、サザンブロット法などが挙げられる。mRNAを検出するインビボ技術としては、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)、ノーザンブロット法、in situハイブリダイゼーションなどが挙げられる。また、バイオマーカータンパク質を検出するインビボ技術としては、タンパク質又はその断片に対する標識抗体を対象に導入することなどが挙げられる。例えば、抗体は、対象における存在及び場所を標準画像化技術によって検出することができる放射性マーカーで標識することができる。
【0096】
かかる診断及び予後のアッセイの一般的原理は、バイオマーカーとプローブを含み得る試料又は反応混合物を適切な条件下で、バイオマーカーとプローブが相互作用し、結合して、反応混合物中で除去及び/又は検出することができる複合体を形成するのに十分な時間調製することを含む。これらのアッセイは、種々の方法で実施することができる。
【0097】
例えば、かかるアッセイを実施する一方法は、バイオマーカー又はプローブを、基質とも称される固相支持体上に固定すること、及び固相に固定された標的バイオマーカー/プローブ複合体を反応の最後に検出することを含む。かかる方法の一実施形態においては、バイオマーカーの有無及び/又は濃度を分析する、対象から得られた試料を担体又は固相支持体上に固定することができる。別の実施形態においては、逆の状況が考えられ、プローブを固相に固定し、対象から得られた試料をアッセイの非固定成分として反応させることができる。
【0098】
アッセイ成分を固相に固定する、確立された多数の方法がある。これらの方法としては、ビオチンとストレプトアビジンの複合化によって固定されるバイオマーカー又はプローブ分子などが挙げられるが、これだけに限定されない。かかるビオチン化アッセイ成分は、当分野で公知の技術(例えば、ビオチン化キット、Pierce Chemicals、Rockford、Ill.)によって、ビオチン−NHS(N−ヒドロキシ−スクシンイミド)から調製することができ、ストレプトアビジン被覆96ウェルプレート(Pierce Chemical)のウェル中に固定することができる。ある実施形態においては、固定アッセイ成分を含む表面を前もって調製し、保存することができる。
【0099】
かかるアッセイに適切な他の担体又は固相支持体としては、バイオマーカー又はプローブが属する分子クラスと結合することができる任意の材料などが挙げられる。周知の支持体又は担体としては、ガラス、ポリスチレン、ナイロン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレン、デキストラン、アミラーゼ、天然セルロース及び変性セルロース、ポリアクリルアミド、斑れい岩及び磁鉄鉱が挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0100】
上記手法によってアッセイを実施するために、非固定成分を固相に添加し、その後、第2の成分を固定する。反応が完結した後に、形成された任意の複合体が固相上に固定されて残るような条件下で非複合成分を(例えば、洗浄によって)除去することができる。固相に固定されたバイオマーカー/プローブ複合体は、本明細書に概説する幾つかの方法で検出することができる。
【0101】
一実施形態においては、プローブが非固定アッセイ成分であるときには、プローブをアッセイの検出及び読み取り目的で、本明細書で考察する、当業者に周知の検出可能な標識で直接又は間接的に標識することができる。
【0102】
バイオマーカー/プローブ複合体の形成は、例えば蛍光エネルギー移動技術(すなわちFET、例えば、Lakowicz他、米国特許第5,631,169号、Stavrianopoulos他、米国特許第4,868,103号参照)を利用することによって、一方の成分(バイオマーカー又はプローブ)をさらに操作又は標識せずに、直接検出することもできる。第1の「供与体」分子上の蛍光団標識は、適切な波長の入射光によって励起されると、その放射蛍光エネルギーが第2の「受容体」分子上の蛍光標識によって吸収され、蛍光標識が、吸収したエネルギーによって蛍光を発することができるように選択される。交互に、「供与体」タンパク質分子は、トリプトファン残基の天然蛍光エネルギーを単に利用することもできる。異なる波長の光を発する標識が選択され、その結果、「受容体」分子標識を「供与体」の標識から区別することができる。標識間のエネルギー移動効率は分子間の距離に関係するので、分子間の空間的関係を評価することができる。結合が分子間で起こる状況においては、アッセイにおける「受容体」分子標識の蛍光発光は最大になるはずである。FET結合現象は、当分野で周知の標準蛍光定量検出手段(例えば、蛍光光度計を用いて)好都合には測定することができる。
【0103】
別の実施形態においては、プローブのバイオマーカー認識能力は、一方のアッセイ成分(プローブ又はバイオマーカー)を標識せずに、実時間生体分子間相互作用解析(BIA)などの技術を利用することによって求めることができる(例えば、Sjolander, S. and Urbaniczky, C., 1991, Anal. Chem. 63:2338−2345及びSzabo et al., 1995, Curr. Opin. Struct. Biol. 5:699−705参照)。本明細書では「BIA」又は「表面プラズモン共鳴」は、相互作用物のいずれも標識せずに、生体分子特異的相互作用を実時間で試験する技術である(例えば、BIAcore)。(結合現象を示している)結合表面における質量変化は、表面近傍の光の屈折率を変化させ(表面プラズモン共鳴(SPR)の光学現象)、生体分子間の実時間反応の指標として使用することができる検出可能なシグナルを生ずる。
【0104】
或いは、別の実施形態においては、バイオマーカー及びプローブを液相中の溶質として用いて、類似の診断及び予後のアッセイを実施することができる。かかるアッセイにおいては、複合化されたバイオマーカーとプローブは、分画遠心分離、クロマトグラフィー、電気泳動及び免疫沈降を含めて、ただしこれらだけに限定されない幾つかの標準技術のいずれかによって、非複合成分から分離される。分画遠心分離においては、バイオマーカー/プローブ複合体は、異なるサイズ及び密度に基づく複合体の異なる沈降平衡のために、一連の遠心段階によって非複合アッセイ成分から分離することができる(例えば、Rivas, G., and Minton, A.P., 1993, Trends Biochem Sci. 18(8):284−7参照)。標準クロマトグラフィー技術を利用して、複合分子を非複合分子から分離することもできる。例えば、ゲルろ過クロマトグラフィーは、サイズに基づいて分子を分離し、例えば、カラム形式の適切なゲルろ過樹脂を利用することによって、比較的大きい複合体を比較的小さい非複合成分から分離することができる。同様に、非複合成分とは比較的異なる、バイオマーカー/プローブ複合体の電荷特性を利用して、例えばイオン交換クロマトグラフィー樹脂を利用して、複合体を非複合成分から区別することもできる。かかる樹脂及びクロマトグラフィー技術は当業者に周知である(例えば、Heegaard, N.H., 1998, J. Mol. Recognit. Winter 11(1−6):141−8;Hage, D.S., and Tweed, S.A. J. Chromatogr B Biomed Sci Appl 1997 Oct 10;699(1−2):499−525参照)。ゲル電気泳動を使用して、複合アッセイ成分を非結合成分から分離することもできる(例えば、Ausubel et al., ed., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York, 1987−1999参照)。この技術では、タンパク質又は核酸複合体を、例えばサイズ又は電荷に基づいて分離する。電気泳動プロセス中の結合相互作用を維持するために、非変性ゲルマトリックス材料及び還元剤の非存在下の条件が典型的には好ましい。特定のアッセイ及びその成分に適切な条件は、当業者に周知である。
【0105】
特定の実施形態においては、バイオマーカーmRNAレベルは、生体試料中で、当分野で公知の方法を用いて、in situ及びインビトロ形式で測定することができる。「生体試料」という用語は、対象から単離された組織、細胞、体液及びその単離物、並びに対象中に存在する組織、細胞及び体液を含むものとする。多数の発現検出方法が単離RNAを使用する。インビトロ方法では、mRNAの単離に対して選択しない任意のRNA単離技術を、腫よう細胞からRNAを精製するために利用することができる(例えば、Ausubel et al., ed., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York 1987−1999参照)。さらに、多数の組織試料を、例えば、Chomczynskiの1段階RNA単離法(1989、米国特許第4,843,155号)などの当業者に周知の技術を用いて容易に加工することができる。
【0106】
単離mRNAは、サザン又はノーザンブロット分析、ポリメラーゼ連鎖反応解析、プローブアレイなど、ただしこれらだけに限定されないハイブリダイゼーション又は増幅アッセイに使用することができる。mRNAレベルを検出する好ましい一診断法は、単離mRNAを、検出する遺伝子によってコードされるmRNAとハイブリッド形成することができる核酸分子(プローブ)と接触させることを含む。核酸プローブは、例えば、完全長cDNAとすることができ、又は少なくとも7、15、30、50、100、250若しくは500ヌクレオチド長の、また、本発明のバイオマーカーをコードするmRNA若しくはゲノムDNAと厳密な条件下で特異的にハイブリッド形成するのに十分な、オリゴヌクレオチドなどの完全長cDNAの一部とすることができる。本発明の診断アッセイに使用するのに適切な他のプローブを本明細書に記載する。mRNAとプローブのハイブリダイゼーションは、問題のバイオマーカーが発現されていることを示している。
【0107】
一形式においては、例えば単離mRNAをアガロースゲル上で泳動させ、mRNAをゲルからニトロセルロースなどの膜に移すことによって、mRNAを固体表面に固定し、プローブと接触させる。別の形式においては、プローブを固体表面に固定し、mRNAを、例えばAffymetrix遺伝子チップアレイ中で、プローブと接触させる。当業者は、公知のmRNA検出方法を、本発明のバイオマーカーによってコードされるmRNAのレベルの検出に使用するために容易に改作することができる。
【0108】
試料中のmRNAバイオマーカーレベルを測定する代替法は、核酸増幅プロセス、例えば、RT−PCR(Mullis、1987、米国特許第4,683,202号に記載の実験実施形態)、リガーゼ連鎖反応(Barany, 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:189−193)、自立配列複製(Guatelli et al., 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:1874−1878)、転写増幅システム(Kwoh et al., 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:1173−1177)、Q−Betaレプリカーゼ(Lizardi et al., 1988, Bio/Technology 6:1197)、ローリングサークル複製(Lizardi他、米国特許第5,854,033号)又は任意の他の核酸増幅方法と、それに続く当業者に周知の技術による増幅分子の検出を含む。これらの検出スキームは、核酸分子が極めて少数しか存在しない場合に、かかる分子の検出に特に有用である。本明細書では、増幅プライマーは、遺伝子の5’又は3’領域にアニールすることができる1対の核酸分子(それぞれプラス及びマイナス鎖又はその逆)として定義され、間に短い領域を含む。一般に、増幅プライマーは、約10から30ヌクレオチド長であり、約50から200ヌクレオチド長の領域に隣接する。適切な条件下で、適切な試薬を用いて、かかるプライマーによって、プライマーが隣接するヌクレオチド配列を含む核酸分子を増幅することができる。
【0109】
in situ方法では、mRNAを腫よう細胞から検出前に単離する必要はない。かかる方法においては、細胞又は組織試料を公知の組織学的方法によって調製/加工する。次いで、試料を支持体、典型的にはスライドガラスに固定し、次いでバイオマーカーをコードするmRNAとハイブリッド形成することができるプローブと接触させる。
【0110】
バイオマーカーの絶対発現レベルに基づく測定の代替として、測定は、バイオマーカーの正規化発現レベルに基づくことができる。バイオマーカーの絶対発現レベルをバイオマーカーでない遺伝子、例えば、恒常的に発現されるハウスキーピング遺伝子の発現と比較して、バイオマーカーの絶対発現レベルを補正することによって、発現レベルを正規化する。正規化に適切な遺伝子としては、アクチン遺伝子などのハウスキーピング遺伝子、上皮細胞特異的遺伝子などが挙げられる。この正規化によって、一試料、例えば患者試料を別の試料、例えば非腫よう試料と、又は異なる出所からの試料間で、発現レベルを比較することができる。
【0111】
或いは、発現レベルを相対発現レベルとすることができる。相対バイオマーカー発現レベル(例えば、間葉バイオマーカー)を求めるために、問題の試料の発現レベルを測定する前に、バイオマーカー発現レベルを正常対癌細胞単離体の10個以上の試料、好ましくは50個以上の試料について測定する。多数の試料において分析した遺伝子の各々の平均発現レベルを求め、これをバイオマーカーのベースライン発現レベルとして使用する。次いで、試験試料について測定したバイオマーカー発現レベル(絶対発現レベル)をそのバイオマーカーについて得られた平均発現値で除算する。これによって相対発現レベルが得られる。
【0112】
本発明の別の実施形態においては、バイオマーカータンパク質を検出する。本発明のバイオマーカータンパク質を検出する好ましい薬剤は、かかるタンパク質又はその断片と結合することができる抗体、好ましくは検出可能な標識を有する抗体である。抗体はポリクローナル、又はより好ましくはモノクローナルであり得る。完全な抗体又はその断片若しくは誘導体(例えば、Fab又はF(ab’))を使用することができる。プローブ又は抗体に関して「標識」という用語は、検出可能な物質をプローブ又は抗体とカップリング(すなわち、物理的に連結)することによるプローブ又は抗体の直接標識、及び直接標識された別の試薬との反応(reactivity)によるプローブ又は抗体の間接標識を包含するものとする。間接標識の例としては、蛍光標識二次抗体を用いた一次抗体の検出、及び蛍光標識ストレプトアビジンを用いて検出することができるようなビオチンによるDNAプローブの末端標識が挙げられる。
【0113】
腫よう細胞由来のタンパク質は、当業者に周知の技術によって単離することができる。用いられるタンパク質単離方法は、例えば、Harlow and Lane(Harlow and Lane, 1988, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.)に記載の方法などである。
【0114】
多様な形式によって、試料が、所与の抗体に結合するタンパク質を含むかどうかを判定することができる。かかる形式の例としては、酵素免疫測定法(EIA)、放射性免疫測定法(RIA)、ウエスタンブロット分析及び酵素結合免疫吸着(immunoabsorbant)測定法(ELISA)が挙げられるが、これらだけに限定されない。当業者は、公知のタンパク質/抗体検出方法を、腫よう細胞が本発明のバイオマーカーを発現するかどうかの判定に使用するために容易に改作することができる。
【0115】
一形式においては、抗体又は抗体断片若しくは誘導体をウエスタンブロット、免疫蛍光技術などの方法に使用して、発現タンパク質を検出することができる。かかる使用においては、抗体又はタンパク質を固体支持体に固定することが一般に好ましい。適切な固相支持体又は担体としては、抗原又は抗体と結合することができる任意の支持体などが挙げられる。周知の支持体又は担体としては、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然セルロース及び変性セルロース、ポリアクリルアミド、斑れい岩及び磁鉄鉱が挙げられる。
【0116】
当業者は、抗体又は抗原と結合する多数の他の適切な担体を承知しており、かかる支持体を本発明での使用に改作することができる。例えば、腫よう細胞から単離されたタンパク質を、ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって泳動させ、ニトロセルロースなどの固相支持体に固定することができる。次いで、支持体を適切な緩衝剤で洗浄し、続いて検出可能な標識抗体を用いて処理することができる。次いで、固相支持体を再度緩衝剤で洗浄して非結合抗体を除去することができる。次いで、固体支持体上の結合標識の量を従来手段によって検出することができる。
【0117】
ELISAアッセイの場合には、特異的結合対は、免疫タイプでも非免疫タイプでもよい。免疫特異的結合対は、抗原−抗体系又はハプテン/抗ハプテン系によって例示される。フルオレセイン/抗フルオレセイン、ジニトロフェニル/抗ジニトロフェニル、ビオチン/抗ビオチン、ペプチド/抗ペプチドなども挙げることができる。特異的結合対の抗体メンバーは、当業者によく知られた通例の方法によって生成することができる。かかる方法は、特異的結合対の抗原メンバーを有する動物を用いた免疫化を含む。特異的結合対の抗原メンバーが免疫原性でない場合、例えば、ハプテンである場合には、担体タンパク質と共有結合させて免疫原性にすることができる。非免疫結合対は、2種類の成分が互いに天然の親和性を共有するが、抗体ではない系を含む。例示的な非免疫対は、ビオチン−ストレプトアビジン、内因子−ビタミンB12、葉酸−葉酸塩結合タンパク質などである。
【0118】
種々の方法を利用して、抗体を特異的結合対のメンバーで共有結合標識することができる。方法は、特異的結合対メンバーの性質、所望の連結のタイプ、及び種々の複合化化学反応に対する抗体の寛容性に基づいて選択される。ビオチンは、市販の活性誘導体を利用して抗体と共有結合的にカップリングさせることができる。これらの一部は、タンパク質上のアミン基と結合するビオチン−N−ヒドロキシ−スクシンイミド;炭水化物部分、アルデヒド及びカルボキシル基とカルボジイミドカップリングによって結合するビオチンヒドラジド、並びにスルフヒドリル基と結合するビオチンマレイミド及びヨードアセチルビオチンである。フルオレセインは、フルオレセインイソチオシアナートを用いてタンパク質アミン基とカップリングさせることができる。ジニトロフェニル基は、2,4−ジニトロベンゼンスルファート又は2,4−ジニトロフルオロベンゼンを用いてタンパク質アミン基とカップリングさせることができる。ジアルデヒド、カルボジイミドカップリング、ホモ官能性架橋及びヘテロ二官能性架橋を含めて、複合化の他の標準方法を使用して、モノクローナル抗体を特異的結合対メンバーとカップリングさせることもできる。カルボジイミドカップリングは、一物質上のカルボキシル基を別の物質上のアミン基とカップリングさせる有効な方法である。カルボジイミドカップリングは、市販試薬1−エチル−3−(ジメチル−アミノプロピル)−カルボジイミド(EDAC)を用いることによって促進される。
【0119】
二官能性イミドエステル及び二官能性N−ヒドロキシスクシンイミドエステルを含めて、ホモ二官能性架橋剤は、市販されており、一物質上のアミン基と別の物質上のアミン基のカップリングに使用される。ヘテロ二官能性架橋剤は、異なる官能基を有する試薬である。最も一般的な市販ヘテロ二官能性架橋剤は、アミン反応性N−ヒドロキシスクシンイミドエステルを第1の官能基として有し、スルフヒドリル反応基を第2の官能基として有する。最も一般的なスルフヒドリル反応基は、マレイミド、ピリジルジスルフィド及び活性ハロゲンである。官能基の1つは、照射によって種々の基と反応する光活性アリールニトレンである。
【0120】
検出可能に標識された抗体、又は検出可能に標識された特異的結合対メンバーは、放射性同位体、酵素、蛍光発生材料、化学発光材料又は電気化学材料であり得るレポーターとカップリングさせることによって調製される。一般に使用される2種類の放射性同位体は125I及びHである。標準放射性同位体標識手順としては、クロラミンT、ラクトペルオキシダーゼ、125IのBolton−Hunter方法、Hの還元的メチル化などが挙げられる。「検出可能に標識された」という用語は、標識の内因性酵素活性によって、又はそれ自体容易に検出することができる別の成分の標識との結合によって、容易に検出することができるように標識された分子を指す。
【0121】
本発明に使用するのに適切な酵素としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、ホタル及びウミシイタケを含めたルシフェラーゼ、β−ラクタマーゼ、ウレアーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)及びリゾチームが挙げられるが、これらだけに限定されない。酵素標識は、抗体と特異的結合対メンバーのカップリングの場合と同様に、ジアルデヒド、カルボジイミドカップリング、ホモ二官能性架橋剤及びヘテロ二官能性架橋剤の使用によって促進される。
【0122】
選択される標識方法は、酵素及び標識される材料に対して利用可能な官能基、並びに複合化条件に対する酵素及び標識される材料の耐性によって決まる。本発明に使用される標識方法は、これらだけに限定されないが、Engvall and Pearlmann, Immunochemistry 8, 871(1971), Avrameas and Ternynck, Immunochemistry 8, 1175(1975), Ishikawa et al., J. Immunoassay 4(3):209−327(1983)及びJablonski, Anal. Biochem. 148:199(1985)に記載の方法を含めて、現在使用されるあらゆる従来法の1つとすることができる。
【0123】
標識は、スペーサー又は他の特異的結合対メンバーの使用などの間接的方法によることができる。間接的方法の例は、逐次又は同時に添加される非標識ストレプトアビジンとビオチン化酵素を用いたビオチン化抗体の検出である。したがって、本発明によれば、検出に使用される抗体は、レポーターによって直接的に、又は第1の特異的結合対メンバーによって間接的に、検出可能に標識することができる。抗体を第1の特異的結合対メンバーとカップリングさせるときには、検出は、抗体−第1の特異的結合メンバー複合体を第2の標識又は非標識結合対メンバーと上述したように反応させることによって行われる。
【0124】
さらに、非標識検出抗体は、非標識抗体を非標識抗体に特異的な標識抗体と反応させることによって検出することができる。この場合、上で使用する「検出可能に標識された」は、非標識抗体に特異的な抗体が結合することができるエピトープを含むことを意味するものとする。かかる抗抗体は、上で考察した手法のいずれかによって直接的又は間接的に標識することができる。例えば、抗抗体は、上で考察したストレプトアビジン−西洋ワサビペルオキシダーゼ系と反応させることによって検出されるビオチンとカップリングさせることができる。
【0125】
本発明の一実施形態においては、ビオチンを利用する。ビオチン化抗体は、ストレプトアビジン−西洋ワサビペルオキシダーゼ複合体と反応する。オルトフェニレンジアミン、4−クロロ−ナフトール、テトラメチルベンジジン(TMB)、ABTS、BTS又はASAを色素検出に使用することができる。
【0126】
本発明を実施するための一免疫測定法形式においては、捕捉試薬が従来技術によって支持体表面に固定されたフォワード(forward)サンドイッチ測定法を使用する。アッセイに使用される適切な支持体としては、ポリプロピレン、ポリスチレン、置換ポリスチレン、例えばアミノ化又はカルボキシル化ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ガラスビーズ、アガロース、ニトロセルロースなどの合成高分子支持体が挙げられる。
【0127】
本発明は、生体試料中のバイオマーカータンパク質又は核酸の存在を検出するキットも包含する。かかるキットを使用して、被検者が、EGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対して影響されにくい腫ように罹患しているかどうか、又はその発症リスクが高いかどうかを判定することができる。例えば、キットは、生体試料中のバイオマーカータンパク質又は核酸を検出することができる標識化合物又は標識剤、及び試料中のタンパク質又はmRNAの量を測定する手段(例えば、タンパク質若しくはその断片に結合する抗体、又はタンパク質をコードするDNA若しくはmRNAに結合するオリゴヌクレオチドプローブ)を含むことができる。キットは、キットを用いて得られた結果を解釈する説明書を含むこともできる。
【0128】
抗体を用いたキットの場合、キットは、例えば、(1)バイオマーカータンパク質と結合する(例えば、固体支持体に付着した)第1の抗体を含むことができ、(2)タンパク質又は第1の抗体と結合し、検出可能な標識と複合化される第2の異なる抗体を場合によっては含んでいてもよい。
【0129】
オリゴヌクレオチドを用いたキットの場合、キットは、例えば、(1)バイオマーカータンパク質をコードする核酸配列とハイブリッド形成するオリゴヌクレオチド、例えば、検出可能に標識されたオリゴヌクレオチド、又は(2)バイオマーカー核酸分子の増幅に有用である1対のプライマーを含むことができる。キットは、例えば、緩衝剤、防腐剤又はタンパク質安定剤を含むこともできる。キットは、検出可能な標識の検出に必要な構成要素(例えば、酵素又は基質)をさらに含むこともできる。キットは、分析し、試験試料と比較することができる対照試料又は一連の対照試料を含むこともできる。キットの各構成要素は、個々の容器に封入することができ、種々の容器のすべてを、キットを用いて実施したアッセイの結果を解釈する説明書と一緒に、単一パッケージに入れることができる。
【0130】
本発明は、さらに、腫よう細胞が上皮間葉転換を起こすかどうかを評価することによって、例えば、腫よう細胞上皮及び/又は間葉バイオマーカーの発現レベルを測定する本明細書に記載の方法のいずれかによって、EGFRキナーゼ阻害剤に対する患者の想定される応答性を診断する段階と、EGFRキナーゼ阻害剤の治療有効量を前記患者に投与する段階とを含む、患者における腫よう又は腫よう転移を治療する方法も提供する。この方法では、好ましいEGFRキナーゼ阻害剤の例は、薬理学的に許容されるその塩又は多形体を含めたエルロチニブである。この方法においては、個々の患者に関する任意の追加の状況と組み合わせて、EGFRキナーゼ阻害剤に対する患者の考えられる応答性の予測を考慮して、投与医師によって適切であると判断されたときに、1種類以上の追加の抗癌剤又は治療をEGFRキナーゼ阻害剤と同時又は逐次投与することができる。
【0131】
EGFRキナーゼ阻害剤に対する患者の想定される応答性の診断後に、EGFRキナーゼ阻害剤の治療有効量を前記患者に投与する正確な方法は、主治医の判断によることを医薬分野の当業者は理解されたい。投与量、他の抗癌剤との組合せ、投与のタイミング及び頻度などを含めた投与方法は、EGFRキナーゼ阻害剤に対する患者の想定される応答性の診断、並びに患者の症状及び病歴によって左右され得る。したがって、腫ようがEGFRキナーゼ阻害剤に対して感受性が比較的低いと診断された患者でも、かかる阻害剤、特に他の抗癌剤と組み合わせた阻害剤による、又はEGFRキナーゼ阻害剤に対する腫ようの感受性を変化させ得る薬剤による治療の利点が依然として得られ得る。
【0132】
本発明は、さらに、腫よう細胞が上皮間葉転換を起こすかどうかを評価することによって、例えば、腫よう細胞上皮及び/又は間葉バイオマーカーの発現レベルを測定する本明細書に記載の方法のいずれかによって、EGFRキナーゼ阻害剤に対する患者の想定される応答性を診断する段階と、患者を、EGFRキナーゼ阻害剤による治療に対する有効な応答を示す可能性が高い患者として確認する段階と、EGFRキナーゼ阻害剤の治療有効量を前記患者に投与する段階とを含む、患者における腫よう又は腫よう転移を治療する方法も提供する。
【0133】
本発明は、さらに、腫よう細胞が上皮間葉転換を起こすかどうかを評価することによって、例えば、腫よう細胞上皮及び/又は間葉バイオマーカーの発現レベルを測定する本明細書に記載の方法のいずれかによって、EGFRキナーゼ阻害剤に対する患者の想定される応答性を診断する段階と、患者を、EGFRキナーゼ阻害剤による治療に対する有効な応答を示す可能性が低い、又は可能性がない患者として確認する段階と、前記患者をEGFRキナーゼ阻害剤以外の抗癌療法によって治療する段階とを含む、患者における腫よう又は腫よう転移を治療する方法も提供する。
【0134】
本発明は、さらに、(a)EGFRキナーゼ阻害剤に対してある範囲の感受性を示す腫よう細胞パネル中の上皮バイオマーカー候補の発現レベルを測定すること、及び(b)腫よう細胞中の前記上皮バイオマーカー候補の発現レベルとEGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう細胞増殖の感受性との相関を明らかにすることを含み、上皮バイオマーカーの高いレベルとEGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう細胞増殖の高い感受性との相関によって、前記上皮バイオマーカーの発現レベルが、EGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう細胞増殖の感受性を予示することが示される、EGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう細胞増殖の感受性がその発現レベルによって予示される上皮バイオマーカーを特定する方法も提供する。この方法の一実施形態においては、腫よう細胞パネルは腫よう細胞系パネルである。別の実施形態においては、腫よう細胞パネルは、患者又は実験動物モデルに由来する腫よう試料から調製される原発腫よう細胞パネルである。さらに別の実施形態においては、腫よう細胞パネルは、マウス異種移植片中の腫よう細胞系パネルであり、腫よう細胞増殖は、例えば、増殖の分子マーカー又は腫よう増殖全体の測定、例えば、腫よう寸法若しくは重量をモニタリングすることによって測定することができる。
【0135】
本発明は、さらに、(a)EGFRキナーゼ阻害剤に対してある範囲の感受性を示す腫よう細胞パネル中の間葉バイオマーカー候補の発現レベルを測定すること、及び(b)腫よう細胞中の前記間葉バイオマーカー候補の発現レベルとEGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう細胞増殖の感受性との相関を明らかにすることを含み、間葉バイオマーカーの高いレベルとEGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう細胞増殖の低い感受性との相関によって、前記間葉バイオマーカーの発現レベルが、EGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう細胞増殖の感受性の欠如を予示することが示される、EGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう細胞増殖の感受性がその発現レベルによって予示される間葉バイオマーカーを特定する方法も提供する。この方法の一実施形態においては、腫よう細胞パネルは腫よう細胞系パネルである。別の実施形態においては、腫よう細胞パネルは、患者モデルに由来する腫よう試料から調製される原発腫よう細胞パネルである。さらに別の実施形態においては、腫よう細胞パネルは、マウス異種移植片中の腫よう細胞系パネルであり、腫よう細胞増殖は、例えば、増殖の分子マーカー又は腫よう増殖全体の測定、例えば、腫よう寸法若しくは重量をモニタリングすることによって測定することができる。
【0136】
本発明は、さらに、(a)腫よう性症状の患者から得られた新生細胞含有試料中の上皮バイオマーカー候補のレベルを測定すること、及び(b)患者から得られた試料中の前記上皮バイオマーカー候補のレベルとEGFRキナーゼ阻害剤による腫よう性症状の治療の有効性との相関を求めることを含み、上皮バイオマーカーの高いレベルとEGFRキナーゼ阻害剤による腫よう性症状のより有効な治療との相関によって、前記上皮バイオマーカーが、EGFRキナーゼ阻害剤による腫よう性症状のより有効な治療の指標になることが示される、EGFRキナーゼ阻害剤を用いた腫よう性症状のより有効な治療の指標になる上皮バイオマーカーを特定する方法も提供する。
【0137】
本発明は、さらに、(a)腫よう性症状の患者から得られた新生細胞含有試料中の間葉バイオマーカー候補のレベルを測定すること、及び(b)患者から得られた試料中の前記間葉バイオマーカー候補のレベルとEGFRキナーゼ阻害剤による腫よう性症状の治療の有効性との相関を求めることを含み、間葉バイオマーカーの高いレベルとEGFRキナーゼ阻害剤による腫よう性症状のさほど有効でない治療との相関によって、前記間葉バイオマーカーが、EGFRキナーゼ阻害剤による腫よう性症状のさほど有効でない治療の指標になることが示される、EGFRキナーゼ阻害剤を用いた腫よう性症状のさほど有効でない治療の指標になる間葉バイオマーカーを特定する方法も提供する。
【0138】
上記方法における治療の有効性は、例えば、腫よう性症状を有する患者における腫ようサイズの減少を測定することによって、又は腫よう細胞の増殖度の分子決定要因を分析することによって、求めることができる。
【0139】
本発明は、(a)腫よう性症状を有する患者から得られた新生細胞含有試料中の上皮バイオマーカー候補のレベルを測定すること、及び(b)患者から得られた試料中の前記上皮バイオマーカー候補のレベルとEGFRキナーゼ阻害剤を用いて治療したときの患者の生存との相関を求めることを含み、上皮バイオマーカーと前記患者の生存との相関によって、前記上皮バイオマーカーが、EGFRキナーゼ阻害剤を用いて治療したときの、前記腫よう性症状を有する患者の延命の指標になる、EGFRキナーゼ阻害剤を用いて治療したときに、腫よう性症状を有する患者の延命の指標になる上皮バイオマーカーを特定する方法を提供する。
【0140】
本発明は、(a)腫よう性症状を有する患者から得られた新生細胞含有試料中の間葉バイオマーカー候補のレベルを測定すること、及び(b)患者から得られた試料中の前記間葉バイオマーカー候補のレベルとEGFRキナーゼ阻害剤を用いて治療したときの患者の生存との逆相関を求めることを含み、間葉バイオマーカーと前記患者の生存との逆相関によって、前記間葉バイオマーカーが、EGFRキナーゼ阻害剤を用いて治療したときの、前記腫よう性症状を有する患者の生存短縮の指標になる、EGFRキナーゼ阻害剤を用いて治療したときに、腫よう性症状を有する患者の生存短縮の指標になる間葉バイオマーカーを特定する方法を提供する。
【0141】
本発明は、腫よう細胞が、以前に上皮間葉転換した腫よう細胞として特徴づけられ、前記腫よう細胞の試料をEGFRキナーゼ阻害剤と接触させること、前記腫よう細胞の同一試料を試験薬剤の存在下でEGFRキナーゼ阻害剤と接触させること、EGFRキナーゼ阻害剤によって媒介される増殖阻害を試験薬剤の存在下と非存在下で比較すること、並びに試験薬剤がEGFRキナーゼ阻害剤に対する腫よう細胞増殖の感受性を高める薬剤であるかどうかを判定することを含む、EGFRキナーゼ阻害剤に対する腫よう細胞増殖の感受性を高める薬剤を特定する方法を提供する。この方法では、好ましいEGFRキナーゼ阻害剤の例は、薬理学的に許容されるその塩又は多形体を含めたエルロチニブである。この方法の一実施形態においては、腫よう細胞試料は、腫よう細胞系、原発腫よう細胞培養物などのインビトロでの細胞であり得る。別の実施形態においては、腫よう細胞試料は、マウス異種移植片中の腫よう細胞などのインビボでの細胞であり得る。後者の実施形態においては、腫よう細胞増殖は、例えば、増殖の分子マーカー又は腫よう増殖全体の測定、例えば、腫よう寸法若しくは重量をモニタリングすることによって測定することができる。
【0142】
上記方法において試験することができる適切な試験薬剤としては、コンビナトリアルライブラリー、特定の化学物質、ペプチド及びペプチド模倣物、オリゴヌクレオチド、ディスプレイ(例えばファージディスプレイライブラリー)などの天然物ライブラリー、抗体産物などが挙げられる。試験薬剤は、例えば1つの反応当たり10種類の物質の初期スクリーニングに使用することができ、阻害又は活性化を示すこれらのバッチの物質を個々に試験することができる。試験薬剤は、1nMから1000μM、好ましくは1μMから100μM、より好ましくは1μMから10μMの濃度で使用することができる。
【0143】
上記方法によって特定されたEGFRキナーゼ阻害剤に対する腫よう細胞増殖の感受性を高める薬剤は、(肺癌、すい癌、又は本明細書に記載の他の癌タイプのいずれかを含めて)EGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する応答性が低いことが予示される癌の患者の治療に使用することができ、本発明の追加の実施形態である。したがって、本発明は、さらに、EGFRキナーゼ阻害剤に関連して本明細書に記載する方法を含めて、当分野で公知の方法のいずれかによって処方及び投与することができるかかる薬剤を含む組成物も提供する。EGFRキナーゼ阻害剤に対する腫よう細胞増殖の感受性を高めるかかる薬剤は、例えば、間葉上皮転換(MET)を誘発する薬剤、又はEGFRキナーゼ阻害剤に対する低感受性の原因である特定の細胞活性を阻害する薬剤、又はEGFRキナーゼ阻害剤に対する感受性を高める特定の細胞活性を誘導する薬剤であり得る。適切な薬剤の例としては、EMT誘発剤の拮抗物質、TGF−ベータ拮抗物質又はTGF−ベータ受容体拮抗物質(例えば、抗TGF−ベータ及び抗TGF−ベータ受容体抗体、4−(4−フルオロフェニル)−2−(4−メチルスルフィニルフェニル)−5−(4−ピリジル)−1H−イミダゾール(SB 203580);4−[4−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−5−(2−ピリジル)−1H−イミダゾル−2−イル]−ベンズアミド(SB431542)及びかかる化合物の類似活性の又はより活性なアナログ又は相同体)、FAK、ILK、SRC、FYN又はYESタンパク質チロシンキナーゼの阻害剤及びカルパイン阻害剤が挙げられる。
【0144】
本発明は、さらに、EGFRキナーゼ阻害剤の治療有効量と、EMT誘発剤の1種類以上の拮抗物質とを同時又は逐次的に患者に投与することを含む、患者における腫よう又は腫よう転移を治療する方法も提供する。好ましい実施形態においては、前記腫ようは、1種類以上の上皮バイオマーカーの存在によって上皮表現型を有することが最初に確認される。特定の実施形態においては、前記EMT誘発剤は、抗TGF−ベータ抗体、抗TGF−ベータ受容体抗体、4−(4−フルオロフェニル)−2−(4−メチルスルフィニルフェニル)−5−(4−ピリジル)−1H−イミダゾール(SB203580)又は4−[4−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−5−(2−ピリジル)−1H−イミダゾル−2−イル]−ベンズアミド(SB431542)である。特定の実施形態においては、前記EGFR拮抗物質はエルロチニブである。
【0145】
本発明は、さらに、EGFRキナーゼ阻害剤の治療有効量と、1種類以上の他の細胞傷害剤、化学療法剤若しくは抗癌剤、又はかかる薬剤の効果を高める化合物とを同時又は逐次的に患者に投与することを含む、患者における腫よう又は腫よう転移を治療する上記方法も提供する。
【0146】
本発明に関連して、追加の他の細胞傷害剤、化学療法剤若しくは抗癌剤、又はかかる薬剤の効果を高める化合物としては、例えば、シクロホスファミド(CTX;例えば、CYTOXAN(登録商標))、クロランブシル(CHL;例えば、LEUKERAN(登録商標))、シスプラチン(CisP;例えば、PLATINOL(登録商標))ブスルファン(例えば、MYLERAN(登録商標))、メルファラン、カルムスチン(BCNU)、ストレプトゾトシン、トリエチレンメラミン(TEM)、マイトマイシンCなどのアルキル化剤又はアルキル化作用を有する薬剤;メトトレキセート(MTX)、エトポシド(VP16;例えば、VEPESID(登録商標))、6−メルカプトプリン(6MP)、6−チオcグアニン(6TG)、シタラビン(Ara−C)、5−フルオロウラシル(5−FU)、カペシタビン(例えば、XELODA(登録商標))、ダカルバジン(DTIC)などの抗代謝産物;アクチノマイシンD、ドキソルビシン(DXR;例えば、ADRIAMYCIN(登録商標))、ダウノルビシン(ダウノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシンなどの抗生物質;ビンクリスチン(VCR)、ビンブラスチンなどのビンカアルカロイドなどのアルカロイド、並びにパクリタキセル(例えば、TAXOL(登録商標))及びパクリタキセル(pactitaxel)誘導体、細胞分裂阻害剤、デキサメタゾン(DEX;例えば、DECADRON(登録商標))などのグルココルチコイド及びプレドニゾンなどのコルチコステロイド、ヒドロキシ尿素などのヌクレオシド酵素阻害剤、アスパラギナーゼなどのアミノ酸枯渇酵素、ロイコボリン及び他の葉酸誘導体、類似の多様な制癌剤などの他の制癌剤が挙げられる。以下の薬剤も追加の薬剤として使用することができる:アミフォスチン(arnifostine)(例えば、ETHYOL(登録商標))、ダクチノマイシン、メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード)、ストレプトゾシン、シクロホスファミド、ロムスチン(CCNU)、ドキソルビシンリポ(lipo)(例えば、DOXIL(登録商標))、ゲムシタビン(例えば、GEMZAR(登録商標))、ダウノルビシンリポ(lipo)(例えば、DAUNOXOME(登録商標))、プロカルバジン、マイトマイシン、ドセタキセル(例えば、TAXOTERE(登録商標))、アルデスロイキン、カルボプラチン、オキサリプラチン、クラドリビン、カンプトセシン、CPT 11(イリノテカン)、10−ヒドロキシ7−エチル−カンプトセシン(SN38)、フロクスウリジン、フルダラビン、イホスファミド、イダルビシン、メスナ、インターフェロンベータ、インターフェロンアルファ、ミトキサントロン、トポテカン、ロイプロリド、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、プリカマイシン、ミトタン、ペガスパルガーゼ、ペントスタチン、ピポブロマン、プリカマイシン、タモキシフェン、テニポシド、テストラクトン、チオグアニン、チオテパ、ウラシルマスタード、ビノレルビン、クロランブシル。
【0147】
本発明は、さらに、EGFRキナーゼ阻害剤の治療有効量と、1種類以上の抗ホルモン剤とを同時又は逐次的に患者に投与することを含む、患者における腫よう又は腫よう転移を治療する上記方法も提供する。本明細書では「抗ホルモン剤」という用語は、腫ように対するホルモン作用を調節又は阻害するように作用する天然又は合成の有機又はペプチド化合物を含む。
【0148】
抗ホルモン剤としては、例えば、ステロイド受容体拮抗物質、タモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害4(5)−イミダゾール、他のアロマターゼ阻害剤、42−ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン(keoxifene)、LY 117018、オナプリストン、トレミフェン(例えば、FARESTON(登録商標))などの抗エストロゲン;フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、ゴセレリンなどの抗アンドロゲン;並びに薬剤として許容される、上記いずれかの塩、酸又は誘導体;卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、黄体形成ホルモン(1H)及びLHRH(黄体形成(leuteinizing)ホルモン放出ホルモン)などの糖タンパク質ホルモンの作動物質及び/又は拮抗物質;ZOLADEX(登録商標)(AstraZeneca)として市販されているLHRH作動物質 酢酸ゴセレリン;LHRH拮抗物質D−アラニンアミドN−アセチル−3−(2−ナフタレニル)−D−アラニル−4−クロロ−D−フェニルアラニル−3−(3−ピリジニル)−D−アラニル−L−セリル−N6−(3−ピリジニルカルボニル)−L−リシル−N6−(3−ピリジニルカルボニル)−D−リシル−L−ロイシル−N6−(1−メチルエチル)−L−リシル−L−プロリン(例えば、ANTIDE(登録商標)、Ares−Serono);LHRH拮抗物質 ガニレリクス酢酸塩;ステロイド性抗アンドロゲン 酢酸シプロテロン(CPA)及びMEGACE(登録商標)(Bristol−Myers Oncology)として市販されている酢酸メゲストロール;EULEXIN(登録商標)(Schering Corp.)として市販されている非ステロイド性抗アンドロゲン フルタミド(2−メチル−N−[4,20−ニトロ−3−(トリフルオロメチル)フェニルプロパンアミド);非ステロイド性抗アンドロゲン ニルタミド、(5,5−ジメチル−3−[4−ニトロ−3−(トリフルオロメチル−4’−ニトロフェニル)−4,4−ジメチル−イミダゾリジン−ジオン);並びにRAR、RXR、TR、VDRなどの拮抗物質などの他の非許容受容体拮抗物質が挙げられる。
【0149】
化学療法計画における上記細胞傷害剤及び他の抗癌剤の使用は、一般に、癌治療分野において特徴が明らかであり、本明細書におけるその使用も、耐性及び有効性のモニタリング並びに投与経路及び投与量の制御について、幾らか調節した上で、同様に考慮される。例えば、細胞毒性薬の実際の投与量は、組織培養法によって求められる、患者の培養細胞応答に応じて変化し得る。一般に、投与量は、追加の他の薬剤の非存在下で使用される量よりも減少する。
【0150】
有効な細胞毒性薬の典型的な投与量は、製造者によって推奨される範囲内であり得、インビトロでの応答又は動物モデルにおける応答によって示される場合には、最高で約1桁の濃度又は量だけ減少し得る。したがって、実際の投与量は、医師の判断、患者の状態、及び悪性細胞の初代培養若しくは組織試料の組織培養のインビトロでの応答性に基づく、又は適切な動物モデルにおいて認められる応答に基づく治療方法の有効性によって決まる。
【0151】
本発明は、さらに、EGFRキナーゼ阻害剤の治療有効量と、1種類以上の血管新生阻害剤とを同時又は逐次的に患者に投与することを含む、患者における腫よう又は腫よう転移を治療する上記方法も提供する。
【0152】
抗血管新生剤としては、例えば、SU−5416及びSU−6668(Sugen Inc. of South San Francisco、Calif.、USA)又は例えば、国際公開第99/24440号、同99/62890号、同95/21613号、同99/61422号、同98/50356号、同99/10349号、同97/32856号、同97/22596号、同98/54093号、同98/02438号、同99/16755号、同98/02437号、米国特許第5,883,113号、同5,886,020号、同5,792,783号、同5,834,504号及び同6,235,764号に記載のものなどのVEGFR阻害剤;IM862(Cytran Inc. of Kirkland、Wash.、USA)などのVEGF阻害剤;angiozyme、Ribozyme社(Boulder、Colo.)とChiron社(Emeryville、Calif.)製の合成リボザイム;ベバシズマブ(例えば、AVASTIN(商標)、Genentech、South San Francisco、CA)、VEGFに対する組み換えヒト化抗体などのVEGFに対する抗体;αβ、αβ及びαβインテグリン並びにそのサブタイプ、例えば、シレンギチド(cilengitide)(EMD 121974)などのインテグリン受容体拮抗物質及びインテグリン拮抗物質又は例えば、αβ特異的ヒト化抗体(例えば、VITAXIN(登録商標))などの抗インテグリン抗体;IFN−アルファ(米国特許第41530,901号、同4,503,035号及び同5,231,176号)などの因子;アンギオスタチン及びプラスミノゲン断片(例えば、クリングル1−4、クリングル5、クリングル1−3(O’Reilly, M.S. et al. (1994) Cell 79:315−328;Cao et al. (1996) J. Biol. Chem. 271:29461−29467;Cao et al. (1997) J. Biol. Chem. 272:22924−22928);エンドスタチン(O’Reilly, M.S. et al. (1997) Cell 88:277及び国際公開第97/15666号);トロンボスポンジン(TSP−1;Frazier, (1991) Curr. Opin. Cell Biol. 3:792);血小板因子4(PF4);プラスミノゲンアクチベーター/ウロキナーゼ阻害剤;ウロキナーゼ受容体拮抗物質;ヘパリナーゼ;TNP−4701などのフマギリン類似体;スラミン及びスラミン類似体;血管新生抑制(angiostatic)ステロイド;bFGF拮抗物質;flk−1及びflt−1拮抗物質;MMP−2(マトリックス−メタロプロテイナーゼ2)阻害剤、MMP−9(マトリックス−メタロプロテイナーゼ9)阻害剤などの抗血管新生剤が挙げられる。有用なマトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤の例は、国際公開第96/33172号、同96/27583号、同98/07697号、同98/03516号、同98/34918号、同98/34915号、同98/33768号、同98/30566号、同90/05719号、同99/52910号、同99/52889号、同99/29667号及び同99/07675号、欧州特許公報第818,442号、同780,386号、同1,004,578号、同606,046号及び同931,788号;英国特許公報第9912961号及び米国特許第5,863,949号及び同5,861,510号である。好ましいMMP−2及びMMP−9阻害剤は、MMP−1を阻害する活性をほとんど又は全く持たない阻害剤である。他のマトリックス−メタロプロテイナーゼ(すなわちMMP−1、MMP−3、MMP−4、MMP−5、MMP−6、MMP−7、MMP−8、MMP−10、MMP−11、MMP−12及びMMP−13)に対して、MMP−2及び/又はMMP−9を選択的に阻害する阻害剤がより好ましい。
【0153】
本発明は、さらに、EGFRキナーゼ阻害剤の治療有効量と、1種類以上の腫よう細胞アポトーシス促進剤又はアポトーシス刺激剤とを同時又は逐次的に患者に投与することを含む、患者における腫よう又は腫よう転移を治療する上記方法も提供する。
【0154】
本発明は、さらに、EGFRキナーゼ阻害剤の治療有効量と、1種類以上のシグナル伝達阻害剤とを同時又は逐次的に患者に投与することを含む、患者における腫よう又は腫よう転移を治療する上記方法も提供する。
【0155】
シグナル伝達阻害剤としては、例えば、有機分子などのerbB2受容体阻害剤又はerbB2受容体に結合する抗体、例えば、トラスツヅマブ(例えば、HERCEPTIN(登録商標));他のタンパク質チロシン−キナーゼ阻害剤、例えば、イマチニブ(imitinib)(例えば、GLEEVEC(登録商標));ras阻害剤;raf阻害剤(例えば、BAY 43−9006、Onyx Pharmaceuticals/Bayer Pharmaceuticals);MEK阻害剤;mTOR阻害剤;サイクリン依存性キナーゼ阻害剤;プロテインキナーゼC阻害剤;及びPDK−1阻害剤(かかる阻害剤の幾つかの例の記述、及び癌治療の臨床試験におけるその使用については、Dancey, J. and Sausville, E.A. (2003) Nature Rev. Drug Discovery 2:92−313を参照されたい。)が挙げられる。
【0156】
ErbB2受容体阻害剤としては、例えば、GW−282974(Glaxo Wellcome plc)などのErbB2受容体阻害剤、AR−209(Aronex Pharmaceuticals Inc. of Woodlands、Tex.、USA)、2B−1(Chiron)などのモノクローナル抗体、並びに国際公開第98/02434号、同99/35146号、同99/35132号、同98/02437号、同97/13760号、同95/19970号、米国特許第5,587,458号、同5,877,305号、同6,465,449号及び同6,541,481号に記載のものなどのerbB2阻害剤が挙げられる。
【0157】
本発明は、さらに、EGFRキナーゼ阻害剤の治療有効量と、抗HER2抗体又は免疫療法的に活性なその断片とを同時又は逐次的に患者に投与することを含む、患者における腫よう又は腫よう転移を治療する上記方法も提供する。
【0158】
本発明は、さらに、EGFRキナーゼ阻害剤の治療有効量と、1種類以上の追加の抗増殖剤とを同時又は逐次的に患者に投与することを含む、患者における腫よう又は腫よう転移を治療する上記方法も提供する。
【0159】
追加の抗増殖剤としては、例えば、米国特許第6,080,769号、同6,194,438号、同6,258,824号、同6,586,447号、同6,071,935号、同6,495,564号、同6,150,377号、同6,596,735号、同6,479,513号及び国際公開第01/40217号に開示及び特許請求されている化合物を含めて、酵素ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼの阻害剤及び受容体チロシンキナーゼPDGFRの阻害剤が挙げられる。
【0160】
本発明は、さらに、EGFRキナーゼ阻害剤の治療有効量と、COX II(シクロオキシゲナーゼII)阻害剤とを同時又は逐次的に患者に投与することを含む、患者における腫よう又は腫よう転移を治療する上記方法も提供する。有用なCOX−II阻害剤の例としては、アレコキシブ(alecoxib)(例えば、CELEBREX(商標))、バルデコキシブ及びロフェコキシブが挙げられる。
【0161】
本発明は、さらに、EGFRキナーゼ阻害剤の治療有効量と、放射線治療又は放射性医薬品とを同時又は逐次的に患者に投与することを含む、患者における腫よう又は腫よう転移を治療する上記方法も提供する。
【0162】
放射線源は、治療する患者の外部でも内部でもよい。放射線源が患者の外部にあるときには、療法は外照射療法(EBRT)として知られる。放射線源が患者の内部にあるときには、治療は近接照射療法(BT)と称される。本発明に関連して使用される放射性原子は、ラジウム、セシウム−137、イリジウム−192、アメリシウム−241、金−198、コバルト−57、銅−67、テクネチウム−99、ヨウ素−123、ヨウ素−131及びインジウム−111を含めて、ただしこれらだけに限定されない群から選択することができる。本発明によるEGFRキナーゼ阻害剤が抗体である場合には、抗体をかかる放射性同位体で標識することもできる。
【0163】
放射線療法は、切除不能又は手術不能な腫よう及び/又は腫よう転移を制御する標準治療である。放射線療法を化学療法と組み合わせたときに、結果が改善された。放射線療法は、標的領域に対する高線量照射によって、腫よう組織と正常組織の両方における生殖細胞が死滅するという原理に基づく。照射投与計画は、一般に、放射線吸収線量(Gy)、時間及び分割法の点から規定され、腫よう専門医によって慎重に規定されなければならない。患者が受ける照射量は、種々考慮して決まるが、2つの最も重要なことは、体の他の重要な構造又は器官に対する腫ようの場所と腫ようの拡散度である。放射線療法を受ける患者の典型的な治療コースは、1から6週間の治療スケジュールであり、総線量10から80Gyを患者に約1.8から2.0Gyで1日1回、週5日分割投与する。本発明の好ましい実施形態においては、ヒト患者における腫ようを本発明と放射線の併用治療によって治療したときに相乗作用がある。換言すれば、本発明の組合せを構成する薬剤による腫よう増殖阻害は、放射線と併用したときに、場合によってはさらに化学療法剤又は抗癌剤と併用したときに増強される。補助放射線療法のパラメータは、例えば、国際公開第99/60023号に記載されている。
【0164】
本発明は、さらに、EGFRキナーゼ阻害剤の治療有効量を患者に投与すること、及び抗腫よう免疫応答を増強することができる1種類以上の薬剤による同時又は逐次的治療を含む、患者における腫よう又は腫よう転移を治療する上記方法も提供する。
【0165】
抗腫よう免疫応答を増強することができる薬剤としては、例えば、CTLA4(細胞傷害性リンパ球抗原4)抗体(例えば、MDX−CTLA4)、及びCTLA4を遮断することができる他の薬剤が挙げられる。本発明に使用することができる特異的CTLA4抗体としては、米国特許第6,682,736号に記載の抗体などが挙げられる。
【0166】
本発明に関連して、薬剤又は療法の「有効量」は上で定義した通りである。薬剤又は療法の「治療量未満」は、薬剤又は療法の有効量未満の量であるが、別の薬剤又は療法の有効量又は治療量未満と組み合わせたときに、例えば、得られる有効な効果における相乗作用のために、又は副作用が減少するために、医師が望む結果をもたらすことができる。
【0167】
本明細書では「患者」という用語は、好ましくは、あらゆる目的でEGFRキナーゼ阻害剤による治療を要するヒトを指し、より好ましくは、癌又は前癌状態若しくは病変の治療を要するヒトを指す。しかし、「患者」という用語は、非ヒト動物、好ましくはイヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、非ヒト霊長目などのほ乳動物、とりわけ、EGFRキナーゼ阻害剤による治療を要するほ乳動物も表し得る。
【0168】
好ましい実施形態においては、患者は、癌、前癌状態若しくは病変又は他の異常細胞増殖形態の治療を要するヒトである。癌は、好ましくは、EGFRキナーゼ阻害剤の投与によってある程度又は完全に治療可能である任意の癌である。癌は、例えば、下記癌のいずれかの難治性癌を含めて、肺癌、非小細胞肺(NSCL)癌、細気管支肺胞(bronchioloalviolar)癌、骨癌、すい癌、皮膚癌、頭頚部癌、皮膚黒色腫、眼内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門癌、胃癌(stomach cancer)、胃癌(gastric cancer)、結腸癌、乳癌、子宮癌、ファロピウス管の癌腫、子宮内膜の癌腫、頚部の癌腫、膣の癌腫、外陰部の癌腫、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系の癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織の肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、ぼうこう癌、腎癌、尿管癌、腎細胞癌、腎うの癌腫、中皮腫、肝細胞癌、胆道癌、慢性若しくは急性白血病、リンパ球性リンパ腫、中枢神経系(CNS)の新生物、脊髄軸腫よう、脳幹神経こう腫、多形性こう芽腫、星状細胞腫、シュワン腫、上衣細胞腫、髄芽腫、髄膜腫、へん平上皮癌、下垂体腺腫、又は上記癌の1つ以上の組合せであり得る。前癌状態又は病変としては、例えば、口腔白板症、光線性角化症(日光性角化症)、結腸又は直腸の前癌ポリープ、胃上皮形成異常、腺腫性異形成、遺伝性非腺腫性大腸癌症候群(HNPCC)、バレット食道、ぼうこう異形成及び頚部前癌状態からなる群が挙げられる。
【0169】
本発明ではEGFRキナーゼ阻害剤と追加の抗癌剤(両方の成分を以下では「2種類の活性薬剤」と称する。)「の同時投与」及び「を同時投与する」とは、2種類の活性薬剤の別個又は一緒の任意の投与を指す。2種類の活性薬剤は、併用療法の利点が得られるように設計された適切な投薬計画の一部として投与される。したがって、2種類の活性薬剤は、同じ薬剤組成物の一部として、又は別個の薬剤組成物として、投与することができる。追加の薬剤は、EGFRキナーゼ阻害剤の投与前に、投与と同時に、若しくは投与に続いて投与することができ、又はそれらの組合せとして投与することができる。EGFRキナーゼ阻害剤を、例えば標準治療コース中に、患者に繰り返して投与する場合には、追加の薬剤を、EGFRキナーゼ阻害剤又はそれらの何らかの組合せの各投与前に、投与と同時に、若しくは投与に続いて、又はEGFRキナーゼ阻害剤治療に対して異なる間隔で投与することができ、又はEGFRキナーゼ阻害剤を用いた治療コースの前に、治療コース中の任意の時間に、若しくは治療コースに続いて単回投与することができる。
【0170】
EGFRキナーゼ阻害剤は、典型的には、当分野で公知の、また、例えば国際公開第01/34574号に開示された、患者が治療を受ける癌の(効力と安全性の両方の観点から)最も有効な治療をもたらす投薬計画で患者に投与される。本発明による治療方法を実施する際には、EGFRキナーゼ阻害剤は、治療する癌のタイプ、使用するEGFRキナーゼ阻害剤のタイプ(例えば、小分子、抗体、RNAi、リボザイム又はアンチセンス構築体)及び、例えば公開された臨床試験の結果に基づく、処方医師の医学的判断に応じて、経口、局所、静脈内、腹膜内、筋肉内、関節内、皮下、鼻腔内、眼球内、膣、直腸、皮内経路などの、当分野で公知の任意の有効な様式で投与することができる。
【0171】
投与するEGFRキナーゼ阻害剤の量及びEGFRキナーゼ阻害剤投与のタイミングは、治療する患者のタイプ(人種、性別、年齢、重量など)及び状態、治療する疾患又は症状の重症度、並びに投与経路に応じて決まる。例えば、小分子EGFRキナーゼ阻害剤は、患者に0.001から100mg/kg体重/日若しくは週の用量で単回若しくは分割投与することができ、又は連続注入することができる(例えば、国際公開第01/34574号参照)。特に、エルロチニブHClは、患者に5−200mg/日若しくは100−1600mg/週の用量で単回若しくは分割投与することができ、又は連続注入することができる。好ましい用量は150mg/日である。抗体を用いたEGFRキナーゼ阻害剤又はアンチセンス、RNAi若しくはリボザイム構築体は、患者に0.1から100mg/kg体重/日若しくは週の用量で単回若しくは分割投与することができ、又は連続注入することができる。前記範囲の下限未満の投与量レベルが十二分である場合もあるが、さらに多い用量が、1日を通して幾つかの小投与用量にまず分割すれば、有害な副作用を何ら起こさずに使用できる場合もある。
【0172】
EGFRキナーゼ阻害剤と他の追加の薬剤は、同じ又は異なる経路で別個に又は一緒に、また、多種多様な剤形で、投与することができる例えば、EGFRキナーゼ阻害剤は、好ましくは、経口又は非経口投与される。EGFRキナーゼ阻害剤がエルロチニブHCl(TARCEVA(商標))である場合には、経口投与が好ましい。EGFRキナーゼ阻害剤と他の追加の薬剤の両方を単回又は複数回投与することができる。
【0173】
EGFRキナーゼ阻害剤は、薬剤として許容される種々の不活性担体と一緒に、錠剤、カプセル剤、舐剤、トローチ剤、ハードキャンデー剤、散剤、噴霧剤、クリーム剤、軟膏剤(salve)、坐剤、ゼリー剤、ゲル剤、ペースト剤、ローション剤、軟膏剤(ointment)、エリキシル剤、シロップ剤などの形で投与することができる。かかる剤形の投与は、単回又は複数回用量で実施することができる。担体としては、固体希釈剤又は充填剤、無菌水性媒体、種々の無毒有機溶媒などが挙げられる。経口薬剤組成物は、適切に甘くし、及び/又は香味づけすることができる。
【0174】
EGFRキナーゼ阻害剤は、噴霧剤、クリーム剤、軟膏剤(salve)、坐剤、ゼリー剤、ゲル剤、ペースト剤、ローション剤、軟膏剤(ointment)などの形で、薬剤として許容される種々の不活性担体と組み合わせることができる。かかる剤形の投与は、単回又は複数回用量で実施することができる。担体としては、固体希釈剤又は充填剤、無菌水性媒体、種々の無毒有機溶媒などが挙げられる。
【0175】
タンパク質EGFRキナーゼ阻害剤を含む全製剤は、阻害剤の変性及び/又は分解及び生物活性喪失を回避するように選択すべきである。
【0176】
EGFRキナーゼ阻害剤を含む薬剤組成物の調製方法は当分野で公知であり、例えば国際公開第01/34574号に記載されている。本発明の教示を考慮して、EGFRキナーゼ阻害剤を含む薬剤組成物の調製方法は、上記刊行物及びRemington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, Pa., 18th edition(1990)などの他の公知参考文献から明らかである。
【0177】
EGFRキナーゼ阻害剤の経口投与の場合、活性薬剤の一方又は両方を含む錠剤を、例えば、微結晶セルロース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸二カルシウム、グリシンなどの種々の賦形剤のいずれか、デンプン(好ましくは、トウモロコシ、ジャガイモ又はタピオカデンプン)、アルギン酸、ある種の複合シリカートなどの種々の崩壊剤、ポリビニルピロリドン、スクロース、ゼラチン及びアラビアゴムのような造粒結合剤と組み合わせる。さらに、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、タルクなどの潤滑剤は、錠剤化目的に極めて有用であることが多い。類似のタイプの固体組成物は、ゼラチンカプセル中の充填剤として使用することもできる。これに関連して好ましい材料としては、ラクトース又は乳糖並びに高分子量ポリエチレングリコールなども挙げられる。水性懸濁液剤及び/又はエリキシル剤が経口投与に対して望ましいときには、EGFRキナーゼ阻害剤を種々の甘味剤又は香味料、着色剤又は色素と組み合わせることができ、所望の場合には、同様に乳化剤及び/又は懸濁剤と、水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン、これらの種々の類似の組み合せなどの希釈剤と一緒に組み合わせることができる。
【0178】
活性薬剤の一方又は両方の非経口投与の場合、ゴマ若しくは落花生油溶液又はプロピレングリコール水溶液、並びに活性薬剤又は対応するその水溶性塩を含む無菌水溶液を使用することができる。かかる無菌水溶液は、好ましくは、適切に緩衝され、また、好ましくは、例えば十分な食塩水又はグルコースによって、等張性にされている。これらの特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下及び腹腔内注射用に特に適切である。油状溶液は、関節内、筋肉内及び皮下注射用に適切である。これらの全溶液の無菌条件下での調製は、当業者に周知の標準製薬技術によって容易に実施することができる。タンパク質EGFRキナーゼ阻害剤の投与に選択される任意の非経口処方は、阻害剤の変性及び生物活性喪失を回避するように選択すべきである。
【0179】
さらに、活性薬剤の一方又は両方を、標準製薬実務に従って、例えば、クリーム剤、ローション剤、ゼリー剤、ゲル剤、ペースト剤、軟膏剤(ointment)、軟膏剤(salve)などとして、局所投与することができる。例えば、濃度約0.1%(w/v)から約5%(w/v)のEGFRキナーゼ阻害剤を含む局所製剤を調製することができる。
【0180】
獣医学目的の場合、活性薬剤は、上記剤形のいずれかによって、また、上記経路のいずれかによって、別個に又は一緒に動物に投与することができる。好ましい実施形態においては、EGFRキナーゼ阻害剤をカプセル剤、ボーラス、錠剤、水薬(liquid drench)の形で、注射によって、又は移植片として、投与する。別法として、EGFRキナーゼ阻害剤を動物飼料と一緒に投与することができる。このために、濃厚飼料添加剤又は混合飼料を、正常な動物飼料用に調製することができる。かかる製剤は、標準獣医実務に従って従来の様式で調製される。
【0181】
本明細書では「EGFRキナーゼ阻害剤」という用語は、当分野で現在公知である、又は将来確認される、任意のEGFRキナーゼ阻害剤を指し、患者に投与すると、さもなければその天然リガンドがEGFRと結合することによって生じる下流の生物学的効果のいずれかを含めて、患者におけるEGF受容体の活性化に関連した生物活性を、阻害する任意の化学物質を含む。かかるEGFRキナーゼ阻害剤としては、EGFRの活性化を遮断することができる、又は患者における癌治療に関連する、EGFR活性化の下流の生物学的効果のいずれかを遮断することができる、任意の薬剤などが挙げられる。かかる阻害剤は、受容体の細胞内ドメインに直接結合し、そのキナーゼ活性を阻害することによって作用することができる。或いは、かかる阻害剤は、EGF受容体のリガンド結合部位又はその一部を占め、それによってその天然リガンドを受容体に近づきにくくして、その正常な生物活性を阻止又は抑制することによって作用することができる。或いは、かかる阻害剤は、EGFRポリペプチドの2量体化、若しくはEGFRポリペプチドと他のタンパク質の相互作用を調節することによって作用することができ、又はEGFRのユビキチン化及びエンドサイトーシス分解を増強することができる。EGFRキナーゼ阻害剤としては、低分子量阻害剤、抗体又は抗体断片、アンチセンス構築体、短い抑制性RNA(すなわち、dsRNAによるRNA干渉;RNAi)、リボザイムなどが挙げられるが、これらだけに限定されない。好ましい実施形態においては、EGFRキナーゼ阻害剤は、ヒトEGFRに特異的に結合する小さい有機分子又は抗体である。
【0182】
以下の特許公報に記載のEGFRキナーゼ阻害剤並びに前記EGFRキナーゼ阻害剤の薬剤として許容されるすべての塩及び溶媒和化合物などの、例えば、キナゾリンEGFRキナーゼ阻害剤、ピリド−ピリミジンEGFRキナーゼ阻害剤、ピリミド−ピリミジンEGFRキナーゼ阻害剤、ピロロ−ピリミジンEGFRキナーゼ阻害剤、ピラゾロ−ピリミジンEGFRキナーゼ阻害剤、フェニルアミノ−ピリミジンEGFRキナーゼ阻害剤、オキシインドールEGFRキナーゼ阻害剤、インドロカルバゾールEGFRキナーゼ阻害剤、フタラジンEGFRキナーゼ阻害剤、イソフラボンEGFRキナーゼ阻害剤、キナロン(quinalone)EGFRキナーゼ阻害剤及びチロホスチンEGFRキナーゼ阻害剤を含むEGFRキナーゼ阻害剤:国際公開第96/33980号、同96/30347号、同97/30034号、同97/30044号、同97/38994号、同97/49688号、同98/02434号、同97/38983号、同95/19774号、同95/19970号、同97/13771号、同98/02437号、同98/02438号、同97/32881号、同98/33798号、同97/32880号、同97/3288号、同97/02266号、同97/27199号、同98/07726号、同97/34895号、同96/31510号、同98/14449号、同98/14450号、同98/14451号、同95/09847号、同97/19065号、同98/17662号、同99/35146号、同99/35132号、同99/07701号及び同92/20642号;欧州特許出願EP 520722、EP 566226、EP 787772、EP 837063及びEP 682027;米国特許第5,747,498号、同5,789,427号、同5,650,415号及び同5,656,643号並びに独国特許出願DE 19629652号。低分子量EGFRキナーゼ阻害剤の追加の非限定的例としては、Traxler, P., 1998, Exp. Opin. Ther. Patents 8(12):1599−1625に記載のEGFRキナーゼ阻害剤のいずれかが挙げられる。
【0183】
本発明に従って使用することができる低分子量EGFRキナーゼ阻害剤の好ましい具体例としては、(OSI−774、エルロチニブ又はTARCEVA(商標)(エルロチニブHCl);OSI Pharmaceuticals/Genentech/Rocheとしても知られる)[6,7−ビス(2−メトキシエトキシ)−4−キナゾリン−4−イル]−(3−エチニルフェニル)アミン(米国特許第5,747,498号、国際公開第01/34574号及びMoyer, J.D. et al. (1997) Cancer Res. 57:4838−4848)、(以前はPD183805;Pfizerとして知られた)CI−1033(Sherwood et al., 1999, Proc. Am. Assoc. Cancer Res. 40:723)、PD−158780(Pfizer)、AG−1478(University of California)、CGP−59326(Novartis)、PKI−166(Novartis)、EKB−569(Wyeth)、(GW−572016又はトシル酸ラパチニブ;GSKとしても知られる)GW−2016及び(ZD1839又はIRESSA(商標);Astrazenecaとしても知られる)ゲフィチニブ(Woodburn et al., 1997, Proc. Am. Assoc. Cancer Res. 38:633)が挙げられる。本発明に従って使用することができる特に好ましい低分子量EGFRキナーゼ阻害剤は、[6,7−ビス(2−メトキシエトキシ)−4−キナゾリン−4−イル]−(3−エチニルフェニル)アミン(すなわち、エルロチニブ)、その塩酸塩(すなわち、エルロチニブHCl、TARCEVA(商標))又は他の塩(例えば、エルロチニブメシラート)である。
【0184】
抗体を用いたEGFRキナーゼ阻害剤としては、その天然リガンドによるEGFR活性化をある程度又は完全に遮断することができるあらゆる抗EGFR抗体又は抗体断片などが挙げられる。抗体を用いたEGFRキナーゼ阻害剤の非限定的例としては、Modjtahedi, H., et al., 1993, Br. J. Cancer 67:247−253;Teramoto, T., et al., 1996, Cancer 77:639−645;Goldstein et al., 1995, Clin. Cancer Res. 1:1311−1318;Huang, S.M., et al., 1999, Cancer Res. 15:59(8):1935−40及びYang, X., et al., 1999, Cancer Res. 59:1236−1243に記載の阻害剤が挙げられる。したがって、EGFRキナーゼ阻害剤は、モノクローナル抗体Mab E7.6.3(Yang, X.D. et al. (1999) Cancer Res. 59:1236−43)若しくはMab C225(ATCC受託番号HB−8508)又はその結合特異性を有する抗体若しくは抗体断片であり得る。適切なモノクローナル抗体EGFRキナーゼ阻害剤としては、(セツキシマブ又はERBITUX(登録商標);Imclone Systemsとしても知られる)IMC−C225、ABX−EGF(Abgenix)、EMD 72000(Merck KgaA、Darmstadt)、RH3(York Medical Bioscience Inc.)及びMDX−447(Medarex/Merck KgaA)が挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0185】
抗体を用いたさらに別のEGFRキナーゼ阻害剤は、公知の方法に従って、例えば、とりわけ、ブタ、ウシ、ウマ、ウサギ、ヤギ、ヒツジ及びマウスから選択される宿主動物に、適切な抗原又はエピトープを投与することによって、産生させることができる。当分野で公知の種々のアジュバントを使用して、抗体産生を増加させることができる。
【0186】
本発明の実施に有用である抗体はポリクローナルとすることもできるが、モノクローナル抗体が好ましい。EGFRに対するモノクローナル抗体は、培養中の連続細胞系によって抗体分子を産生する任意の技術を用いて、調製し、単離することができる。産生及び単離技術としては、Kohler及びMilsteinによって最初に記述されたハイブリドーマ技術(Nature, 1975, 256:495−497);ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kosbor et al., 1983, Immunology Today 4:72;Cote et al., 1983, Proc. Nati. Acad. Sci. USA 80:2026−2030)及びEBV−ハイブリドーマ技術(Cole et al, 1985, Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp.77−96)などが挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0187】
或いは、単鎖抗体の産生について記述された技術(例えば、米国特許第4,946,778号参照)を改作して、抗EGFR単鎖抗体を産生することができる。本発明の実施に有用である、抗体を用いたEGFRキナーゼ阻害剤としては、完全な抗体分子のペプシン消化によって生成し得るF(ab’)断片、及びF(ab’)断片のジスルフィド架橋を還元することによって生成し得るFab断片を含めて、ただしこれらだけに限定されない、抗EGFR抗体断片なども挙げられる。或いは、Fab及び/又はscFv発現ライブラリーを構築して(例えば、Huse et al., 1989, Science 246:1275−1281参照)、EGFRに対して所望の特異性を有する断片を迅速に特定することができる。
【0188】
モノクローナル抗体及び抗体断片の産生及び単離技術は当分野で周知であり、Harlow and Lane, 1988, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory及びJ.W. Goding, 1986, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Academic Press, Londonに記載されている。ヒト化抗EGFR抗体及び抗体断片も、Vaughn, T.J. et al., 1998, Nature Biotech. 16:535−539及びその中で引用されている参考文献に記載の技術などの公知技術によって調製することができ、かかる抗体又はその断片も本発明の実施に有用である。
【0189】
或いは、本発明に使用するEGFRキナーゼ阻害剤は、アンチセンスオリゴヌクレオチド構築体に基づくことができる。アンチセンスRNA分子及びアンチセンスDNA分子を含めて、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、細胞中でEGFRに結合して、タンパク質翻訳を阻止し、又はmRNA分解を増加させることによって、EGFR mRNAの翻訳を直接遮断する作用をし、したがってEGFRキナーゼタンパク質レベル、したがって活性を低下させる。例えば、少なくとも約15塩基からなり、EGFRをコードするmRNA転写配列特有の領域に相補的であるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば従来のリン酸ジエステル技術によって合成することができ、例えば静脈内注射又は注入によって投与することができる。配列が既知である遺伝子の遺伝子発現を特異的に阻害するアンチセンス技術を使用する方法は当分野で周知である(例えば、米国特許第6,566,135号、同6,566,131号、同6,365,354号、同6,410,323号、同6,107,091号、同6,046,321号及び同5,981,732号参照)。
【0190】
短い抑制性RNA(siRNA)も、本発明に使用されるEGFRキナーゼ阻害剤として機能し得る。腫よう、対象又は細胞を短い二本鎖RNA(dsRNA)、又は短い二本鎖RNAを産生するベクター若しくは構築体と接触させることによってEGFR遺伝子発現を減少させることができ、それによってEGFRの発現が特異的に阻害される(すなわち、RNA干渉又はRNAi)。適切なdsRNA又はdsRNAをコードするベクターを選択する方法は、配列が既知である遺伝子については当分野で周知である(例えば、Tuschi, T., et al. (1999) Genes Dev. 13(24):3191−3197;Elbashir, S.M. et al. (2001) Nature 411:494−498;Hannon, G.J. (2002) Nature 418:244−251;McManus, M.T. and Sharp, P.A. (2002) Nature Reviews Genetics 3:737−747;Bremmelkamp, T.R. et al. (2002) Science 296:550−553;米国特許第6,573,099号及び同6,506,559号並びに国際公開第01/36646号、同99/32619号及び同01/68836号参照)。
【0191】
リボザイムも、本発明に使用されるEGFRキナーゼ阻害剤として機能し得る。リボザイムは、RNAの特異的切断を触媒することができる酵素RNA分子である。リボザイムの作用機序は、リボザイム分子と相補的標的RNAの配列特異的ハイブリダイゼーションと、それに続くヌクレオチド鎖切断を含む。EGFR mRNA配列のヌクレオチド鎖切断を特異的かつ効率的に触媒する、操作されたヘアピン又はハンマーヘッドモチーフリボザイム分子は、それによって本発明の範囲内で有用である。任意のRNA標的候補内の特異的リボザイム切断部位は、リボザイム切断部位について標的分子を走査することによって最初に特定され、典型的には以下の配列、すなわち、GUA、GUU及びGUCを含む。特定された後、切断部位を含む標的遺伝子領域に対応する約15から20リボヌクレオチドの短いRNA配列を、オリゴヌクレオチド配列を不適当なものにし得る、二次構造などの構造上の予測される特徴について評価することができる。候補標的の適合性は、相補的オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションに対する到達性を、例えばリボヌクレアーゼ保護アッセイによって、試験することによって評価することもできる。
【0192】
EGFRキナーゼ阻害剤として有用であるアンチセンスオリゴヌクレオチドとリボザイムの両方は、公知の方法によって調製することができる。その方法としては、例えば固相ホスホルアミダイト(phosphoramadite)化学合成などによる化学合成技術などが挙げられる。或いは、アンチセンスRNA分子は、RNA分子をコードするDNA配列のインビトロ又はインビボでの転写によって、作製することができる。かかるDNA配列は、T7又はSP6ポリメラーゼプロモーターなどの適切なRNAポリメラーゼプロモーターを取り込む多種多様なベクターに組み込むことができる。本発明のオリゴヌクレオチドに、細胞内の安定性を高め、半減期を延長する手段として、種々の改変を導入することができる。考えられる改変としては、リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドのフランキング配列を分子の5’及び/又は3’末端に付加すること、或いはオリゴヌクレオチド骨格内のホスホジエステラーゼ結合ではなく、ホスホロチオアート又は2’−O−メチル結合を使用することなどが挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0193】
本発明の治療方法に関連して、EGFRキナーゼ阻害剤は、薬剤として許容される担体と、(薬剤として許容されるその塩を含めた)EGFRキナーゼ阻害剤化合物の無毒の治療有効量とを含む組成物として使用される。
【0194】
「薬剤として許容される塩」という用語は、薬剤として許容される無毒の塩基又は酸から調製される塩を指す。本発明の化合物が酸性であるときには、その対応する塩は、無機塩基及び有機塩基を含めて、薬剤として許容される無毒の塩基から都合良く調製することができる。かかる無機塩基から誘導される塩としては、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅(銅(II)及び銅(I))、鉄(III)、鉄(II)、リチウム、マグネシウム、マンガン(マンガン(III)及びマンガン(II))、カリウム、ナトリウム、亜鉛などの塩が挙げられる。特に好ましい塩は、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム及びナトリウム塩である。薬剤として許容される無毒の有機塩基から誘導される塩としては、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、環式アミン及び天然置換アミン、合成置換アミンなどの置換アミンの塩などが挙げられる。塩を形成することができる、他の薬剤として許容される無毒の有機塩基としては、例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N’,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン(triethylameine)、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどのイオン交換樹脂が挙げられる。
【0195】
本発明に使用する化合物が塩基であるときには、その対応する塩は、無機酸及び有機酸を含めて、薬剤として許容される無毒の酸から都合良く調製することができる。かかる酸としては、例えば、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩化水素酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、パモン酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸などが挙げられる。特に好ましい酸は、クエン酸、臭化水素酸、塩化水素酸、マレイン酸、リン酸、硫酸及び酒石酸である。
【0196】
(薬剤として許容されるその塩を含めた)EGFRキナーゼ阻害剤化合物を活性成分として含む、本発明に使用される薬剤組成物は、薬剤として許容される担体を含むことができ、他の治療成分又はアジュバントを含んでいてもよい。他の治療薬としては、上記の細胞傷害剤、化学療法剤、抗癌剤、かかる薬剤の効果を高める薬剤などが挙げられる。本組成物は、経口、直腸、局所及び(皮下、筋肉内及び静脈内を含めた)非経口投与に適切な組成物を含むが、任意の所与の症例において最も適切な経路は、個々の宿主並びに活性成分を投与する症状の性質及び重症度に応じて決まる。薬剤組成物は、好都合には単位剤形とすることができ、薬学分野で周知の方法のいずれかによって調製することができる。
【0197】
実際には、本発明の(薬剤として許容されるその塩を含めた)EGFRキナーゼ阻害剤化合物は、均質混合物中の活性成分として従来の薬剤配合技術によって薬剤担体と混合することができる。担体は、投与、例えば、経口又は(静脈内を含めた)非経口投与に望ましい剤形に応じて多種多様な形をとり得る。したがって、本発明の薬剤組成物は、活性成分の所定量を各々が含むカプセル剤、カシェ剤、錠剤などの経口投与に適切な分離単位として提供することができる。また、本組成物は、散剤、顆粒剤、溶液剤、水系懸濁液剤、非水系液剤、水中油型乳剤又は油中水型液体乳剤として提供することができる。上記一般的剤形に加えて、(薬剤として許容される、その各成分の塩を含めた)EGFRキナーゼ阻害剤化合物は、制御放出手段及び/又は送達装置によって投与することもできる。組合せ組成物は、調剤方法のいずれかによって調製することができる。一般に、かかる方法は、活性成分を1種類以上の必要な成分を構成する担体と会合させる段階を含む。一般に、本組成物は、活性成分を液体担体、微粉固体担体又はその両方と均一に十分混合することによって調製される。次いで、生成物を所望の形(presentation)に都合良く成形することができる。
【0198】
本発明に使用する(薬剤として許容されるその塩を含めた)EGFRキナーゼ阻害剤化合物は、1種類以上の他の治療有効化合物と組み合わせた薬剤組成物に含めることもできる。他の治療有効化合物としては、上記の細胞傷害剤、化学療法剤、抗癌剤、かかる薬剤の効果を高める薬剤などが挙げられる。
【0199】
したがって、本発明の一実施形態においては、薬剤組成物は、抗癌剤と組み合わせたEGFRキナーゼ阻害剤化合物を含むことができる。前記抗癌剤は、アルキル化薬、代謝拮抗剤、微小管阻害剤、ポドフィロトキシン、抗生物質、ニトロソ尿素、ホルモン療法、キナーゼ阻害剤、腫よう細胞アポトーシスの活性化剤及び血管新生阻害剤からなる群から選択される剤である。
【0200】
使用する薬剤担体は、例えば、固体、液体又は気体とすることができる。固体担体の例としては、ラクトース、白土、スクロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アラビアゴム、ステアリン酸マグネシウム及びステアリン酸が挙げられる。液体担体の例は、糖シロップ、落花生油、オリーブ油及び水である。気体担体の例としては二酸化炭素及び窒素が挙げられる。
【0201】
経口剤形用組成物を調製する際には、任意の好都合な薬剤媒体を使用することができる。例えば、水、グリコール、油、アルコール、香味剤、防腐剤、着色剤などを使用して懸濁液剤、エリキシル剤、溶液剤などの経口液体製剤を形成することができる。また、デンプン、糖、微結晶セルロース、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤などの担体を使用して、散剤、カプセル剤、錠剤などの経口固体製剤を形成することができる。錠剤及びカプセル剤は、投与が容易なので好ましい経口投与単位であり、それによって固体薬剤担体が使用される。錠剤は、標準の水系又は非水系技術によって被覆してもよい。
【0202】
本発明に使用される組成物を含む錠剤は、1種類以上の副成分又はアジュバントと場合によっては一緒に、圧縮又はモールディングによって調製することができる。圧縮錠剤は、結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤、界面活性剤又は分散剤と混合されていてもよい、散剤、顆粒剤などの易流動性の活性成分を適切な機械で圧縮することによって調製することができる。モールディングされた錠剤は、不活性希釈液で湿らせた粉末化合物の混合物を適切な機械でモールディングすることによって製造することができる。各錠剤は活性成分約0.05mgから約5gを好ましくは含有し、各カシェ剤又はカプセル剤は活性成分約0.05mgから約5gを好ましくは含有する。
【0203】
例えば、ヒトの経口投与製剤は、全組成物の約5から約95パーセントであり得る適切で好都合な量の担体材料と配合された約0.5mgから約5gの活性薬剤を含み得る。単位剤形は、活性成分を一般に約1mgから約2g、典型的には25mg、50mg、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、800mg又は1000mg含む。
【0204】
非経口投与に適切である、本発明に使用される薬剤組成物は、活性化合物の水溶液又は水懸濁液として調製することができる。例えばヒドロキシプロピルセルロースなどの適切な界面活性剤を含むことができる。分散剤は、グリセリン中で、液状ポリエチレングリコール中で、オイル中のそれらの混合物中で調製することもできる。また、防腐剤は、微生物の有害な増殖を防止するために含めることができる。
【0205】
注射用に適切である、本発明に使用される薬剤組成物としては、無菌水溶液又は分散液が挙げられる。また、本組成物は、かかる無菌注射用溶液又は分散液を即座に調製するための無菌散剤の形とすることができる。すべての場合において、最終注射用剤形は無菌でなければならず、注射を容易にするために効果的に流動性でなければならない。本薬剤組成物は、製造及び貯蔵条件下で安定でなければならず、したがって、細菌、真菌などの微生物の汚染作用に対して好ましくは保護されるべきである。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセリン、プロピレングリコール及び液状ポリエチレングリコール)、植物油及びこれらの適切な混合物を含む溶媒又は分散媒とすることができる。
【0206】
本発明の薬剤組成物は、例えば、エアゾール剤、クリーム剤、軟膏剤、ローション剤、散布粉剤など局所用に適切な剤形とすることができる。また、本組成物は、経皮装置に使用するのに適切な剤形とすることができる。これらの製剤は、(薬剤として許容されるその塩を含めた)EGFRキナーゼ阻害剤化合物を利用して、従来の加工方法によって調製することができる。例として、クリーム剤又は軟膏剤は、親水性材料と水を本化合物の約5重量%から約10重量%と一緒に混合して、所望の粘ちゅう性を有するクリーム剤又は軟膏剤を製造することによって調製される。
【0207】
本発明の薬剤組成物は、担体が固体である直腸投与に適切な形とすることができる。混合物は単位用量坐剤を形成することが好ましい。適切な担体としては、カカオ脂、当分野で通常使用される他の材料などが挙げられる。坐剤は、本組成物を軟化又は溶融担体とまず混合し、続いて型の中で冷却及び成形することによって都合良く形成することができる。
【0208】
上記薬剤は、上述の担体成分に加えて、希釈剤、緩衝剤、香味剤、結合剤、界面活性剤、増粘剤、潤滑剤、(抗酸化剤を含めた)防腐剤などの1種類以上の追加の担体成分を適宜含むことができる。また、製剤を対象レシピエントの血液と等張性にするために他のアジュバントを含むことができる。(薬剤として許容されるその塩を含めた)EGFRキナーゼ阻害剤化合物を含む組成物は、粉体又は濃縮液体の形で調製することもできる。
【0209】
本発明を実施するために使用される化合物の投与量レベルは、およそ、本明細書に記載の通りであり、又はこれらの化合物について当分野で記載されている通りである。しかし、任意の特定の患者に対する具体的用量レベルは、年齢、体重、全般的健康状態、性別、食餌、投与時間、投与経路、排出速度、薬物組合せ、治療を受ける特定の疾患の重篤度を含めて種々の要因に応じて決まることを理解されたい。
【0210】
例えば、本発明に関連する技術領域において利用可能な優れた手引書及び教科書の多くに記載されている(例えば、Using Antibodies, A Laboratory Manual, edited by Harlow, E. and Lane, D., 1999, Cold Spring Harbor Laboratory Press,(例えば、ISBN 0−87969−544−7);Roe B.A. et. al. 1996, DNA Isolation and Sequencing (Essential Techniques Series), John Wiley & Sons.(例えば、ISBN 0−471−97324−0);Methods in Enzymology: Chimeric Genes and Proteins”, 2000, ed. J. Abelson, M. Simon, S. Emr, J. Thorner. Academic Press;Molecular Cloning: a Laboratory Manual, 2001, 3rd Edition, by Joseph Sambrook and Peter MacCallum,(以前のManiatis Cloning manual)(例えば、ISBN 0−87969−577−3);Current Protocols in Molecular Biology, Ed. Fred M. Ausubel, et. al. John Wiley & Sons(例えば、ISBN 0−471−50338−X);Current Protocols in Protein Science, Ed. John E. Coligan, John Wiley & Sons(例えば、ISBN 0−471−11184−8)及びMethods in Enzymology: Guide to protein Purification, 1990, Vol. 182, Ed. Deutscher, M.P., Acedemic Press, Inc.(例えば、ISBN 0−12−213585−7))、又は分子生物学における実験法を記載した多数の大学及び商用のウェブサイトに記載されている、当分野で公知の多数の代替実験法によって、本発明の実施において本明細書に具体的に記載する実験法を首尾良く置換することができる。
【0211】
本発明は、以下の実験の詳細によってより良く理解されるはずである。しかし、当業者は、考察する特定の方法及び結果は、以下の特許請求の範囲に詳述する本発明の単なる説明のためのものにすぎず、これらの方法及び結果に限定されるものでは決してないことを容易に理解されるはずである。
【0212】
実験の詳細:
序論
EGF受容体機能の阻害剤は臨床上有用であり、治療の利点を得る可能性が最も高い患者の部分集合を記述する重要なEGF受容体シグナル伝達経路の定義は、重要な検討領域になった。受容体の内因性タンパク質チロシンキナーゼ活性を活性化する変異、及び/又は下流のシグナル伝達を増加させる変異は、NSCLC及びグリア芽細胞腫において認められた。しかし、EGF受容体阻害剤に対する感受性を付与する原理機序としての変異の役割には議論の余地がある。インビトロでの臨床試験によって、wt EGF受容体細胞系と腫ようでは、EGF受容体阻害に対する細胞応答がかなり異なることが示された。これは、抗アポトーシス性セリンスレオニンキナーゼAktの連続リン酸化をもたらす、EGF受容体とは無関係な、ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ経路の活性化に由来することがある程度示された。PI3−キナーゼ活性化の代替経路に対する分子決定要因、及び結果としてのEGF受容体阻害剤の非感受性は、活発な検討領域である。例えば、PI3−キナーゼ経路を高度に活性化するインスリン様成長因子−1受容体(IGF−1受容体)は、EGF阻害剤に対する細胞の耐性に関係する。選択的EGF受容体阻害に対する非感受性を媒介するのにPI3−キナーゼ経路を介して生存シグナルを発することもできる細胞−細胞及び細胞接着ネットワークの役割はさほど明確ではなく、EGF受容体遮断に対する細胞の感受性に影響を与えるとみなされる。細胞外基質との接着又は細胞−細胞接触の非存在下で増殖及び生存シグナルを維持する、腫よう細胞の能力は、細胞遊走及び転移に関連して重要であるだけでなく、細胞外基質が再構築され、細胞接触阻止が減少する傷様(wound−like)腫よう環境において、細胞増殖及び生存を維持するのにも重要である。本明細書で、本発明者らは、EGF受容体阻害に対するNSCLC及びすい臓細胞の感受性が、ErbBファミリーメンバーシグナル伝達が活性であったE−カドヘリン上皮細胞表現型によって与えられることを実証する。逆に、EGF受容体阻害に対する非感受性は、ビメンチン及び/又はフィブロネクチンの発現に付随した上皮間葉転換(EMT)によって媒介された。
【0213】
材料及び方法
細胞培養及び細胞抽出物の調製
wt EGFRを有するNSCLC系、H292、H358、H322、H441、A549、Calu6、H460、H1703及びSW1573を適切なATCC推奨補足培地中で培養した。細胞抽出物を、プロテアーゼ及びホスファターゼ阻害剤を含む洗浄剤溶解((50mM Tris−HCl、pH8、150mM NaCl、1%NP−40、0.5%デオキシコール酸Na、0.1%SDS)によって調製した。可溶タンパク質濃度をmicro−BSAアッセイ(Pierce、Rockford IL)によって測定した。
【0214】
LC−MS/MSペプチド配列決定によるタンパク質の同定及び定量
抗ホスホチロシン免疫親和性樹脂を、標準方法による固体支持体との共有結合カップリングによって調製した。新しく調製した免疫親和性樹脂を各生物学的実験ごとに使用して、結合を最大にし、キャリーオーバーを削減した。手短に述べると、抗ホスホチロシン抗体を固体支持体に架橋し、非共有結合IgGを低pH溶出によって除去した。新しい親和性樹脂を各生物学的実験ごとに調製して、交差汚染を回避した。抗ホスホチロシン親和性選択によって単離されたタンパク質を、既報(Ross et al, 2004;Haley et al., 2004)のようにトリプシンペプチドのiTRAQ標識によって測定した。ペプチドの質量及び配列情報をエレクトロスプレーLC−MS/MS及びデータベース検索によって求めた。信頼水準>=90%、スコア>=20のペプチドを考慮し、その後、スペクトルを手作業で検査した。ペプチド発現比をlog値に変換し、平均して、エルロチニブ暴露(1uM)後の各時点(1、4及び24時間)に対する単一のタンパク質発現値を得た。ユークリッド階層法及び自己組織化マップを用いて、時間的なlogタンパク質発現比によって、タンパク質を集団に分けた。
【0215】
NSCLC及びすい臓細胞系抽出物の免疫ブロット分析
SDS−PAGEによって分離されたタンパク質からニトロセルロースへの電気泳動的移行、抗体とのインキュベーション及び化学発光第2段階検出(chemiluminescent second step detection)(Pico West;Pierce、Rockford、IL)によってタンパク質免疫検出を実施した。抗体は、E−カドヘリン(Santa Cruz Biotechnology、Santa Cruz、CA;sc21791)、α−カテニン(sc9988)、β−カテニン(sc7963)、γ−カテニン(sc8415)及びBrk(sc1188);ビメンチン(BD Biosciences、San Jose、CA;BD550513)及びフィブロネクチン(BD610077);GAPDH(AbCam、Cambridge、UK);Phospho−Akt(Cell Signaling、Beverly、MA #9271)、Akt(CS、#9272)、Phospho−p44/42 MapキナーゼT202/Y204(Erk1/2;CS #9101)、Phospho−SrcファミリーY416(CS #2101)、Phospho−STAT3Y705(CS、#9131)及びPhospho−S6S235/236(CS、#2211);β−アクチン(Sigma、Saint Louis、MO #A5441)であった。抗体は、さらに、Phospho−Shc(Cell Signaling、#2434、Beverly、MA)、Phospho−パキシリン(Cell Signaling、#2541)、Phospho−Akt(Ser473及びThr308)(Cell Signaling、#9271及び9275)、Phospho−HER2/ErbB2(Cell Signaling、#2245)、Phospho−Her3(Tyr1289)(Cell Signaling #4791)、Phospho−p44/42 Mapキナーゼ(Cell Signaling、#9101)、Phospho−EGFR(Tyr845)(Cell Signaling、#2231)、Phospho−EGFR(Tyr992)(Cell Signaling、#2235)、Phospho−EGFR(Tyr1045)(Cell Signaling、#2237)、EGFR(Cell Signaling、#2232)、Phospho−p70 S6キナーゼ(Cell Signaling、#9205)、Phospho−GSK−3アルファ/ベータ(Cell Signaling、#9331)、Phospho−EGFR(Tyr1068)(Cell Signaling、#2236)、Phospho−Srcファミリー(Tyr416)(Cell Signaling #2101)、Phospho−SAPK/JNK(Thr183/Tyr185)(Cell Signaling #9251)、Phospho−STAT3(Tyr705)(Cell Signaling #9131)、ErbB2(Cell Signaling #2242);ErbB4(Cell Signaling 4795)、PY20(Exalpha Biologicals Inc.)、Brk(Santa Cruz Biochemicals)であった。
【0216】
インビトロ薬理学
1日目、NSCLC細胞を96ウェルプレート中の正常血清含有培地に3−5×10細胞/ウェルで蒔いた。24時間後、エルロチニブを10%DMSO/水溶液中10×濃度でプレートに添加して、最終アッセイ濃度を20μMから8nMの範囲にした。希釈を3段階で実施した。各ウェルの最終DMSO濃度は一定であり、1%を超えなかった。エルロチニブ添加後、細胞をインキュベーター中に戻し、72時間放置した。5日目、Cell−Titer Glo(Promega)を用いて細胞の生存に対する効果を評価した。製造者の指示に従って分析した。実験を少なくともn=3まで3つ組で実施した。データをDMSOのみの対照ウェルに対する阻害割合として正規化し、濃度−応答分析をPrizmグラフ化ソフトウェアを用いて実施した。
【0217】
インビボ薬理学
メスのCD−1 nu/nuマウス(Charles River Laboratories)の側腹部えきか領域の単一皮下部位に、収集したNSCLC腫よう細胞を移植した。腫ようを200±50mmまで増殖させ、その時点で動物を重量(±1g体重)に基づいて8動物/群の投与群に分け、常時確認できるように尾部に入れ墨をした。腫よう体積及び体重を毎週2回測定した。ノギスを用いて2方向を測定し、腫よう体積=(長さ×幅)/2の式を用いて計算することによって、腫よう体積を求めた。データを群ごとに腫よう体積及び体重の平均値における変化%としてプロットした。腫よう増殖阻害(%TGI)を%TGI=100(1−W−W)として求めた。ここで、Wは時間xにおける治療群の腫よう体積中央値であり、Wは時間xにおける対照群の腫よう体積中央値である。TARCEVA(商標)を6%Captisol(CyDex, Inc)のWFI(注射用水)溶液で希釈して投与し、全対照動物に等体積のビヒクルを投与した。腫よう増殖阻害試験を経口胃管栄養法によって1日1回14日間投与した。薬力学的試験を経口胃管栄養法によって1−3日間投与した。1、2及び3日目の投薬から4時間後に4匹の対照及び4匹のTARCEVA(商標)処理動物から腫ようを採取し、液体窒素で急速凍結した。
【0218】
共焦点顕微鏡検査法
カバーガラス上で24時間増殖させた細胞を洗浄し、3.7%ホルムアルデヒドのPBS溶液で固定し、続いて0.5%NP−40で透過化処理した。細胞を洗浄し、5%BSAでブロックし、一次抗体と一緒に室温で2時間、希釈FITC複合二次抗体と一緒に1時間インキュベートした。核をDAPI(300nM 5分間)で染色した。共焦点像を回転対物(spinning objective)共焦点顕微鏡を用いて倍率60Xで取り込んだ。
【0219】
結果
表2 エルロチニブによる最大半減効力(EC50)及び最大阻害(%)に必要な濃度(μM)として表される、エルロチニブに対する感受性の高い、又は感受性の比較的低いwt EGF受容体腫よう細胞系の増殖阻害。腫よう増殖阻害(TGI)は、異種移植片をエルロチニブに暴露後15日目に行われる。
【0220】
【表2】

wt EGF受容体を含むNSCLC系は、エルロチニブに対してインビトロである範囲の感受性を示す。
【0221】
EGFRの触媒ドメインに変異を含むNSCLC細胞系は、選択的EGFR阻害剤エルロチニブ及びゲフィチニブを用いた治療に対して過感受性を示した。かかる変異を有する患者のみが、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤を用いた治療に応答し、及び/又は延命効果を示すことが示唆された。しかし、エルロチニブを用いて実施された無作為プラセボ対照臨床試験によれば、エルロチニブに暴露された患者の生存率は、患者集団におけるかかる変異の予測発生率をはるかに超えた。これは、変異が患者応答の指標ではあるが、他の要因が延命効果の付与に確実に関与していることを示唆した。
【0222】
最初に、上皮成長因子(EGFR)受容体の配列を14種類のNSCLC細胞系において決定した。配列解析によれば、この試験の細胞系の全部において発現されるEGFRは、最近同定された2つの変異(欠失変異及び点変異;データ示さず)に関して野生型であった。受容体が野生型であることが明らかになったので、エルロチニブに対する非小細胞肺癌細胞系パネルの感受性を細胞生存アッセイによって評価した。
【0223】
EGFRについて野生型である、ある範囲のヒトNSCLC細胞系におけるエルロチニブ感受性の分析は、広範な感受性を示した(表2;Griffin et al., 2005)。したがって、本発明者らは、これらの細胞系を、インビトロの異種移植片においてエルロチニブによって媒介される増殖阻害に対して感受性の比較的低い細胞系(H1703、SW1573、H460及びCalu6)、中間の感受性を示す細胞系(A549)、及び感受性の高い細胞系(H441、H358、H322及びH292)に大まかに分類した。これらの差は、感受性の比較的低い細胞系が、Akt/PKBリン酸化に対してエルロチニブによって媒介される阻害を示さなかったこととある程度相関し得る(Griffin et al., 2005)。感受性の最も高い細胞系(H292)から感受性の最も低い細胞系まで(H460)、エルロチニブに対する細胞のある範囲の感受性が認められた。腫ようタイプとエルロチニブ感受性の相関はほとんどなかったが、細気管支肺胞(bronchioalveolar)上皮癌(BAC)由来の細胞系(H358及びH322)がEGFR阻害に対してあるレベルの感受性を示したことは注目に値する。以前の臨床試験の報告によれば、NSCLC患者集団のうち、BAC組織構造を有するNSCLC患者集団は、他のNSCLC患者よりも治療上の利点が大きい傾向にあった。しかし、結論を出すにはより多くのBAC由来の細胞系を試験すべきである。インビトロでの薬理実験データを表2に要約する。濃度反応曲線を2つの方法によって解析した。まず、より伝統的に容認されたIC50値(図示せず)を定義するために、曲線を0−100%範囲でフィッティングさせた。しかし、エルロチニブ及び他のEGFR阻害剤は、細胞傷害性ではなく細胞増殖抑制性として記述され、細胞を完全に死滅させることが決して期待できないので、IC50値がどのように関連しているかは不確かである。実際、感受性の最も高い系でも、約70−80%の最大効力が最も多く観察された。したがって、0−80%の曲線を限定するEC50は、より妥当な効力比較である。
【0224】
インビトロでの細胞生存アッセイとインビボでの効力の関連性を明らかにするために、インビトロでの感受性の高い細胞系から感受性の低い細胞系までの選択された細胞系をマウス異種移植片モデルにおいて試験した。これらの実験のデータを図1及び表2に示す。エルロチニブに対するインビトロでの感受性とインビボでの感受性の相関は顕著であった。インビトロでの感受性が最も高い細胞は、インビボでも感受性が最も高く、全細胞系の感受性の順位は2つのアッセイで同一であった。かかる知見は、異種移植片モデルにおけるエルロチニブ感受性を評価する最初の指針としてインビトロアッセイの使用を強く支持するものである。選択された細胞系は、インビトロ及びインビボでの活性に基づく感受性の範囲によって選択された。やや主観的な分類ではあるが、感受性の高い2つの系(H292及びH358)、2つの中間の系(H441及びA549)、及び感受性の低い2つの系(H460及びCalu−6)を選択した。A549は、インビトロでの低感受性にもかかわらず、インビボでの低レベルの応答のために中間の細胞系として分類された。さらなる試験の原理目的(principle aim)は、これらのNSCLC細胞系におけるエルロチニブ感受性の分子決定要因を明らかにすることであった。
【0225】
上皮及び間葉細胞マーカーの変化は、エルロチニブに対するNSCLC細胞系の感受性と相関する。
【0226】
最初に、インビトロの異種移植片モデルにおいて、タンパク質チロシンリン酸化、及びエルロチニブに対しての感受性の高い又は感受性の比較的低いNSCLC系間の複合体形成の差を測定した。これらの実験は、細胞溶解物の抗ホスホチロシン親和性選択、トリプシン消化及びLC−MS/MSフラグメントイオンスペクトルに基づくタンパク質の同定を含んだ。本発明者らは、エルロチニブに感受性の高いNSCLC系と感受性の比較的低いNSCLC系の異常発現ビメンチン及び又はフィブロネクチンにおける著しい差を認めた(図2A)。典型的には、ビメンチン及びフィブロネクチン発現は、間葉細胞に特徴的であり、上皮細胞系譜ではほんのわずかであり、又は発現しない。ビメンチン発現は主にH1703及びCalu6において見られたが、フィブロネクチン発現はH460細胞において観察された。これら3種類のNSCLC系は、インビトロ(>10uM EC50)及びインビボ(経口で毎日200mg/kg)でのエルロチニブによる増殖阻害に対して感受性が比較的低かった。エルロチニブ感受性の高いNSCLC系H292及びH358、中間の系A549、又は2種類の変異EGF受容体細胞系H1650及びH1975では、ビメンチン又はフィブロネクチンの発現はほとんど又は全く見られなかった。
【0227】
エルロチニブに対して感受性の比較的低いNSCLC系における間葉タンパク質の発現に基づいて、本発明者らは、感受性の比較的低い及び感受性の高いNSCLC細胞系の同じパネルから得られたタンパク質抽出物を上皮又は間葉表現型に特徴的なマーカーの有無について分析した(図2B)。際立ったことには、E−カドヘリンは、感受性の高い細胞系(H441、H358、H322及びH292)において検出されたが、感受性の比較的低い細胞系(H1703、SW1573、H460及びCalu6)では存在しなかった。感受性が中間の細胞系A549は、低いが検出可能な発現を示した。H460を除いて、エルロチニブに対して感受性の比較的低い細胞においても、γ−カテニンの同様の損失が認められた。したがって、感受性の比較的低い細胞系は、上皮細胞マーカータンパク質が発現しないと考えられる。次に、本発明者らは、これらの細胞系が間葉マーカーのフィブロネクチン及び/又はビメンチンを発現するかどうかを問うた。感受性の比較的低い細胞系は、フィブロネクチンとビメンチンの一方又は両方を明らかに発現した(図2B)のに対して、エルロチニブに対する感受性の高い細胞系では、どちらのタンパク質も検出されなかった。興味深いことに、感受性が中間の細胞系A549は、やはり、低いが検出可能なレベルの両方のタンパク質を発現した。しかし、E−カドヘリン及びビメンチンに特異的な抗体による免疫染色を用いた共焦点顕微鏡検査実験(結果示さず)によれば、使用したA549細胞培養物は、細胞の二重染色(dual staining)が観察されなかったので、細胞の混合集団であると考えられる。これは、この細胞系を用いて得られたやや変動する結果を説明することもでき、エルロチニブに対するその中間の感受性と一致する。
【0228】
細胞系譜マーカーの変化を、感受性の比較的低い2種類の細胞系及び感受性の高い2種類の細胞系において、E−カドヘリン及びビメンチンに対する抗体を用いた免疫染色後の共焦点顕微鏡検査法によってさらに分析した(図2C)。H1703又はCalu6細胞においてはE−カドヘリン染色が検出されなかった(図2C、パネル1及び2)のに対して、これらの細胞全部をビメンチンに対して染色することができた(図2C、パネル5及び6)。感受性の高い細胞系H441及びH292ではその逆も成り立ち、これらの細胞の膜は明瞭なE−カドヘリン染色を示した(図2C、パネル3及び4)が、ビメンチン染色は見られなかった(図2C、パネル7及び8)。これらのデータをまとめると、エルロチニブによる増殖阻害に対して感受性の比較的低いNSCLC細胞は、より間葉性の細胞型に移行し、ビメンチン又はフィブロネクチンを発現すると考えられた。これに対し、エルロチニブによる増殖阻害に対して感受性の高い細胞系は、上皮表現型を維持し、E−カドヘリンを発現した。
【0229】
エルロチニブ感受性は、インビボでの腫よう増殖中の上皮マーカーの維持と相関する。
【0230】
マウス中で増殖したNSCLC細胞系由来の腫よう異種移植片は、それぞれの細胞系についてインビトロで認められたエルロチニブ感受性と類似した程度のエルロチニブ感受性を示した。したがって、本発明者らは、インビトロで確認されたタンパク質マーカーがインビボでのエルロチニブ感受性も予示するかどうかを検討したいと考えた。H460、Calu6、A549、H441及びH292細胞から増殖した3つの独立した腫よう異種移植片からタンパク質抽出物を調製した。抽出物の免疫ブロットによれば、E−カドヘリンは、エルロチニブに対して感受性の比較的低いH460及びCalu6細胞由来の異種移植片では検出可能なほど発現せず、中間の感受性のA549細胞由来の異種移植片では低レベルで発現し、エルロチニブに対する感受性の高いH441及びH292細胞系では高レベルで発現した(図3)。類似の結果は、γ−カテニンレベルの分析でも得られた。これに対し、Calu6由来の異種移植片試料は、フィブロネクチンとビメンチン(Calu6)又はフィブロネクチンのみ(H460)を発現し、インビトロでの細胞培養から得られた結果と一致した(図2B)。異種移植片抽出物由来のH441及びH292は、フィブロネクチンもビメンチンもほとんど又は全く発現しなかった。これらのインビボでの結果は、インビトロでのデータをさらに支持するものであり、これらのタンパク質マーカーの存在が細胞培養の人為的結果ではないことを示している。また、これらのインビボでの結果は、エルロチニブ感受性が上皮表現型を有する細胞に限定され、EMTを経た細胞が細胞増殖及び生存についてEGFRシグナル伝達にさほど依存しなくなるという仮説を支持する。
【0231】
EGF受容体阻害に対して感受性の比較的低い又は感受性の高いNSCLC細胞系におけるBrkの発現
これらの実験結果は、エルロチニブ感受性が、化合物のAktシグナル伝達阻害能力によって決まるという作業仮説を導いた。この仮説に従うと、EGFR経路が細胞のAktシグナル伝達にそのようなかなりの影響を及ぼすことができる、これらの細胞に独特であるものは何かという疑問が生じる。(REFS)による最近の論文は、(PTK6としても知られる)非受容体チロシンキナーゼBrkを含む、ErbB3などの他のHerメンバーとのヘテロ2量体化を含んでも、含まなくてもよい、EGFRとAktシグナル伝達の興味深い潜在的関連性を示唆した。したがって、感受性の高いエルロチニブ系と感受性の低いエルロチニブ系におけるBrk発現の関係が存在し得るかどうかを明らかにすることは、EGFR阻害が、感受性の低い系よりも感受性の高い系においてAktとそのように複雑に関連している理由の理論的根拠を与え、重要であった。図4に、NSCLCパネル由来の幾つかの系のウエスタンブロット解析結果、及びそれぞれのBrkタンパク質発現を示す。興味深いことに、高いBrk発現がより高いエルロチニブ感受性に相当し、Brkの非発現、又はより低い発現が感受性の低い系の特徴になり易い範囲では、Brkレベルとエルロチニブ感受性には極めて良好な相関がある。
【0232】
EMTマーカーの分析は、培養すい臓細胞系のエルロチニブ感受性を予示する。
【0233】
次に、本発明者らは、これらの試験を拡張して、これらの知見が他の癌細胞タイプにも適用可能であるかどうかを問うた。エルロチニブは、すい癌におけるゲムシタビンとの第III相組合せ試験において効力を示したので、本発明者らは、インビトロでのエルロチニブによる増殖阻害に対するすい臓細胞系の感受性、並びにすい臓細胞系の上皮及び間葉系譜マーカーの発現を検討した。NSCLCにおけるデータと一致して、エルロチニブに対して感受性の高いすい臓細胞系はE−カドヘリンを発現したが、ビメンチンもフィブロネクチンも発現しなかった。一方、エルロチニブに対して感受性の比較的低いすい臓系は、E−カドヘリンを発現せず、ビメンチン及び/又はフィブロネクチンを発現した(図5)。これらの結果は、免疫ブロット(図5A)と共焦点蛍光顕微鏡試験(図5B)の両方で認められた。
【0234】
高レベルのE−カドヘリンを発現する腫よう患者は、エルロチニブ+化学療法によって治療したときに、化学療法による治療のみと比較して、疾患進行までの時間が延びた。
【0235】
Tributeと称される無作為二重盲検第III相臨床試験に参加した患者から得られた試料をE−カドヘリン発現について免疫組織化学(IHC)によって解析した。Tributeは、米国内の約150の拠点において、組織学的に確認されたNSCLCを有し、以前に化学療法を受けていない1,079名の患者を、エルロチニブ+化学療法(カルボプラチン/パクリタキセル)を化学療法のみと比較して、試験した。患者は、パクリタキセル(200mg/m 静脈内注入3時間)を服用し、続いてカルボプラチン(AUC=6mg/ml×分 Calvertの式を用いて15−30分間注入)を服用し、エルロチニブ(経口100mg/日 耐性のある患者には150mg/日まで増量)を服用し、又は服用しなかった。Tribute試験における87名の患者から得られた腫よう試料、ホルマリン固定され、パラフィン包埋された塊又は非染色スライドを、E−カドヘリン発現を検出するために免疫染色した。染色強度を、87試料のうち染色強度>−2の65の試料に0、1+、2+及び3+のスコアをつけた。22試料は染色強度が<=1であった。
【0236】
組織マイクロアレイ中で集められた、ホルマリン固定され、パラフィン包埋された組織切片について、E−カドヘリンの免疫組織化学を実施した。パラフィンを除いた後、Target Retrieval Solution(DakoCytomation、Carpenteria CA)を用いて110℃で20分間前処理することによって抗原を回収した。次いで、前処理切片を、E−カドヘリンに対する一次マウスモノクローナルIgG2抗体(クローン36、Pharmingen)と一緒に1マイクログラム/mlの濃度で周囲温度で60分間インキュベートした。切片に結合した一次抗体を、ビオチン化ウマ抗マウスIgGを用いて検出し、アビジン−ビオチンペルオキシダーゼ複合化技術(Vectastain ABC Elite、Vector Laboratories)及びクロマゲン(chromagen)としてジアミノベンジジンを用いて可視化した。
【0237】
腫ようが膜及び細胞質の高レベルのE−カドヘリンに対して染色された患者は、疾患進行までの時間(TTP)が、エルロチニブと化学療法の組合せで治療したときに、化学療法のみよりもかなり延びる(34.0週対19.3週、p=0.0028)ことが判明した。結果を表2に示す。また、結果をKaplan−Meier曲線によって図6aに示す。逆に、腫ようが膜及び細胞質の低度のE−カドヘリン発現(染色強度<=1)を示す患者は、図6bにおいてKaplan−Meier曲線によって示される、2つの投与群のTTPに有意差がなかった。
【0238】
【表3】

【0239】
結論
E−カドヘリン発現の損失、及びより間葉性の表現型の獲得は、複数の上皮由来の固形腫ようにおける予後不良と相関した。E−カドヘリンの損失は、EGF受容体阻害に対する細胞及び異種移植片の非感受性と相関した。γ−カテニン及びBrkの損失も、E−カドヘリンよりも低度に相関した。逆に、細胞の間葉マーカー、ビメンチン、フィブロネクチン又はフィブリリンの獲得は、EGF受容体阻害剤に対する感受性の損失と相関する。本発明者らは、部分的又は完全な上皮間葉転換が、インビトロの異種移植片におけるEGF受容体阻害剤に対する細胞応答にネガティブに影響し、EGF受容体キナーゼ阻害剤及び抗EGF受容体抗体療法の利点を得る可能性が最も高い患者の指標になることを明確に示した。
【0240】
略語
EGF、上皮成長因子;EMT、上皮間葉転換;NSCLC、非小細胞肺癌;HNSCC、頭頚部へん平上皮癌;CRC、結腸直腸癌;MBC、転移性乳癌;EGFR、上皮成長因子受容体;Brk、(タンパク質チロシンキナーゼ6(PTK6)としても知られる)乳房腫ようキナーゼ;LC、液体クロマトグラフィー;MS、質量分析法;IGF−1、インスリン様成長因子−1;TGFα、トランスフォーミング成長因子アルファ;HB−EGF、ヘパリン結合性上皮成長因子;LPA、リゾホスファチジン酸;TGFα、トランスフォーミング成長因子アルファ;IC50、最大半減の抑制濃度;pY、ホスホチロシン;wt、野生型;PI3K、ホスファチジルイノシトール−3キナーゼ;GAPDH、グリセルアルデヒド3−ホスファートデヒドロゲナーゼ。
【0241】
参照による援用
本明細書に開示するすべての特許、公開特許出願及び他の参考文献を参照により本明細書に組込まれる。
【0242】
均等物
当業者は、本明細書に具体的に記載された本発明の具体的実施形態の多数の均等物をせいぜい定常的な実験法によって認識し、又は確認することができる。かかる均等物は以下の特許請求の範囲に包含されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0243】
【図1A】NSCLC異種移植片に対するエルロチニブのインビボ活性を示すグラフである。
【図1B】NSCLC異種移植片に対するエルロチニブのインビボ活性を示すグラフである。
【図1C】NSCLC異種移植片に対するエルロチニブのインビボ活性を示すグラフである。
【図1D】NSCLC異種移植片に対するエルロチニブのインビボ活性を示すグラフである。
【図1E】NSCLC異種移植片に対するエルロチニブのインビボ活性を示すグラフである。
【図1F】NSCLC異種移植片に対するエルロチニブのインビボ活性を示すグラフである。
【図2】A. インビトロでのEGFRキナーゼ阻害に対して感受性の高いNSCLC系又は感受性の比較的低いNSCLC系のプロテオミクスプロファイリングによれば、エルロチニブに対して感受性の比較的低い細胞系におけるビメンチン及びフィブロネクチンペプチドのLC−MS/MS検出が顕著に増加した。B. EGF受容体阻害に対して感受性の高いNSCLC系は、E−カドヘリンレベルが上昇する。γ−及びα−カテニンに対して観察された傾向も示す。E−カドヘリン免疫ブロットを、2個の異なる抗体を用いて実施して、類似の結果を得た(データ示さず)。エルロチニブによる増殖阻害に対して感受性の比較的低いNSCLC系は、間葉タンパク質ビメンチン及び/又はフィブロネクチンを発現した。全EGF受容体タンパク質発現と感受性の関連性は認められなかったが、全試験系が検出可能なEGF受容体を発現した。C. エルロチニブ、H292及びH441による増殖阻害に対して感受性の高いNSCLC系の共焦点顕微鏡検査では、E−カドヘリンの膜発現が見られたが、エルロチニブに対して感受性の比較的低い細胞系Calu6及びH1703では見られなかった。逆に、感受性の比較的低い系Calu6及びH1703は、ビメンチンに対して中間系フィラメントが染色されたが、エルロチニブに対して感受性の高い系H292及びH441は染色されなかった。
【図2C】A. インビトロでのEGFRキナーゼ阻害に対して感受性の高いNSCLC系又は感受性の比較的低いNSCLC系のプロテオミクスプロファイリングによれば、エルロチニブに対して感受性の比較的低い細胞系におけるビメンチン及びフィブロネクチンペプチドのLC−MS/MS検出が顕著に増加した。B. EGF受容体阻害に対して感受性の高いNSCLC系は、E−カドヘリンレベルが上昇する。γ−及びα−カテニンに対して観察された傾向も示す。E−カドヘリン免疫ブロットを、2個の異なる抗体を用いて実施して、類似の結果を得た(データ示さず)。エルロチニブによる増殖阻害に対して感受性の比較的低いNSCLC系は、間葉タンパク質ビメンチン及び/又はフィブロネクチンを発現した。全EGF受容体タンパク質発現と感受性の関連性は認められなかったが、全試験系が検出可能なEGF受容体を発現した。C. エルロチニブ、H292及びH441による増殖阻害に対して感受性の高いNSCLC系の共焦点顕微鏡検査では、E−カドヘリンの膜発現が見られたが、エルロチニブに対して感受性の比較的低い細胞系Calu6及びH1703では見られなかった。逆に、感受性の比較的低い系Calu6及びH1703は、ビメンチンに対して中間系フィラメントが染色されたが、エルロチニブに対して感受性の高い系H292及びH441は染色されなかった。
【図3】NSCLC系をSCIDマウスにおいて皮下異種移植片として約500mmの体積まで増殖させ、切除し、液体窒素で急速冷凍した(4動物/細胞系)。腫よう組織を、記述したように凍結粉砕し、洗浄剤で溶解し、SDS−PAGEに供し、E−カドヘリン、γ−カテニン、Brk、フィブロネクチン、ビメンチン及びGAPDHに対する抗体をプローブにした免疫ブロットに供した。インビトロでの結果と一致して、E−カドヘリンの発現は、エルロチニブに対して感受性の高い系及び感受性の比較的低い系に対するフィブロネクチンに限定された。
【図4】EGFRキナーゼ阻害に対して感受性の最も高いNSCLC細胞系において、より高いBrk発現レベルを示す免疫ブロットの図である。
【図5】A)EGF受容体阻害に対して感受性の高いすい臓細胞系は、上皮細胞結合(junction)タンパク質E−カドヘリン及びγ−カテニンを高レベルで発現する。間葉マーカービメンチンは、感受性の低いPANC1細胞において最も豊富であった。B)エルロチニブ、BxPC3による増殖阻害に対して感受性の高いすい臓細胞系の共焦点顕微鏡検査では、E−カドヘリンの膜発現が見られたが、エルロチニブに対して感受性の比較的低い細胞系MiaPaca2では見られなかった。逆に、感受性の比較的低い系MiaPaca2は、ビメンチンに対して中間系フィラメントが染色されたが、エルロチニブに対して感受性の高い系BxPC3は染色されなかった。
【図6a】疾患進行までの時間(TTP)を示すKaplan−Meier曲線は、化学療法と組み合わせてエルロチニブを投与した患者では、化学療法のみを受けた、腫ようのE−カドヘリン染色強度が>=2である患者よりも長い。
【図6b】疾患進行までの時間(TTP)を示すKaplan−Meier曲線は、化学療法と組み合わせてエルロチニブによる治療を受けた、腫ようE−カドヘリン染色強度が<=1である患者では、化学療法のみを受けた患者よりも延長されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫よう細胞によって発現される上皮バイオマーカーのレベルを評価すること、及び腫ようがEGFRキナーゼ阻害剤による治療に有効に応答するかどうかを予測することを含み、腫よう細胞上皮バイオマーカーの高い発現レベルが、EGFRキナーゼ阻害剤による治療に有効に応答する腫ようと相関しており、上皮バイオマーカーがBrk、γ−カテニン、α1−カテニン、α2−カテニン、α3−カテニン、ケラチン8、ケラチン18、コネキシン31、プラコフィリン3、stratafin 1、ラミニンアルファ−5及びST14から選択される、癌患者が、EGFRキナーゼ阻害剤による治療に有効に応答する腫ように罹患しているかどうかを予測する方法。
【請求項2】
EGFRキナーゼ阻害剤がエルロチニブを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
腫よう細胞によって発現される間葉バイオマーカーのレベルを評価すること、及び腫ようがEGFRキナーゼ阻害剤による治療に有効に応答するかどうかを予測することを含み、腫よう細胞間葉バイオマーカーの高い発現レベルが、EGFRキナーゼ阻害剤による治療にさほど有効に応答しない腫ようと相関しており、間葉バイオマーカーがビメンチン、フィブロネクチン、フィブリリン−1、フィブリリン−2、コラーゲンアルファ−2(IV)、コラーゲンアルファ−2(V)、LOXL1、ニドジェン、C11orf9、テネイシン、胚性EDBフィブロネクチン、チューブリンアルファ−3及びエピモルフィンから選択される、癌患者が、EGFRキナーゼ阻害剤による治療に有効に応答する腫ように罹患しているかどうかを予測する方法。
【請求項4】
EGFRキナーゼ阻害剤がエルロチニブを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
腫よう細胞によって発現される1種類以上の上皮バイオマーカーのレベルを評価すること、及びEGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう細胞増殖の感受性を予測することを含み、腫よう細胞上皮バイオマーカー全部の同時の高い発現レベルがEGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する高い感受性と相関する、EGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう細胞増殖の感受性を予測する方法。
【請求項6】
1種類以上の上皮バイオマーカーがE−カドヘリン及びBrkを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
1種類以上の上皮バイオマーカーがE−カドヘリン及びγ−カテニンを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
EGFRキナーゼ阻害剤がエルロチニブを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
腫よう細胞によって発現される1種類以上の間葉バイオマーカーのレベルを評価すること、及びEGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう細胞増殖の感受性を予測することを含み、腫よう細胞間葉バイオマーカー全部の同時の低い又は検出不可能な発現レベルがEGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する高い感受性と相関する、EGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう細胞増殖の感受性を予測する方法。
【請求項10】
1種類以上の間葉バイオマーカーがビメンチン及びフィブロネクチンを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
EGFRキナーゼ阻害剤がエルロチニブを含む、請求9に記載の方法。
【請求項12】
腫よう細胞によって発現される上皮バイオマーカーのレベルを評価すること、腫よう細胞によって発現される間葉バイオマーカーのレベルを評価すること、及びEGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう細胞増殖の感受性を予測することを含み、上皮バイオマーカー発現レベルと間葉バイオマーカー発現レベルとの高い比がEGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する高い感受性と相関する、EGFRキナーゼ阻害剤による阻害に対する腫よう細胞増殖の感受性を予測する方法。
【請求項13】
上皮バイオマーカーがE−カドヘリンを含み、間葉バイオマーカーがフィブロネクチンを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
上皮バイオマーカーがBrkを含み、間葉バイオマーカーがフィブロネクチンを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
上皮バイオマーカーがE−カドヘリンを含み、間葉バイオマーカーがビメンチンを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
上皮バイオマーカーがγ−カテニンを含み、間葉バイオマーカーがフィブロネクチンを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
EGFRキナーゼ阻害剤がエルロチニブを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
腫よう細胞が、以前に上皮間葉転換した腫よう細胞として特徴づけられ、前記腫よう細胞の試料をEGFRキナーゼ阻害剤と接触させること、前記腫よう細胞の同一試料を試験薬剤の存在下でEGFRキナーゼ阻害剤と接触させること、EGFRキナーゼ阻害剤によって媒介される増殖阻害を試験薬剤の存在下と非存在下で比較すること、並びに試験薬剤がEGFRキナーゼ阻害剤に対する腫よう細胞増殖の感受性を高める薬剤であるかどうかを判定することを含む、EGFRキナーゼ阻害剤に対する腫よう細胞増殖の感受性を高める薬剤を特定する方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図2】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【公表番号】特表2008−533490(P2008−533490A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−502016(P2008−502016)
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際出願番号】PCT/US2006/009403
【国際公開番号】WO2006/101925
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(506330575)オーエスアイ・ファーマスーティカルズ・インコーポレーテッド (25)
【出願人】(596168317)ジェネンテック・インコーポレーテッド (372)
【氏名又は名称原語表記】GENENTECH,INC.
【Fターム(参考)】