下半身用衣類
【課題】着用者の動作に拘わらず、着用中継続して、小股部のシルエットを美しく保持することができる下半身用衣類を提供すること。
【解決手段】前身頃１と後身頃２を備えた下半身用衣類において、後身頃２は、後身頃中央部３と両側脇部４，５とに区画されて構成されており、後身頃中央部３には、非伸縮性又は低伸縮性布生地３ａが、股部６から臀部山頂点付近７まで、非伸縮性又は低伸縮性領域Ａが形成され、前記臀部山頂点付近７から上部の後身頃中央部３には、高伸縮性布生地による高伸縮性領域Ｂが形成されている。
【解決手段】前身頃１と後身頃２を備えた下半身用衣類において、後身頃２は、後身頃中央部３と両側脇部４，５とに区画されて構成されており、後身頃中央部３には、非伸縮性又は低伸縮性布生地３ａが、股部６から臀部山頂点付近７まで、非伸縮性又は低伸縮性領域Ａが形成され、前記臀部山頂点付近７から上部の後身頃中央部３には、高伸縮性布生地による高伸縮性領域Ｂが形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、ガードルなどの下半身用衣類の小股部のシルエットを美しく出すための下半身用衣類に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
従来、ガードルなどの下半身用衣類は、腹部を引き締めて腹部のシルエットを美しく補整し、また、ヒップアップを図りつつヒップの丸み（膨らみ）を出してヒップのシルエットを美しく補整するようにしたものが多数提案されている。
例えば、縦方向に比べて横方向の伸びが大きい第１伸縮性布でパンツの前後身頃の中央部を構成し、それらの両側脇部を縦横に非常に良く伸びる柔軟な第２伸縮性布で構成し、特に、後身頃の中央部は、腰部から股部に向けて左右両側それぞれ半円弧状ラインで接近して急激に幅狭となるように略Ｔ字形の細幅に構成し、かつ、該後身頃中央部の第１伸縮性布に対して両側脇部の第２伸縮性布を縫着するに当たり、第２伸縮性布側に前記半円弧状ラインに沿ってギャザーを付けて縫着することによって、着用時の後身頃中央部の第１伸縮性布を着用者の臀裂溝に食い込ませて両側のヒップの谷間を深くすると共に、その両側には、縦横に非常に良く伸びる柔軟な第２伸縮性布をギャザーを付けた状態で配することによって、両側のヒップの丸み（膨らみ）を出してヒップのシルエットを美しく補整するようにしたものが提案されている（特許文献１参照）。
【０００３】
また、ガードルの後身頃中央部に腰部から股部に向けて逆Ｙ字形のストレッチテープ片を臀裂部及び臀部下辺に沿って縫着することにより、ヒップの丸み（膨らみ）を出してヒップのシルエットを美しく補整するようにしたものも提案されている（特許文献２参照）。
【特許文献１】特公平１−３０９２１号公報
【特許文献２】特開平４−１６３３０２号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
前記特許文献１、２のものは、着用当初の段階では、目的通りに、ヒップの丸み（膨らみ）を出してヒップのシルエットを美しく補整することができるものの、その後の着用者の動作、例えば、腰部を中心とする前屈動作や捻転動作等によって、着用者の後身頃側における腰部と股部の間の皮膚表面の長さが前身頃側に比べて大きく伸縮変化し、この伸縮変化に対して、衣類の後身頃がうまく追従せず、衣類のウエスト部がずり下がったり、臀裂部に深く食い込んだり、股部の布生地がよじれたり、弛みが発生することが避けられず、小股部のシルエットを美しく保持することができないという問題点があった。
【０００５】
本発明は、従来の下半身用衣類の前記問題点に鑑みて開発されたもので、着用者の動作に拘わらず、着用中継続して、小股部のシルエットを美しく保持することができる下半身用衣類を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【０００６】
前記目的を達成するために本発明は、前身頃と後身頃を備えた下半身用衣類において、後身頃は、後身頃中央部と両側脇部とに区画されて構成されており、後身頃中央部には、非伸縮性又は低伸縮性布生地が、股部から臀部山頂点付近まで、非伸縮性又は低伸縮性領域が形成され、前記臀部山頂点付近から上部の後身頃中央部には、高伸縮性布生地による高伸縮性領域が形成されていることを特徴としている。
この構成によれば、着用者の動作、例えば、腰部を中心とする前屈動作や捻転動作等によって、着用者の後身頃側における腰部と股部の間の皮膚表面の長さが前身頃側に比べて大きく伸縮変化した場合においても、この伸縮変化を、衣類の後身頃中央部の臀部山頂点付近から上部に形成した高伸縮性布生地による高伸縮性領域によって主として吸収させて、衣類の後身頃中央部の股部から臀部山頂点付近までの部分（前記非伸縮性又は低伸縮性領域）を殆ど伸縮移動変化させずに、着用初期とほぼ同じ状態を維持させることができる。特に、本発明において、非伸縮性又は低伸縮性布生地を、股部から臀部山頂点付近まで配置している理由は、着用時の臀部山頂点が、最も後ろ側に突き出ている（側面から見て高い）位置となっているのであり、前記非伸縮性又は低伸縮性布生地を、股部からこの位置までにすることによって、引っ張り上げの効果が高く、かつ、それより上の伸びしろ部分を広く取れるようになっているからである。このように、本発明の前記構成によれば、着用者の動作に拘わらず、着用中継続して、小股部のシルエットを美しく保持することができる。
【０００７】
また、前記後身頃中央部は、高伸縮性布生地製の表生地と裏生地とで構成されており、これら表生地と裏生地との間に前記非伸縮性又は低伸縮性布生地が配置されている。
この構成によれば、後身頃中央部における股部から臀部山頂点付近までの範囲を非伸縮性又は低伸縮性領域とするために設けた非伸縮性又は低伸縮性布生地を、高伸縮性布生地製の表生地と裏生地とで被覆して下半身用衣類の表裏いずれからも目立たないように隠すことができ、外観体裁を向上させることができる。
また、前記後身頃の両側脇部は、緊締力の切替可能な高伸縮性布生地で構成されており、臀部領域の下辺には、該臀部領域よりも高緊締力のヒップアップ領域が形成されている。
【０００８】
この構成によれば、前記効果に加えて、臀部領域の緊締力をヒップアップ領域の緊締力よりも低くしてあることによって、ヒップの丸み（膨らみ）を出し、かつ、ヒップアップ領域の緊締力を臀部領域の緊締力よりも高くしてあることによって、ヒップアップを図ることができ、これらによって、ヒップのシルエットを美しく補整することができる。
【発明の効果】
【０００９】
本発明によれば、着用者の動作に拘わらず、着用中継続して、小股部のシルエットを美しく保持することができる下半身用衣類を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１０】
以下、本発明に係る下半身用衣類の実施形態を図面を参照して説明する。
図１、図２は、本発明を適用したガードルの後面図と前面図であって、前身頃１と後身頃２を備えており、後身頃２は、後身頃中央部３と両側脇部４，５とに区画されて構成されている。
後身頃中央部３には、図１及び図３に示すように、マーキゼットのような非伸縮性又は低伸縮性布生地３ａが、股部６から臀部山頂点付近７まで、後身頃中央部３の表生地３ｂ及び裏生地３ｃと同じ幅形状で配置されて非伸縮性又は低伸縮性領域Ａが形成され、前記臀部山頂点付近７から上部の後身頃中央部３には、パワーネット生地のような高伸縮性布生地による高伸縮性領域Ｂが形成されている。
【００１１】
前記後身頃中央部３の表生地３ｂと裏生地３ｃとは、パワーネット生地のような高伸縮性布生地製とされており、これら表生地３ｂと裏生地３ｃとの間に前記非伸縮性又は低伸縮性布生地３ａが配置されている。
前記後身頃２の両側脇部４，５は、パワー切替パワーネット生地のような緊締力の切替可能な高伸縮性布生地で構成されており、臀部領域Ｃの下辺には、臀部領域Ｃよりも高緊締力のヒップアップ領域Ｄが形成されている。
なお、パワーネット生地とは、弾性糸（例えば、ポリウレタン糸など）同士、或いは、弾性糸と非弾性糸（例えば、ナイロン糸など）とを経編機により編成した高伸縮性編地であって、その編組織は、パワーネット組織と呼ばれ、ラッセル編みに類似したものとされており、各部一様な緊締力としたものをプレーンパワーネット生地と呼ばれ、また、所要部分だけを、他の部分に比べて、弾性糸の太さや本数を変化（糸の供給を切替変化）させて緊締力を強弱変化させたものをパワー切替パワーネット生地と呼ばれている。
【００１２】
前記後身頃中央部３の形状は、大略、下端よりも上端が幅広とされ、詳しくは、股部６から上方途中まで左右方向幅が次第に幅狭になり、該途中から腰部８に向けて左右方向幅が次第に幅広となり、両側脇部４，５との境界線が円弧状曲線となるように裁断されている。後身頃中央部３の最も幅狭部分は、臀部山頂点付近７とされ、両側縁を円弧状曲線としているのは、ヒップの丸みを美しく補整するためである。そして、後身頃中央部３の下端は、股部６に配置されているマチ布９に重合縫着され、左右方向両側縁は、左右両側脇部４，５に重合縫着され、上端は、腰部８の腰ゴム部１０に重合縫着されている。ここで、後身頃中央部３の下端（非伸縮性又は低伸縮性布生地３ａの下端）を、股部６に配置されているマチ布９に重合縫着してあることによって、小股部をすっきりさせるのに重要な効果が得られる。即ち、従来技術（特許文献１など）では、本発明の上記したようなマチ部片及び非伸縮性又は低伸縮性布生地３ａを上記の如く配置する構成を有していないため、ウエスト部を持ち上げてみても途中で吸収されて小股部を持ち上げることに有効に作用しない憂いがあったが、本発明によれば、途中の吸収を大幅に減少させて小股部の持ち上げに有効に作用させることができ、その結果、従来技術のものよりも小股部のシルエットをきれいにする効果をより高くすることができるのである。
【００１３】
一方、前身頃１は、図２に示すように、前身頃中央部１１と両側脇部１２，１３とに区画されて構成されている。前身頃中央部１１は、プレーンパワーネット生地のような高伸縮性布生地製の表生地と裏生地とからなり、その形状は、股部６から腰部８に向けて左右方向幅が次第に幅広となり、両側脇部１２，１３との境界線は直線となるように裁断されている。そして、前身頃中央部の下端は、股部６に配置されているマチ布９に重合縫着され、左右方向両側縁は、左右両側脇部１２，１３に重合縫着され、上端は、腰部８の腰ゴム部１０に重合縫着されている。
【００１４】
前身頃１の両側脇部１２，１３は、後身頃２の両側脇部４，５と連続して一連に生地取り裁断されており、下部に脚筒部１４，１５が一連に構成されている。前身頃１の両側脇部１２，１３および後身頃２の両側脇部４，５を構成する生地は、無地でもよく、柄入りでもよい。そして、前身頃中央部１１の表生地及び後身頃中央部３の表生地３ｂは、前身頃１の両側脇部１２，１３および後身頃２の両側脇部４，５を構成する生地と同じ無地の生地又は柄入り生地で構成するのが好ましい。
本発明の実施形態は、以上の構成からなるため、次のような作用効果が期待できる。即ち、本発明の下半身用衣類は、前身頃１と後身頃２を備えた下半身用衣類において、後身頃２は、後身頃中央部３と両側脇部４，５とに区画されて構成されており、後身頃中央部３には、非伸縮性又は低伸縮性布生地３ａが、股部６から臀部山頂点付近７まで、後身頃中央部３と同じ幅形状で配置されて非伸縮性又は低伸縮性領域Ａが形成され、前記臀部山頂点付近７から上部の後身頃中央部３には、高伸縮性布生地による高伸縮性領域Ｂが形成されているため、着用者の動作、例えば、腰部８を中心とする前屈動作や捻転動作等によって、着用者の後身頃２側における腰部８と股部６の間の皮膚表面の長さが前身頃１側に比べて大きく伸縮変化した場合においても、この伸縮変化を、衣類の後身頃中央部３の臀部山頂点付近７から上部に形成した高伸縮性布生地による高伸縮性領域Ｂによって主として吸収させて、衣類の後身頃中央部３の股部６から臀部山頂点付近７までの部分（前記非伸縮性又は低伸縮性領域Ａ）を殆ど伸縮移動変化させずに、着用初期とほぼ同じ状態を維持させることができる。特に、本発明において、非伸縮性又は低伸縮性布生地３ａを、股部６から臀部山頂点付近７まで配置している理由は、着用時の臀部山頂点付近７が、最も後ろ側に突き出ている（側面から見て高い）位置となっているのであり、前記非伸縮性又は低伸縮性布生地３ａを、股部６からこの位置までにすることによって、引っ張り上げの効果が高く、かつ、それより上の伸びしろ部分を広く取れるようになっているからである。このように、本発明の前記構成によれば、着用者の動作に拘わらず、着用中継続して、小股部のシルエットを美しく保持することができる。
【００１５】
また、前記後身頃中央部３は、高伸縮性布生地製の表生地３ｂと裏生地３ｃとで構成されており、これら表生地３ｂと裏生地３ｃとの間に前記非伸縮性又は低伸縮性布生地３ａが配置されていることによって、後身頃中央部３における股部６から臀部山頂点付近７までの範囲を非伸縮性又は低伸縮性領域Ａとするために設けた非伸縮性又は低伸縮性布生地３ａを、高伸縮性布生地製の表生地３ｂと裏生地３ｃとで被覆して下半身用衣類の表裏いずれからも目立たないように隠すことができ、外観体裁を向上させることができる。
また、前記後身頃２の両側脇部４，５は、緊締力の切替可能な高伸縮性布生地で構成されており、臀部領域Ｃの下辺には、該臀部領域Ｃよりも高緊締力のヒップアップ領域Ｄが形成されているため、前記効果に加えて、臀部領域Ｃの緊締力をヒップアップ領域Ｄの緊締力よりも低くしてあることになってヒップの丸み（膨らみ）を出し、かつ、ヒップアップ領域Ｄの緊締力を臀部領域Ｃの緊締力よりも高くしてあることによって、ヒップアップを図ることができ、これらによって、ヒップのシルエットを美しく補整することができる。
【００１６】
本発明の実施形態は以上からなるが、本発明は、この実施形態にのみ制約されるものではなく、種々変更して実施することもできる。また、前記実施形態は、本発明をガードルに適用した場合を例示しているが、これ以外のもの、例えば、ショーツ、パンツ、パンティストッキング、その他の下半身用衣類に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【００１７】
【図１】本発明を適用したガードルの後面図である。
【図２】本発明を適用したガードルの前面図である。
【図３】後身頃中央部の生地構成を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【００１８】
１ 前身頃
２ 後身頃
３ 後身頃中央部
３ａ 非伸縮性又は低伸縮性布生地
３ｂ 表生地
３ｃ 裏生地
Ａ 非伸縮性又は低伸縮性領域
Ｂ 高伸縮性領域
Ｃ 臀部領域
Ｄ ヒップアップ領域
４，５ 両側脇部
６ 股部
７ 臀部山頂点付近
８ 腰部
９ マチ布
１０ 腰ゴム部
１１ 前身頃中央部
１２，１３ 両側脇部
１４，１５ 脚筒部
【技術分野】
【０００１】
本発明は、ガードルなどの下半身用衣類の小股部のシルエットを美しく出すための下半身用衣類に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
従来、ガードルなどの下半身用衣類は、腹部を引き締めて腹部のシルエットを美しく補整し、また、ヒップアップを図りつつヒップの丸み（膨らみ）を出してヒップのシルエットを美しく補整するようにしたものが多数提案されている。
例えば、縦方向に比べて横方向の伸びが大きい第１伸縮性布でパンツの前後身頃の中央部を構成し、それらの両側脇部を縦横に非常に良く伸びる柔軟な第２伸縮性布で構成し、特に、後身頃の中央部は、腰部から股部に向けて左右両側それぞれ半円弧状ラインで接近して急激に幅狭となるように略Ｔ字形の細幅に構成し、かつ、該後身頃中央部の第１伸縮性布に対して両側脇部の第２伸縮性布を縫着するに当たり、第２伸縮性布側に前記半円弧状ラインに沿ってギャザーを付けて縫着することによって、着用時の後身頃中央部の第１伸縮性布を着用者の臀裂溝に食い込ませて両側のヒップの谷間を深くすると共に、その両側には、縦横に非常に良く伸びる柔軟な第２伸縮性布をギャザーを付けた状態で配することによって、両側のヒップの丸み（膨らみ）を出してヒップのシルエットを美しく補整するようにしたものが提案されている（特許文献１参照）。
【０００３】
また、ガードルの後身頃中央部に腰部から股部に向けて逆Ｙ字形のストレッチテープ片を臀裂部及び臀部下辺に沿って縫着することにより、ヒップの丸み（膨らみ）を出してヒップのシルエットを美しく補整するようにしたものも提案されている（特許文献２参照）。
【特許文献１】特公平１−３０９２１号公報
【特許文献２】特開平４−１６３３０２号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
前記特許文献１、２のものは、着用当初の段階では、目的通りに、ヒップの丸み（膨らみ）を出してヒップのシルエットを美しく補整することができるものの、その後の着用者の動作、例えば、腰部を中心とする前屈動作や捻転動作等によって、着用者の後身頃側における腰部と股部の間の皮膚表面の長さが前身頃側に比べて大きく伸縮変化し、この伸縮変化に対して、衣類の後身頃がうまく追従せず、衣類のウエスト部がずり下がったり、臀裂部に深く食い込んだり、股部の布生地がよじれたり、弛みが発生することが避けられず、小股部のシルエットを美しく保持することができないという問題点があった。
【０００５】
本発明は、従来の下半身用衣類の前記問題点に鑑みて開発されたもので、着用者の動作に拘わらず、着用中継続して、小股部のシルエットを美しく保持することができる下半身用衣類を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【０００６】
前記目的を達成するために本発明は、前身頃と後身頃を備えた下半身用衣類において、後身頃は、後身頃中央部と両側脇部とに区画されて構成されており、後身頃中央部には、非伸縮性又は低伸縮性布生地が、股部から臀部山頂点付近まで、非伸縮性又は低伸縮性領域が形成され、前記臀部山頂点付近から上部の後身頃中央部には、高伸縮性布生地による高伸縮性領域が形成されていることを特徴としている。
この構成によれば、着用者の動作、例えば、腰部を中心とする前屈動作や捻転動作等によって、着用者の後身頃側における腰部と股部の間の皮膚表面の長さが前身頃側に比べて大きく伸縮変化した場合においても、この伸縮変化を、衣類の後身頃中央部の臀部山頂点付近から上部に形成した高伸縮性布生地による高伸縮性領域によって主として吸収させて、衣類の後身頃中央部の股部から臀部山頂点付近までの部分（前記非伸縮性又は低伸縮性領域）を殆ど伸縮移動変化させずに、着用初期とほぼ同じ状態を維持させることができる。特に、本発明において、非伸縮性又は低伸縮性布生地を、股部から臀部山頂点付近まで配置している理由は、着用時の臀部山頂点が、最も後ろ側に突き出ている（側面から見て高い）位置となっているのであり、前記非伸縮性又は低伸縮性布生地を、股部からこの位置までにすることによって、引っ張り上げの効果が高く、かつ、それより上の伸びしろ部分を広く取れるようになっているからである。このように、本発明の前記構成によれば、着用者の動作に拘わらず、着用中継続して、小股部のシルエットを美しく保持することができる。
【０００７】
また、前記後身頃中央部は、高伸縮性布生地製の表生地と裏生地とで構成されており、これら表生地と裏生地との間に前記非伸縮性又は低伸縮性布生地が配置されている。
この構成によれば、後身頃中央部における股部から臀部山頂点付近までの範囲を非伸縮性又は低伸縮性領域とするために設けた非伸縮性又は低伸縮性布生地を、高伸縮性布生地製の表生地と裏生地とで被覆して下半身用衣類の表裏いずれからも目立たないように隠すことができ、外観体裁を向上させることができる。
また、前記後身頃の両側脇部は、緊締力の切替可能な高伸縮性布生地で構成されており、臀部領域の下辺には、該臀部領域よりも高緊締力のヒップアップ領域が形成されている。
【０００８】
この構成によれば、前記効果に加えて、臀部領域の緊締力をヒップアップ領域の緊締力よりも低くしてあることによって、ヒップの丸み（膨らみ）を出し、かつ、ヒップアップ領域の緊締力を臀部領域の緊締力よりも高くしてあることによって、ヒップアップを図ることができ、これらによって、ヒップのシルエットを美しく補整することができる。
【発明の効果】
【０００９】
本発明によれば、着用者の動作に拘わらず、着用中継続して、小股部のシルエットを美しく保持することができる下半身用衣類を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１０】
以下、本発明に係る下半身用衣類の実施形態を図面を参照して説明する。
図１、図２は、本発明を適用したガードルの後面図と前面図であって、前身頃１と後身頃２を備えており、後身頃２は、後身頃中央部３と両側脇部４，５とに区画されて構成されている。
後身頃中央部３には、図１及び図３に示すように、マーキゼットのような非伸縮性又は低伸縮性布生地３ａが、股部６から臀部山頂点付近７まで、後身頃中央部３の表生地３ｂ及び裏生地３ｃと同じ幅形状で配置されて非伸縮性又は低伸縮性領域Ａが形成され、前記臀部山頂点付近７から上部の後身頃中央部３には、パワーネット生地のような高伸縮性布生地による高伸縮性領域Ｂが形成されている。
【００１１】
前記後身頃中央部３の表生地３ｂと裏生地３ｃとは、パワーネット生地のような高伸縮性布生地製とされており、これら表生地３ｂと裏生地３ｃとの間に前記非伸縮性又は低伸縮性布生地３ａが配置されている。
前記後身頃２の両側脇部４，５は、パワー切替パワーネット生地のような緊締力の切替可能な高伸縮性布生地で構成されており、臀部領域Ｃの下辺には、臀部領域Ｃよりも高緊締力のヒップアップ領域Ｄが形成されている。
なお、パワーネット生地とは、弾性糸（例えば、ポリウレタン糸など）同士、或いは、弾性糸と非弾性糸（例えば、ナイロン糸など）とを経編機により編成した高伸縮性編地であって、その編組織は、パワーネット組織と呼ばれ、ラッセル編みに類似したものとされており、各部一様な緊締力としたものをプレーンパワーネット生地と呼ばれ、また、所要部分だけを、他の部分に比べて、弾性糸の太さや本数を変化（糸の供給を切替変化）させて緊締力を強弱変化させたものをパワー切替パワーネット生地と呼ばれている。
【００１２】
前記後身頃中央部３の形状は、大略、下端よりも上端が幅広とされ、詳しくは、股部６から上方途中まで左右方向幅が次第に幅狭になり、該途中から腰部８に向けて左右方向幅が次第に幅広となり、両側脇部４，５との境界線が円弧状曲線となるように裁断されている。後身頃中央部３の最も幅狭部分は、臀部山頂点付近７とされ、両側縁を円弧状曲線としているのは、ヒップの丸みを美しく補整するためである。そして、後身頃中央部３の下端は、股部６に配置されているマチ布９に重合縫着され、左右方向両側縁は、左右両側脇部４，５に重合縫着され、上端は、腰部８の腰ゴム部１０に重合縫着されている。ここで、後身頃中央部３の下端（非伸縮性又は低伸縮性布生地３ａの下端）を、股部６に配置されているマチ布９に重合縫着してあることによって、小股部をすっきりさせるのに重要な効果が得られる。即ち、従来技術（特許文献１など）では、本発明の上記したようなマチ部片及び非伸縮性又は低伸縮性布生地３ａを上記の如く配置する構成を有していないため、ウエスト部を持ち上げてみても途中で吸収されて小股部を持ち上げることに有効に作用しない憂いがあったが、本発明によれば、途中の吸収を大幅に減少させて小股部の持ち上げに有効に作用させることができ、その結果、従来技術のものよりも小股部のシルエットをきれいにする効果をより高くすることができるのである。
【００１３】
一方、前身頃１は、図２に示すように、前身頃中央部１１と両側脇部１２，１３とに区画されて構成されている。前身頃中央部１１は、プレーンパワーネット生地のような高伸縮性布生地製の表生地と裏生地とからなり、その形状は、股部６から腰部８に向けて左右方向幅が次第に幅広となり、両側脇部１２，１３との境界線は直線となるように裁断されている。そして、前身頃中央部の下端は、股部６に配置されているマチ布９に重合縫着され、左右方向両側縁は、左右両側脇部１２，１３に重合縫着され、上端は、腰部８の腰ゴム部１０に重合縫着されている。
【００１４】
前身頃１の両側脇部１２，１３は、後身頃２の両側脇部４，５と連続して一連に生地取り裁断されており、下部に脚筒部１４，１５が一連に構成されている。前身頃１の両側脇部１２，１３および後身頃２の両側脇部４，５を構成する生地は、無地でもよく、柄入りでもよい。そして、前身頃中央部１１の表生地及び後身頃中央部３の表生地３ｂは、前身頃１の両側脇部１２，１３および後身頃２の両側脇部４，５を構成する生地と同じ無地の生地又は柄入り生地で構成するのが好ましい。
本発明の実施形態は、以上の構成からなるため、次のような作用効果が期待できる。即ち、本発明の下半身用衣類は、前身頃１と後身頃２を備えた下半身用衣類において、後身頃２は、後身頃中央部３と両側脇部４，５とに区画されて構成されており、後身頃中央部３には、非伸縮性又は低伸縮性布生地３ａが、股部６から臀部山頂点付近７まで、後身頃中央部３と同じ幅形状で配置されて非伸縮性又は低伸縮性領域Ａが形成され、前記臀部山頂点付近７から上部の後身頃中央部３には、高伸縮性布生地による高伸縮性領域Ｂが形成されているため、着用者の動作、例えば、腰部８を中心とする前屈動作や捻転動作等によって、着用者の後身頃２側における腰部８と股部６の間の皮膚表面の長さが前身頃１側に比べて大きく伸縮変化した場合においても、この伸縮変化を、衣類の後身頃中央部３の臀部山頂点付近７から上部に形成した高伸縮性布生地による高伸縮性領域Ｂによって主として吸収させて、衣類の後身頃中央部３の股部６から臀部山頂点付近７までの部分（前記非伸縮性又は低伸縮性領域Ａ）を殆ど伸縮移動変化させずに、着用初期とほぼ同じ状態を維持させることができる。特に、本発明において、非伸縮性又は低伸縮性布生地３ａを、股部６から臀部山頂点付近７まで配置している理由は、着用時の臀部山頂点付近７が、最も後ろ側に突き出ている（側面から見て高い）位置となっているのであり、前記非伸縮性又は低伸縮性布生地３ａを、股部６からこの位置までにすることによって、引っ張り上げの効果が高く、かつ、それより上の伸びしろ部分を広く取れるようになっているからである。このように、本発明の前記構成によれば、着用者の動作に拘わらず、着用中継続して、小股部のシルエットを美しく保持することができる。
【００１５】
また、前記後身頃中央部３は、高伸縮性布生地製の表生地３ｂと裏生地３ｃとで構成されており、これら表生地３ｂと裏生地３ｃとの間に前記非伸縮性又は低伸縮性布生地３ａが配置されていることによって、後身頃中央部３における股部６から臀部山頂点付近７までの範囲を非伸縮性又は低伸縮性領域Ａとするために設けた非伸縮性又は低伸縮性布生地３ａを、高伸縮性布生地製の表生地３ｂと裏生地３ｃとで被覆して下半身用衣類の表裏いずれからも目立たないように隠すことができ、外観体裁を向上させることができる。
また、前記後身頃２の両側脇部４，５は、緊締力の切替可能な高伸縮性布生地で構成されており、臀部領域Ｃの下辺には、該臀部領域Ｃよりも高緊締力のヒップアップ領域Ｄが形成されているため、前記効果に加えて、臀部領域Ｃの緊締力をヒップアップ領域Ｄの緊締力よりも低くしてあることになってヒップの丸み（膨らみ）を出し、かつ、ヒップアップ領域Ｄの緊締力を臀部領域Ｃの緊締力よりも高くしてあることによって、ヒップアップを図ることができ、これらによって、ヒップのシルエットを美しく補整することができる。
【００１６】
本発明の実施形態は以上からなるが、本発明は、この実施形態にのみ制約されるものではなく、種々変更して実施することもできる。また、前記実施形態は、本発明をガードルに適用した場合を例示しているが、これ以外のもの、例えば、ショーツ、パンツ、パンティストッキング、その他の下半身用衣類に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【００１７】
【図１】本発明を適用したガードルの後面図である。
【図２】本発明を適用したガードルの前面図である。
【図３】後身頃中央部の生地構成を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【００１８】
１ 前身頃
２ 後身頃
３ 後身頃中央部
３ａ 非伸縮性又は低伸縮性布生地
３ｂ 表生地
３ｃ 裏生地
Ａ 非伸縮性又は低伸縮性領域
Ｂ 高伸縮性領域
Ｃ 臀部領域
Ｄ ヒップアップ領域
４，５ 両側脇部
６ 股部
７ 臀部山頂点付近
８ 腰部
９ マチ布
１０ 腰ゴム部
１１ 前身頃中央部
１２，１３ 両側脇部
１４，１５ 脚筒部
【特許請求の範囲】
【請求項１】
前身頃と後身頃を備えた下半身用衣類において、後身頃は、後身頃中央部と両側脇部とに区画されて構成されており、前記後身頃中央部には、非伸縮性又は低伸縮性布生地が、股部から臀部山頂点付近まで、非伸縮性又は低伸縮性領域が形成され、前記臀部山頂点付近から上部の後身頃中央部には、高伸縮性布生地による高伸縮性領域が形成されていることを特徴とする下半身用衣類。
【請求項２】
前記後身頃中央部は、高伸縮性布生地製の表生地と裏生地とで構成されており、これら表生地と裏生地との間に前記非伸縮性又は低伸縮性布生地が配置されていることを特徴とする請求項１に記載の下半身用衣類。
【請求項３】
前記後身頃の両側脇部は、緊締力の切替可能な高伸縮性布生地で構成されており、臀部領域の下辺には、該臀部領域よりも高緊締力とされたヒップアップ領域が形成されていることを特徴とする請求項１又は２に記載の下半身用衣類。
【請求項１】
前身頃と後身頃を備えた下半身用衣類において、後身頃は、後身頃中央部と両側脇部とに区画されて構成されており、前記後身頃中央部には、非伸縮性又は低伸縮性布生地が、股部から臀部山頂点付近まで、非伸縮性又は低伸縮性領域が形成され、前記臀部山頂点付近から上部の後身頃中央部には、高伸縮性布生地による高伸縮性領域が形成されていることを特徴とする下半身用衣類。
【請求項２】
前記後身頃中央部は、高伸縮性布生地製の表生地と裏生地とで構成されており、これら表生地と裏生地との間に前記非伸縮性又は低伸縮性布生地が配置されていることを特徴とする請求項１に記載の下半身用衣類。
【請求項３】
前記後身頃の両側脇部は、緊締力の切替可能な高伸縮性布生地で構成されており、臀部領域の下辺には、該臀部領域よりも高緊締力とされたヒップアップ領域が形成されていることを特徴とする請求項１又は２に記載の下半身用衣類。
【図１】
【図２】
【図３】
【図２】
【図３】
【公開番号】特開２０１０−１４４３０７（Ｐ２０１０−１４４３０７Ａ）
【公開日】平成２２年７月１日（２０１０．７．１）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００８−３２５８０８（Ｐ２００８−３２５８０８）
【出願日】平成２０年１２月２２日（２００８．１２．２２）
【出願人】（０００００１３３９）グンゼ株式会社 (919)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２２年７月１日（２０１０．７．１）
【国際特許分類】
【出願日】平成２０年１２月２２日（２００８．１２．２２）
【出願人】（０００００１３３９）グンゼ株式会社 (919)
【Ｆターム（参考）】
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