説明

下地用塗装金属板

【課題】 タイルなどの化粧材のズレ落ちを防止しながら化粧材の施工を短時間で安価に行うことができる下地用塗装金属板を提供する。
【解決手段】 化粧材を表面に付着させる下地用塗装金属板Aにおいて、表面粗度として算術平均粗さが1.0μm以上を有する。算術平均粗さが1.0μm以上に粗面化された下地用塗装金属板Aの表面に化粧材を接着することによって、その粗面化された表面の凹凸を接着剤の流れ落ちに対する抵抗とすることができる。しかも、化粧材の施工現場では化粧材のズレ落ちを防止するためのスペーサや止め治具が不要であり、また、接着剤を二度塗りしたり二種類の接着剤を用いたり粘度の高い接着剤を用いたりする必要もなくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイルなどの化粧材を表面に設けた外装壁などを形成するにあたって、化粧材を付着させる下地として用いられる下地用塗装金属板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、金属板からなる基板の表面に化粧材として多数個のタイルを配列して接着することにより、タイル壁を構築するためのタイルパネルが提供されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、このタイルパネルは基板に多数個のタイルを接着した状態で施工するために重くなって施工しにくいものであった。
【0003】
そこで、金属板を柱や胴縁などの建物下地に取り付けた後、この金属板の表面に多数枚のタイル接着してタイル壁を構築することが考えられるが、建物下地に取り付けられた金属板の表面(鉛直面)にタイルを接着する場合、接着剤が硬化するまでにタイルの重量が接着剤にかかって接着剤が金属板の表面を流れ落ちるために、これに伴ってタイルがズレ落ちて(面ズレして)所望の配列状態に接着することができなかった。従って、タイルのズレ落ちを防止する各種の対策が採られている。
【0004】
例えば、タイルを金属板の下部から順次貼り付けて積み上げていくことによって、タイルのズレ落ちを防止する方法が考えられている。しかし、この場合は上下に隣り合うタイルの間に間隙を設けて目地を形成する場合に、上側のタイルが間隙にズレ落ちて一定幅の目地を形成することができないという問題があり、また、一定幅の目地を確保しようとすると上記間隙にスペーサを配置した状態でタイルを接着しなければならず、スペーサの着脱作業が必要となって施工を短時間で行うことができなかった。
【0005】
また、できるだけ軽量のタイルを使用することにより、タイルのズレ落ちを防止する方法が考えられている。しかし、この場合はタイルを軽量な材料で形成したり軽量化のための形状、例えば、薄い形状に加工したりしなければならず、高級感を損なうという問題があった。
【0006】
また、接着剤を二度塗りすることにより、タイルのズレ落ちを防止する方法が考えられている。すなわち、金属板の表面に接着剤を塗布して養生硬化させた後、その養生硬化した接着剤の表面にさらに接着剤を塗布してタイルを接着する方法である。しかし、この場合は一回目の接着剤が養生硬化するまでタイルの接着を行うことができず、ほぼ2日間の施工期間が必要となって施工を短時間で行うことができないという問題があった。
【0007】
さらに、接着剤として下地用の接着剤とその上に塗布されるタイル接着用の接着剤との二種類の接着剤を用いたり、粘度の高い接着剤を用いたりしてタイルのズレ落ちを防止する方法が考えられているが、いずれの場合も接着剤の塗布に時間を要し、施工を短時間で行うことができないという問題があった。
【0008】
加えて、接着剤が硬化するまでにタイルのズレ落ちを防止するための止め治具を用いることも考えられるが、止め治具の使用には熟練した技術と手間がかかり、この場合も施工を短時間で行うことができないという問題があった。
【特許文献1】特開平6−81442号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、タイルなどの化粧材のズレ落ちを防止しながら化粧材の施工を短時間で安価に行うことができる下地用塗装金属板を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の下地用塗装金属板は、化粧材Bを表面に付着させる下地用塗装金属板Aにおいて、表面粗度として算術平均粗さが1.0μm以上を有することを特徴とするものである。
【0011】
この発明によれば、算術平均粗さが1.0μm以上に粗面化された下地用塗装金属板Aの表面に化粧材Bを付着することによって、その粗面化された表面の凹凸を接着剤Cの流れ落ちに対する抵抗とすることができ、下地用塗装金属板Aの粗面化された表面と接着剤Cとの間でアンカー効果による一次的な密着を生じさせて、接着剤Cが硬化するまでの間に化粧材Bを貼り付け状態で維持してズレ落ちを防止することができるものである。しかも、化粧材Bの施工現場では化粧材Bのズレ落ちを防止するためのスペーサや止め治具が不要であり、また、接着剤Cを二度塗りしたり二種類の接着剤を用いたり粘度の高い接着剤を用いたりする必要もなくなり、化粧材Bを短時間で安価に施工することができるものである。
【0012】
本発明にあっては、金属板1の表面に骨材2を含有する塗料を塗布することによって、表面が粗面化された塗膜3を形成することができる。この場合、塗膜3の表面に骨材2による凹凸を形成することができ、金属板1の腐食などを防止するための塗膜3を利用して粗面を容易に形成することができるものである。
【0013】
また、本発明にあっては、骨材2として粉体、ビーズ、鱗片状、繊維の形状から選ばれる少なくとも一を用いることが好ましい。この場合、接着剤Cの粘度や硬化時間などの性状に応じて適宜な骨材2を選択して用いることができ、化粧材Bのズレ落ち防止の効果を高くすることが可能である。
【0014】
また、本発明にあっては、骨材2としてガラス、金属、シリカ、樹脂の材質から選ばれる少なくとも一を用いることが好ましい。この場合、接着剤Cの粘度や硬化時間などの性状に応じて適宜な骨材2を選択して用いることができ、化粧材Bのズレ落ち防止の効果を高くすることが可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、タイルなどの化粧材のズレ落ちを防止しながら化粧材の施工を短時間で安価に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0017】
本発明の下地用塗装金属板Aは、基板となる金属板1の表面に塗膜3を全面に亘って形成したものであって、その塗膜3の表面粗度をJIS B0601−1994に規定されている算術平均粗さ(Ra)で1.0μm以上にしたものである。このような表面粗度を有する塗膜3は、塗膜3中に粗面化用の骨材2を含有することによって形成することができ、これにより、金属板1の腐食などを防止するための塗膜3を利用して下地用塗装金属板Aの表面を容易に粗面化することができる。また、骨材2を含有する塗料を金属板1の表面に塗布して骨材2を含有する塗膜3を形成することによって、塗膜3の形成と同時に粗面化された塗膜3を形成することができ、骨材を含有しない塗膜をサンドブラストやエッチングなどにより粗面化する場合に比べて粗面化のための工程が少なく、粗面化された塗膜3を容易に形成することができる。尚、本発明の下地用塗装金属板Aは表裏両面とも粗面化してもよいが、少なくとも化粧材Bを接着する方の表面は上記のような粗面に形成する。
【0018】
本発明では、基板となる金属板1として、鋼板、亜鉛めっき鋼板、アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板、鉄板、チタン板、アルミニウム板、銅板など、従来より建材として用いられている各種金属板を使用することができる。金属板1の厚みは建材として使用する場合の必要な物性を得られればよく、特に限定はないが、例えば、0.2〜0.8mmの厚みを有するのが好ましい。
【0019】
本発明では、骨材2として粉体、ビーズ、鱗片状、繊維の各種形状のものをそれぞれ単独であるいは併用して用いることができる。また、本発明では、骨材2としてガラス、金属、金属化合物、シリカなどの無機骨材や樹脂製の有機骨材などの各種材質のものをそれぞれ単独であるいは併用して用いることができる。さらに、本発明では、骨材2を配合する塗料としては、ポリエステル塗料、ウレタン塗料、アルキッド樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、アクリル樹脂塗料などの汎用塗料を用いることができる。そして、本発明では、骨材2の形状や材質、粒径や長さ、各種の骨材の組合せ、塗料への骨材の配合量、塗料の種類や粘度などを適宜調整することによって、塗膜3の表面粗度を算術平均粗さRaが1.0μm以上の所望の値となるように設定することができる。従って、接着剤Cの粘度や硬化時間などの性状や化粧材Bの重量や材質などに応じて最適な表面粗度を有する塗膜3を容易に形成することができ、化粧材Bのズレ落ち防止の効果を高くすることが可能である。尚、一種類の骨材2を用いた場合では、塗膜3中の骨材2の含有量が多くなるほど、塗膜3の表面粗度は大きくなる傾向にある。また、ガラス繊維を骨材2として用いた場合は、塗膜3中のガラス繊維の含有量が同じでも、ガラス繊維の長さや径が大きくなるほど、塗膜3の表面粗度は大きくなる傾向にある。さらに、ビーズを骨材2として用いた場合は、塗膜3中のビーズの含有量が同じでも、ビーズの径が大きくなるほど、塗膜3の表面粗度は大きくなる傾向にある。また、下地用塗装金属板A(塗膜3)の表面粗度は算術平均粗さRaで2.0μm以上にするのが好ましく、これにより、より確実に化粧材Bのズレ落ちを防止することができる。特に、夏場などの高温雰囲気中では化粧材Bのズレ落ちが発生しやすいが、下地用塗装金属板A(塗膜3)の表面粗度を算術平均粗さRaで2.0μm以上にすることにより、高温雰囲気中でも化粧材Bのズレ落ちを防止することができるものである。
【0020】
表1に骨材2として使用可能なものを例示する。尚、表中の「塗膜中の含有量」とは、各骨材2をそれぞれ単独で使用した場合の好適な含有量を示す。
【0021】
【表1】

【0022】
上記の各成分としては、具体的には、以下のものを用いることができる。ガラス(繊維)としては、例えば、マイクログラスサーフェストランド(日本板硝子(株)製、直径13μm)を用いることができる。ガラス(ビーズ)としては、例えば、GB210(ポッターズ・バロティーニ(株)製)を用いることができる。二酸化珪素(粉体)としては、例えば、クリスタライト(瀧森製)を用いることができる。クレー(粉体)としては、例えば、バーゲスクレー(バーゲス製)を用いることができる。雲母(鱗片状)としては、例えば、ミクロマイカ(KMG製)を用いることができる。珪酸カルシウム(多孔質不定形)としては、例えば、マイクルセルを用いることができる。硫酸バリウム(粉体)としては、例えば、バリファインを用いることができる。アクリル樹脂(ビーズ)としては、例えば、テクポリマー(積水化成品工業(株)製)を用いることができる。ポリアクリロニトリル樹脂(ビーズ)としては、例えば、タフチック(東洋紡(株)製)を用いることができる。ナイロン樹脂(ビーズ)としては、例えば、オルガソール(日本リルサン(株)製)を用いることができる。尿素樹脂(ビーズ)としては、例えば、パーゴパック(ロンザジャパン(株)製)を用いることができる。ニッケル(粉体)としては、例えば、ニッケルパウダーNP(日興ファインプロダクツ(株)製)を用いることができる。アルミニウム(鱗片状)としては、例えば、アルペースト(東洋アルミ(株)製)を用いることができる。
【0023】
そして、本発明の下地用塗装金属板Aを製造するにあたっては、骨材2を含有する塗料を金属板1の表面に塗布し、塗料を乾燥硬化して骨材2を含有する塗膜3を形成するようにする。ここで、各骨材2を単独で使用する場合は、塗料の固形分(塗膜3となる成分)に対して上記表中の好ましい範囲の量を配合する。また、金属板1の表面に骨材入りの塗料を塗布するにあたっては、ロールコート、スプレーコート、カーテンフローコーターなどの各種塗布方法を採用することができる。また、塗膜3の厚みは、使用する骨材2の種類や量、使用する塗料の種類、目的とする表面粗度などによって、適宜調整されるが、金属板1との密着性などの物性を考慮すると3〜20μmであることが好ましい。さらに、本発明において、化粧材Bのズレ落ち防止性能を大きくするために、サイズの大きい骨材2を用いたり塗膜3中の骨材2の含有量を多くしたりして表面粗度を大きくするのが好ましいが、これに伴って、塗装ラインでの塗膜3の形成が困難になったり塗膜3と金属板1との密着性が低下するなどの物性を損なわれる恐れがあり、また、表面粗度がある一定の水準を超えると、化粧材Bのズレ落ち性能に関して実用上問題がなくなり、表面粗度を大きくしすぎると下地用塗装金属板Aをコイルに巻いて保管した場合に傷つく恐れもある。従って、下地用塗装金属板Aの塗膜3の表面粗度は算術平均粗さRaを15μm以下にするのが好ましく、さらに好ましくは10μm以下にする。
【0024】
本発明の下地用塗装金属板Aは、化粧材Bを接着する前に柱や胴縁などで構成される壁下地等の建物下地に取り付けた後、その粗面化した表面に化粧材Bを接着などにより付着させるようにして用いられる。化粧材Bとしてはタイルや石材や砂材などを一種又は二種以上を併用することができ、これにより、タイル調や石調あるいは砂調の外観を有する外壁などを形成することができる。また、多数の化粧材Bを接着した場合は、隣り合う化粧材の間に目地Dを形成してもよい。化粧材Bとしては従来と同様の各種のものを用いることができ、特に軽量化されたものを用いる必要がない。従って、安価にタイル調や石調や砂調の外観を形成することができる。但し、化粧材Bの重量は通常の範囲であることが好ましく、35kg/m以下の化粧材Bを用いることができる。また、本発明の下地用塗装金属板Aにタイルや石材の化粧材Bを接着するための接着剤Cとしては、従来より、タイルや石材の接着に用いられているものを使用することができ、例えば、エポキシ変性シリコン樹脂系接着剤などを用いることができる。また、接着剤Cの塗布量は化粧材Bの重量や下地用塗装金属板Aの表面粗度などに応じて適宜調整可能であるが、例えば、1〜2kg/mにすることができる。
【0025】
また、化粧材Bとして砂材を用いる場合は、例えば、下地用塗装金属板Aの表面に砂材入り塗料を吹き付けて砂材を下地用塗装金属板Aの表面に接着することができる。砂材としては、有色陶磁器質骨材(硅砂に無機質顔料を800℃以上で焼成着色したもの)や大理石粉などを用いることができ、合成樹脂と溶剤からなる水性アクリル系塗料などの塗料に砂材と必要に応じて増粘剤を配合することにより砂材入り塗料を調製することができる。例えば、アクリル系合成樹脂エマルション5〜20重量部、水3〜10重量部、砂材80〜95重量部、増粘剤等のその他の成分0.5〜3重量部の配合量で砂材入り塗料を調製することができ、具体的には、山本窯業化工株式会社製の「セラキューブEX」や「パーマロン」などを用いることができる。
【0026】
この砂材入り塗料の吹付けには口径5〜6mmのリシンガンを用いることができ、その時の圧力は500〜700kPaとすることができる。また、砂材入り塗料の吹付けは下吹きと上吹きの二回行なってもよく、下吹きは2.0〜2.5kg/m、上吹きは1.0〜1.5kg/mの吹付け量とすることができる。また、砂材入り塗料を硬化させて塗膜を形成した後、この塗膜の表面に耐光性向上のためのシリコーン系のクリア塗料をトップコートとして形成してもよい。さらに、目地棒等を用いて砂材入り塗料の塗膜に目地を形成してもよい。このようにして御影石のような外観を有する外壁などを形成することができる。
【0027】
粗面化していない金属板1の表面に砂材入り塗料を吹き付けた場合、硬化するまでに金属板1の表面を流れ落ちて所望の外観を得られず、従来では施工現場で金属板1の表面にプライマーなどの下地塗料を塗装することが必須であったが、本発明の下地用塗装金属板Aでは表面が上記のような表面粗度で粗面化されているために、砂材入り塗料を吹き付けても流れ落ちにくくなるものであり、従って、施工現場において下地塗料を不要にすることができる場合があり、また、下地塗料が必要であってもその使用量を少なくすることができ、従来に比べて施工期間の短縮化を図ることができるものである。
【0028】
本発明の下地用塗装金属板Aを用いて断熱パネルEを形成することができる。すなわち、断熱パネルEは二枚の金属外皮4、4の間に断熱材を接着して介在させて形成されるものであって、その少なくとも一方の金属外皮4として本発明の下地用塗装金属板Aを用いるのである。ここで、下地用塗装金属板Aはその粗面化された面を外面(断熱材と反対側)にして配設されるものである。また、もう一方の金属外皮4としては本発明の下地用塗装金属板Aであってもよいし、通常の金属板であってもよい。さらに、断熱材5としては例えば、密度20〜200kg/mで厚み10〜80mmのもので、グラスウールやロックウールなどの無機繊維板あるいはウレタンフォームやフェノールフォームなどの樹脂フォーム等を用いることができる。
【0029】
このように形成される断熱パネルEは、下地用塗装金属板Aを単体で用いる場合と同様に、柱や胴縁などの建物下地に取り付けられた後、その下地用塗装金属板Aの粗面化された表面に化粧材Bを接着することにより、外壁などを形成することができるが、この場合、下地用塗装金属板Aを単体で用いる場合と同様の効果を得られるのは勿論のこと、さらに断熱性の高い壁を形成することができる。
【実施例】
【0030】
以下本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0031】
[実施例1]
金属板の片面に骨材入りの塗料を、塗料の硬化後(塗膜)の単位面積当たりの質量が11g/mとなるように塗布して硬化させることによって、この塗膜により表面粗度が算術平均粗さ1.2μmとなった下地用塗装金属板を形成した。ここで、金属板としては溶融アルミ亜鉛合金めっき鋼板(日鉄鋼板(株)製の商品名「ガルバリウム鋼板」)を用いた。また、骨材としてはガラス繊維(日本板硝子(株)製の「マイクログラスサーフェストランド」、直径13μm、平均長35μm)を用いた。また、骨材を配合した塗料としてはエポキシ樹脂系塗料(日本ファインコーティングス(株)製の「スーパーラック D1F R−194(改)」)を用いた。さらに、塗料への骨材の配合量は塗料の固形分(塗膜となる成分)の全量に対して4重量%とした。
【0032】
尚、上記の表面粗度はJIS B 0651に準拠した触針式表面粗さ測定器を用いて測定した。
【0033】
[実施例2]
塗料への骨材の配合量を塗料の固形分の全量に対して5重量%とした以外は、実施例1と同様にして下地用塗装金属板を形成した。この下地用塗装金属板の表面粗度は算術平均粗さが1.7μmであった。
【0034】
[実施例3]
塗料への骨材の配合量を塗料の固形分の全量に対して10重量%とした以外は、実施例1と同様にして下地用塗装金属板を形成した。この下地用塗装金属板の表面粗度は算術平均粗さが2.8μmであった。
【0035】
[実施例4]
骨材として平均長35μmのガラス繊維の代わりに、平均長70μmのガラス繊維(日本板硝子(株)製の「マイクログラスサーフェストランド」、直径13μm)を用い、塗料への骨材の配合量を塗料の固形分の全量に対して10重量%とした以外は、実施例1と同様にして下地用塗装金属板を形成した。この下地用塗装金属板の表面粗度は算術平均粗さが7.5μmであった。
【0036】
[実施例5]
骨材として平均長35μmのガラス繊維の代わりに、平均粒径17μmのガラスビーズ(ポッターズ・バロティーニ(株)製の「GB210」)を用い、塗料への骨材の配合量を塗料の固形分の全量に対して10重量%とした以外は、実施例1と同様にして下地用塗装金属板を形成した。この下地用塗装金属板の表面粗度は算術平均粗さが3.9μmであった。
【0037】
[実施例6]
骨材として平均長35μmのガラス繊維の代わりに、平均粒径15μmのシリカ(KMG製の「ミクロマイカ」、鱗片状)を用い、塗料への骨材の配合量を塗料の固形分の全量に対して10重量%とした以外は、実施例1と同様にして下地用塗装金属板を形成した。この下地用塗装金属板の表面粗度は算術平均粗さが3.5μmであった。
【0038】
[実施例7]
骨材として平均長35μmのガラス繊維の代わりに、平均粒径20μmの樹脂ビーズ(積水化成品工業(株)製の「テクポリマー MBX−20」、アクリル樹脂製)を用い、塗料への骨材の配合量を塗料の固形分の全量に対して2重量%とした以外は、実施例1と同様にして下地用塗装金属板を形成した。この下地用塗装金属板の表面粗度は算術平均粗さが4.0μmであった。
【0039】
[実施例8]
骨材として平均長35μmのガラス繊維の代わりに、平均粒径8μmのニッケル粉体(日興ファインプロダクツ(株)製の「ニッケルパウダーNP」)を用い、塗料への骨材の配合量を塗料の固形分の全量に対して20重量%とした以外は、実施例1と同様にして下地用塗装金属板を形成した。この下地用塗装金属板の表面粗度は算術平均粗さが6.7μmであった。
【0040】
[実施例9]
塗料としてエポキシ樹脂系塗料の代わりに、ポリエステル樹脂系塗料(日本ファインコーティングス(株)製の「Nスーパーコート863」)を用いた以外は、実施例1と同様にして下地用塗装金属板を形成した。この下地用塗装金属板の表面粗度は算術平均粗さが2.9μmであった。
【0041】
[実施例10]
骨材として平均長35μmのガラス繊維の代わりに、平均粒径10μmのシリカ粉(瀧森製の「クリスタライト」)と平均粒径5μmのアクリル樹脂ビーズ(積水化成品工業(株)製の「テクポリマー MBX−20」)とを用い、塗料への骨材の配合量を塗料の固形分の全量に対してシリカ粉5重量%、アクリル樹脂ビーズ1重量%とした以外は、実施例1と同様にして下地用塗装金属板を形成した。この下地用塗装金属板の表面粗度は算術平均粗さが2.1μmであった。
【0042】
[比較例1]
粗面化骨材を配合していない塗料を用いた以外は、実施例1と同様にして下地用塗装金属板を形成した。この下地用塗装金属板の表面粗度は算術平均粗さが0.3μmであった。
【0043】
[比較例2]
粗面化骨材の配合量を塗料の固形分の全量に対して3重量%とした以外は、実施例1と同様にして下地用塗装金属板を形成した。この下地用塗装金属板の表面粗度は算術平均粗さが0.8μmであった。
【0044】
上記の実施例1〜10及び比較例1、2について、タイルのズレ落ち防止性能(ズレ抵抗性)を評価した。この評価方法は、下地用塗装金属板の粗面化した表面に接着剤(セメダイン(株)製の「タイルエース」、エポキシ変性シリコン樹脂接着剤)を1.5kg/mの塗布量で塗布し、その5分後にタイル(縦48mm×横48mm×厚さ8.5mm、一個あたりの質量38g/個)を接着剤の塗膜に静かに載せ、このタイルの上に質量5kgの重りを30秒間載せた後、重りを取り去り、その直後に下地用塗装金属板を鉛直に立てて24時間経過後のタイルのズレ落ちの有無を確認した。そして、タイルのズレ落ちが全くなかったものを◎と、タイルのズレ落ちが微小に生じたが目視ではタイルのズレ落ちが確認できず、実用上問題がなかったものを○と、目視でタイルのズレ落ちが確認できたものを×と評価した。
【0045】
また、実施例1〜10及び比較例1、2について、タイルの接着強さを評価した。このタイルの接着強さの評価は、タイルを接着した下地用塗装金属板に冷熱サイクルを付与した場合と、熱を加えた場合とで行なった。冷熱サイクル後の接着強さの評価は、上記24時間経過した後のタイルを接着した下地用塗装金属板に、20±2℃の水中に4時間浸漬と−20±2℃低温雰囲気中に4時間放置と80±2℃高温乾燥雰囲気中に16時間放置とを順次繰り返して20サイクル行なった後、下地用塗装金属板からタイルを引き剥がすように力を加えた。また、熱を加えた後の接着強さの評価は、上記24時間経過した後のタイルを接着した下地用塗装金属板を60±2℃水中に168時間浸漬した後、下地用塗装金属板からタイルを引き剥がすように力を加えた。そして、剥離強度が0.40N/mm以上で、且つ凝集破壊率が50%以上のものを○と、剥離強度が0.40N/mm未満か凝集破壊率が50%未満のものを×とそれぞれ評価した。
【0046】
尚、このタイルの接着強さは、建設省官民連帯共同研究「有機系接着剤を利用した外装タイル・石張りシステムの開発」(1997年2月10日第1版第1刷 株式会社テツアドー出版発行)に記載の「第II編 外装タイル・石張りシステム用接着剤の品質基準(案)第9頁〜第19頁」に準拠して行なった。ここで、「5.3.3接着強さの試験方法」の「(1)試験用材料」の「(a)下地材」として、モルタル板を使用する旨規定されているが、本実験ではこの下地材として実施例及び比較例で作製した下地用塗装金属板を適用した。
【0047】
結果を表2に示す。
【0048】
【表2】

【0049】
表2から明らかなように、実施例1〜10は比較例1、2と比べて、接着強さが同等であるが、ズレ落ち防止性能が高くなった。特に、実施例の中でも表面粗度として算術平均粗さRaが2.0μm以上の実施例3〜7は、タイルのズレ落ちが全く生じなかった。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す一部の拡大した断面の模式図である。
【図2】同上の化粧材を接着した状態を示す断面図である。
【図3】本発明を用いた断熱パネルを示す断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 金属板
2 骨材
3 塗膜
A 下地用塗装金属板
B 化粧材
C 接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧材を表面に付着させる下地用塗装金属板において、表面粗度として算術平均粗さが1.0μm以上を有することを特徴とする下地用塗装金属板。
【請求項2】
金属板の表面に骨材を含有する塗料を塗布することにより、表面が粗面化された塗膜を形成して成ることを特徴とする請求項1に記載の下地用塗装金属板。
【請求項3】
骨材として粉体、ビーズ、鱗片状、繊維の形状から選ばれる少なくとも一を用いて成ることを特徴とする請求項2に記載の下地用塗装金属板。
【請求項4】
骨材としてガラス、金属、シリカ、樹脂の材質から選ばれる少なくとも一を用いて成ることを特徴とする請求項2又は3のいずれかに記載の下地用塗装金属板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−274656(P2006−274656A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−94884(P2005−94884)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000207436)日鉄鋼板株式会社 (178)
【Fターム(参考)】