説明

下水処理システム及びその運用方法並びに改善方法

【課題】土地の利用を抑え、各家庭の負担もなく、大雨があっても環境汚染を防止することが出来るとともに、浸水被害を防止可能な、合流式下水道の改善手段を提供すること。
【解決手段】降雨時に初期汚濁水を通常下水処理設備の系から分岐させて受け入れ貯留する合流改善浸水対策併用雨水貯留設備と、その合流改善浸水対策併用雨水貯留設備に貯留された初期汚濁水を処理し通常下水処理設備を通さずに放流する高速濾過設備と、を備えた系を有する下水処理システムの提供による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚水と雨水とを同じ管渠(合流管等)で排除する合流式下水道にかかる下水処理システムと、それを運用する方法、更には、既存の下水処理システムを改善する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
合流式下水道には、トイレの水洗化と浸水対策を同時に実現することが出来、管が1系統であることから工事が経済的で容易である、という利点がある。そのため、戦後、早くから下水道整備に着手した大都市の多くで採用され、都市で生活する人々の快適で衛生的な暮らしを支えてきた。
【0003】
しかし、合流式下水道では、汚水と雨水とを同じ管渠で処理するため、大雨の時には、下水処理場において、下水(汚水と雨水)の全量を一定の水質を満たすように処理することが出来ず、一部はそのまま河川に放流される場合があり、雨量によっては、民家の浸水被害を招くおそれもある。
【0004】
一般に、下水処理場では、降雨時の時間あたり最大流入量(水量)を、晴天時(降雨なし)の時間あたり最大流入量である設計水量Qの3倍の3Qに規制している。例えば、最初沈殿池、反応槽(エアレーションタンク)、及び最終沈殿池からなる下水処理設備においては、降雨があってもQを超えない限り晴天時と同じ処理を行なうことが出来るが、降雨によって水量がQを超えた場合には、3Qまでは、最初沈殿池に過負荷をかけて沈殿をさせた後で放流するという簡易処理で対応し、更に、水量が3Qを超えた場合には、簡易処理も行なわず、そのまま放流(放出)しているのが実情である。これでは、多量の汚濁物質が河川等へ、あるいは民家へと流入し、水質汚染、公衆衛生の悪化を招来することになる。
【0005】
近年、ウォーターフロントの再開発が進むとともに、人々の環境意識が高まってきたことから、上記のような状況は大きな問題となり、下水道法施行令の改正によって、合流式下水道の改善が義務付けられることとなった。
【0006】
公に挙げられている既存の合流式下水道の改善対策としては、例えば、(A)雨水貯留設備を増設して下水を一時的に貯める能力を高めて降雨終了後に処理する方法、(B)雨水を合流管に入れないように土中に浸透させる方法、(C)雨水吐(雨水吐室)にスクリーンを設置してごみを流出させない方法、(D)分流化、がある。又、関連する先行文献として、例えば、特許文献1〜5を挙げることが出来る。
【0007】
【特許文献1】特開2002−298063号公報
【特許文献2】特開平11−190056号公報
【特許文献3】特開2007−146423号公報
【特許文献4】特許第3824583号公報
【特許文献5】特許第3853738号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、合流式下水道が採用されている地域は都市部であることから、土地代が高い。そのため、コンクリート製の大きな貯槽の作製も含め、上記(A)の方法ではコストが問題となる。特に、浸水対策を含めた水量の貯槽は非常に大きな容量となるため、土地の取得、コストの上昇を、無視することは出来ない。又、(B)の方法は、雨水が合流管に入る前に行なうものであるため、宅地内の費用は各家庭の分担となり、理解を得て実際に工事を進めることは容易ではない。これは、(D)の方法も同様である。更に、(C)の方法は、水質改善に一定の効果があるが、溶解物、半溶解物の除去は困難である。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その課題は、土地の利用を抑え、各家庭の負担もなく、大雨があっても環境汚染を防止することが出来るとともに、浸水被害を防止可能な、合流式下水道の改善手段を提供することである。研究が重ねられた結果、予め見積もった初期雨水(降り始めの雨水)の水量に相当する処理能力を有する高速濾過設備を下水処理システムに付加し、その高速濾過設備によって初期雨水相当分の初期汚濁水を処理して放流することによって、上記目的を達成することが出来ることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
尚、既存の合流式下水道の改善ではなく、新たに下水道を構築する場合においても、下水処理場において、上記した高速濾過設備を組み合わせることによって、小さな容量の雨水貯留設備であっても、十分な降雨(大雨)対応能力を具備する合流式下水道を構築し得ることはいうまでもない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
即ち、本発明によれば、先ず、汚水と雨水とが合流した下水を受け入れ処理する通常下水処理設備に加えて、降雨時(大雨を含む)に初期汚濁水を、通常下水処理設備の系から分岐させて受け入れ貯留する合流改善浸水対策併用雨水貯留設備と、その合流改善浸水対策併用雨水貯留設備に貯留された、初期汚濁水を処理し、通常下水処理設備を通さずに放流する高速濾過設備と、を備えた系を有する下水処理システムが提供される。
【0012】
本明細書にいう合流改善浸水対策併用雨水貯留設備は、合流改善利用と、浸水対策利用と、を兼ねた雨水貯留設備である。後述する合流改善用雨水貯留設備は、合流改善利用のみ(合流改善専用)の雨水貯留設備であり、浸水対策用雨水貯留設備は、浸水対策利用のみ(浸水対策専用)の雨水貯留設備である。
【0013】
本明細書にいう通常下水処理設備は、例えば、主に沈砂池、最初沈殿池、反応槽(エアレーションタンク、好気性生物処理等)、最終沈殿池で構成される設備である。通常下水処理設備には、多くは、他に、汚泥(沈殿物)処理装置が含まれる。本発明に係る下水処理システムでは、雨水貯留設備、高速濾過設備、及び通常下水処理設備の他に、硝化脱窒処理、脱燐処理、オゾン処理、活性炭処理等で構成される高度処理設備を具備していてもよい。又、本発明に係る下水処理システムにおいて、装置や設備には、配管、ポンプ、計器、制御装置等が含まれるものとする。
【0014】
本明細書において、初期汚濁水とは、降り始めの汚濁した雨水(初期雨水)と、汚水と、が合流した下水であって、初期雨水が大部分を占めるもの、を意味する。又、降雨時には、大雨である場合を含む。
【0015】
本明細書において、合流改善とは、広く合流式下水道の改善全般を指すものではなく、通常下水処理設備の能力を越えているが浸水まで至らない水量の下水を無処理で河川等に放流されないように(下水を)貯留することを指す。浸水対策とは、浸水に至る水量の下水が放流されないように(下水を)貯留すること(合流改善の分を除く)を意味する。
【0016】
本発明に係る下水処理システムにおいては、上記合流改善浸水対策併用雨水貯留設備(そのうちの貯槽)が、(貯留すべき下水の)入口側から出口側に向けて複数の仕切りが設けられた構造を有することが好ましい。
【0017】
即ち、この合流改善浸水対策併用雨水貯留設備は、受け入れ貯留された順に、初期汚濁水を分離することが出来る貯留設備である。本発明に係る下水処理システムでは、上記合流改善浸水対策併用雨水貯留設備が、滞水池や貯留管や流下貯留管を有するものであってもよい。
【0018】
本発明に係る下水処理システムにおいては、上記高速濾過設備が、浮上濾材層を有し、その浮上濾材層の上側のみにスクリーンが配置され、上向流で初期汚濁水が処理されるとともに、浮上濾材層の逆洗手段を備えることが好ましい。
【0019】
このような高速濾過設備として、例えば、特許文献4、特許文献5で開示された濾過設備を挙げることが出来る。高速濾過設備の能力は、SS除去率30%以上、BOD除去率30%以上であることが好ましく、SS除去率50%以上、BOD除去率50%以上であることがより好ましく、SS除去率は70%以上であることが特に好ましい。
【0020】
本発明に係る下水処理システムにおいては、少なくとも、降雨情報と、汚水と雨水とが合流した下水が流れる合流管情報と、を入力し、これらの情報を解析して、合流改善浸水対策併用雨水貯留設備における現在及び将来の貯留量を求める解析手段を有することが好ましい。
【0021】
次に、本発明によれば、上記した何れかの下水処理システムにおいて、気象情報により次の降雨が予想される場合に、前の降雨によるものを含む初期汚濁水を、通常下水処理設備の系から分岐させて合流改善浸水対策併用雨水貯留設備に受け入れて貯留し、その合流改善浸水対策併用雨水貯留設備に貯留された、初期汚濁水を、高速濾過設備で処理し、合流改善浸水対策併用雨水貯留設備の貯留可能水量を増やす下水処理システムの運用方法が提供される。
【0022】
本発明に係る下水処理システムの運用方法においては、(運用する下水処理システムが)上記合流改善浸水対策併用雨水貯留設備が、入口側から出口側に向けて複数の仕切りが設けられた構造を有するものであり、初期汚濁水を、通常下水処理設備の系から分岐させて、仕切りが設けられた合流改善浸水対策併用雨水貯留設備に貯留し、その貯留された、初期汚濁水を、希薄なものから、順次、高速濾過設備で処理することが好ましい。
【0023】
本発明に係る下水処理システムの運用方法においては、(運用する下水処理システムが)上記解析手段を有するものであり、少なくとも、降雨情報と、汚水と雨水とが合流した下水が流れる合流管情報と、を基に、これらの情報を解析して、合流改善浸水対策併用雨水貯留設備における現在及び将来の貯留量を求め、その求められた現在及び将来の貯留量に基づいて、通常下水処理設備の系から分岐させて合流改善浸水対策併用雨水貯留設備に受け入れ貯留すべき初期汚濁水の量、及び、高速濾過設備で処理すべき初期汚濁水の量、のうち何れか又は両方を決定することが好ましい。
【0024】
本発明に係る下水処理システム及び下水処理システムの運用方法において、合流改善浸水対策併用雨水貯留設備における現在及び将来の貯留量を求めることが出来るが、これは、合流改善浸水対策併用雨水貯留設備の貯留量の現在からの変化を予測出来ることを意味し、変化を予測出来ることから、上記の通り、受け入れ貯留すべき初期汚濁水の量、及び、高速濾過設備で処理すべき初期汚濁水の量、を決定することが可能となる。
【0025】
次に、本発明によれば、汚水と雨水とが合流した下水を受け入れ処理する通常下水処理設備と、降雨時に初期汚濁水を、通常下水処理設備の系から分岐させて受け入れて貯留する合流改善浸水対策併用雨水貯留設備と、を既に有する下水処理システムにおいて、合流改善浸水対策併用雨水貯留設備に貯留された、初期汚濁水を処理し、通常下水処理設備を通さずに放流する高速濾過設備を増設し、気象情報により次の降雨が予想される場合に、前の降雨によるものを含む初期汚濁水を、通常下水処理設備の系から分岐させて合流改善浸水対策併用雨水貯留設備に受け入れて貯留し、その合流改善浸水対策併用雨水貯留設備に貯留された、初期汚濁水を、高速濾過設備で処理し、合流改善浸水対策併用雨水貯留設備の貯留可能水量を増やす下水処理システムの改善方法が提供される。
【0026】
上記改善方法は、下水処理システムに既に高速濾過設備が備わっている場合の方法である。下水処理システムに高速濾過設備が備わっていない場合、あるいは、高速濾過設備が既に備わっていても、新たな高速濾過設備を設ける場合には、以下の改善方法を採る。
【0027】
即ち、本発明によれば、汚水と雨水とが合流した下水を受け入れ処理する既存の通常下水処理設備に、降雨時に初期汚濁水を、通常下水処理設備の系から分岐させて受け入れて貯留する合流改善浸水対策併用雨水貯留設備と、その合流改善浸水対策併用雨水貯留設備に貯留された、初期汚濁水を処理し、通常下水処理設備を通さずに放流する高速濾過設備と、を増設し、気象情報により次の降雨が予想される場合に、前の降雨によるものを含む初期汚濁水を、通常下水処理設備の系から分岐させて合流改善浸水対策併用雨水貯留設備に受け入れて貯留し、その合流改善浸水対策併用雨水貯留設備に貯留された、初期汚濁水を、高速濾過設備で処理し、合流改善浸水対策併用雨水貯留設備の貯留可能水量を増やす下水処理システムの改善方法が提供される。
【0028】
本発明に係る下水処理システムの改善方法において、上記合流改善浸水対策併用雨水貯留設備を、入口側から出口側に向けて複数の仕切りが設けられた構造を有するものとして構成し、初期汚濁水を、通常下水処理設備の系から分岐させて、仕切りが設けられた合流改善浸水対策併用雨水貯留設備に貯留し、その貯留された、初期汚濁水を、希薄なものから、順次、高速濾過設備で処理することが好ましい。
【0029】
本発明に係る下水処理システムの改善方法において、上記高速濾過設備が、浮上濾材層を有し、その浮上濾材層の上側のみにスクリーンが配置され、上向流で初期汚濁水が処理されるとともに、浮上濾材層の逆洗手段を備えることが好ましい。
【0030】
初期汚濁水につき、前の降雨によるものを含む、としているのは、予想された(次の)降雨が実際に始まってしまう場合があるからである。次の降雨が始まる前であれば、前の降雨による初期汚濁水、である。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る下水処理システムは、降雨時に初期汚濁水を、通常下水処理設備の系から分岐させて受け入れ貯留する合流改善浸水対策併用雨水貯留設備と、その合流改善浸水対策併用雨水貯留設備に貯留された、初期汚濁水を処理し、通常下水処理設備を通さずに放流する高速濾過設備と、を備えた系を有するので、気象情報により次の降雨が予想される場合に、前の降雨によるものを含む初期汚濁水を、通常下水処理設備の系から分岐させて合流改善浸水対策併用雨水貯留設備に受け入れて貯留し、その合流改善浸水対策併用雨水貯留設備に貯留された、初期汚濁水を、高速濾過設備で処理し放流することによって、初期汚濁水のうちその処理し放流した水量の分だけ、合流改善浸水対策併用雨水貯留設備が空くことになるから、合流改善浸水対策併用雨水貯留設備の貯留可能水量を増やすことが出来る。従って、合流改善浸水対策併用雨水貯留設備における浸水対策のための実質的な貯留量を増加させることが出来、通常下水処理設備の処理能力以上の降雨が予測(予想)された場合であっても、環境汚染及び浸水被害を軽減することが可能である。
【0032】
従来の下水処理システムにおいても、合流改善及び浸水対策の水量に相当する容量を有する合流改善浸水対策併用雨水貯留設備が設けられる場合があるが、本発明に係る下水処理システムは、上記のように浸水対策のための実質的な貯留量を増加させ得るものであるから、合流改善及び浸水対策のための水量を同一とすれば、本発明に係る下水処理システムの合流改善浸水対策併用雨水貯留設備の容量は、従来の下水処理システムの合流改善浸水対策併用雨水貯留設備の容量と比べて、小さくなる。従って、必要な土地は小さくてよく、高速濾過設備を考慮しても、下水処理システム構築に要するコストは抑制される。
【0033】
上記のように、従来の下水処理システムにおいても、合流改善及び浸水対策の水量に相当する容量の合流改善浸水対策併用雨水貯留設備が設けられていたが、これまでは、浸水を引き起こすような降雨が予測(予想)されるときは、初期汚濁水を、合流改善浸水対策併用雨水貯留設備に受け入れず、そのまま放流して、合流改善浸水対策併用雨水貯留設備の空きを確保して、浸水を引き起こす降雨に備える場合があった。これでは、無処理で放流されるため、合流式下水道の雨天時の放流水質基準を守れないおそれがある。本発明に係る下水処理システムによれば、初期汚濁水を高速濾過設備で処理し放流するから、このような問題を回避することが出来る。一方、降雨時に初期汚濁水を受け入れた場合において、浸水を引き起こすまでの降雨がなかったが総降雨量が(例えば)10〜30mmになったときには、その場合に適用される合流式下水道の雨天時の放流水質基準を守れないおそれがあったが、本発明に係る下水処理システムによれば、初期汚濁水を高速濾過設備で処理し放流するから、雨天時の放流水質基準を守ることが可能である。
【0034】
又、降雨により、一旦、初期汚濁水を合流改善浸水対策併用雨水貯留設備に受け入れた場合に、従来は、沈砂池へ戻すか最初沈殿池へ送り、最初沈殿池、反応槽、最終沈殿池を経て放流していた。しかし、最初沈殿池、反応槽、最終沈殿池の処理能力を越える水量を返送することは不可能であるため、次の降雨までの間隔が短い場合には、合流改善浸水対策併用雨水貯留設備の水量を減らすことが出来ず、次の降雨において、初期汚濁水を受け入れることが出来なかった。そうすると、無処理で放流せざるを得ず、放流水質基準を守れないおそれがある。これに対し、本発明に係る下水処理システムによれば、合流改善浸水対策併用雨水貯留設備に受け入れた初期汚濁水を高速濾過設備で処理し放流することが出来、初期汚濁水のうちその処理し放流した水量は通常下水処理設備の系に返送して処理する必要がない。従って、次の降雨までの間隔が短くても、合流改善浸水対策併用雨水貯留設備に、新たに、初期汚濁水を受け入れることが出来る。例えば、次の降雨が4時間以上で24時間以内継続すると予測される場合に、初期汚濁水を高速濾過設備で処理し放流することが好ましい。そうすれば、降雨のないときに、初期汚濁水を、沈砂池へ戻すか最初沈殿池へ送り、最初沈殿池、反応槽、最終沈殿池を経て放流させることが可能となる。
【0035】
更に、従来、初期汚濁水が合流改善浸水対策併用雨水貯留設備に受け入れられ貯留された状態で、次の降雨が発生した場合には、その降雨に対しての浸水対策は全く行うことが出来ない。本発明に係る下水処理システムは、高速濾過設備を備えているので、例えば、予備ポンプの駆動、又はポンプの新設等によって、高速濾過設備で処理し、浸水に備えて合流改善浸水対策併用雨水貯留設備に空き容量(貯留可能容量)を確保するといった緊急対応を取ることが可能である。この場合、高速濾過設備の設計値に対し過剰な水量を流す(処理する)ことになるが、無処理で放流するのに比すれば、放流水質基準を守れる可能性は高い。
【0036】
本発明に係る下水処理システムは、その好ましい態様において、合流改善浸水対策併用雨水貯留設備が、入口側から出口側に向けて複数の仕切りが設けられたものであり、受け入れ貯留された順に、初期汚濁水を分離することが出来るので、より後に貯留された汚濁負荷(SS、BOD等)の少ない初期汚濁水を、優先的に、高速濾過設備で処理し放流することが出来る。従って、放流水質基準を確実に守れるとともに、高速濾過設備の連続稼動が可能となる(例えば、高速濾過設備において、その逆洗回数が少なくなる)。
【0037】
本発明に係る下水処理システムは、その好ましい態様において、高速濾過設備が、浮上濾材層を有し、その浮上濾材層の上側のみにスクリーンが配置され、上向流で初期汚濁水が処理されるとともに、浮上濾材層の逆洗手段を備えたものであるので、放流水質基準を確実に守ることが出来る。
【0038】
本発明に係る下水処理システムの運用方法は、上記の本発明に係る下水処理システムの優れた効果を現に導く手段であり、その点に効果が認められる。
【0039】
本発明に係る下水処理システムの改善方法は、既存の下水処理システムにおいて、上記の本発明に係る下水処理システムの優れた効果を発現せしめる手段であり、その点に効果が認められる。既述のように、既存の下水処理システムにおいて、合流改善及び浸水対策の水量に相当する容量の合流改善浸水対策併用雨水貯留設備が設けられる場合があるので、それを本発明に係る下水処理システムにおける合流改善浸水対策併用雨水貯留設備として転用してもよく、別途新たに、合流改善浸水対策併用雨水貯留設備を設けてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明について、適宜、図面を参酌しながら、実施形態を説明するが、本発明はこれらに限定されて解釈されるべきものではない。本発明に係る要旨を損なわない範囲で、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良、置換を加え得るものである。例えば、図面は、好適な本発明に係る実施形態を表すものであるが、本発明は図面に表される態様や図面に示される情報により制限されない。本発明を実施し又は検証する上では、本明細書中に記述されたものと同様の手段若しくは均等な手段が適用され得るが、好適な手段は、以下に記述される手段である。
【0041】
[下水処理システムの効果]先ず、既に説明した本発明に係る下水処理システムの効果を、あらためて図面を参酌しながら、説明する。図1〜図3は、本発明に係る下水処理システムの効果を具体的に表した図である。図1には、当初設計値に基づく合流改善浸水対策併用雨水貯留設備の目的別容量が表され、図2には、合流改善浸水対策併用雨水貯留設備に貯められた初期汚濁水を高速濾過設備で処理する様子が表され、図3には、浸水対策のための容量を増加させた後の、合流改善浸水対策併用雨水貯留設備の目的別容量が表されている。
【0042】
従来の下水処理システムでは、雨水貯留設備を合流改善浸水対策併用とした場合に、その合流改善浸水対策併用雨水貯留設備の合流改善及び浸水対策のための容量(貯留水量)は、当初設計値のままの固定値である(図1を参照)。従来の下水処理システムにおいて、合流改善浸水対策併用雨水貯留設備は、設計通りに、降雨による下水の流量の増加を吸収すべく合流改善浸水対策併用雨水貯留設備に貯め、貯められた初期汚濁水は、晴れのときに、通常下水処理設備に返送して処理される。従って、次の降雨までの間隔が短い場合には、合流改善浸水対策併用雨水貯留設備の水量を減らすことが出来ず、次の降雨において、初期汚濁水を受け入れることが出来ない。又、浸水を引き起こすような降雨が予測(予想)されるときに、その雨量が、当初設計値より多かった場合に、浸水対策のための容量を増加させることは出来ない。
【0043】
本発明に係る下水処理システムでは、初期汚濁水の流入中においても(流入していなくても)、既に貯められた前の降雨による初期汚濁水を高速濾過設備で処理し放流することが可能であり(図2を参照)、それによって合流改善浸水対策併用雨水貯留設備の水量を減らすことが出来るので、次の降雨までの間隔が短くても、次の降雨において初期汚濁水を受け入れることが可能である。又、浸水を引き起こすような降雨が予測(予想)されるときに、その雨量が、当初設計値より多かった場合でも、浸水対策のための容量(貯留水量)を増加させることが出来る(図3を参照)。図3において合流改善のための容量が減っているようにみえるが、そうではなく、処理されて放流されたのであり、当初設計値通りの合流改善のための下水(初期汚濁水を含む)は、合流改善浸水対策併用雨水貯留設備に受け入れられている。尚、図1〜図3には合流改善浸水対策併用雨水貯留設備の一部としての貯槽が示されているが、滞水池、貯留管、流下貯留管、等であってもよい。
【0044】
[下水処理システムのシステム構成(フロー)]次に、本発明に係る下水処理システムの構成とそのフローについて説明し、併せて、比較のために従来の下水処理システムについても説明する。
【0045】
図4は、合流式下水道全体の系を表す構成図であり、図5及び図6は、本発明に係る下水処理システムの一実施形態を示すフロー図である。住居地域である排水区において、汚水と雨水とを受け入れる合流管が配設され、合流管は、通常、河川近傍の下水処理場内の下水処理システムに接続される(図4を参照)。尚、下水処理システムの一部は、下水処理場外に設けられていてもよい。
【0046】
図5に示される下水処理システム5では、合流管は、(例えば)図示されない沈砂池へ接続され、下水は、その沈砂池に送られる。通常(晴天時)、下水(雨水は含まれない)は、その沈砂池に設けられた汚水ポンプによって、(遮集管を通じて)通常下水処理設備(最初沈殿池、エアレーションタンク(反応槽)、最終沈殿池)へ送られ、処理されて河川等へ放流される。
【0047】
下水処理システム5は、合流改善と浸水対策との併用目的としての合流改善浸水対策併用雨水貯留設備51と、高速濾過設備53と、を備える。合流改善浸水対策併用雨水貯留設備51は、高速濾過設備53との組み合わせにより、より大容量の合流改善浸水対策併用雨水貯留設備と同等の効果を発揮する。降雨時には、先ず、初期汚濁水は、汚水ポンプによって、(最初沈殿池ではなく)合流改善浸水対策併用雨水貯留設備51に送られる。合流改善浸水対策併用雨水貯留設備51が満水になった場合には、初期汚濁水は高速濾過設備53で処理され、放流される。初期汚濁水の流入量が汚水ポンプの能力を超えた場合には、沈砂池に設けられた雨水ポンプが稼動し、(放流管を通じて)初期汚濁水は、直接、放流される。初期汚濁水の流入量が雨水ポンプの能力を超えた場合には、初期汚濁水は雨水吐から分岐して、(高速濾過設備53で処理されて空きが出た)合流改善浸水対策併用雨水貯留設備51に送られ貯留される。
【0048】
図6に示される下水処理システム6は、雨水貯留設備を、合流改善利用のものと、浸水対策利用のものと、の2つ有する点が下水処理システム5とは異なり、他は下水処理システム5と同じである。下水処理システム5と同様に、下水処理システム6では、合流管は、(例えば)図示しない沈砂池へ接続され、下水は、その沈砂池に送られる。通常(晴天時)、下水(雨水は含まれない)は、沈砂池に設けられた汚水ポンプによって、通常下水処理設備(最初沈殿池、エアレーションタンク、最終沈殿池)へ送られ、処理されて河川等へ放流される。
【0049】
下水処理システム6において、降雨時には、先ず、初期汚濁水は、汚水ポンプによって、合流改善用雨水貯留設備61に送られる。合流改善用雨水貯留設備61が満水になった場合には、初期汚濁水は高速濾過設備63で処理され、放流される。初期汚濁水の流入量が汚水ポンプの能力を超えた場合には、沈砂池に設けられた雨水ポンプが稼動し、初期汚濁水は、直接、放流される。初期汚濁水の流入量が雨水ポンプ能力を超えた場合には、初期汚濁水は雨水吐から分岐して浸水対策用雨水貯留設備62に送られ貯留される。
【0050】
図7及び図8は、従来の下水処理システムの一例を示すフロー図である。図7に示される下水処理システム7は、高速濾過設備が存在しない点が下水処理システム5とは異なり、他は下水処理システム5と同じである。下水処理システム5,6と同様に、下水処理システム7では、合流管は、(例えば)図示しない沈砂池へ接続され、下水は、その沈砂池に送られる。通常(晴天時)、下水(雨水は含まれない)は、その沈砂池に設けられた汚水ポンプによって、通常下水処理設備(最初沈殿池、エアレーションタンク、最終沈殿池)へ送られ、処理されて河川等へ放流される。
【0051】
下水処理システム7は、合流改善と浸水対策との併用目的とした合流改善浸水対策併用雨水貯留設備71を備える。降雨時には、先ず、初期汚濁水は、汚水ポンプによって、合流改善浸水対策併用雨水貯留設備71に送られる。合流改善浸水対策併用雨水貯留設備71が満水になった場合には、初期汚濁水は最初沈殿池のみを通され、簡易処理されて、放流される。初期汚濁水の流入量が汚水ポンプの能力を超えた場合には、沈砂池に設けられた雨水ポンプが稼動し、初期汚濁水は、直接、放流される。初期汚濁水の流入量が雨水ポンプ能力を超えた場合には、初期汚濁水は雨水吐から分岐して、(簡易処理されて空きが出た)合流改善浸水対策併用雨水貯留設備71に送られ貯留される。
【0052】
図8に示される下水処理システム8は、高速濾過設備が存在しない点が下水処理システム6とは異なり、他は下水処理システム6と同じである。下水処理システム5,6と同様に、下水処理システム8では、合流管は、(例えば)図示しない沈砂池へ接続され、下水は、その沈砂池に送られる。通常(晴天時)、下水(雨水は含まれない)は、その沈砂池に設けられた汚水ポンプによって、通常下水処理設備(最初沈殿池、エアレーションタンク、最終沈殿池)へ送られ、処理されて河川等へ放流される。
【0053】
下水処理システム8において、降雨時には、先ず、初期汚濁水は、汚水ポンプによって、合流改善用雨水貯留設備81に送られる。合流改善用雨水貯留設備81が満水になった場合には、初期汚濁水は最初沈殿池のみを通され、簡易処理されて、放流される。初期汚濁水の流入量が汚水ポンプの能力を超えた場合には、沈砂池に設けられた雨水ポンプが稼動し、初期汚濁水は、直接、放流される。初期汚濁水の流入量が雨水ポンプ能力を超えた場合には、初期汚濁水は雨水吐から分岐して浸水対策用雨水貯留設備82に送られ貯留される。
【0054】
[下水処理システムにおける情報処理]次に、本発明に係る下水処理システムにおける情報処理について説明する。
【0055】
本発明に係る下水処理システムを運用する上では、特に気象情報(降雨の予想を含む気象データ)や降雨情報(実際の降雨量等のデータ)の授受と、それらの情報の解析が重要である。又、浸水対策にかかる情報は、市民へ公開することが必要である。このような下水処理システムにおける情報処理は、例えば、下水処理場の管理施設の制御用コンピュータや、下水処理場内又は外に配設される情報収集サーバ、情報提供サーバ、及び一般公開用サーバで構成されるネットワークシステムにおいて、以下のように行なわれる。
【0056】
図13は、下水処理システムにおける情報処理を表す図であり、情報の流れが上から下へ示されたフロー図である。下水処理システムを適切に運転するために必要な情報として、例えば、気象データ(地点毎の天気予報等)、降雨データ(地点毎の降雨量等)、水位データ(合流管内水位、放流先(河川、海域等)水位等)、施設運転データ(各種ポンプ(汚水ポンプ、雨水ポンプ等)の運転状況、雨水堰の高さ等)を挙げることが出来る。これらの情報は、例えば制御用コンピュータを経て、情報収集サーバに入力される。気象データは、時差をなくすため、直接、情報収集サーバへ入力することが好ましい。これらの気象データや降雨データは、例えば、気象庁、民間気象会社、(直接に)レーダ等より集められる。水位データや施設運転データは、それぞれの場所に設けられた検出器や、制御用コンピュータ、ポンプ動力盤等より集められる。
【0057】
具体的な入力データとしては、降雨データは、例えば、地点A、地点B、地点Cにおける10分毎の降雨量(mm/10分間)であり、水位データは、例えば、地点D、地点Eにおける10分毎の水位(m、TP(東京湾平均海面))であり、施設運転データは、雨水ポンプ1号、2号、3号の10分毎の送水量(m/10分間)である。
【0058】
各種データは、情報収集サーバから、情報提供サーバへ送られ、そこで、種々の解析がなされる。そして、必要な情報が関係各部署へ送られるとともに、住民へ開示すべき情報は一般公開用サーバを介して公開される。関係各部署へ送られる情報としては、流量データ(合流管内任意地点流量、沈砂池(ポンプ場)流量等)、(例えば)合流改善浸水対策併用雨水貯留設備の貯留量データ(現在及び将来の貯留量)を挙げることが出来る。又、住民へ開示すべき情報は、例えば浸水位データである。
【0059】
具体的な出力データとしては、合流改善浸水対策併用雨水貯留設備の貯留量データは、例えば、貯槽の10分間毎の貯留量(m)であり、流量データは、例えば、地点H、地点Iにおいて10分毎の瞬時の合流管内流量(m/秒)であり、浸水位データは、例えば、地点K、地点L、地点Mにおける10分毎の浸水位(m)である。
【0060】
関係各部署へ送られる情報及び住民へ開示すべき情報は、送られた降雨データ、水位データ、施設運転データを基に、解析装置において、降雨量予測モデル、地表面流出モデル、管内水理モデル、地表面氾濫モデル等によって解析され、出力すべき流量データ、合流改善浸水対策併用雨水貯留設備の貯留量データ、浸水位データとなる。
【0061】
図14は、解析装置において用いられる降雨量予測モデルの一例(簡易式)の概要を示すグラフである。実測された過去の雨量データから降雨量の上昇率を算出し、その上昇率に時間を乗じることで、予測雨量を求めることが出来る。例えば、グラフ上において、2分前から現在値までを直線で結び、これを15分先まで伸ばし、15分先からは30分先に降雨量が0(零)となるように直線を引けば、30分先までの合計の雨量を予測することが出来る。
【0062】
図15A〜図19は、解析装置において用いられる地表面流出モデルの一例の概要を示す図である。この地表面流出モデルは、降雨損失要素を組み込んだ有効降雨モデルと、有効降雨を流入マンホール地点でのハイドログラフに変換する地表面流下モデルと、の2つから構成される。
【0063】
図15A〜図15Cは、有効降雨モデルの一例の概念を示す説明図であり、図16A〜図16Dは、有効降雨モデルの一例の概念を示すグラフである。図15A〜図15C及び図16A〜図16Cに示されるように、有効降雨(降雨量)は、実降雨のあった場所が、浸透域、半浸透域、不浸透域の何れであるかによって異なり、又、有効降雨(降雨量)を求めるに際しては、凹地貯留(損失)分が除外される。例えば、100mmの実降雨があったとして、不浸透面積率が50%である不浸透域(図15A及び図16Aを参照)では、浸透損失がないので、50mm(=100mm×50%)から、凹地貯留損失3.00mmを減じた47.00mmが有効降雨となり、有効降雨は多い。しかし、例えば、不浸透面積率が30%である浸透域(図15C及び図16Cを参照)では、30mm(=100mm×30%)のうち凹地貯留損失1.80mmを減じた28.20mm全てが浸透し、(地域全体としての)有効降雨は少ない。又、不浸透面積率が20%である半浸透域(図15B及び図16Bを参照)では有効降雨もその中間になる。即ち、20mm(=100mm×20%)のうち凹地貯留損失1.20mmを減じた18.80mmの半分である9.40mmが浸透する。
【0064】
尚、図15Aと図16Aは、不浸透域における有効降雨を説明するための図であるが、概念を説明するための図であり、図15Aと図16Aは同じ状況を示しているわけではない。図15Bと図16B(半浸透域)、図15Cと図16C(浸透域)についても、同様である。又、図16Dは、浸透域、半浸透域、不浸透域を合わせた、流域全体の有効降雨モデルを表している。
【0065】
具体的には、有効降雨モデルにおける有効降雨R(t)は、実降雨Rr(t)から初期損失Qiniである凹地貯留(損失)を差し引き、浸透損失を考慮した不浸透面積率を乗じて算定することが出来る。有効降雨R(t)は、実降雨Rr(t)が初期損失Qini以下であるときは0(零)であり、実降雨Rr(t)が初期損失Qini超えたときに、次の(1)式で求められる。(1)式において、実流域で観測された流出率と、不浸透面積率と、の比を低減係数と定義すると、(2)式が求められる。換言すれば、低減係数は、流出率と、地図等から推定した不浸透面積率と、を整合させるための補正係数である。又、(2)式における不浸透面積率は、(3)式で求められる。
【0066】
有効降雨R(t) = 実降雨Rr(t)×流出率 ・・・(1)
【0067】
有効降雨R(t) = 実降雨Rr(t)×不浸透面積率Imp×低減係数Qred
・・・(2)
【0068】
【数1】

【0069】
図17及び図19は、地表面流下モデルの一例の概念を示すグラフであり、図18は、地表面流下モデルの一例の概念を示す説明図である。地表面流下モデルでは、先に算定された有効降雨に基づいて、流域形状、流入時間を考慮した時間/面積曲線により、流入ハイドロの算定を行なう。流域は、流入マンホールを中心点とする同心円状の多くのセルに分割される。図17には、流入時間を区分した単位時間(シミュレーション時間間隔Δt)あたりの有効降雨(降雨量)が表されており、図18には、流入マンホールまでの到達時間が等しい時間(上記の単位時間(シミュレーション時間間隔Δt))毎の流域が表されており(即ち、図18は等到達時間域図であり)、図19には、流入ハイドロの算定が表されている。
【0070】
具体的には、セル数nは、次の(4)式から算定され、流入ハイドロは、(5)式で求められる。
【0071】
【数2】

【0072】
【数3】

【0073】
合流管内の流れを計算する管内水理モデルは、サンブナン式(Dynamic wave法)を用いて構築することが出来る、サンブナン式は、質量と運動量の保存則から、次の(6)式(連続の式)、(7)式(運動方程式)で表される。
【0074】
【数4】

【0075】
【数5】

【0076】
図20及び図21は、地表面氾濫モデルの一例の概念を示す説明図である。地表面氾濫モデルによれば、降雨量が多いために、合流管から溢れた下水(主に初期汚濁水)が地表面を流下し移動する態様(流路、流量)を求めることが出来る。合流管から溢れた下水は、地盤の高低差によって、流下、移動するが、地表面氾濫モデルでは、流域の地形をデータ(標高を持った2次元の地表面データ)として備え、その流域の地形を考慮して、浸水の移動を表現(再現)することが出来る。地表面氾濫モデルは、質量保存式(連続式)、運動方程式(X方向及びY方向)によって表現することが可能である。
【実施例】
【0077】
以下、本発明を、シミュレーション(本明細書における実施例とする)により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0078】
以下に示す実施例1〜4及び比較例1〜4では、共通して、排水区の面積を300ha(直接雨水流入区域 36ha)と想定し、通常下水処理設備の処理水量(能力)を6000m/日とした。
【0079】
[コスト及び面積の比較]先ず、設備(イニシャル)コスト費及び必要な土地の面積の比較を行なった。以下の条件において、コスト比は、下水処理システム8を100とすると、下水処理システム5は概ね84であった。面積比は、下水処理システム8を100とすると、下水処理システム5は概ね97であった。
【0080】
後述する比較例1〜4で用いられる既述の下水処理システム8(図8を参照)において、合流改善用雨水貯留設備の容量を9000m、浸水対策用雨水貯留設備の容量を4500mとした。
【0081】
合流改善用雨水貯留設備の容量は、年間の雨天時BOD総流出負荷量と雨水貯留設備の容量との関係(国土交通省合流改善検討委員会資料、平成13年)に基づき、分流式と同等の、雨天時BOD総流出負荷量75kg/年/haとするために、雨水貯留設備の容量は面積あたり3mm必要として、300ha(300万m)×3mm=9000m、より求めた。
【0082】
浸水対策用雨水貯留設備の容量は、合流管の流下能力を越えて計画降雨(ピーク流出量)が発生したときに、浸水が生じないように、次の(8)式に基づいて求めた。(8)式において、任意降雨継続時間の降雨強度r1(mm/h)を45、合流管の流下能力r2(mm/h)を40、任意降雨継続時間t(分)を60、流出係数fを0.5、直接雨水流入区域の面積A(ha)を36とすれば、容量V=4500m、が求まる。
V=(r1−r2×1/2)×60×t×f×A×1/360 ・・・ (8)
【0083】
後述する実施例1〜4で用いられる既述の下水処理システム5(図5を参照)において、合流改善と浸水対策との併用目的の合流改善浸水対策併用雨水貯留設備の容量を6000m、高速濾過設備は、その濾過面積を72m、濾過水量(処理能力)を3000m/時とした。
【0084】
上記の条件において、下水処理システム5は、下水処理システム8と概ね同等の合流改善及び浸水対策能力を有する下水処理システムとなる。即ち、下水処理システム8における合流改善用雨水貯留設備と浸水対策用雨水貯留設備の合計容量が13500m(=9000m+4500m)であるのに対し、下水処理システム5では、合流改善浸水対策併用雨水貯留設備を1つとして、その容量を6000mと仮定し、これに7500m(=13500m−6000m)分の貯槽容量に相当する能力の高速濾過設備を付加した。
【0085】
次に、4つの降雨パターンを想定して、下水処理システム5及び下水処理システム8の対応についてシミュレーションを試みた。尚、実際には、降雨パターンは、既述の下水処理システムにおける情報処理(解析を含む)によって、予測(予想)される。
【0086】
[1回の小降雨のケース]図9は、6時間の小降雨の際の対応の一例を示すタイムチャートである。降雨が1回の小降雨であると予測(予想)される場合、合流改善のみを行なえばよく、浸水対策は不要である。
【0087】
(比較例1)下水処理システム8による1回の小降雨の際の対応は、先ず、初期汚濁水を、概ね4.5時間、汚水ポンプで合流改善用雨水貯留設備81へ送る。合流改善用雨水貯留設備81が満水(9000m)になるので、小降雨が終わるまで(概ね2時間)、初期汚濁水を通常下水処理設備に戻し、反応槽の能力を超える水量を最初沈殿池のみを通す簡易処理によって、放流する。小降雨が止んだら、初期汚濁水を、合流改善用雨水貯留設備81から通常下水処理設備へ送り、36時間かけて、通常下水処理設備全てによる通常処理を行なって、河川等へ放流する。
【0088】
(実施例1)下水処理システム5による1回の小降雨の際の対応は、先ず、初期汚濁水を、概ね3時間、汚水ポンプで合流改善浸水対策併用雨水貯留設備51へ送る。合流改善浸水対策併用雨水貯留設備51が満水(6000m)になるので、小降雨の中、小降雨が終わるまで(概ね3時間)、反応槽の能力を超える水量の初期汚濁水を高速濾過設備53で処理し、放流する。雨が止んだら、(次の降雨が予想されなければ、初期汚濁水を高速濾過設備53で処理する必要はなく)初期汚濁水を、合流改善浸水対策併用雨水貯留設備51から通常下水処理設備へ送り、24時間かけて、通常下水処理設備全てによる通常処理を行なって、河川等へ放流する。
【0089】
[連続した小降雨のケース]図10は、6時間の小降雨の後、5時間雨が止み、更に6時間の小降雨があった際の対応の一例を示すタイムチャートである。小降雨が続くと予測(予想)される場合には、合流改善のみを行なえばよく、浸水対策は不要である。
【0090】
(比較例2)下水処理システム8による連続した小降雨への対応は、先ず、初期汚濁水を、概ね4.5時間、汚水ポンプで合流改善用雨水貯留設備81へ送る。合流改善用雨水貯留設備81が満水(9000m)になるので、小降雨の中、小降雨が終わるまで(概ね2時間)、初期汚濁水を通常下水処理設備に戻し、反応槽の能力を超える水量を最初沈殿池のみを通す簡易処理によって、放流する。雨が止んだら、初期汚濁水を、通常下水処理設備へ送り、(例えば)1000mを処理して、河川等へ放流する。そして、再び小降雨があったら、通常下水処理設備による初期汚濁水の処理を止め、初期汚濁水を、汚水ポンプで合流改善用雨水貯留設備81へ送る。合流改善用雨水貯留設備81には、先の通常下水処理設備による処理で1000mの空きがある。しかし、やがて、合流改善用雨水貯留設備81は満水になるので、小降雨の中、小降雨が終わるまで、初期汚濁水を通常下水処理設備に戻し、そのうちの最初沈殿池のみを通す簡易処理によって、放流する。小降雨が止んだら、初期汚濁水を、合流改善用雨水貯留設備81から通常下水処理設備へ送り、36時間かけて、通常下水処理設備全てによる通常処理を行なって、河川等へ放流する。
【0091】
(実施例2)下水処理システム5による連続した小降雨の際の対応は、先ず、初期汚濁水を、概ね3時間、汚水ポンプで合流改善浸水対策併用雨水貯留設備51へ送る。合流改善浸水対策併用雨水貯留設備51が満水(6000m)になるので、小降雨の中、小降雨が終わるまで(概ね3時間)、反応槽の能力を超える水量の初期汚濁水を高速濾過設備53で処理し、放流する。雨が止んだら、合流改善浸水対策併用雨水貯留設備51に貯留された初期汚濁水を、通常下水処理設備へ送り、(例えば)500mだけを処理して、河川等へ放流する。次の小降雨が予想された場合、通常下水処理設備による初期汚濁水の処理を止め、小降雨があるまでは、合流改善浸水対策併用雨水貯留設備51に貯留された初期汚濁水を、高速濾過設備53で処理する。そして、再び小降雨があったら、初期汚濁水を、汚水ポンプで合流改善浸水対策併用雨水貯留設備51へ送る。通常下水処理設備による処理、直前の高速濾過設備53による処理によって、合流改善浸水対策併用雨水貯留設備51には空きがある。しかし、やがて、合流改善浸水対策併用雨水貯留設備51は満水になるので、降雨の中、降雨が終わるまで、反応槽の能力を超える水量の初期汚濁水を高速濾過設備53で処理し、放流する。小降雨が止んだら、(その次の降雨が予想されなければ、初期汚濁水を高速濾過設備53で処理する必要はなく)初期汚濁水を、合流改善浸水対策併用雨水貯留設備51から通常下水処理設備へ送り、24時間かけて、通常下水処理設備全てによる通常処理を行なって、河川等へ放流する。
【0092】
[小降雨の後に続けて大雨が発生するケース]図11は、6時間の小降雨の後に続けて5時間の大雨(30mm/時以上)が発生した際の対応の一例を示すタイムチャートである。小降雨、大雨が続くと予測(予想)される場合、合流改善及び浸水対策を施す必要がある。
【0093】
(比較例3)下水処理システム8による小降雨、大雨が続く場合の対応は、先ず、初期汚濁水を、概ね4.5時間、汚水ポンプで合流改善用雨水貯留設備81へ送る。合流改善用雨水貯留設備81が満水(9000m)になるので、小降雨とその後の大雨が終わるまで(概ね7.5時間)、初期汚濁水を通常下水処理設備に戻し、そのうちの最初沈殿池のみを通す簡易処理によって、放流する。大雨により初期汚濁水の流入量が汚水ポンプの能力を超えるので、雨水ポンプを稼動させ、初期汚濁水を放流する。更に、続く大雨によって初期汚濁水の流入量が雨水ポンプ能力を超えると、初期汚濁水は雨水吐の(例えば)堰を越えて、浸水対策用雨水貯留設備82に送られる。雨が止んだら、初期汚濁水を、合流改善用雨水貯留設備81から通常下水処理設備へ送り、36時間かけて、通常下水処理設備全てによる通常処理を行なって、河川等へ放流する。
【0094】
(実施例3)下水処理システム5による小降雨、大雨が続く場合の対応は、先ず、初期汚濁水を、概ね3時間、汚水ポンプで合流改善浸水対策併用雨水貯留設備51へ送る。合流改善浸水対策併用雨水貯留設備51が満水(6000m)になるので、小降雨とその後の大雨が終わるまで(概ね9時間)、合流改善浸水対策併用雨水貯留設備51の初期汚濁水を高速濾過設備53で処理し、放流する。合流改善浸水対策併用雨水貯留設備51が空になった場合は、反応槽の能力を超える水量の初期汚濁水を高速濾過設備53で処理し、放流する。初期汚濁水を高速濾過設備53で処理し合流改善浸水対策併用雨水貯留設備51に空きが生じても、大雨により初期汚濁水の流入量が汚水ポンプの能力を超えると、合流改善浸水対策併用雨水貯留設備51へ初期汚濁水を送れなくなるので、雨水ポンプを稼動させ、初期汚濁水を放流する。更に、続く大雨によって初期汚濁水の流入量が雨水ポンプ能力を超えると、初期汚濁水は雨水吐の(例えば)堰を越えて、合流改善浸水対策併用雨水貯留設備51に送られる。降雨が止んだら、(その次の降雨が予測(予想)されなければ、初期汚濁水を高速濾過設備53で処理する必要はなく)初期汚濁水を、通常下水処理設備へ送り、24時間かけて、通常下水処理設備全てによる通常処理を行なって、河川等へ放流する。
【0095】
[大雨の後に再び大雨が発生するケース]図12は、1時間の小降雨、3時間の大雨(30mm/時以上)、4時間の小降雨、及び3時間の大雨が、連続して発生した際の対応の一例を示すタイムチャートである。小降雨と大雨が交互に2回続くと予測(予想)される場合、浸水対策のみを考慮し、これを施す必要がある。
【0096】
(比較例4)下水処理システム8による小降雨、大雨が交互に2回続く場合の対応は、最初から、初期汚濁水を、汚水ポンプで通常下水処理設備へ送り、そのうちの最初沈殿池のみを通す簡易処理によって、放流する。併せて、大雨により初期汚濁水の流入量が汚水ポンプの能力を超えるので、雨水ポンプを稼動させ、初期汚濁水を放流する。更に、続く大雨によって初期汚濁水の流入量が雨水ポンプ能力を超えると、初期汚濁水は雨水吐の(例えば)堰を越えて、浸水対策用雨水貯留設備82に送られる。降雨が止んだら、初期汚濁水を、浸水対策用雨水貯留設備82から通常下水処理設備へ送り、通常下水処理設備全てによる通常処理を経て、河川等へ放流する。
【0097】
(実施例4)下水処理システム5による小降雨、大雨が交互に2回続く場合の対応は、先ず、初期汚濁水の流入量が汚水ポンプの能力を超えた段階で、雨水ポンプを稼動させ、初期汚濁水を放流する。続く大雨によって初期汚濁水の流入量が雨水ポンプ能力を超えると、初期汚濁水は雨水吐の(例えば)堰を越えて、合流改善浸水対策併用雨水貯留設備51に送られる。合流改善浸水対策併用雨水貯留設備51が浸水対策の分の水量((例えば)4500m)を貯留したら、小降雨のときに、合流改善浸水対策併用雨水貯留設備51の初期汚濁水を高速濾過設備53で処理し、放流する。続く大雨によって初期汚濁水の流入量が汚水ポンプの能力を超えるので、雨水ポンプを稼動させ、初期汚濁水を放流する。再度、大雨になったら、続く大雨によって初期汚濁水の流入量が雨水ポンプ能力を超えると、初期汚濁水は雨水吐の(例えば)堰を越えて、合流改善浸水対策併用雨水貯留設備51に送られる。合流改善浸水対策併用雨水貯留設備51が浸水対策の分の水量を貯留したら、小降雨のときに、合流改善浸水対策併用雨水貯留設備51の初期汚濁水を高速濾過設備53で処理し、放流する。
【0098】
(考察)以上の通り、コストが廉価で省スペースの下水処理システム5は、下水処理システム8と同等以上の合流改善及び浸水対策の能力を有する。
【0099】
又、従来の下水処理システム8による場合には、降雨が止んでからでないと通常処理をすることが出来ないので、降雨の予測(予想)が外れたときの対応に柔軟性が全くなく、降雨の予測(予想)が外れた場合に初期汚濁水による浸水被害発生のおそれが高い。これに対し、本発明に係る下水処理システムである下水処理システム5による場合には、降雨中にも高速濾過設備で初期汚濁水を処理し放流することが可能であり、それによって合流改善浸水対策併用雨水貯留設備における受入可能容量を確保することが出来、降雨の予測(予想)が外れた場合であっても初期汚濁水による浸水被害発生を防止し得る。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明に係る下水処理システム及びその運用方法は、新たに合流式下水道を構築する際の下水処理システム及びその運用手段として、好適に利用される。本発明に係る下水処理システムの改善方法は、既存の合流式下水道を改善する手段として、好適に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明に係る下水処理システムの効果を表す図であり、当初設計値に基づく合流改善浸水対策併用雨水貯留設備の目的別容量を表す説明図である。
【図2】本発明に係る下水処理システムの効果を表す図であり、合流改善浸水対策併用雨水貯留設備に貯められた雨水を高速濾過設備で処理する様子を表す説明図である。
【図3】本発明に係る下水処理システムの効果を表す図であり、浸水対策のための容量を増加させた後の、合流改善浸水対策併用雨水貯留設備の目的別容量を表す説明図である。
【図4】合流式下水道全体の系を表す構成図である。
【図5】本発明に係る下水処理システムの一実施形態を示すフロー図である。
【図6】本発明に係る下水処理システムの一実施形態を示すフロー図である。
【図7】従来の下水処理システムの一例を示すフロー図である。
【図8】従来の下水処理システムの一例を示すフロー図である。
【図9】実施例のうち比較例1及び実施例1における下水処理システムの処理過程を示すタイムチャートである。
【図10】実施例のうち比較例2及び実施例2における下水処理システムの処理過程を示すタイムチャートである。
【図11】実施例のうち比較例3及び実施例3における下水処理システムの処理過程を示すタイムチャートである。
【図12】実施例のうち比較例4及び実施例4における下水処理システムの処理過程を示すタイムチャートである。
【図13】本発明に係る下水処理システムにおける情報処理を表すフロー図である。
【図14】本発明に係る下水処理システムにおける解析装置で用いられる降雨量予測モデルの一例(簡易式)の概要を示すグラフである。
【図15A】本発明に係る下水処理システムにおける解析装置で用いられる有効降雨モデルの一例の概念を示す説明図であり、不浸透域における損失(凹地貯留、浸透)をイメージで表した図である。
【図15B】本発明に係る下水処理システムにおける解析装置で用いられる有効降雨モデルの一例の概念を示す説明図であり、半浸透域における損失(凹地貯留、浸透)をイメージで表した図である。
【図15C】本発明に係る下水処理システムにおける解析装置で用いられる有効降雨モデルの一例の概念を示す説明図であり、浸透域における損失(凹地貯留、浸透)をイメージで表した図である。
【図16A】本発明に係る下水処理システムにおける解析装置で用いられる有効降雨モデルの一例の概念を示すグラフ図であり、不浸透域における損失(凹地貯留、浸透)を時間経過毎の降雨量で表したグラフである。
【図16B】本発明に係る下水処理システムにおける解析装置で用いられる有効降雨モデルの一例の概念を示すグラフ図であり、半浸透域における損失(凹地貯留、浸透)を時間経過毎の降雨量で表したグラフである。
【図16C】本発明に係る下水処理システムにおける解析装置で用いられる有効降雨モデルの一例の概念を示すグラフ図であり、浸透域における損失(凹地貯留、浸透)を時間経過毎の降雨量で表したグラフである。
【図16D】本発明に係る下水処理システムにおける解析装置で用いられる有効降雨モデルの一例の概念を示すグラフ図であり、全域(流域全体)における損失(凹地貯留、浸透)を時間経過毎の降雨量で表したグラフである。
【図17】本発明に係る下水処理システムにおける解析装置で用いられる地表面流下モデルの一例の概念を示すグラフである。
【図18】本発明に係る下水処理システムにおける解析装置で用いられる地表面流下モデルの一例の概念を示す説明図である。
【図19】本発明に係る下水処理システムにおける解析装置で用いられる地表面流下モデルの一例の概念を示すグラフである。
【図20】本発明に係る下水処理システムにおける解析装置で用いられる地表面氾濫モデルの一例の概念を示す説明図である。
【図21】本発明に係る下水処理システムにおける解析装置で用いられる地表面氾濫モデルの一例の概念を示す説明図である。
【符号の説明】
【0102】
5,6:(本発明に係る)下水処理システム
7,8:(従来の)下水処理システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚水と雨水とが合流した下水を受け入れ処理する通常下水処理設備に加えて、
降雨時に初期汚濁水を、前記通常下水処理設備の系から分岐させて受け入れ貯留する合流改善浸水対策併用雨水貯留設備と、
その合流改善浸水対策併用雨水貯留設備に貯留された、前記初期汚濁水を処理し、前記通常下水処理設備を通さずに放流する高速濾過設備と、
を備えた系を有する下水処理システム。
【請求項2】
前記合流改善浸水対策併用雨水貯留設備が、
入口側から出口側に向けて複数の仕切りが設けられた構造を有する請求項1に記載の下水処理システム。
【請求項3】
前記高速濾過設備が、
浮上濾材層を有し、その浮上濾材層の上側のみにスクリーンが配置され、上向流で前記初期汚濁水が処理されるとともに、浮上濾材層の逆洗手段を備える請求項1又は2に記載の下水処理システム。
【請求項4】
少なくとも、降雨情報と、前記汚水と雨水とが合流した下水が流れる合流管情報と、を入力し、これらの情報を解析して、前記合流改善浸水対策併用雨水貯留設備における現在及び将来の貯留量を求める解析手段を有する請求項1〜3の何れか一項に記載の下水処理システム。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の下水処理システムにおいて、
気象情報により次の降雨が予想される場合に、前の降雨によるものを含む初期汚濁水を、前記通常下水処理設備の系から分岐させて前記合流改善浸水対策併用雨水貯留設備に受け入れて貯留し、
その合流改善浸水対策併用雨水貯留設備に貯留された、前記初期汚濁水を、前記高速濾過設備で処理し、前記合流改善浸水対策併用雨水貯留設備の貯留可能水量を増やす下水処理システムの運用方法。
【請求項6】
前記下水処理システムは請求項2に記載の下水処理システムであり、
前記初期汚濁水を、前記通常下水処理設備の系から分岐させて、前記仕切りが設けられた合流改善浸水対策併用雨水貯留設備に貯留し、
その貯留された、前記初期汚濁水を、希薄なものから、順次、前記高速濾過設備で処理する請求項5に記載の下水処理システムの運用方法。
【請求項7】
前記下水処理システムは請求項4に記載の下水処理システムであり、
少なくとも、降雨情報と、前記汚水と雨水とが合流した下水が流れる合流管情報と、を基に、これらの情報を解析して、前記合流改善浸水対策併用雨水貯留設備における現在及び将来の貯留量を求め、
その求められた現在及び将来の貯留量に基づいて、前記通常下水処理設備の系から分岐させて前記合流改善浸水対策併用雨水貯留設備に受け入れ貯留すべき初期汚濁水の量、及び、前記高速濾過設備で処理すべき初期汚濁水の量、のうち何れか又は両方を決定する請求項5に記載の下水処理システムの運用方法。
【請求項8】
汚水と雨水とが合流した下水を受け入れ処理する通常下水処理設備と、
降雨時に初期汚濁水を、前記通常下水処理設備の系から分岐させて受け入れて貯留する合流改善浸水対策併用雨水貯留設備と、を既に有する下水処理システムにおいて、
前記合流改善浸水対策併用雨水貯留設備に貯留された、前記初期汚濁水を処理し、前記通常下水処理設備を通さずに放流する高速濾過設備を増設し、
気象情報により次の降雨が予想される場合に、前の降雨によるものを含む初期汚濁水を、前記通常下水処理設備の系から分岐させて前記合流改善浸水対策併用雨水貯留設備に受け入れて貯留し、
その合流改善浸水対策併用雨水貯留設備に貯留された、前記初期汚濁水を、前記高速濾過設備で処理し、前記合流改善浸水対策併用雨水貯留設備の貯留可能水量を増やす下水処理システムの改善方法。
【請求項9】
汚水と雨水とが合流した下水を受け入れ処理する既存の通常下水処理設備に、
降雨時に初期汚濁水を、前記通常下水処理設備の系から分岐させて受け入れて貯留する合流改善浸水対策併用雨水貯留設備と、
その合流改善浸水対策併用雨水貯留設備に貯留された、前記初期汚濁水を処理し、前記通常下水処理設備を通さずに放流する高速濾過設備と、を増設し、
気象情報により次の降雨が予想される場合に、前の降雨によるものを含む初期汚濁水を、前記通常下水処理設備の系から分岐させて前記合流改善浸水対策併用雨水貯留設備に受け入れて貯留し、
その合流改善浸水対策併用雨水貯留設備に貯留された、前記初期汚濁水を、前記高速濾過設備で処理し、前記合流改善浸水対策併用雨水貯留設備の貯留可能水量を増やす下水処理システムの改善方法。
【請求項10】
前記合流改善浸水対策併用雨水貯留設備を、
入口側から出口側に向けて複数の仕切りが設けられた構造を有するものとして構成し、
前記初期汚濁水を、前記通常下水処理設備の系から分岐させて、前記仕切りが設けられた合流改善浸水対策併用雨水貯留設備に貯留し、
その貯留された、前記初期汚濁水を、希薄なものから、順次、前記高速濾過設備で処理する請求項8及び請求項9に記載の下水処理システムの改善方法。
【請求項11】
前記高速濾過設備が、
浮上濾材層を有し、その浮上濾材層の上側のみにスクリーンが配置され、上向流で前記初期汚濁水が処理されるとともに、浮上濾材層の逆洗手段を備える請求項8又は9に記載の下水処理システムの改善方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【図16D】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−133190(P2010−133190A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−312143(P2008−312143)
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【出願人】(507214083)メタウォーター株式会社 (277)
【Fターム(参考)】