説明

下水処理運転支援装置

【課題】 流入水質に依存せず安定した水処理品質を得る。
【解決手段】 本発明の下水処理運転支援装置は、水質値、流入量、返送量、制御量の実績値などを蓄積するデータベース部と、データベースの入力データを演算する演算部と、演算部で演算した流入量や水質測定値を表示する表示部と、演算部の演算結果を自動調節装置へ出力する出力部とからなる。制御量の時刻推移と各種水質データとを並行表示し、送風量および返送量の調整を予め設定した流入量のピーク予測時より前に行い、かつオペレータが異常と判断した時に制御量を入力部より変更するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水道の水処理運用を支援する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の運転支援装置は流入汚泥の水質や量をあらかじめ決められたパターンに当てはめ最適なパラメーターを生成し、DO一定制御や運転スケジュールを設定し水処理運転支援をしている(例えば、特許文献1参照)。
図4は、従来の運転支援装置による1日の処理状況を示すチャートグラフである。図において、aは流入量、bは制御量、cは放流品質値を表す。図に示すように4時から5時にかけて大きく流入し、さらに18時頃から21時にかけて1日の最大量の流入がある。この流入量に比例した一定のパターンで制御量を変えているため、放流水の品質値は大きなうねりを生じている。
【特許文献1】特開2001−334284号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の運転支援装置は、常に流入汚泥の水質に影響され、曝気槽のDO値やMLSS値などに変化が生じたときに制御量を変化させ、ある一定の値を維持する調節を行う制御形態であった。これらの方法では流入に対して常に後追いするかたちとなり、DOを一定に保つために流入を調整して安定した処理をさせ、処理場の能力が最大限に発揮できないといった要因にもなっていた。
また、予測モデルを現在流入量に当てはめるような場合は、常に現在の汚泥についてモデルの検討が必要になり、処理形態を維持するためにノウハウが求められというような問題もあった。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、前日の処理結果から得られる各種データを処理品質の効果を把握および過去の蓄積されたデータを参照しながら制御量を決定し、過去の実績から人の経験を逐一制御量に反映させることで総合的に制御値を決定し制御する事を 特徴とする処理形態を有し、流入水質に依存しない水処理品質の安定運用を実現する支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記問題を解決するため、本発明は、次のように構成したものである。
請求項1に記載の発明は、水質値、流入量、返送量、制御量の実績値などを蓄積するデータベース部と、前記データベースの入力データを演算する演算部と、前記演算部で演算した前記流入量や水質測定値を表示する表示部と、前記演算部の演算結果を自動調節装置へ出力する出力部とからなる下水処理運転支援装置において、前記制御量の時刻推移と各種水質データとを並行表示し、送風量および返送量の調整を予め設定した前記流入量のピーク予測時より前に行い、かつオペレータが異常と判断した時に前記制御量を前記入力部より変更するものである。
【発明の効果】
【0005】
請求項1に記載の発明によれば、毎日の制御量に対しての水処理処理状況を把握できることにより、前日比に基づく本日の制御量の決定ができるので流入水質に依存せず安定した水処理品質を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
【実施例1】
【0007】
図1は、本発明の予測制御表示を示すチャートグラフである。
図において、a1は前日流入量、b1は本日制御量、cは放流品質値である。
本発明が特許文献1と異なる部分は、あらかじめ決められたモデルを持たずに前日データをもとにオペレーターが経験をもとに値を自由に変更できる機能を備えた部分である。
つぎに、本発明の下水処理運転支援装置の動作について説明する。
まず、表示部に、前日の処理計測データと制御量データと演算部で計算した各種手分析データをデータベース部より抽出して、時系列に描画する。
つぎに、適切に修正した本日の制御量と時間を決定し入力する。実行時間になればデータベース部に記録し出力部より各指示調節計へ出力する。
予測制御表示を示すチャートグラフは、現在値と過去データである測定推移を参照して前日のグラフを表示しておりこの実績に基づき制御量を設定する。前日流入量に対しての制御量の結果が水質品質データを併記しているため制御状態が適切かどうか把握でき、この結果にもとづき本日分の値を決定できるので水質を安定させることができる。
数時間前の段階で予測した制御量で、先行運転を決定できる。この効果によりやがて流入してくる汚泥に対し必要な量を事前準備することで放流品質の一定化を実現することができる。本発明では、この大きく変化する水質を経済的に把握し適切な量を適切な時間に制御することができる。
このように、チャート表示を基本に制御量をトレースするような構成にしているので、分析データなどを並行して表示することにより、最適な値を導くことができる。
【実施例2】
【0008】
図2は、本発明の第2実施例を示す運転支援装置の概念図で本発明を送風機の風量自動調節へ適用した場合の実施例を示す。
図において、1はHMI(運転支援装置)、2は指示調節計、3は可変速モータである。
まず、データーベース部により前日までの各種測定値および制御値が記録されている。また、本日の制御量が前日の制御量に相似した曲線を描いており実行時間に応じた制御量を出力する。
つぎに、出力部により実行時間に応じた適切に決定された風量が出力される。この信号を指示調節計2の目標SVへ接続、指示調節計2はAUTOモードで風量一定制御を行う。応答時間を大きく調整して外乱等に対して緩慢な応答になるように調整する。このとき、汚泥流入量やDOやMLSS等の品質データは時々刻々と変化する。このデータを収集部により収集して本日の制御補正等にフィードバックすることにより安定した制御系を実現できる。
【実施例3】
【0009】
図3は、本発明の第3実施例を示す運転支援装置の概念図で本発明を返送汚泥ポンプの返送汚泥量調節へ適用した場合の実施例を示す。
まず、出力部により実行時間に応じて適切に決定された制御量(返送汚泥量)が出力される。この信号を指示調節計2の目標SVへ接続、指示調節計2はAUTOモードで目標値一定制御を行う。調節パラメータの応答時間を大きく設定し、外乱等に対して緩慢に応答するように調整する。このとき、汚泥流入量やDOやMLSS等の品質データは時々刻々と変化する。このデータを収集部により収集して本日の制御補正等にフィードバックすることにより安定した制御系を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の予測制御を示すチャートグラフ
【図2】本発明の第2実施例を示す運転支援装置の概念図
【図3】本発明の第3実施例を示す運転支援装置の概念図
【図4】1日の処理状況を示すチャートグラフ
【符号の説明】
【0011】
1 HMI(運転支援装置)
2 指示調節計
3 可変速モータ
a 流入量
a1 前日流入量
b 制御量
b1 本日制御量
c 放流品質値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水質値、流入量、返送量、制御量の実績値などを蓄積するデータベース部と、前記データベースの入力データを演算する演算部と、前記演算部で演算した前記流入量や水質測定値を表示する表示部と、前記演算部の演算結果を自動調節装置へ出力する出力部とからなる下水処理運転支援装置において、
前記制御量の時刻推移と各種水質データとを並行表示し、送風量および返送量の調整を予め設定した前記流入量のピーク予測時より前に行い、かつオペレータが異常と判断した時に前記制御量を前記入力部より変更することを特徴とする下水処理運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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