説明

下水道マンホールの更生方法とそのマンホール

【課題】 特別の工具や装置を必要とせず、施工を容易、且つ効率的に行うことができ、しかも同時に現在大きな問題となっている地震発生時のマンホールの浮上又は沈下防止効果があるマンホールの更生後方とそのマンホールを提供する。
【解決手段】 横断面が円弧状の板状の鋳物製本体2aの両側に、雌型係合部2cと雄型係合部2dを上下方向に設け、且つ合成樹脂2bで被覆した内張り用ブロック2を、隣接内張り用ブロックの雌型係合部2cと雄型係合部2dを係合させて、マンホール1の内面に環状に配置し、これら内張り用ブロック2とマンホール1の内面との間にモルタル3を流し込み、内張り用ブロック2をマンホール1の内面に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水道マンホールの更生方法とそのマンホールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリート製マンホールの耐用年数は50年程であるが、現在の下水道マンホールで既設年数が20年以上経つものは、汚水から発生する硫化水素ガスなどによる腐食により、実際の耐用年数より早く劣化し、補強や交換が必要なマンホールが多く、問題となっている。
【0003】
これら劣化したマンホールの更生方法として、老朽したマンホールを洗浄後、マンホール内面にプライマーを塗布し、形状に合わせて加工したスペーサー付結合板をマンホール壁面に取付け、その内側に熱硬化樹脂を含浸させたマンホールライニング材をマンホールに挿入した後、そのマンホールライニング材を空気圧により膨らませ、次いで温水を満水状態にて循環させて熱硬化させ、マンホールライニング材硬化後、管口とインバート部の切断を行い、既設マンホールと結合板の間に充填剤を貫通し、マンホールライニング材と既設マンホール内面を結合させるというターヤン工法と称される更生方法が提案されている。
【0004】
この更生方法は、マンホールライニング材と既設マンホール内壁を結合板及び充填材で結合させることにより、複合マンホールを形成し、老朽化したマンホールを更生する技術であるが、上記の説明からわかるように、処理工程が煩雑で作業性が悪いばかりでなく、専用の用具や装置が必要であるという難点がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】2007年度「下水道新技術研究所年報」〔要約版〕74頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は特別の工具や装置を必要とせず、施工を容易、且つ効率的に行うことができ、しかも同時に現在大きな問題となっている地震発生時のマンホールの浮上又は沈下防止効果があるマンホールの更生方法とそのマンホールを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、請求項1記載の発明は、横断面が円弧状の板状又は短冊状の鋳物製本体の両側に、雌型係合部と雄型係合部を上下方向に設け、且つ合成樹脂で被覆した内張り用ブロックを、隣接内張り用ブロックの雌型係合部と雄型係合部を係合させて、マンホールの内面に環状に配置し、これら内張り用ブロックとマンホール内面との間にモルタルを流し込み、内張り用ブロックをマンホール内面に固定することを特徴とするマンホールの更生方法である。
【0008】
請求項2記載の発明は、横断面が円弧状の板状又は短冊状の鋳物製の本体両側に、雌型係合部と雄型係合部を上下方向に設け、且つ適数のモルタル貫通孔を設けた内張り用ブロックを、隣接内張り用ブロックの雌型係合部と雄型係合部を係合させて、マンホールの内面に環状に配置し、これら内張り用ブロックとマンホール内面との間と、前記モルタル貫通孔にモルタルを流し込み、更にマンホールに内張りされた内張り用ブロックの露出部をモルタルで被覆することを特徴とするマンホールの更生方法である。
【0009】
請求項3記載の発明は、横断面が円弧状の板状又は短冊状の鋳物製の本体両側に、雌型係合部と雄型係合部を上下方向に設け、且つ合成樹脂で被覆した内張り用ブロックを、隣接内張り用ブロックの雌型係合部と雄型係合部を係合させて、マンホールの内面に環状に配置し、これら内張り用ブロックとマンホール内面との間にモルタルを流し込み内張り用ブロックをマンホール内面に固定したことを特徴とするマンホールである。
【0010】
請求項4記載の発明は、横断面が円弧状の板状又は短冊状の鋳物製の本体両側に、雌型係合部と雄型係合部を上下方向に設け、且つ適数のモルタル貫通孔を設けた内張り用ブロックを、隣接内張り用ブロックの雌型係合部と雄型係合部を係合させて、マンホールの内面に環状に配置し、これら内張り用ブロックとマンホール内面との間と、前記モルタル貫通孔にモルタルを流し込み、更にマンホールに内張りされた内張り用ブロックの露出部をモルタルで被覆したことを特徴とするマンホールである。
【発明の効果】
【0011】
前記請求項1記載の発明に係るマンホールの更生方法は、隣接内張りブロックの雌型係合部と雄型係合部を係合させて、マンホールの内面に環状に配置し、これら内張り用ブロックとマンホール内面との間にモルタルを流し込み内張り用ブロックをマンホール内面に固定する作業を、下段から繰り返していくだけであるから、内張り作業、即ちマンホール更生作業を簡単に手順良く進めることができ、しかも特別な工具も装置も必要とせず工法として優れている。
【0012】
そして内張りされた内張り用ブロック同士は強固に一体化してマンホール内面に固定され、マンホールの更生を果たすとともに、内張り用ブロックを既設マンホールに付加したことによって、マンホールの見掛け比重を1以上にした場合は、劣化した既設マンホールは更生されると同時に、地震発生時の浮上又は沈下防止機能を付与されるという効果がある。
【0013】
なお、合成樹脂被覆部分は、内張り用ブロックの全体でも良いが、マンホールに内張りした時に、露出する部分、例えば内側面だけでもよい。
【0014】
請求項1記載の発明は、表面を合成樹脂で被覆して耐蝕性を付与した鋳物製内張り用ブロックを用いる場合のマンホールの更生方法であるが、請求項2記載の発明は、表面を合成樹脂で被覆しない場合の鋳物製内張り用ブロックを用いる場合の発明であって、この場合鋳物製内張り用ブロックに耐蝕性を付与するため、モルタルを用いるようにしたものであり、施工は請求項1記載の発明よりも、若干手間と簡単な環状型枠を要するが、請求項1記載の発明と同様、マンホールの更生並びに地震発生時のマンホールの浮上又は沈下防止機能を付与することができる。
【0015】
又、請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明を適用した場合のマンホールを、そして請求項4記載の発明は、請求項2記載の発明を適用した場合のマンホールの構成に関するもので、それぞれ既設マンホールの構成と強化並びに地震発生時のマンホールの浮上又沈下防止機能を有するマンホールを提供することが出来る効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例1の縦断面図。
【図2】図1の横断平面図。
【図3】本発明の実施例1に用いた内張り用ブロックの一部を切除した斜視図。
【図4】本発明の実施例2に用いた内張り用ブロックの斜視図。
【図5】本発明の実施例2の施工手順を示す説明図。
【実施例1】
【0017】
図1は請求項1記載の発明による更生を施した既設マンホールの縦断面図、図2はその横断平面図を示すもので、1は既設マンホール、2は内張り用ブロック、3は既設マンホール1と内張り用ブロック2間に流し込んだモルタル、4は下段と上段の内張り用ブロック間に挟んだブチルゴム製のシーリング材である。
【0018】
図3は実施例1で用いた内張り用ブロック2の構造を示すもので、鋳鉄製の内張りブロックの本体2aに合成樹脂2bを被覆したもので、本体2aは、円弧状の板状のもので、両側に雌型係合部2cと雄型係合部2dをそれぞれ上下方向に設けたものである。
【0019】
既設マンホール1の更生に際しては、老朽化したマンホールの内面を洗浄後、内張り用ブロック2を隣接内張り用ブロック2,2のそれぞれの雌型係合部2cと雄型係合部2dを図2に示すように係合させてマンホール1の内側に環状に配置し、マンホール1と内張り用ブロック2間にモルタル3を流し込みながら下段より順次内張りしていく。なお、この実施例では下段内張り用ブロック2と上段内張り用ブロック2間にはブチルゴム製のシーリング材4を挟むようにした。
【0020】
内張り用ブロック2をマンホール1に結合させるためのモルタル3としては、耐酸性のある高炉水砕スラグ使用の無収縮モルタルが好ましい。この種のモルタルには早強、超早強、超々早強性等、硬化速度が種々異なるのものが市販されているので、内張り用ブロックの内張り所要時間に応じて選択して使用する。
【0021】
以上のように、作業手順は極めて簡単であり作業性に優れているので更生方法として好適である。
【0022】
そして、この内張り用ブロック2を内張りしたことによりマンホール1の強度を強化すると共に、マンホールの見掛け比重を1以上にした場合、劣化した既設マンホールの更生を果たすと同時に、地震発生時の浮上又は沈下防止機能が付与されることになる。
【実施例2】
【0023】
前記実施例1は請求項1記載の発明を適用した場合であるのに対し、実施例2は請求項2記載の発明を適用した場合、即ち表面を耐酸性の合成樹脂で被覆しない鋳物、実施例2では鋳鉄製内張り用ブロックを用いた場合の実施例である。
【0024】
図4は、実施例2における内張り用ブロック2’の構造を示す斜視図で、本体2’aは2個のモルタル貫通孔5,5と、実施例1における内張り用ブロック2と同様、雌型係合部2cと雄型係合部2dを設けたものである。
【0025】
この場合の内張り用ブロック2’の内張り手順は、図5に示すように実施例1の場合と同様に隣接内張り用ブロック2’,2’の雌型係合部2cと雄型係合部2dを係合させて環状に連結してマンホール1の内側に配置し、その内側に可撓性のモルタル止枠6を設置した後、モルタル3をマンホール1と内張り用ブロック2’間及び内張り用ブロック2’とモルタル止枠6間並びにモルタル貫通孔5に流し込み、モルタル3が固化した後、上段の内張り用ブロック2’を1段目と同様に環状に連結して下段の内張り用ブロック上に載せ、先のモルタル止枠6を図5に示すように上方に移動させた後、モルタル3をマンホール1と内張り用ブロック間及びモルタル貫通孔5内並びに内張り用ブロックとモルタル止枠6間に流し込みモルタル3を固化させる。なお、4はブチルゴム製のシーリング材で、上段に内張り用ブロック2’を載せる時に下段の内張り用ブロック2’上に貼付するようにする。
【0026】
以上の手順で内張り用ブロック2’をマンホール1の内壁に内張りした場合、マンホール1間のモルタル3と、モルタル貫通孔5内のモルタル3と内張り用ブロック2’の露出面を被覆するモルタル3とが一体となって、内張り用ブロック2’をがっちりとマンホール1に固定させると同時に内張り用ブロック2’の露出面を被覆するモルタル3の付着を強化し、その剥離を防止する効果がある。即ち、モルタル貫通孔5を設けたことにより、内張り用ブロックの両面を覆うモルタルをモルタル貫通孔5内に充填されたモルタルによって繋ぎ止める効果が得られる。なお、内張り用ブロック2’の表面は、モルタル3との結合をよくするために粗面にしておくことが好ましい。。
【0027】
以上の説明から容易に理解されるように、この実施例2によるマンホールの更生は実施例1の方法より若干作業性に劣るが、実施例1の場合と同様に劣化したマンホール1の強度を補強すると共に、内面が新品同様に仕上がる特長がある。
【0028】
しかも、マンホール1に荷重することになるので、全体の見掛け比重を1以上となるように考慮することにより、地震発生時の浮上又は沈下防止機能を付与することが出来る。
【符号の説明】
【0029】
1 マンホール
2 内張り用ブロック
3 モルタル
4 シーリング材
5 モルタル貫通孔
6 モルタル止枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横断面が円弧状の板状又は短冊状の鋳物製本体の両側に、雌型係合部と雄型係合部を上下方向に設け、且つ合成樹脂で被覆した内張り用ブロックを、隣接内張り用ブロックの雌型係合部と雄型係合部を係合させて、マンホールの内面に環状に配置し、これら内張り用ブロックとマンホール内面との間にモルタルを流し込み、内張り用ブロックをマンホール内面に固定することを特徴とするマンホールの更生方法。
【請求項2】
横断面が円弧状の板状又は短冊状の鋳物製の本体両側に、雌型係合部と雄型係合部を上下方向に設け、且つ適数のモルタル貫通孔を設けた内張り用ブロックを、隣接内張り用ブロックの雌型係合部と雄型係合部を係合させて、マンホールの内面に環状に配置し、これら内張り用ブロックとマンホール内面との間と、前記モルタル貫通孔にモルタルを流し込み、更にマンホールに内張りされた内張り用ブロックの露出部をモルタルで被覆することを特徴とするマンホールの更生方法。
【請求項3】
横断面が円弧状の板状又は短冊状の鋳物製の本体両側に、雌型係合部と雄型係合部を上下方向に設け、且つ合成樹脂で被覆した内張り用ブロックを、隣接内張り用ブロックの雌型係合部と雄型係合部を係合させて、マンホールの内面に環状に配置し、これら内張り用ブロックとマンホール内面との間にモルタルを流し込み内張り用ブロックをマンホール内面に固定したことを特徴とするマンホール。
【請求項4】
横断面が円弧状の板状又は短冊状の鋳物製の本体両側に、雌型係合部と雄型係合部を上下方向に設け、且つ適数のモルタル貫通孔を設けた内張り用ブロックを、隣接内張り用ブロックの雌型係合部と雄型係合部を係合させて、マンホールの内面に環状に配置し、これら内張り用ブロックとマンホール内面との間と、前記モルタル貫通孔にモルタルを流し込み、更にマンホールに内張りされた内張り用ブロックの露出部をモルタルで被覆したことを特徴とするマンホール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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