説明

下水道マンホール用スクリーン

【課題】 従来、マンホール底部に堆積した夾雑物は、内部に設置された水中ポンプで強制的に吐き出していたが、水中ポンプの羽根車にゴミが絡んで停止してしまうことがあった。本発明は、マンホール内へのゴミ等の堆積を簡易に防止する技術を提供することを目的とする。
【解決手段】 スクリーン6は、バッフル板9内側であって流入管5の出口位置に、吊り下げ金具8を用いてバッフル板に着脱可能に設置する。材料は樹脂被覆コーティング鉄又はステンレス鋼であって、スクリーンの底部の目幅は25〜35mm角程度である。吊り下げ位置は、スクリーン6の上端部が流入管5の底部より50mm程度下になるように設置する。スクリーン及び吊り下げ金具は、釣り下げ位置と大きさを調節できるように伸縮性のものとする。流入管内部では、流入汚水量及び管勾配によって流速が異なるため、流入汚水はバッフル板9の内側にあたって跳ね返り、流速を弱めた後にインバート4上に落ちる。その流下途中にスクリーン6を取り付けることで、汚水中のゴミ等を除去、破砕する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水道マンホールの付属物に係り、特に、マンホール内に流入する夾雑物を除去するために汚水流入管の出口位置に設置する筒状スクリーンに関する。
【背景技術】
【0002】
マンホールではゴミなどの夾雑物が堆積すると、ポンプ故障など様々な弊害が発生する。したがって、定期的にバキュームカーや高圧洗浄車などを使い、作業者がマンホール内に降りて清掃作業を行ってきた。しかし、マンホール内部は狭く作業スペースが少ないため、底部に堆積した夾雑物を人間が中に入って除去、清掃するのは極めて困難な作業となる。また、作業環境が劣悪であることから改善が強く求められている。このような背景から、夾雑物除去のための装置が種々提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】 特開平7−48870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術は、ポンプのヘッダー管に取り付けた制御弁操作により、底部に堆積したゴミを水中ポンプで強制的に吐き出し可能としたものである。しかし、水中ポンプで除去するため、ポンプ本体の羽根車にゴミが絡み、詰りを起こして停止させてしまう可能性がある。本発明は、このような従来技術が有する問題を解決しようとするものであり、マンホール内へのゴミ等の堆積を簡易に防止する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明の第1手段は、下水道マンホール内に設置し汚水中の夾雑物を捕捉且つ/又は粉砕するためのスクリーンであって、汚水流入管の出口とバッフル板とに挟まれる空間に着脱自在に設置され、底面及び側面が金網で構成される筒形状であることを特徴とする。
【0006】
また、第2手段は、第1手段の下水道マンホール用スクリーンであって、筒形状が略直方体又は略半円柱であることを特徴とする。
【0007】
また、第3手段は、第1又は第2手段の下水道マンホール用スクリーンであって、底面の金網を構成するワイヤーが筒内方向に鋭角な断面を有することを特徴とする。
【0008】
また、第4手段は、第1〜第3手段いずれかの下水道マンホール用スクリーンであって、バッフル板に吊り下げ金具を介して吊り下げ可能か、又は、バッフル板とボルトで固定された架台にボルトで固定されることを特徴とする。
【0009】
また、第5手段は、第1〜第3手段いずれかの下水道マンホール用スクリーンであって、底面の目幅が25〜35mm角、側面の目幅が30〜40mm角であり、スクリーン本体に備わりバッフル板に吊り下げ可能な金具の長さ、並びに、スクリーン本体の幅が調節可能なことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のスクリーンは、マンホールのバッフル板内部に取り付けることで、簡易な脱着を可能にしたものである。また、汚水の流下水圧による破砕効果が期待できるため、大きなゴミが流入しても、破砕可能なものであれば細かく砕かれ、ポンプの詰りを無くして故障を軽減し、破砕不可能なゴミだけをスクリーン内部に捕捉することを可能にした。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】 マンホールにおける実施例1の適用状態を示す縦断面図である。
【図2】 図1のA−A線断面図である。
【図3】 図1のスクリーン部分の拡大図である。
【図4】 図2のスクリーン部分の拡大図である。
【図5】 実施例2の適用状態を示す縦断面図である。
【図6】 図5の平面図である。
【図7】 実施例3の適用状態を示す縦断面図である。
【図8】 図7の平面図である。
【図9】 実施例4の適用状態を示す縦断面図である。
【図10】 図9の平面図である。
【図11】 スクリーンの部品構成を示す正面図である。
【図12】 図11の組み立て完成正面図である。
【図13】 スクリーンの部品構成を示す側面図である。
【図14】 図13の組み立て完成側面図である。
【図15】 バッフル板内部へのスクリーン収納箇所を示す正面図である。
【図16】 図15の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜16に基づいて説明する。
【実施例1】
【0013】
図1はマンホールにおける本発明の実施例を示す縦断面図である。下水道マンホール(ポンプ場)において、汚水はφ200〜300mmの流入管5よりマンホール本体部1内に流下し、インバ−ト4の上に貯水される。図には水位レベルが3段階(LWL、HWL、HHWL)で示されているが、通常は、水位がレベル(HWL)まで上昇すると、投げ込み式水位センサ16が設定した圧力を感知してポンプ2が稼働し、貯水はヘッダー管3を通じてマンホール本体部1外に吐き出される。一部のマンホールには、流入管5の出口位置に、直方体状のステンレス鋼製バッフル板9がマンホール底部付近まで設けられており、矢印に示すように、流入水の流れを強制的に下向きに変えている。この構造に起因して、マンホール底部に、汚水とともに流入したゴミ、異物、さらには流入管の内壁に張り付いた油塊などが堆積する。
【0014】
本発明のスクリーン6は、図1及び2に示すように、既設のバッフル板9の内側にあって流入管5の出口位置付近に、吊り下げ金具8を用いてバッフル板9に着脱可能に設置する。材料は樹脂被覆コーティング鉄又はステンレス鋼であって、スクリーン底部の目幅は25〜35mm角、側面、正面及び背面の目幅は30〜40mm角である。吊り下げ位置は、スクリーン6の上端部が流入管5の底部より50mm程度下になるように設置する。バッフル板の大きさは流入管の口径に比例し取り付け位置も変わり得るため、スクリーン及び吊り下げ金具は、釣り下げ位置と大きさを調節できるように伸縮性のものとする。流入管内部では、流入汚水量及び管勾配によって流速が異なるため、流入汚水はバッフル板9の内側にあたって跳ね返り、流速を弱めた後にインバート4上に落ちる。その流下途中にスクリーン6を取り付けることで、汚水中のゴミ等を除去あるいは破砕する。
【0015】
図3及び4はスクリーン部分の拡大図である。上述したように、スクリーン6はバッフル板9の内側上端部に吊り下げ金具8で引っ掛ける構造となっており、流入管5から侵入するゴミや異物を取り除く。なお、ゴムパッキン10をマンホール本体部1に密接させることにより、漏水を防ぎながらスクリーン6内への流入を容易にさせている。また、スクリーン6底部に溜まったゴミ7は、吊り下げ金具8にチェーン又は棒状の道具をあらかじめ取り付けておくことで、容易に引き上げ除去できる。また、設置位置や大きさを調節できるように図11〜14の部品構成と完成図が示すように、ボルトの取付位置を調節することにより、スクリーン6は縦横方向に、吊り下げ金具8は縦方向に伸縮可能とした。また、スクリーン底部を構成する網線の断面形状を上方向に鋭角にすることで、流下水圧による破砕効果がより期待でき、大きなゴミも細かく砕かれ、ポンプの詰りを無くして故障を軽減できる。
【実施例2】
【0016】
既設のバッフル板がなく、新規設置の場合を図5及び6に示す。バッフル板9は、流入管5の口径、位置及び流入汚水の流速に合うように作製する。また、直方体状のスクリーン6を、取り外し可能な架台11にボルト14を用いて数か所固定し、一体となったスクリーン6と架台11を、バッフル板9にボルト13を用いて固定する。出来上がった製品をマンホール本体部1に取り付けて完了である。流入管5より流入した汚水はスクリーン6を通過し、ゴミの一部は捕捉され、他は底部の鋭角なスクリーンネットで砕かれてスクリーン外へ落とされる。
【0017】
流入管5からの汚水流下水圧により、スクリーン6が左右にずれて汚水を受ける位置が変わらないように、留め具15を備えている。また、架台11は、バッフル板側のボルト13を外すことでバッフル板9から分離できるため、架台の取っ手12を横方向にスライドさせるとスクリーン6を取り出すことができ、スクリーン底部に溜まったゴミ7を除去できる。このスクリーン構造は、既存のバッフル板内側に引っ掛けて吊り下げられない場合や、引き上げに要する上部空間に余裕がない場合に有効である。また、底部スクリーンの断面形状を上方向に対し鋭角な形状にすることで、流入するゴミを細かく砕くことができ、ポンプの詰りを無くすことが可能である。
【実施例3】
【0018】
図7及び8は、半円柱形状のスクリーンの実施例を示す。機能上は直方体状スクリーンと同じであるが、既設のバッフル板9には半円柱形状のものも数多く設置されているため、これについても対応可能になっている。この形状に合わせて半円柱形状のスクリーン6をバッフル板9内部に吊り下げ金具8を用いて吊下げる。スクリーンとバッフル板の間隔は、開き過ぎるとバッフル板の内側に当って跳ね返った汚水がスクリーン内に流入しにくくなる。また、狭過ぎるとスクリーン内部がゴミでいっぱいになり詰った場合に汚水が下部に落ちづらくなってしまい、バッフル板内部が詰りを引き起こす恐れがある、したがって、両者の間隔は15〜30mm程度が望ましい。
【実施例4】
【0019】
図9及び10は、既設のバッフル板がない場合の半円柱形状スクリーンの実施例である。これも、実施例2で説明したとおりの機能を有し、スクリーン6は横方向に脱着を可能としたものである。なお、実施例3のスクリーンはバッフル板に吊下げる方式であるため、バッフル板上端部から汚水流入管底までの間隔があまり離れていないような箇所で主に使用可能であり、本実施例のスクリーンは、逆にバッフル板上端部から上方向にあまり空間がなく、取り出しづらいような箇所に使用する。新設のバッフル板9の外側ボルト13を外し、架台の取っ手12を矢印方向にスライドさせながら引っ張ることにより、スクリーン6を脱着可能にした。
【実施例5】
【0020】
図11は本発明の部品構成を示す正面図である。スクリーンの作成工程は次に示すとおりである。設置するバッフル板内側の横幅を測定し、その長さより30〜60mm小さくなるように、スクリーン部品17、18を重ね合わせながら位置を決め、ネジで固定する。次に、スクリーン部品19、20を重ねながら位置を決め、ネジで固定する。さらに、設置するバッフル板内側のバッフル板上端部から汚水流入管底までの長さを測定し、スクリーン部固定・吊り下げ具21に、先に予めネジで固定して箱状となったスクリーンを当該スクリーン部固定・吊り下げ具の先端部から箱状のスクリーン上端までの長さが、先に測定した長さより50mm程度長くなるように固定する。ゴムパッキン10を箱状スクリーンの上端部に取付けると、図12の組立完成後の吊り下げ式スクリーン22となる。
【0021】
図13は上述した部品の側面図である。また、図14は組み立て完成後の側面図である。また、図15はスクリーンとバッフル板の一体型の内部収納箇所を示す正面図である。図16は図15の側面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 マンホール本体部
2 ポンプ
3 ヘッダー管
4 インバート
5 流入管
6 スクリーン
7 ゴミ
8 吊り下げ金具
9 バッフル板
10 ゴムパッキン
11 架台
12 取っ手
13、14 ボルト
15 留め具
16 投げ込み式水位センサ
17〜20 スクリーン部品
21 スクリーン部固定・吊り下げ具
22 吊り下げ式スクリーン
23 バッフル一体式スクリーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下水道マンホール内に設置し汚水中の夾雑物を捕捉且つ/又は粉砕するためのスクリーンであって、汚水流入管の出口とバッフル板とに挟まれる空間に着脱自在に設置され、底面及び側面が金網で構成される筒形状であることを特徴とする下水道マンホール用スクリーン。
【請求項2】
筒形状が略直方体又は略半円柱であることを特徴とする請求項1に記載の下水道マンホール用スクリーン。
【請求項3】
底面の金網を構成するワイヤーが筒内方向に鋭角な断面を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の下水道マンホール用スクリーン。
【請求項4】
バッフル板に吊り下げ金具を介して吊り下げ可能か、又は、バッフル板とボルトで固定された架台にボルトで固定されることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の下水道マンホール用スクリーン。
【請求項5】
底面の目幅が25〜35mm角、側面の目幅が30〜40mm角であり、スクリーン本体に備わりバッフル板に吊り下げ可能な金具の長さ、並びに、スクリーン本体の幅が調節可能なことを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の下水道マンホール用スクリーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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