説明

下顎位決定方法、下顎位決定装置、プログラムおよび咬合器

【課題】被験者の正常な下顎位を決定する。
【解決手段】被験者の正常な下顎位を決定する下顎位決定方法であって、被験者の頭部の運動を測定した測定データを取得し、頭部の運動を剛体の回転運動に近似した場合の運動中心を算出する中心算出ステップと、被験者の複数の下顎位に対して、下顎の咀嚼運動の複数の軌跡を測定する下顎軌跡測定ステップと、下顎軌跡測定ステップで測定した複数の軌跡のうち、下顎の咀嚼運動を剛体の回転運動に近似した場合の運動中心が、中心算出ステップにより算出された頭部の運動中心に一致する軌跡に対応する下顎位を、被験者の正常な下顎位に決定して出力する位置決定ステップとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下顎位決定方法、下顎位決定装置およびプログラムに関する。特に本発明は、被験者の正常な下顎位を決定する下顎位決定方法、下顎位決定装置およびプログラムに関する。本出願は、下記の日本出願に関連する。文献の参照による組み込みが認められる指定国については、下記の出願に記載された内容を参照により本出願に組み込み、本出願の一部とする。
特願2007−186091 出願日 2007年7月17日
【背景技術】
【0002】
特定の下顎位における顎関節の接触圧分布を求める解析装置がある(例えば、特許文献1を参照)。この解析装置においては、顎関節のレントゲン写真を読み取り、読み取った顎関節における下顎骨と頭蓋骨とを剛体モデルとして、矛盾する力が働かなくなるように計算上で仮想の拘束力を加えることにより、顎関節の接触圧分布を求める。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記解析装置によれば、特定の下顎位における顎関節の接触圧分布が求まるが、当該下顎位が被験者における正常な下顎位であるかどうかは分からない。また、顎関節のレントゲン写真の取り込み、または、計算が収束するまで仮想の拘束力を設定して計算するというループを繰り返すという手間がかかる。
【0005】
そこで本発明は、上記の課題を解決することのできる下顎位決定方法、下顎位決定装置、プログラムおよび咬合器を提供することを目的とする。この目的は特許請求の範囲における独立項に記載の特徴の組み合わせにより達成される。また従属項は本発明の更なる有利な具体例を規定する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の第1の形態においては、被験者の正常な下顎位を決定する下顎位決定方法であって、被験者の頭部の運動を測定した測定データを取得し、頭部の運動を剛体の回転運動に近似した場合の運動中心を算出する中心算出ステップと、被験者の複数の下顎位に対して、下顎の咀嚼運動の複数の軌跡を測定する下顎軌跡測定ステップと、下顎軌跡測定ステップで測定した複数の軌跡のうち、下顎の咀嚼運動を剛体の回転運動に近似した場合の運動中心が、中心算出ステップにより算出された頭部の運動中心に一致する軌跡に対応する下顎位を、被験者の正常な下顎位に決定して出力する位置決定ステップとを備える。
【0007】
また、本発明の第2の形態においては、被験者の正常な下顎位を決定する下顎位決定装置であって、被験者の頭部の運動を測定した測定データを取得し、頭部の運動を剛体の回転運動に近似した場合の運動中心を算出する中心算出部と、被験者の複数の下顎位に対して、下顎の咀嚼運動の複数の軌跡を測定する下顎軌跡測定部と、下顎軌跡測定部で測定した複数の軌跡のうち、下顎の咀嚼運動を剛体の回転運動に近似した場合の運動中心が、中心算出部により算出された頭部の運動中心に一致する軌跡に対応する下顎位を、被験者の正常な下顎位に決定して出力する位置決定部とを備える。
【0008】
また、本発明の第3の形態においては、被験者の正常な下顎位を決定する下顎位決定装置を制御するプログラムであって、下顎位決定装置に、被験者の頭部の運動を測定した測定データを取得し、頭部の運動を剛体の回転運動に近似した場合の運動中心を算出する中心算出手順と、被験者の複数の下顎位に対して、下顎の咀嚼運動の複数の軌跡を測定する下顎軌跡測定手順と、下顎軌跡測定手順で測定した複数の軌跡のうち、下顎の咀嚼運動を剛体の回転運動に近似した場合の運動中心が、中心算出手順により算出された頭部の運動中心に一致する軌跡に対応する下顎位を、被験者の正常な下顎位に決定して出力する位置決定手順とを実行させる。
【0009】
また、本発明の第4の形態においては、咬合器であって、上顎の歯型模型を取り付ける上弓部と、一対の球状の軸受を介して前記上弓部に対して回動可能に連結され、下顎の歯型模型を取り付ける下弓部とを備え、前記一対の軸受の間の距離が可変である咬合器が提供される。
【0010】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】下顎位決定システム10の概略を示す概略図である。
【図2】下顎位を説明するための頭蓋骨36および下顎40の正面図である。
【図3】頭蓋骨36および下顎40の側面図である。
【図4】環椎38の斜視図を示す。
【図5】環椎38の側面図を示す。
【図6】頭蓋骨36が静止状態で支持されているときの力学的な釣り合いを示す側面図である。
【図7】下顎位決定装置100の機能を示す機能ブロック図である。
【図8】下顎位格納部104に格納される情報の一例を示す。
【図9】下顎位決定装置100の動作を示すフローチャートの一例である。
【図10】他の実施形態の動作を示すフローチャートである。
【図11】センサ170を含むセンサユニット162の概略を示す斜視図である。
【図12】センサ170が下顎40に取り付けられた状態を示す斜視図である。
【図13】図10のステップS270およびS280で用いられる咬合器200の一例の側面図である。
【図14】上弓部220の平面図である。
【図15】下弓部300の平面図である。
【図16】台座400の側面図であり、上歯型模型210を取り付けるときの状態を示す。
【図17】台座400の側面図であり、下歯型模型212を取り付けるときの状態を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0014】
図1は、下顎位決定システム10の概略を示す概略図である。下顎位決定システム10は、下顎位決定装置100と、頭部運動測定部130、電極パッド150およびセンサ170を備え、被験者20の正常な下顎位を決定する。頭部運動測定部130は、被験者20の頭部30に固定した磁気センサを有し、この磁気センサを用いて頭部30の運動を測定し、測定した測定データを下顎位決定装置100へ受け渡す。また、電極パッド150は、被験者20の左右下顎切痕および頚部背面正中部に取り付けられる。咬筋及び側頭筋に付着した筋電計152は、後述する咀嚼筋リラックス部140に電気的に接続される。さらに、センサ170は、被験者20の下顎40に取り付けられる磁気センサである。ここで、椅子24は、基準位置22が設けられるとともに、被験者20の肩および頭部30をそれぞれ固定する。
【0015】
図2は、下顎位を説明するための頭蓋骨36および下顎40の正面図であり、図3は、頭蓋骨36および下顎40の側面図である。さらに、図4および図5は、環椎38の斜視図および側面図を示す。また、図6は、頭蓋骨36が静止状態で支持されているときの力学的な釣り合いを示す側面図である。
【0016】
図2および図3において、咬合平面44は、咀嚼運動における頭蓋骨36に対する下顎40の終端である。下顎位決定システム10は、正常な咬合平面44、および、当該正常な咬合平面44における下顎位をより正確に決定することを目的とする。この場合に、本実施形態においては、図2から図6に示すように、頭部30は脊髄34を運動中心32として運動すること、および、頭蓋骨36、環椎38および軸椎39にとっての外力としての咀嚼運動においても脊髄34が運動中心32となることが好ましいことが見出されたことに基づいて、正常な下顎位を決定する。
【0017】
図7は、下顎位決定装置100の機能を示す機能ブロック図である。図7に示す下顎位決定装置100は、中心算出部110と、咬合平面設定部120と、咀嚼筋リラックス部140と、下顎軌跡測定部160と、位置決定部190と、下顎位格納部104とを備える。
【0018】
中心算出部110は、被験者20の肩を椅子24に固定した状態で頭部運動測定部130により測定された、頭部30の運動の測定データを取得する。頭部30の運動の一例は、頭部30の前屈、後屈、左右の側屈、および、回旋である。この場合に、被験者20の姿勢によって頭部30の運動の様子が異なるが、頭部30ができるだけ前後および左右に楽に動く姿勢で頭部30の運動を測定することが好ましい。この測定データは、基準位置22に対する複数の点の軌跡を示す三次元のデータであって、直交座標系で表されてもよいし、極座標系で表されてもよい。
【0019】
さらに、中心算出部110は、測定データから、頭部30の運動中心32を基準位置22に対する三次元データとして算出する。この場合に、中心算出部110は、頭部30の運動を剛体の回転運動に近似した場合の運動中心32を算出する。一例として、中心算出部110は、頭部30に取り付けた頭部運動測定部130の磁気センサの軌跡を円弧に近似して、当該円弧の中心を運動中心32として算出する。
【0020】
ここで、図2から図6に示すように、頭部30は、脊髄34を運動中心32として運動する。より詳しくは、人体は、生命の維持および頭部30の安定的な保持を目的として、脊髄34を守るように環椎38、軸椎39を含む骨と筋肉が配されている。まず、図6に示すように、静止状態において頭部30には下顎40の重心における荷重50、舌重心における荷重51、頭蓋骨36の重心における荷重52および頭蓋骨36内の脳の重心における荷重54がある。これらの合力を打ち消す抗力53が両側後頭顆と上環椎関節面との接点を作用点とし、間接的に脊髄34を作用点として働くことにより、頭部30が支持される。さらに、頭部30が運動する時にも脊髄34を守るべく、脊髄34が運動中心32となるように、頭部30が運動する。例えば、図4から図6に示すように、環椎38の上関節面は卵円形であって、その前方は仮想中心33の球面55の一部に一致し、当該球面55の最下点が運動中心32に一致する。なお、曲面56は環椎38の後方の曲率に基づく仮想球面である。また、頭蓋骨36が回旋する場合に、頭蓋骨36が環椎38に対して回旋するとともに、歯突起の中心を通る垂直軸の回りで軸椎39に対する環椎38の回旋が起こる。結果として、頭蓋骨36は、脊髄34が貫通する領域に位置する運動中心32に対して全体的に回旋する。また、軸椎39の歯突起の関節面と環椎38の前弓関節面からなる正中環軸関節の間隙の湾曲の中心は脊髄34を通り、また環椎38の下関節面と軸椎の上関節面との接線は脊髄34を通る。よって、頭蓋骨36は、当該湾曲の中心を運動中心32として前屈および後屈する。さらに、側屈において、軸椎39は第3頸椎に対して傾き、頭蓋骨36は環椎38に対して滑るが、環軸関節での動きは起きず、結果として、頭蓋骨36は、脊髄34を通る領域に位置する運動中心32を軸として側屈する。上記中心算出部110によれば、被験者20において環椎38、軸椎39を通る脊髄34の位置を直接的に求めなくても、上記測定データに基づいて運動中心32を算出することができる。
【0021】
咬合平面設定部120は、頭部30の運動中心32を通る水平面を、正常な咬合平面44に設定する。さらに、咬合平面設定部120は設定した咬合平面44を、被験者20を識別する被験者IDに対応付けて下顎位格納部104に格納する。被験者IDは、下顎位決定装置100に接続されたキーボード等の入力デバイスから入力される。ここで、正常な咬合平面44は水平面であるので、直交座標系では基準位置22に対する高さ方向Zの一次元の値であってもよい。図2および図3に、被験者20の現在の基準平面45、および、咬合平面設定部120により設定された正常な咬合平面44の一例を示す。
【0022】
咀嚼筋リラックス部140は、被験者20の咀嚼筋をリラックスさせる。咀嚼筋リラックス部140の例は、電極パッド150に矩形波の電圧パルスを発生する機器である。咀嚼筋リラックス部140の一例は、マイオトロニクス社のマイオモニターであり、被験者20の左右下顎切痕に貼られた電極パッド150を陰極、被験者20の頚部背面正中部に貼られた電極パッド150を陽極として、持続時間1.5sec、電圧11Vから22Vの矩形パルスを1.5秒に一回の頻度で発信する。これにより、陰極の直下を通る顔面神経と深部の三叉神経とを同時に刺激して、両神経の支配下の筋に不随意の収縮を起こさせることによって、これらの筋をリラックスさせることができる。また、咀嚼筋リラックス部140は、筋電計を介して、咀嚼筋がリラックスしているか否かを計測してもよい。なお、咀嚼筋リラックス部140は、下顎位決定装置100とは別個に設けられていてもよいし、一体であってもよい。
【0023】
下顎軌跡測定部160は、咀嚼筋リラックス部140により被験者20の咀嚼筋がリラックスした旨の通知を受け取ると、その状態における被験者20の下顎40の安静位から咬合平面までの咀嚼運動の軌跡を測定する。ここで、下顎軌跡測定部160は、下顎40に取り付けたセンサ170の軌跡を、被験者20の複数の下顎位ごとに測定する。下顎軌跡測定部160は、測定したデータを、下顎位に対応付けて下顎位格納部104に格納する。ここで、センサ170は、下顎40における既知の位置に取り付けられる。より具体的には、センサ170は、咬合平面44にあるときの下顎40について、頭部30の運動中心32とセンサ170の位置とを結ぶ直線と水平線とがなす取付角度θの位置に取り付けられる。
【0024】
位置決定部190は、下顎位格納部104のデータを参照して、下顎位毎に下顎の速度を算出する速度算出部192、および、当該速度算出部192により算出された速度のうち、所定の条件を満たす速度を有する下顎位を抽出して、当該下顎位を正常な下顎位に決定する速度決定部194を有する。これにより、位置決定部190は、下顎位格納部104のデータを参照して、複数の下顎40の軌跡のうち、下顎40の咀嚼運動を剛体の回転運動に近似した場合の運動中心が、頭部30の運動中心32に一致する軌跡に対応する下顎位を、被験者20の正常な下顎位に決定して出力する。
【0025】
ここで、位置決定部190が、下顎40の咀嚼運動を剛体の回転運動に近似した場合の運動中心が、頭部30の運動中心32に一致する軌跡に対応する下顎位を、被験者20の正常な下顎位に決定するのは、下記理由による。上記中心算出部110について説明した通り、頭部30の運動中心32は、脊髄34にあるべきである。この観点から考えると、咀嚼運動による下顎40の運動についても、人体は、生命の維持および頭部30の安定的な保持を目的として、環椎38および軸椎39を通る脊髄34を守るべく、脊髄34が運動中心となるように、下顎40を運動させることが好ましいと考えられるからである。なお、位置決定部190の動作の詳細については、後述する。
【0026】
また、記録媒体102は、下顎位決定装置100の各機能を実現するプログラムを格納している。下顎位決定装置100は、記録媒体102に格納されたプログラムがインストールされることにより、各動作を実現してもよい。また、下顎位決定装置100は、当該プログラムをインターネット等のネットワークを介して取得してもよい。
【0027】
図8は、下顎位格納部104に格納される情報の一例を示す。図8に示す下顎位格納部104は、被験者IDに対応付けて、中心算出部110によって算出された頭部中心位置の座標を格納する。
【0028】
さらに、下顎位格納部104は、この被験者識別情報に対応付けて、複数の下顎位を格納する。下顎位格納部104は、下顎位として、咀嚼筋リラックス部140によってリラックスした状態の下顎位を原点として、原点から左右Xおよび前後Yにずれたずれ量(mm)を格納する。さらに、下顎位格納部104は、下顎位のそれぞれに対応付けて、下顎軌跡測定部160により測定されたセンサ170の軌跡、および、当該軌跡に基づいて位置決定部190により算出された速度を格納する。この場合に、下顎位格納部104は、センサ170の軌跡として、基準位置22に対する一定時間毎の位置を、当該時間に対応付けて格納する。図8に示す例において、下顎位格納部104は、頭部30を正面および側面からみたときの軌跡および速度方向α、βを格納する。なお、図8においては、説明の都合上、軌跡を、上記一定時間毎のセンサ170の位置を結んだ線で示した。また、下顎位格納部104は、頭部運動測定部130が測定した測定データを格納していてもよい。
【0029】
図9は、下顎位決定装置100の動作を示すフローチャートの一例である。図9に示すフローチャートは、キーボート等を介した入力を下顎位決定装置100が受け付けることにより開始する。
【0030】
まず、頭部運動測定部130は、被験者20の肩を椅子24に固定した状態で、頭部30の運動を測定し(S110)、測定した測定データを下顎位格納部104に格納する。次に、中心算出部110は、測定データを頭部運動測定部130から取得して、頭部30の運動中心32を算出する(S120)。さらに、中心算出部110は、運動中心32を通る水平面を正常な咬合平面44に設定する(S130)。
【0031】
咀嚼筋リラックス部140は、被験者20の咀嚼筋をリラックスさせる(S140)。さらに、咀嚼筋リラックス部140は、被験者20の咀嚼筋がリラックスした旨を下顎軌跡測定部160に通知する(同ステップ)。
【0032】
下顎軌跡測定部160は、咀嚼筋リラックス部140から上記通知を受け取った場合に、被験者20における下顎40の咀嚼運動の軌跡を測定する(S150)。下顎軌跡測定部160は、測定したデータを下顎位格納部104に格納する(同ステップ)。この場合に、被験者20の右目と左目とを結んだ直線47が水平線に一致する姿勢で、被験者20の頭部30が椅子24に対して固定されることが好ましい。これにより、被験者20における下顎40の咀嚼運動の軌跡をより正確に測定することができる。
【0033】
速度算出部192は、接線法を用いて下顎40の運動中心を求めるべく、下顎位格納部104のデータを参照して、複数の軌跡のそれぞれから、下顎40が前記咬合平面に到達するときのセンサ170の速度を算出し、算出した速度を下顎位格納部104に格納する(S160)。この場合に、速度算出部192は、下顎軌跡測定部160が特定の下顎位について軌跡を測定する毎にセンサ170の速度を算出してもよいし、下顎軌跡測定部160が複数の下顎位について軌跡を測定した後に、それぞれの下顎位における速度を算出してもよい。
【0034】
一例として、速度算出部192は、特定の下顎位について、下顎位格納部104により格納されている一定時間ごとのセンサ170のXZ方向の位置について、時間的に隣接する位置を当該一定時間で除することにより、下顎40を正面から見たときの速度の大きさおよび当該速度が鉛直方向となす角度である速度方向αを求める。ここで、速度算出部192は、下顎40が咬合平面44に到達したときのセンサ170の位置およびそれより時間的に一つ手前のセンサ170の位置との差に基づいて速度方向αを算出してもよいし、下顎40が咬合平面44に到達したときのセンサ170の位置、および、それより時間的に手前の所定の個数の位置について時間的に隣接する位置の差を平均して速度方向αを算出してもよい。同様に、速度算出部192は、当該下顎位について、下顎位格納部104により格納されている一定時間ごとのセンサ170のYZ方向の位置について、時間的に隣接する位置を当該一定時間で除することにより、下顎40を側面から見たときの速度および当該速度が鉛直方向となす角度である速度方向βを求める。なお、下顎40が咬合平面44に到達したことは、運動中心32を中心として水平面に対するセンサ170の角度が取付角度θに等しくなったことにより検出することができる。
【0035】
速度決定部194は、速度算出部192が算出した速度に基づいて、被験者20に対する正常な下顎位を決定して、ディプレイ等に出力する(S170)。この場合に、速度決定部194は、速度方向αの数値がより小さく、かつ、速度方向βと取付角度θとの差がより小さい下顎位を抽出する。これにより抽出された下顎位において、速度方向αが小さいので、咬合平面44で下顎40にはたく力が左右対称であり、かつ、速度方向βが取付角度θとほぼ等しいので、咬合平面44で下顎40に垂直上向きの力が働く。これにより、当該下顎位は、下顎40の咀嚼運動を剛体の回転運動に近似した場合の運動中心が、頭部30の運動中心32に一致する軌跡を有する下顎位に対応する。ここで、速度決定部194は、速度方向αの数値と下顎位の左右Xのずれ量との関係から、速度方向αがゼロとなる左右Xのずれ量を外挿または内挿により求めてもよい。同様に、速度決定部194は、速度方向βの数値と下顎位の前後Yのずれ量との関係から、速度方向βと取付角度θとの差がゼロとなる前後Yのずれ量を外挿または内挿により求めてもよい。
【0036】
上記実施形態において、下顎軌跡測定部160が一つのセンサ170の軌跡を測定する例を説明したが、センサ170の個数に制限はない。他の例として、下顎軌跡測定部160は、被験者20の下顎40について互いに少なくとも前後左右のいずれかが異なる3つ以上の位置、例えば正三角形の頂点の位置に設けた複数のセンサの移動を検知してもよい。また、ステップS160およびS170において、接線法により下顎40の運動中心を求めたが、これに変えて、ルーロー法を用いてもよい。ルーロー法においては、ステップS150で測定した二点の線分の二等分線の交点で、運動中心を近似する。
【0037】
以上、本実施形態によれば、被験者20の正常な下顎位をより正確に決定することができる。特に、被験者20の正常な下顎位として、下顎40の咀嚼運動を剛体の回転運動に近似した場合の運動中心が、頭部30の運動中心32に一致する軌跡を有する下顎位を決定するので、咀嚼運動時に上記運動中心32すなわち脊髄34を守るべく筋力および骨格位置を調整しようとして被験者20の姿勢がくずれることを防ぐ下顎位を求めることができる。
【0038】
図10は、他の実施形態の動作を示すフローチャートである。図10に示す実施形態は、図1から図9の実施形態に加えて、図10に示す動作を実行する。
【0039】
図10に示す動作において、まず、被験者20の上顎および下顎にセンサ170が取り付けられて、下顎軌跡測定部160によりセンサ170の位置が測定される(S200)。ここで、センサ170は上顎および下顎のそれぞれに複数個取り付けられることが好ましい。例えば、互いが二等辺三角形となる3個のセンサ170が上顎および下顎のそれぞれに配される。この場合に、上顎および下顎は、図9のステップS170において決定した顎位において静止した状態で、各センサ170の相対位置が測定される。
【0040】
次に、下顎位決定システム10の頭部運動測定部130は、図9のステップS170で決定した下顎位から、被験者20が下顎40を側方運動した軌跡を測定し(S210)、測定した測定データを下顎位格納部104に格納する。さらに、位置決定部190は、ステップS210で測定されて下顎位格納部104に格納されたデータを読み出して、頭部30の側方運動の軌跡から左右の顆頭の位置、および、それらの間の距離である顆頭間距離を算出する(S220)。さらに、位置決定部190は、左右の顆頭の位置および上記側方運動により、作業側側方顆路角および平衡側側方顆路角を算出する(S230)。この場合に例えば、位置決定部190は、ステップS170で決定された下顎位の位置から下顎40を右方へ側方運動したときに計測されたセンサ170の軌跡を用いて、上記接線法またはルーロー法により瞬間回転中心の位置を上記センサ170に対する三次元的位置として求め、近似的に当該位置を右の顆頭の位置とする(S220)。同様に位置決定部190は、ステップS170で算出された下顎位の位置から下顎40を左方へ側方運動したときの瞬間回転中心を、左の顆頭の位置とする(同ステップ)。また、これら左右の顆頭の位置から、それらの間の距離を算出する(同ステップ)。さらに、位置決定部190は、ステップS220で求めた左右の顆頭の位置と上記センサ170の側方運動の軌跡とから、側方運動による左右の顆頭の移動量を算出することにより、作業側側方顆路角および平行側側方顆路角を算出する(S230)。
【0041】
また、頭部30は、上記ステップS170において決定した被験者20の下顎位から、被験者20が下顎40を前方運動した軌跡を測定し(S240)、測定した測定データを下顎位格納部104に格納する。さらに、位置決定部190は、ステップS240で測定されて下顎位格納部104に格納されたデータを読み出して、下顎40の前方運動の軌跡から矢状顆路角を算出する(S250)。この場合に例えば、位置決定部190は、ステップS220で求めた左右の顆頭の位置と上記センサ170の前方運動の軌跡とから、前方運動による左右の顆頭の移動量を算出することにより、矢状顆路角を算出する(S250)。
【0042】
位置決定部190は、上記ステップS200により測定された各センサ170の位置、ステップS220により算出された左右の顆頭の位置およびそれら間の距離、ステップS230により算出された作業側側方顆路角および平衡側側方顆路角、並びに、上記ステップS250により算出された矢状顆路角を出力する。この場合に、位置決定部190は、出力の一例として、下顎位決定装置100のディスプレイ上にそれぞれの数値を表示してもよいし、当該数値をプリンタで印刷してもよい。
【0043】
また、歯科医師または歯科衛生士等により被験者20の歯型が採取されて、歯型模型が作成される(S260)。この場合に、ステップS200において被験者20の上顎および下顎に取り付けられた各センサの位置が、当該歯型模型上にマーキングされることが好ましい。
【0044】
当該歯型模型が咬合器の上弓部および下弓部に取り付けられる(S270)。さらに、咬合器が調整される(S280)。この場合にまず、位置決定部190により出力された各センサ170の相対位置関係と、咬合器に取り付けられた歯型模型上のマーキングの相対位置関係とが一致するように咬合器が調整される。さらに、位置決定部190により出力された矢状顆路角、作業側側方顆路角および平衡側側方顆路角、並びに、左右の顆頭間の距離を、咬合器に再現すべく咬合器が調整される。
【0045】
以上、図10に示す方法によれば、矢状顆路角、作業側側方顆路角および平衡側側方顆路角、並びに、左右の顆頭間の距離を数値的に正確に算出することができる。さらに、人為的誤差が生じやすいフェイスボウ等の複雑な器具を用いることなく、これら矢状顆路角、作業側側方顆路角および平衡側側方顆路角、並びに、左右の顆頭間の距離を咬合器上に再現することができる。
【0046】
図11は、センサ170を含むセンサユニット162の概略を示す斜視図である。同図に示すセンサユニット162は、U字に湾曲した板状のセンサ本体172と、このセンサ本体172上において二等辺三角形をなす位置に配された3つのセンサ170と、センサ本体172上において3つのセンサ170間に配された2つの係合部176を有する。さらに、センサユニット162は、上記センサ本体172に対して着脱できる取り付け冶具180を有する。取り付け冶具180は、センサ本体174の湾曲に対応した湾曲のU字板状の冶具本体182と、この冶具本体182上において上記2つの係合部176に対応する位置に配された2つの係合部184と、冶具本体182のU字の凸側から外側に延在する延在部186を有する。
【0047】
上記構成において、互いに対応する係合部176および係合部184の一方が凸部で他方が凹部であり、互いに嵌め合う。これにより、センサ170が配されたセンサ本体174が取り付け冶具180により支持される。
【0048】
図12は、図11に示すセンサユニット162のセンサ170が下顎40に取り付けられた状態を示す斜視図である。なお、同図においてセンサ170が下顎40に取り付けられた例を示したが、同じ構成のセンサ170が上顎にも取り付けられる。
【0049】
図13は、図10のステップS270およびS280で用いられる咬合器200の一例の側面図である。また、図14は上弓部220の平面図であり、図15は下弓部300の平面図である。この咬合器200は、被験者20の左右の顆頭間の距離を正確に再現する。
【0050】
咬合器200は、上弓部220および下弓部300を有し、上弓部220には咬合平面設定部120が取り付けられるとともに、下弓部300には下歯型模型212が取り付けられる。さらに上弓部220は、下弓部300に対して図13の矢印Aの方向に回動する。
【0051】
図14に示すように、上弓部220は、前後方向(図14における上下方向)に延伸する上弓本体222と、上弓本体222を水平方向に貫通する腕236と、この腕236の両端に配される結合部240、250と、上弓本体222の前端に配されたインサイザルピン260と、上弓本体222の下方に配された脚234とを有する。さらに上弓本体222には、前後方向に延在する溝228が設けられ、当該溝228に連結ピン226が図14の矢印B方向に摺動可能に挿入される。連結ピン226には、上歯型模型210を支持する模型取付部224が取り付けられる。さらに、連結ピン226は、一対の連結部材230、232の一端に配された貫通穴に回動可能に挿入される。これら一対の連結部材230、232の他端にも貫通穴が設けられ、当該貫通穴にはそれぞれ、結合部240、250から上方に突出した連結ピン244、254が回動可能に挿入される。また、結合部240の側面には凹部242が設けられ、腕236の一端が摺動可能に収容される。また、結合部240には下弓部300の球体部346と回動可能に当接する球受け部246を有する。同様に、結合部250も、凹部252および球受け部256を有する。なお、図示は省略したが、球受け部246および球受け部256の回転量を制限する公知の手段を設けることにより、咬合器200における矢状顆路角、作業側側方顆路角および平衡側側方顆路角が調整される。
【0052】
図15に示すように、下弓部300は、前後方向(図15における上下方向)に延伸する下弓本体322と、下弓本体322を水平方向に貫通する腕336と、この腕336の両端に配される直立部340、350と、下弓本体322の下方に配された脚334とを有する。さらに下弓本体322には、前後方向に延在する溝328が設けられ、当該溝328に連結ピン326が図15の矢印G方向に摺動可能に挿入される。連結ピン326には、下歯型模型212を支持する模型取付部324が取り付けられる。さらに、連結ピン326は、一対の連結部材330、332の一端に配された貫通穴に回動可能に挿入される。これら一対の連結部材330、332の他端にも貫通穴が設けられ、当該貫通穴にはそれぞれ、直立部340、350から下方に突出した連結ピン344、354が回動可能に挿入される。
【0053】
また、直立部340は上下方向に直立しており、その上面に球体部346が設けられる。さらに、直立部340の側面下方には凹部342が設けられ、腕336の一端が摺動可能に収容される。同様に、直立部350も、凹部352および球体部346を有する。
【0054】
上記構成において、上弓部220が下弓部300の上方に配され、球受け部246が球体部346に支持されるとともに、球受け部256が球体部356に支持される。これにより、図13に示すように、上弓部220が下弓部300の球体部346、356の中心位置に対して回動可能に支持される。
【0055】
ここで、球体部346および球体部356の中心位置が左右の顆頭位置408に対応する。上記構成によれば、結合部240および結合部250は、腕236に対して矢印E、Fの方向に摺動することができ、直立部340および直立部350は、腕336に対して矢印J、Kの方向に摺動することができる。これにより、被験者20の左右の顆頭間の距離を正確に再現することができる。さらに、結合部240、250、模型取付部224は連結部材230、232により互いに連結されているので、いずれか一つを移動させることにより他の二つも移動させることができ、また、結合部240と結合部250とを同じ距離だけ移動させることができる。なお、これに代えて、連結部材230、232を設けずに結合部240、250、模型取付部224が互いに独立して移動することができるようになっていてもよい。同様に、直立部340、350、模型取付部324は連結部材330、332により互いに連結されているので、いずれか一つを移動させることにより他の二つも移動させることができ、また、直立部340と直立部350とを同じ距離だけ移動させることができる。なお、これに代えて、連結部材330、332を設けずに直立部340、350、模型取付部324が互いに独立して移動することができるようになっていてもよい。
【0056】
図16は、台座400の側面図であり、上歯型模型210を取り付けるときの状態を示す。台座400は、上弓部220または下弓部300が載置される基準底面402およびそれらの前面が当接する基準前面404を有する。さらに、台座400は、基準前面404の近傍に基準底面402に対して昇降する昇降部406を有する。昇降部406は、下顎軌跡測定部160の延在部186を水平方向(図16の矢印Mの方向)に摺動自在かつ着脱自在に保持する。
【0057】
上歯型模型210が上弓部220に取り付けられる場合に、まず図16に示すように、上弓部220が図13に示す使用状態とは天地を逆にした状態で基準底面402上に配置される。この場合に、上弓部220の前面が基準前面404に当接される。これにより、台座400に対する上弓部220の位置、特に、顆頭位置408の位置が決まる。
【0058】
次に、図10のステップS260にて作成された上歯型模型210が下顎軌跡測定部160に取り付けられた状態で、センサユニット162の延在部186が昇降部406に挿入される。さらに、昇降部406の上下高さおよび延在部186の前後位置が調整されることにより、図10のステップS220にて算出された顆頭の位置とセンサ170との位置関係が、台座400に載置された上弓部220の顆頭位置408とセンサ170との位置関係に再現される。当該位置関係が再現された状態において石膏剤等により上歯型模型210が模型取付部224に取り付けられる。なお、この場合に、顆頭位置408にもマグネット等の検知子を設けるとともに台座400にそれらの位置を計測する計測部を設けてもよい。これにより、測定部により顆頭位置408の三次元位置とセンサユニットのセンサ170の三次元位置とを測定しながら、これらの位置関係が図10のステップS220にて算出された顆頭の位置とセンサ170との位置関係となるように、昇降部406の上下高さおよび延在部186の前後位置が調整されてもよい。
【0059】
図17は、台座400の側面図であり、下歯型模型212を取り付けるときの状態を示す。下歯型模型212も上歯型模型210と同様に、昇降部406の上下高さおよび延在部186の前後位置が調整されることにより、図10のステップS220にて算出された顆頭の位置とセンサ170との位置関係が、台座400に載置された下弓部300の顆頭位置408とセンサ170との位置関係に再現される。当該位置関係が再現された状態において、石膏剤等により下歯型模型212が模型取付部324に取り付けられる。
【0060】
上歯型模型210が取り付けられた上弓部220を、上歯型模型210が下を向く姿勢にして、下歯型模型212が取り付けられた下弓部300に搭載することにより、咬合器200上に被験者20の上下顎の正しい顎位の三次元的位置関係を再現することができる。さらに、球受け部246および球受け部256の回転量を制限する公知の手段により、ステップS230、S250により算出された矢状顆路角、作業側側方顆路角および平衡側側方顆路角が咬合器200に再現される。
【0061】
以上、図13から図17に示す本実施形態によれば、作業の煩雑さを伴う人為的、経時的誤差が生じやすいワックス等の咬合採得剤などを使用せずに、咬合器200上に被験者20の上下顎の正しい顎位の三次元的位置関係を再現することができる。
【0062】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の正常な下顎位を決定する下顎位決定方法であって、
前記被験者の頭部の運動を測定した測定データを取得し、前記頭部の運動を剛体の回転運動に近似した場合の運動中心を算出する中心算出ステップと、
前記被験者の複数の下顎位に対して、前記下顎の咀嚼運動の複数の軌跡を測定する下顎軌跡測定ステップと、
前記下顎軌跡測定ステップで測定した前記複数の軌跡のうち、前記下顎の咀嚼運動を剛体の回転運動に近似した場合の運動中心が、前記中心算出ステップにより算出された前記頭部の前記運動中心に一致する軌跡に対応する下顎位を、前記被験者の正常な下顎位に決定して出力する位置決定ステップと
を備える下顎位決定方法。
【請求項2】
前記中心算出ステップに先立って、前記被験者の頭部の運動を測定する頭部運動測定ステップをさらに備える請求項1に記載の下顎位決定方法。
【請求項3】
前記下顎軌跡測定ステップは、前記被験者の咀嚼筋をリラックスする咀嚼筋リラックスステップを有し、前記被験者の前記咀嚼筋がリラックスした安静位から咬合平面まで、前記咀嚼運動の軌跡を前記複数の下顎位ごとに測定する請求項1に記載の下顎位決定方法。
【請求項4】
前記下顎軌跡測定ステップにおいて、前記被験者の右目と左目とを結んだ直線が水平線に一致する姿勢で前記被験者の前記頭部を固定して、前記被験者における前記下顎の運動の軌跡を測定する請求項1に記載の下顎位決定方法。
【請求項5】
前記中心算出ステップにより算出された前記運動中心を通る水平面を、正常な咬合平面に設定する咬合平面設定ステップを有し、
前記下顎軌跡測定ステップは、前記被験者における前記下顎の既知の位置に取り付けたセンサの移動を検知することにより、前記下顎の前記軌跡を測定し、
前記位置決定ステップは、
前記下顎軌跡測定ステップにおいて測定された前記複数の軌跡のそれぞれから、前記下顎が前記咬合平面に到達するときの前記センサの速度を算出する速度算出ステップ、および、
前記速度算出ステップにより算出された速度のうち、左右成分がより小さく、かつ、当該速度が鉛直線となす角度が、前記頭部の前記運動中心と前記センサの位置とを結ぶ直線と水平線とがなす角度に等しくなる速度を求める速度決定ステップ
を有し、
前記位置決定ステップは、前記速度決定ステップにより求められた前記速度が算出された下顎位を、前記被験者の正常な下顎位に決定する請求項1に記載の下顎位決定方法。
【請求項6】
前記下顎軌跡測定ステップは、前記被験者の前記下顎において互いに少なくとも前後左右のいずれかが異なる3つ以上の位置に設けた複数のセンサの移動を検知する請求項5に記載の下顎位決定方法。
【請求項7】
前記位置決定ステップにおいて決定した前記下顎位から前記被験者が前記下顎を側方運動した軌跡を測定する側方運動測定ステップと、
前記側方運動測定ステップにおいて測定された前記側方運動の軌跡から作業側側方顆路角および平衡側側方顆路角を算出する側方顆路角算出ステップと、
前記位置決定ステップにおいて決定した前記下顎位から前記被験者が前記下顎を前方運動した軌跡を測定する前方運動測定ステップと、
前記前方運動測定ステップにおいて測定された前記前方運動の軌跡から矢状顆路角を算出する矢状顆路角算出ステップと、
側方顆路角算出ステップにより算出された作業側側方顆路角および平衡側側方顆路角、並びに、前記矢状顆路角算出ステップにより算出された矢状顆路角を出力する出力ステップと
をさらに備える請求項1に記載の下顎位決定方法。
【請求項8】
歯型模型を咬合器の上弓および下弓に取り付ける模型取付ステップと、
前記出力ステップにおいて算出された前記矢状顆路角、前記作業側側方顆路角および前記平衡側側方顆路角を、前記咬合器に再現すべく前記咬合器を調整する調整ステップと
をさらに備える請求項7に記載の下顎位決定方法。
【請求項9】
前記前方運動測定ステップにより測定された前記前方運動および前記側方運動測定ステップにより測定された前記側方運動により、左右の顆頭間の距離を算出する顆頭間距離算出ステップを更に備え、
前記調整ステップにおいて、さらに、前記顆頭間距離算出ステップにより算出された左右の顆頭間の距離を前記咬合器上で再現すべく調整する請求項8に記載の下顎位決定方法。
【請求項10】
被験者の正常な下顎位を決定する下顎位決定装置であって、
前記被験者の頭部の運動を測定した測定データを取得し、前記頭部の運動を剛体の回転運動に近似した場合の運動中心を算出する中心算出部と、
前記被験者の複数の下顎位に対して、前記下顎の咀嚼運動の複数の軌跡を測定する下顎軌跡測定部と、
前記下顎軌跡測定部で測定した前記複数の軌跡のうち、前記下顎の咀嚼運動を剛体の回転運動に近似した場合の運動中心が、前記中心算出部により算出された前記頭部の前記運動中心に一致する軌跡に対応する下顎位を、前記被験者の正常な下顎位に決定して出力する位置決定部と
を備える下顎位決定装置。
【請求項11】
被験者の正常な下顎位を決定する下顎位決定装置を制御するプログラムであって、前記下顎位決定装置に、
前記被験者の頭部の運動を測定した測定データを取得し、前記頭部の運動を剛体の回転運動に近似した場合の運動中心を算出する中心算出手順と、
前記被験者の複数の下顎位に対して、前記下顎の咀嚼運動の複数の軌跡を測定する下顎軌跡測定手順と、
前記下顎軌跡測定手順で測定した前記複数の軌跡のうち、前記下顎の咀嚼運動を剛体の回転運動に近似した場合の運動中心が、前記中心算出手順により算出された前記頭部の前記運動中心に一致する軌跡に対応する下顎位を、前記被験者の正常な下顎位に決定して出力する位置決定手順と
を実行させるプログラム。
【請求項12】
咬合器であって、
上顎の歯型模型を取り付ける上弓部と、
一対の球状の軸受を介して前記上弓部に対して回動可能に連結され、下顎の歯型模型を取り付ける下弓部と
を備え、
前記一対の軸受の間の距離が可変である咬合器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−240805(P2009−240805A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−170594(P2009−170594)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【分割の表示】特願2008−553567(P2008−553567)の分割
【原出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【出願人】(707001078)
【Fターム(参考)】