説明

不均一触媒系上でのエチレンジアミン(EDA)及び他のエチレンアミンの連続アミノ交換反応による、ジエチレントリアミン(DETA)又は他の望ましいエチレンアミンの選択的製造プロセス

本発明は、アミノ交換反応触媒の存在下に、エチレンジアミンを1種又はそれ以上の追加のエチレンアミンと反応させて、異なった、好ましくは更に望ましい1種又はそれ以上のエチレンアミンの生成混合物をもたらす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本件非仮特許出願は、Cook等により2008年10月6日に出願され、発明の名称が「不均一触媒系上でのエチレンジアミン(EDA)及び他のエチレンアミンの連続アミノ交換反応による、ジエチレントリアミン(DETA)又は他の望ましいエチレンアミンの選択的製造プロセス(A PROCESS TO SELECTIVELY MANUFACTURE DIETHYLENETRIAMINE (DETA) OR OTHER DESIRABLE ETHYLENAMINES VIA CONTINUOUS TRANSAMINATION OF ETHYLENEDIAMINE (EDA), AND OTHER ETHYLENEAMINES OVER A HETEROGENEOUS CATALYST SYSTEM)」である、出願番号第61/195,404号を有する米国仮特許出願(この特許出願は、その全部を参照して本明細書中に含める)からの、35U.S.C.§119(e)に規定される優先権を主張する。
【0002】
本発明は、1種又はそれ以上のエチレンアミンをアミノ交換反応に付すことによる、1種又はそれ以上のエチレンアミンを製造することに関する。
【背景技術】
【0003】
アミノ交換反応によるエチレンアミンの製造方法は公知である。例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3及び特許文献4を参照されたい。
【0004】
特許文献1は、エチレンジアミンのアミノ交換反応による、ジエチレントリアミン及び高級ポリエチレンポリアミンの製造プロセスに関する。
【0005】
特許文献2は、不均一触媒の存在下でのエチレンジアミン(EDA)の連続反応による、エチレンアミン、特にジエチレントリアミン(DETA)の製造プロセス(ここで、この反応は、反応塔内で実施される)に関する。
【0006】
特許文献3は、反応器内で触媒の存在下に、モノエタノールアミン(MEOA)をアンモニアと反応させ、得られる反応生成物を分離することによるエチレンアミンの製造(ここで、分離で得られるエチレンジアミン(EDA)を、別の反応器内で触媒の存在下に反応させて、ジエチレントリアミン(DETA)を得、得られた反応生成物を、第一の反応器から得られる反応生成物の分離に通す)に関する。
【0007】
アミノ交換反応によりエチレンアミンを製造する改良されたプロセスについてのニーズが存在する。例えば、多くのアミノ交換反応プロセスは、製造されるエチレンアミンの生成混合物の方への限定された選択率を有する。この選択率が、少なくとも市場の要求に密接に適合していないと、このプロセスは、より多くの望ましくない生成物が典型的に作られるので、一定量の望ましいエチレンアミンを製造するためには不十分である傾向がある。エチレンアミン生成物混合物の改良された選択率は、市場の要求に適応された製造を可能にし、運転コストなどを改良できるであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第7,053,247号明細書(Lifら)
【特許文献2】米国特許第7,393,978号明細書(Frauenkronら)
【特許文献3】米国特許公開第2007/0100144号明細書(Frauenkronら)
【特許文献4】英国特許第1508460号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、アミノ交換反応触媒の存在下に、エチレンジアミンを1種又はそれ以上の追加のエチレンアミンと反応させて、1種又はそれ以上のエチレンアミンをもたらす。このアミノ交換反応の選択率は、与えられたアミノ交換反応供給物及び運転条件に基づいて、所望のエチレンアミン生成物を製造するように制御することができる。有利には、比較的望ましくないエチレンアミン生成物混合物(例えば還元的アミノ化のような比較的制御可能でないエチレンアミン製造プロセスから来る)を、このあまり望ましくないエチレンアミン生成物混合物を、本発明に従ったアミノ交換反応プロセスに付すことによって、一層望ましいエチレンアミン生成物混合物に転化させることができる。特別のエチレンアミン(単数又は複数)についての市場の要求は変化するので、本発明に従ったプロセスは、あまり望ましくないエチレンアミン(単数又は複数)を使用し、一層望ましい/価値のあるエチレンアミンの生成物混合物を製造することができる(製造される望ましいエチレンアミン(単数又は複数)の量を最大にし、望ましくないエチレンアミンの量を最少にする)。他の利点として、このプロセスは独立型/モジュラー設備として実施することができ又は現存するエチレンアミン装置の中に統合することができる。
【0010】
本発明の一面に従えば、アミノ交換反応による1種又はそれ以上のエチレンアミンの製造プロセスは、アミノ交換反応触媒の存在下に、エチレンジアミンを1種又はそれ以上の追加のエチレンアミンと反応させて、1種又はそれ以上のエチレンアミンを得る工程を含む。この1種又はそれ以上の追加のエチレンアミンはジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、アミノエチルエタノールアミン、アミノエチルピペラジン、ピペラジノエチルエチレンジアミン、重質(heavy)ポリアミン及びこれらの組合せからなる群から選択される。
【0011】
本発明の別の面に従えば、アミノ交換反応による1種又はそれ以上のエチレンアミンの製造プロセスは、アミノ交換反応触媒の存在下に、第一の混合物を反応させて、第二の混合物を得る工程を含む。この第一の混合物は、エチレンジアミン及び1種又はそれ以上の追加のエチレンアミンを含む。この1種又はそれ以上の追加のエチレンアミンはジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、アミノエチルエタノールアミン、アミノエチルピペラジン、ピペラジノエチルエチレンジアミン、重質ポリアミン及びこれらの組合せからなる群から選択される。第一の混合物中の少なくとも2種のエチレンアミンは、第二の混合物中の対応する2種のエチレンアミンの量とは異なる量で、存在する。
【0012】
本発明の別の面に従えば、アミノ交換反応による1種又はそれ以上のエチレンアミンの製造プロセスは、固定床反応器内でアミノ交換反応触媒の存在下に、エチレンジアミンを1種又はそれ以上の追加のエチレンアミンと反応させて、1種又はそれ以上のエチレンアミンを得る工程を含む。
【0013】
本発明の別の面に従えば、アミノ交換反応による1種又はそれ以上のエチレンアミンの製造プロセスは、アミノ交換反応触媒の存在下に、エチレンジアミンを反応させて、1種又はそれ以上のエチレンアミンを得る工程を含む。この触媒は、a)遷移アルミナ及び第二の金属の酸化物を含む酸性混合金属酸化物(ここで、この第二の金属酸化物は、アルミナの重量パーセントよりも小さい重量パーセントを有する)を有する担体部分並びにb)コバルト、ニッケル及び銅からなる群から選択された1種又はそれ以上の金属を有する触媒部分を含有し(ここで、この触媒中に、レニウムは存在しないか又は0.01重量パーセントよりも少なく存在し)触媒部分は触媒の25重量%以下である。
【0014】
本発明の別の面に従えば、アミノ交換反応による1種又はそれ以上のエチレンアミンの製造プロセスは、アミノ交換反応触媒の存在下に、エチレンジアミンを反応させて、1種又はそれ以上のエチレンアミンを得る工程を含む。この触媒は、a)遷移アルミナ及び第二の金属の酸化物を含む酸性混合金属酸化物を含んでなる担体部分並びにb)ニッケル及びレニウムを含む触媒部分を含有し(ここで、この第二の金属の酸化物は、アルミナの重量パーセントよりも小さい重量パーセントを有し、この触媒部分は、触媒組成物の25重量パーセント又はそれ以下であり、この触媒部分は、全触媒組成物重量基準で2〜20重量%の範囲内の量でニッケルを含んでなり、そしてこの触媒部分中にホウ素は存在しない。
【0015】
本発明の別の面に従えば、アミノ交換反応による1種又はそれ以上のエチレンアミンの製造のためのモジュラー反応システムは、a)アミノ交換反応触媒を含有する反応器及びb)アミノ交換反応触媒の存在下に、エチレンジアミンを1種又はそれ以上の追加のエチレンアミンと反応させて、1種又はそれ以上のエチレンアミンを得るためのプログラム命令を含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明の利点及びそれを達成するための手段は、添付される図面と関連させて得られる本発明の態様の以下の説明を参照することによって、一層明らかになり、発明自体がより良く理解されるであろう。
【図1】図1は、アミノ交換反応による1種又はそれ以上のエチレンアミンの製造のための、本発明に従ったプロセスを、模式的に示すブロック線図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
下記の本発明の態様は、包括的であるように意図されず又は本発明を、以下の詳細な説明に開示された厳密な形に限定するように意図されない。むしろ、これらの態様は、当業者が、本発明の原理及び実施を認識し、理解できるように、選択され、説明される。
【0018】
本明細書中に記載された全ての刊行物及び特許は、説明及び開示の目的のために、それらのそれぞれの全部、例えばここに説明する本発明と関連させて使用できる、刊行物中に記載されている構成物及び方法を参照して、本明細書中に含めるものとする。上記及び明細書中の刊行物は、本件特許出願の出願日よりも前のそれらの開示のために単独で提供される。これらの中にないものは、本発明者が、先行発明に基づく、このような開示に先行する権利を与えられないという承認として解釈されるべきではない。
【0019】
本発明に従った1種又はそれ以上のエチレンアミンの製造プロセスでは、アミノ交換反応のために1種又はそれ以上のエチレンアミンの供給物が使用される。
【0020】
本発明に従ったプロセスで使用することができるエチレンアミンは公知であり、エチレンジアミン(EDA)、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ピペラジン(PIP)、アミノエチルピペラジン(AEP)、アミノエチルエタノールアミン(AEEA)、ピペラジノエチルエチレンジアミン(PEEDA)、重質ポリアミン(HPA)及びこれらの組合せの1種又はそれ以上を含むことができる。HPAは、線状、枝分かれ及び/又は環式エチレンアミンの混合物であり、それらの構造は、TETA及びTEPAに於いて存在する製造の化学及び構造の知識から推定することができる。HPAの主要成分の構造は、分子当たり6個又はそれ以上の窒素原子を含有することができる。
【0021】
アミノ交換反応後の1種又はそれ以上のエチレンアミンの量は、アミノ交換反応の前の対応するエチレンアミン(単数又は複数)の量とは制御可能的に異なっている。有利には、比較的望ましくないエチレンアミン生成物混合物(例えば還元的アミノ化のような比較的制御可能でないエチレンアミン製造プロセスから来る)を、このあまり望ましくないエチレンアミン生成物混合物を、本発明に従ったアミノ交換反応プロセスに付すことによって、一層望ましいエチレンアミン生成物混合物に転化させることができる。例えば、本発明に従ったプロセスは、ジエチレントリアミン(DETA)以外の1種又はそれ以上のエチレンアミンの比較的高い量を有する反応剤混合物を処理して、DETAが比較的高い生成物混合物を製造することができる。例えば、反応剤混合物は、エチレンジアミン(EDA)又はEDA及びピペラジン(PIP)の比較的高い量を有することができ、一方、本発明に従って製造された生成物混合物は、DETAが比較的高くてよい。他の実例として、オリゴマー、トリエチレンテトラミン(TETA)及びテトラエチレンペンタミン(TEPA)の量が比較的高い生成物混合物を、EDA及び/又はDETAの量が比較的高い供給物を、本発明に従ったアミノ交換反応に付すことによって製造することができる。或る態様においては、望ましいエチレンアミン生成物混合物を、本発明に従って、共生成物として製造される比較的少量の又は全く含有しないアミノエチルエタノールアミン(AEEA)及び所望のエチレンアミンに比較してより低い量の望ましくない環式エチレンアミンで、製造することができる。
【0022】
本発明に従ったアミノ交換反応に付される1種又はそれ以上のエチレンアミンの源泉は、原材料、上流プロセス(例えばエチレンアミン(単数又は複数)を製造する上流プロセス又はプロセス群、例えば還元的アミノ化、二塩化エチレン及びアンモニア並びに縮合)から誘導される材料又はこれらの組合せであってよい。例えば、或る態様に於いて、還元的アミノ化反応に於いて製造される1種又はそれ以上のエチレンアミンを、本発明に従ったアミノ交換反応プロセス用の供給物として使用することができる。代理人ドケット番号第67686号(DOW0021/P1)を有し、本件特許出願と同日に出願された、David M.Petraitis等による出願係属中の米国仮特許出願、発明の名称「エチレンアミンの製造方法(METHOD OF MANUFACTURING ETHYLENEAMINES)」(この文献の全部を参照して本明細書中に含める)参照。また、代理人ドケット番号第67691号(DOW0019P1)を有し、本件特許出願と同日に出願された、David M.Petraitis等による出願係属中の米国仮特許出願、発明の名称「エチレンオキサイド及びアンモニアからのエタノールアミン(単数又は複数)及びエチレンアミン(単数又は複数)の製造方法並びに関連方法(METHODS FOR MAKING ETHANOLAMINE(S) AND ETHYLENEAMINE(S) FROM ETHYYLENE OXIDE AND AMMONIA, AND RELATED METHODS)」(この文献の全部を参照して本明細書中に含める)参照。
【0023】
アミノ交換反応は、1種の化合物から別の化合物へのアミノ基の移動又は化合物内のアミノ基の転位である。アミノ交換反応は、また、代理人ドケット番号第67685号(DOW0020/P1)を有し、本件特許出願と同日に出願された、Stephen W.Kingによる米国仮特許出願、発明の名称「環式N−アミノ官能性トリアミンの製造方法(METHODS OF MAKING CYCLIC, N-AMINO FUNCTIONAL TRIAMINES)」(この文献の全部を参照して本明細書中に含める)中に開示されている。
【0024】
任意的に、1種又はそれ以上の追加の成分を、アミノ交換反応器の前に又は中で、エチレンアミン反応剤と組み合わせることができる。例えば好ましくない反応(単数又は複数)の程度を最小にするために、アンモニア(NH3)を、アミノ交換反応供給物流の中に含有させることができる。他の例として、触媒活性化及び生成物選択率に影響を与えるために充分な量で、水素をアミノ交換反応供給物流の中に含有させることができる。水素の代表的な量は、液体供給物基準で、0.001〜10.0モル%を含む。
【0025】
アミノ交換反応は、任意の適当な反応器内で実施することができる。これらには、回分式反応器、連続式固定床反応器、スラリー床反応器、流動床反応器、接触蒸留反応器、これらの組合せ等が含まれる。或る態様においては、固定床反応器が好ましい。固定床反応器には、適所に保持され、固定された対照枠に対して実質的に移動しない触媒ペレットが含まれている。反応器供給材料の少なくとも一部は、触媒ペレットの上を通過し(貫流し)、反応して生成物(単数又は複数)を形成する。
【0026】
反応器条件は、使用される反応器供給物及び触媒から得られる所望の生成物混合物を形成するように設定することができる。好ましくは、この反応器条件は、比較的穏和であり、運転コスト等を低下させる。好ましいアミノ交換反応温度は、130℃〜180℃の範囲内、好ましくは130℃〜170℃の範囲内、なお更に好ましくは130℃〜160℃の範囲内の温度であってよい。好ましいアミノ交換反応圧力は、200〜2000psigの範囲内の圧力であってよい。好ましアミノ交換反応反応器空間速度は、5〜50グラムモルエチレンアミン/触媒キログラム/時の範囲内であってよい。好ましい態様に於いて、本発明に従ったアミノ交換反応は25%又はそれ以上、例えば25%〜65%の範囲内の供給物転化率を有してよい。
【0027】
アミノ交換反応に触媒作用をすることができる任意の触媒を、本発明に従ったプロセスにおいて、使用することができる。このような触媒は公知である。好ましい触媒には、水素化触媒又は脱水素触媒が含まれる。水素化触媒は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、コバルト(Co)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)、ロジウム(Rh)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)及びこれらの組合せから作ることができる。アミノ交換反応のための触媒を担持することができる任意の触媒担体を、本発明に従ったプロセスにおいて使用することができる。触媒担体は公知であり、例えば金属酸化物を含む。好ましい態様においては、混合金属酸化物が使用され、更に好ましくは遷移アルミナ含有シリカが使用される。
【0028】
1種の好ましい触媒は、代理人ドケット番号第67688号(DOW0016/P1)を有し、本件特許出願と同日に出願された、Stephen W.King等による出願係属中の米国仮特許出願、発明の名称「担体として酸性混合金属酸化物を含有する低金属触媒組成物(LOW METAL CATALYST COMPOSITIONS INCLUDING ACIDIC MIXED METAL OXIDE AS SUPPORT)」(この文献の全部を参照して本明細書中に含める)中に記載されているように、ニッケル及びレニウムを含有する。そして更に他の好ましい組合せは、代理人ドケット番号第66049号(DOW0015/P1)を有し、本件特許出願と同日に出願された、Stephen W.King等による出願係属中の米国仮特許出願、発明の名称「低金属含有、アルミナ担持触媒組成物及びアミノ化プロセス(LOW METAL LOADED, ALUMINA SUPPORTED, CATALYST COMPOSITIONS AND AMINATION PROCESS)」(この文献の全部を参照して本明細書中に含める)中に記載されているように、ニッケル、コバルト若しくは銅又はこれらの組合せを含有する。このような触媒は、著しく改良されたエチレンジアミンへの選択率を示す。有利には、このような触媒は、比較的穏和な温度及び圧力条件下で一層改良された選択率を達成できる。例えば、このような触媒は、110℃〜180℃、好ましくは130℃〜160℃の範囲内の温度および2000psig又はそれ以下の圧力で所望の生成物選択率を達成することができる。
【0029】
本発明に従ったエチレンアミンの製造プロセスに於いて、1個又はそれ以上のアンモニア回収システムを使用することができる。アンモニア回収システムは、流体流から、アンモニア及び任意的に1種又はそれ以上の追加の成分(例えば水素)を分離する。アンモニア回収システムは、所望により全体プロセスのどこにでも配置することができる。好ましくは、1個又はそれ以上のアンモニア回収システムが、アンモニア回収システム及び/又は他のプロセス装置の数を最小にする方式で使用される。回収されたアンモニアは、任意の所望の方式に於いても使用することができる。例えば回収されたアンモニアの純度レベルに依存して、回収されたアンモニアを、プロセス内の他の場所、例えば反応器の入口へ循環させることができる。有利には、このような回収されたアンモニアは、反応においてアンモニアが消費される反応器のための「補給」アンモニアとして使用することができる。
【0030】
アンモニア回収システムは、当該技術分野において公知の任意の形式のアンモニア回収システムであってもよい。例えばアンモニア回収システムは、多数の異なった組み合わせて、蒸留塔、複数の一段分離器、圧縮機、冷却器及び/又は吸収器等を使用することができる。
【0031】
本発明に従ったプロセスによって製造された1種又はそれ以上のエチレンアミンは、当該技術分野に於いて公知の任意の方法によって、分離し、回収することもできる。例えば当該技術分野に於いて公知の一般的な蒸留技術を使用して、このエチレンアミンを精製することができる。好ましくは分割壁塔(dividing wall column)が使用される。
【0032】
他の分離技術(膜、溶融結晶化、反応性蒸留)が含まれてよい。
【0033】
本発明に従ったアミノ交換反応プロセスは、独立(モジュラー)システム内で使用することができ、又はこれは、本発明に従ったアミノ交換反応プロセスのための供給物として使用することができる1種若しくはそれ以上エチレンアミンを製造する、より大きいシステムと統合させることができる。本明細書中に使用されるとき、アミノ交換反応による1種又はそれ以上のエチレンアミンの製造のための「モジュラー」反応システムは、原料供給物として直接的に導入されるEDA及び他のエチレンアミンを有することができる独立システム又はより大きいシステム(例えば現存するシステム)の中に統合され、上流プロセスから導入されるEDA及び他のエチレンアミンを有することができる独立システムを意味する。その中に本発明に従ったモジュラーアミノ交換反応システムを統合することができるより大きいシステムは、1種又はそれ以上のエチレンアミンを製造することができるシステム、例えば二塩化エチレン(EDC)系システム、縮合系システム及び/又は還元的アミノ化系システムを含む。還元的アミノ化システムの中に統合された本発明の実例は、代理人ドケット番号第67686号(DOW0021/P1)を有し、本件特許出願と同日に出願された、David M.Petraitis等による出願係属中の米国仮特許出願、発明の名称「エチレンアミンの製造方法(METHOD OF MANUFACTURING ETHYLENEAMINES)」(この文献の全部を参照して本明細書中に含める)に更に説明されている。また、代理人ドケット番号第67691号(DOW0019P1)を有し、本件特許出願と同日に出願された、David M.Petraitis等による出願係属中の米国仮特許出願、発明の名称「エチレンオキサイド及びアンモニアからのエタノールアミン(群)及びエチレンアミン(群)の製造方法並びに関連方法(METHODS FOR MAKING ETHANOLAMINE(S) AND ETHYLENEAMINE(S) FROM ETHYYLENE OXIDE AND AMMONIA, AND RELATED METHODS)」(この文献の全部を参照して本明細書中に含める)も参照されたい。
【0034】
有利には、本発明に従ったプロセスによって達成できるエチレンアミン生成混合物の比較的高い選択率のために、本発明に従ったモジュラーアミノ交換反応システムは、他のシステム(例えば還元的アミノ化システム)と統合して(例えば改良して)、アミノ交換反応システムのための供給物が、エチレンアミン生成物混合物中のこのような望ましい選択率を有しないであろう1個又はそれ以上の上流プロセスから来るようにすることができる。好ましくは、モジュラーシステムは、それ自身の精製列(refining train)を有する。また、このようなモジュラーシステムは、本発明に従ったプロセスのプログラム指示(例えば、プログラミングコード)を実施するための処理装置、例えばコンピュータ等を含むことができる。
【0035】
本発明を、図1に示される代表的な模式的なフロー図を参照して、更に示す。
【0036】
図1は、アミノ交換反応による1種又はそれ以上のエチレンアミンの製造のための、本発明に従ったプロセス10を、模式的に例示するブロック線図を示す。1種又はそれ以上のエチレンアミンの源泉20は、流25を経てアミノ交換反応器50に供給される。エチレンアミンの源泉20には、エチレンジアミン(EDA)、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ピペラジン(PIP)、アミノエチルピペラジン(AEP)及び重質ポリアミン(HPA)又はこれらの組合せが含有されていてよい。図示されるように、水素ガスの源泉30及びアンモニアの源泉40は、任意的に、源泉20からのエチレンアミンと一緒にさせることができ、それぞれライン35及びライン45を経て反応器50に供給される。図示されるように、反応器50は、エチレンジアミン(EDA)、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ピペラジン(PIP)、アミノエチルピペラジン(AEP)及び重質ポリアミン(HPA)を含有するエチレンアミンの生成物混合物を有する排出物を製造する。反応器50から出るそれぞれのエチレンアミンの量は、アミノ交換反応がどのように実施されるかによって、反応器50の中に入るそれぞれのエチレンアミンの量とは制御可能に異なっている。有利には、比較的望ましくないエチレンアミン生成物混合物(例えば比較的制御可能でないエチレンアミン製造プロセス、例えば還元的アミノ化から来る)を、このあまり望ましくないエチレンアミン生成物混合物を、本発明に従ったアミノ交換反応プロセスに付すことによって、一層望ましいエチレンアミン生成物混合物に転化させることができる。反応器50からの排出物は、ライン55を経てアンモニア回収装置60に供給される。アンモニア回収装置60は、エチレンアミンからアンモニアを分離し、ライン67を経てアンモニアオーバーヘッドを送る。エチレンアミンは、ライン65を経て生成物精製システム70に送られ、そこで、エチレンアミンは、個々のエチレンアミン種に分離されることができる。任意的に、生成物精製システム70内で分離された1種又はそれ以上のエチレンアミンは、流77を経て源泉20からのエチレンアミンと一緒にして、反応器50に供給することができる。
【実施例】
【0037】
触媒調製
以下の例1〜5に於いて使用された触媒を、以下のようにして調製した。ニッケル(Ni)及びレニウム(Re)の前駆体塩を、70〜80℃の水中に溶解して、含浸溶液を形成した。この含浸溶液の最終体積を、担体が含浸される回数のために必要な吸着体積に等しくなるように調節し、前駆体塩の量は、例に於いて用意される金属組成物を与えるように計算されたものであった。それぞれの場合に、担体を、適切な量の含浸溶液の添加によって初期湿潤度まで含浸させ、全ての液体が吸着されるまでゆっくり撹拌した。次いで、このサンプルを、マッフル炉の中に置き、空気中で340℃で1時間焼成した。担体が冷却したとき、この溶液の全部が添加されるまで、追加の含浸を実施した。それぞれの含浸の後で、340℃での焼成工程を行った。使用する前に、この触媒組成物を、水素中で、温度を3℃/分で230℃まで上昇させ、230℃で1時間保持し、次いで3℃/分で340℃まで上昇させ、3時間保持することによって還元した。この触媒組成物を、水素下で環境温度まで冷却させ、その後、窒素ガス中1%酸素の流動流を、発熱が終了するまで添加することによって、これらを安定化させた。発熱が約70℃を超えることはなかった。
【0038】
以下の例は、図1に示されるものと同様のプロセスフローを使用して製造した。エチレンジアミンを、600〜1000psiの反応圧力までポンプで昇圧し、140〜160℃の温度まで加熱する。次いで、0.1〜10.0の水素モル%(供給物基準)を添加する。EDA水素混合物は、1/16インチのアルミナシリカ(80:20)担体上の不均一Ni−Re(6.8:1.8重量%)触媒約274gを含有する反応器への供給物上昇流である。反応器出口生成物を、供給物H2及びプロセス内で作られたアンモニアを除去するために、アンモニア回収に送る。次いで、アンモニアを含有しない物質を分析し、その後、汎用の蒸留塔からなる回収システムに送って、EDA、PIP、DETA、TETA及び重質物を回収する。データを、全エチレンアミン含有物基準の重量%として表す。
【0039】
例1
以下の表1は、本プロセスが、環式化合物(PIP、AEP、PEEDA)のレベルを低く保持しながら、DETA及びTETAに向けて高度に選択的であることを示している。また、このプロセスは、非環式生成物への良好な選択率をなお維持しながら、異なったEDA空間速度、水素濃度及び温度で、約600〜1000psiの圧力で運転することができる。
【0040】
【表1】

【0041】
例2
以下の表2は、不均一触媒上にEDA/DETAを供給する結果を示している。環式物質の低いレベルをなお維持しながら、EDAのみの供給物に対して比較したとき、TETAのより高いレベルがもたらされる。
【0042】
【表2】

【0043】
例3
下記の表3は、不均一触媒上にEDA/PIPを供給する結果を示している。表2に対して比較したとき、同様のEDA転化率で、DETA/PIP比が改良されることが判る(注:供給物中のPIPを、生成物中の製造されたPIPから差し引く)。
【0044】
【表3】

【0045】
例4
以下の表4は、不均一触媒上にEDA/TETAを供給する結果を示している。DETA:PIP及びTETA:PIP(TETAは、生成物混合物中のTETAから、供給されたTETAを差し引くことによって計算されることに着目されたい)は、同様のEDA転化率で、EDAのみの供給物を超えて改良されることに着目されたい。更に、同様のEDA転化率で、より多くのAEPが生成する。
【0046】
【表4】

【0047】
例5
以下の表5は、不均一触媒上にEDA/AEPを供給する結果を示している。この結果から判るように、同様のEDA転化率で、EDAのみの供給物に比較して、追加のPEEDAが生成する。
【0048】
【表5】

【0049】
本発明の他の態様は、本明細書を考察して又は本明細書中に開示された本発明の実施から、当業者に明らかであろう。本明細書中に記載された原理及び態様に対する種々の省略、修正及び変更を、本発明の真の範囲及び精神から逸脱することなく、当業者によって行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ交換反応触媒の存在下に、エチレンジアミンを1種又はそれ以上の追加のエチレンアミンと反応させて、1種又はそれ以上のエチレンアミンを得る工程を含んでなるアミノ交換反応による1種又はそれ以上のエチレンアミンを製造するプロセスであって、前記1種又はそれ以上の追加のエチレンアミンがジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、アミノエチルエタノールアミン、アミノエチルピペラジン、ピペラジノエチルエチレンジアミン、重質ポリアミン及びこれらの組合せからなる群から選択されるプロセス。
【請求項2】
前記触媒が、
a)遷移アルミナ及び第二の金属の酸化物を含む酸性混合金属酸化物を含んでなる担体部分並びに
b)ニッケル及びレニウムを含む触媒部分を含んでなり、
前記第二の金属の酸化物がアルミナの重量パーセントよりも小さい重量パーセントを有し、
前記触媒部分が触媒組成物の25重量パーセント又はそれ以下であり、
前記触媒部分が、全触媒重量基準で2〜20重量パーセントの範囲の量で、ニッケルを含み、そして
前記触媒部分中にホウ素が存在しない、
請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記反応の工程が、アミノ交換反応触媒の存在下に、第一の混合物を反応させて、第二の混合物を得ることを含み、前記第一の混合物がエチレンジアミン及び1種又はそれ以上の追加のエチレンアミンを含み、前記第一の混合物中の少なくとも2種のエチレンアミンが、前記第二の混合物中の対応する2種のエチレンアミンの量とは異なる量で存在する請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記第一の混合物中のエチレンアミンの全部が、前記第二の混合物中の対応するエチレンアミンの量とは異なる量で存在する請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記触媒が、
a)遷移アルミナ及び第二の金属の酸化物を含む酸性混合金属酸化物を含んでなる担体部分(ここで、前記第二の金属の酸化物はアルミナの重量パーセントよりも小さい重量パーセントを有する)並びに
b)コバルト、ニッケル及び銅からなる群から選択された1種又はそれ以上の金属を含む触媒部分
を含んでなる(ここで、前記触媒中に、レニウムが存在しないか又は0.01重量%よりも少なく存在し、この触媒部分が、触媒の25重量%又はそれ以下である)請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記触媒部分が前記触媒の3〜18重量%の範囲内である請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記触媒部分がコバルト、ニッケル及び銅からなる群から選択された2種又は3種の金属を含む請求項5に記載のプロセス。
【請求項8】
前記触媒部分が、1:9〜9:1の範囲の重量比で、コバルト及びニッケルを含む請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記触媒部分がレニウムを含有しないか又は0.005重量%よりも少ないレニウムを含む請求項5に記載のプロセス。
【請求項10】
固定床反応器内でアミノ交換反応触媒の存在下に、エチレンジアミンを1種又はそれ以上の追加のエチレンアミンと反応させて、1種又はそれ以上のエチレンアミンを得る工程を含んでなる、アミノ交換反応による1種又はそれ以上のエチレンアミンの製造プロセス。
【請求項11】
前記1種又はそれ以上の追加のエチレンアミンがジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ピペラジン、アミノエチルピペラジン、アミノエチルエタノールアミン、ピペラジノエチルエチレンジアミン、重質ポリアミン及びこれらの組合せからなる群から選択される請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
アミノ交換反応触媒の存在下に、エチレンジアミンを反応させて、1種又はそれ以上のエチレンアミンを得る工程を含んでなるアミノ交換反応による1種又はそれ以上のエチレンアミンの製造プロセスであって、前記触媒が、
a)遷移アルミナ及び第二の金属の酸化物を含む酸性混合金属酸化物を含んでなる担体部分並びに
b)ニッケル及びレニウムを含む触媒部分を含有し(ここで、前記第二の金属の酸化物が、アルミナの重量パーセントよりも小さい重量パーセントを有する)、
前記触媒部分が触媒組成物の25重量パーセント又はそれ以下であり、
前記触媒部分が全触媒組成物重量基準で2〜20重量パーセントの範囲の量でニッケルを含む、そして
前記触媒部分中にホウ素が存在しないプロセス。
【請求項13】
前記遷移アルミナがδ−アルミナを含む請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記遷移アルミナがγ−アルミナ、θ−アルミナ又はα−アルミナの1種又はそれ以上を更に含む請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
アミノ交換反応触媒の存在下に、エチレンジアミンを1種又はそれ以上の追加のエチレンアミンと反応させて1種又はそれ以上のエチレンアミンを得る請求項12に記載のプロセス。

【図1】
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【公表番号】特表2012−504612(P2012−504612A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530067(P2011−530067)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【国際出願番号】PCT/US2009/005472
【国際公開番号】WO2010/042160
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(591123001)ユニオン カーバイド ケミカルズ アンド プラスティックス テクノロジー エルエルシー (85)
【Fターム(参考)】