説明

不妊に関連する酸化ストレス治療のためのN−アセチルシステインアミド(NACアミド)

N−アセチルシステインアミド(NACアミド)を含むin vitro培養および/または受精培地は、細胞傷害およびin vitroで培養、受精および維持される精子、卵母細胞および胚の最終的な喪失に寄与する酸化ストレスおよびフリーラジカルの形成を軽減または予防する。in vitro培養および受精のためのNACアミドを含有する培地組成物は、卵母細胞の培養、初期の胚の培養および発達、精子の調製または培養および卵母細胞または精子の前処理において好適である。NACアミドを含有する組成物は、胚盤胞期まで生存胚の成長を補助する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、精子、卵母細胞および胚のin vivoおよびin vitroでの生存および機能の改善を促進するために、卵母細胞の質、受精および胚の生存率の低下を導く酸化ストレスを軽減するための抗酸化物質の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
本来、受精は、精子細胞が温血動物種(ヒトを含む)の女性/メス内に付着したのち、卵母細胞と結合、融着することにより起こる。この受精した卵母細胞は、次に、胚を形成するために分裂する。数十年間に渡り、補助生殖技術(assisted reproductive technology)の使用により、低い受精率の個体における治療のためにか、または他の場所または時期に使用するために精子、卵母細胞または胚を保管するために、科学者および臨床医がそれらに介在することが可能となっている。
【0003】
補助生殖の場合に使用される工程は、精漿または残骸などの精子を含まない成分から精子豊富な画分を取り出すために精子サンプルを洗浄する、さらに放出精液中の失活精子または白血球から健康な運動(遊泳)精子を分離する、後日使用または異なる場所にいる女性またはメスに輸送するために精子を凍結または冷蔵(保管)する、診断試験の培養用またはin vitro受精(IVF)または細胞質内精子注入(ICSI)などの治療的介入用精子を延長(extend)または希釈する、in vitro受精に使用するために女性またはメスからの卵母細胞の培養または凍結、および妊娠を確立するために女性またはメスに移植する前に胚を培養または凍結することを含む。
【0004】
工程の各ステップで、in vitro介入は、精子、卵母細胞および胚の正常な生存および機能を減少させる。多くの研究が、これらの工程を改善するために専念されてきたが、全体的な成功は限られたままである。例えば、子供の出産率は、試みられたIVFの20%未満である。さらに、通常半分またはそれ以下の精子細胞しか凍結プロセスにおいて残存しないため、ドナーからの凍結精子による妊娠率は、平均10から20%である。卵母細胞および胚も培養または凍結後、著しく阻害された機能を示す。特に、ヒトの卵母細胞における凍結プロセスでの残存は、非常に低いレベルである。よって、数十年間の研究にも関わらず、補助生殖技術、特に生殖細胞および卵母細胞の取扱い、培養および保管において、多くの改善の余地がある。
【0005】
精子採取に使用される一般的な手順は,精子細胞の洗浄である。補助生殖技術で使用する前に精子細胞を洗浄することは、様々な理由から重要である。精漿は、精子細胞に加え、サンプル中の精子細胞に有害な糖およびタンパク質を含む。また、凍結された精子サンプルは、特定の種の女性またはメス、特に鳥類およびヒトに授精する前に精子細胞から洗浄される必要のある冷凍保存培地を含む。全ての種において、冷凍保存培地は、解凍後の精子に脂質膜過酸化(LPO)および変性を生じる。一般的に、洗浄は、洗浄培地の希釈を介して精液のサンプルまたは解凍された精子の遠心分離を含み、これは、精子が豊富なペレットの収集を可能にする。非常に一般的な手順であるが、遠心分離法は、精子脂質膜過酸化および膜の破損を生じる可能性がある。
【0006】
精子洗浄プロセス後、またはそれに代わって、サンプルから運動能力のある精子を分離するために特定の手順が実行されてよい。精子サンプルは、生きた運動能力のある精子を損傷する可能性がある酵素を放出する失活および瀕死(dying)の精子を含む。さらに、サンプルは、健康な精子に有害な白血球、赤血球、および細菌を含む。精子分離は、診断または臨床的手順で使用するための生きた、健康な運動能力のある精子を取り出すことを含む。一般的に、精子は、運動能力のある精子が失活精子および残骸から泳ぎ離れること(精子の遊泳)を可能にする、密度勾配を通して精子を遠心分離する、または失活精子および残骸を結合するカラムを通して精子を通過させることにより分離される。これらの各技術にはそれぞれ不利な点がある。遊泳においては、少ない精子数しか回復せず、また長い培養期間を必要とする。現在の遠心分離法勾配試薬は、一般的に精子に有害であり、精子サンプルから勾配溶液を除去するために、追加の洗浄ステップが必要である。カラム方法は、運動能力のある精子の選択率が低く、完全射出精液からの精子数の回復が良くない。
【0007】
精子が洗浄または分離されると、次に、様々な使用のために、培養または保持培地に延長(または希釈)される。既存の精子培養技術は、運動能力のある精子の損失を生じ、また培養における時間経過中に精子DNAを損傷する。精子は、多くの種の女性またはメス内で何日も生存するが、培養での精子生存は、一般的に、in vivoで見られる期間の半分である。低い 質の精子は、培養でより短い期間しか残存しない可能性がある。この損傷の多くは、膜およびDNAの脂質過酸化または染色質の損傷による。精子は、精子分析および診断試験、IVF、配偶子卵管内移植、女性/メスへの受精、ICSIなどの補助生殖技術、および凍結保存培地前の保持で使用するために培地で延長される。延長または希釈された精子のこれらの各使用は、多少異なる基本培地の調製を必要とするが、全ての場合において、精子の生存は、女性/メスの生殖器官の外では最適以下である。
【0008】
同様に、卵母細胞および胚は、しばしば、in vivoの状態と比較すると、培養の状態において異常に(例えば、染色体数、細胞骨格形成など)発達する。さらに、現在の培養方法は高用量の動物タンパク質、例えば、血清を使用し、過剰サイズの胎児および子の出生時の合併症を生じる可能性がある。
【0009】
細胞支持層を使用する精子、卵母細胞および胚の共培養は、補助生殖技術の困難のいくつかを克服することができる。しかし、共培養は質が様々で、信頼度が変動し、支持細胞から生きている動物またはヒトに戻す配偶子または胚へ病原転移のリスクを加える。
【0010】
精子、卵母細胞および胚の保管は、商業的動物繁殖プログラム、ヒトの受精および精子ドナープログラム、および特定の疾患状態の処置において広範な重要性をもつ。例えば、精子サンプルは、精子産生を後に妨げる可能性のある癌または他の疾患と診断された男性のために凍結できる可能性がある。精子の凍結および保管は、絶滅危機のある種の保護の分野において重大である。これらの多くの種は精液を有し、それは、既存の方法では良好に凍結されない。一般の畜産において、凍結された雄牛精子での人工授精(AI)は、85%の乳用牛で使用される。商業的七面鳥の多くは、自然に交尾するには非常に困難であるため、ほとんどの七面鳥農家では、AIを必要とする。米国において、約6百万の七面鳥のメスが毎週授精される。しかし、採取した七面鳥の精子の既存の保管方法は 農家間で精子を運送するために必要な数時間でさえ精子の生存を支援できず、まして、長期凍結に対しては、より低い支援しかできない。これは、生殖を改善するための遺伝物質を保管または運送する能力を制限する。ヒトドナーのAIも、重度な男性不妊をもつカップルに使用されるが、ドナー精液を使用しての妊娠率は、自然な生殖で生じる妊娠の4分の1である。さらに、外科的授精が必要とされる可能性がある。
【0011】
全ての種からの精子を凍結するための現在の技術では、サンプルの精子細胞の約半分に、膜損傷およびその後の死を招く。この損傷の多くは、精子膜の脂質過酸化の原因となる活性酸素種によって発生する。これらの広範で重大な問題にもかかわらず、当該分野の技術の現状およびプロトコルは、過去15年間ほとんど変化がない。多様なニーズに対する凍結精子の使用の増加を考えると、精子の培養、凍結または保管の新しい方法および条件は、ヒトの生殖専門家にだけでなく動物生産者にも利点を提供するだろう。
【0012】
卵母細胞および胚の凍結も、絶滅危機のある種からの遺伝物質の保存、有益な家畜からの子孫産生の増加、または移植前の不妊カップルの胚の保持のために重要である。卵母細胞および胚を凍結する現在の方法は、通常、決して最適ではなく、発生の可能性は低い。実際、ヒト卵母細胞は、ほとんど正常に凍結されないため、女性の子宮に複数の胚を移植する必要があるが、これは、危険で高リスクな多胎妊娠数を増加させる。さらに、遺伝子治療後に得た胚のように、全ての種からのIVF胚または遺伝子的に改変した胚は、既存の凍結培地で非常に低い凍結後生存率を有する。これは、クローンの胚または、胚幹細胞(ESC)由来の胚を含む。
【0013】
in vitro受精および胚移植は、in vitroの卵母細胞および精子の受精と、その後女性/メスの体内に発達した胚を移植することを含む。1978年、イギリスで、Edwardsらによるin vitro受精後のヒト出産の最初の報告以来、および近年の発育技術の進歩により、本手順は、世界中で、急速に広範に使用されるようになった。例えば、日本において、in vitro受精は、今や、生殖不能において不可欠な治療法である。in vitro受精技術および手順の近年の進展にも関わらず、数ケースのみが実際に妊娠にいたる。一つの原因は、不妊男性患者の低い生殖能力のためかもしれないが、主な原因は移植卵母細胞の低着床率のようである(Mori,Munehideら、日本産科婦人科学会雑誌、45:397,(1993);Cohen,J.ら、VIIIth World Congress on in vitro Fertilization and Alternate Assisted Reproduction Kyoto,Sep.,12−15(1993),World Collaborative Report(1991))。
【0014】
技術要因に加え、培養中の胚の質の低下が、このような低着床率の原因のようである(Inoue,Masahito,臨床婦人科産科、48:148,(1994))。哺乳類卵母細胞は、爬虫類および鳥類の卵のアルブミンに対応する物質をもたないため、卵母細胞に保存された栄養分量は、自然と低い。よって、in vitro受精の早期の胚において、培養培地からの栄養分が透明帯を通して摂取されなければならない。in vitro 受精技術で従来使用されているHam’s F−10培地、MEM(最小必須培地)、Dulbecco’s MEMなどの化学的に定義された培地は、もとは、in vitro受精を支援するために発達されたものではなかった。しかし、これらの培地または改変された相当物は、組織培養で従来使用されており、よって、それらは、in vitroで培養された早期胚の栄養分の要求条件に必ずしも最適ではない。
【0015】
ヒト卵管液(HTF)培地は、ヒトのin vitro受精に適切な栄養分を含んだ培地として開発された。HTF培地は、ヒト卵管液の電解液組成物に近い組成物を含む(Quinn,PJ.ら、Fertility and Sterility,44:493(1982))。この培地は、商業的に入手可能であり、基本的に以前使用されていたHamのF−10培地と置換えられる。しかし、HTF培地は、主成分として電解質を、エネルギー源としてグルコースを含むため、本培地は、栄養分の組成において、アミノ酸を含むHamのF−10培地よりも改善しているわけではない。実際、HTF培地の使用にもかかわらず、胚着床率は増大されず、胚の質の改善は、改善されないままである。
【0016】
この不利を補正するために、熱処理により不活性化されている女性の血清を培地に添加することにより、培養する胚を維持する方法が使用されている。その血清は、動物細胞培養に必要な因子である栄養分としてタンパク質、淡水化物、脂質、ビタミン類およびミネラル類に加え、成長因子などを含む。しかし、そのような血清は、in vitro受精−胚着床プロセスにおいて、常に必要ではないことが報告されている(Menezo,Y.ら、Fertility and Sterility,42:750(1984))。実際、胚の成長は、女性の血清の添加により、抑制される可能性がある(Mehitaら、Biology of Reproduction,43:600(1990))。さらに、血清自体が採取困難であり、ウィルスなどにより汚染される危険があるため、女性の血清は、in vitro受精卵母細胞の培地の添加物として使用するのに適切ではない。
【0017】
フリーラジカルは、胚に対して著しい成長抑制作用をもつことが報告されている。これは、培養された胚の成長が、酸化ストレスにより、つまり、それによって、in vivoと比較してin vitroにおいて、細胞が酸素とより直接的に接触することにより抑制されているという学説に基づく(非特許文献1;非特許文献2)。よって、酸化ストレスの予防は、胚の成長を増進させる可能性がある。スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、エデト酸(EDTA)などの特定の成分が、酸化ストレスの作用を克服する試みとして培養培地に加えられている。(非特許文献3;非特許文献4)。
【0018】
さらに、卵管の上皮細胞(その効果的な要素は知られていない)を使用する共培養は、胚の成長に効果的(Xu,K.P.ら、Journal of Reproduction and Fertility,94:33(1992))であり、インスリン様成長因子などの成長因子は、直接、胚の成長を賦活する(Matui,Motozumiら、Honyudoubutu ranshi gakkaishi,11:132(19949)ことも報告されている。しかし、そのような共培養は、せいぜい培地の解毒作用に効果的であると報告されているだけで、胚が適切な栄養分を得るという証拠は得られていない(Bavister,B.D.,Human Reproduction,7:1339(1992))ことも報告されている。いかなるケースにおいても、in vitro受精のほとんどの従来の培地および既存の培地にスーパーオキシドジスムターゼ、EDTAなどの添加を含む添加物の添加方法は、in vitroでの成長の停止を部分的に予防するだけである。さらに、報告された培地の種類は、実際の胚の培養中、胚の成長段階に対する最適な培地は、各段階で適切に選択および交換されなければならないため、扱いに非常に不便である。
【0019】
よって、in vitro受精の分野における要求は、培養された卵母細胞、精子および胚が、ウィルス汚染がなく、in vitro培養環境下で、できるだけ長い間、細胞の生存率および機能を維持する栄養分および成分を含む、培養培地および環境を必要とすることである。そのような培地は、培養中の細胞でおよび細胞の周りで、酸化ストレスおよびフリーラジカルの形成を予防または軽減することにより、精子および卵母細胞の損傷を予防し、胚の発達が妨げられるのをを防止するべきである。培地は、in vitro受精−胚移植プロセス中の早期胚の成長とともに、精子および卵母細胞の処理および/または前処理にも適切であるべきである。理想的には、培地は、安全で、全ての早期胚の成長段階を維持出来る。
【非特許文献1】Whitten,W.,Advanced in the Biosciences(1971)6:129
【非特許文献2】Quinn,PJ.ら、Journal of Experimental Zoology(1978)206:73
【非特許文献3】Abramczuk,J.ら、Developmental Biology(1977)61:378
【非特許文献4】Nonozaki,T.ら、Journal of Assisted Reproduction and Genetics(1992)v9:274
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
卵母細胞および精子の生存率を安全に保護するするための、インキュベーション、培養培地および受精用製品を安全に補う新しい化合物と方法が、当該分野において、必要である。受精前および後の双方における卵母細胞および精子の生存と成熟のための、および結果として生じた胚の適切で健康な発達のための適切な環境を提供するために、in vitro受精の培養培地で使用する化合物および方法も必要である。
【課題を解決するための手段】
【0021】
(発明の要旨)
本発明は、卵母細胞成熟および受精中のインキュベーションおよび培養培地のための補充物、およびin vitro受精および後の早期前着床胚の発達後の胚培養のインキュベーションおよび培養培地のための補充物として、抗酸化物質N−アセチルシステインアミド(NACアミド)、またはその生理学的に許容される誘導体の使用を提供する。in vivoおよびin vitroの双方において、生殖細胞(精子および卵母細胞)、胚および受精卵形成の生存率および機能を改善するための方法および組成物において使用される、NACアミドを提供する。
【0022】
本発明は、精子、卵母細胞または胚に非毒性であり、in vitro取扱いおよび操作中それらの機能および生存を付加的に改善する、NACアミドまたは生理学的に許容される塩またはそのエステルを含む組成物、調合物、または製剤を提供する。NACアミド含有組成物は、自然受胎を試みるカップルによる使用のため、および、ヒトおよび動物での多様な補助生殖技術における使用のために、精子および卵母細胞機能を改善する。本発明はさらに他の関連する利点を提供する。
【0023】
本発明の一側面は、培養培地にNACアミドアミドまたは生理学的に許容される誘導体または塩またはそのエステルを含めるか、あるいは補充することによって、in vitro受精技術中に精子および卵母細胞の受精率を増加するための方法を提供する。哺乳類の胚の受精率を増加するためにも、NACアミドによる培地の補充が提供される。
【0024】
本発明の他の側面は、卵子および/または精子成熟、精子と卵母細胞間の受精および胚および受精卵の発達のための培養培地の成分として使用するNACアミドを提供する。胚移植前の移植用培養培地でのNACアミドの存在は、培養中に生じるフリーラジカルおよび酸化損傷を減少することにより、胚の形成、生存および発達を増大することができる。
【0025】
前記側面に関する他の側面において、本発明は、胚の生存率および胚の胚盤砲段階およびそれ以上の段階の発達の成功を増大するために、例えば、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)など、他の成分または因子と併用して使用されるNACアミドを提供する。
【0026】
他の側面において、本発明は、形質転換動物の胚および卵子の産生および維持に関与する方法および組成物に使用するためのNACアミドを提供する。本側面によると、形質転換動物の卵子および胚に提供されたNACアミドは、in vivoでだけでなくin vitro培養中も形質転換生物の完全な発生率を改善する。
【0027】
また他の側面において、本発明は、in vitroおよびin vivoで細胞成長およびクローンを補助するため、および、ヒトを含む動物へ移植した幹細胞または他の生殖細胞を成長させ、補助するためNACアミドを含む方法および組成物を提供する。
【0028】
本発明のさらなる側面は、移植後の酸化ストレスの状況を予防または軽減するための抗酸化物質を提供するために、子宮に胚を移植した後、女性/メスにより服用されるNACアミドを含む生理学的または医薬的に許容される組成物または調合物を提供する。
【0029】
本発明の他の側面は、精子産生および発達および受精全般におけるフリーラジカルまたは酸化ストレスの有害作用を軽減するために、健康な精子の発達を可能にする抗酸化物質を提供するために、男性/オスにより服用されるNACアミドを含む生理学的または医薬的に許容される組成物または調合物を提供する。
【0030】
また本発明の他の側面は、ヒトを含む動物における不妊に関連する酸化ストレスを予防、軽減、拮抗または緩和するために、NACアミドまたはその生理学的に許容される誘導体または塩またはエステルを含む医薬的に許容される組成物を提供する。
【0031】
他の側面において、本発明は、早期産児の生存および発達に有害な影響を及ぼすヘムオキシゲナーゼおよびビリルビンの過剰から生じる酸化ストレスを予防、軽減、拮抗または緩和するために、NACアミドまたはその生理学的に許容される誘導体または塩またはエステルを含む医薬的に許容される組成物を提供する。
【0032】
他の側面において、本発明は、動物において受精の可能性を増加するための非殺精子潤滑剤を提供する。潤滑剤は、NACアミドまたはその生理学的に許容される誘導体または塩またはエステル、および非殺精子潤滑化合物を含む。潤滑化合物は、グリセリン、メチルセルロース、プロピレングリコール、植物油またはワセリンまたはグリセリンとワセリンの組み合わせ、または酸化ポリエチレン、カルボキシポリメチレンナトリウムおよびメチルパラベンの組み合わせを含んでよい。潤滑剤は、性交前または人工授精前に膣に投与または配置することによりin vivoで使用、または容器に射精する前にオスの性器に潤滑剤を塗布または潤滑剤を含む容器へ精子を採取するなどによる精液採取中に使用されてよい。潤滑剤は、生殖手順前に医療機器を潤滑するために使用されてもよい。
【0033】
本発明により提供されたさらなる側面、特徴および利点は、以下の本明細書の詳細な説明および例示により明らかになるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
(発明の詳細な説明)
本発明は、in vitro受精の培地組成の補充物として、効果的な抗酸化物質、グルタチオンN−アセチルシステインアミド(NACアミド)、またはその生理学的または医薬的に許容される誘導体または塩またはエステルの使用を含む。このようなNACアミド補充培地は、特に、卵母細胞、精子、受精した卵母細胞である初期の胚の培養、または受精前の卵母細胞または精子の前処理に適用される。本発明によると、例えば、水溶性のNACアミドなど、NACアミドを含む組成物は、培地に添加される前に調製および濃縮されてもよい。濃縮調製は、培地に添加する時、または培地に添加する前に希釈される。NACアミド、またはNACアミドまたはその生理学的に許容される塩またはエステルを含む調製物は、初期の胚の成長の刺激および質の安定化に有効であり、in vitroの初期の胚の培養および正常な発達に適している。
【0035】
グルタチオンN−アセチルシステインアミド(NACアミド)、すなわちN−アセチルシステインのアミド型(NAC)は、新しい低分子量チオール抗酸化物質であり、Cu2+キレートである。NACアミドは、フリーラジカルのスカベンジャーとして作用し、細胞損傷に対して保護作用を提供する。哺乳類の赤血球(RBC)において、NACアミドは、tert−ブチルヒドロキシペルオキシド(BuOOH)誘発細胞内酸化を阻害、またはRBCs中のBuOOH誘発チオール還元およびヘモグロビン酸化を遅延することを示す。外部から適用されたNACアミドによるチオール還元RBCsの回復は、NACを使用して見られるそれより非常に大きかった。NACと違い、NACアミドは、酸化からヘモグロビンを保護した(L.Grinbergら、Free Radic Biol Med.,2005 Jan 1,38(l):136−45)。無細胞系において、NACアミドは、酸化グルタチオン(GSSG)と反応し、還元グルタチオン(GSH)を生成することを示した。NACアミドは、細胞膜を容易に透過し、細胞内GSHを補充し、細胞の酸化還元装置に取入れることにより、酸化から細胞を保護する。中性カルボキシ基のため、NACアミドは、増強された脂溶性の性質および細胞透過性を有する。(例えば、D.Atlasらの米国特許番号5,874,468を参照)。NACアミドは、血液脳関門の通過とともに、細胞膜の通過においてもNACとGSHより優れている。
【0036】
NACアミドは、タンパク質とDNAの合成、輸送、酵素活性、代謝およびフリーラジカル媒介の損傷から細胞を保護することを含む多くの重要な生物学的現象において、直接的または間接的に機能し得る。NACアミドは、細胞内の適切な酸化状態の維持の役割を果たす、強力な細胞性抗酸化物質である。NACアミドは、ほとんどの細胞により合成され、酸化された生物学的分子をその活性還元形態に再生することができる。抗酸化物質として、NACアミドは、GSH以上ではないにしても、GSHと同程度に有効であり得る。
【0037】
本発明のある実施形態において、卵母細胞培地をNACアミドで補充することにより、生殖細胞、特に、卵母細胞のGSHの細胞内濃度を増大するための方法を提供する(実施例1)。NACアミドは、培地に添加される組成物、調合物または製剤に含まれてよいことが理解されるであろう。NACアミドおよび生理学的に許容される誘導体、塩またはそのエステルは、本発明によると、使用に適している。NACアミドは、水溶性でもある。NACアミドがグルタチオンの細胞内濃度を増加できることは、細胞内グルタチオン濃度の増加が酸化ストレスを軽減し、よって受精プロセスおよび初期の胚発達を増強するため、本発明の利点である。本発明によると、NACアミド補充は、in vitro系で、卵母細胞の質の低下、受精率の低下および胚の生存率の低下を生じる酸化ストレスを軽減するように作用する。
【0038】
用語「胚」とは、胚盤胞までの受精後のヒトおよびヒト以外の哺乳類を含む生物の成長の初期段階を示す。胚は、未分化の全能細胞を持つことにより特徴づけられる。それに対し、個体の体細胞は、全能細胞ではない身体の分化した細胞である。
【0039】
他の実施形態において、本発明は、特に、卵母細胞(ova)または初期の胚(受精した卵母細胞)に適用される、または卵母細胞または精子の前処理に適用される、in vitro受精のためのNACアミドまたは生理学的に許容される塩またはそのエステルを含む培地を含む。特に、培地組成は、成長の刺激および初期の胚の質の安定化に有効であり、in vitroの初期の胚の培養に適している。
【0040】
他の実施形態において、本発明は、精子が卵母細胞への増大した受精能力を有する、精子機能を改善する方法を含む。この機能は、広範な測定可能な細胞機能により試験されてよい。そのような試験可能な機能は、精子の運動性、精子の生存能力、精子膜の完全性、in vitro受精、精子染色質の安定性、培養中での生存時間、子宮けい管粘液の透過性および精子透過試験や半透明帯検査を含む。精子が、コントロール(すなわち、PCAGHを含まないで実行された試験)と比較して、PCAGHの使用で著しく良く機能した場合(p<0.05)、精子は、組成または方法に曝露された後、機能を改善したとされる。精子の機能を判定するために使用されてよい多様な代表的な試験の説明は、J.E.Ellingtonらの米国特許番号6,539,309に開示されており、本明細書の実施例1に記載されている。
【0041】
NACアミドが受精前、受精中または受精後,酸化ストレスおよびフリーラジカル形成を軽減するために潤滑剤に調合されるこれらの実施形態において、潤滑剤のベースは、非殺精子潤滑化合物である。このような潤滑剤は、ワセリン、植物性油、グリセリン、ポリカルボフィル、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、シリコン油、カルボマー(例えば、カルボマー934)、アルギン酸、メチルパラベン、パーム油、ココアバター、アロエベラ、他の植物油、アルギン酸プロピレングリコール、単塩基(Warner−Chilcott)、鉱油、酸化ポリエチレン、カルボキシポリメチレンナトリウムおよびメチルパラベンの組み合わせなどを含む。例えば、50%がワセリン/50%グリセリンのベース潤滑剤が適切である。pH安定剤、抗酸化物質などの追加の成分も添加されてよい。水酸化ナトリウムは、好ましくは、pHを7.4にするように添加される。他のpH安定剤には、EDTAまたは双性イオン緩衝液(例えば、TES、PIPES、MOPS、HEPES)を含む。他の抗酸化物質またはフリーラジカルスカベンジャー、例えば、ビタミンEが添加されてよい。特定の実施形態において、シリコン油またはポリビニルアルコールが添加される。
【0042】
潤滑剤は、好ましくは、非刺激性で、適用が容易であることである。ゲル、泡、クリーム、ゼリー、坐剤(Kazrmiroskiの米国特許番号4,384,003を参照)などの形であってよい。潤滑剤は、潤滑剤のチューブおよび膣内適用、例えば性交または人工授精などの際使用する塗布具を含むキットにパッケージされていてよい。様々な方法で、精子ドナーからの精子の採取中に使用されてもよい。さらに潤滑剤は、多様な補助生殖技術および診断手順で使用されてよい。例えば、潤滑剤は、逆行精子採取(retrograde sperm collection)用に膀胱に挿入するためにカテーテルをコーティングするために使用されてよい。胚移植、人工授精または内視鏡、造影または生体組織切片などの診断手順を実行する前にカテーテル、ピペットまたは手を潤滑するために使用されてよい。潤滑剤は、精子採取、性交、補助生殖技術などに対して、いずれの動物種に使用されてもよい。動物は、これに制限されるものではないが、ヒト、ウシ、ウマ、イヌ、ヒツジ、トリ、ネコおよび他の様々な外来種または希少種(例えば、ゾウ、ライオン、サイ)を含む。
【0043】
本発明の他の実施形態において、改善された機能を有する精子を得るための精子を延長(例えば、精子を希釈または懸濁)するための方法を提供する。精子の改善された機能とは、精子が卵母細胞へ受精する可能性が高くなることを意味する。この可能性は、実施例2で説明されるように、運動性、生存率、生存時間、膜安定性、脂質過酸化損傷のレベル、染色質安定性、粘液透過、卵母細胞受精または後の胚発達などにより判断されてよい。同様に、卵母細胞の改善された機能とは、精子が卵母細胞へ受精し、その後の正常な分化をする可能性が高くなることを意味する。胚の改善された機能は、正常な発達および子孫産生の可能性が高くなることを意味する。卵母細胞および胚におけるこの可能性は、染色体の数、細胞数、細胞骨格形成および代謝活性を評価することにより判断される。改善された機能は、適切なコントロールと比較した様々な試験により判断されるように、培地または潤滑剤中のNACアミドの存在の結果として増強された性能、精子、卵母細胞または胚の生存率および生存も意味してよい。
【0044】
精子を延長することは、分離または洗浄後、精子ペレットを再懸濁するため、精液サンプルを希釈するため、精子の培養を希釈するためなどに使用される。この方法で、精子は、培養、授精、本明細書に説明される受精可能性の試験、in vitro受精、凍結、子宮内精液注入、子宮けい部キャップ授精などを含む様々な手順に適切な培地またはNACアミドを含む培地に配置される。精子は培地に添加されるか、培地が精子に添加されてもよい。
【0045】
他の実施形態において、本発明は、約室温(例えば、20℃)から約体温(例えば37℃または39℃)の温度範囲で保存または培養中の精子の生存を増大するための延長精子の培養方法を含む。これは、毒性スクリーンテストでの精子の培養、および性判別された子を産出するため、フローサイトメトリーにより、X染色体含む画分とY染色体を含む画分とに分けるための精子の保管を含む。さらに、精子延長培地は、直接授精、冷凍保存、および卵に注入するために差替え用ピペットで取れるように運動能力のある精子の速度を低下させるために、より粘性の培地を必要とする細胞質内精子注入(ICSI)用の精子を調合するために使用される。サンプル培地は、これに制限されるものではないが、TES、HEPES、PIPESなどの双性イオン緩衝液を含んでよい平衡塩類溶液、重炭酸ナトリウムなどの他の緩衝液、TALPまたはHTFを含む。追加の成分は、例えば、アルブミン、オビダクチン(oviductin)、ゼラチン、ヒアルロン酸、牛乳、卵黄、ホルモン、追加のフリーラジカルスカベンジャー(例えば、メラニン、ビタミンE誘導体、チオレドキシン)、酵素(例えば、SOD、カタラーゼ)、成長因子(例えば、EGF、IGF、PAF、VIP)、重合体分子(例えば、ヘパリン、デキストラン、ポリリジン、PVPまたはPVA)などの高分子を含んでよい。さらに、そのような培地は、カフェイン、卵胞液、カルシウム、オキシトシン、カリクレイン、プロスタグランジン、胸腺抽出物、ペントキシフィリン、2−デオキシアデノシン、イノシトール、フラボノイド、血小板活性化因子、ハイポタウリン、コンドロイチン硫酸およびメルカプトエタノールなどの精子運動能賦活剤(sperm motility stimulant)を含んでよい。カフェイン(例えば、5mM)およびペントキシフィリン(例えば、1mM)は、適切な刺激薬である。抗生物質および抗真菌物質もふくまれてよい。
【0046】
他の実施形態において、本発明は、in vitro培養系で、卵母細胞、胚または胎児幹細胞(ESC)の生存および成熟を増大するための方法を含む。卵母細胞、胚またはESCは、多様な診断および毒物試験、in vitro受精に使用するためか、または子孫の繁殖のために培養される。これらの方法は、NACアミドまたは生理学的に許容される誘導体または塩またはそのエステルを含む培地と、卵母細胞、胚またはESCを含むサンプルとを接触させることを含む。
【0047】
本発明の方法および組成物にしたがって、NACアミドは、胚盤胞期以降へ胚を発達させる生存率および成功を増大させるために、他の成分または因子、例えば、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)と併用して投与、供給または使用される。
【0048】
他の実施形態において、NACアミドは、例だが、それに限定されないものとしてブタ、ヒツジ、ヤギおよびげっ歯類などのヒト以外の形質転換動物を含む形質転換動物の胚および卵子の産生および保持に関する方法および組成物に使用される。形質転換動物の卵子および胚は、一般的に、自然に生成されたGSHは低レベルであり、完全な発生の成功率は低い。よって、本実施形態によると、形質転換動物の卵子および胚に供給されたNACアミドは、in vivo培養中だけだはなくin vitro培養において、形質転換生物の完全な発生率を向上させ、それにより完全な条件(full term)の形質転換動物を達成することにおける成功率を増大させる。本発明は、例えば、ヒトおよび動物アミノ酸、異種タンパク質、例えば、凝固因子、成長因子、抗癌因子等を生成する能力を有する形質転換動物の産生も可能にする。本発明により産生された形質転換動物も、ヒト移植のための抗原を含まない臓器の供給源として使用されてよい。
【0049】
他の実施形態において、本発明は、ヒトを含む動物への幹細胞または他の生殖細胞移植を成長および補助し、また、in vitroおよびin vivoでの細胞成長およびクローニングを補助するためのNACアミドを含む方法および組成を含む。
【0050】
他の実施形態において、本発明は、新生仔の生存および発達に有害な影響を及ぼすヘムオキシゲナーゼおよびビリルビンの過剰から生じる酸化ストレスを予防、軽減、拮抗または緩和する手順で使用される、NACアミド、または生理学的に許容される誘導体または塩またはそのエステルを含む医薬的に許容される組成物を含む。新生仔へのNACアミドの投与は、さらに、抗酸化剤の防護を向上および補充すること、および感染および炎症への感受性の増大を予防することにより、早期産児および新生仔に気管支肺形成異常の改善に役立ち得る。そのような新生児および早期産児に提供されたNACアミドは、アポトーシスおよびその消耗性かつ悲惨な作用も予防できる。
【0051】
本発明によると、治療目的のために、NACアミドは、当業者に理解されるであろう、治療または療法に適したいくつかの経路により投与されてよい。NACアミドの投与経路および様式の非限定の例は、皮下、静脈内、筋肉内および胸骨内を含む、非経口経路の注射を含む。他の投与様式は、これに制限されるものではないが、経口、吸入、局所、鼻腔内、クモ膜下、皮下、眼内、膣内、経肛門、経皮、経腸、カニューレ注入、連続注入、徐放および舌下経路を含む。本発明の一実施形態において、NACアミドの投与は、内視鏡手術により仲介されてよい。脳に影響を及ぼす様々な神経系疾患または傷害の治療のために、NACアミドは、脳室を裏打ちする組織に導入されてもよい。ほとんど全ての脳領域の室系は、疾患または傷害により影響を受ける脳の異なる領域への容易な接近を許容する。例えば、治療において、カニューレおよび浸透性ポンプなどの装置は、医薬的に許容される組成物の成分としてのNACアミドなどの治療化合物を投与できるように移植されてよい。NACアミドの直接注入も含まれる。例えば、多くの脳領域へこれらの室が近接していることは、NACアミドによる治療部位またはその周辺に、分泌または誘導された神経性物質の拡散につながる。
【0052】
例えば、注入投与などの服用者への投与において、水溶性NACアミドを含むよう調製された組成物または調合物は、一般的に、無菌溶液または懸濁液中に存在する。代替的に、NACアミドは、防腐剤、安定剤および溶液または懸濁液を服用者の体液(つまり、血液)と等張性にするための物質を含み得る、医薬的および生理学的に許容される水溶性または油性ビヒクル中で再懸濁されてよい。使用に適した賦形剤の非限定の例は、水、リン酸塩緩衝剤食塩水(pH7.4)、0.15M塩化ナトリウム水溶液、デキストロース、グリセロール、希釈エタノール等、およびその混合物を含む。例示的な安定剤は、ポリエチレングリコール、タンパク質、糖類、アミノ酸、無機酸および有機酸であり、単一でか、または混合物のいずれかで使用されてよい。
【0053】
局所的投与におけるNACアミドを含む調製物は、これに制限されるものではないが、ローション、軟膏、ゲル、クリーム、坐剤、ドロップ、液体、スプレーおよびパウダーを含んでよい。NACアミドは、パッドまたはスポンジに吸収された液体、ゲル、クリームおよびゼリーの形態で粘膜に投与されてよい。従来の医薬担体、水溶液、パウダーまたは油ベース、増粘剤などは、必須または所望されてよい。経口投与におけるNACアミドを含む組成物は、パウダーまたは顆粒、水または非水溶性媒体中の懸濁液または溶液、サシェ剤(sachet)、カプセルまたは錠剤を含む。増粘剤、希釈剤、芳香剤、分散助剤、乳化剤または結合剤が所望される可能性がある。非経口投与用の調製物は、これに制限されるものではないが、無菌溶液を含み、またそれは、緩衝液、希釈剤および他の適切な添加剤も含むことができる。
【0054】
NACアミドの投与量、分量または数量および使用される投与経路は、個体ベースで判断され、当業者に公知の類似したタイプの適用または適応症で使用される量と対応する。当業者により理解されるように、投与量は、重度および治療される状態の反応に依存するが、通常、数日から数ヶ月に及ぶ治療経過において、または回復が効果的または疾患の状態の減少が達成されるまで、1日一回以上の投与である。当業者は、最適な投与量、投与量の方法および反復数を容易に判断できる。例えば、経口投与量形態の医薬調剤は、少なくとも25〜500mg/用量と等価な量で、または少なくとも50〜350mg/用量と等価な量で、または少なくとも50〜150mg/用量と等価な量で、または少なくとも25〜250mg/用量と等価な量で、または少なくとも50mg/用量と等価な量で、NACアミドまたは医薬的に許容される塩、エステルまたはその誘導体を含むことができる。NACアミドは、ヒトおよびヒト以外の哺乳類の双方に投与される。よって、ヒトおよび獣医医療の双方に適用される。
【0055】
NACアミドの適切なエステルの例は、メチルエステル、エチルエステル、ヒドロキシエチルエステル、t−ブチルエステル、コレステリルエステル、イソプロピルエステルおよびグリセリルエステルからなる群から選択される、アルキルおよびアリールエステルを含む。
【0056】
一般的に精子を延長するか、または精子、卵母細胞、胚もしくはESCを培養するのに適した培地は、M199、合成卵管液、PBS、BO、Test−yolk、Tyrode’s、HBSS、Ham’s F10、HTF、Menezo’s B2、Menezo’s B3、Ham’s F12、DMEM、TALP、Earleの緩衝塩、CZB、KSOM、BWW培地およびemCare培地(PETS、Canton、Tex.)などの平衡塩類溶液である。ある実施形態において、M199培地が卵母細胞の培養に使用される。ある特定の実施形態において、TALPまたはHTFが精子培養の培地に使用され、また、CZBが胚培養の培地に使用される。
【0057】
卵母細胞または胚の培地中のNACアミドの濃度は、必要に応じて、0.001〜15%または0.001〜10%または0.001〜5%または0.01〜5%または0.05〜1%または0.05〜0.5%または0.1〜5%または0.1〜1%の範囲である。任意に、アミノ酸(例えば、グルタミン酸)などの他の添加剤が存在するかもしれない。一般的に、添加剤は、これに制限されないが、高分子、緩衝液、抗生物質を含み、受精を達成させる場合は、精子刺激剤を含む可能性がある。ホルモンまたは他のタンパク質も添加されてよい。そのようなホルモンおよびタンパク質は、黄体形成ホルモン、エストロゲン、プロゲステロン、卵胞刺激ホルモン、ヒトじゅう毛性性腺刺激ホルモン、成長因子、卵胞液およびオビダクチン、アルブミンおよびアミノ酸を含む。一般的に、培地は、約1%から20%の血清も含む。好ましくは、血清は、卵母細胞または胚の供給源と同じ動物の供給源に由来する。精子、卵母細胞または胚は、一般的に、そのような培地で、37℃の加湿気中、5%のCOで培養される。培養物は、体細胞、一般的に照射された細胞、培養細胞または培養中で制限された寿命をもつ細胞(例えば、胸腺細胞)を含む支持層をさらに含んでよい。
【0058】
他の実施形態において、本発明は、冷蔵、冷凍またはガラス化(vitrified)状態保存から生じる、機能的な精子の損失を減少させるため、卵母細胞の細胞損傷を減少させるため、または胚もしくはESC(幹細胞)への細胞損傷を減少させるための方法を含む。本方法は、損失または損傷を減少するのに有効な量でPCAGHを精子、卵母細胞、胚またはESCを含むサンプルと混合し、サンプルを冷蔵、冷凍またはガラス化状態で保存することからなる。
【0059】
NACアミドは、精子、卵母細胞、胚、およびESCの冷凍保存培地における添加剤であってよい。凍結防止培地は、基本的に、滴下で細胞にゆっくり添加される。このような凍結防止培地は、透過性および不透過性化合物を含む。最も一般的には、DMSO、グリセロール、プロピレングリコール、エチレングリコールなどが使用される。他の透過剤は、プロパノジオール、ジメチルホルムアミドおよびアセトアミドを含む。不透過剤は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリジン、不凍性の(anti−freeze)魚もしくは植物タンパク質、カルボキシメチルセルロース、血清アルブミン、ヒドロキシエチルスターチ、フィコール、デキストラン、ゼラチン、アルブミン、卵黄、乳製品、脂質小胞またはレシチンを含む。添加されてよい補助化合物は、糖アルコール、単糖類(例えば、スクロース、ラフィノース、トレハロース、ガラクトースおよびラクトース)、グリコサミノグリカン(例えば、ヘパリン、コンドロイチン硫酸)、ブチル化ヒドロキシトルエン、界面活性剤、フリーラジカルスカベンジャー、追加の抗酸化物質(例えば、ビタミンE、タウリン)、アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン酸)およびフラボノイドおよびタキソール(好ましくは、0.5〜5μm)を含む。精子凍結には、グリセロールが好まれ、卵母細胞、胚またはESCの凍結には、エチレングリコールまたはDMSOが好まれる。一般的に、グリセロールは、3〜15%で添加される。他の適切な濃度は、既知の方法および試験を使用して、容易に判断される。約0.1〜5%の範囲の濃度で、他の薬剤が一般的に添加される。ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ウシ胎仔血清、卵黄、スキムミルク、ゼラチン、カゼインまたはオビダクチンなどのタンパク質も添加されてよい。
【0060】
凍結防止培地(例えば、保存のため)での細胞の懸濁後、容器に蓋をして、それから、冷蔵または凍結する。手短に、冷蔵の場合、1時間または温度が4℃に達するまで、サンプルを水を入れた容器に入れ、冷蔵庫に置く。次に、サンプルを冷却パックを入れたスチロフォーム(styrofoam)に入れ、精子の場合、翌日、授精用に輸送される。サンプルを冷凍する場合、冷たいサンプルは、クライオバイアルまたはストローに等分して入れ、1〜2時間、蒸気相の液体窒素に入れてから、プログラム可能なコンピュータ化された冷凍庫に長期保存または凍結のために液体窒素の液相に浸す。冷凍サンプルは、37℃の水浴で暖めることにより解凍され、直接、授精されるか、授精前に洗浄される。他の冷却および凍結プロトコルが使用されてもよい。ガラス化は、糖類またはフィコールなどを使用して卵母細胞または胚の脱水処理を含む。卵母細胞または胚は、次に、凍結防止物質に添加され、直ちに液体窒素に入れられる。
【0061】
本発明の方法および組成物にしたがって、精子、卵母細胞または胚は、上述のように調製および保管されてよい。冷蔵は、一般的に、短期間保存に適切な手段であり、凍結およびガラス化は、一般的に長期または短期保存に適切な手段である。
【0062】
本発明の組成物および方法は、動物の受精能を増大させる。これらの方法は、一般的に、ヒト、ウシ、イヌ、ウマ、ブタ、ヒツジ、トリ、およびげっ歯類などを含む、多くの種に適用できる。受精が所望されるときはいつでも役立つが、本発明は、受胎の可能性を増加するために受精機能不全をもつ動物およびヒトに、特に使用される。このような機能不全は、低精子数、精子の運動性の低下および精子の異常形態を含む。これらの機能不全に加え、本発明の方法および組成物は、人工授精手順に役立つ。しばしば、商業的繁殖において、オスおよびメスは、地理的に遠隔であり、授精のために精子の輸送を必要とする。精子のサンプルの獲得と授精の間の時間が長いため、冷蔵または冷凍状態の輸送が必要である。さらに、特に価値のある、または希少価値のある動物の場合、長期保存が所望されるかもしれない。ヒトにおいて、地理的な遠隔または時間を考慮して、精子の保存が必要になり得る。放射線治療が治療の一部である疾患をもつ男性、または精管切除術前の男性は、将来の使用のために、精子を保管することを所望し得る。冷凍保存後、生殖細胞は、しばしば、最終用途中、培養される。培養中の生殖細胞の生存および健康は、NACアミドを培養および/または冷凍保存培地に添加することにより向上させることができる。
【0063】
本発明による潤滑剤は、精子採取、性交および人工授精に関わる全ての場合において役立つ。現在、精子の採取は、市販の潤滑剤および唾液の殺精子性質のため、潤滑剤を使用せずに行われる(Goldenbergら、Fertility and Sterility26:872−723,1975,Scoeman&Tyler,J.Reprod.Fert.2:275−281,1985,Millerら、Fert.andSteril.61:1171−1173,1994)。精子機能向上および受精の可能性の増加のため、NACアミドを含む非殺精子潤滑剤の使用は、ドナーが不快感を持たないように所望される。そのため、潤滑剤は、コンドームまたはカテーテルまたはバイアルなどの他の採取器具に適用される。不妊カップルも、しばしば潤滑剤を必要とする。しかし、潤滑剤は、殺精子性のため、使用を推奨しない。これらの場合、アプリケータの使用するか、あるいは使用せずに膣内潤滑剤を適用することが望ましくかつ有益であり得る。なぜなら、精子機能が増大され得るからである。同様に、潤滑剤は、受胎の機会を改善するため、人工授精前に膣内に適用されてよい。
【0064】
NACアミドによる培養、受精および成熟培地の補充は、卵母細胞、精子および胚に、体外受精および胚発達前/中/後、および女性/メスへの着床前、培養中での長期生存率、残存性、正常性および機能を可能にする環境を提供する。NACアミドがGSHおよびNACなどの他の抗酸化物質より優れていることは、本明細中の実施例1により支持される。胚の成熟培地の補充物としてのNACアミドの使用を含む本発明は、コントロールの補充されていない培地と比較して(実施例1)、胚が発達を続け、胚盤胞期まで機能を向上することを可能にする。
【0065】
以下の実施例は、本発明をさらに説明し、いずれも本発明を制限するものではない。
【実施例】
【0066】
(実施例1)
本実施例は、受精および胚発達の多様な尺度およびGSHの細胞内濃度に対する、ブタの卵母細胞成熟、受精および胚培養中のインキュベーションおよび培地へのNACアミド、グルタチオン(GSH)およびN−アセトシステイン(NAC)を補充することの作用の評価を説明する。
【0067】
実験計画:3つの試験を実施した。各試験は、治療群(各4つの治療群毎に合計90の卵母細胞)ごとに30のブタ卵母細胞を使用した。卵母細胞は、Trans Ova Genetics,Sioux City,IAから購入した。治療群は、1)コントロール(抗酸化物質の補充なし)、2)GSHの補充(1.0mM)、3)NACの補充(1.0mM)、および4)NACアミドの補充(1.0mM)である。
【0068】
化学物質:全ての化学物質で、特に記載されていないものは、Sigma Chemical Company(St.Louis,MO)から購入し、胚グレードの質である。NACアミドは、Dr.Glenn Goldsteinから供給された。NACアミドは、例えば、D.Atlasらの米国特許第6,420,429号に記載のように調製されてよく、その内容は、本明細書に参照として援用される。
【0069】
In vitro成熟;卵母細胞は、鉱油(Specialty Media,Phillipsburg,NJ)下、39℃の5%CO環境でEarle塩、0.01U/mLのLHとFSH、10ng/mLのEGF、抗生物質、10%のウシ胎仔血清を用いて、組織培養の培地199で20〜24時間成熟させ、それから、さらにホルモンなしで20〜24時間成熟させた。
【0070】
卵母細胞のin vitro受精(IVF):卵丘細胞を0.1%のヒアルロニダーゼを用いて攪拌して剥がし、洗浄して、鉱油を重層したトリス受精培地(113.1mMのNaCl、3mMのKCl、7.5mMのCaCl・2HO、20mMのTris,11mMのD(+)グルコース、5mMのピルビン酸ナトリウム、1mg/mLのBSA、2mMのカフェイン)に設置し、冷凍解凍された精子を2000精子/卵母細胞の濃度で添加した。生殖細胞を、約6時間、39℃の5%CO環境でインキュベートした。
【0071】
In vitro受精パラメータ評価:受精は、48時間、室温で、エタノール中の25%(v:v)酢酸を用いて顕微鏡スライドに卵母細胞を固定して、IVFの12時間後に分析した。卵母細胞は、45%(v:v)酢酸中の1%のオルセインで染色し、400×の拡大倍率で、位相差顕微鏡を使用して検査した。
【0072】
In vitro培養:推定上の受精卵を洗浄し、48時間、39℃の5%CO環境で、鉱油を重層したNCSU−23培地(108.73mMのNaCl、4.78mMのKCl、1.19mMのKHPO、1.19mMのMgSO・7HO、5.5mMのグルコース、1mMのグルタミン、7mMのタウリン、5mMのヒポタウリン、25.07mMのNaHCO、1.7mMのCaCl・2HO、75μg/mLのペニシリンG、50μg/mLのストレプトマイシン、4mg/mLのBSA、pH7.4)でインキュベートした。48時間後、最初の細胞分裂をした胚は、IVFの144時間後の胚盤形成まで上述と同様の方法で、新しいNCSU23培地に設置した。
【0073】
グルタチオン試験:卵母細胞をPBSで洗浄し、冷凍し、リン酸中で、平滑ガラス棒を使用して破砕した。試験は、以前に記述された(B.D.WhitakerおよびJ.W.Knight,2004,Theriogenology,62:311−322)ように実施し、GSH量は、GSH濃度対吸収変化率の標準曲線を使用して決定した。
【0074】
表1は、pmolで表される卵母細胞ごとの細胞内GSH濃度を要約する。NACアミドでの補充は、コントロールと比較して、細胞内GSH濃度において2.2倍の増加を生じた。試験した補充物のうち、NACアミドは、GSH自体での補充と比較して、細胞内GSHにおいて40%の増加を生じ、NACの補充と比較して15%の細胞内GSH濃度の増加を生じた。
【0075】
【表1】

NACアミドおよびNACは、コントロールより有意に高い(P<.05)。NACアミドは、GSHより有意に高い(P<.05)。
【0076】
受精パラメータは、IVFが完了(図1、*前核を示す)してから12時間後、各治療群からの推定上の受精卵の核染色サンプル(n=4)により主観的に検査した。予備分析において、ほんの少数の受精卵のみを染色に供した。なぜなら、本明細書で記述された研究の意図は、2細胞および胚盤胞期に発達を継続した受精卵の数を評価したからである。本分析は、単に、明らかな異常が発生しているかどうかを確認するためであった。GSH、NACまたはNACアミドでの培地の補充は、予備的に核染色に供した少数の受精卵に基づく受精現象において、いかなる明確な変化もなかった。
【0077】
グルタチオンは、IVF後のオス前核を発達させる卵母細胞−精子複合体を促進するという文献の報告とともに、卵母細胞のグルタチオン濃度の増加が多精子受精の発生率を減少させるという、以前の所見(B.D.WhitakerおよびJ.W.Knight,2004,Theriogenology,62:311−322)に基づき、NACアミドは、これらのプロセスにおいて、有益な役割を果たすことは、意を強くするに足りる。
【0078】
残りの受精卵を、それぞれの培地で胚盤胞期までの発達(148時間)を通して培養し、それらの発達および生存経過を記録した(表2)。培地へのNACアミドの補充は、受精卵の2細胞期への発達を増強し、さらに、胚盤胞期(in vitro分析の最終ポイント)に発達を続けた2細胞期に達する胚の最終パーセンテージを上げるのに効果があった。
【0079】
【表2】

NACアミドは、2細胞期(P<.05)および胚盤胞期(P<.10)に発達した胚の著しい%増加を生じた。
【0080】
実施例1の研究結果は、NACアミドでの培地の補充が、グルタチオンの細胞内濃度を著しく増加したことを示している。このことは、生物学的に重要な知見である。なぜなら、細胞内グルタチオン濃度の増加が酸化ストレスを軽減し、それによって受精プロセスおよび初期の胚発達を増強することを示す充分な証拠が存在するからである。本実施例で示される知見は、NACアミドでの培地の補充が、2細胞胚になるために分裂した受精卵のパーセンテージを増加させたことを立証する。最も重要な点は、NACアミドで補充された培地で培養されたこれらの胚の85%は、胚盤胞期の発達する最終ポイントまで発達を継続した。これは、胚盤胞期に発達したコントロール(補充していない)の胚のパーセンテージの2倍以上であった。
【0081】
検査した3つの抗酸化物質(GSH,NACおよびNACアミド)の中で、NACアミドは、2つの自然に存在する産物より、一貫してより効果的であった。これらの結果は、(他のγグルタミン酸回路化合物に対して)GSH自体が、(補充していないコントロール培地と比較して)ほんのわずかでしか効果的でなかった他の研究の結果と類似する(B.D.WhitakerおよびJ.W.Knight,2004,Theriogenology,62:311−322)。NACの補充は、測定された全てのパラメータを増強したが、NACアミドでの増強よりもその程度は低かった。
【0082】
これまでの結果は、卵母細胞のグルタチオンの細胞内濃度の増加により、NACアミドがin vitro系において、卵母細胞の質、受精および胚生存率の減少を導く酸化ストレスを軽減することを強く示唆する。
【0083】
(実施例2)
本実施例は、精子機能/受精可能性を判断するために使用される様々な試験および方法を記述する。さらに、記述は、J.E.Ellingtonらの米国特許番号6,593,309にもある。精子の運動性は、精子機能、よって受精の可能性を判断するのに使用されてよい一機能である。精子の運動性は、運動能力のある精子の全パーセンテージ、進行性運動能力のある精子(前に遊泳)の全パーセンテージまたは進行性運動である精子の速度として表現される。これらの測定は、様々な試験によりなされるが、便宜的に2つのうちの1つで試験される。精子が血球計数板または顕微鏡スライドに設置される場合に主観的な視覚的判断が位相差顕微鏡を使用してなされるか、コンピュータ介助精液分析器が使用されるかのいずれかである。位相差顕微鏡下で、運動および全精子数が測定され、速度が高、中、低として判断される。コンピュータ介助精液分析器(Hamilton Thorn,Beverly,Mass.)の使用において、サンプルの個々の精子細胞の運動性特徴が、客観的に判断される。分析器は、個々の精子細胞を追跡し、精子の運動性および速度を判断する。データはパーセント運動として表現され、測定は、経路速度および追跡速度においても得られる。
【0084】
精子生存率は、いくつかの異なる方法のうちの1つで測定される。例えば、これらの方法のうちの2つは、除膜染色での染色と、ATPレベルの測定である。つまり、精子のサンプルは、Hoechst33258またはエオシン−ニグロシン染色などの有力な色素を用いてインキュベートされる。細胞は、血球計数器に設置され、微視的に検査される。破壊された膜をもつ失活精子は、これらの色素で染色される。染色されなかった細胞数をカウントされた全細胞数で割り、生存細胞のパーセントを得る。精子サンプル中のATPレベルは、精子を溶解し、ATPの存在下で蛍光を発するルシフェラーゼ酵素と溶解物をインキュベートすることにより測定される。蛍光は、ルミノメーター(精子生存率試験;Firezyme,Nova Scotia,Canada)で測定される。サンプルの発光量は、標準曲線の発光量と比較され、サンプル中に存在する生存精子数の判断を可能にする。
【0085】
精子の膜完全性は、一般的に、非等張環境に曝された場合、精子が水または塩をくみ出す能力を測定する低浸透圧膨張試験(hypo−osmotic swell test)により試験される。つまり、低浸透圧膨張試験において、精子は、低浸透性(150mOsm)溶液である75mMのフラクトースと25mMのクエン酸ナトリウムの溶液で懸濁される。無損傷で健康な膜をもつ精子は、細胞がより小さくなるにつれ膜に収縮を引き起こす塩を細胞から汲みだす。精子尾部は、このより密になった膜内に巻き付く。よって、巻きついた尾をもつ精子は、正常な膜をもつ、生きた健康な精子としてカウントされる。存在する全精子数と比較すると、機能的な精子のパーセントを確立することができる。
【0086】
膜完全性の度合いは、好ましくは、取扱い中放出されたフリーラジカルにより発生した精子膜の損傷を判定する脂質過酸化(LPO)測定により判断される。脂質膜過酸化は、37℃の水浴で1時間、硫酸第一鉄およびアスコルビン酸と精子をインキュベートすることにより試験される。タンパク質を、氷冷トリクロロ酢酸で沈殿させる。遠心分離法で上澄を回収し、チオバルビツール酸およびNaOHを用いて沸騰することにより反応させる。結果マロンジアルデヒド(MDA)形成は、MDA標準と比較して(M.Bellら、J.Andrology 14:472−478,1993)、534nmでの吸収度を測定することにより、定量化される。LPOは、nM MDA/108精子として示される。PCAGHの安定化効果は、LPO生成の減少を生じる。本発明によると、精子が設置された培地または環境で使用される場合、NACアミドは、取扱中、精子が接触する酸化ストレス(過酸化)を軽減または緩和することができる。
【0087】
染色質DNAの安定性は、精子染色質感度試験(sperm chromatin sensitivity assay)(SCSA)を使用して試験される。本試験は、488nm光を用いた励起に続く、アクリジンオレンジ染色による一本または二本鎖DNAの異染性染色に基づいている。緑の蛍光は、二本鎖DNAを示し、赤い蛍光は一本鎖DNAを示す。サンプル中のDNA変性の範囲は、「α」で表され、α=赤/(赤+緑)の公式により計算される。全ての場合において、精子はTNE緩衝液(0.01Mのトリスアミノメタン−HCl、0.015MのNaCI、および1mMのEDTA)と混合され、急速冷凍される。精子サンプルは、それから、異常染色質をもつ精子のDNAの部分変異を示す0.01%のトリトン−X、0.08NのHClおよび0.15MのNaCIに曝される。精子は、6g/mlのアクリジンオレンジで染色され、「α」を判断するために、フローサイトメーターに通される。
【0088】
In vitro受精率は、in vitroの卵母細胞の受精パーセントを測定することにより判断される。成熟卵母細胞は、22時間、M199培地+7.5%胎仔血清および50μg/mlの黄体形成ホルモンでin vitroで培養される。4時間の培養後、精子は、10IUのヘパリンを添加することにより化学的に受精能を獲得し、24時間、卵母細胞とインキュベートされる。インキュベーションの終わりに、卵母細胞は、受精パーセント卵母細胞を判断するために、アセトオルセイン染色またはその同等のもので染色される。代替的に、受精卵母細胞は、時分割(time division)が発生し、分裂胚の数(つまり、2以上の細胞)がカウントされる間、2日間、培養されたままでもよい。
【0089】
精子の培養中での生存時間(運動性を失う時間)は、精子機能を設定する他の簡便な方法である。このパラメータは、一定の男性/オスの実際の受精によく相関している。つまり、アリコートの精子は、pH7.4のTyrode培地などの培養培地に設置され、37℃の加湿大気中、5%のCOで、インキュベートされる。例えば8時間ごとなど、一定の時間間隔で、培養中の運動能力のある精子のパーセンテージが倒位型顕微鏡を使用して視覚的分析により、またはコンピュータ介助精液分析器を用いて判断される。最終ポイントとして、5%以下の細胞が進行運動をもつ場合、精子サンプルはもはや生存していないとみなす。
【0090】
他の精子機能のパラメータは、子宮けい管粘液を透過する能力である。この透過能力試験は、in vitroまたはin vivoのいずれかでも行うことができる。つまり、in vitroで、子宮けい管粘液を含む商業的キット(Tru−Trax,Fertility Technologies,Natick,Mass.)、一般的に、ウシの子宮けい管粘液が調製される。精子は、トラックの一端に設置され、精子が一定の期間後に粘液に透過した距離を判断する。代替的に、粘液の精子の透過能力は、in vivoで、女性内で測定されてよい。性交後の様々な時間で、子宮けい管粘液のサンプルを取り出し、サンプルに存在する精子の数を微視的に検査する。性交後試験において、コントロールの潤滑剤に曝された後の患者からの粘液のサンプルより、PCAGH潤滑剤に曝された後の粘液サンプルでより速い速度の精子がより多くみられた場合、改善された精子機能が立証される。
【0091】
潜在的な精子機能についての他の試験は、精子の透過能力およびhemizona試験を含む。精子透過能力試験において、精子が卵母細胞に侵入する能力を測定する。つまり、商業的に入手可能な帯を含まないハムスター卵母細胞が使用される(Fertility Technologies,Natick,Mass.)。ハムスターの卵母細胞は、あらゆる種の精子において、本試験に適している。18時間、ウシの血清アルブミンで培養されたものなど、受精能を獲得した精子は、ハムスターの卵母細胞を用いて3時間インキュベートされる。インキュベーション後、卵母細胞は、アセトラクモイドまたはその同等の染色を用いて、染色され、核卵母細胞を透過した精子数を微視的にカウントする。半透明帯検査は、受精能獲得を受け、卵母細胞へ結合する精子の能力を測定する。つまり、本試験で、生きた正常な精子は、受精能獲得を引き起こすウシ血清アルブミンを用いて培地でインキュベートされる。精子は、それから卵母細胞の無細胞コーティングである透明帯により囲まれた失活卵母細胞とインキュベートされる。受精能を獲得した精子は帯に結合し、結合した精子数が微視的にカウントされる。
【0092】
(実施例3)
本実施例は、精子豊富なサンプルおよび最も運動性のある精子のサンプルを得るために、精子および精子を含有するサンプルの洗浄と分離方法を記載する。このようなサンプルは、向上した機能を備えた精子を含む。精子は、精子含有サンプルを多糖類含有溶液(ここで、多糖類はアラビノガラクタンではない)と接触させることにより洗浄される(J.E.Ellingtonらの米国特許番号6,593,309)。運動能力のある精子は、精子含有サンプルを多糖類がアラビノガラクタンではない多糖類からなる培地溶液と接触することにより分離され、精子を分離するのに有効な条件で混合物を処理する。そのような培地は、これに制限されるものではないが、Tyrodeアルブミンラクテートリン酸(TALP)、ヒト卵管液(HTF;Fertility Technology,Natick,Mass.)、Ham F10、Ham F12、Earle緩衝塩、Biggers、Whitten and Whitingham(BWW)、CZB、T6、Earle’s MTF、KSOM、SOFおよびBenezo’s B2またはB3培地を含む。これらの培地の調製は、よく知られており、事前調製培地が商業的に入手できる(例えば、Gibco Co.またはFertility Technologies,Natick,Mass.)。さらに、双極性イオン緩衝液(例えば、MOPS,PIPES,HEPES)を添加してもよい。多糖類は、精子を分離および洗浄するために、ペクチン、グアーガムまたはアラビアガムを含んでよい。アラビアガムは約20%に添加されてよく、グアーガムは約5%に添加されてよい。NACアミドは、抗酸化成分として添加されてよい。
【0093】
これらの培地は、平衡塩類溶液を維持する溶液である限り、さらに高分子を含んでよい。そのような高分子は、ポリビニルアルコール、アルブミン(ウシ血清アルブミンまたはヒト血清アルブミン)、オビダクチン(Gandolfiら、Repro.Fert.Dev.5:433,1993)、スーパーオキシドジムスターゼ、ビタミンE、ゼラチン、ヒアルロン酸、カタラーゼ、卵黄、カゼインまたは他のタンパク質を含む。アルブミンまたはゼラチンは、一般的に、0.5%で添加され、ヒアルロン酸またはポリビニルアルコールは、1.0%で添加される。他の高分子は同様な濃度(例えば、0.05〜5%)で添加される。精子分離培地は、遠心分離法の密度勾配化合物または遊泳分離法の高分子のいずれかに加え、少なくとも、約0.01〜5%(例えば、0.1〜5%、0.1〜1%、l%〜5%)で多糖約類を含む。密度勾配物質は、一般的に、5〜90%の濃度に添加される。そのような物質は、デキストラン、イオジキサノール、スクロース重合体、ナイコデンズまたはポリビニルピロリジン被覆シリカ(すなわち、パーコール)を含む。典型的な用途において、精子含有溶液は、勾配物質、好ましくは、0.05%のペクチンと混合した30〜90%のパーコールで覆われ、向上した機能を備えた精子を回収するために遠心分離処理される。精子遊泳が、精子を分離するために使用される場合、上述のような高分子が添加される。好ましくは、1〜10mg/mlのヒアルロン酸が使用される。これらの手順のいずれかで使用される培地は、さらに平衡塩類溶液を含む。
【0094】
精子は、所望する精子をサンプルから分離するために有効な条件で精子含有培地混合物を処理することにより洗浄または分離される。つまり、短時間から最大4時間のインキュベーションまで細胞を溶液中に入れることにより、細胞を溶液と接触させる。好ましくは、接触が起こる温度は、約20℃から約39℃である。この最初の接触後、遠心分離法、遊泳、分離カラムなど、精子を分離するために異なる方法が使用されてよい。例えば、そのような一方法は、J.E.Ellingtonの米国特許番号6,593,309に記載されるように、多糖類、特にPCAGHを含む溶液の連続勾配を通した精子サンプルの遠心分離である。本方法において、PCAGHを含む溶液は、遠心分離管に入れ、精液サンプルまたは精子細胞を、約1精液(またはサンプル):1培地の割合で培地を覆う。管は、10から20分間、約300×gで遠心分離される。向上した機能を備える精子豊富な画分、よって、受精可能性の増大した画分が、管の底にペレットとして回収される。PCAGHは精子に無害なので、PCAGHを除去する洗浄手順を必要としない。分離は、上の洗浄プロセスに類似した方法で実行されてよい。しかし、PCAGH溶液は、精子サンプル下かパーコールのような密度勾配の上のいずれかに重ねられるか、またはパーコール勾配に直接混合されてよい。代替的に、精子は、遊泳方法により分離されてよい。つまり、遊泳管は、12x75mmの丸底管に1.5mlの洗浄培地を設置することにより、用意される。精子は、1精子懸濁液:2洗浄培地で、27ゲージ針および1mlシリンジを使用して、この洗浄培地下に重ねられる。管を、動かさずに1時間インキュベートする。インキュベーション後、(運動能力のある精子が遊泳した)洗浄培地を移動し、300×gで10分間遠心分離する。運動能力のある精子の最終ペレットは、次に、分析または使用のために回収される。カラム分離などの他の方法は、代替的に使用されてよい。精子は、パーコール勾配を通して遠心分離などにより、精子分離後、さらに洗浄されてよい。洗浄精子は、1溶液から他の溶液に精子を移動するために使用されてよい。これらのいずれの方法において、サンプルは、精液、部分的に精製された精子、または精製された精子であってよい。さらに、本発明に適した精子は、ヒト、ウシ科、イヌ科、ウマ科、ブタ科、ヒツジ科、齧歯類、トリ類または、ライオン、トラ、キリン、サル、シマウマ、パンダ、ジャガー、ゾウ、サイなどの、外来動物を含む動物種から生成されてよい。
【0095】
(実施例4)
本実施例は、ブタ卵母細胞成熟、受精、および卵母細胞成熟時の、胚の発達後のGSHの細胞内濃度、IVFパラメータ、細胞質内精子注入(ICSI)の成功およびICSIと前核微量注入後の胚発達のおける、培地へのNACアミド補充の作用を調査する。
【0096】
特に記載がなければ、全ての化学物質は、Sigma Chemical Company(St. Louis,MO)から入手し、胚グレードの質であった。Dr.Glenn Goldsteinとその関係者がNACアミドを提供した。卵母細胞(BoMed,Madison,WI)は、鉱油(Specialty Media,Phillipsburg,NJ)下、39℃の5%CO環境で、Earle塩、0.01U/mLのLHとFSH、抗生物質およびウシ胎仔血清で補充した組織培地199で20から24時間成熟させ、それからホルモンなしで20から24時間さらに成熟させた。
【0097】
In vitro成熟後、卵丘細胞は、0.1%のヒアルロニダーゼを含む成熟培地で、反復ピペット操作により卵母細胞から除去した。卵母細胞は、それから、10mMのEDTA(pH7.2)を含む0.2Mリン酸ナトリウム緩衝液の100μL滴で洗浄した。約30の卵母細胞を、10mMのEDTA(pH7.2)を含む、5μLの0.2Mリン酸ナトリウム緩衝液で1.5mLのマイクロ遠心分離管(Fischer Scientific,Pittsburgh,PA)に移し、分析を実施するまで、−80℃で保管した。各管は、5μLの1.25Mリン酸を含み、卵母細胞を平滑なガラス棒を使用して破損した。各管の内容物は、それぞれ別のウェルの分光光度計管に添加した。分析は、上述のB.D.WhitakerおよびJ.W.Knight,2004,Theriogenology,62:311−322のように実施された。サンプルの吸収度を、合計10分間、412nmで分光光度計を使用して連続して記録した。GSH量は、それから、濃度GSH:吸収度の変化率の標準曲線を使用して判断された。
【0098】
卵丘細胞は、0.1%のヒアルロニダーゼで攪拌することにより取り出され、洗浄され、鉱油を重層したトリス受精培地(113.1mMのNaCl、3mMのKCl、7.5mMのCaCl・2HO、20mMのトリス、11mMのD(+)−グルコース、5mMのピルビン酸ナトリウム、1mg/mLのBSA,2mMのカフェイン)に入れ、冷凍解凍した精子を2000精子/卵母細胞の濃度で添加した。生殖細胞は、約6時間、39℃の5%COの環境で、インキュベートした。
【0099】
受精は、卵母細胞を、エタノール中の25%(v:v)酢酸を用いて、48時間、室温で顕微鏡スライドに固定して、IVFの12時間後分析した。卵母細胞は、45%(v:v)酢酸中の1%オルセインを用いて染色し、400Xの倍率で位相差顕微鏡を使用して検査した。
【0100】
卵丘細胞を0.1%のヒアルロニダーゼで攪拌して除去し、洗浄して、15000×gで遠心分離した後、39℃で、鉱油を重層したNCSU−23培地(108.73mMのNaCl、4.78mMのKCl、1.19mMのKHPO、1.19mMのMgSO・7HO、5.5mMのグルコース、1mMのグルタミン、7mMのタウリン、5mMのハイポタウリン、25.07mMのNaHCO、1.7mMのCaCl・2HO、75μg/mLのペニシリンG、50μg/mLのストレプトマイシン、4mg/mLのBSA、pH7.4)の微小な滴に入れた。その後、隣接した微小な滴に凍結融解した精子を入れた。操作は、Narishige操作装置およびHoffmanモジュレータ光学を備えたNikon倒立顕微鏡を使用して、パラフィン油下で、HbTの10μLの小滴中で実行された。卵母細胞は、外径が約200μmで内径が約50μmの保持ピペットで安定させた。外径8〜9μmで内径が6μmのPiezoDrillマイクロピペット(Humagen,Charlottesville,VA)を使用して、精子を注入した。卵母細胞の極体は6時または12時で設置し、注入点は3時であった。個々の卵母細胞は、注入マイクロピペットにより透過され、少量の細胞質は、卵母細胞の透過を確実にするために、マイクロピペットに取り込んだ。それから、1精子と少量の培地とともに細胞質を卵母細胞に注入した。細胞質注入後すぐに、注入ピペットを素早く取り出し、卵母細胞は、細胞質内の圧力を軽減するために、保持ピペットから放出された。
【0101】
推定上の受精卵を、洗浄し、39℃の5%CO環境で、48時間、鉱油を重層したNCSU−23培地(108.73mMのNaCl、4.78mMのKCl、1.19mMのKHPO、1.19mMのMgSO・7HO、5.5mMのグルコース、1mMのグルタミン、7mMのタウリン、5mMのハイポタウリン、25.07mMのNaHCO、1.7mMのCaCl・2HO、75μg/mLのペニシリンG、50μg/mLのストレプトマイシン、4mg/mLのBSA、pH7.4)でインキュベートした。48時間後、最初の細胞分裂をした卵母細胞は、TVFの144時間後の胚盤胞形成まで上述と同様の方法で、新しいNCSU23培地に置いた。
【0102】
本実施例の結果は、コントロールと比較してNACアミド補充が優れた結果を生じることを示している。
【0103】
【表3】

上述の本発明の範囲および精神から逸脱することなく、多様な改変が上記の方法および組成になされ得る場合、上記の説明に含まれるか、添付の図面に示されるか、または添付の特許請求の範囲に定義される、全ての主題は、例示的なものとして解釈され、制限されたものではないことを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
in vitroで培養された一つ以上の卵母細胞、精子または胚の酸化ストレスを軽減または予防するための方法であって、酸化ストレスを軽減または予防するのに有効な量で、N−アセチルシステインアミド(NACアミド)、またはその生理学的に許容される塩またはエステルを含むように補充された培地で、該一つ以上の卵母細胞、精子または胚を培養するステップを含む方法。
【請求項2】
前記一つ以上の卵母細胞、精子または胚は、ヒト以外の動物に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記一つ以上の卵母細胞、精子または胚は、ヒトに由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記一つ以上の卵母細胞、精子または胚は、形質転換動物に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記培地は、GM−CSFと併用してNACアミドを含むように補充された、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
in vitroで培養された卵母細胞におけるフリーラジカルの形成を軽減または予防するための方法であって、フリーラジカルの形成を軽減または予防するのに有効な量で、N−アセチルシステインアミド(NACアミド)、またはその生理学的に許容される塩またはエステルを含むように補充された培地で、該卵母細胞を培養するステップを含む方法。
【請求項7】
前記卵母細胞は、ヒト以外の動物に由来する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記卵母細胞は、ヒトに由来する、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記卵母細胞は、形質転換動物に由来する、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記培地は、GM−CSFと併用してNACアミドを含むように補充された、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
in vitroで培養された精子におけるフリーラジカルの形成を軽減または予防するための方法であって、フリーラジカルの形成を軽減または予防するのに有効な量で、N−アセチルシステインアミド(NACアミド)、またはその生理学的に許容される塩またはエステルを含むように補充された培地で、該精子を培養するステップを含む、方法。
【請求項12】
前記精子は、ヒト以外の動物に由来する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記精子は、形質転換動物に由来する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記精子は、ヒトに由来する、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
in vitroで培養された着床前胚におけるフリーラジカルの形成を軽減または予防するための方法であって、フリーラジカルの形成を軽減または予防するのに有効な量で、N−アセチルシステインアミド(NACアミド)、またはその生理学的に許容される塩またはエステルを含むように補充された培地で、該着床前胚を培養するステップを含む方法。
【請求項16】
前記着床前胚は、胚盤胞期に発達する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記着床前胚は、ヒト以外の動物に由来する、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記着床前胚は、ヒトに由来する、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記着床前胚は、形質転換動物に由来する、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記培地は、GM−CSFと併用してNACアミドを含むように補充された、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
in vitroの受精方法であって、N−アセチルシステインアミド(NACアミド)、またはその生理学的に許容される塩またはエステルを含むように補充された培地で、卵母細胞および精子を培養するステップを含み、該卵母細胞は、該N−アセチルシステインアミド補充された培地で、該精子により受精される方法。
【請求項22】
前記卵母細胞および精子は、ヒト以外の動物に由来する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記卵母細胞および精子は、ヒトに由来する、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記卵母細胞および精子は、形質転換動物に由来する、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記培地は、GM−CSFと併用してNACアミドを含むように補充された、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
着床前胚を胚盤胞に発達させるための培養方法であって、該着床前胚を胚盤胞に発達させるのに有効な量で、N−アセチルシステインアミド(NACアミド)、またはその生理学的に許容される塩またはエステルを含むように補充された培地で、該着床前胚を培養するステップを含む方法。
【請求項27】
前記着床前胚は、ヒト以外の動物に由来する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記着床前胚は、ヒトに由来する、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記着床前胚は、形質転換動物に由来する、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記培地は、GM−CSFと併用してNACアミドを含むように補充された、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
早期産児または新生児の酸化ストレスを軽減または予防するための方法であって、酸化ストレスを予防または軽減するのに有効な量で、N−アセチルシステインアミド(NACアミド)、またはその生理学的に許容される塩またはエステルを含む、医薬的に許容される組成物を該乳児に投与するステップを含む方法。
【請求項32】
胚着床後の女性/メスにおける着床後の酸化ストレスに関連する状態を予防または軽減するための方法であって、着床後の酸化ストレスを予防または軽減するのに有効な量で、N−アセチルシステインアミド(NACアミド)、またはその生理学的に許容される塩またはエステルを含む、医薬的に許容される組成物を該女性/メスに投与するステップを含む方法。
【請求項33】
男性/オスにおける精子産生および発達に関連するフリーラジカルの形成または酸化ストレスを予防または軽減するための方法であって、フリーラジカルの形成または酸化ストレスを予防または軽減するのに有効な量で、N−アセチルシステインアミド(NACアミド)、またはその生理学的に許容される塩またはエステルを含む薬学的に許容される組成物を該男性/オスに投与するステップを含む方法。
【請求項34】
in vitroで培養される卵母細胞、精子または胚における酸化ストレスを軽減または予防する細胞培養培地であって、N−アセチルシステインアミド(NACアミド)、またはその生理学的に許容される塩またはエステルを含む細胞培養培地。
【請求項35】
前記卵母細胞、精子または胚は、ヒト以外の動物に由来する、請求項34に記載の培地。
【請求項36】
前記卵母細胞、精子または胚は、ヒトに由来する、請求項34に記載の培地。
【請求項37】
前記卵母細胞、精子または胚は、形質転換動物に由来する、請求項34に記載の培地。
【請求項38】
M199、合成卵管液、PBS、BO、Test−yolk、Tyrode液、HBSS、Ham F10、HTF、Menezo B2、Menezo B3、Ham F12、DMEM、TALP、Earle緩衝塩、CZB、KSOM、BWW培地およびemCare培地からなる群から選択される平衡塩類溶液をさらに含む、請求項34に記載の培地。
【請求項39】
前記細胞が精子で、前記平衡塩類溶液がTALPまたはHTFである、請求項38に記載の培地。
【請求項40】
前記細胞が胚で、前記平衡塩類溶液がCZBである、請求項38に記載の培地。
【請求項41】
緩衝液、一つ以上の高分子、一つ以上の追加のフリーラジカルスカベンジャー、一つ以上の酵素、一つ以上の成長因子、一つ以上の重合体分子、一つ以上の抗生物質、一つ以上の抗真菌物質、一つ以上のホルモンまたは一つ以上のタンパク質をさらに含む、請求項34に記載の培地。
【請求項42】
前記細胞は精子であり、前記培地は精子運動能賦活剤を任意に含む、請求項34に記載の培地。
【請求項43】
前記精子運動能賦活剤は、カフェイン、卵胞液、カルシウム、オキシトシン、カリクレイン、プロスタグランジン、胸腺抽出物、ペントキシフィリン、2−デオキシアデノシン、イノシトール、フラボノイド、血小板活性化因子、ハイポタウリン、コンドロイチン硫酸またはメルカプトエタノールを含む、請求項42に記載の培地。
【請求項44】
前記培地はGM−CSFをさらに含む、請求項34に記載の培地。
【請求項45】
in vitroで培養される卵母細胞、精子または胚の酸化ストレスを軽減または予防するための細胞培養補充物であって、N−アセチルシステインアミド(NACアミド)、またはその生理学的に許容される塩またはエステルを含む細胞培養補充物。
【請求項46】
凍結卵母細胞、精子または胚の酸化ストレスを軽減または予防するための凍結防止組成物であって、N−アセチルシステインアミド(NACアミド)、またはその生理学的に許容される塩またはエステル、透過および/または不透過剤および任意で補助化合物を含む、凍結防止組成物。
【請求項47】
前記透過剤は、DMSO、グリセロール、プロピレングリコールまたはエチレングリコールを含む、請求項46に記載の凍結防止組成物。
【請求項48】
前記不透過剤は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリジン、不凍性の魚もしくは植物タンパク質、カルボキシメチルセルロース、血清アルブミン、ヒドロキシエチルスターチ、フィコール、デキストラン、ゼラチン、アルブミン、卵黄、乳製品、脂質ベシクルまたはレシチンを含む、請求項46に記載の凍結防止組成物。
【請求項49】
前記補助化合物は、糖アルコール、単糖、グリコサミノグリカン、ブチル化ヒドロキシルトルエン、界面活性剤、フリーラジカルスカベンジャー、追加の抗酸化剤、アミノ酸、フラボノイドまたはタキソールを含む、請求項46に記載の凍結防止組成物。
【請求項50】
N−アセチルシステインアミド(NACアミド)、またはその生理学的に許容される塩またはエステルおよび非殺精子潤滑性化合物を含む、非殺精子潤滑組成物。
【請求項51】
前記潤滑性化合物は、グリセリン、メチルセルロース、プロピレングリコール、植物油、ワセリン、植物性油脂、ポリカルボフィル、ヒドロキシエチルセルロース、シリコン油、カルボマー、アルギン酸、メチルパラベン、パーム油、ココアバター、アロエベラ、アルギン酸プロピレングリコール、単塩基、鉱油、酸化ポリエチレン、カルボキシポリメチレンナトリウムまたはその組み合わせを含む、請求項50に記載の潤滑組成物。
【請求項52】
pH安定化剤および追加の抗酸化剤をさらに含む、請求項50に記載の潤滑組成物。
【請求項53】
着床後の酸化ストレスに関連する状態を防止または軽減するために胚着床後に、女性/メスが服用するためのN−アセチルシステインアミド(NACアミド)、またはその生理学的に許容される塩またはエステルを含む、医薬組成物。
【請求項54】
精子産生および発達におけるフリーラジカルの形成または酸化ストレスを軽減または予防するために、男性が服用するためのN−アセチルシステインアミド(NACアミド)、またはその生理学的に許容される塩またはエステルを含む、医薬組成物。
【請求項55】
動物の不妊症に関連する酸化ストレスを予防、軽減、拮抗または緩和するための、N−アセチルシステインアミド(NACアミド)、またはその生理学的に許容される塩またはエステルを含む、医薬組成物。
【請求項56】
早期新生児におけるヘムオキシゲナーゼおよび/またはビリルビンの過剰に関連する酸化ストレスを防止、軽減、拮抗または緩和するための、N−アセチルシステインアミド(NACアミド)、またはその生理学的に許容される塩またはエステルを含む、医薬組成物。

【公表番号】特表2008−536524(P2008−536524A)
【公表日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−507897(P2008−507897)
【出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/015015
【国際公開番号】WO2006/116034
【国際公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(507348034)
【Fターム(参考)】