説明

不完全燃焼防止機能付き燃焼機器

【課題】 ガスセンサの寿命の到来を容易にかつ確実に把握してセンサ交換時期を確実に報知し得る不完全燃焼防止機能付き燃焼機器を提供する。
【解決手段】 製造段階P1でCOセンサに不揮発性メモリを組み込み製造時情報を書き込み(S1)、熱源機に組み付ける(S2)。熱源機の設置段階P2で電源ONし(S3,S4)、カレンダを設定し(S5,S6)、不揮発性メモリ内の製造時情報、現在日時情報、設定寿命情報から残寿命を演算し(S7)、残り少なければ交換要の旨報知した上で(S8)、機器を強制停止する(S9)。所定以上あれば、熱源機の作動を許可する(S10)。使用段階P3でカレンダタイマの時間進行に伴い残寿命を減算カウントし(S11,S12)、残り少なくなればリモコンからセンサ交換要の旨報知した上で、機器を強制停止する(S13)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不完全燃焼状態の発生を検出することにより燃焼改善対策を施して不完全燃焼状態が持続することを防止する機能が付設された不完全燃焼防止機能付き燃焼機器に関し、特に不完全燃焼状態の発生を、燃焼排ガス中の特定成分濃度をガスセンサで検出することで判定する場合に、そのガスセンサの寿命を的確に把握して交換時期を報知することにより確実な検出を図る技術に係る。
【背景技術】
【0002】
従来、不完全燃焼防止機能付き燃焼機器として例えば給湯用熱源機の分野では、燃焼排ガス中の一酸化炭素(CO)濃度を検出することにより不完全燃焼状態の発生を判定・検出し、不完全燃焼状態の発生と判定されれば燃焼用空気量を増大する等の燃焼改善処理することが行われている。かかる給湯用熱源機ではCO濃度の検出のために接触燃焼方式のCOセンサが通常用いられている。一方、CO等のガス濃度を検出するセンサとしては、電気化学式ガスセンサが室内等の雰囲気中のCO濃度を検出するために用いられている。この場合、電気化学式COセンサはそれ単体で設置され所定の異常濃度を検出すれば警報を発するようにされている。
【0003】
ガスセンサの内でも従来から言われていることとして、電気化学式ガスセンサは、作用極や対極等の複数の電極を個体電解質等の電解質で覆って電気的に接続し、電解質との界面で検出対象ガスの酸化・還元反応を起こさせて、その際に生じるセンサ電流値の如何によりガス濃度を検出するものであり、電解質が経時的に物性変化を起こしてセンサ感度の低下を招き、遂には寿命が到来するという特有の不都合を有するものである。このため、特許文献1や特許文献2で提案されているように、センサとしてガス検出のために使用中に、それとは別に複雑な処理を併行して行うことにより寿命を判定するということが行われている。すなわち、特許文献1では、検出対象ガス(CO)用のCOセンサに対し、雰囲気中に一定濃度で存在する基準ガス(O)用のセンサを併設し、基準ガス用センサの濃度検出値が所定の範囲を外れたときに寿命告知のための信号を出力するようにしている。又、特許文献2では、COセンサのCO濃度検出の劣化速度と、センサ設置場所の周囲の温度との関係を寿命判断データとして予め定めておき、COセンサの周囲温度を継続して検出して対応する寿命判断データをその都度積算してゆき、積算値が所定条件を満たすと寿命末期であると判定して報知するようにしている。
【0004】
【特許文献1】特開平2−153562号公報
【特許文献2】特開平8−233770号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、給湯用熱源機等の燃焼機器において不完全燃焼状態を解消するために設置されているガスセンサについては、上記の電気化学式のものに限らず、時間経過と共に感度が劣化して寿命に至るものがある。しかも、その寿命は通電時間の経過、つまり使用時間の経過により進行するのではなくて、使用の有無(通電の有無)に拘わらず製造時点から単なる時間の経過によって進行するという特性を有するものがある。これに対し、かかるガスセンサを適用しようとする対象の給湯用熱源機等の燃焼機器は、製造段階と現実に設置されて使用が開始される段階との間に例えば在庫時間というような時間的な遅れを有するものであり、このため、その期間にも寿命は進行してしまうという不都合を有していると考えられる。特に、上記の電気化学式ガスセンサの場合には、使用の有無(通電の有無)に拘わらず製造時点から単なる時間の経過によって確実に進行して比較的早期(例えば5〜7年間)に寿命が到来するという不都合を、他の方式のガスセンサに比べ明確に有している。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ガスセンサを不完全燃焼防止機能付き燃焼機器に適用するにあたり、そのガスセンサの寿命の到来を容易にかつ確実に把握してセンサ交換時期を確実に報知し得る不完全燃焼防止機能付き燃焼機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1の発明では、燃焼バーナと、この燃焼バーナからの燃焼排ガス中に含まれる不完全燃焼状態の発生判定の指標となる特定成分濃度を検出するように組み付けられた特定成分検出手段と、この特定成分検出手段からの濃度検出値に基づいて不完全燃焼状態の発生を判定して燃焼改善処理を実行するコントローラとを備えた不完全燃焼防止機能付き燃焼機器を対象にして、次のような特定事項を備えることとした。すなわち、上記特定成分検出手段として、上記特定成分濃度を検出するガスセンサと、このガスセンサを製造した製造年月日に関する製造時情報が予め書き込まれて記録された不揮発性メモリとを含んで構成する。一方、上記コントローラとして、燃焼機器設置後であって燃焼機器使用開始前において、上記不揮発性メモリから読み出した製造時情報に基づいて上記ガスセンサの寿命情報を取得し、かつ、取得した寿命情報に基づいて交換時期を報知する報知信号を出力する寿命監視処理を実行する構成とする(請求項1)。
【0008】
この請求項1に係る発明の場合、燃焼機器設置後であって燃焼機器使用開始前において、ガスセンサの寿命情報の把握を行うことが可能になる。このため、ガスセンサが製造された後、燃焼機器に組み込まれて燃焼機器が製造され、この製品としての燃焼機器が出荷されて現実の使用が開始されるまでの期間が経過していたとしても、使用開始前の時点でガスセンサに関する寿命情報を把握することが可能となる。このため、燃焼機器に用いられて不完全燃焼状態の発生を検出するための重要な要素であるガスセンサと、これから得られる特定成分濃度の検出値とに対し常に正確性及び信頼性を担保し得ることになる。そして、使用に伴い寿命が到来しても、交換時期の報知によりユーザに対しガスセンサの交換を促し得ることになる。
【0009】
又、第2の発明では、燃焼バーナと、この燃焼バーナからの燃焼排ガス中に含まれる不完全燃焼状態の発生判定の指標となる特定成分濃度を検出するように組み付けられた特定成分検出手段と、この特定成分検出手段からの濃度検出値に基づいて不完全燃焼状態の発生を判定して燃焼改善処理を実行するコントローラとを備えた不完全燃焼防止機能付き燃焼機器を対象にして、次のような特定事項を備えることとした。すなわち、上記特定成分検出手段として、上記特定成分濃度を検出するガスセンサと、このガスセンサを製造した製造年月日に関する製造時情報が予め書き込まれて記録された不揮発性メモリとを含んで構成する。一方、上記コントローラとして、上記ガスセンサの残寿命を取得する残寿命取得処理部と、現在日時として年月日情報を含んで参照可能な計時部と、上記残寿命取得処理部により取得された残寿命に基づいて交換時期を報知する報知信号を出力する寿命監視処理部とを備えたものとする。そして、上記残寿命取得処理部として、燃焼機器設置後であって燃焼機器使用開始前において、上記不揮発性メモリから読み出した製造時情報と、計時部から読み込んだ現在日時情報との比較により設定寿命情報の内の既経過期間を演算して残寿命を取得する構成とする(請求項2)。
【0010】
この請求項2に係る発明の場合、請求項1に係る発明による作用を全て含んで、より具体的な作用が得られることになる。すなわち、燃焼機器設置後であって燃焼機器使用開始前において、残寿命取得処理部によってガスセンサの残寿命を得ることが可能になる。このため、ガスセンサが製造された後、燃焼機器に組み込まれて燃焼機器が製造され、この製品としての燃焼機器が出荷されて現実の使用が開始されるまでの期間が経過していたとしても、使用開始前の時点でガスセンサの残寿命がどの程度残っているかの把握が的確に可能となる。従って、例えば、あまりに長期に亘り在庫期間が経過したりして万一寿命が到来していたとしても、使用開始時点において交換時期についての情報をユーザ等に報知し得ることになる。又、使用後の時点であっても、残寿命に基づき寿命監視処理部による交換時期の報知処理によって、ユーザに対しガスセンサの交換を促し得ることになる。このため、燃焼機器に用いられて不完全燃焼状態の発生を検出するための重要な要素であるガスセンサと、これから得られる特定成分濃度の検出値とに対し常に正確性及び信頼性を担保し得ることになり、ガスセンサを不完全燃焼防止機能付き燃焼機器に適用することが不都合なく可能となる。
【0011】
この不完全燃焼防止機能付き燃焼機器におけるコントローラとして、上記計時の日付及び時刻情報について自動的に基準時に同期設定する計時設定部をさらに備えるようにすることができる(請求項3)。このようにすることにより、計時部から参照される日付や時刻情報について高い正確性と信頼性が担保され、この日付や時刻情報との比較により取得される残寿命や、残寿命についての監視処理をより正確に行うことが可能となる。
【0012】
以上の不完全燃焼防止機能付き燃焼機器におけるガスセンサとしては、電気化学式ガスセンサにより構成することができる(請求項4)。つまり、ガスセンサが電気化学式ガスセンサであり、この電気化学式ガスセンサの寿命を対象にして本発明を適用するのである。これにより、以上説明した本発明が最大の有用性を発揮することになって最大の作用・価値が得られることになる。
【発明の効果】
【0013】
以上、説明したように、請求項1又は請求項4の不完全燃焼防止機能付き燃焼機器によれば、燃焼機器設置後であって燃焼機器使用開始前において、ガスセンサの寿命情報の把握を行うことができ、このため、ガスセンサが製造された後、燃焼機器に組み込まれて燃焼機器が製造され、この製品としての燃焼機器が出荷されて現実の使用が開始されるまでの期間が経過していたとしても、使用開始前の時点でガスセンサに関する寿命情報を把握することができるようになる。そして、使用に伴い寿命が到来しても、交換時期の報知によりユーザに対しガスセンサの交換を促すことができるようになる。このため、燃焼機器に用いられて不完全燃焼状態の発生を検出するための重要な要素であるガスセンサと、これから得られる特定成分濃度の検出値とに対し常に正確性及び信頼性を担保することができることになる。
【0014】
請求項2〜請求項4のいずれかの不完全燃焼防止機能付き燃焼機器によれば、燃焼機器設置後であって燃焼機器使用開始前において、残寿命取得処理部によってガスセンサの残寿命を得ることができ、このため、ガスセンサが製造された後、燃焼機器に組み込まれて燃焼機器が製造され、この製品としての燃焼機器が出荷されて現実の使用が開始されるまでの期間が経過していたとしても、使用開始前の時点でガスセンサの残寿命がどの程度残っているかの把握を的確に行うことができるようになる。従って、例えば、あまりに長期に亘り在庫期間が経過したりして万一寿命が到来していたとしても、使用開始時点において交換時期についての情報をユーザ等に報知することができるようになるし、使用後の時点であっても、残寿命に基づき寿命監視処理部による交換時期の報知処理によって、ユーザに対しガスセンサの交換を促すことができるようになる。このため、燃焼機器に用いられて不完全燃焼状態の発生を検出するための重要な要素であるガスセンサと、これから得られる特定成分濃度の検出値とに対し常に正確性及び信頼性を担保することができることになり、ガスセンサを不完全燃焼防止機能付き燃焼機器に適用することを不都合なく行うことができるようになる。
【0015】
特に、請求項3によれば、計時部から参照される日付や時刻情報について高い正確性と信頼性を担保することができ、この日付や時刻情報との比較により取得される残寿命や、残寿命についての監視処理をより正確に行うことができるようになる。この結果、高い信頼性をもってガスセンサを不完全燃焼防止機能付き燃焼機器に適用することができるようになる。
【0016】
又、請求項4によれば、電気化学式ガスセンサの寿命を対象にすることにより、本発明が最大の有用性を発揮することになり、以上の本発明による効果として最大の効果を得ることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は、本発明の不完全燃焼防止機能付き燃焼機器に係る実施形態として給湯用熱源機を示す。同図において、符号2は熱源機のハウジング(図示省略)内に配設された燃焼缶体であり、この燃焼缶体2には燃焼バーナ3と、この燃焼バーナ3の燃焼熱(顕熱)との熱交換により加熱される主熱交換器4と、燃焼排ガスの潜熱と熱交換する副熱交換器5とが内蔵されており、この熱源機は被加熱流体である水をまず副熱交換器5で予熱し、次に主熱交換器4で所定温度まで加熱してから給湯するようになっている。なお、実施形態として、副熱交換器5を備え潜熱回収による高熱効率化を図る高効率型の熱源機を示したが、これに限らず、他の形式の熱源機や、あるいは、熱交換器を備えない他の用途の燃焼機器であってもよい。
【0019】
上記燃焼缶体2には燃焼バーナ3に対し燃焼用空気を供給する送風ファン6が一端に連結され、燃焼排ガスの排気通路を構成する排気筒21が他端に形成されている。上記送風ファン6は後述のコントローラ9により所定の回転数に作動制御され、回転数を増加させれば空気供給量が増加し、回転数を減少させれば空気供給量が減少するようになっている。また、上記排気筒21内には燃焼排ガス中に含まれる特定成分であるCOの濃度を検出する特定成分検出手段としてのCOセンサ7が配設され、このCOセンサ7はCO濃度を検出して上記コントローラ9に出力するようになっている。
【0020】
上記燃焼バーナ3は燃料ガス供給系8から供給される燃料ガスを上記送風ファン6からの空気と混合して燃焼させるようになっている。燃料ガス供給系8には燃料ガスの供給量を調整するガス比例弁81が介装され、このガス比例弁81が上記送風ファン6と共に後述のコントローラ9により作動制御されて上記燃焼バーナ3が所定の空燃比で燃焼されるようになっている。また、上記燃焼バーナ3にはバーナセンサ10が配設され、このバーナセンサ10は燃焼火炎の炎温度を検出して上記コントローラ9に出力するようになっている。
【0021】
上記主熱交換器4は例えばフィンアンドチューブにより構成され、一端に副熱交換器5で予熱された状態の水が供給され、供給された水を燃焼バーナ3からの燃焼火炎の放射熱やフィン間を通過する燃焼ガスからの受熱により熱交換加熱し、熱交換加熱された湯水が他端から出湯管42に出湯されて、図示省略の給湯先に給湯されるようになっている。又、副熱交換器5は、そのケースの一端から主熱交換器4を通過した燃焼排ガスが導入され、給水管42から給水されて副熱交換器5を通過する水が燃焼排ガスの潜熱回収により予熱されるようになっており、潜熱回収により排気筒21から機外に排出される燃焼排ガスの温度はほぼ100℃又はそれ以下の温度まで降下することになる。なお、図1中の符号51は副熱交換器5内で発生して底部に溜まった排ガスドレンを中和処理するために導出する導出管である。
【0022】
上記COセンサ7としては、電気化学反応を利用してCO濃度を検出する電気化学式COセンサを用いて構成されている。すなわち、上記COセンサ7は、図2に示すように、CO濃度検出部71と、このCO濃度検出部71によるCO濃度の検出及び検出したCO濃度をコントローラ9の後述の給湯制御部91への出力を行うセンサ出力回路72と、予め書き込まれた製造時情報が記録された不揮発性メモリ73とを備えて構成されている。上記CO濃度検出部71は、絶縁基板上に配設した作用極と、対極と、参照極とを電解質(例えば固体電解質)で覆うことにより電気的に接続した周知の構造を備え、所定電圧の印加により電解質との界面においてCO(検出対象ガス)が酸化・還元反応を起こし、かかる酸化・還元反応に伴い流れるセンサ電流値を測定することにより、CO濃度を検出するようになっている。なお、CO濃度検出部71としては、上記の作用極と、対極と、参照極とを備えた3極式のものに限らず、作用極と、対極との2極式のもので構成してもよい。どのような構成であろうと電解質に起因する寿命を有する点では同じである。又、上記センサ出力回路72は上記の電圧印加を行い、センサ電流値に基づき検出したCO濃度に関する信号を給湯制御部91に出力するようになっている。不揮発性メモリ(EEPROM)73としては例えばフラッシュメモリが用いられ、この不揮発性メモリ73には後述の如くCOセンサ7の製造時に予め製造時情報が書き込まれ、かかる製造時情報が記録・保持(好もしくは書換不能に記録)された状態で組み付けられている。上記の製造時情報とは、少なくとも製造年月日に関する情報を含むものであるが、製造年月日に加え製造時刻情報や、製造時に把握可能なCO濃度検出部71の個体感度情報も含ませるようにしてもよい。上記センサ出力回路72と不揮発性メモリ73とは例えば制御基板上に設けたものであり、かかる制御基板とCO濃度検出部71とが互いに組み合わされて、特定成分検出手段としてのCOセンサ7を構成している。
【0023】
以上の熱源機はコントローラ9により給湯制御が行われ、その給湯制御中に燃焼バーナ3の不完全燃焼状態の発生を監視しつつ発生したら燃焼改善処理を実行するようになっている。加えて、不完全燃焼状態の発生を検知する主要機器であるCOセンサ7の残寿命を監視して交換時期や要交換の旨のアラームをユーザに報知する残寿命監視処理を実行するようになっている。以上の機能を果たすべく、コントローラ9は、給湯制御部91と、燃焼改善処理部92と、寿命監視処理部93と、残寿命取得処理部94と、計時部95と、計時設定部96とを備えており、このコントローラ9には報知手段を兼ねるリモコン90が接続されている。
【0024】
上記給湯制御部91は、リモコン90に入力設定された設定給湯温度になるように給水温度や量等に基づき燃焼バーナ3の燃焼号数を演算し、その燃焼号数を発揮するようにガス比例弁81及び送風ファン6のモータの作動制御を行うようになっている。これにより、出湯管42から図示省略の給湯先に対し上記の設定給湯温度の湯が供給されるように制御される。そして、上記燃焼改善処理部92は、燃焼バーナ3の燃焼中にCOセンサ7からのCO濃度検出値を監視し、このCO濃度検出値が予め定めたCO濃度設定値(例えば300ppm)を超えると不完全燃焼状態が発生したと判定し、この判定に基づき燃焼改善処理として送風ファン6の回転数を例えば予め定めた設定量だけアップ補正するようになっている。
【0025】
上記寿命監視処理部93は、残寿命取得処理部94が取得した残寿命情報の出力を受け、この残寿命情報に含まれる残寿命と、計時部95から出力される現在日時情報とを対比して、時間の進行に合わせて残寿命を減算しつつ、減算結果の残寿命が予め設定した報知期間(例えば6ヶ月)より短くなればリモコン90に対しCOセンサ7の交換が必要である旨を報知する報知信号を発するようになっている。併せて、寿命監視処理部93は、特に燃焼機器の設置時(試運転時)において演算により得られた残寿命に基づき給湯制御部91等による運転作動を許可したり、強制停止させたりする処理も行うようになっている。上記の報知期間は、ユーザにCOセンサ7が寿命に到達したことを報知するための期間のことであり、ユーザがリモコン90の報知を認識した後、代理店等に交換を依頼してその交換に要する期間を考慮して定めれば良い。又、報知期間として例えば6ヶ月と2ヶ月というように複数段階のものを設定しておき、短い方の報知態様をユーザにより強く警告する形態にするように変化させてもよい。例えば6ヶ月の場合はリモコン90の液晶表示部に文字情報で表示するのみに留め、そのまま残寿命が2ヶ月を切ればその表示に加え音声回路による音声案内を定期的に発するようにしたり、あるいは警告灯を点灯させるだけに止めていたのを点滅表示に切換えたりすればよい。
【0026】
上記残寿命取得処理部94での残寿命取得処理は次のように行われる。すなわち、不揮発性メモリ73から読み出した製造時情報と、計時部95から読み込んだ現在日時情報とを比較して既経過期間を演算により求め、この演算された既経過期間を、予め入力設定されているCOセンサ7(詳しくはCO濃度検出部71)の設定寿命情報(例えば5年間)から減じることで残寿命を求めるようになっている。例えば、製造時情報が「2006年1月1日」、現在日時情報が「2007年1月1日」であるとすると、演算される既経過期間は「1年間」であり、設定寿命情報が「5年間」であれば、残寿命は「4年間」ということになる。演算結果のデータとしては「日」を単位にして日数に換算してもよい。この場合には、既経過間は「365日間」であり、残寿命は「4×365=1460日間」となる。
【0027】
計時部95はカレンダ機能を有するカレンダタイマであり、現在の日付(年月日)と時刻に関する情報を常に参照し得るようになっている。又、計時設定部96は計時部95の日付及び時刻情報を正確なものに設定しかつ自動的に正確な日付及び時刻に同期させる機能を備えたものである。本実施形態では、計時設定部96として電波時計を用いて構成している。すなわち、電波時計により計時設定部96の機能である自動同期を行わせるようになっている。つまり、日本国内の場合であると特定2地点から発せられる標準電波を定期的に受信して上記特定地点の原子時計の正確な日付及び時刻(基準時)に自動同期させるようになっている。
【0028】
なお、計時設定部96として、手動で正確な日付や時刻に合わせ得るように、手動設定入力部を付設するようにしてもよい。又、計時設定部96による基準時への自動同期を上記の標準電波以外の手段によって行うようにしてもよい。例えばGPS受信機を計時設定部96として用いて自動同期させるようにしてもよい。この場合は、GPS受信機によりGPS衛星からそれに搭載された原子時計の正確な時刻データを受信して、例えば通常のカレンダタイマにより構成した計時部95をGPS衛星の原子時計と自動同期させるようにすればよい。又は、TV電波受信機を計時設定部96として用いて自動同期させるようにしてもよい。この場合は、NHK(日本放送協会)から発信される時報情報を利用して計時部95であるカレンダタイマの日付及び時刻を自動同期させることも可能である。さらに、インターネットとの通信手段を計時設定部96として用いて自動同期させるようにしてもよい。この場合は、その通信手段により定期的にインターネット上のインターネットタイムサーバ(インターネット時刻サーバ)に接続させて自動同期させるようにすればよい。以上、要するに、残寿命を取得したり管理したりする上で、計時部95から参照する日付や時刻に関する情報の正確性を向上させるようにしているのである。
【0029】
以下、図3のフローチャートを参照しつつ、特にCOセンサ7の寿命に関する処理について、COセンサ7の製造及び熱源機の製造段階P1、熱源機の現実の設置段階P2、熱源機の使用段階P3に分けて、説明する。
【0030】
製造段階P1では、COセンサ7を製造したらその製造日を不揮発性メモリ73に書き込んで記録する(ステップS1)。その上で、COセンサ7を熱源機に組み付けて、製品としての熱源機を完成させる(ステップS2)。完成された熱源機はストックヤードで保管されて出荷を待つ。
【0031】
設置段階P2では、現実の設置対象の住宅等まで輸送され、その住宅等の所定場所に取り付けられて給水や給湯のための配管や燃料ガス供給のための配管の敷設・接続等が行われて設置される(ステップS3)。そして、ユーザによる現実の使用開始前にサービスマンによる試運転が実施される。すなわち、全ての電源をONにすると(ステップS4)、残寿命取得処理部94の一つの機能によって、現在日時情報を得るための計時部95が機能しているか否か、つまりカレンダ(日付や時刻)が設定されているか否かについて、リモコン90の報知部に表示されて確認が求められる(ステップS5)。リモコン90の操作釦を利用して未設定を意味する信号を入力すると、その設定を促す旨の表示が行われる(ステップ5でNO,ステップS6)。これにより、サービスマンが手動設定するか、自動設定(自動同期設定)指令を入力するかして、設定が完了することになる。なお、この段階で設定が完了しなければ、以後の熱源機の作動が停止されることになる。リモコン90から既に設定されていることを意味する信号を入力すると、次に、寿命判定処理が行われる(ステップS5でYES,ステップS7)。ステップS7では、上述の如く、まず、残寿命取得処理部94での残寿命の取得を行い、万一、この残寿命取得の段階で得られた残寿命が既に上記の報知期間よりも短くなっていれば、リモコン90に対しCOセンサ7を交換する必要がある旨の報知信号を発し(ステップS7で「到達」、ステップS8)、報知期間の経過を待っても交換されない場合には熱源機の作動を強制停止させる(ステップS9)。通常の場合は、設置段階では残寿命が相当残っているため、給湯制御部91や燃焼改善処理部92等に対し熱源機の作動を許可する信号を出力する(ステップS7が「未到達」、ステップS10)。
【0032】
使用段階P3では、寿命監視処理部93による処理として、計時部95からの日付や時刻情報を読み込んでその時間の進行に伴い、ステップS7で得た残寿命を減算カウントしていく(ステップS11)。この減算カウントを、減算カウント後の残寿命が所定値、つまり報知期間まで短くなるまでの期間、繰り返し行う(ステップS12でNO,ステップS11)。そして、遂に、残寿命が報知期間まで短くなれば(ステップS12でYES)、センサ寿命処理として、まずリモコン90を通してユーザに交換の必要がある旨の報知処理を行い、交換されないままさらに残寿命が短くなれば熱源機の作動を強制的に停止させるようにする(ステップS13)。
【0033】
以上の実施形態によれば、本実施形態で用いているCOセンサ7(CO濃度検出部71)が、その寿命が使用時間(通電時間)の積算により進行するのではなくて、使用の有無(通電の有無)に拘わらず製造時点から単なる時間の経過によって進行するという電気化学式ガスセンサとして特有の特性を有し、かつ、かかるCOセンサ7を用いた製品である熱源機が製造段階と現実に設置されて使用が開始される段階との間に例えば在庫時間というような時間的な遅れを有するものであっても、COセンサ7の寿命到達を確実にユーザ等に報知することができ、その交換を促すことができる。これにより、COセンサ7によるCO濃度検出を常に正確に把握して不完全燃焼状態が発生しているか否かの検出を正確に行うことができるようになり、燃焼改善処理部92による不完全燃焼状態の解消・防止を確実に行うことができるようになる。以上により、従来、その寿命が単なる時間経過により進行するため、正確なガス検出を担保する上で複雑な対策処理を行うことが必要であった電気化学式ガスセンサであるCOセンサ7を、そのような複雑な対策処理を行うことなく、不完全燃焼防止機能付き燃焼機器におけるCO濃度検出用のセンサとして安全にかつ容易に使用することができるようになる。
【0034】
なお、上記の報知処理に基づきCOセンサ7が新しいものに交換された場合には、図3のステップS2に戻り、再度、設置段階P2及び使用段階P3の処理を繰り返すことになる。ここで、センサの交換とは、CO濃度検出部71、センサ出力回路72及び不揮発性メモリ73が一体に組み付けられたCOセンサ7全体を交換することであり、交換された新しいCOセンサ7の不揮発性メモリ73には新しいCO濃度検出部71の製造時情報が書き込まれているのである。
【0035】
<他の実施形態>
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の実施形態を包含するものである。すなわち、上記実施形態では、残寿命取得処理部94で残寿命を取得するようにし、以後、残寿命を用いて処理を行っているが、これに限らず、寿命到来日(何年何月何日という具体的日程)を用いて処理を行うようにしてもよい。この場合には、残寿命取得処理部94に代えて寿命取得処理部とし、寿命取得処理部で製造時情報と設定寿命情報とから寿命到来日を演算 (製造時+設定寿命=寿命到来日) して求めるようにすればよい。そして、この場合には、寿命監視処理部で所定期間の進行毎に寿命到来日と計時部95の現在日時情報とから寿命到来日までの残寿命を演算するようにしてもよいし、あるいは、寿命取得処理部での寿命到来日の取得時点での既経過期間に対し計時部95の現在日時情報に基づいて期間の進行に伴いその期間(例えば日数)を加算カウントするようにしてもよい。つまり、図3のステップS11で残寿命の減算カウントを行うのではなくて、既経過期間の加算カウントを行い、加算カウント後の既経過期間と寿命到来日との比較を行うようにする。
【0036】
また、上記実施形態では、不完全燃焼状態の発生をCO濃度により判定するようにして電気化学式ガスセンサとしてCOセンサ7を示したが、これに限らず、O(酸素)濃度を用いて不完全燃焼状態の発生を判定するようにしてもよい。この場合は電気化学式ガスセンサであるOセンサを用いてO濃度を検出するようにすればよく、この場合にも上記の実施形態の不揮発性メモリ73を搭載して、その製造時情報を予め書き込んだOセンサを用いればよい。又、COセンサ7又はCO濃度検出部71として、電気化学式ガスセンサにより構成されたものを示したが、これに限らず、接触燃焼方式のガスセンサにより構成してもよい。かかる方式のものでも時間経過と共に寿命が進行すると考えられ、寿命に起因する不都合は電気化学式のものと同様に存するからである。これらの点は上記のOセンサにおいても同様であり、電気化学式に限らず他の方式のものでもよい
【0037】
上記実施形態では、不完全燃焼発生を解消するための燃焼改善処理として、燃焼改善処理部92により送風ファンの回転数増大補正する例を示したが、これに限らず、不完全燃焼状態を改善し得る処理であれば他の処理を行う構成にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態に係る熱源機を示す模式図である。
【図2】コントローラのブロック構成図である。
【図3】特にCOセンサの寿命に係る処理についてまとめたフローチャートである。
【符号の説明】
【0039】
7 COセンサ(特定成分検出手段)
71 CO濃度検出部(ガスセンサ、電気化学式ガスセンサ)
73 不揮発性メモリ
92 燃焼改善処理部
93 寿命監視処理部
94 残寿命取得処理部
95 計時部
96 計時設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼バーナと、この燃焼バーナからの燃焼排ガス中に含まれる不完全燃焼状態の発生判定の指標となる特定成分濃度を検出するように組み付けられた特定成分検出手段と、この特定成分検出手段からの濃度検出値に基づいて不完全燃焼状態の発生を判定して燃焼改善処理を実行するコントローラとを備えた不完全燃焼防止機能付き燃焼機器において、
上記特定成分検出手段は、上記特定成分濃度を検出するガスセンサと、このガスセンサを製造した製造年月日に関する製造時情報が予め書き込まれて記録された不揮発性メモリとを含んで構成される一方、
上記コントローラは、燃焼機器設置後であって燃焼機器使用開始前において、上記不揮発性メモリから読み出した製造時情報に基づいて上記ガスセンサの寿命情報を取得し、かつ、取得した寿命情報に基づいて交換時期を報知する報知信号を出力する寿命監視処理を実行するように構成されている
ことを特徴とする不完全燃焼防止機能付き燃焼機器。
【請求項2】
燃焼バーナと、この燃焼バーナからの燃焼排ガス中に含まれる不完全燃焼状態の発生判定の指標となる特定成分濃度を検出するように組み付けられた特定成分検出手段と、この特定成分検出手段からの濃度検出値に基づいて不完全燃焼状態の発生を判定して燃焼改善処理を実行するコントローラとを備えた不完全燃焼防止機能付き燃焼機器において、
上記特定成分検出手段は、上記特定成分濃度を検出するガスセンサと、このガスセンサを製造した製造年月日に関する製造時情報が予め書き込まれて記録された不揮発性メモリとを含んで構成される一方、
上記コントローラは、上記ガスセンサの残寿命を取得する残寿命取得処理部と、現在日時として年月日情報を含んで参照可能な計時部と、上記残寿命取得処理部により取得された残寿命に基づいて交換時期を報知する報知信号を出力する寿命監視処理部とを備え、
上記残寿命取得処理部は、燃焼機器設置後であって燃焼機器使用開始前において、上記不揮発性メモリから読み出した製造時情報と、計時部から読み込んだ現在日時情報との比較により設定寿命情報の内の既経過期間を演算して残寿命を取得するように構成されている
ことを特徴とする不完全燃焼防止機能付き燃焼機器。
【請求項3】
請求項2に記載の不完全燃焼防止機能付き燃焼機器であって、
上記コントローラは、上記計時の日付及び時刻情報について自動的に基準時に同期設定する計時設定部をさらに備えている、不完全燃焼防止機能付き燃焼機器。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の不完全燃焼防止機能付き燃焼機器であって、
上記ガスセンサは、電気化学式ガスセンサにより構成されている、不完全燃焼防止機能付き燃焼機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−58148(P2009−58148A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−224328(P2007−224328)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】