説明

不審者監視装置および不審者監視システム

【課題】監視センタ等の負担を抑えつつ、迅速に不審者を画像確認して対処可能とする。
【解決手段】監視対象物の周囲に設定された警戒ゾーン内の不審者を検出し、通信回線を介して外部の監視センタに前記警戒ゾーンを撮影した画像を送信する不審者監視装置において、前記警戒ゾーンを撮影して画像を取得する撮像部と、前記警戒ゾーンに存在する不審者を検出する不審者検出部と、前記警戒ゾーンのうち前記監視対象物の近傍の非常ゾーンを除く監視ゾーン内に不審者を検出すると前記監視センタへ画像監視要請を通報し、前記非常ゾーン内に不審者を検出すると前記監視センタへ非常事態発生を通報する警報処理部と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金庫など重要物に接近する不審者を検出して監視センタへ撮影画像を送信する不審者監視装置および不審者監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オフィスなど監視対象の建物に監視カメラを設置し、画像解析により建物への侵入者を検出して遠隔の監視センタへ撮影画像を通報する画像監視システムが提供されている。一般に画像監視システムは、警戒セットモードと警戒解除モードを持ち、ユーザが建物に居ない警戒セットモード中に建物へ侵入した人物を不審者とみなして異常通報している。
【0003】
上記の画像監視システムは、ユーザが居ない無人の建物への侵入を監視するが、犯罪が発生するシーンはこれに限らない。例えば、不正に入手した銀行のキャッシュカードを使ってATMを操作し、他人の預金を払い出すといった犯罪がある。また、ユーザが居るときに、金庫を狙って強盗に押し入る犯罪もある。
これらのケースでは、監視対象のエリアに、特定のユーザ以外にも不特定多数の人物が存在することが想定されるため、その中から不審者を抽出する必要がある。ATMの不正利用者を検出する方法としては、画像処理によりATM利用者が不審者であることを検出する警報装置が提案されている(下記特許文献1)。この警報装置は、ATM上部に監視カメラを設置してATMの操作者を撮影し、画像から顔の特徴部分である目、鼻、口等を抽出する。マスクとサングラスを着用して顔を隠蔽している場合は、特徴部分が抽出できず、その人物を不審者と判定する。そして、不審者と判定したときは管理者等に通報し、管理者が画像を詳細に監視して不審者であることを確認する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−35992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記警報装置は、ATMが操作されたタイミングで不審者検知のアルゴリズムを動作させている。つまり、ATMの直近に人物が居る状況で不審者判定を行う。このため、不審者を検出した旨の通報を受けた管理者が画像を確認するときには、既に不正行為が始まっており、不審者を威嚇する等の対応が遅れてしまうおそれがある。この問題は上述した金庫等を監視する際にも生じる。
一方、監視範囲を広げ、例えば、ATMが設置された店舗全体や金庫が設置された部屋全体とすると、金庫等の監視対象物に近づく予定がない人物がマスクとサングラスを着用している場合でも、不審者として通報されてしまう。したがって、このような誤報により、管理者あるいは監視センタでの画像確認の作業負荷が高くなってしまうことが問題となる。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、監視センタ等の負担を抑えつつ、迅速に不審者への対処が可能な不審者監視装置および不審者検出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明の不審者監視装置は、監視対象物の周囲に設定された警戒ゾーン内の不審者を検出し、通信回線を介して外部の監視センタに前記警戒ゾーンを撮影した画像を送信する不審者監視装置において、前記警戒ゾーンを撮影して画像を取得する撮像部と、前記警戒ゾーンに存在する不審者を検出する不審者検出部と、前記警戒ゾーンのうち前記監視対象物の近傍の非常ゾーンを除く監視ゾーン内に不審者を検出すると前記監視センタへ画像監視要請を通報し、前記非常ゾーン内に不審者を検出すると前記監視センタへ非常事態発生を通報する警報処理部と、を備えることを特徴とする。
かかる構成によれば、不審者として検出された人物が監視対象物の近傍にいるのかある程度離れた位置にいるのかにより通報内容を異ならせることで、監視センタでの画像確認の負担を抑えつつ、不審者への対処を迅速に実践することができる。
【0008】
また、上記構成において、更に、周囲に警報音を出力する警報部を備え、前記警報処理部は、前記画像監視要請の通報時は前記警報音を出力させず、前記非常事態発生の通報時には前記警報音を出力させる。
かかる構成によれば、不審者として検出された人物が監視対象物からある程度離れた位置にいるときは、警報音は発せられないが監視センタでは画像監視することができるため、その人物が実際に不審者ではなかった場合でも当人および周りの人に不快感を与えることを防ぐことができる。
【0009】
また、上記構成において、前記不審者検出部は、前記監視ゾーンに検出された不審者を前記警戒ゾーン内にいる間追跡し、前記警報処理部は、前記画像監視要請の通報に対して前記監視センタから正常確認信号を受信した場合は、前記追跡中の不審者が前記非常ゾーンに検出されても前記非常事態発生の通報を行わない。
かかる構成によれば、監視センタで既に不審者でないことが確認された人物に対して非常通報されることがないため、監視センタでの監視負担および当事者や周囲の人に不快感を与えることを防ぐことができる。
【0010】
また、上記構成において、前記警報処理部は、前記正常確認信号を受信すると前記追跡中の不審者に対して許可フラグを設定し、前記非常ゾーン内に検出した不審者に対して前記許可フラグが設定されていない場合に前記非常事態発生を通報する。
また、前記警報処理部は、前記正常確認信号を受信すると、前記画像監視要請を通報に伴う前記画像の送信を終了するのが好適である。前記警報処理部は、前記画像監視要請を通報したときは低画質の前記画像を前記監視センタへ送信し、前記非常事態発生を通報したときは高画質の前記画像を前記監視センタへ送信してもよい。
【0011】
また、上記目的を達成するために本発明の不審者監視システムは、監視対象物の周囲に設定された警戒ゾーン内の不審者を検出して前記警戒ゾーンを撮影した画像を送信する不審者監視装置および当該送信された画像を受信して表示する監視センタを含んで構成され、前記不審者監視装置は、前記警戒ゾーンを撮影して画像を取得する撮像部と、前記警戒ゾーンに存在する不審者を検出して前記警戒ゾーン内にいる間追跡する不審者検出部と、前記警戒ゾーンのうち前記監視対象物の近傍の非常ゾーンを除く監視ゾーン内に不審者を検出すると前記監視センタへ画像監視要請を通報し、前記非常ゾーン内に不審者を検出したときは当該不審者について前記監視センタから正常確認信号を受信していない場合に前記監視センタへ非常事態発生を通報する警報処理部とを有し、前記監視センタは、前記不審者監視装置から受信した前記画像監視要請の通報および前記非常事態発生の通報を監視員に報知する報知部と、前記不審者監視装置から受信した前記画像を表示する表示部と、監視員による正常確認の操作を入力する入力部とを有し、前記不審者監視装置からの前記画像監視要請の通報に対して前記正常確認の操作が入力されると、当該不審者監視装置に対して前記正常確認信号を送信する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、監視センタでの画像確認の負担を抑えつつ、不審者への対処を迅速に実践することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態の監視システム1の概略構成図である。
【図2】監視装置2の概略構成を示す図である。
【図3】監視装置2の配置状況や監視空間を表すイメージ図である。
【図4】監視装置2における監視処理の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態として、監視対象物である金庫の周囲の空間を監視する不審者監視システム(以下、単に監視システムと称す)を例に、図面を参照して説明する。
【0015】
まず、本実施形態に係る監視システムの全体構成および動作について、概要を説明する。
図1は、監視システムの概略の構成図である。監視システム1は、不審者監視装置2(以下、単に監視装置と称す)、監視センタ3を含んで構成される。監視装置2は、監視対象物がある建物ごとに設けられ、監視対象物の周囲の監視空間にいる不審者を検出して監視センタへ通報する。また監視装置2は、監視空間を撮影した画像を監視センタへ送信する。監視センタ3は、各監視装置2と公衆網等の通信回線4を介して通信可能に接続され、複数の監視装置2を統括管理する。監視センタ3には、監視装置2からの通報に対応する監視員が常駐する。監視員は、監視装置2から送られた画像を見て現場の状況を観察し、必要に応じ、監視装置2を介して不審者に警告したり警備員等へ現場急行を指示したりする。
【0016】
一般にオフィス等では、監視対象物である金庫は、従業員が就業中に出入りする事務室等に設置される場合が多い。従業員以外の来訪者が出入りすることもある。すなわち、金庫周囲にいる人物の中にサングラスやマスクを着用した人物がいたとしても、不審者でない可能性もある。そこで、本実施形態の監視装置2は、監視対象物である金庫周囲の警戒ゾーンを、金庫の近傍空間にあたる非常ゾーンと、この非常ゾーンに隣接する外側空間にあたるを監視ゾーンとに区別して、不審者を検出した位置に応じて異なる監視処理を実行する。例えば、非常ゾーンは金庫の周囲1mまでの範囲とし、監視ゾーンは金庫の周囲1mから5mまでの範囲とする。監視ゾーン内に不審者らしき人物がいたとしても、金庫を目当てに侵入した強盗などの賊であるとは確定できない。このため監視装置2は、監視ゾーン内に不審者を検出した場合、監視センタでの画像モニタリングによる監視を要請するべく、監視要請通報を行う。監視要請通報を受けた監視センタ3では、監視員がリアルタイムで画像を監視して不審な行動をとる人物がいないか等を継続的にチェックし、必要に応じて監視装置2との間で音声通話を行い、現場の安全確認や不審者らしき人物に対して犯行を中止するよう警告する。一方、金庫近傍の非常ゾーン内に不審者を検出した場合は、不審者が金庫に接近している非常事態であるため、監視センタに非常通報する。非常通報を受けた監視センタ3では、監視員は即座に不審者に対して犯行を中止するよう警告を行う。
【0017】
続いて、監視装置2および監視センタ3について、構成および動作を説明する
まず、監視センタ3の構成および動作について説明する。監視センタ3は、監視装置2と通信回線4を介して通信するための機能、画像を表示するための機能(液晶ディスプレイ)、監視員が各種の操作を入力するための機能(キーボード、マウス)を有する。また、監視装置2との間で音声通話を行うための機能(マイク、スピーカ)を備える。監視センタ3は、例えばパーソナルコンピュータを用いて構成することができる。
監視センタ3は、監視装置2から通報を受けると液晶ディスプレイやスピーカを駆動して監視員に通報受信を報知するとともに、監視装置2から受信した画像を液晶ディスプレイに表示する。また、キーボードやマウスを介して監視員から音声通話の指示が入力されると、監視センタとの間で通話を開始させる。さらに、監視員が画像を確認して現場が正常であることを確認し、キーボードやマウスを介して監視員から正常確認の操作が入力されると、正常確認信号を監視装置2へ送信する。この正常確認については後に詳述する。
【0018】
次に、監視装置2の構成および動作について説明する。図2は、監視装置2の概略構成を示す図である。また図3は、監視装置2の配置状況や監視空間を表すイメージ図である。
図3に示す例では、監視装置2は、金庫10の上方に設置され、金庫10周囲の警戒ゾーンにおいて不審者を監視する。警戒ゾーンより外側は被警戒ゾーンとし、監視を行わない。監視装置2の配置については、監視対象物である金庫10の設置場所や部屋の環境に応じて金庫10周辺の監視に適した位置とすればよい。
【0019】
監視装置2は、カメラ21、記憶部22、マイク23、スピーカ24、通信部25、及び制御部26を含んで構成される。
カメラ21は、例えばCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサを撮像素子として備え、少なくとも警戒ゾーン全体を撮影画角に含む撮影対象空間を撮影し、電気信号に変換して生成した画像を制御部26へ出力する。カメラ21は、撮影対象に人物を含む場合、その人物或いはその人物の顔に焦点を合わせる自動焦点調整機能を持つのが好適である。或いは、比較的に監視装置2から近距離の非常ゾーンと遠距離の監視ゾーンの2段階に焦点を自動調整する機能を持たせてもよい。また、非常ゾーンを撮影する手段と監視ゾーンを撮影する手段とを別個に設け、複数の撮像手段を用いる構成としてもよい。
【0020】
記憶部22は、半導体メモリやハードディスクで構成され、監視装置2の動作に必要な各種プログラムやデータを記憶する。特に、制御部26による不審者検知に必要なプログラムや基準データ等を記憶する。また、制御部26の記録制御により所定期間の撮影画像を記録可能な領域を有する。
【0021】
マイク23及びスピーカ24は、制御部26によって制御され、監視装置2が設置された監視現場と監視センタ3の監視員との間で行われる音声通話を実現する手段である。また、スピーカ24は、非常事態が発生した際に警報音を周囲に発する機能を担う。
通信部25は、通信回線4を介して監視センタ3と通信するための手段であり、例えばISDNモデム等で構成される。移動体通信網を利用して無線通信を行う場合は、採用する無線通信規格に適応した通信モジュールを用いればよい。
【0022】
制御部26は、マイクロプロセッサ(MPU)等で構成され、記憶部22に記憶されたプログラムを実行し、監視装置2の各部の動作を制御するとともに、監視処理を実行する。具体的には、制御部26は、カメラ21、記憶部22、マイク23、スピーカ24、通信部25と接続され、各部から入力される信号を処理し、各部の動作を制御する。制御部26は、本発明の不審者検出部および警報処理部の機能を担う。
【0023】
制御部26は、カメラ21による撮影画像から警戒ゾーン内に存在する人物を抽出し、更に抽出した各人物が不審者であるか否かを判定する。そして、検出した不審者が非常ゾーン内にいるのか監視ゾーン内にいるのかに応じて、異なる警報処理を実行する。以下、制御部26が実行する監視処理について詳述する。
【0024】
制御部26は、順次入力される撮影画像を用い、複数フレーム間で輝度変化が生じている纏まった領域を変動領域として抽出する。変動領域の大きさや形状等のパラメータが、記憶部22に予め設定された人物らしさの基準に合致する場合に、その変動領域は人物であると認識する。
【0025】
また制御部26は、抽出した人物が、非常ゾーン及び監視ゾーンのいずれかに存在するか判別する。具体的には、撮影画像の縦方向の座標と金庫10からの距離とを対応付けて記憶部22に登録しておき、抽出した人物の足元位置(人物を構成する変動領域の最下画素)の座標に基づき、金庫10から人物位置までの距離を算出し、人物が存在するゾーンを判定する。撮影画像の座標と距離との関係は、カメラ21の設置位置および基準撮影方向に応じて定まる。
【0026】
なお、抽出した人物が存在するゾーン判定方法は上記に限らず公知の何れの方法であってもよい。例えば、カメラ21としてステレオカメラを用い、視差情報を利用して人物の位置を算出することができる。或いは、カメラ21とは別体のカメラを監視装置2とは異なる位置(例えば天井から下向きを撮影する位置)に設け、2つのカメラにより抽出した人物の位置対応に基づいて人物が存在するゾーンを判定してもよい。また、画像による判定方法に限らず、レーザー、超音波またはマイクロ波の測距センサを併用し、画像上で検出された人物の方向を測距することで人物の位置を求めることもできる。
【0027】
制御部26は、警戒ゾーンである非常ゾーンまたは監視ゾーンにて人物を抽出すると、抽出した人物が記憶部22に予め設定された不審者らしさの基準に合致するかに基づき、その人物が不審者か否か判定する。不審者の検出方法は画像に限らず何れの方法であってもよいが、本実施形態では、不審者の画像特徴として、カメラ21で取得した画像に人相が判別可能な顔特徴部分となる各部位(目、鼻、口)を隠蔽している(顔の各部位が検出できない)人物が存在することを検出する。
【0028】
具体的には、人物を構成する変動領域のエッジ成分を抽出し、エッジ画像データにおいて顔の輪郭形状に近似した楕円形状のエッジ分布を検出して、そのエッジ分布に囲まれた楕円領域内の色情報が、肌色(例えばHSV表色系において色相(H)成分が0から30にある画素)を含む場合に当該楕円領域を顔領域として抽出する。そして、この顔領域内に、顔特徴部分となるエッジ(例えば、目、口などの水平エッジ)が現れているか否かを判定し、このような顔特徴部分が検出できない人物を不審者であると判定する。
【0029】
また制御部26は、顔領域の輝度分布からサングラスとマスクを装着した顔領域を個別に検出する。サングラスとマスクを装着した顔領域は、上方に暗い画素が集中するため縦方向の輝度重心が中心より低い位置となる。また、横方向に見たライン毎の輝度値が小さくなるのに対し縦方向に見たライン毎の輝度値の分散は大きい。さらに、サングラスの部分により輝度値が極端に低いという性質がある。そこで、顔領域の輝度重心のY座標が顔領域の中心より下方にあり、更に、X方向の標準偏差とY方向の標準偏差の比が所定しきい値より大きく、更に、輝度値の低い画素の割合がしきい値以上となる場合に、この顔領域内の画像はサングラスとマスクを装着した顔の画像であると判定して、当該顔領域を不審者であると判定する。
【0030】
不審者の検出処理は、これに限らず人物の外観が予め設定した不審者パターンに合致するか否かによって判定してもよい。
例えば、全ユーザ或いは金庫の解錠権限を持つ一部のユーザの顔特徴部分を記憶部22に予め登録しておき、検出した人物の顔特徴部分が登録データと一致しない場合に、その人物を不審者と判定する。或いは、地域等で共有している不審者データベースを利用して、不審者の顔特徴部分を予め登録しておき、検出した人物の顔特徴部分が登録データと一致する場合に、その人物を不審者と判定する。
【0031】
また、制御部26は、不審者と判定した人物を構成する変動領域をラベリングし、警戒ゾーン内に存在する間追跡する。具体的には、現フレームで検出された不審者を構成する変動領域を、1フレーム前の不審者を構成する変動領域と比較し、その移動距離が所定値以内であり、変動領域の形状や大きさが類似する場合に、2つのフレームで検出された不審者を同体であると認識する。
【0032】
制御部26は、上記処理にて警戒ゾーン内に不審者を検出すると、不審者を検出したゾーンに応じて、各種の警報処理を実行する。具体的には、監視ゾーン内に不審者を検出した場合は、監視センタに対し、画像監視要請を通報(要請通報)するとともに、カメラ21から入力される撮影画像を順次送信する。一方、非常ゾーン内に不審者を検出した場合は、監視センタに対し、非常事態発生を通報(非常通報)するとともに、カメラ21から入力される撮影画像を順次送信する。同時に、スピーカ24を駆動させ、警報音を周囲に出力する。
【0033】
また、画像監視要請の通報に対して監視センタ3から正常確認信号を受信すると、制御部26は、追跡中の不審者について許可フラグを設定する。そして非常ゾーン内に不審者を検出した場合に、当該不審者について許可フラグが設定されていれば上述の非常通報は実行せず、許可フラグが設定されていない不審者がいる場合に限り非常通報を実行する。
【0034】
以下、監視装置2における監視処理の動作を詳細に説明する。
図4は、監視装置2で常時実行される監視処理を示すフローチャートである。監視装置2は、カメラ21から順次入力される撮影画像について上述した不審者検出処理を実行し、処理結果に対して、まず警戒ゾーンのうち監視ゾーン内に不審者を検出したか否か判定する(S102)。監視ゾーン内に不審者を検出していない場合は、続いて非常ゾーン内に不審者を検出したか否か判定する(S118)。監視ゾーンおよび非常ゾーンの何れかに不審者が検出されるまで、繰り返し上記ステップS102及びステップS118の処理を実行する。
【0035】
監視ゾーン内に不審者が検出された場合は(S102のYes)、警戒ゾーン内で新たに検出された不審者であるか否か判定する(S104)。追跡中ではない新たな不審者を検出した場合は、当該不審者の追跡処理を開始する(S106)。そして、監視センタ3へ画像監視要請を通報するとともに(S108)、要請画像の送信を開始する(S110)。
【0036】
画像監視要請の通報を受けた監視センタ3では、その旨を監視員に報知するとともに、順次送られてくる画像を監視員が継続確認し、不審者として検出された人物が犯行を目論む強盗等であるかを判断する。一見して強盗と判断できる場合、監視員は監視装置2を遠隔操作し、不審者に対して犯行を中止するよう警告する。また、一見して強盗等ではないと判断できる場合、あるいは監視装置2を介した対話によって不審者ではないことが確認できた場合、監視員は正常確認の操作を入力する。このとき、監視センタ3から監視装置2へ正常確認信号が送信される。
【0037】
監視装置2は、ステップS110で要請画像を送信開始した後、或いはステップS104で追跡中の不審者であると判定すると、続いて、監視センタから監視終了の指示を受けたか否か判定する(S112)。上記正常確認信号を受信したときは監視終了の指示ありと判定し、次に、現在追跡中の不審者について許可フラグを設定する(S114)。複数の不審者を検出中であれば、その全てに対して許可フラグを設定する。これとともに要請画像の送信を終了し(S116)、S102の処理に戻る。
【0038】
一方、ステップS112で、正常確認信号を受信しておらず監視終了の指示なしと判定した場合は、続いて非常ゾーン内に不審者が検出されたか否か判定する(S118)。非常ゾーン内における不審者検出は、不審者として検出した人物が所定時間(例えば20秒)滞留したことをもって判定してもよい。
非常ゾーン内に不審者が検出されていない場合は、ステップS102の処理に戻る。非常ゾーン内に不審者が検出された場合は、当該不審者について許可フラグ設定されているか否か判定する(S120)。許可フラグが設定されていない不審者が存在する場合は、周囲に警報音を出力して非常事態の発生を報知するとともに(S122)、監視センタ3へ非常事態発生を通報する(S124)。また、非常画像の送信を開始する(S126)。非常事態が発生した際は、監視センタで不審者の外見や行為を詳細に確認し記録する必要があるため、ここで送信する非常画像はステップS110で送信する要請画像に比べて高画質(例えば、高解像度、高フレームレート)の画像とする。したがって、要請画像を送信中のときは送信対象を非常画像に切り替える。
【0039】
非常事態発生の通報を受けた監視センタでは、その旨を監視員に報知する。これにより、ステップS108の要請通報に応じて画像確認中の監視員は、不審者が金庫10近傍まで接近したことを認識し、不審者に対して犯行を中止するよう警告する等の非常対処をとることができる。
【0040】
また監視装置2は、非常画像を送信開始した後は、監視センタ3から監視終了の指示を受けるまで、継続して非常画像の送信を行う。監視センタによる一連の対処が完了して監視終了の指示を受けると(S128のYes)、非常画像の送信を終了し、再びステップS102に戻り監視処理を継続する(S130)。
【0041】
一方、ステップS120にて、非常ゾーン内に検出された全ての不審者について許可フラグが設定されている場合は(S120のYes)、監視センタにて当該人物が不審者でないことを既に確認済みであるため、あらためて非常通報を行う必要はない。したがって、非常通報を行うことなく、ステップS102の処理に戻り監視を継続する。
【0042】
以上に説明したように、本実施形態の監視システム1では、監視対象物である金庫10の近傍空間(非常ゾーン)に不審者が検出された場合は賊である可能性が高いため、周囲に警報するとともに監視センタ3に非常通報し、一方、その外側の空間(監視ゾーン)に不審者が検出された場合は賊と断定できないため、警報を行わず監視センタ3への画像監視要請を行うに留める。したがって、様々な人物が出入りする空間を監視する場合であっても、監視センタ3にて迅速に現場の状況(不審者の行動)を確認できるとともに、非常事態の発生時にはその旨を警報するとともに監視センタ3でも認識することができる。
【0043】
また、監視センタ3で不審者ではないことが確認された人物が金庫10の近傍に接近したとしても、警報や非常通報が行われない。このため、監視センタ3での監視負担を抑制きるとともに、監視対象の現場にいる人物に対しても誤った警報出力により不快感を与えることを防ぐことができる。
このように、不特定多数の人物が出入りする監視空間において常時不審者の存在を監視することができるとともに、不審者の存在を迅速に監視センタで認識可能である。
【0044】
なお、上記実施形態では、要請画像と非常画像の画質を異ならせることとしたが、要請画像を十分に高画質で伝送可能な通信環境であれば、同等の画質としてもよい。
また、上記実施形態では、監視ゾーンで検出した不審者について監視センタで正常確認された場合は、当該不審者が非常ゾーンに移動しても非常通報しない構成としたが、正常確認の有無にかかわらず非常通報する構成としてもよい。この場合、図4のフローチャートにおいて、S114及びS120の処理は省略される。
【符号の説明】
【0045】
1 監視システム、2 監視装置、3 監視センタ、4 通信回線、10 金庫、21 カメラ、22 記憶部、23 マイク、24 スピーカ、25 通信部、26 制御部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象物の周囲に設定された警戒ゾーン内の不審者を検出し、通信回線を介して外部の監視センタに前記警戒ゾーンを撮影した画像を送信する不審者監視装置において、
前記警戒ゾーンを撮影して画像を取得する撮像部と、
前記警戒ゾーンに存在する不審者を検出する不審者検出部と、
前記警戒ゾーンのうち前記監視対象物の近傍の非常ゾーンを除く監視ゾーン内に不審者を検出すると前記監視センタへ画像監視要請を通報し、前記非常ゾーン内に不審者を検出すると前記監視センタへ非常事態発生を通報する警報処理部と、
を備えることを特徴とする不審者監視装置。
【請求項2】
更に、周囲に警報音を出力する警報部を備え、
前記警報処理部は、前記画像監視要請の通報時は前記警報音を出力させず、前記非常事態発生の通報時には前記警報音を出力させる、請求項1に記載の不審者監視装置。
【請求項3】
前記不審者検出部は、前記監視ゾーンに検出された不審者を前記警戒ゾーン内にいる間追跡し、
前記警報処理部は、前記画像監視要請の通報に対して前記監視センタから正常確認信号を受信した場合は、前記追跡中の不審者が前記非常ゾーンに検出されても前記非常事態発生の通報を行わない、請求項1又は2に記載の不審者監視装置。
【請求項4】
前記警報処理部は、前記正常確認信号を受信すると前記追跡中の不審者に対して許可フラグを設定し、前記非常ゾーン内に検出した不審者に対して前記許可フラグが設定されていない場合に前記非常事態発生を通報する、請求項3に記載の不審者監視装置。
【請求項5】
監視対象物の周囲に設定された警戒ゾーン内の不審者を検出して前記警戒ゾーンを撮影した画像を送信する不審者監視装置および当該送信された画像を受信して表示する監視センタを含んで構成される不審者監視システムにおいて、
前記不審者監視装置は、
前記警戒ゾーンを撮影して画像を取得する撮像部と、
前記警戒ゾーンに存在する不審者を検出して前記警戒ゾーン内にいる間追跡する不審者検出部と、
前記警戒ゾーンのうち前記監視対象物の近傍の非常ゾーンを除く監視ゾーン内に不審者を検出すると前記監視センタへ画像監視要請を通報し、前記非常ゾーン内に不審者を検出したときは当該不審者について前記監視センタから正常確認信号を受信していない場合に前記監視センタへ非常事態発生を通報する警報処理部とを有し、
前記監視センタは、
前記不審者監視装置から受信した前記画像監視要請の通報および前記非常事態発生の通報を監視員に報知する報知部と、
前記不審者監視装置から受信した前記画像を表示する表示部と、
監視員による正常確認の操作を入力する入力部とを有し、
前記不審者監視装置からの前記画像監視要請の通報に対して前記正常確認の操作が入力されると、当該不審者監視装置に対して前記正常確認信号を送信する、ことを特徴とした不審者監視システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−227680(P2011−227680A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96358(P2010−96358)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【出願人】(000108085)セコム株式会社 (596)
【Fターム(参考)】