説明

不斉水素化によるエスリカルバゼピンおよびその関連化合物の調製

式IAまたはIBの化合物の調製プロセスであって、Rが、アルキル、アミノアルキル、ハロゲン化アルキル、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシ、フェニルまたは置換フェニル、または、ピリジル基:用語「アルキル」は、直鎖または分岐鎖の1〜18炭素原子を含む炭素鎖を意味し;用語「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を示し;用語「シクロアルキル」は3〜6炭素原子を有する飽和脂環式基を示し;用語「アリール」は未置換のフェニル基、あるいは、アルコキシ、ハロゲンまたはニトロ基によって置換されたフェニル置換を示し、このプロセスは、式IIの化合物の不斉水素化を具え、Rは、上記Rと同じ意味を有し、キラル触媒および水素源を用いることを特徴とするプロセス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジベンズ/b,f/アゼピン誘導体の鏡像異性体(エナンチオマ)の合成に関する。より具体的には、本発明は、ジベンズ/b,f/アゼピン誘導体鏡像異性体の合成において、エノール基質の非対称性水素化、特に、対応するエノール酢酸塩および対応するエノールエステル誘導体の不斉水素化によって、エスリカルバゼピン酢酸塩((S)−(−)−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド)およびR−(+)−リカルバゼピン酢酸塩((R)−(+)−10−アセトキシ−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド)、および、これらの誘導体の調製プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、キラル化合物が製薬産業で再調査されるなかで重大な変化があった。過去においては、不斉中心を含む分子の多くは、ラセミ体混合物として、薬市場に出されていた。ラセミ体薬剤の安全性及び/又は効率の次の関心は、単一異性体薬剤を研究および開発することを業界に促すこととなった。これらの関心は、所定のラセミ体混合物の1つの異性体がしばしば薬学的に不活性であり、他の異性体より活性が有意に低いので、ラセミ体薬剤が50%不純であるとみなされるという概念に基づくものであった。実際に、一方の異性体が、異なる作用を起こすか、望まない副作用を起こすことがある。異性体化合物は、複雑な薬物動態学的問題がさらに生じる異なる代謝プロセスを起こすこともある。結果的に、薬剤規制当局は、よりいっそう慎重になり、個々の異性体の特性および動態についての簡潔な情報をしばしば要求している。
【0003】
この点において、特に興味深い例は、オキシカルバゼピン(OXC)、カルバマゼピン(CBZ)の10−ケト類似体の場合である。

【0004】
これらの2つの化合物は、同様の構造であって、てんかんの治療において現在使用されている。オキシカルバゼピンは、CBZの酸化代謝形質転換を避けるように設計されており、よりよい耐性薬であることが要求される(Grant,S.M.et al.,Drugs,43,873−888(1992))。しかしながら、オキシカルバゼピンは、インビボにおいて、素早く完全に代謝され、「MHD」((±)−MHD,Schutz,H.et al.,Xenobiotica,16(8),769−778(1986))と呼ばれるオキシカルバゼピンの10−ヒドロキシ誘導体のラセミ体になり、従って、代謝形質転換が生じるアキラル薬剤を示し、2つの製薬的に活性のあるエナンチオマーの混合物を得る。
【0005】
(S)−(−)−10−アセトキシ−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5H−カルボキサミドおよび(R)−(+)−10−アセトキシ−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド(R−(+)−リカルバゼピン酢酸塩)の合成および改良された抗痙攣特性が記載されており、上記の単一異性体薬剤の双方は、活性代謝産物のラセミ体混合物の形成を避けるように特別に設計されている(Benes,J.et al.,米国特許第5,753,646号、および、J.et al.,Med.Chem.,42,2582−2587(1999))。エスリカルバゼピン酢酸塩およびR−(+)−リカルバゼピン酢酸塩の化合物の合成の重要なステップは、10,11−ジヒドロ−10−ヒドロキシ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド((±)−MHD)のラセミ体を、各々純粋な光学的立体異性体であり、主な中間体である((S)−(+)−10,11−ジヒドロ−10−ヒドロキシ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド((S)−(+)−MHD)および(R)−(−)−10,11−ジヒドロ−10−ヒドロキシ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド((R))−(−)−MHD)に分割することを含む。
【0006】
MHDの立体異性体は両方共、周知の化合物であり、オキシカルバゼピン代謝の研究における標準として共通に使用されている。さらに、MHDは、ナトリウムチャンネルブロッカであり、双極性I型疾患の急性躁病エピソードの治療に潜在的な効果を有する。
【0007】
ラセミ体アルコール(±)−MHDの分割は、化学文献に既に記載されている(Benes,J.et al.,J.Med.Chem.,42,2582−2587(1999)およびVolosov,A.et al.,Epilepsia,41(9),1107−1111(2000))。これらの方法は、(±)−MHDのジアステレオイソマーエステルの異なる溶解度を利用することによって、(±)−MHDのジアステレオイソマーのメトキシアセテート−エステル誘導体を形成することを含み、フラクションの結晶化により分離が可能となり、それに続く加水分解によって各々の純粋な立体異性体、(S)−(+)−MHDおよび(R)−(−)−MHDを得る。しかしながら、この方法は、相当少量の立体異性体のみを調製するために使用されるので、生産準備(パイロット)規模の量を調製して、その後工業生産するための使用を予め排除してしまうという固有の不利益を含む。必要な純粋な光学的分割剤、(+)および(−)−メントキシ酢酸は、非常に高価であり、商業的供給源から非常に多くの量を容易に入手できない。より安く、容易に入手可能な光学的に純粋な(+)または(−)メントールから(+)および(−)−メントキシ酢酸を調製することが考えられたが、このような調製は、時間を要し、低速で、潜在的な危険性がある。さらに、これらのメントキシ酢酸は、(±)−MHDと反応させ、重要な中間体ジアステロイソメリックメントキシ酢酸エステルを形成するために、活性化する必要がある。このような活性化は、通常、遊離酸から酸塩化物(これらの酸塩化物も、商業的供給源からは非常に高価な製品となる)への転換、すなわち、例えば、チオニル塩化物または塩化オキサリルなどの好ましくないハロゲン化試薬の利用を必要とする追加の合成ステップ、を介してなされる。代替として、このような反応は、ジシクロヘキシルカルボジイミドなどの結合試薬を用いて行うことができる。この試薬も、高価であり(融点が低いので適切に扱うのが困難)、潜在的な皮膚刺激物として指摘されており、従って、労働者に対して健康被害が及ぶ。多くの場合、所望する生成物からの副産物であるジシクロヘキシルウレアを完全に除去するのは困難である。さらに、この方法に関する非常に重大な制限は、結晶化の後、単離された光学的に純粋なメントキシ酢酸エステルの得られる収率が比較的に低いことであり、収率は、通常、20%よりわずかばかりよいだけである(各異性体に関して最大収率は50%である)。
【非特許文献1】Benes,J.et al.,J.Med.Chem.,42,2582−2587(1999)およびVolosov,A.et al.,Epilepsia,41(9),1107−1111(2000)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
WO02/092572は、立体異性体を分割するために無水酒石酸を利用することを含むプロセスによって、ラセミ体混合物から(S)−(+)−MHDおよび(R)−(−)−MHDの立体異性体を分離するプロセスを開示している。特に、(2R,3R)−ジ−O,O’−置換体の酒石酸無水物は、(S)−(+)−MHDのジアステレオ異性体前駆体を析出するために利用することができ、(2S,3S)−ジ−O,O’−置換体−酒石酸無水物は、(R)−(−)−MHDのジアステレオ異性体前駆体を析出するのに使用される。エスリカルバゼピン酢酸塩およびR−(+)−リカルバゼピン酢酸は、アシル化によって、分割された(S)−(+)−MHDおよび(R)−(−)−MHDから得られる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明において特に興味のあるジベンズ/b,f/アゼピン誘導体は、以下の化学式を有する化合物であり:

ここで、Rは、アルキル、アミノアルキル、ハロゲン化アルキル、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシ、フェニルまたは置換フェニル、あるいは、ピリジル基であり、用語「アルキル」は、直鎖または分岐鎖の1〜18炭素原子を含む炭素鎖を意味し;用語「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を示し;用語「シクロアルキル」は3〜6炭素原子を有する飽和脂環式基を示し;用語「アリール」は未置換のフェニル基、あるいは、アルコキシ、ハロゲンまたはニトロ基によって置換されたフェニル置換を示す。式IAおよびIBの化合物は、米国特許第5,753,646号に開示されている。
【0010】
本発明の目的は、概ね、エスリカルバゼピン酢酸およびR−(+)−リカルバゼピン酢酸の調製に関して改良されたプロセス、ならびに、式IAおよびIBのジベンズ/b,f/アゼピン誘導体の調製に関する改良されたプロセスを提供する。
【0011】
本発明の第1の面によれば、式IAまたはIBの化合物の調製に関するプロセスが提供される。

ここで、Rはアルキル、アミノアルキル、ハロゲン化アルキル、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシ、フェニルまたは置換体フェニル、あるいは、ピリジル基であり;用語「アルキル」は直鎖または分岐鎖の1〜18炭素原子を含む炭素鎖を意味し;用語「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を示し;用語「シクロアルキル」は3〜6炭素原子を有する飽和脂環式基を示し;用語「アリール」は未置換のフェニル基、あるいは、アルコキシ、ハロゲンまたはニトロ基によって置換されたフェニル置換を示し、このプロセスは、式IIの化合物の不斉水素化を具え、

ここで、Rは、上記Rと同じ意味であり、キラル触媒および水素源を用いる。
【0012】
一実施例において、Rは、C1〜3アルキル、好ましくはメチルである。
【0013】
他の実施例において、式IAまたはIBの化合物は、
1. 10−アセトキシ−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
2. 10−ベンゾイルオキシ−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
3. 10−(4−メトキシベンゾイルオキシ)−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
4. 10−(3−メトキシベンゾイルオキシ)−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
5. 10−(2−メトキシベンゾイルオキシ)−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
6. 10−(4−ニトロベンゾイルオキシ)−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
7. 10−(3−ニトロベンゾイルオキシ)−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
8. 10−(2−ニトロベンゾイルオキシ)−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
9. 10−(4−クロロベンゾイルオキシ)−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
10. 10−(3−クロロベンゾイルオキシ)−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
11. 10−(2−アセトキシベンゾイルオキシ)−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
12. 10−プロピノイルオキシ−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
13. 10−ブチリルオキシ−10,1−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
14. 10−ピバロイルオキシ−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
15. 10−[(2−プロピル)ペンタノイルオキシ]−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
16. 10−[(2−エチル)ヘキサノイルオキシ]−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
17. 10−ステレオイルオキシ−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
18. 10−シクロペンタノイルオキシ−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
19. 10−シクロヘキサノイルオキシ−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
20. 10−フェニルアセトキシ−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
21. 10−(4−メトキシフェニル)アセトキシ−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/−アゼピン−5−カルボキサミド
22. 10−(3−メトキシフェニル)アセトキシ−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
23. 10−(4−ニトロフェニル)アセトキシ−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
24. 10−(3−ニトロフェニル)アセトキシ−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
25. 10−ニコチノイルオキシ−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
26. 10−イソニコチノイルオキシ−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
27. 10−クロロアセトキシ−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
28. 10−ブロモアセトキシ−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
29. 10−ホルミルオキシ−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
30. 10−エトキシカルボニルオキシ−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
31. 10−(2−クロロプロピノイルオキシ)−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
の各々のSまたはRのエナンチオマである。
【0014】
従って、本発明は、対応するエノール酢酸から、(S)−(−)−10−アセトキシ−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド(エスリカルバゼピン酢酸)を調製するプロセスを提供する。本発明は、更に、(R)−(+)−10−アセトキシ−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド(R−(+)−リカルバゼピン酢酸塩)を調製するプロセスを提供する。
【0015】
一実施例において、キラル触媒は、ロジウム複合体である。好適には、キラル触媒は、以下の構造:

およびこれらの立体異性体とともにキラルリガンドを有するRh(I)複合体から選択され、Rは、アルキル、アリール、置換体アルキル、置換体アリール、ヘテロアリール、フェロセニル、アルコキシおよびアリルオキシからなる群から選択される。Rは、CH、エチル(Et)、イソプロピル(i−Pr)、t−ブチル(t−Bu)、1−アダマンチル(adamantyl)、EtC、シクロ−C、シクロ−C11、フェニル、p−トリル、3,5−ジメチルフェニル、3,5−ジ−t−ブチルフェニル、オルト−アニシルおよびナフチルから選択されてもよい。好ましくは、Rは,t−ブチルである。
【0016】
一実施例において、キラル触媒は、[Rh(NBD)(DuanPhos)]BF、[Rh(COD)(TangPhos)]BF、[Rh(NBD)(TangPhos)]BFおよび[Rh(COD)(TangPhos)]BFの立体異性体から選択され、CODは、η−1,5−シクロオクタジエン、NBDは、ノルボナジエンであり、ScRp−DuanPhosおよびRRSS−TangPhos立体異性体は、以下の化学構造:

を有する。
【0017】
さらに詳しくは、キラル触媒は、[Rh(NBD)(SSRR−TangPhos)]BF、[Rh(COD)(SSRR−TangPhos)]BF、[Rh(NBD)(RcSp−DuanPhos)]BF、[Rh(NBD)(ScRp−DuanPhos)]BF、[Rh(COD)(RcSp−DuanPhos)]BF、[Rh(NBD)(RRSS−TangPhos)]BF、[Rh(COD)(RRSS−TangPhos)]BF、および、[Rh(COD)(ScRp−TangPhos)]BFから選択される。
【0018】
一実施例において、水素源は、水素ガスである。
【0019】
他の実施例において、触媒に対する化合物IIのモル比は、1:1から50,000:1、好ましくは、500:1、より好ましくは50:1である。
【0020】
不斉水素化は、0℃から室温までの温度で行われる。好適には、不斉水素化は、室温で行われる。
【0021】
一実施例において、不斉水素化は、20〜1000psi、好ましくは750〜1000psiの圧力で行われる。
【0022】
一実施例において、式IIの化合物は、メタノール、エタノール、THF、2−メチル−THF、酢酸メチル、酢酸エチル、ジクロロメタン、トリフルオロエタノール、1,4−ジオキサン、DMFおよびこれらの混合物から選択される溶媒に溶解される。
【0023】
一実施例において、触媒は、Rh(NBD)(SSRR−TangPhos)BFであり、溶媒は酢酸エチルである。
【0024】
代替の実施例において、触媒は、[Rh(NBD)(RcSp−DuanPhos)]BFまたは、[Rh(NBD)(ScRp−DuanPhos)]BFであり、溶媒は酢酸エチル、THFまたはジクロロメタンである。
【0025】
さらに他の実施例において、触媒は、[Rh(COD)(RcSp−DuanPhos)]BFであり、溶媒は酢酸エチル、THF、2−メチル−THF、または、これらの混合物である。通常、溶媒は、THFである。
【0026】
他の実施例において、式IIの化合物は、オキシカルバゼピンから調製される。このオキシカルバゼピンを塩基および触媒の存在下で式R−C(O)−O−C(O)−Rの無水物と反応させてもよい。Rは、アルキル、アミノアルキル、ハロゲン化アルキル、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシ、フェニルまたは置換体フェニルまたはピリジル基であり;用語「アルキル」は直鎖または分岐鎖の1〜18炭素原子を含む炭素鎖を意味し;用語「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を示し;用語「シクロアルキル」は3〜6炭素原子を有する飽和脂環式基を示し;用語「アリール」は未置換のフェニル基、あるいは、アルコキシ、ハロゲンまたはニトロ基によって置換されたフェニル置換を示す。好適には、塩基は、ピリジンであり、触媒はDMAPである。
【0027】
本発明の第2の態様によると、式II:

の化合物が提供され:
Rは、アルキル、アミノアルキル、ハロゲン化アルキル、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシ、フェニルまたは置換体フェニル、あるいは、ピリジル基であり;用語「アルキル」は直鎖または分岐鎖の1〜18炭素原子を含む炭素鎖を意味し;用語「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を示し;用語「シクロアルキル」は3〜6炭素原子を有する飽和脂環式基を示し;用語「アリール」は未置換のフェニル基、あるいは、アルコキシ、ハロゲンまたはニトロ基によって置換されたフェニル置換を示す。
【0028】
本発明の第3の態様によると、式IAまたはIBの化合物を具える製薬組成物の調製プロセスが提供され、このプロセスは、上述のように式IAまたはIBの化合物を調製するステップと、式IAまたはIBの化合物を1又はそれ以上の製薬的に許容されるキャリア、及び/又は1又はそれ以上の製薬的に許容される賦形剤と混合するステップと、を具える。
【0029】
本発明の第4の様態によると、(S)−(+)−MHDまたは(R)−(−)−MHDを調製するプロセスは、上述したように、式IAまたは式IBの化合物をそれぞれ調製するステップと、脱エステル化によって、式IAの化合物から(S)−(+)−MHD、または、式IBの化合物から(R)−(−)−MHDに変換するステップと、を具える。
【0030】
本発明の第5の様態によると、式IIの化合物:

を調製するプロセスを提供し、ここで、Rは、CHであり、塩基および触媒の存在下において、オキシカルバゼピンを無水酢酸と反応させるステップを具える。好適には、塩基は、ピリジンであり、触媒はDMAPである。本発明は、鏡像体過剰率(enantimeric excess)において、式IAまたはIBの化合物を生成する式IIの化合物の水素化を触媒する新規かつ効率的なプロセスを提供する。
【0031】
本発明は、以下の構造:

およびその立体異性体とともにキラルリガンドを有するRh(I)複合体など、キラル触媒を利用する。
【0032】
ここで、Rは、アルキル、アリール、置換アルキル、置換アリール、ヘテロアリール、フェロセニル、アルコキシおよびアリールオキシから選択される。例えば、R基は、CH、エチル、イソプロピル、t−ブチル、1−アダマンチル、EtC、シクロ−C、シクロ−C11、フェニル、p−トリル基、3,5−ジメチルフェニル、3,5−ジ−t−ブチルフェニル、オルト−アニシルおよびナフチルでもよい。
【0033】
特に、本発明は、以下の触媒を用い、ここで、CODは、η−1,5−シクロオクタジエンであり、NBDはノルボルエナジエンであり、RRSS−TangPhosおよびScRp−DuanPhos立体異性体は、以下の構造:

を有し、
・[Rh(NBD)(SSRR−TangPhos)]BFは、S体、すなわち化合物Aを生成し、
・[Rh(COD)(SSRR−TangPhos)]BFは、S体、すなわち化合物IAを生成し、
・[Rh(NBD)(RcSp−DuanPhos)]BFは、S体、すなわち化合物IAを生成し、
・[Rh(COD)(RcSp−DuanPhos)]BFは、S体、すなわち化合物IAを生成し、
・[Rh(NBD)(RRSS−TangPhos)]BFは、R体、すなわち化合物IBを生成し、
・[Rh(COD)(RRSS−TangPhos)]BFは、R体、すなわち化合物IBを生成し、
・[Rh(NBD)(ScRp−DuanPhos)]BFは、R体、すなわち化合物IBを生成し、
・[Rh(COD)(ScRp−DuanPhos)]BFは、R体、すなわち化合物IBを生成する。
【0034】
Rh((RcSp)−DuanPhos)(COD)BFおよびRh((SSRR)−TangPhos)(COD)BFは、以下の化学構造を有する。

【0035】
基質と触媒とのモル比は、1:1から50,000:1でもよい。好ましくは、500:1、より好ましくは50:1である。
【0036】
エノール基質の溶解度は、最も一般的な溶媒において、非常に低い。一般的に、エノール基質は、DMF、THFおよびジクロロメタンに部分的に溶解し、酢酸エチルではそれほど溶解されず、室温でメタノールおよびトルエンにおいて緩やかに溶解する。触媒の溶解度は、溶媒を選択するときに考慮に入れるべきである。さらに、溶媒の選択は、化合物の式IAおよびIBの鏡像体過剰率(ee)に影響を与える。適宜な溶媒は、エノール基質および触媒に対する溶解度を提供し、高いee値を付与する。
【0037】
例えば、[Rh(COD)(RcSp−DuanPhos)]BFが触媒として使用され、THF、酢酸エチル、および2−メチルTHFが溶媒として使用されるとき、比較可能なほどの鏡像体選択性が示される。なお、Rがメチルであるとき、式IIのエノール酢酸塩は、THF中で最も高い溶解度を示す。従って、THFは、Rがメチルのときの式IIのエノール酢酸の特定の反応、および、[Rh(COD)(RcSp−DuanPhos)]BFに好ましい溶媒である。トリフルオロエタノールも、Rがメチルであるとき、エノール酢酸IIに対する優れた溶媒であるが、鏡像体過剰率は低い。トリフルオロエタノールをTHFと組み合わせることは、トリフルオロエタノールの好ましい溶解度と、THFの高い鏡像体過剰率を組み合わせ、効率的な溶媒混合液を得ることができる。
【0038】
水素源は、水素ガスでもよい。水素化に使用される水素ガスは、好ましくは20〜1000psi幅広い圧力範囲を有する。エノール酢酸II(Rがメチルのとき)と、酢酸エチル、THFまたはこれらの組み合わせの溶媒と、の反応において、20〜1000psiまでの範囲の水素圧力が用いられるとき、比較可能なほどの鏡像体過剰率が得られる。なお、エノール酢酸IIは、高い圧力で高い活性を有し、20〜1000psi範囲の上端における圧力が好ましく、より好ましくは750〜1000psiである。
【0039】
反応が行われる温度は、0℃から室温までの範囲でも良い。エノール基質IIの溶解度は、温度が低下するとともに低下するので、室温が好ましい温度である。
【0040】
本発明に従って調製される式IAおよび式IBの化合物は、
1. 10−アセトキシ−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
2. 10−ベンゾイルオキシ−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
3. 10−(4−メトキシベンゾイルオキシ)−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
4. 10−(3−メトキシベンゾイルオキシ)−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
5. 10−(2−メトキシベンゾイルオキシ)−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
6. 10−(4−ニトロベンゾイルオキシ)−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
7. 10−(3−ニトロベンゾイルオキシ)−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
8. 10−(2−ニトロベンゾイルオキシ)−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
9. 10−(4−クロロベンゾイルオキシ)−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
10. 10−(3−クロロベンゾイルオキシ)−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
11. 10−(2−アセトキシベンゾイルオキシ)−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
12. 10−プロピノイルオキシ−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
13. 10−ブチリルオキシ−10,1−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
14. 10−ピバロイルオキシ−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
15. 10−[(2−プロピル)ペンタノイルオキシ]−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
16. 10−[(2−エチル)ヘキサノイルオキシ]−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
17. 10−ステレオイルオキシ−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
18. 10−シクロペンタノイルオキシ−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
19. 10−シクロヘキサノイルオキシ−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
20. 10−フェニルアセトキシ−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
21. 10−(4−メトキシフェニル)アセトキシ−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/−アゼピン−5−カルボキサミド
22. 10−(3−メトキシフェニル)アセトキシ−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
23. 10−(4−ニトロフェニル)アセトキシ−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
24. 10−(3−ニトロフェニル)アセトキシ−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
25. 10−ニコチノイルオキシ−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
26. 10−イソニコチノイルオキシ−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
27. 10−クロロアセトキシ−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
28. 10−ブロモアセトキシ−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
29. 10−ホルミルオキシ−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
30. 10−エトキシカルボニルオキシ−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
31. 10−(2−クロロプロピノイルオキシ)−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
のSおよびRの鏡像体の各々を含む。
【0041】
本発明のプロセスに従って生成される式IAおよびIBの化合物は、APIとして使用され、最終的な製薬製品に製剤化することができ、さらに、化学的トランスフォーメーションによって他のAPIに変換可能である。
【0042】
以下の非限定的な実施例は、本発明のプロセスおよび使用を例示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
実施例
エノール酢酸の調製(R=メチル)
【0044】
ジクロロメタン(700ml)中のオキシカルバゼピン(69.3g、0.275mol)、DMAP(1.025g)および酢酸無水物(38.07g)の懸濁液に対し、室温で、50mlのジクロロメタン中の30.1gピリジン溶液を液滴状で添加した。添加は、10分間で完了した。室温で75分間撹拌後、この系は透明になった。添加して3時間後、系は再び曇った。この懸濁液は、次いで、室温でもう1時間撹拌し、2×400mLの1N HCl、2×400mLの10%NaHCO、2×400mLのHOで洗浄した。減圧下で濃縮し、淡黄色固体を得た。イソプロピルアルコール(700mL)を添加し、混合液を3分間乾留した。混合液が冷却してから、固体をろ過し、2×100mLのイソプロピルアルコールで洗浄した。イソプロピルアルコール(500mL)を添加し、混合液を2分間乾留した。冷却するとき、固体をろ過し、3×100mLイソプロピルアルコールで洗浄した(この2回目の洗浄は必須ではない)。最終的な生成物を真空下で乾燥し、収率88%で、白色固体(71.5g)を得た。1H NMR(DMSO−d6、360MHz):δ=7.53−7.30(m、8H)、6.92(s、1H)、5.66(b、2H)、2.32(s、3H)ppm。13C NMR(DMSO−d6、90MHz):δ=169.5、156.2、146.8、140.7、140.4、132.8、132.1、131.1、129.8、129.7、129.4、127.9、127.6、125.9、120.8、21.1ppm。
【0045】
Rh(COD)(RcSp−DuanPhos)BFの調製
【0046】
1Lの3口丸底フラスコ中で、27.2gのRcSp−DuanPhosを、200mLのジクロロメタンに溶解し、この溶液を10分間窒素で泡立たせ、29.0gのRh(COD)BFを一度に加え、混合液を室温で一時間撹拌した。赤みを帯びた溶液に、ヘキサン(400ml)をゆっくり加えた。橙色固体が析出した。30分間撹拌し、ろ過し、ヘキサンで洗浄した。橙色固体を真空下で乾燥し、97%の収率で47.2gの生成物を得た。この生成物を窒素下で貯蔵した。
【0047】
不斉水素化用の一般工程
【0048】
ガラスバイアル(20ml)を具えた300mL量のオートクレーブ(autoclave)に、基質(酢酸エノール:化合物II、R=メチル)、触媒、ならびに、窒素下での3〜5mlの酸素フリーの溶媒を充填した。このオートクレーブに、所望の圧力まで水素を充填し、室温で撹拌し、オイルバスで加熱した。水素を注意深く放出した後、反応混合液を濃縮し、フラッシュカラムで精製し、メタノールで抽出した。このサンプルをキラルHPLC分析用に使用した。
【0049】
分析技術
【0050】
(S)−(−)−またはR−(+)−リカルバゼピン酢酸塩(化合物IAまたはIB、R=メチル)の水素化生成物の鏡像体過剰率(ee%)を、以下のパラメータを用いて、HPLC分析によって決定した。
【0051】

【0052】
以下に結果が示される、各種触媒、溶媒、圧力および温度を用いた、不斉水素化のための一般的な工程によって反応を実施した。
表1.Rh(I)TangPhos触媒不斉水素化
【0053】

全ての反応を室温で実施した。
表2.Rh(I)/DuanPhos触媒化不斉水素化−溶媒効果
【0054】

全ての反応を室温で実施した。
表3.[Rh(COD)(RcSp−DuanPhos)BF触媒化不斉水素化−溶媒効果]
【0055】

**以外の全ての反応は、室温で水素の750psiの下で行った。
**は、1000psi
表4.Rh(I)DuanPhos触媒化不斉水素化−圧力効果
【0056】


全ての反応を室温で行った。
表5.Rh(I)/DuanPhos触媒化不斉水素化−室温効果
【0057】

【0058】
本発明は、添付の特許請求の範囲内で修正可能であることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式IAまたはIBの化合物の調製プロセスであって、


Rが、アルキル、アミノアルキル、ハロゲン化アルキル、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシ、フェニルまたは置換フェニル、または、ピリジル基であり;用語「アルキル」は、直鎖または分岐鎖の1〜18炭素原子を含む炭素鎖を意味し;用語「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を示し;用語「シクロアルキル」は3〜6炭素原子を有する飽和脂環式基を示し;用語「アリール」は未置換のフェニル基、あるいは、アルコキシ、ハロゲンまたはニトロ基によって置換されたフェニル置換を示し、このプロセスは、式II:

の化合物の不斉水素化を具え、
Rは、上記Rと同じ意味を有し、キラル触媒および水素源を用いることを特徴とするプロセス。
【請求項2】
Rが、C1〜3のアルキルであることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
Rは、メチルであることを特徴とする請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
(1) 10−アセトキシ−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
(2) 10−ベンゾイルオキシ−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
(3) 10−(4−メトキシベンゾイルオキシ)−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
(4) 10−(3−メトキシベンゾイルオキシ)−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
(5) 10−(2−メトキシベンゾイルオキシ)−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
(6) 10−(4−ニトロベンゾイルオキシ)−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
(7) 10−(3−ニトロベンゾイルオキシ)−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
(8) 10−(2−ニトロベンゾイルオキシ)−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
(9) 10−(4−クロロベンゾイルオキシ)−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
(10) 10−(3−クロロベンゾイルオキシ)−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
(11) 10−(2−アセトキシベンゾイルオキシ)−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
(12) 10−プロピノイルオキシ−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
(13) 10−ブチリルオキシ−10,1−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
(14) 10−ピバロイルオキシ−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
(15) 10−[(2−プロピル)ペンタノイルオキシ]−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
(16) 10−[(2−エチル)ヘキサノイルオキシ]−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
(17) 10−ステレオイルオキシ−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
(18) 10−シクロペンタノイルオキシ−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
(19) 10−シクロヘキサノイルオキシ−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
(20) 10−フェニルアセトキシ−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
(21) 10−(4−メトキシフェニル)アセトキシ−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/−アゼピン−5−カルボキサミド
(22) 10−(3−メトキシフェニル)アセトキシ−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
(23) 10−(4−ニトロフェニル)アセトキシ−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
(24) 10−(3−ニトロフェニル)アセトキシ−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
(25) 10−ニコチノイルオキシ−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
(26) 10−イソニコチノイルオキシ−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
(27) 10−クロロアセトキシ−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
(28) 10−ブロモアセトキシ−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
(29) 10−ホルミルオキシ−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
(30) 10−エトキシカルボニルオキシ−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
(31) 10−(2−クロロプロピノイルオキシ)−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ/b,f/アゼピン−5−カルボキサミド
の各々のSまたはRのエナンチオマである請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記キラル触媒がロジウム複合体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記キラル触媒が、以下の構造:

およびこれらの立体異性体とともに、キラルリガンドを有するRh(I)複合体から選択され、Rは、アルキル、アリール、置換アルキル、置換アリール、ヘテロアリール、フェロセニル、アルコキシおよびアリールオキシから選択されることを特徴とする請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
Rは、CH、エチル、イソプロピル、t−ブチル、1−アダマンチル、EtC、シクロ−C、シクロ−C11、フェニル、p−トリル、3,5−ジメチルフェニル、3,5−ジ−t−ブチルフェニル、オルト−アニシルおよびナフチルから選択されることを特徴とする請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
Rは、t−ブチルであることを特徴とする請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
キラル触媒が、[Rh(NBD)(DuanPhos)]BF、[Rh(COD)(TangPhos)]BF、[Rh(NBD)(TangPhos)]BFおよび[Rh(COD)(TangPhos)]BFの立体異性体から選択され、CODは、η−1,5−シクロオクタジエン、NBDは、ノルボナジエンであり、ScRp−DuanPhosおよびRRSS−TangPhos立体異性体は、以下の化学構造:

を有することを特徴とする請求項1〜8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記キラル触媒は、[Rh(NBD)(SSRR−TangPhos)]BF、[Rh(COD)(SSRR−TangPhos)]BF、[Rh(NBD)(RcSp−DuanPhos)]BF、[Rh(NBD)(ScRp−DuanPhos)]BF、[Rh(COD)(RcSp−DuanPhos)]BF、[Rh(NBD)(RRSS−TangPhos)]BF、[Rh(COD)(RRSS−TangPhos)]BF、および、[Rh(COD)(ScRp−TangPhos)]BFから選択されることを特徴とする請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記水素源が水素ガスであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項12】
化合物IIと触媒とのモル比が、1:1〜50,000:1であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項13】
化合物IIと触媒とのモル比が、500:1であることを特徴とする請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
化合物IIと触媒とのモル比が、50:1であることを特徴とする請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記不斉水素化が、0℃から室温の温度で実施されることを特徴とする請求項1〜14に記載のプロセス。
【請求項16】
前記不斉水素化が、室温で実施されることを特徴とする請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
前記不斉水素化が、20〜1000psiの圧力で実施されることを特徴とする請求項1〜16に記載のプロセス。
【請求項18】
前記不斉水素化が、750〜1000psiの圧力で実施されることを特徴とする請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
式IIの化合物は、メタノール、エタノール、THF、2−メチル−THF、酢酸メチル、酢酸エチル、ジクロロメタン、トリフルオロエタノール、1,4−ジオキサン、DMFおよびこれらの混合物から選択される溶媒に溶解されることを特徴とする請求項1〜18に記載のプロセス。
【請求項20】
前記触媒が、Rh(NBD)(SSRR−TangPhos)BFであり、溶媒が酢酸エチルであることを特徴とする請求項19に記載のプロセス。
【請求項21】
前記触媒が[Rh(NBD)(RcSp−DuanPhos)]BFまたは[Rh(NBD)(ScRp−DuanPhos)]BFであり、溶媒が、酢酸エチル、THFまたはジクロロメタンであることを特徴とする請求項19に記載のプロセス。
【請求項22】
前記触媒が[Rh(COD)(RcSp−DuanPhos)]BFであり、溶媒が、酢酸エチル、THF、2−メチル−THFまたはこれらの混合物であることを特徴とする請求項19に記載のプロセス。
【請求項23】
前記溶媒がTHFであることを特徴とする請求項22に記載のプロセス。
【請求項24】
式IIの化合物が、オキシカルバゼピンから調製されることを特徴とする請求項1〜23に記載のプロセス。
【請求項25】
前記オキシカルバゼピンが、塩基および触媒の存在下で、式R−C(O)−O−C(O)−Rの無水物と反応し、Rがアルキル、アミノアルキル、ハロゲン化アルキル、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシ、フェニルまたは置換フェニル、あるいは、ピリジル基であり、用語「アルキル」は、直鎖または分岐鎖の1〜18炭素原子を含む炭素鎖を意味し;用語「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を示し;用語「シクロアルキル」は3〜6炭素原子を有する飽和脂環式基を示し;用語「アリール」は未置換のフェニル基、あるいは、アルコキシ、ハロゲンまたはニトロ基によって置換されたフェニル置換を示すことを特徴とする請求項24に記載のプロセス。
【請求項26】
前記塩基がピリジンであることを特徴とする請求項25に記載のプロセス。
【請求項27】
前記触媒がDMAPであることを特徴とする請求項25または26に記載のプロセス。
【請求項28】
式II:

の化合物であって、Rがアルキル、アミノアルキル、ハロゲン化アルキル、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシ、フェニルまたは置換フェニル、あるいは、ピリジル基であり、用語「アルキル」は、直鎖または分岐鎖の1〜18炭素原子を含む炭素鎖を意味し;用語「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を示し;用語「シクロアルキル」は3〜6炭素原子を有する飽和脂環式基を示し;用語「アリール」は未置換のフェニル基、あるいは、アルコキシ、ハロゲンまたはニトロ基によって置換されたフェニル置換を示すことを特徴とする化合物。
【請求項29】
式IAまたはIBの化合物を具える製薬組成物の調製プロセスであって、このプロセスが、請求項1〜27のいずれか1項に記載の式IAまたはIBの化合物を調製するステップと、前記式IAまたはIBの化合物を1又はそれ以上の製薬的に許容されるキャリアおよび/または1又はそれ以上の製薬的に許容される賦形剤と混合するステップと、を具えることを特徴とするプロセス。
【請求項30】
(S)−(+)−MHDまたは(R)−(−)−MHDの調製プロセスであって、脱エステル化によって、式IAの化合物を(S)−(+)−MHDに変換するか、式IBの化合物を(R)−(−)−MHDに変換することを特徴とするプロセス。
【請求項31】
式II:

の化合物の調製プロセスであって、Rが、CHであり、塩基および触媒の存在下でオキシカルバゼピンを無水酢酸と反応させるステップを具えることを特徴とする式IIの化合物の調製プロセス。
【請求項32】
前記塩基がピリジンであることを特徴とする請求項31に記載のプロセス。
【請求項33】
前記触媒がDMAPであることを特徴とする請求項31または32に記載のプロセス。
【請求項34】
本明細書の実施例で実質的に開示されたプロセス。

【公表番号】特表2009−533424(P2009−533424A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−505319(P2009−505319)
【出願日】平成19年4月11日(2007.4.11)
【国際出願番号】PCT/PT2007/000017
【国際公開番号】WO2007/117166
【国際公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(508301489)ビアル−ポルテア アンド シー.エイ., エス.エイ. (3)
【Fターム(参考)】