説明

不燃性化粧板及びその製造方法

【課題】 建築基準法第2条第9号でいう「不燃材料」に適合し、且つ反り量の少ない不燃性化粧板を提供する。
【解決手段】 本発明の不燃性化粧板は、ガラス繊維不織布を芯材とする芯材層用シート材料の2層以上と、これらの芯材層用シート材料の間に、ガラス繊維織布に熱硬化性樹脂を含む補強層用シート材料が挿入された積層体と、前記積層体の表面に、化粧層用シート材料とが、積層一体化されている不燃性化粧板であって、前記芯材層用シート材料は、ガラス繊維不織布の表面に難燃性金属水酸化物からなる不燃層が形成されたものにより達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不燃性化粧板及び不燃性化粧板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の難燃性又は不燃性化粧板などの耐燃性化粧板は、加工性に難があるもの、耐衝撃性を必要とされるもの、あるいは石綿等の無機材料系のものが多かった。また、樹脂系の化粧板においては、従来不燃性を付与するためには、85重量%以上の多くの無機物添加していたが、このため、樹脂と無機物の分散混合や得られたワニスを塗布又は塗工するための製造技術が困難であった。
【0003】
一方、2000年に建築基準法が改正され、建築基準法第2条第9号の不燃材料試験が表面燃焼試験、基材燃焼試験からコーンカロリーメーター発熱性試験やガス有害性試験に変更になった。これに伴い、発熱量の低い不燃材料が要求されるようになってきた。従って、従来の樹脂系の耐燃性化粧板では、「不燃材料」の認定を取得することが困難となった。不燃材料に対応する方法として、フェノール樹脂と無機質粒子を主成分とする充填剤をガラス繊維不織布に含浸させる方法がある(例えば、特許文献1参照。)が、無機質粒子を十分に保持できないために、不燃性を発現しなかったり、乾燥大気中では耐燃性化粧板が反りやすいという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−207201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の様な状況に鑑み、建築基準法第2条第9号でいう「不燃材料」に適合し、且つ反り量の少ない不燃性化粧板を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記第(1)項〜第(5)項の不燃性化粧板及び第(6)項〜第(7)項の不燃性化粧板の製造方法により構成される。
(1)ガラス繊維不織布を芯材とする芯材層用シート材料(a)の2層以上と、これらの芯材層用シート材料(a)の間に、ガラス繊維織布に熱硬化性樹脂を含む補強層用シート材料(b)が挿入された積層体と、前記積層体の表面に、化粧層用シート材料(c)とが、積層一体化されている不燃性化粧板であって、前記芯材層用シート材料(a)は、ガラス繊維不織布の表面に難燃性金属水酸化物からなる不燃層が形成されたものであることを特徴とする不燃性化粧板。
(2)前記芯材層用シート材料(a)は、不燃層が、凝集剤を含む難燃性水酸化物水溶液により塗工されたものである第(1)項に記載の不燃性化粧板。
(3)芯材層用シート材料(a)は、ガラス繊維不織布の不燃層が形成された裏面に、熱硬化性樹脂層を有するものである第(1)項又は第(2)項に記載の不燃性化粧板。
(4)芯材層用シート材料(a)の間に、補強層用シート材料(b)が挿入された積層体において、補強層用シート材料(b)の外側に位置する芯材層用シート材料(a)が複数層である第(1)項〜第(3)項のいずれか1項に記載の不燃性化粧板。
(5)化粧層用シート材料(c)が、厚さ0.5mm以下で、有機物の量が360g/m以下である第(1)項〜第(4)項のいずれか1項に記載の不燃性化粧板。
(6)ガラス繊維不織布を芯材とする芯材層用シート材料(a)の2層以上と、これらの芯材層用シート材料(a)の間に、ガラス繊維織布に熱硬化性樹脂を含む補強層用シート材料(b)が挿入された積層体と、前記積層体の表面に、化粧層用シート材料(c)とが、積層一体化されている不燃性化粧板を製造する方法であって、前記芯材層用シート材料(a)は、凝集剤を含む不燃性金属水酸化物水溶液を用いて、ガラス繊維不織布に塗工し、難燃性水金属酸化物からなる不燃層を形成する工程を有するものであることを特徴とする不燃性化粧板の製造方法。
(7)不燃性金属水酸化物水溶液は、水と難燃性金属水酸化物の合計量100質量%に対して、難燃性金属水酸化物を80〜65質量%含むものである第(6)項に記載の不燃性化粧板の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明による不燃性化粧板は、寸法変化、反り、変形等、特にそり量が少なく、燃焼時の発熱量、発煙量が少量に抑制され、燃焼後の形状破壊が小さく、燃焼後の形状破壊が殆どなく、建築基準法第2条第9号でいう「不燃材料」に適合するものである。
また化粧層には従来の化粧板と同様の化粧層用シート材料が使用できるため、豊富な色柄から自由に選択して、不燃材料として各種用途に使用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明により得られる不燃性化粧板の構造を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、ガラス繊維不織布を芯材とする芯材層用シート材料(a)の2層以上と、これらの芯材層用シート材料(a)の間に、ガラス繊維織布に熱硬化性樹脂を含む補強層用シート材料(b)が挿入された積層体と、前記積層体の表面に、化粧層用シート材料(c)とが、積層一体化されている不燃性化粧板であって、前記芯材層用シート材料(a)は、ガラス繊維不織布に難燃性金属水酸化物からなる不燃層が形成されたものであることを特徴とする不燃性化粧板であり、芯材層用シート材料に、従来技術のようにフェノール樹脂などの有機物を多く用いることなく、難燃剤として無機物である難燃性金属水酸化物からなる不燃層を形成することを可能としたことにより、「不燃材料」に適合し、且つ反り量の少ない不燃性化粧板を得ることができるものである。
【0010】
本発明の不燃性化粧板の構造について、図1を用いて、その例を説明する。
本発明の不燃性化粧板は、前記芯材層用シート材料(a)3を複数枚重ね、その間に、前記補強層用シート材料(b)2を挿入した積層体4の外層の表面又は表裏面に、前記化粧層用シート材料(c)5を積層した構造を有するものである。なお、図1においては、2枚の芯材層用シート材料と1枚の補強層用シート材料からなる積層体と、2枚の化粧層用シート材料を積層した構造を一例として示すが、本発明はこの構造に限定されるものではない。
【0011】
本発明の芯材層用シート材料(a)に用いるガラス繊維不織布は、化粧板に用いられる一般的なガラス繊維からなる不織布であり、凝集剤を含む難燃性金属水酸化物水溶液を塗工し、不織布に少なくとも難燃性水酸化物を含浸させ、不燃層を形成できるものであることが好ましい。
【0012】
上記ガラス繊維不織布の坪量としては、30〜150g/mのものが好ましい。坪量は、前記範囲外でも用いることができるが、30g/m未満である場合、芯材層用シート材料における強度不足を生じる虞があり、その場合、前記水溶液をガラス繊維不織布上に塗工する時、あるいは化粧板の成形時等における取扱いに難点を生じる場合がある。この場合、芯材層用シート材料を複数層重ねてもよい。また、坪量が150g/m2を越える場合、化粧板の成形時に各層間の密着性が不十分となる虞がある。
【0013】
本発明に用いる凝集剤を含む難燃性金属水酸化物水溶液は、難燃性金属水酸化物の水溶液に凝集剤を添加したものである。この水溶液を用いることにより、ガラス繊維不織布に難燃性金属水酸化物からなる不燃層を形成することができるものである。本発明の目的、効果を損なわない範囲において、その一部を他の添加剤や樹脂、無機充填材に置き換えてもよく、この場合も本発明に含まれるものである。
【0014】
前記難燃性金属水酸化物としては、一般的に難燃剤として用いられる、水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物を挙げることができる。これら難燃性金属水酸化物は、難燃性を向上する観点から、平均粒径が1〜100μmのものが好ましい。また、従来の粒子径の大きいものと小さいものを混合使用し、最密充填してもよい。
【0015】
前記凝集剤は、難燃性金属水酸化物を凝集させることができ、難燃性金属水酸化物水溶液をガラス繊維不織布に塗工し、不燃層を形成する際に、塗工作業をし易いものとすることができるものである。このような凝集剤としては、一般的に上下水道、し尿処理、工場廃水などの浄水剤として使われるものを用いることができ、例えば、高分子凝集剤(ポリアクリルアミド(ノニオン系高分子凝集剤)、ポリアクリル酸、アクリルアミド・アクリル酸共重合体、アクリルアミド・アクリル酸ナトリウム共重合物(アニオン系高分子凝集剤)、ポリアクリルアミド系高分子凝集剤、ジメチルアミノエチルアクリレート系高分子凝集剤、アクリルアミド・ジメチルアミノエチルアクリレートメチルクロライド4級塩の共重合物(カチオン系高分子凝集剤))、鉄系凝集剤(ポリ硫酸第二鉄)、硫酸バンド(硫酸アルミニウム)、PAC(ポリ塩化アルミニウム)などを挙げることができる。更に、前記凝集剤は、難燃性金属水酸化物同士、また、難燃性金属水酸化物のガラス繊維不織布に対する結着剤としても機能するものであり、これを含む難燃性金属水酸化物水溶液において、水溶液の粘度を増加させることができ、塗工作業をより向上させることができるものが好ましく、これにより、従来技術のように熱硬化性樹脂を使用する必要がなくなる上で、前記凝集剤の中でも高分子凝集剤などが好ましい。高分子凝集剤の種類は特に限定しないが、アニオン系のものが好ましい。なお、本発明で用いる凝集剤は、1種を単独で用いることもできるが、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0016】
凝集剤を含む難燃性金属水酸化物水溶液おいて、難燃性金属水酸化物の水溶液は、水と難燃性金属水酸化物の合計量を100質量%に対して、特に難燃性金属水酸化物を65質量%以上とすることが好ましく、これにより、本発明の不燃性化粧板における表面化粧用シートの厚みや有機物量にもよるが、容易に、建築基準法第2条第9号でいう「不燃材料」に適合させることができる。さらに、難燃性金属水酸化物の含有量は、80〜65質量%とすることが好ましい。難燃性金属水酸化物は、前記範囲外でも用いることができるが、前記下限値を下回ると、本発明の不燃性化粧板の製造における加熱加圧成形時に、塗工した不燃層が流動し易くなり、結果として得られる化粧板表面の化粧層に“切れ”が生じる虞がある。前記上限値を上回ると凝集剤が結合剤としての機能を十分に発揮できずに、芯材層用シート材料の取扱い時に取扱いが困難となる場合や、成形後の化粧板において層間接着強度が不十分となる虞もある。
【0017】
凝集剤の割合としては、前記難燃性金属水酸化物水溶液において、上記凝集剤としての機能を発現する範囲で用いればよいが、例えば、難燃性水酸化物100質量%に対し、0.1質量%以上、10質量%以下の割合で添加することが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。凝集剤は、前記範囲外でも用いることができるが、上記下限値を下回ると難燃性水酸化物の凝集効果が低下する虞があり、前記上限値を上回ると凝集剤の色合いが不燃層に付く虞がある。
【0018】
本発明に用いる芯材層用シート材料(a)は、前記難燃性金属水酸化物水溶液を、ガラス繊維不織布の一方の面に、一般的な塗工法により塗工して不燃層を形成することにより得ることができる。前記難燃性金属水酸化物水溶液(但し、固形分として)のガラス繊維不織布に対する含浸率としては、ガラス繊維不織布の坪量にもよるが、質量比で通常5倍以上、100倍以下程度が好ましく、より好ましくは10倍以上、60倍以下程度である。含浸率は前記範囲外でも使用できるが、前記下限値を下回る場合、化粧板の厚みの調整や表面仕上がりに影響を及ぼしたり、耐燃性が低下する虞がある。前記上限値を上回る場合、層間密着強度が低下する虞がある。
【0019】
芯材層用シート材料(a)は、層間の接着性を向上させる上で、ガラス繊維不織布の一方の面に不燃層が形成された芯材層用シート材料において、不燃層が形成された面の裏側の面に、熱硬化性樹脂(ワニス)を塗工することが好ましい。芯材層用シート材料(a)に用いる熱硬化性樹脂は、メラミン樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂であれば、特に限定されないが、メラミン樹脂又はフェノール樹脂であることが好ましいが、さらに「不燃材料」に適合する上では、耐燃性の優れたメラミン樹脂が好ましい。
上記メラミン樹脂としては、通常、メラミンに対するホルムアルデヒドのモル比(以下、単にモル比という)が1.0〜4.0のものが使用されるが、この範囲に限定されないが、メラミン樹脂ワニスの保存性等の観点から、1.0〜2.0の範囲好ましく、メラミン樹脂ワニスに、一般的に用いられる酸性の硬化剤を適宜配合することができる。
【0020】
次に、本発明の特徴のひとつである補強層用シート材料について説明する。
本発明に用いるガラス繊維織布に熱硬化性樹脂を含む補強層用シート材料(b)は、ガラス繊維織布に、熱硬化性樹脂を含浸させることにより得ることができるものである。
【0021】
本発明の補強層用シート材料(b)に用いるガラス繊維織布は、芯材層用シート材料(a)に用いるガラス繊維不織布と同様に、化粧板に用いられる一般的なガラス繊維からなる織布であり、熱硬化性樹脂を塗工できるものであることが好ましい。
【0022】
上記ガラス繊維織布の坪量としては、10〜300g/mのものが好ましく、更には20〜250g/mがより好ましい。坪量は、前記範囲外でも用いることができるが、上記下限値未満である場合、建築基準法第2条第9号でいう「不燃材料」認定を得るための燃焼試験(詳細は、日本建築総合試験場の業務標準「防耐火性能試験・評価業務方法書」に記載)において化粧板燃焼後、穴が開き、「不燃材料」に適合しなくなる虞がある。また上記上限値を越える場合、性能上は問題ないが、コスト上昇となる。
【0023】
補強層用シート材料(b)に用いる熱硬化性樹脂は、メラミン樹脂、フェノール樹脂等の化粧板に用いられる一般的な熱硬化性樹脂であれば、特に限定されないが、「不燃材料」に適合するために、耐燃性の優れたメラミン樹脂が好ましい。補強層用シート材料(b)に用いる熱硬化性樹脂は、芯材層用シート材料(a)に用いる熱硬化性樹脂と同じであっても良い。
【0024】
ガラス繊維織布に対する熱硬化性樹脂の割合については、この割合が多いと芯材層用シート材料との密着性は良好となるが、耐燃性が低下するようになり、逆に少ないと耐燃性はよいが、芯材層用シート材料との密着性が低下し、補強効果が小さくなることがある。従って、確実な補強効果と良好な耐燃性とを得るためには、熱硬化性樹脂の含浸率は、ガラス繊維織布に対して、通常20〜150質量%程度であるが、好ましくは25〜100質量%である。かかる補強層用シート材料(b)を2枚以上の芯材層用シート材料(a)の間に挿入して化粧板を得ることにより、寸法変化、反り、変形等が少なく、燃焼後の形状保持性が良好であり、不燃性の向上効果が大きい。
【0025】
本発明において、芯材層用シート材料(a)の表面に重ねられる化粧層用シート材料(c)としては、通常、化粧層用繊維シート基材に、熱硬化性樹脂を含浸したものが使用され、より具体的には、化粧層用繊維シート基材のシート又は紙に、メラミン樹脂単独、又はメラミン樹脂60〜95質量%、水酸化アルミニウム又は水酸化マグネシウム又はシリカ40〜5質量%からなる配合物を含浸した含浸シート又は含浸紙を用いることができる。また、化粧層用シート材料の坪量としては、40〜150g/mのものが好ましい。
前記化粧用繊維シート基材としては、パルプ、リンター、合成繊維、ガラス繊維等の基材が用いられ、必要に応じて、酸化チタン等の顔料を含有することができる。
上記メラミン樹脂又は配合物の含浸率は、通常前記シート又は紙に対して80〜300質量%である。メラミン樹脂は、通常の変性剤(例えば、グリコール類)を0.1〜20質量%添加されたものも使用可能であり、酸性の硬化剤を適宜配合することができる。
【0026】
本発明の不燃性化粧板は、例えば、前記芯材層用シート材料(a)を複数枚重ね、その間に、前記補強層用シート材料(b)を挿入した積層体を形成する。積層体においては、前記補強層用シート材料(b)を少なくとも1枚用いることで、補強層としての十分な効果を得ることができ、例えば、2枚の芯材層用シート材料(a)の間に、補強層用シート材料(b)を積層したり、4枚の芯材層用シート材料(a)の中央層に1枚の補強層用シート材料(b)を積層するなど、複数枚の芯材層用シート材料(a)の間に、補強層用シート材料(b)を積層して得ることができ、それぞれの枚数については適宜決定することができる。次いで、該積層体外層の表面又は表裏面に、該化粧層用シート材料(c)を重ね、加熱加圧成形することにより得ることができる。成形時には、鏡面仕上げ板、エンボス板又はエンボスフィルム等を化粧層用シート材料(c)の表面に重ねられことにより、ミラー仕上げ、エンボス仕上げ等の表面に仕上ることができる。
【0027】
本発明の不燃性化粧板は、化粧層として、化粧層用シート材料(c)を、前記芯材層用シート材料(a)の表面に、積層一体化されるが、反りの防止等のために、裏面側にも、化粧層用シート材料(c)を使用することが好ましい。
これらの化粧層用シート材料(c)は、ともに厚さが0.5mm以下で、かつ有機物の量が360g/m以下であることが望ましいが、前記「不燃材料」の試験に合格し、反りを生じない範囲であれば、この限りではない。
【0028】
また、本発明の不燃性化粧板の構成として、前記化粧層用シート材料(c)における含浸シート又は含浸紙の表面に、坪量10〜50g/mの化粧層用繊維シート基材と同様のシート又は紙に、メラミン樹脂単独、又はメラミン樹脂60〜95質量%、水酸化アルミニウム又は水酸化マグネシウム又はシリカ40〜5質量%からなる配合物を含浸したオーバーレイ含浸紙を組合せることができる。
【0029】
このオーバーレイ含浸紙のメラミン樹脂又は配合物の含浸率は、通常、シート又は紙に対して80〜300質量%であることが好ましい。また、樹脂を含浸しない化粧層用繊維シート基材の表面(不燃性化粧板の裏面側)に、前記オーバーレイ含浸紙を組合せた方法でも良い。
また、前述の芯材層用シート材料(a)のガラス繊維不織布について、配合物の塗工面の裏面に、メラミン樹脂を塗工する代わりに、前述のオーバーレイ含浸紙を積層しても良い。
【実施例】
【0030】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明する。ここで、「%」、「部」、「倍」は、すべて「質量%」、「質量部」、「質量倍」である。
【0031】
実施例1
ガラス繊維不織布(坪量:75g/m、比重:0.23g/cm、有機バインダー含有量11質量%)を用意し、不織布の一方の面に、水酸化アルミニウム(平均粒子径60μm)80部と水20部とアクリルアミド・アクリル酸ナトリウム共重合物(大明化学工業社(株)製高分子凝集剤)1部からなる配合物を塗工し、裏面にはメラミン樹脂(モル比1.5、樹脂固形分50質量%)を塗工し、含浸率20質量倍の芯材層用シート材料を得た。次に、ガラス織布(坪量210g/m、有機バインダー含有量0.08%質量%)を用意し、織布に、上記のメラミン樹脂を塗工し、含浸率80質量%の補強層用シート材料を得た。
次に、上記で得た芯材層用シート材料4枚の中央層に、上記で得た補強層用シート材料を1枚挿入し、積層体を作製した。
次に、坪量80g/mの化粧板用化粧原紙(酸化チタン含有パルプ)に、上記のメラミン樹脂を含浸し、含浸率100質量%である化粧層用シート材料を2枚作製した。これらの化粧層用シート材料は、厚さ0.1mm、有機物量130g/mであった。これらの化粧層用シート材料を、上記で得た積層体外層(芯材層用シート材料)の表裏に1枚ずつ重ね、140℃、80kg/cmの条件下で、20分間、加熱加圧成形して、厚さ3.0mmの化粧板を得た。
【0032】
実施例2
実施例1で使用したのと同じガラス繊維不織布の一方の面に、水酸化アルミニウム(平均粒子径60μm)65部と水35部と実施例1で使用したものと同じ高分子凝集剤1部からなる配合物を塗工し、裏面にはメラミン樹脂(モル比1.5、樹脂固形分50重量%)を塗工し、含浸率20質量倍の芯材層用シート材料を得た。次に、実施例1と同様にして補強層用シート材料を得た。次に、上記で得た芯材層用シート材料4枚の間に、上記で得た補強層用シート材料を1枚挿入し、積層体を作製した。次に、実施例1と同様にして、化粧層用シート材料を2枚作製した。これらの化粧層用シート材料を、上記で得た積層体外層(芯材層用シート材料)の表裏1枚ずつ重ね、140℃、80kg/cmの条件下で20分間、加熱加圧成形して、厚さ3.0mmの化粧板を得た。
【0033】
実施例3
実施例1で使用したのと同じガラス繊維不織布の一方の面に、水酸化アルミニウム(平均粒子径60μm)70部と水30部と実施例1で使用したものと同じ高分子凝集剤1部からなる配合物を塗工し、裏面にはメラミン樹脂(モル比1.5、樹脂固形分50重量%)を塗工し、含浸率20質量倍の芯材層用シート材料を得た。次に、実施例1と同様にして補強層用シート材料を得た。次に、上記で得た芯材層用シート材料2枚の間に、上記で得た補強層用シート材料を1枚挿入し、積層体を作製した。次に、実施例1と同様にして、化粧層用シート材料を2枚作製した。これらの化粧層用シート材料を、上記で得た積層体外層(芯材層用シート材料)の表裏1枚ずつ重ね、140℃、80kg/cmの条件下で20分間、加熱加圧成形して、厚さ1.9mmの化粧板を得た。
【0034】
実施例4
実施例1で使用したのと同じガラス繊維不織布の一方の面に、水酸化アルミニウム(平均粒子径60μm)70部と水30部と実施例1で使用したものと同じ高分子凝集剤1部からなる配合物を塗工し、裏面にはメラミン樹脂(モル比1.5、樹脂固形分50重量%)を塗工し、含浸率20質量倍の芯材層用シート材料を得た。次に、実施例1と同様にして補強層用シート材料を得た。次に、上記で得た芯材層用シート材料3枚の間に、上記で得た補強層用シート材料を1枚挿入し、積層体を作製した。次に、実施例1と同様にして、化粧層用シート材料を2枚作製した。これらの化粧層用シート材料を、上記で得た積層体外層(芯材層用シート材料)の表裏1枚ずつ重ね、140℃、80kg/cmの条件下で20分間、加熱加圧成形して、厚さ2.5mmの化粧板を得た。
【0035】
比較例1
実施例1で使用したのと同じガラス繊維不織布の一方の面に、水酸化アルミニウム(平均粒子径60μm)80部とレゾールタイプフェノール樹脂(モル比1.3、樹脂固形分50質量%)20部と、水及びアルコール15部からなる配合物を塗工し、裏面にはレゾールタイプフェノール樹脂(モル比1.3、樹脂固形分50質量%)を塗工し、含浸率20質量倍の芯材層用シート材料を得た。次に、実施例1と同様にして補強層用シート材料を得た。次に、上記で得た芯材層用シート材料4枚の間に、上記で得た補強層用シート材料を1枚挿入し、積層体を作製した。次に、実施例1と同様にして、化粧層用シート材料を2枚作製した。これらの化粧層用シート材料を、上記で得た積層体外層(芯材層用シート材料)の表裏1枚ずつ重ね、140℃、80kg/cmの条件下で20分間、加熱加圧成形して、厚さ3.0mmの化粧板を得た。
【0036】
以上の実施例及び比較例で得られた化粧板について特性を評価し、その結果を表1に示す。
(試験方法)
1.不燃性試験
日本建築総合試験場の業務標準「防耐火性能試験・評価業務方法書」 4.10 不燃性能試験・評価方法、(2)ii)4.10.2 発熱性試験・評価方法 及び 4.10.3 ガス有害性試験・評価方法、により実施した。業務標準「防耐火性能試験・評価業務方法書」の上記項目には、建築基準法第2条第9号(不燃材料)の規定に基づく認定に係わる性能評価方法について記載されている。
2.層間強度
JAS(特殊合板)平面引張り試験に基づく。
3.反り量
30×30cmサイズの各化粧板を70℃の乾燥機に60分入れた後に、水平な台に置き、各4辺の中央部と台との距離を測定し、最大値を記録した。
4.外観
化粧板の表裏を目視で観察し、化粧層の“切れ”の有無を確認した。
【0037】
【表1】

【0038】
この結果から明らかなように、実施例で得られた化粧板は、反りもなく、建築基準法第2条第9号でいう「不燃材料」に適合するものであった。これに対して、比較例1で得られた化粧板は、「不燃材料」に適合するものであったが、反り量が大きかった。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明による化粧板は、建築基準法第2条第9号でいう「不燃材料」に適合するものである。また、従来の不燃性化粧板に比較して反り量が少ない。さらに、化粧層には従来の化粧板と同様の化粧層用シート材料が使用できるため、豊富な色柄から自由に選択できるので、難燃又は不燃材料として、公共施設等における不燃材料の規制を受ける壁、キッチンパネル材等の種々の用途に使用できるものである。
【符号の説明】
【0040】
1 化粧板
2 補強層用シート材料
3 芯材層用シート材料
4 積層体
5 化粧層用シート材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス繊維不織布を芯材とする芯材層用シート材料(a)の2層以上と、これらの芯材層用シート材料(a)の間に、ガラス繊維織布に熱硬化性樹脂を含む補強層用シート材料(b)が挿入された積層体と、前記積層体の表面に、化粧層用シート材料(c)とが、積層一体化されている不燃性化粧板であって、前記芯材層用シート材料(a)は、ガラス繊維不織布の表面に難燃性金属水酸化物からなる不燃層が形成されたものであることを特徴とする不燃性化粧板。
【請求項2】
前記芯材層用シート材料(a)は、不燃層が、凝集剤を含む難燃性水酸化物水溶液により塗工されたものである請求項1に記載の不燃性化粧板。
【請求項3】
芯材層用シート材料(a)は、ガラス繊維不織布の不燃層が形成された裏面に、熱硬化性樹脂層を有するものである請求項1又は2に記載の不燃性化粧板。
【請求項4】
芯材層用シート材料(a)の間に、補強層用シート材料(b)が挿入された積層体において、補強層用シート材料(b)の外側に位置する芯材層用シート材料(a)が複数層である請求項1〜3のいずれか1項に記載の不燃性化粧板。
【請求項5】
化粧層用シート材料(c)が、厚さ0.5mm以下で、有機物の量が360g/m以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の不燃性化粧板。
【請求項6】
ガラス繊維不織布を芯材とする芯材層用シート材料(a)の2層以上と、これらの芯材層用シート材料(a)の間に、ガラス繊維織布に熱硬化性樹脂を含む補強層用シート材料(b)が挿入された積層体と、前記積層体の表面に、化粧層用シート材料(c)とが、積層一体化されている不燃性化粧板を製造する方法であって、前記芯材層用シート材料(a)は、凝集剤を含む不燃性金属水酸化物水溶液を用いて、ガラス繊維不織布に塗工し、難燃性水金属酸化物からなる不燃層を形成する工程を有するものであることを特徴とする不燃性化粧板の製造方法。
【請求項7】
不燃性金属水酸化物水溶液は、水と難燃性金属水酸化物の合計量100質量%に対して、難燃性金属水酸化物を80〜65質量%含むものである請求項6に記載の不燃性化粧板の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−66556(P2012−66556A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−215672(P2010−215672)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】