説明

不燃MDFおよびその製造方法

【課題】MDFの不燃化および断熱性、耐侯性、吸音性能を高め、曲げ強度、硬度、軽量および加工性などMDF本来の性能を損なうことなく、調湿性、防汚性などにも優れた不燃MDFおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】製造時に木質系繊維、接着剤の他に難燃処理剤を添加して熱圧成形したMDF(中質繊維板)の表面に無機系コーティング剤を使用して厚さ0.2mm〜2mmの通気性のある塗膜を形成した不燃MDF。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不燃MDF(中質繊維板)およびその製造方法に関するものである。
さらに詳細には、木質系繊維および接着剤の他に難燃処理剤を添加して熱圧成形したMDFの表面に通気性のある厚さ0.2〜2mmで無機系塗膜を加工すると不燃性で断熱性、耐侯性、吸音性、調湿性、曲げ強度、硬度および加工性などに優れた軽量の不燃材、防火構造材、断熱材、吸音材として使用できる不燃MDFおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、MDFの不燃化の手段として、製造時に木質系繊維および接着剤、添加剤のほかに種々の難燃処理剤を使用したもの、またMDFの表面にアルコキシ金属系やアルカリ金属系などの無機系塗料を塗布したもの、あるいは難燃処理剤と無機系塗料を組み合わせたものなどが知られている。
【0003】
しかし、これらは、いずれも難燃材認定まではできるが、準不燃材になると困難であり、不燃材には到底いたらないのが現状である。当然、燃焼の際に有害ガスのでるハロゲン系のものは使用できず、また不燃性の無機系塗膜は吸放湿時の膨張収縮で割れやすく安定性に欠けるなどの問題点を有している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、以上のような従来技術の課題を背景になされたものであり、MDFの不燃化および断熱性、耐侯性、吸音性能を高め、曲げ強度、硬度、軽量および加工性などMDF本来の性能を損なうことなく、調湿性、防汚性などにも優れた不燃MDFおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、木質系繊維および接着剤の他に、難燃処理剤を添加して熱圧成形したMDFの表面に無機系コーティング剤を使用して厚さ0.2〜2mmの通気性のある塗膜を形成してなることを特徴とする不燃MDFに関するものである。
ここで、接着剤としては、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、イソシアネート系樹脂、エポキシ系樹脂、およびポリエステル系樹脂の群から選ばれた少なくとも1種の熱硬化樹脂であることが好ましい。
また、難燃処理剤としては、ホウ酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩、アンモニウム塩、および水酸化金属類からなる群から選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
また、無機系コーティング剤としては、(a)第4級アンモニウムシリケートをSiO換算で4〜12重量部、(b)無機充填材を45〜75重量部、(c)硬化剤を2〜12重量部および(d)水および/または親水性有機溶剤を15〜40重量部(ただし、(a)+(b)+(c)+(d)=100重量部)配合したものであることが好ましい。
さらに、無機系コーティング剤に含まれる(b)無機充填材としては、平均粒径または平均長さが0.3〜200μmで、かつ不水溶性である金属酸化物、金属水酸化物、金属チッ化物、金属炭化物、炭酸金属塩およびケイ酸塩からなる群から選ばれた少なくとも2種であることが好ましい。
また、無機系コーティング剤に含まれる(c)硬化剤としては、亜鉛化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物、リン酸塩および鉱酸からなる群より選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
次に、本発明は、難燃処理されたMDFに上記無機系コーティング剤を塗布し、常温硬化、または低温加熱硬化させて厚さ0.2〜2mmの通気性のある塗膜を形成する不燃MDFの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の不燃MDFは、不燃性のほか、耐火性、熱反射性に優れ、機械的強度が高く、高耐侯性により防火構造材として使用できるものである。また、MDF本来の断熱性と無機系塗膜の断熱性の相乗効果による断熱効果は該不燃MDFでは厚さ20mmで60mm以上の従来の断熱材に匹敵するものとなる。さらに内装材に該不燃MDFを使用すると不燃性のほか、断熱性に加え、熱放射性、結露防止性(乾燥性)に優れるため、省エネルギー効果の大きい内装材になる不燃MDFを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
MDF:
本発明に用いるMDFは公知の方法で製造可能である。例えば、木材チップを解繊した木質系繊維に接着剤および難燃処理剤を加え乾燥させた後、乾式抄造機(エアフィルタ)によりマットを形成し、これをホットプレスして成形する。
ここで、MDFを構成する木質系繊維の使用量は、全体に対し、含水率6%として67〜72重量%、好ましくは70重量%前後である。
【0008】
上記接着剤としては、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、イソシアネート系樹脂、エポキシ系樹脂およびポリエステル系樹脂などの熱硬化性樹脂の少なくとも1種である。メラミン・ユリア混合樹脂が多く使用されているが、最近ではホルムアルデヒド放散量のより少ないアルカリフェノール系樹脂やイソシアネート系樹脂が増えている。しかし、メラミン・ユリア混合樹脂も難燃処理剤によって、低ホルムアルデヒド化するものもあり、キャッチャー剤が使われることもある。ここで、キャッチャー剤とは、吸着分解剤であり、例えば銀ゼオライトや銅ゼオライトなどである。
【0009】
上記接着剤の使用量は、通常、全体に対し12〜24重量%、好ましくは14〜20重量%である。12重量%未満では、強度が弱かったり解れることがあり、一方、24重量%を超えると、通気性が悪くなったり、断熱性が悪くなったり、不燃性にならなかったりして好ましくない。
【0010】
また、難燃処理剤は、ホウ酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩、アンモニウム塩および水酸化金属類からなる群より選ばれた少なくとも1種である。これら難燃処理剤の効果はホウ酸、ホウ砂、ケイ酸塩では難燃処理剤自身が熱によって融溶して被膜を作り、炎から材料を遮断するものであり、アンモニウム塩では、熱による分解によりCO、NH、SOおよびSOなどの不燃性ガスを出して燃焼力を弱めるものであり、リン酸塩では熱により脱水炭化を促進して燃焼の余裕を与えないというものである。
【0011】
上記難燃処理剤は、通常、2種以上組み合わせて、全体に対し、7〜20重量%使用され、好ましくは9〜14重量%である。7重量%未満では、難燃性が不足し、一方、20重量%を超えると、接着不良になったりして好ましくない。
【0012】
上記MDFには、この他、ワックス、防腐剤、防カビ剤、防蟻剤、防水剤、着色剤および脱臭剤などのその他の添加剤を加えることができる。
【0013】
本発明に用いられるMDFは、例えば、木材またはその他の植物繊維を解繊して接着剤および難燃処理剤、さらに必要に応じてその他の添加剤を添加し、乾燥させた後、マットを形成し、第一段で60〜80kg/cmの圧力を急速に5〜数10秒加え、第2段で20〜40kg/cmで1〜3分圧締する。熱板温度は200〜260℃であるが、成形法は上記の手法に限定されるものではない。
【0014】
上記の難燃処理を行ったMDFの性状は、一般のMDFとほとんど変わらず、材質が均質で表面が平滑であり、密度は0.6〜0.8、曲げ強さ(N/mm)は30以上、熱伝導率(kcal/m secC)は0.04〜0.08、ホルムアルデヒド発散速度(mg/mh)は0.003〜0.004である。
【0015】
本発明の難燃化MDFは、上記のようにして熱圧成形したMDFの表面に無機系コーティング剤を使用して厚さ0.2mm〜2mmの通気性のある塗膜を形成したものである。
ここで、無機系コーティング剤としては、例えば、(a)第4級アンモニウムシリケートをSiO換算で4〜12重量部、(b)無機充填材を45〜75重量部、(c)硬化剤を2〜12重量部、ならびに(d)水および/または親水性有機溶剤を15〜40重量部(ただし、(a)+(b)+(c)+(d)=100重量部)を主成分とする。
【0016】
(a)第4級アンモニウムシリケート:
(a)第4級アンモニウムシリケートは、SiO成分を15〜45重量%含有するもので、本発明の無機系コーティング剤における主結合剤として使用されるもので、下記の一般式で表される。
(RN)・nSiO(ただし、Rは炭素数1以上のアルキル基であり、nは1以上の整数である。)
この(a)第4級アンモニウムシリケートは、アルカリ性を有し、下記式(1)〜(2)のように(c)硬化剤と反応して基材であるMDFに強く密着する。そして、形成される塗膜に耐火性、耐熱性、耐水性、耐侯性、親水性および通気性を与えるものである。
【0017】
【化1】

【0018】
【化2】

【0019】
(a)第4級アンモニウムシリケートの具体例としては、ジメチルエタノールアンモニウムシリケート、モノメチルトリプロパノールアンモニウムシリケート、ジメチルジプロパノールアンモニウムシリケート、モノエチルトリプロパノールアンモニウムシリケートなどの液状のシリケートが挙げられる。これら(a)第4級アンモニウムシリケートは(1)希釈したケイ酸ナトリウムを水素型陽イオン交換樹脂と接触させて得た活性シリカ溶液に第4級アンモニウム水酸化物を加え、所定の濃度まで濃縮する方法、または(2)第4級アンモニウム水酸化物とシリカヒドロゾルとを反応させる方法などにより容易に得られる。ここで、第4級アンモニウム水酸化物は、通常、アンモニアまたはアミン類にアルキレンオキサイドを付加する方法、または第4級アミン塩を陰イオン交換樹脂により脱イオンする方法などにより得られるが、生成物中に、第3級、第2級あるいは第1級のアミン類が少量含まれたものも使用することができ、それを用いて得られる第4級アンモニウムシリケートも本発明に用いられるコーティング剤に使用することができる。
【0020】
なお、(a)第4級アンモニウムシリケート中には、SiOが15〜45重量%の範囲で含まれていることが必要で、好ましくは20〜30重量%である。15重量%未満では、(a)成分の必要量が多くなりすぎたり、水が増えて乾燥が遅くなったりし、一方、45重量%を超えると、逆に密着力が弱くなったり、また亀裂が入ったりして好ましくない。
【0021】
上記(a)第4級アンモニウムシリケートの具体例としては、(株)日板研究所製の商品名NS−25(水溶液、SiO濃度=約25重量%)、日産化学工業(株)製の商品名キャス25(水溶液、SiO濃度=約25重量%)などであり、いずれもpHは11〜12である。これらの(a)第4級アンモニウムシリケートは、1種単独で、あるいは2種以上を併用することができる。
【0022】
本発明に用いられる無機系コーティング剤中の(a)成分の含有量は、(a)〜(d)成分の合計100重量部として、SiO換算で4〜12重量部、好ましくは5〜8重量部である。4重量部未満であると、結合力や硬度が不足する。一方、12重量部を超えると、粉状になったり、亀裂が入ったりして好ましくない。また、水溶液として使用する場合、(a)成分の含有量は、20〜30重量部である((a)〜(d)成分の合計100重量部として、SiO換算で4〜12重量部)。
なお、本発明の無機系コーティング剤の塗膜の組成は、本発明の無機系コーティング剤の製造方法に用いられる無機系コーティング剤中の(d)溶剤を除いたものと同じである。従って、本発明の(a)〜(c)成分のそれぞれの含有量は、(a)〜(c)成分の合計100重量部とすると、当然、無機系コーティング剤中の(a)〜(d)成分の合計100重量部とした上記(a)成分および下記(b)および(c)成分それぞれの含有量と同様の値になる。
【0023】
(b)無機充填材:
(b)無機充填材は、耐火性、断熱性、高耐熱性、熱反射性および通気性の良い塗膜を作るために無機系コーティング剤中に用いられるものであり、さらに、塗膜への着色、化粧性、高耐侯性などを与えるものである。
【0024】
(b)無機充填材としては、平均粒径または平均長さが0.3〜200μmで、かつ不水溶性である金属酸化物、金属水酸化物、金属チッ化物、金属炭化物、炭酸金属塩およびケイ酸塩からなる群から選ばれた少なくとも2種が挙げられる。
具体的には、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化クロム、酸化ランタン、酸化鉄、酸化銅、水酸化アルミニウム、水酸化ジルコニウム、二酸化マンガン、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ジルコニウム、アルミノシリカゲル、炭酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸ニッケル、炭酸マグネシウム、チッ化ケイ素、炭化ケイ素、チタン酸カリウム、ケイソウ土、タルク、カオリン、パーライト、雲母および各種合成酸化物からなる群から選ばれた少なくとも2種である。
【0025】
上記(b)無機充填材の形状は、粒状、針状、繊維状または鱗片状が好ましく、これらが混合されていても良い。また、(b)成分の平均粒径は0.3〜200μm、好ましくは1〜100μmである。0.3μm未満であると必要な膜厚ができなかったり、(b)成分の機能が発現できなかったり、製造コストがかかりすぎたりする。一方、200μmを超えると塗膜が粗面になったり、密着力が低下したりする。なお、上記平均粒径は、(b)成分の形状が針状、繊維状、または鱗片状の場合、単位形状の最大長さの平均値と解される。本発明に用いられる無機系コーティング剤の(b)成分の含有量は、(a)〜(d)成分の合計100重量部として、45〜75重量部、好ましくは55〜60重量部である。45重量部未満であると、目的とする性能の発現が難しく、また保湿性や着色が足りなかったりする。一方、75重量部を超えると、厚膜になりすぎたり、密着力が低下したり、無機系コーティング剤の粘度が上がりすぎたりして好ましくない。
【0026】
(c)硬化剤:
(c)硬化剤は、上記(a)第4級アンモニウムシリケートと短時間で反応して、耐水性に優れた強固な塗膜を形成するものであり、さらに得られた塗膜の耐火性、耐熱性、耐侯性および通気性を優れたものにする効果がある。
【0027】
(c)成分としては、亜鉛化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物、リン酸塩および鉱酸からなる群から選ばれた少なくとも1種が挙げられる。具体的には、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、リン酸、オルソリン酸アルミニウムおよびホウ酸などである。上記(c)成分は1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0028】
なお、(c)成分の平均粒径は、0.1〜20μm、好ましくは0.5〜10μmである。0.1μm未満であると、(a)成分との反応が速すぎたり、また粘度が上昇したりする。一方、20μmを超えると、無機系コーティング剤の安定性が損なわれたり、また塗膜の平滑性が失われたりして好ましくない。本発明に用いられる無機系コーティング剤中の(c)成分の含有量は、(a)〜(d)成分の合計100重量部として、2〜12重量部、好ましくは4〜8重量部である。2重量部未満であると、(a)成分との反応が遅すぎたり、不充分であったりする。一方、12重量部を超えると(a)成分との反応が速すぎたり、また塗膜に亀裂が入ったりして好ましくない。
【0029】
(d)水および/または親水性有機溶剤:
(d)水および/または親水性有機溶剤は、無機系コーティング剤の粘度調整や乾燥時間、可使時間の調節、さらに(b)充填材の分散の調節効果を有する。(d)成分の水としては、水道水、蒸留水、イオン交換水を使用できる。また、水には、上記(a)成分のシリケート、添加剤として使用するエマルジョン型もしくは水溶性型の合成樹脂に含まれる水なども包含される。
【0030】
(d)成分の親水性有機溶剤は、水と相溶する有機溶剤であり、無機系コーティング剤の固形分濃度および粘度の調整剤、さらに乾燥速度調整剤、あるいは不凍液剤として使用する。上記(d)親水性有機溶剤としては、アルコール類、グリコール類などが挙げられる。
アルコール類としては、炭素数1〜8の脂肪族アルコール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、メチルカルビトールなどが挙げられる。グリコール類としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールなどが挙られる。上記溶剤は、1種単独でもよく、2種以上を組み合わせてもよい。好ましい親水性有機溶剤は、i−プロパノール、メチルカルビトール、エチレングリコールの単独またはそれらの2種以上の混合溶剤である。
【0031】
本発明に用いられる無機系コーティング剤中の(d)成分の含有量は、(a)〜(d)成分の合計100重量部として、15〜40重量部、好ましくは20〜30重量部である。15重量部未満であると無機系コーティング剤の粘度が上昇しすぎ、保存安定性が低下したり、(a)〜(c)成分の分散性が悪くなる場合がある。一方、40重量部を超えると、保存安定性は向上するものの、相対的に他の成分が少なくなり、得られる塗膜の密着力が弱くなったり、薄膜すぎて目的とするものを作ることができない場合がある。
【0032】
なお、本発明に用いられる無機系コーティング剤は、(a)〜(d)の成分を混合し、さらに必要に応じて各種界面活性剤などの分散剤、硬化調整剤、抗菌剤、合成樹脂エマルジョン、合成ゴムエマルジョン、有機染料や顔料、その他の添加剤を含むことができる。
【0033】
さらに、上記添加剤として、合成樹脂および/または合成ゴムエマルジョンを使用すると、塗膜に柔軟性を持たせ、密着力を強化させ、塗膜の透水性を調節することができる。上記エマルジョンとしては、具体的には、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、シリコーン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエンゴムなどのエマルジョンを挙げることができる。上記合成樹脂および/または合成ゴムは、エマルジョンに限らず、水溶液であってもよい。
これらの樹脂、ゴム成分は、(d)水および/または親水性有機溶剤によく混合し、乾燥すると、水に不溶性の透明または半透明の膜を形成し、本発明の無機系コーティング剤においては、(b)充填材を接着させる助剤として、また耐衝撃性を改善するために使用できる。
【0034】
本発明に用いられる無機系コーティング剤は、(a)〜(c)成分を混合し、さらに必要に応じて(d)成分およびその他の添加剤成分を配合し、全固形分濃度を、60〜85重量%、好ましくは70〜75重量%に調整できる。固形分濃度が60重量%未満であると、必要な膜厚ができにくく、一方85重量%を超えると粘度が上昇しすぎてゲル化したりして好ましくない。
上記無機系コーティング剤は、通常の攪拌機、高粘度用バタフライミキサー、その他の分散機によりまたメッシュろ過することにより均一な分散液とすることができる。
【0035】
本発明に用いられる無機系コーティング剤は、水性で取り扱いやすく、塗布後、常温下でも短時間で硬化し、作用性に優れている。したがって、MDFに塗布し、60〜100℃、好ましくは70〜80℃で、5〜20分、好ましくは10〜15分加熱乾燥、または常温下で3〜6時間、好ましくは4〜5時間程度、乾燥して硬化させることで、厚さ0.2〜2mm、好ましくは0.5〜1.2mmの通気性塗膜を形成することができる。MDF面へのコーティング剤の塗布には、刷毛塗り、スプレーコート、ロールコートおよびフローコートなどの塗装手段を用いることができる。本発明に用いられる無機系コーティング剤により得られる塗膜は通気性であるため、塗装に際しては、従来のようにピンホールに注意することなく、通常、1回塗りで仕上げることができるが、2回以上塗布することもできる。
【0036】
ここで、上記無機系コーティング剤をMDFの表面に塗布する量は、1回あたり、固形分換算で300〜2,000g/mであり、好ましくは600〜1,800g/mである。塗布量が固形分換算で300g/m未満であると、膜厚が0.2mm以下になり性能が発現し難い。一方、2,000g/mを超えると、塗膜が割れやすくなったりして好ましくない。通常、総計塗布量は、固形分換算で300〜3,000g/m、好ましくは1,000〜2,400g/mである。総計塗布量が、固形分換算で300g/m未満であると、膜が薄すぎて本発明の塗膜の性能が発現し難い。一方、3,000g/mを超えると、割れやすくなったりして好ましくない。
また、塗布乾燥硬化により得られる本発明の塗膜の乾燥膜厚は0.2〜2mmであり、好ましくは0.4〜1.2mmである。膜厚が0.2mm未満であると、本発明の塗膜性能が発現し難く、一方、2mmを超えると割れやすくなったりして好ましくない。
【0037】
本発明の不燃MDFは、(c)硬化剤を使用するため耐水性に優れ強固なものとなる。また、塗膜を形成する無機系コーティング剤が(a)第4級アンモニウムシリケートおよび(b)無機充填材を主体として構成されているため、基材を保護し、基材に対し密着性が良く、不燃性、耐熱性、耐汚染性に優れ、通気性、親水性も有する。通気性が良いため、MDFの膨張、収縮にも追随し、また内部結露ができないため耐凍結融解性も良く、耐侯性、耐自然汚染性にも優れる。また、不燃MDFの表面に放射される熱エネルギーを反射し、さらに低熱伝導性により非加熱面に熱を伝導し難いため、優れた耐火材、断熱材として、また多孔質性による吸音材として使用できる。
【実施例】
【0038】
以下に実施例を挙げて説明するが、本発明は以下の実施例に限定解釈されるものではない。
【0039】
参考例1
<無機コーティング剤の調製>
表1に示す配合量で無機コーティング剤の調製を行った。攪拌タンクに、(a)〜(e)成分を入れ、軽く混合したのち、高速攪拌機を使用して5,000rpm位で10分間攪拌し、60メッシュフィルターでろ過して調製した。
【0040】
なお、表1中の記号は、以下のものを表す。
(a);第4級アンモニウムシリケート〔(株)日板研究所製、NS‐25、SiO濃度約25重量%〕
(b);無機充填材
(b)−1;二酸化ケイ素(平均粒径=100μm)
(b)−2;ケイ酸マグネシウム(平均長さ=15μm、針状)
(b)−3;チタン酸カリウム(平均径=0.2〜0.5μm、ウイスカー)
(b)−4;酸化チタン(白)(平均粒径=0.5μm)
(b)−5;酸化鉄(黄)(平均粒径=0.5μm)
(c);硬化剤
(c)−1;酸化マグネシウム(平均粒径=2μm)
(d);溶剤
(d)−1;イオン交換水
(d)−2;プロピレングリコール
(e);その他添加剤成分
(e)−1;レベリング剤(シリコーン系)
(e)−2;合成ゴムエマルジョン(固形分濃度=48重量%)
(e)−3;防水剤(シリコーン系)
(e)−4;抗菌・脱臭剤(銀ゼオライト)


















【0041】
【表1】

【0042】
実施例1
<難燃性MDFの作成>
不燃性の評価をするために、難燃性MDFの作成を行った。
木材チップを解繊してメラミン・ユリア樹脂を19重量%、およびケイ酸塩系難燃処理剤SIRIONO(ベルギー、F‐Stop社製)を11重量%加えて乾燥させた後、乾式抄造機によりマットを形成し、予備的に圧締した。これをホットプレスして厚さ12mmと18mmの2種類の難燃性MDFを作成した。その後、100×100mmと500×500mmにカットして試験片とした。
次に、この試験片の片面および両面に、調製された無機コーティング剤をエアースプレーにてm換算約1,400g塗布して常温で3時間乾燥後、室内に7時間放置した。塗膜厚は約750μmであった。試験片の内容を表2に示す。なお、無塗装片をFとした。






【0043】
【表2】

【0044】
実施例2〜5、比較例1
表2に示す試験片A〜D、Fを使用してコーンカロリーメーターによる燃焼試験(ISO 5660による)を実施した。結果を表3に示す。
【0045】
【表3】

【0046】
表3の結果より、試験片Aは準不燃材料(10分後の総発熱量(MJ/m)が8以下)として、B、C、Dは不燃材料(20分後の総発熱量(MJ/m)が8以下)として適合した。無塗装片のFは、着火はしないものの難燃材料(5分後の総発熱量(MJ/m)が8以下)としても不適であった。
【0047】
実施例6
上記表2の試験片Eを用いて、耐火構造性能(建築基準法第2条第7号)に必要な耐火性能試験に準ずる試験を行った。試験方法を図1および図2に示す。図1は試験片Eを700×120mm、厚さ5mmのステンレス板で挟み、両端を棒ネジで締め、圧力を加えて固定した。図1の状態に図2のように2台のガスバーナーで1時間、900〜1,000℃で加熱し、加熱面の状態を観察し、図2に示す非加熱面4ヶ所の温度を熱電対により測定した。また、加熱終了後3時間放置して試験片Eの状態を観察した。加熱面および非加熱面の状態を表4に示す。
【0048】
【表4】

【0049】
表4に示すように非加熱面の温度は100℃未満であり、熱反射断熱性が非常に高く、非加熱面への影響はほとんど見られない。加熱終了3時間後の状態は加熱面が塗膜の2ヶ所に亀裂が入り、少し盛り上がった状態になったが、基材(MDF)の表層部は2〜3mm位炭化しているものの、圧力に対しての変化は見られない。
【0050】
実施例7
試験片Bを用いて以下の手法で各種試験を行った。結果を表5に示す。
<断熱性の測定>
JIS A1412平板比較法に準拠して熱伝導率を測定した。
<密度の測定>
JIS A5906.7.2に準拠して測定した。
<吸音性>
JIS A1409に準拠して残響室法吸音率を測定した。なお、試験片Bの厚さは19.6mmである。
<吸水率>
JIS A5907.5.5に準拠して吸水率を測定した。
<含水率>
JIS A5906.7.3に準拠して含水率を測定した。
<曲げ強度>
JIS A5906.7.4に準拠して曲げ強さを測定した。
<湿潤時曲げ強度>
JIS A5908.5.5.1湿潤時曲げ強さA試験に準じて測定した。
<促進耐侯性>
QUV試験(UV照射70℃/8時間、結露50℃/4時間の繰り返し試験)500時間終了後の色差を測定した。
<ホルムアルデヒド放散量>
JIS A5905 「繊維板」ホルムアルデヒド放散量試験に準拠して測定した。




【0051】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の不燃MDFは、不燃性で耐火、耐熱、断熱、熱反射性および吸音、調湿、耐侯、耐水性、加工性、機械的強度に優れ、軽量で通気性を有する強固なものとなる。
このため、住宅、マンション、オフィスビル、工場、倉庫などの建築物の内外装、構造材および車輌、船舶、飛行機、電気製品、音響機器、化学プラント、電力設備、屋内外パイプ類、コンテナ、冷凍庫など広範囲に使用することができ、防火性および耐震性の向上、軽量化、快適化、省エネルギー、コスト低減などの効果を示す。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】試験片Eをステンレス板で挟み、両端を棒ネジで固定した状態の説明図である。(実施例2)
【図2】図1の試験片を、ガスバーナーを用いて加熱する方法の説明図である。(実施例2)
【符号の説明】
【0054】
a:ステンレス加圧板
b:棒ネジ
c:ボルト
d:試験片
e:ガスバーナー
1〜4:熱電対温度測定場所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質系繊維および接着剤の他に難燃処理剤を添加して熱圧成形したMDF(中質繊維板)の表面に無機系コーティング剤を使用して厚さ0.2mm〜2mmの通気性のある塗膜を形成してなることを特徴とする不燃MDF。
【請求項2】
接着剤がユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、イソシアネート系樹脂、エポキシ系樹脂、およびポリエステル系樹脂の群から選ばれた少なくとも1種の熱硬化樹脂であり、全体に対して12〜24重量%使用される請求項1記載の不燃MDF。
【請求項3】
難燃処理剤が、ホウ酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩、アンモニウム塩および水酸化金属類からなる群から選ばれた少なくとも1種であり、全体に対し7〜20重量%使用される請求項1記載の不燃MDF。
【請求項4】
無機系コーティング剤が、(a)第4級アンモニウムシリケートをSiO換算で4〜12重量部、(b)無機充填材を45〜75重量部、(c)硬化剤を2〜12重量部、ならびに(d)水および/または親水性有機溶剤を15〜40重量部(ただし、(a)+(b)+(c)+(d)=100重量部)を主成分とする請求項1記載の不燃MDF。
【請求項5】
(b)無機充填材が、平均粒径または平均長さが0.3〜200μmで、かつ不水溶性である金属酸化物、金属水酸化物、金属チッ化物、金属炭化物、炭酸金属塩およびケイ酸塩からなる群から選ばれた少なくとも2種である請求項4記載の不燃MDF。
【請求項6】
(c)硬化剤が、亜鉛化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物、リン酸塩および鉱酸の群から選ばれた少なくとも1種である請求項4記載の不燃MDF。
【請求項7】
難燃処理したMDFの表面に無機系コーティング剤を塗布し、常温硬化または低温加熱硬化させて厚さ0.2〜2mmの通気性のある塗膜を形成する請求項1〜6いずれか1項に記載の不燃MDFの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−1267(P2006−1267A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−315352(P2004−315352)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(591042034)株式会社日板研究所 (10)
【出願人】(504195646)エムディエフ エフアール ソリューションズ ピーティワイ リミテッド(MDF FR SOLUTIONS PTY.LTD) (1)
【Fターム(参考)】