説明

不純物拡散用塗布液

【課題】 スクリーン印刷に好適であり、長時間の連続印刷や休止期間をおいた印刷が可能であり、皮膜形成後の半導体基板を直立状態で焼成したとしても抵抗値の上下バラツキが小さい半導体が得られるリン拡散用塗布液を提供すること。
【解決手段】 ポリビニルアルコール系樹脂(A)、不純物(B)、および沸点が100℃以上の多価アルコール(C)を含有し、該多価アルコール(C)の含有量が塗布液中の70重量%以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板に不純物拡散層を形成する際に、基板上に塗布される不純物拡散用塗布液に関し、さらに詳しくは、スクリーン印刷による塗布に好適な不純物拡散用塗布液に関する。
【背景技術】
【0002】
トランジスタ、ダイオード、太陽電池などの半導体素子に用いられる半導体の製造法として、ゲルマニウム、シリコン等の半導体基板上にリンやホウ素などの不純物を含有する液状材料を塗布し、皮膜を形成した後、焼成することによって基板中に不純物の拡散層を形成する方法が広く用いられている。
【0003】
かかる液状材料を基板上に塗布する方法としてはスピンコート法が広く用いられているが、近年、製造コスト削減のために基板の大型化が進み、直径4インチ以上になると、かかるスピンコート法では均一な膜厚の皮膜形成が困難になる。
そこで、大型ウェハーにも対応可能な塗布法としてスクリーン印刷法が検討され、かかる印刷法に好適な不純物含有拡散用塗布液が提案されている。
【0004】
例えば、スクリーン印刷によって半導体基板上に均一な皮膜を形成することが可能な拡散用塗布液として、不純物としてリン化合物やホウ素化合物、水溶性高分子、水を含有し、粘度が特定範囲である拡散用塗布液が提案されている。(例えば、特許文献1、2参照。)
【0005】
特許文献1、あるいは2の塗布液をスクリーン印刷し、焼成して得られた半導体は、不純物の含有量が高く、皮膜の均一性が高いため、抵抗値のばらつきが小さく、非常に優れたものであるが、使用時の環境によっては塗布液中の水が揮発、増粘する場合があった。
そこで、溶剤として水よりも揮発性が低い高沸点の有機溶剤を用い、有機溶剤に可溶な有機リン化合物、有機溶剤に可溶なポリ酢酸ビニルなどの有機バインダー、およびチクソ剤を含有する拡散用塗布液が提案されている。(例えば、特許文献3参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−053353号公報
【特許文献2】特開2007−035719号公報
【特許文献3】WO2009/116569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
表面に不純物拡散用塗布液による皮膜が形成された半導体基板は、乾燥後、焼成することによって基板中に不純物が拡散して拡散層が形成されるが、通常、かかる焼成は、多数の基板を炉の中に直立させて並べた状態で行われる。
ところが、特許文献3の塗布液で得られた皮膜は、焼成の初期段階で流動し、基板下部に移動するためか上下で不純物濃度の差が生じ、得られた半導体の抵抗値に上下で差が生じる傾向があった。
【0008】
すなわち本発明は、スクリーン印刷に好適な塗布液であって、皮膜形成後の半導体基板を直立状態で焼成したとしても抵抗値の上下の差が小さい半導体が得られる不純物拡散用塗布液の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記事情に鑑み鋭意検討した結果、ポリビニルアルコール系樹脂(以下、PVA系樹脂と略記する。)(A)、不純物(B)、および沸点が100℃以上の多価アルコール(C)を含有し、該多価アルコール(C)の含有量が塗布液中の70重量%以上であるリン拡散用塗布液によって本発明の課題が解決されることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち本発明は、不純物拡散用塗布液において、溶剤の主成分として沸点100℃以上の多価アルコールを用い、さらにPVA系樹脂を含有させることを最大の特徴とするものである。
なお、不純物拡散用塗布液にPVA系樹脂を用いることは特許文献1、2などにおいて公知であるが、いずれも水が主溶剤である塗布液に水溶性樹脂であるPVA系樹脂を用いたもので、通常の有機溶剤には不溶であり、溶解したとしても不安定で、環境変化によっては析出する可能性があるPVA系樹脂を有機溶剤を主体とする塗布液に用いることは、通常、考えにくいことである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の不純物拡散用塗布液は半導体基板上にスクリーン印刷することによって均一な皮膜が得られる点、粘度安定性に優れることから、長時間の連続印刷や休止期間をおいた印刷が可能である点、皮膜形成後の半導体基板を直立状態で焼成したとしても不純物濃度の上下差、すなわち抵抗値の上下バラツキが小さい半導体が得られる点、などの利点を有するもので、工業的に極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、これらの内容に特定されるものではない。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0013】
本発明の不純物拡散用塗布液は、PVA系樹脂(A)、不純物(B)、および沸点が100℃以上の多価アルコール(C)を含有し、塗布液中の多価アルコール(C)の含有量が70重量%以上のものである。
以下、各順に説明する。
【0014】
〔PVA系樹脂(A)〕
まず、本発明で用いられるPVA系樹脂(A)について説明する。
PVA系樹脂(A)は、ビニルエステル系単量体を共重合して得られるポリビニルエステル系樹脂をケン化して得られるものであり、ケン化度相当のビニルアルコール構造単位と酢酸ビニル構造単位から構成される。
上記ビニルエステル系モノマーとしては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられるが、経済的に酢酸ビニルが好ましく用いられる。
【0015】
本発明で用いられるPVA系樹脂(A)の平均重合度(JIS K6726に準拠して測定)は、通常、100〜4000であり、特に200〜2000、さらに300〜1500のものが好ましく用いられる。
かかる平均重合度が小さすぎると塗布液が低粘度となり、良好なスクリーン印刷が困難となったり、塗膜が薄膜となり、不純物の供給量が不足する場合がある。逆に大きすぎてもスクリーン印刷には不適であり、印刷不良が発生しやすくなる傾向がある。
【0016】
また、本発明で用いられるPVA系樹脂(A)としては、通常、ケン化度(JIS K6726に準拠して測定)が50〜100モル%のものを用いることが可能である。
中でも、本発明の塗布液は、その溶剤の主成分が、沸点が100℃以上の多価アルコールであることから、塗布液の均一性の観点から、かかる溶剤への溶解性に優れたものが好ましく、そのようなPVA系樹脂(A)としては、ケン化度が低いものや、多価アルコールとの親和性に優れた変性PVAを用いることが好ましい。
【0017】
例えば、本発明のPVA系樹脂(A)として未変性のPVAを用いる場合には、ケン化度が50〜90モル%のものが好ましく、さらに60〜85モル%、特に70〜80モル%のものが好ましい。未変性PVAの場合、そのケン化度が高すぎると多価アルコールを主体とする溶剤への溶解性が低下し、含有量を減らさざるをえない場合がある。また、ケン化度が低すぎると塗布液によって塗布皮膜が形成された半導体基板を直立させて焼成した場合、得られた半導体の抵抗値が基板の上下で差が生じる場合がある。
【0018】
また、変性PVA系樹脂としては、ポリビニルエステル系樹脂の製造時に各種単量体を共重合させ、これをケン化して得られたものや、未変性PVAに後変性によって各種官能基を導入したものを用いることができる。
【0019】
ビニルエステル系モノマーとの共重合に用いられる単量体としては、エチレンやプロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のオレフィン類、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、3,4−ジヒドロキシ−1−ブテン等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類およびそのアシル化物などの誘導体、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和酸類、その塩、モノエステル、あるいはジアルキルエステル、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル類、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸類あるいはその塩、アルキルビニルエーテル類、ジメチルアリルビニルケトン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、ビニルエチレンカーボネート、2,2−ジアルキル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン、グリセリンモノアリルエーテル、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン、等のビニル化合物、酢酸イソプロペニル、1−メトキシビニルアセテート等の置換酢酸ビニル類、塩化ビニリデン、1,4−ジアセトキシ−2−ブテン、ビニレンカーボネート、等が挙げられる。
【0020】
また、後反応によって官能基が導入されたPVA系樹脂としては、ジケテンとの反応によるアセトアセチル基を有するもの、エチレンオキサイドとの反応によるポリアルキレンオキサイド基を有するもの、エポキシ化合物等との反応によるヒドロキシアルキル基が有するもの、あるいは各種官能基を有するアルデヒド化合物をPVAと反応させて得られたものなどを挙げることができる。
かかる変性PVA系樹脂中の変性種、すなわち共重合体中の各種単量体に由来する構成単位、あるいは後反応によって導入された官能基の含有量は、変性種によって特性が大きくことなるため、一概には言えないが、通常、1〜20モル%であり、特に2〜10モル%の範囲が好ましく用いられる。
【0021】
これらの各種変性PVA系樹脂の中でも、本発明においては、下記一般式(1)で示される側鎖に1,2−ジオール構造を有する構造単位を有するPVA系樹脂が好ましく用いられる。
なお、一般式(1)におけるR、R、及びRはそれぞれ独立して水素原子または有機基を示し、Xは単結合または結合鎖を示し、R、R、及びRはそれぞれ独立して水素原子または有機基を示すものである。
【0022】
【化1】

【0023】
中でも、一般式(1)で表わされる1,2−ジオール構造単位中のR〜R、及びR〜Rがすべて水素原子であり、Xが単結合である、下記一般式(1’)で表わされる構造単位を有するPVA系樹脂が最も好ましい。
【0024】
【化2】

【0025】
なお、かかる一般式(1)で表わされる構造単位中のR〜R、及びR〜Rは、樹脂特性を大幅に損なわない程度の量であれば有機基であってもよく、その有機基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基が挙げられ、かかる有機基は、必要に応じて、ハロゲン基、水酸基、エステル基、カルボン酸基、スルホン酸基等の官能基を有していてもよい。
【0026】
また、一般式(1)で表わされる1,2−ジオール構造単位中のXは熱安定性の点や高温下や酸性条件下での安定性の点で単結合であるものが最も好ましいが、本発明の効果を阻害しない範囲であれば結合鎖であってもよく、かかる結合鎖としては、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、フェニレン、ナフチレン等の炭化水素(これらの炭化水素はフッ素、塩素、臭素等のハロゲン等で置換されていても良い)の他、−O−、−(CHO)−、−(OCH−、−(CHO)CH−、−CO−、−COCO−、−CO(CHCO−、−CO(C)CO−、−S−、−CS−、−SO−、−SO−、−NR−、−CONR−、−NRCO−、−CSNR−、−NRCS−、−NRNR−、−HPO−、−Si(OR)−、−OSi(OR)−、−OSi(OR)O−、−Ti(OR)−、−OTi(OR)−、−OTi(OR)O−、−Al(OR)−、−OAl(OR)−、−OAl(OR)O−、等(Rは各々独立して任意の置換基であり、水素原子、アルキル基が好ましく、またmは1〜5の整数)が挙げられる。中でも製造時あるいは使用時の安定性の点で炭素数6以下のアルキレン基、特にメチレン基、あるいは−CHOCH−が好ましい。
【0027】
かかるPVA系樹脂の製造法としては、特に限定されないが、(i)ビニルエステル系モノマーと下記一般式(2)で示される化合物との共重合体をケン化する方法や、(ii)ビニルエステル系モノマーと下記一般式(3)で示される化合物との共重合体をケン化及び脱炭酸する方法や、(iii)ビニルエステル系モノマーと下記一般式(4)で示される化合物との共重合体をケン化及び脱ケタール化する方法が好ましく用いられる。
【0028】
【化3】

【0029】
【化4】

【0030】
【化5】

【0031】
上記一般式(2)、(3)、(4)中のR、R、R、X、R、R、Rは、いずれも一般式(1)の場合と同様である。また、R及びRはそれぞれ独立して水素原子またはR−CO−(式中、Rはアルキル基である)である。R10及びR11はそれぞれ独立して水素原子またはアルキル基である。
【0032】
(i)、(ii)、及び(iii)の方法については、例えば、特開2006−95825に説明されている方法を用いることができる。
中でも、共重合反応性および工業的な取り扱い性に優れるという点から、(i)の方法において、一般式(2)で表わされる化合物として3,4−ジアシロキシ−1−ブテンを用いることが好ましく、特に3,4−ジアセトキシ−1−ブテンが好ましく用いられる。
【0033】
本発明において、かかる一般式(1)で表される構造単位を有するPVA系樹脂を用いる場合、ケン化度がが50〜100モル%のものを用いることが可能であり、さらに60〜90モル%、特に70〜80モル%のものが好ましく用いられる。
これは、側鎖の1,2−ジオール構造によって、未変性PVAよりケン化度が高くても、多価アルコールへの溶解性が向上したことによるものである。
【0034】
また、かかるPVA系樹脂に含まれる1,2−ジオール構造単位の含有量は、通常、1〜30モル%であり、さらに3〜20モル%、特に5〜10モル%のものが好ましく用いられる。かかる含有量が低すぎると、高ケン化度のものの場合、多価アルコールへの溶解性が不十分になる場合があり、逆に高すぎると、乾燥性が低下し、生産性が低下する傾向がある。
【0035】
なお、PVA系樹脂(A)中の1,2−ジオール構造単位の含有率は、PVA系樹脂を完全にケン化したもののH−NMRスペクトル(溶媒:DMSO−d6、内部標準:テトラメチルシラン)から求めることができ、具体的には1,2−ジオール単位中の水酸基プロトン、メチンプロトン、およびメチレンプロトン、主鎖のメチレンプロトン、主鎖に連結する水酸基のプロトンなどに由来するピーク面積から算出すればよい。
【0036】
また、本発明で用いられるPVA系樹脂(A)は、一種類であっても、二種類以上の混合物であってもよく、その場合は、上述の未変性PVAどうし、未変性PVAと一般式(1)で示される構造単位を有するPVA系樹脂、ケン化度、重合度、変性度などが異なる一般式(1)で示される構造単位を有するPVA系樹脂どうし、未変性PVA、あるいは一般式(1)で示される構造単位を有するPVA系樹脂と他の変性PVA系樹脂、などの組合わせを用いることができる。
【0037】
本発明の不純物拡散用塗布液中のPVA系樹脂(A)の含有量は、通常1〜40重量%であり、特に3〜30重量%、殊に5〜25重量%の範囲が好ましく用いられる。
かかるPVA系樹脂(A)の含有量が小さすぎると、塗布液の粘度が低くなり、塗膜が安定して形成されにくくなる傾向があり、逆に、多すぎると、塗布液の粘度が高くなるため、塗布作業性が低下したり、スクリーン印刷におけるスクリーンメッシュの目詰まりが起りやすくなる傾向がある。
【0038】
〔不純物(B)〕
次に、本発明で用いられる不純物(B)について説明する。
かかる不純物(B)としては、例えば、13族元素化合物や15族元素化合物が用いられる。また、これらの化合物は、単独で用いてもよく、併用してもよい。
【0039】
上記15族元素化合物は、一般にN型半導体の製造において、不純物として用いられるものであり、リン化合物やアンチモン化合物を挙げることができるが、中でもリン化合物が好ましく用いられる。 かかるリン化合物としては、一般にN型半導体の製造において不純物として用いられるものであれば使用可能であり、具体的には、リン酸、五酸化二リンなどのリン酸類;リン酸メラミン、リン酸アンモニウムなどのリン酸塩類;塩化リン、オキシ塩化リンなどの塩化物;リン酸エステル類などを挙げることができる。
中でも、溶剤の主成分として用いられる沸点100℃以上の多価アルコールへの溶解性に優れたものとして、リン酸や五酸化ニリン、リン酸エステル類が挙げられ、特にリン酸エステル類が好ましく用いられる。
【0040】
本発明において用いられるリン酸エステル類とは、リン酸の持つ3つの水素の全部、あるいは一部が有機基で置換されたもので、公知の各種化合物を用いることが可能であるが、中でも下記一般式(5)で表されるアシッドホスホキシ(メタ)アクリレート類がオートドープの抑制の点で好ましく用いられる。
【0041】
【化6】

【0042】
上記一般式(5)中のR12は水素あるいはメチル基であり、R13は水素、メチル基、あるいは−CHCl基であり、R14は水素、炭素数1〜10のアルキル基、フェニル基、あるいは−NHOH基であり、nは1〜10の正の整数であり、m、lは1または2であり、m+l=3である。
【0043】
かかる一般式(5)で表されるアシッドホスホキシ(メタ)アクリレート類の市販品としては、ユニケミカル社製のホスマーシリーズ、日本化薬社製のカヤマーシリーズ、共栄社油脂社製のライトエステルシリーズ、大八化学社製のMRシリーズ、ARシリーズ、PSシリーズ、新中村化学社製のNKエステルシリーズ、などを挙げることができる。
【0044】
その具体例としてはR12がメチル基、R13が水素、R14が水素、nが1、mが1、lが2である化合物(例えば、ユニケミカル社製「ホスマーM」)や、R12がメチル基、R13が水素、R14が−NHOH、nが1、mが1、lが2である化合物(例えば、ユニケミカル社製「ホスマーMH」、R12がメチル基、R13が水素、R14が水素、nが4〜5、mが1、lが2である化合物(例えば、ユニケミカル社製「ホスマーPE」などを挙げることができる。
中でも、本願発明で用いられるPVA系樹脂との親和性の観点から、一般式(5)において、R12がメチル基であるアシッドホスホキシメタクリレート類、R13が水素でありnが5以下、特に1であるもの、R14が水素であるもの、およびmが1、lが2であるものが好ましく用いられる。
【0045】
本発明の不純物拡散用塗布液中の15族元素化合物の含有量は、通常0.1〜30重量%であり、特に0.1〜10重量%、殊に0.1〜5重量%の範囲が好ましく用いられる。
また、15族元素化合物のPVA系樹脂(A)100重量部に対する含有量は、通常1〜300重量部であり、特に2〜200重量部、殊に3〜50重量部の範囲が用いられる。
かかる15族元素化合物の含有量が小さいと、拡散層中の15族元素(リン等)の含有量が小さくなり、充分な抵抗値が得られない場合がある。また、15族元素化合物の含有量が多すぎると、PVA系樹脂(A)の溶解性が不充分となる場合がある。
なお、かかる15族元素化合物は、単一の化合物でもよく、二種以上のものを組合わせて用いてもよい。
【0046】
また、上記13族元素化合物は、一般にP型半導体の製造において、不純物として用いられるものであり、ホウ素化合物やアルミニウム化合物を挙げることができるが、中でもホウ素化合物が好ましく用いられる。
かかるホウ素化合物の具体例としては、ホウ酸、三酸化二ホウ素などのホウ酸類;ホウ酸アンモニウムなどのホウ酸塩類;三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、三ヨウ化ホウ素などのハロゲン化物;ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリイソプロピルなどのホウ酸エステル類;窒化ホウ素などを挙げることができる。
中でも、取り扱いの容易性の点で、ホウ酸や、ホウ酸塩類、ホウ酸エステル類、窒化ホウ素が好ましく用いられる。
【0047】
本発明において用いられるホウ酸エステル類とは、ホウ酸の持つ3つの水素の全部、あ
るいは一部が有機基で置換されたもので、公知の各種化合物を用いることが可能であるが
、中でもホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチルが不純物拡散性の点で好ましく用いられる。
【0048】
本発明の不純物拡散用塗布液中の13族元素化合物の含有量は、通常0.1〜30重量%であり、特に0.1〜10重量%、殊に0.1〜5重量%の範囲が好ましく用いられる。
また、13族元素化合物のPVA系樹脂(A)100重量部に対する含有量は、通常1〜300重量部であり、特に3〜200重量部、殊に5〜50重量部の範囲が用いられる。
かかる13族元素化合物の含有量が小さいと、拡散層中の13族元素(ホウ素等)の含有量が小さくなり、充分な抵抗値が得られない場合がある。また、13族元素化合物の含有量が多すぎると、PVA系樹脂(A)の溶解性が不充分となる場合がある。
【0049】
〔多価アルコール(C)〕
本発明の不純物拡散用塗布液は、その溶剤の主成分として沸点が100℃以上である多価アルコール(C)を用いることを特徴とするものである。
かかる多価アルコール類(C)を主成分として用いることによって、塗布液の優れた粘度安定性が得られる。
かかる多価アルコール(C)は、沸点が100℃以上のものであるが、さらに150〜400℃、特に175〜300℃のものが好ましく用いられる。
また、かかる多価アルコールとしては、脂肪族アルコール、芳香族アルコールのいずれも使用することができるが、PVA系樹脂(A)の溶解性の点から脂肪族アルコールが好ましい。
【0050】
かかる多価アルコール(C)としては、具体的には、エチレングリコール(197℃)、ジエチレングリコール(244℃)、トリエチレングリコール(287℃)、テトラエチレングリコール(314℃)、プロピレングリコール(188℃)などのニ価アルコール類;グリセリン(290℃)、トリメチロールプロパン(292℃)、ソルビトール(296℃)、マンニトール(290〜295℃)、ペンタエリスリトール(276℃)、ポリグリセリンなどの三価以上の多価アルコール類、などを挙げることができる。なお、( )内の値は沸点である。
【0051】
これらは単独で用いることも可能であるが、粘度の調整、PVA系樹脂やリン化合物の溶解性、各種添加物の溶解性や分散性、基材への濡れ性などを調製するために、二種以上ものを併用して用いることが好ましい実施態様である。中でも、エチレングリコールとグリセリンの組み合わせが好ましく用いられ、その際のエチレングリコールとグリセリンの配合比率は所望する特性によって異なるが、通常、エチレングリコール/グリセリンの値が20/80〜100/0であり、さらに30/70〜90/10、特に50/50〜80/20の範囲から選択される。
【0052】
また、多価アルコール以外の溶剤を併用することも可能であり、かかる溶剤としては、水、イソブチル酸−3−ヒドロキシ−2,2,4−トリメチルペンチルエステル(TPM)や、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどの低級アルコール系溶剤、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトールなどのカルビトール系溶剤、エチルセロソルブ、イソアミルセロソルブ、ヘキシルセロソルブなどのセロソルブ系溶剤、その他脂肪族炭化水素系溶剤、高級脂肪酸系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤などを挙げることができる。
かかる多価アルコール以外の溶剤の配合量は、通常、溶剤の全量に対して20重量%以下であり、特に10重量%以下である。
【0053】
本発明の不純物拡散用塗布液における多価アルコール(C)の含有量は、70重量%以上であり、さらに70〜90重量%、特に75〜90重量%の範囲が好ましく用いられる。 かかる多価アルコール(C)の含有量が少なすぎると塗布液の粘度が高くなりすぎて、塗布作業性が低下したり、スクリーン印刷におけるスクリーンメッシュの目詰まりが起りやすくなる傾向がある。逆に多すぎると塗布液の粘度が低くなりすぎて塗膜が安定して形成されにくくなったり、乾燥に長時間を要する傾向があり、さらに拡散層中の不純物の含有量が少なくなりすぎる場合がある。
【0054】
〔界面活性剤(D)〕
本発明の不純物拡散用塗布液には、半導体表面への濡れ性を向上させ、塗布液の発泡を抑制し、気泡に起因する印刷不良の防止などを目的として、界面活性剤(D)を配合することが好ましい。
本発明の塗布液に用いられる界面活性剤としては、公知のノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤が挙げられ、いずれも使用することができるが、半導体への金属成分等の持込が少ないことから、ノニオン系界面活性剤が好ましい。
かかるノニオン系界面活性剤としては、公知のものを使用することが可能であり、具体的にはエチレンオキサイド−プロピレンオキサイドのブロック共重合体、アセチレングリコール誘導体などの炭化水素系界面活性剤や、シリコン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤や有機変性ポリシロキサンと特殊ポリマーの混合物などを挙げることができる。
中でも、本発明の塗布液において発泡の抑制、および消泡性に優れている点で、炭化水素系界面活性剤、特にアセチレングリコール誘導体が好ましく用いられる。
【0055】
かかるアセチレングリコール誘導体としては、下記式(5)で表されるものが好ましく用いられる。
【0056】
【化7】

【0057】
上記一般式(6)中のR15,R18はそれぞれ独立して炭素数1〜20のアルキル基を示し、特に炭素数1〜5のものが好ましく、殊に炭素数3〜5のものが好ましく用いられる。また、R16,R17はそれぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基を示し、特にメチル基が好ましく用いられる。なお、R15とR18、およびR16とR17はそれぞれ同一でも異なったものでもよいが、それぞれ同一構造のものが好ましく用いられる。
また、s,tはそれぞれ0〜30の整数であり、特にs+tが1〜10、特に1〜5、殊に1〜3であるものが好ましく用いられる。
【0058】
かかるアセチレングリコール誘導体としては、具体的に、2,5,8,11−テトラメチル−6−ドデシン−5,8−ジオールのエチレンオキサイド付加物、5,8−ジメチル−6−ドデシン−5,8−ジオールのエチレンオキサイド付加物、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7ジオールのエチレンオキサイド付加物、4,7−ジメチル−5−デシン−4,7−ジオールのエチレンオキサイド付加物、2,3,6,7−テトラメチル−4−オクチン−3,6−ジオールのエチレンオキサイド付加物、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオールのエチレンオキサイド付加物、2,5−ジメチル−3−ヘキシン―2,5−ジオールのエチレンオキサイド付加物などを挙げることができる。
これらの中でも、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7ジオールのエチレンオキサイド付加物であって、エチレンオキサイドの付加量(m+n)が1〜2であるものが好ましく用いられる。
【0059】
かかるアセチレングリコール誘導体である界面活性剤の市販品としては、日信化学工業社製のサーフィノールシリーズなどを挙げることができる。
【0060】
本発明の不純物拡散用塗布液に配合される界面活性剤(D)の配合量は、通常、塗布液中0.1〜10重量%であり、特に0.3〜8重量%、殊に0.5〜5重量%の範囲が好ましく用いられる。かかる界面活性剤(D)の配合量が少なすぎると、抑泡・消泡効果が不充分である場合があり、逆に多すぎると液から分離するして均一溶液が得られなくなる場合がある。
【0061】
〔無機微粒子(E)〕
本発明の不純物拡散用塗布液には、スクリーン印刷特性を改善する目的で、各種の無機微粒子(E)を配合することが可能である。
かかる無機微粒子(E)としては、コロイダルシリカ、非晶質シリカ、フュームドシリカなどのシリカ類が好適であり、中でもコロイダルシリカが好ましく用いられる。
かかる無機微粒子(E)の配合量は、通常、塗布液中0.5〜20重量%であり、特に1〜10重量%の範囲が好ましく用いられる。
【0062】
〔不純物拡散用塗布液〕
本発明の不純物拡散用塗布液は、上述のPVA系樹脂(A)、不純物(B)、および沸点が100℃以上の多価アルコール(C)を含有し、該多価アルコール(C)の含有量が塗布液中の70重量%であるものであって、必要に応じて、さらに界面活性剤(D)、および無機微粒子(E)、およびその他の添加剤を含有するものである。
かかる不純物拡散用塗布液の20℃における粘度は通常300〜100,000mPa・sであり、特に500〜10,000mPa・s、殊に700〜6,000mPa・sの範囲が好ましく用いられる。なお、かかる粘度はB型粘度計を用いた測定したものである。
かかる塗布液の濃度、および粘度が小さすぎると塗膜が安定して形成されにくくなったり、拡散層中の不純物の含有量が不十分になる場合があり、逆に濃度、および粘度が大きすぎると、塗布作業性が低下したり、スクリーン印刷におけるスクリーンメッシュの目詰まりが起りやすくなる傾向がある。
【0063】
本発明の不純物拡散用塗布液の調製法は特に限定されないが、例えば、上述のPVA系樹脂(A)と不純物(B)を逐次、あるいは同時に多価アルコール(C)に溶解する方法、PVA系樹脂(A)、および不純物(B)の多価アルコール(C)溶液を別々に調製し、それらを混合する方法などが挙げられ、かかる溶解、調製の際には、加熱、撹拌しながら行うことが好ましい。
また、界面活性剤(D)、無機微粒子(E)、その他の添加剤については、上記塗布液の調製後に配合、あるいは上記調製の過程で配合、のいずれの方法も採用することができる。
【0064】
かくして得られた本発明の不純物拡散用塗布液は保存安定性に優れるので、大量に調製して保管したり、小分けにして移動したりすることができ、また、途中まで使用して残りを保存することも可能である。
【0065】
〔半導体〕
次に、本発明の不純物拡散用塗布液を用いて得られる半導体について説明する。
かかる半導体は、シリコンやゲルマニウムなどの半導体基板上に本発明の不純物拡散用塗布液を塗布し、乾燥、焼成、拡散の各工程を経て、半導体基板中にリンの拡散層を形成することで製造される。
【0066】
半導体基板上に不純物拡散用塗布液を塗布する方法としては、公知の方法を用いることが可能で、具体的には、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、凸版印刷法、平板印刷法、スピンコーター法、コンマコーター法、ダイヘッドコーター法、ダイリップコーター法、などを挙げることができる。中でも、本発明の塗布液はスクリーン印刷法に用いることで最大の効果が得られ、4インチ以上の大型ウエハーに対しても均一な塗布膜を得ることができる。
半導体基板上への塗布液の塗布量は、基板の種類や半導体の用途、塗布液中の不純物化合物の含有量と所望の不純物含有量によって異なるが、通常、1〜100g/mであり、特に1〜50g/mの範囲で実施される。
【0067】
続く乾燥工程にて塗布膜から水等の揮発成分が除去され、その条件としては、適宜設定すればよいが、通常、20〜300℃、特に100〜200℃での温度条件下、1〜60分、特に5〜30分の乾燥時間が用いられる。乾燥方法についても特に限定されず、熱風乾燥、赤外線加熱乾燥、真空乾燥、などの公知の方法を用いることができる。
なお、必要に応じて塗布工程と乾燥工程を連続して実施することも可能である。
【0068】
続く焼成工程(脱脂工程)では、電気炉等を用い、塗布膜中の有機成分の大半が除去される。かかる工程の条件は、塗布液の組成や塗布膜の厚さによって適宜調節する必要があるが、通常、300〜1000℃、特に400〜800℃の温度条件、1〜120分、特に5〜60分の時間で実施される。
さらに、拡散工程で半導体基板中に不純物が拡散され、拡散層が形成されるが、焼成工程と同様に電気炉等を用い、800〜1400℃の温度条件下、枚葉、あるいは複数枚を重ね合わせた状態で行われる。
なお、焼成工程と拡散工程を一工程で実施する、あるいは、焼成工程にて拡散が進行し、所望とする抵抗値が得られる場合、拡散工程を省略することも可能である。
【0069】
かかる半導体の表面抵抗は、不純物の含有量や拡散温度、拡散時間などによって制御することができ、通常、0.03〜10000Ω/□の範囲で、目的とする用途に適した表面抵抗のものを得ることが可能である。
【実施例】
【0070】
以下に、本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、実施例の記載に限定されるものではない。
尚、例中、「部」、「%」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
【0071】
製造例1
〔PVA系樹脂(A1)の製造〕
還流冷却器、滴下漏斗、攪拌機を備えた反応容器に、酢酸ビニル1500部、メタノール648部、アゾビスイソブチロニトリルを0.33モル%(対仕込み酢酸ビニル)投入し、攪拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ、60℃で重合を開始した。酢酸ビニルの重合率が90%となった時点で、m−ジニトロベンゼンを添加して重合を終了し、続いて、メタノール蒸気を吹き込む方法により未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し共重合体のメタノール溶液とした。
【0072】
ついで、上記メタノール溶液をさらにメタノールで希釈し、濃度30%に調整してニーダーに仕込み、溶液温度を35℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの2%メタノール溶液を共重合体中の酢酸ビニル構造単位の1モルに対してNa量として3.4ミリモルとなる割合で加えてケン化を行った。ケン化が進行するとともにケン化物が析出し、粒子状となった時点で濾別し、メタノールでよく洗浄して熱風乾燥機中で乾燥し、目的とするPVA系樹脂(A1)を作製した。
【0073】
得られたPVA系樹脂(A1)のケン化度は、残存酢酸ビニルの加水分解に要するアルカリ消費量にて分析したところ、78.0モル%であった。また、平均重合度は、JIS K 6726に準じて分析を行ったところ、1400であった。(表1)
【0074】
製造例2
〔PVA系樹脂(A2)の製造〕
還流冷却器、滴下漏斗、攪拌機を備えた反応容器に、酢酸ビニル1000部、メタノール700部、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン88部を仕込み、アゾビスイソブチロニトリルを1.5モル%(対仕込み酢酸ビニル)投入し、攪拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ(約60℃)、重合を開始した。重合開始と同時にHANNA法により、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン31部 と メタノール 122.3部 の混合液を滴下し、途中、2時間目と4時間目に時点でアゾビスイソブチロニトリルをそれぞれ 0.5モル% (対仕込み酢酸ビニル)追加した。 重合開始から9時間目の、酢酸ビニルの重合率が93.9%となった時点で、m−ジニトロベンゼンを添加して重合を終了し、続いて、メタノール蒸気を吹き込む方法により未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し共重合体のメタノール溶液とした。
【0075】
ついで、上記メタノール溶液をさらにメタノールで希釈し、濃度30%に調整してニーダーに仕込み、溶液温度を35℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの2%メタノール溶液を共重合体中の酢酸ビニル構造単位および3,4−ジアセトキシ−1−ブテン構造単位の合計量1モルに対してNa量として3.4ミリモルとなる割合で加えてケン化を行った。ケン化が進行するとともにケン化物が析出し、粒子状となった時点で濾別し、メタノールでよく洗浄して熱風乾燥機中で乾燥し、目的とするPVA系樹脂(A2)を作製した。
【0076】
得られたPVA系樹脂(A2)のケン化度は、残存酢酸ビニルおよび3,4−ジアセトキシ−1−ブテンの加水分解に要するアルカリ消費量にて分析したところ、79.7モル%であった。また、平均重合度は、JIS K 6726に準じて分析を行ったところ、450であった。また、一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位の含有量は、H−NMR(300MHzプロトンNMR、d6−DMSO溶液、内部標準物質;テトラメチルシラン、50℃)にて測定した積分値より算出したところ、6モル%であった。(表1)
【0077】
実施例1
<リン拡散用塗布液の作製>
エチレングリコール(C)85部に、ケン化度78.0モル%、平均重合度1400である未変性PVA系樹脂(A1)10部を加え、加熱撹拌しながら溶解した。そこに、不純物(B)として、五酸化二リン(B2)3部を配合し、界面活性剤(D)として、一般式(6)において、R15、R18が2−メチルプロピル基、R16、R17がメチル基、s+t≒1.3である2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのエチレンオキサイド付加物(日信化学工業社製「サーフィノール420」(D1)2部を配合して、リン拡散用塗布液を作製した。
【0078】
<半導体基板への塗布、印刷性評価>
上記作製のリン拡散用塗布液を用い、P型半導体基板(多結晶シリコン、156mm角、200μm厚)に、下記の印刷条件にてスクリーン印刷を行い、スクレッパーで塗布液を供給した状態で一定時間(30、60分)放置した後、再度印刷を行った。
得られた印刷面の状態を目視観察し、下記の評価条件にて印刷性を評価した。結果を表3に示す。
(印刷条件)
印刷機 :ニューロング精密工業社製「LS−34GX」
スキージー :ニューロング精密工業社製NMスキージー(硬度:60)
スキージー角 :80度
スクレッパー :ニューロング精密工業社製NMスキージー(硬度:60)
スクレッパー角:86度
印圧 :0.2MPa
スクリーン版 :東京プロセスサービス社製
版サイズ :450mm角
メッシュ種 :V330
乳剤種 :TN−1
乳剤厚 :10μm
パターン :L/S=80〜220μm、20μm毎/L×3
30mm角のベタパターンが2箇所
印刷環境 :23℃、60%RH
(評価条件)
○:全パターンが印刷されていた。
△:印刷された全パターンの一部にかすれが認められた。
×:パターンに一部、明らかな欠けが認められた。
【0079】
<半導体の作製、表面抵抗測定>
上記作製のリン拡散用塗布液を用い、上記と同様の印刷条件にて、150mm角のベタパターンでスクリーン印刷された半導体基板を、熱風循環乾燥機中150℃で2分間乾燥した。その後、温度:850℃、ガス種:窒素+酸素(4%)、ガス流量:50L/分のチューブ炉に半導体基板が直立する状態で投入、15分間ホールド後、取り出し、46%フッ化水素水溶液中で揺動させながら洗浄した。このようにして、半導体基板中にリンの拡散層を有する半導体を得た。
得られた半導体の拡散時の上部(焼成時のように半導体を直立状態にした際の、拡散層の上から30mmの部分)、および下部(焼成時のように半導体を直立状態にした際の、拡散層の下から30mmの部分)の表面抵抗値を、抵抗測定器(三菱アナリテック社製「ロレスター」、PSPプローブ使用)を用いて測定した。結果を表3に示す。
【0080】
実施例2
実施例1において、不純物(B)として一般式(5)においてR12がメチル基、R13が水素、R14が水素、nが1、mが1、lが2であるアシッドホスホキシメタアクリレート(ユニケミカル社製「ホスマーM」)(B1)7部を、多価アルコール(C)としてエチレングリコールとグリセリンの混合物を使用し、界面活性剤(D)としてアミノアルコキシシランを主成分とする化合物(東レ・ダウコーニング社製「SH−21」(D2)を用い、各成分の配合量を表2に示すとおりとした。それ以外は実施例1と同様にしてリン拡散用塗布液を作製し、同様に評価した。評価結果を表3に示す
【0081】
実施例3
実施例1において、多価アルコール(C)としてエチレングリコールとグリセリンの混合物を使用し、さらに無機微粒子(E)として水80wt%に20wt%のコロイダルシリカが分散されているコロイダルシリカ溶液(フジミコーポレーション社製「PLANERLITE 4101」)10部を配合し、各成分の配合量を表2に示すとおりとした。それ以外は実施例1と同様にしてリン拡散用塗布液を作製し、同様に評価した。評価結果を表3に示す
【0082】
実施例4
実施例2において、PVA系樹脂(A)として製造例2で得られたPVA系樹脂(A2)を用い、多価アルコール(C)としてエチレングリコールとグリセリンの混合物を使用し、界面活性剤(D)を配合せず、各成分の配合量を表2に示すとおりとした。それ以外は実施例1と同様にしてリン拡散用塗布液を作製し、同様に評価した。評価結果を表3に示す
【0083】
実施例5
実施例4において、界面活性剤(D)として有機変性ポリシロキサンと特殊ポリマーの混合物を含有する水系エマルジョン(共栄社化学社製「アクアレンSB−630」(D3)を用い、各成分の配合量を表2に示すとおりとした。それ以外は実施例4と同様にしてリン拡散用塗布液を作製し、同様に評価した。評価結果を表3に示す。
【0084】
実施例6
実施例1において、不純物(B)としてホウ酸(B3)2部を用い、エチレングリコール(C)を86部とした。それ以外は実施例1と同様にしてホウ素拡散用塗布液を作製した。
得られた塗布液を用い、半導体基板としてN型半導体基板を用いた以外は実施例1と同様に半導体基板にスクリーン印刷を行い、印刷性評価を行った。また、上記塗布液を用い、以下の基準に従い、半導体の作製、表面抵抗測定を行った。結果を表3に示す。
【0085】
<半導体の作製>
得られたホウ素拡散用塗布液を用い、上記と同様の印刷条件にて、150mm角のベタパターンでスクリーン印刷された半導体基板を、熱風循環乾燥機中150℃で2分間乾燥した。その後、温度:950℃、ガス種:窒素、ガス流量:50L/分のチューブ炉に半導体基板が直立する状態で投入、15分間ホールド後、窒素を止め、酸素を同流量で15分流した。ついで、基板を取り出し、46%フッ化水素水溶液中で揺動させながら洗浄し、半導体基板中にホウ素の拡散層を有する半導体を得て、その拡散層の上部および下部の表面抵抗値を、実施例1と同様に測定した。結果を表3に示す。
【0086】
実施例7
実施例2において、不純物(B)としてホウ酸トリエチル(B4)7部を用いた以外は実施例2と同様にしてホウ素拡散用塗布液を作製し、実施例6と同様にして評価した。評価結果を表3に示す。
【0087】
比較例1
実施例1において、溶剤としてエチレングリコールとともに水を用い、各成分の配合量を表2に示すとおりとした以外は実施例1と同様にしてリン拡散用塗布液を作製し、同様に評価した。評価結果を表3に示す。
【0088】
比較例2
実施例1において、PVA系樹脂(A)に代えて平均重合度450のポリ酢酸ビニルを用い、不純物(B)としてリン酸エステル(B1)を用い、溶剤としてイソブチル酸−3−ヒドロキシ−2,2,4−トリメチルペンチルエステル(TPM)を用い、界面活性剤(D)を配合せず、無機微粒子(E)としてコロイダルシリカ(フジミコーポレーション社製「PLANERLITE 4101」)を配合し、各成分の配合量を表2に示すとおりとした。それ以外は実施例1と同様にしてリン拡散用塗布液を作製し、同様に評価した。評価結果を表3に示す。
【0089】
〔表1〕

【0090】
〔表2〕

【0091】
〔表3〕

【0092】
本発明のリン拡散用塗布液はスクリーン印刷において、一定時間放置した後でも優れた印刷性が得られた。また、本発明の塗布液から得られた半導体は、上下の表面抵抗値の差が小さいものであった。
一方、水を主体とする溶剤を用いた比較例1の塗布液は、30分放置した後の印刷性が劣るものであり、バインダーとしてポリ酢酸ビニルを用いた比較例2の塗布液は、得られた半導体の上下の表面抵抗値の差が大きいものであった。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の不純物拡散用塗布液は、長時間の連続印刷や休止期間をおいた印刷が可能であり、皮膜形成後の半導体基板を直立状態で焼成したとしても抵抗値の上下バラツキが小さい半導体が得られることから、工業的に極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコール系樹脂(A)、不純物(B)、および沸点が100℃以上の多価アルコール(C)を含有し、該多価アルコール(C)の含有量が塗布液中の70重量%以上であることを特徴とする不純物拡散用塗布液。
【請求項2】
ポリビニルアルコール系樹脂(A)が、ケン化度が50〜90モル%のポリビニルアルコール系樹脂(A)である請求項1記載の不純物拡散用塗布液。
【請求項3】
ポリビニルアルコール系樹脂(A)が、下記一般式(1)で表わされる構造単位を5〜10モル%含有するポリビニルアルコール系樹脂である請求項1または2記載の不純物拡散用塗布液。
【化1】

〔式中、R、R 及びR はそれぞれ独立して水素原子または有機基を示し、Xは単結合または結合鎖を示し、R、R 及びR はそれぞれ独立して水素原子または有機基を示す。〕
【請求項4】
不純物(B)が、13族元素化合物および15族元素化合物の少なくとも一つである請求項1〜3いずれか記載の不純物拡散用塗布液。
【請求項5】
界面活性剤(D)を含有する請求項1〜4いずれか記載の不純物拡散用塗布液。
【請求項6】
無機微粒子(E)を含有する請求項1〜5いずれか記載の不純物拡散用塗布液。