説明

不織布クリーナー

【課題】ホワイトボード等における筆跡の消去性、消カスの保持性、筆跡消去性能の耐久性に優れ、安価に製造することが出来るクリーナー、家庭の床等のクリーナーまたは台所・浴室等で使用される不織布クリーナーを提供する。
【解決手段】非弾性捲縮短繊維と、該非弾性捲縮短繊維を構成するポリマーよりも40℃以上低い融点を有するポリマーが熱融着成分としてその表面に配された熱接着性複合短繊維とが混綿された不織布を、繊維構造体の厚さ方向に所望厚さでスライスし、該スライスされた不織布を積層した後、再度熱接着した不織布クリーナー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布クリーナーに関し、さらに詳細にはホワイトボード等における筆跡の消去性、消カスの保持性、筆跡消去性能の耐久性に優れ、しかも安価に製造することが出来るうえ、さらには家庭の床等のクリーナー及び台所・浴室等でも使用される不織布クリーナーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、授業や会議等でチョークを用いて黒板に文字、図形等を書く従来の方法に代わり、マーカーペン等により筆記する方式のホワイトボード(白色黒板)や電子白板等が多用されつつある。これに伴って、クリーナーについても種々検討がなされてきており、クリーナー液を充填して拭き取り部材に染み出るようにしたタイプ等が提案されている。また、その性能を向上すべく、クリーナーや拭き取り部が起毛された太さの異なる繊維からなるホワイトボード用クリーナー(特許文献1参照)等が提案されている。さらに、消去性改良のため、厚み方向に繊維を配向させた不織布が提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】実開平05−093896号公報
【特許文献2】特開平10−131018号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来技術において、クリーナー液を充填したものは、ボード表面が湿潤するため拭き取り直後に再度文字を書くと、滲むといった現象が起こったり、拭き取りを繰り返すにつれて、拭き取り部表面に保持されている消カスがボードに再付着する。これらの原因により消去性能や耐久性が悪くなる。また、クリーナーが複雑な構造となるために価格が高くなるという問題がある。
【0004】
また、拭き取り部材として、起毛された太さの異なる繊維を用いたクリーナーは、ホワイトボードとクリーナーとの密着性が低いために全ての筆跡を消し取るには拭き取り回数が多くなる。そして、繊維間の空隙が多すぎるために消しカスが離れやすく、時にはクリーナー使用者の手につく場合がある。さらに、使用するにつれて使用部にヘタリが生じ擦過力が低下するという問題もある。
【0005】
さらに、厚み方向に積層された繊維構造体を使用したタイプは、繊維ウエブを折り畳むため、表面のウエブ間での消しカスの除去は優れるが、ウエブ単体をみると、その表面における繊維配向は厚み方向に平行となっているため、消しカスの除去及び保持性の効果は十分でなかった。上述のように、従来提案されたクリーナーでは筆跡の消去性が悪いので、消しカスがボード上に残存したり、筆跡消去性能の耐久性が悪いといった問題点があった。
【0006】
また、床等に使用される不織布タイプのクリーナーは、繊維が厚み方向に平行に並んだ不織布をスパンレース加工(水流絡合処理)、ニードルパンチ(針による絡合処理)したものに、液剤をしみ込ませて使用しているもの等があるが、コスト面ではメリットがあるものの、不織布の繊維が床に対して、並行に配列しているため、繊維にごみが絡むことで拭き取り性を向上させているものの細かなごみの掻き取り性が劣り、また、床等に凸部がある場合は、不織布が凸面で変形するため、凸部近傍の汚れが除去しにくい等の問題があった。
【0007】
本発明の目的は、上記従来技術が有していた問題点を解決し、筆跡の消去性、消カスの保持性、筆跡消去性能の耐久性に優れたクリーナー、さらには、ごみ除去性に優れる家庭の床等のクリーナー及び台所・浴室等で使用され、安価に製造することができる不織布クリーナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、非弾性捲縮短繊維と、該非弾性捲縮短繊維を構成するポリマーよりも40℃以上低い融点を有するポリマーが熱融着成分としてその表面に配された熱接着性複合短繊維とが混綿され、該熱接着性複合短繊維同士が交差した状態で熱融着された固着点、及び該熱接着性複合短繊維と該非弾性捲縮短繊維とが交差した状態で熱融着された固着点とが散在してなる繊維構造体であって、該繊維構造体の平均密度が0.005〜0.20g/cmの範囲にあり、且つ該繊維構造体の厚さ方向に対して平行に配列されている繊維の総本数を(B)とし、繊維構造体の厚さ方向に対して垂直に配列されている繊維の総本数を(A)とするとき、B/Aが1.5以上である繊維構造体を厚み方向に裁断された密度が0.005〜0.20g/cm3、厚みが2mm〜100mmである不織布において、該不織布を、繊維構造体の厚さ方向に所望厚さでスライスし、該スライスされた不織布を積層した後、再度熱接着したことを特徴としている。
【0009】
また、前記積層が、渦巻形または折返形であり、その横断面が円形、楕円形、三角形、方形または多角形であることを特徴としている。また、前記不織布クリーナーが、スライスされた厚さおよび/または密度またはポアーサイズが異なるものを積層したものであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の不織布クリーナーは、前記のように構成されているので、筆跡の消去性、消カスの保持性、筆跡消去性能の耐久性に優れ、安価に製造することができるうえ、家庭の床等のクリーナー及び台所・浴室等で使用される不織布クリーナーとしても有用である。また、前記不織布クリーナーが、図2に示すように厚み方向に折り畳んだ縦配列の繊維構造体を所望厚さにスライスし、該スライス片を積層した後、再度熱接着している。これにより、各スライス片の表面(両側表面)部に露出した繊維の端部同士が絡まり合った状態、すなわち、面ファスナーのフック部とループ部が係合するような形で熱接着されるので、各スライス片の積層面の剥離強度が向上している。したがって、使用時のクリーナー面の剥がれ防止や不織布クリーナーと土台との接合性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施形態について詳細に説明する。図1は本発明における繊維構造体のB/Aの測定方法を説明するための模式図、図2は本発明における繊維構造体の切断線を示す断面図、図3は本発明の不織布クリーナーの一例を示す模式図である。また、図4は本発明における繊維構造体をスライスした後に積層する方法を説明するための模式図であり、(a)は円形渦巻状、(b)は方形渦巻状、(c)は折返状である。図5は本発明における円形渦巻状の繊維構造体を、横断面に対して垂直方向に切断する切断線を示す断面図、図6は、図5に示すように切断して得られた不織布クリーナーの斜視図、図7は、図6の不織布クリーナーに土台を取り付けた状態を示す斜視図である。
【0012】
<非弾性捲縮短繊維>
本発明の不織布クリーナーを構成する繊維構造体に用いられる非弾性捲縮短繊維としては、綿、毛等の天然繊維、レーヨン等の再生繊維、アセテート等の半合成繊維、ナイロン、ポリエステル、アクリル繊維、ポリ乳酸繊維、アラミド繊維等の合成繊維、カーボン繊維等の無機繊維等が使用できるが、工程性及びコストの点よりポリエステル系繊維が好ましい。特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリ−1,4−ジメチルシクロヘキサンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、またはこれらの共重合体からなる短繊維ないしそれら短繊維の混綿体、または上記ポリマー成分のうちの2種類以上からなる複合短繊維等を挙げることができる。これらの短繊維のうち、繊維形成性等の観点から、ポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートからなる短繊維が特に好ましい。
【0013】
この場合の、捲縮付与方法としては、(1)熱収縮率の異なるポリマーをサイド・バイ・サイド型に貼り合わせた複合繊維を用いてスパイラル状捲縮を付与、(2)異方冷却によりスパイラル状捲縮を付与、(3)押し込み捲縮法によるジグザグ状捲縮を付与など、種々の方法を用いればよいが、嵩高性、製造コスト等の面から異方冷却によりスパイラル状捲縮を付与するのが最適である。
【0014】
さらに、非弾性捲縮短繊維としては、真円、異形断面のいずれであってもよいが、異形断面であることが好ましく、そのとき異形度は1.1〜4.0の範囲にあることが好ましい。なお、本発明において異形度とは、非弾性捲縮短繊維を構成するポリマーと同一のポリマーからなり、且つ、単繊維繊度が同一である丸断面形状の繊維を想定し、該繊維の横断面外周を基準としたとき、該捲縮短繊維の横断面の外周長との比率のこという。上記異形度が1.1以上であると、消去するときのボード面との摩擦が適度なものとなり、特に筆記後放置していたものについては、特に良好な消去性能を発揮することができる。一方、異形度が4.0以下であると、非弾性捲縮短繊維自体の構造が強く、使用に伴う繊維横断面の経時変化が起こりにくいので、消去性能の耐久性に優れている。上記非捲縮短繊維の断面形状は、円形、偏平、異形または中空のいずれであってもよいが上記の異形度の範囲内に含まれていることが好ましい。
【0015】
一方、非弾性捲縮短繊維の単繊維繊度は、1〜200dtexの範囲にあることが好ましい。この範囲では、細deの領域で、特に得られるクッション構造体(繊維構造体をアコーディオン状に折りたたんで、加熱処理して得られるもの)の内部構造が適度な密度となり、消しカスが表面に堆積しにくく、該クッション構造体の内部へと移動し易いので良好な耐久性が発揮されるとともに、太deの領域では、特に、ボード表面と拭き取り部材との接触面積が適度なものとなり消し去るための拭き取り回数が少なくて済み、さらに、拭き取り部材全体が適度な硬さを有するものとなり、クリーナーとしての要求特性が同時に満足される。上記単繊維繊度は、さらに好ましくは2〜100dtexである。なお、吸水性等の要求がある場合は、ポリエステル系繊維にレーヨン繊維等の他の繊維を混綿して使用することも差し支えない。
【0016】
また、上記非弾性捲縮短繊維の繊維長としては、30〜100mmの範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは50〜80mmである。上記繊維長が30mmよりも小さいと充分な剛性が得られないおそれがある。逆に、上記繊維長が100mmよりも大きいと工程安定性が損なわれるおそれがある。
【0017】
<熱接着性複合短繊維>
本発明の不織布クリーナーを構成する繊維構造体に用いられる熱接着性複合短繊維の複合形態としては、サイド・バイ・サイド型、芯鞘型のいずれであってもよいが、好ましいのは後者である。この芯鞘型においては、ポリエステル系タイプ、ポリオレフィン系タイプ、ナイロン系タイプなどがあるが、好ましくは、非弾性ポリエステルが芯部となるものが工程性、コストの面より好ましく、該芯部は同心円状あるいは偏心状であっても良い。特に、偏心状のものにあっては、スパイラル捲縮が発現するので、より好ましい。
【0018】
熱接着性複合短繊維の熱融着成分は、上記の非弾性捲縮短繊維を構成するポリマー成分より、40℃以上低い融点を有することが必要である。この温度が40℃未満では接着が不充分となる上、腰のない取り扱いにくい繊維構造体となり、本発明の目的が達せられない。この温度は、好ましくは、100〜200℃の範囲内である。
【0019】
ここで、熱融着成分として配されるポリマーとしては、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、非弾性ポリエステル系ポリマー及びその共重合物、ポリオレフィン系ポリマー及びその共重合物、ポリビニルアルコール系ポリマー等を挙げることができる。
【0020】
特に、接着性や温度特性、強度の面からすればポリブチレン系テレフタレートをハード成分とし、ポリオキシブチレングリコールをソフトセグメントとするブロック共重合ポリエーテルエステルが好ましい。この場合、ハードセグメントを構成するポリエステル部分は、主たる酸成分がテレフタル酸、主たるジオール成分がブチレングリコール成分であるポリブチレンテレフタレートである。むろん、この酸成分の一部(通常、30モル%以下)は他のジカルボン酸成分やオキシカルボン酸成分で置換されていても良く、同様にグリコール成分の一部(通常、30モル%以下)はブチレングリコール成分以外のジオキシ成分で置換されていても良い。また、ソフトセグメントを構成するポリエーテル部分はブチレングリコール以外のジオキシ成分で置換されたポリエーテルであってよい。
【0021】
共重合ポリエステル系ポリマーとしては、アジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸類および/またはヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの脂環式ジカルボン酸類と、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、パラキシレングリコールなどの脂肪族や脂環式ジオール類とを所定数含有し、所望に応じてパラヒドロキシ安息香酸などのオキシ酸類を添加した共重合エステル等を挙げることができ、例えばテレフタル酸とエチレングリコールとにおいてイソフタル酸および1,6−ヘキサンジオールを添加共重合させたポリエステルが好ましい。
【0022】
上記の熱融着成分の中でも、共重合ポリエステル系ポリマーなどの共重合ポリエステルや熱可塑性ポリエステル系エラストマーなどの熱可塑性エラストマーが好ましい。
【0023】
なお、上述のポリマー中には、各種安定剤、紫外線吸収剤、増粘分岐剤、艶消し剤、着色剤、その他各種の改良剤等も必要に応じて配合されていても良い。
【0024】
熱接着性複合短繊維において、熱融着成分の相手側成分としては、上記のような非弾性のポリエステルが好まして例示される。その際、熱融着成分が、少なくとも1/2の表面積を占めるものが好ましい。重量割合は、熱融着成分と非弾性ポリエステルが、複合比率で30/70〜70/30の範囲にあるのが適当である。
【0025】
かかる熱接着性複合短繊維において、単繊維繊度としては1〜200dtexの範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは1.5〜60dtexである。また、熱接着性複合短繊維は、繊維長が3〜100mm(より好ましくは30〜100mm)に裁断されていることが好ましい。
【0026】
<繊維構造体および不織布クリーナー>
本発明においては、上記非弾性捲縮短繊維と、上記の熱接着性複合短繊維を混綿させ、加熱処理することにより、該熱接着性複合短繊維同士が交差した状態で熱融着された固着点及び該熱接着性複合短繊維と該非弾性捲縮短繊維とが交差した状態で熱融着された固着点とが散在してなる繊維構造体が形成される。
【0027】
この際、非弾性捲縮短繊維と熱接着複合短繊維との重量比率は、好ましくは90/10〜0/100、さらに好ましくは、80/20〜10/90である。熱接着複合短繊維の比率がこの範囲より少ない場合は、固着点が極端に少なくなり、繊維構造体の腰がなく、成型性が不良となる。一方、熱接着複合短繊維の比率がこの範囲より多い場合は、接着点が多くなり過ぎ、熱処理工程での取扱い性、成型性などが低下する。
【0028】
さらに、本発明においては、上記繊維構造体の該繊維構造体の厚さ方向に対して平行に配列されている繊維の総本数を(B)とし、繊維構造体の厚さ方向に対して垂直に配列されている繊維の総本数を(A)とするとき、B/Aが1.5以上であることが肝要である。さらに、少なくとも片面が厚み方向に裁断されることが必要である。上述のようなクッション構造体を拭き取り部材として用いた不織布クリーナーは、該構造体内部が空隙を形成し、適度なクッション性を発現するものであり、且つ、拭き取り面が厚み方向に裁断されているため、拭き取り面全体が均一にボード表面に密着することが可能となり、また、厚み方向に繊維が配向している面が全て表面に露出するため、筆跡等を均一に容易に消去することができる。また、上記構造体内部の空隙には、筆跡を消去した後の消しカスが拭き取り部材表面から移動し、且つ該内部に保持されるので、拭き取り部材表面には消しカスが残らず、消去性能の耐久性を発現することができる。
【0029】
また、上記構造体は、その内部に熱固着点が散在した頑丈な構造を有しており、拭き取り部材が汚れた場合には該部材を洗濯することが可能なので、構造体内部に保持されている消しカスを簡単に除去することができ、消去性能の耐久性が高い。
【0030】
ここで、B/Aが1.5未満の場合は、本発明の効果が充分に奏されず、拭き取り性及び汚れの保持性に優れたクリーナー不織布を得ることはできない。さらには、凸部周辺の拭き取り性が劣る。すなわち、繊維が厚み方向に配向していることで、凸部に対応し繊維が厚み方向に押し上げられ凸部周辺も拭きとることができるのである。B/Aは、好ましくは2〜20である。
B/Aを1.5以上の繊維構造体を製造する方法には特に限定はなく、従来公知の方法を任意に採用すれば良いが、例えば非弾性捲縮短繊維と熱接着性複合短繊維とを混綿し、ローラーカードにより均一なウエブとして紡出した後、ウエブをアコーディオン状に折りたたんだ後、好ましくは80〜220℃、さらに好ましくは130〜200℃に加熱処理し、熱融着による固着点を形成させる方法などが好ましく例示される。具体的には、Struto社による方法などがある。
【0031】
かくして得られる繊維構造体の平均密度は、0.005〜0.20g/cm3の範囲にある必要がある。この密度が0.005g/cm3未満では複合繊維構造物が柔らかくなり過ぎて取り扱いが難しくなり、一方、0.20g/cm3を超えると板状となり、拭き取り性及び汚れの保持性が劣る物となる。好ましくは、0.01〜0.10g/cm3である。繊維構造体の平均密度を上記範囲内に調整するには、繊維ウエブ目付と重ね合わせ枚数を調整すればよい。
【0032】
不織布クリーナーは、単体であってもよいが積層した複合形態であっても良い。なお、本機能を低減させない範囲で、拭き取り面とは逆の面に薄手の不織布、フィルムや布帛を貼り合わせたものや、それを多層としたもの、さらには、汚れを落とす対象により、不織布クリーナーの樹脂処理や液体処理を施しても良い。
【0033】
かくして得られる不織布クリーナーは、厚みが2〜100mmの範囲にあることが肝要である。なぜならば、2mm未満であると破断の可能性があり、他方100mmを超えると、使用時の作業性が悪くなる。この意味から、さらに3〜80mmの範囲がより好ましい。なお、Struto設備で作成し、薄手にしたものは、繊維が厚み方向に配向していると同時に、製造ライン方向に折れ曲がりやすいため、床のモップタイプの掃除道具として先端部にロール状に取り付け、使用後巻取り式にしたタイプとしても使用できる。ここで、Struto設備の概要は、例えば、特表2002−516932号公報に示された装置と同様のものが挙げられる。
【0034】
図4は、前記した繊維構造体を図2に示したスライスされる面6でスライスした後に、各スライス片を積層する方法を説明した模式図である。図4(a)において、スライス片の任意の短辺側から他の短辺側に向かって渦巻状(らせん状)に巻回して、横断面(巻回した軸に対して直角方向の面)が略円形渦巻状になるように形成している。なお、円形渦巻は所望の直径とすることが可能であり、大径とする場合には、スライス片の肉厚を厚くするか、複数のスライス片の短辺側を接合させて連続して巻回すればよい。
【0035】
図4(b)において、スライス片の任意の短辺側から他の短辺側に向かって渦巻状(らせん状)に巻回して、横断面が略方形渦巻状になるように形成している。なお、方形渦巻状は所望の長辺/短辺とすることが可能であり、大きい方形とする場合は、前記と同様にスライス片の肉厚を厚くするか、複数のスライス片の短辺側を接合させて連続して方形に巻回すればよい。
【0036】
図4(c)において、スライス片の任意の短辺側から他の短辺側に向かって、所望幅で(アコーディオン状に)折り返しを繰り返すことで、横断面が略方形状になるように形成している。なお、方形状は所望の長辺/短辺とすることが可能であり、大きい方形とする場合は、前記と同様にスライス片の肉厚を厚くするか、複数のスライス片の短辺側を接合させて連続して折り返しすればよい。なお、図4には図示されていないが、横断面が楕円、三角形または多角形の渦巻状とする場合も、前記に準じた方法で作製することが可能である。
【0037】
前記のように円形渦巻状、方形渦巻状または折返状に巻回あるいは積層されたスライス片は、再度熱接着される。これにより、各スライス片の表面(両側表面)部に露出した繊維の端部同士が絡まり合った状態、すなわち、面ファスナーのフック部とループ部が係合するような形で熱接着されるので、各スライス片の積層面の剥離強度を向上させることができる。また、積層された各スライス片は、手等で引き剥がすことが可能であるため、筆跡の消去性能や消カスの保持力が低下したときには、表面に位置する該スライス片を引き剥がすと、新しいスライス片が表出するので、筆跡の消去性能や消カスの保持力を再び発揮させることができる。
【0038】
図5において、円形渦巻状に巻回されたスライス片は、円形渦巻状の軸線と平行に切断線D,E,Fで切断する。これにより、断面が略半円形の不織布クリーナー9を作製することができる。なお、切断線D,E,Fの位置は、使用用途や形状に応じて適宜変更することが可能である。
【0039】
図6において、図5で作製された不織布クリーナー9は、円弧状のスライス片が多層構造に積層された状態で熱接着されている。この円弧状の凸側10を拭き取り面として使用し、筆跡の消去性能や消カスの保持力が低下したときには、前記凸側10の拭き取り面を引き剥がすと、新しい拭き取り面(スライス片)が表出するので、筆跡の消去性能や消カスの保持力を再び発揮させることができる。なお、拭き取り面として使用するスライス片の厚みは、2〜3mmとすることが好ましい。
【0040】
図7において、不織布クリーナー9は手等による把持、またはモップ本体部(図示しない)で把持するための土台11を取り付けることができる。土台11は、不織布クリーナー9と同一の素材を用いることができるが、手等による把持、モップ本体部等での把持に耐える強度をもたせるために、繊維構造体の密度を0.02g/cm3以上とすることが好ましい。密度が0.02g/cm3以下の場合は圧縮強度不足により保持性が不充分となる。また、土台11に発泡スチロール、合成樹脂、ゴムまたは木材等を用いることも可能であり、その形状や構造は、モップ等把持物の形状や構造に合せて適宜変更することができる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれにより何等限定を受けるものではない。なお、実施例中に記載した物性は以下の方法により測定した。
【0042】
(1)B/A
図1において、1は熱接着性複合短繊維または非弾性捲縮短繊維、2は繊維構造体の厚さ方向、3は熱接着性複合短繊維または非弾性捲縮短繊維の配列方向、4は繊維構造体、θは繊維構造体表面に対する繊維の配列方向角度である。繊維構造体4を厚さ方向にスライスされる面6で切断し(図2参照)た。図3の7は切断面(スライスされた面)であり、8はスライスされた後の不織布クリーナーである。前記不織布クリーナー8の断面において、厚さ方向に対して平行に配列されている繊維(図1において0°≦θ≦45°)の総本数を(B)とし、繊維構造体の厚さ方向に対して垂直に配列されている繊維(図1において45°<θ≦90°)の総本数を(A)としてB/Aを算出した。なお、本数の測定は、任意の10ヶ所について各々30本の繊維を透過型光学顕微鏡で観察し、その数を数えた。
【0043】
(2)厚さ、目付、密度
JIS K6400により測定した。
【0044】
(3)消去性試験
ホワイトボードにホワイトボード用黒極太マーカーで5cm×5cmのサイズで全面黒色に塗りつぶし、不織布クリーナーを10cm×5cmに裁断し手で持って消去する動作を繰り返し、消し跡を観察した。
消去性:筆記直後の筆跡に対する消去状態を観察した。
5級:クリーナー1往復で塗りつぶしが完全に消去できる。
4級:クリーナー2往復で塗りつぶしが完全に消去できる。
3級:クリーナー3往復で筆跡が完全に消去できる。
2級:クリーナー5往復で塗りつぶしが完全に消去できる。
1級:クリーナー5往復以上でも筆跡が完全に消去できない。
【0045】
(4)凸部消去性試験
ホワイトボードにホワイトボード用黒極太マーカーで5cm×5cmの全面黒色に塗りつぶした所の中央に気密、防水用テープ(巾20mm×長さ20mm、厚み5.5mm)を貼り凸部とした。不織布クリーナーを10cm×5cmに裁断し手で持って凸部が中央にくるようにして消去する動作を繰り返し、消し跡を観察した。
凸部消去性
5級:クリーナー左右、上下各1往復で凸部端の塗りつぶしが完全に消去できる。
4級:クリーナー左右、上下2往復で凸部端の塗りつぶしが完全に消去できる。
3級:クリーナー左右、上下3往復で凸部端の塗りつぶしが完全に消去できる。
2級:クリーナー左右、上下5往復で凸部端の塗りつぶしが完全に消去できる。
1級:クリーナー左右、上下5往復以上でも凸部端の塗りつぶしが完全に消去できない。
【0046】
[実施例1]
融点が150℃の熱可塑性ポリエーテルエステル系エラストマーを鞘成分に配し、ポリブチレンテレフタレートを芯成分に配した、単繊維繊度6.6dtex、繊維長51mmの芯鞘型熱接着性複合短繊維(芯成分:鞘成分の重量比=60:40、丸断面)と、異方冷却により立体捲縮を付与した単繊維繊度6.6dtex、繊維長51mmのポリエチレンテレフタレート短繊維(非弾性捲縮短繊維、20%中空断面)とを、重量比で30:70となるように混綿し、ローラーカードにより均一なウエブを得た後、熱処理機を用いて、ウエブをアコーディオン状に折りたたみながら200℃で加熱処理し、熱融着による固着点を形成させて、図2に示すような繊維構造体(目付が600g/m2、厚みが20mm、密度が0.030g/cm3)を得た。さらに、バンドナイフによるスライス装置を使用し、図2に示すように厚み方向に半裁して図3に示すような繊維構造体を得て、この繊維構造体のB/Aの値を表1に、また、目付、厚み、拭き取り性の測定結果を表1に示す。
【0047】
[実施例2]
実施例1において、鞘成分に共重合ポリエステルを配し、芯成分にポリエチレンテレフタレート配した、単繊維繊度4.4dtex、繊維長51mmの熱接着性複合短繊維(丸断面)を使用し、ウエブをアコーディオン状に折りたたみながら加熱処理する際の温度を160℃とした以外は、実施例1と同様に実施して、不織布クリーナーを得た。この繊維構造体のB/Aの値を表1に、また、目付、厚み、拭き取り性の測定結果を表1に示す。
【0048】
[実施例3]
実施例2において、芯鞘型熱接着性複合短繊維と三角断面の非弾性捲縮短繊維との混綿比率を、重量比で30:70となるようにした以外は、実施例2と同様に実施して、不織布クリーナーを得た。この繊維構造体のB/Aの値を表1に、また、目付、厚み、拭き取り性の結果を表1に示す。
【0049】
[比較例1]
実施例2と同様の繊維配合において、ローラーカードにより均一なウエブを得た後、該ウエブを熱処理し、さらにスライス装置を使用し不織布クリーナーを得た。この繊維構造体のB/Aの値を表1に、また、目付、厚み、拭き取り性の結果を表1に示す。
本比較例は、ウエブをアコーディオン状に折りたたんでいない例である。
【0050】
[比較例2]
実施例2で使用したスライス後、サンプルを使用し裁断面とは逆の面を使用し測定結果を表1に示す。
【0051】
[試験例1]
実施例1で使用したサンプルを床のモップとして使用したところ、ごみを非常にきれいに拭き取ることができた。
【0052】
[試験例2]
実施例1で使用したサンプルを皿洗いに使用したところ、非常に汚れをきれいに落とすことができた。
【0053】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の不織布クリーナーは、主としてホワイトボード等における筆跡の消去に用いられるほか、家庭の床等のクリーナー及び台所・浴室等でも、清掃用として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明における繊維構造体のB/Aの測定方法を説明するための模式図である。
【図2】本発明における繊維構造体の切断線を示す断面図である。
【図3】本発明の不織布クリーナーの一例を示す模式図である。
【図4】本発明における繊維構造体をスライスした後に積層する方法を説明するための模式図であり、(a)は円形渦巻状、(b)は方形渦巻状、(c)は折返状である。
【図5】本発明における円形渦巻状の繊維構造体を、横断面に対して垂直方向に切断する切断線を示す断面図である。
【図6】図5に示すように切断して得られた不織布クリーナーの斜視図である。
【図7】図6の不織布クリーナーに土台を取り付けた状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0056】
1 熱接着性複合短繊維または非弾性捲縮短繊維
2 繊維構造体の厚さ方向
3 熱接着性複合短繊維または非弾性捲縮短繊維の配列方向
4 繊維構造体
5 ウエブの山
6 スライスされる面
7 切断面(スライスされた面)
8 スライスされた後の不織布クリーナー
9 不織布クリーナー
10 凸側
11 土台
D,E,F 切断線
θ 繊維構造体表面に対する繊維の配列方向角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非弾性捲縮短繊維と、該非弾性捲縮短繊維を構成するポリマーよりも40℃以上低い融点を有するポリマーが熱融着成分としてその表面に配された熱接着性複合短繊維とが混綿され、該熱接着性複合短繊維同士が交差した状態で熱融着された固着点、及び該熱接着性複合短繊維と該非弾性捲縮短繊維とが交差した状態で熱融着された固着点とが散在してなる繊維構造体であって、該繊維構造体の平均密度が0.005〜0.20g/cmの範囲にあり、且つ該繊維構造体の厚さ方向に対して平行に配列されている繊維の総本数を(B)とし、繊維構造体の厚さ方向に対して垂直に配列されている繊維の総本数を(A)とするとき、B/Aが1.5以上である繊維構造体を厚み方向に裁断された密度が0.005〜0.20g/cm3、厚みが2mm〜100mmである不織布において、該不織布を、繊維構造体の厚さ方向に所望厚さでスライスし、該スライスされた不織布を積層した後、再度熱接着したことを特徴とする不織布クリーナー。
【請求項2】
前記非弾性捲縮短繊維の単繊維繊度が1〜200dtexの範囲にある、請求項1記載の不織布クリーナー。
【請求項3】
前記熱接着性複合短繊維を構成する熱融着成分が、共重合ポリエステルまたは熱可塑性エラストマーである請求項1または2記載の不織布クリーナー。
【請求項4】
前記非弾性捲縮短繊維が異形断面を有する、請求項1〜3いずれかに記載の不織布クリーナー。
【請求項5】
前記積層が、渦巻形または折返形であり、その横断面が円形、楕円形、三角形、方形または多角形であることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の不織布クリーナー。
【請求項6】
前記不織布クリーナーが、スライスされた厚さおよび/または密度またはポアーサイズが異なるものを積層したものであることを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の不織布クリーナー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−131892(P2010−131892A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−310764(P2008−310764)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(000229863)アンビック株式会社 (35)
【Fターム(参考)】