説明

不織布シート及びその製造方法並びに不織布シートを用いた清掃用具

【課題】嵩高く、埃を取る能力の優れた不織布シート及びその製造方法並びにこの不織布シートを用いた清掃用具の提供を目的とする。
【解決手段】不織布シート1は、シート1を構成する不織布構造12の一部が破壊されることにより繊維14が毛羽立ってなる毛羽立部11が形成されている。また、毛羽立部11が、シート1を構成する繊維14の起毛処理により形成されている。そして、毛羽立部11が、所定方向へのシートの引張り処理により形成されている。更に、清掃用具は、前記した各構成の不織布シート1を用いたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布シート及びその製造方法並びに不織布シートを用いた清掃用具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、清掃用シート等に不織布などを利用した使い捨て拭き取りシートが使用され、清掃用シートは手で保持して、若しくは図4に示すようないわゆる清掃用モップ10に取り付けられる形態で広く使用されている。これに関連し、特許文献1には、積層構造の拭き取りシートについての開示がある。
【0003】
【特許文献1】特開平10−262883号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示された拭き取りシートは表面にエンボス加工が形成されているものの全体として平坦な面であるため、乾拭きしたときに小さく細かいゴミを絡め取る能力が十分ではない。
【0005】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであって、嵩高く、埃を取る能力の優れた不織布シート及びその製造方法並びにこの不織布シートを用いた清掃用具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る不織布シートは、シートを構成する不織布構造の一部が破壊されることにより繊維が毛羽立ってなる毛羽立部が形成されている構成にしてある。
【0007】
また、前記構成において、毛羽立部が、シートを構成する繊維の起毛処理により形成される構成にしてある。
【0008】
そして、前記構成において、毛羽立部が、所定方向へのシートの引張り処理により形成される構成にしてある。
【0009】
更に、本発明に係る清掃用具は、前記した各構成の不織布シートを用いたものである。
【0010】
更に、本発明に係る不織布シートの製造方法は、前記不織布シートを得るにあたり、回転する第1搬送ローラ対によりシートを挟持搬送し、第1搬送ローラ対ローラからのシートをシート搬送方向下流側の第2搬送ローラ対によって第1搬送ローラ対よりも高い引張り負荷で挟持搬送することによりシートの表面に毛羽立部を形成するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る不織布シートによれば、シートを構成する不織布構造の一部が破壊されることにより繊維が毛羽立ってなる毛羽立部が形成されているので、本シートを用いて拭き取り清掃作業を行う際には、嵩高い毛羽立部が確実に埃を捕らえて離すことがなく、捕集能力が向上する。また、前記毛羽立部の形成されていない不織布シートに比較して被清掃面の形状に左右されにくいので、凹凸のある面にも使用でき、広範囲の清掃作業が可能となる。
【0012】
また、毛羽立部がシートを構成する繊維の起毛処理により形成される場合には、きめの細かい毛羽立部が形成可能であるので、比較的大きな髪の毛、綿埃、パン屑だけでなく非常に細かい埃まで捕集でき、様々な種類の塵、埃の清掃ができる。
【0013】
更に、所定方向へのシートの引張り処理によりシート表面に毛羽立部が形成される場合には、引張負荷に降伏して不織布構造の一部が破壊され、余りの部分は切断されることなく元の形状に復元し、その結果、破壊された部分が復元部分の中に混在しているため、針布を使用した起毛処理により毛羽立部を形成する場合に比較して不織布強度が低下しにくく、丈夫な不織布シートを得ることが可能となる。
【0014】
更に、前記引張処理によりシート表面に毛羽立部が形成されている不織布シートは、2対の搬送ローラ対の引張負荷差によって毛羽立部を形成するという方法により製造されるので、簡便な工程で製造でき、製造コストを低く抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の最良の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は不織布シートの部分断面拡大図であり、図1(A)は毛羽立部形成前の原材料である不織布シート1Rを示し、図1(B)は毛羽立部11形成後の不織布シート1を示す。図1(B)に示すように、不織布シート1は、不織布構造12の一部が破壊されシート両面に毛羽立部11が形成されており、図1(A)に示した毛羽立部形成前の不織布シート1Rと比較して嵩高くなり、厚みが増している。
【0016】
尚、図2に示すように、原材料の不織布シート1R及び毛羽立部11形成後の不織布シート1は共にポリエチレンやポリプロピレンといったポリオレフィン製の基布15の上下両面に不織布の表布16が接合された構成を有する。基布15はフィルムシートであってもよく不織布であってもよい。また、基布15と表布16の接合方法は熱処理や接着剤を利用した接合等が挙げられる。
【0017】
不織布シート1の毛羽立部11は原材料シート1Rを構成する表布16の繊維14の起毛処理により形成されており、起毛高さhが0.01mm以上2.00mm以下であることが好ましい。ここで、起毛高さhとは起毛処理によってシートの片面の厚みが増した部分の高さである。起毛長さhが0.01mm以下であれば、埃の捕集能力がほとんど向上されず、2.00mm以上であれば不織布自体の強度が低下し、清掃中等に不織布シートが破損しやすくなる。
【0018】
本形態の不織布シート1の表布16の不織布構造12を構成する繊維としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン、アクリル、レーヨン、セルロース等の繊維を使用することができる。また、不織布構造12としては、例えば、スパンレース不織布構造、スパンボンド不織布構造、メルトブローン不織布構造、ニードルパンチ不織布構造、ステッチボンド不織布構造、乾式不織布構造、湿式不織布構造等が適用される。
【0019】
不織布シート1の起毛処理は、織物などを起毛処理する際に一般に利用される方法により行われる。このような処理工程図の一例を図3に示す。図3(A)に示すように、不織布シート1Rは第1搬送ローラ対2と第2搬送ローラ対3との間に設けられたドラム6上を搬送方向Dの向きに搬送され、ドラム6に交互に取り付けられたカウンターパイルローラ(CPR)4及びパイルローラ(PR)5の針布により起毛される。
【0020】
図3(B)は、カウンターパイルローラ4及びパイルローラ5の部分拡大図を示す。カウンターパイルローラ4及びパイルローラ5は表面に多数の爪状の針布を有し、ともにシート1Rの搬送方向Dと正方向又は逆方向に回転する。カウンターパイルローラ4の針の先端部は搬送方向Dと逆の方向に曲折し、また、パイルローラ5の針の先端部は搬送方向Dと同じ方向に曲折している。これらのローラ4,5が不織布シート1Rの表面上を転がる際に爪状の針布にシート1R中の繊維14が絡みつき、絡んだ繊維14が切断され、或いは繊維14の交絡が解されることにより、不織布構造12が破壊されて不織布シート1Rの表面に起毛処理が施される。
【0021】
このとき、不織布シート1Rの搬送速度と、カウンターパイルローラ4の回転速度と、パイルローラ5の回転速度とを調節することで、起毛の状態を適宜変更することが可能である。シート1Rとローラ4,5の公転速度或いは自転速度の差を大きくするとシート1Rに対するローラ4,5の抵抗が大きくなり、多くの繊維が起毛されることなる。また、針布の針の形状や数によっても起毛の状態を調節することができる。
【0022】
本形態により得られた不織布シート1は、原料の不織布シート1Rを構成する不織布構造12の一部を起毛処理により破壊して製造され、この破壊した部分が嵩高く盛り上がって毛羽立部11となっているので、本シート1を用いて拭き取り清掃作業を行う際には、嵩高い毛羽立部11の繊維14間で確実に埃を捕らえて離すことがなく、捕集能力が向上する。また、前記毛羽立部11の形成されていない不織布シート1Rに比較して毛羽立部11が嵩高くなっているために清掃作業において被清掃面の形状に左右されにくくなり、凹凸のある面にも使用でき、広範囲の清掃作業が可能となる。
【0023】
また、起毛処理により形成された毛羽立部11は毛羽立ちのきめが細かいので、比較的大きな髪の毛、綿埃、パン屑だけでなく非常に細かい埃まで捕集でき、様々な種類の塵、埃を清掃可能である。更に、不織布シート1Rが、ポリオレフィン製の基布15の上下両面に不織布の表布16が接合された構成を有し、ポリオレフィン製のフィルムや不織布は丈夫な上、軽く、また薄く加工することも可能である。よって、毛羽立部11形成時に表布16の不織布構造12の一部を破壊しても、基布15自体は破壊されることがなく強度が低下せず、表布16の不織布構造12が破壊されたことによりシート1自体の強度が低下して破れシートの搬送ができなくなり製造不可能になるといったことがない。また、出来上がった不織布シート1はポリオレフィン製の基布15のないものに比較して軽く薄くなり、全体として非常に丈夫であり、拭取り等の清掃作業効率を向上させることができる。
【0024】
次に本形態の不織布シート1を用いた清掃用具について述べる。
不織布シート1は、手で掴んで拭き掃除等に使用されるほか、図4に示すように清掃用モップ10の基板13に取り付けられて清掃用具7として使用される。本形態の不織布シート1,1Aは表面に毛羽立部11,11Aが形成されているため、表面繊維に三次元的な空間が生まれ、この空間に埃や塵が入り込むので、清掃時の拭取効果が高くなる。
【0025】
尚、上記形態では不織布シート1の上面及び下面の両面に毛羽立部11が形成されていたが、いずれか一方の面のみであってもよい。また、同じ面に毛羽立部11を形成した部分と形成していない部分とを混在させてもよい。また、起毛処理を施す際、カウンターパイルローラ4及びパイルローラ5の二種類のローラを用いて起毛させたが、ローラを一種類としてもよく、また、針布が回転式ではなく固定されておりこの針上を不織布シート1Rが搬送されるといった他の方法により起毛処理を施してもよい。
【0026】
また、毛羽立部11が原材料不織布シート1Rを構成する繊維14の起毛処理により形成させるのではなく、所定方向(図6において矢印E)へのシートの引張り処理により形成されるものであってもよい。図5は、かかる引張処理により毛羽立部11Aが形成された不織布シート1Aの概観図を、図6はかかる処理工程の一例を示す。
【0027】
図6において、原材料の不織布シート1Rが搬送方向D上流側の第1搬送ローラ対2a及び下流側の第2搬送ローラ対3aにより挟持搬送されている。第1搬送ローラ対2aの駆動ローラ8は第2搬送ローラ対3aの駆動ローラ9よりローラの直径が小さくなっている。両駆動ローラ8,9は互いの回転速度が調整され、第1搬送ローラ2aよりも第2搬送ローラ対3aの方が回転トルクが高くなっている。これにより、シート1Rは両搬送ローラ対2a,3a間において矢印Eの方向に常に所定量の引張負荷がかかった状態となり、不織布構造12の一部が引張負荷に降伏して破壊され、余りの部分は切断されることなく元の形状に復元しようとする。この結果として、得られた不織布シート1Aの表面には毛羽立部11Aを形成した部分と毛羽立部11Aを形成していない部分とが混在する。
【0028】
このように、毛羽立部11Aが方向Eへのシート1Rの引張り処理により形成されるため、上記形態のように複数の針布により不織布構造12を破壊して毛羽立部11を形成する場合に比較して不織布強度が低下しにくく、丈夫な不織布シート1Aを得ることができる。また、かかる2対の搬送ローラ対2a,3aの引張負荷差によって毛羽立部を形成するという方法では、簡便な工程により埃の補修能力の高い毛羽立部11Aを有する不織布シートが製造されるため、製造コストを低く抑えることができる。この不織布シート1Aも図4に示した清掃用具7に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係る不織布シートの部分拡大図である。
【図2】前記不織布シートの原材料の部分拡大図である。
【図3】前記不織布シートの製造工程図の一例である。
【図4】本発明に係る清掃用具の使用態様図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る不織布シートの斜視図である。
【図6】前記不織布シートの製造工程図の一例である。
【符号の説明】
【0030】
1,1A 不織布シート
2a 第1搬送ローラ対
3a 第2搬送ローラ対
7 清掃用具
11,11A 毛羽立部
12 不織布構造
14 繊維
D 搬送方向


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを構成する不織布構造の一部が破壊されることにより繊維が毛羽立ってなる毛羽立部が形成されていることを特徴とする不織布シート。
【請求項2】
毛羽立部が、シートを構成する繊維の起毛処理により形成されることを特徴とする請求項1に記載の不織布シート。
【請求項3】
毛羽立部が、所定方向へのシートの引張り処理により形成されることを特徴とする請求項1に記載の不織布シート。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の不織布シートを用いた清掃用具。
【請求項5】
請求項3に記載の不織布シートを得るにあたり、回転する第1搬送ローラ対によりシートを挟持搬送し、第1搬送ローラ対からのシートをシート搬送方向下流側の第2搬送ローラ対によって第1搬送ローラ対よりも高い引張り負荷で挟持搬送することによりシートの表面に毛羽立部を形成することを特徴とする不織布シートの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−190254(P2007−190254A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−12334(P2006−12334)
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【出願人】(591188310)
【Fターム(参考)】