説明

不織布製造装置及び不織布の製造方法

【課題】 幅方向における目付バラツキを低減できる不織布製造装置、及びその装置を用いた不織布の製造方法を提供すること。
【解決手段】 本発明の不織布製造装置は、(イ)紡糸原液を吐出できる2つ以上のノズル、(ロ)前記ノズルの外径よりも大きい貫通孔を有する多孔材料、(ハ)前記各ノズル及び/又は多孔材料を移動させることのできる移動手段、(ニ)前記紡糸原液に電界を作用させて延伸し繊維化することのできる印加手段、及び(ホ)前記繊維を直接集積できる捕集体を備えた不織布製造装置であり、前記多孔材料は各ノズルが貫通孔に挿入され、各ノズルの先端が多孔材料のノズル側面の反対面と同じ又は突出するように配置されている。また、不織布の製造方法は前記不織布製造装置を用い、繊維を集積させる際に、前記各ノズル及び/又は多孔材料を移動させる方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は不織布製造装置及び不織布の製造方法に関する。より具体的には、静電紡糸法により目付バラツキの小さい不織布を製造できる簡易な不織布製造装置、及びこの製造装置を用いる不織布の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不織布を構成する繊維の繊維径が小さいと、分離性能、液体保持性能、払拭性能、隠蔽性能、絶縁性能、或いは柔軟性など、様々な性能に優れているため、不織布を構成する繊維の繊維径を小さくするのが好ましい。このような繊維径の小さい極細繊維からなる不織布の製造方法として、紡糸原液をノズルから吐出するとともに、吐出した紡糸原液に電界を作用させて紡糸原液を延伸し、極細繊維とした後に直接捕集して不織布とする、いわゆる静電紡糸法が知られている。
【0003】
このような静電紡糸法により不織布を製造する場合、ノズルの数が1本では紡糸原液の吐出量が少ない結果として、生産性が悪いという問題があった。そのため、本願出願人は2本以上のノズルを使用して生産性を向上させる手段を提案している。つまり、「直線状に配置した2箇所以上の紡糸原液供給部を備えた、紡糸原液を供給できる供給手段、前記供給手段により供給した紡糸原液に電界を作用させて延伸し繊維化することのできる印加手段、前記繊維を直接集積できる捕集体、及び前記捕集体の幅方向において最も端部に位置する両紡糸原液供給部よりも外側に存在する絶縁体、とを備えていることを特徴とする、繊維集合体の製造装置。」を提案した(特許文献1)。この製造装置によれば、生産性を高めることができたが、紡糸原液供給部直下における繊維量と紡糸原液供給部間における繊維量との差が生じ、幅方向における目付バラツキが生じやすいものであった。前記特許文献1はノズル又は捕集体を捕集体の幅方向へ往復揺動させることも開示しているが、往復揺動させた場合には必然的にノズル又は捕集体が一旦停止するため、一旦停止時点における繊維量が多くなり、幅方向における目付バラツキの低減効果は十分ではなかった。
【0004】
【特許文献1】特開2005−264353号公報(請求項3、段落番号0036など)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述のような幅方向における目付バラツキを更に低減できる不織布製造装置、及びその装置を用いた不織布の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1にかかる発明は、「(イ)紡糸原液を吐出できる2つ以上のノズル、(ロ)前記ノズルの外径よりも大きい貫通孔を有する多孔材料、(ハ)前記各ノズル及び/又は多孔材料を移動させることのできる移動手段、(ニ)前記紡糸原液に電界を作用させて延伸し繊維化することのできる印加手段、及び(ホ)前記繊維を直接集積できる捕集体を備えた不織布製造装置であり、前記多孔材料は各ノズルが貫通孔に挿入され、各ノズルの先端が多孔材料のノズル側面の反対面と同じ又は突出するように配置されていることを特徴とする不織布製造装置。」である。
【0007】
本発明の請求項2にかかる発明は、「多孔材料が導電性であり、多孔材料への電圧印加手段を更に備えていることを特徴とする、請求項1記載の不織布製造装置。」である。
【0008】
本発明の請求項3にかかる発明は、「各ノズル又は多孔材料を円状に移動させることができる移動手段であることを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の不織布製造装置。」である。
【0009】
本発明の請求項4にかかる発明は、「多孔材料の貫通孔への気体供給手段を更に備えていることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の不織布製造装置。」である。
【0010】
本発明の請求項5にかかる発明は、「気体供給手段が、(1)各ノズルを支持し、各ノズルへ紡糸原液を供給できる支持供給部材、(2)前記支持供給部材と多孔材料との間の空間を閉鎖空間とする被覆材、(3)前記閉鎖空間へ気体を供給できる気体供給装置、とを備えていることを特徴とする、請求項4に記載の不織布製造装置。」である。
【0011】
本発明の請求項6にかかる発明は、「被覆材が伸縮性で、各ノズル又は多孔材料のいずれか一方のみを移動させることができることを特徴とする、請求項5に記載の不織布製造装置。」である。
【0012】
本発明の請求項7にかかる発明は、「請求項1に記載の不織布製造装置を用い、各ノズルから紡糸原液を吐出し、前記紡糸原液に電界を作用させて延伸して形成した繊維を直接集積して不織布を製造する際に、前記各ノズル及び/又は多孔材料を移動させることを特徴とする、不織布の製造方法。」である。
【0013】
本発明の請求項8にかかる発明は、「多孔材料が導電性であり、この多孔材料に電圧を印加することを特徴とする、請求項7記載の不織布の製造方法。」である。
【0014】
本発明の請求項9にかかる発明は、「各ノズル又は多孔材料を円状に移動させることを特徴とする、請求項7又は請求項8記載の不織布の製造方法。」である。
【0015】
本発明の請求項10にかかる発明は、「多孔材料の貫通孔へ気体を供給することを特徴とする、請求項7〜請求項9のいずれかに記載の不織布の製造方法。」である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の請求項1にかかる発明は、各ノズル及び/又は多孔材料を移動させることによって、主としてノズルの長さ方向と直角方向における、各ノズルと多孔材料との間に形成される電界強度の変調を生じるため、ノズルから吐出されて形成した繊維はその電界強度の変調の影響を受けて揺れながら飛翔し、捕集体上に集積するため、目付バラツキの低減した不織布を製造することができる装置である。
【0017】
本発明の請求項2にかかる発明は、多孔材料への電圧印加手段を備えており、電界強度を調整できるため、更に目付バラツキを低減した不織布を製造することができる装置である。
【0018】
本発明の請求項3にかかる発明は、各ノズル又は多孔材料を円状に移動させることができ、各ノズル又は多孔材料が一旦停止しないため、更に目付バラツキを低減した不織布を製造することができる装置である。
【0019】
本発明の請求項4にかかる発明は、多孔材料の貫通孔へ気体を供給することができ、ノズルが貫通孔の一方に偏ると気体は隙間の大きい部分を流れやすく、隙間の小さい部分を流れにくいことによって、気体の流速差が生じる。各ノズル又は多孔材料が移動することによって、前記隙間が変化し、それによって気体の流速差が生じる部分も変化するため、電界強度の変調のみではなく、気流の変調による作用も受けるため、更に目付バラツキを低減した不織布を製造することができる装置である。なお、貫通孔を気体が流れることによって、ノズルの周辺に効率よく気体を供給することができ、紡糸原液から揮発した溶媒を速やかに除去することによって繊維化が促進されるため、生産性も向上するという効果も奏する。
【0020】
本発明の請求項5にかかる発明は、支持供給部材と多孔材料との間の空間を閉鎖空間としているため、効率的に気体を貫通孔へ供給することができる装置である。
【0021】
本発明の請求項6にかかる発明は、各ノズル又は多孔材料のいずれか一方のみを移動させることができるため、繊維の飛翔を制御しやすく、目付バラツキを低減した不織布を製造することができる装置である。
【0022】
本発明の請求項7にかかる発明は、各ノズル及び/又は多孔材料を移動させることによって、主としてノズルの長さ方向と直角方向における、各ノズルと多孔材料との間に形成される電界強度の変調を生じるため、ノズルから吐出されて形成した繊維はその電界強度の変調の影響を受けて揺れながら飛翔し、捕集体上に集積するため、目付バラツキの低減した不織布を製造できる方法である。
【0023】
本発明の請求項8にかかる発明は、電界強度を調整できるため、更に目付バラツキを低減した不織布を製造できる方法である。
【0024】
本発明の請求項9にかかる発明は、各ノズル又は多孔材料を円状に移動させており、各ノズル又は多孔材料が一旦停止しないため、更に目付バラツキを低減した不織布を製造できる方法である。
【0025】
本発明の請求項10にかかる発明は、多孔材料の貫通孔へ気体を供給することによって、電界強度の変調のみではなく、気流の変調による作用も受けるため、更に目付バラツキを低減した不織布を製造できる方法である。なお、貫通孔を気体が流れることによって、ノズルの周辺に効率よく気体を供給することができ、紡糸原液から揮発した溶媒を速やかに除去することによって繊維化が促進されるため、生産性も高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の不織布製造装置及び不織布の製造方法について、図1〜図2をもとに説明する。図1は本発明の不織布製造装置の概念的断面図であり、図2は貫通孔とノズルとの位置関係を示す上視図である。
【0027】
本発明の不織布製造装置は図1に示すように、紡糸原液を吐出できる、1列に配列したノズル群1を備えている。このように、ノズル群1を備えているため、不織布の生産性を高くすることができる。図1においては、ノズル群1を支持し、各ノズルへ紡糸原液を供給できる支持供給部材2を備えている。この支持供給部材2は紡糸原液貯留部と接続されており、紡糸原液貯留部から紡糸原液が支持供給部材2に供給され、支持供給部材2を介して、各ノズルへ供給され、吐出される。
【0028】
図1においては、ノズル群1は7本からなるが、その数は生産性に優れるように2本以上であれば良く、特に限定するものではない。また、ノズル群1が1列に配列しているが、ノズル列を2列以上有する格子状に配列していても、ノズル列を2列以上有する千鳥状に配列していても、或いはランダムに配列していても良く、特に限定するものではないが、目付バラツキを小さくしやすいように、等ピッチで格子状又は千鳥状に配列しているのが好ましい。
【0029】
ノズルの材質、外径、内径等は特に限定するものではないが、同じ繊維径の繊維を紡糸しやすいように、全てのノズルが同じ材質からなり、全てのノズルの内径及び外径が同じ大きさであるのが好ましい。また、電界強度の変調の影響を同じにできるように、ノズルの長さは全て同じであるのが好ましい。更に、ノズルは支持供給部材に支持されている必要はなく、各ノズルが直接紡糸原液貯留部と接続されていても良い。
【0030】
なお、紡糸原液貯留部としては、例えば、シリンジ、ステンレスタンク、プラスチックタンク、或は塩化ビニル樹脂製、ポリエチレン樹脂製などの樹脂製バッグを挙げることができ、例えば、シリンジポンプ、チューブポンプ、マグネット式マイクロギアポンプ、マイクロポンプ、ディスペンサ等を使用して、紡糸原液を支持供給部材2に供給することができる。また、支持供給部材2は管又は内部中空の板などから構成することができる。なお、支持供給部材2は紡糸原液に対して電圧を印加できる限り、金属やプラスチックなど任意の材料から構成することができる。
【0031】
本発明の不織布製造装置は図1に示すように、貫通孔3aを有する多孔材料3を備えており、この多孔材料3には移動手段が接続されているため、多孔材料3を移動させることによって、各ノズルの位置を変化させることによって、主としてノズルの長さ方向と直角方向における、各ノズルと多孔材料3との間に形成される電界強度の変調を生じさせることができるため、各ノズルから吐出されて形成した繊維はその電界強度の変調の影響を受けて揺れながら飛翔し、捕集体上に集積するため、目付バラツキの低減した不織布を製造することができる。
【0032】
この電界強度の変調により揺られて飛翔する方向は、多孔材料3と各ノズルとの電位関係によって決まるため、その飛翔方向は一義的には決定できないが、図1のように、多孔材料3として導電性のものを用い、第2高圧電源によってノズルよりも低い電圧を印加して多孔材料3と各ノズルとの間に電位差を設け、しかも多孔材料3を直線状に移動させた場合、図2(a)に示すように紙面上、ノズル1aが貫通孔3aの左側に寄った時には、ノズル1aよりも左側(L)における電界強度がノズル1aよりも右側(R)における電界強度よりも強いため、繊維はより左側に揺られるように飛翔する。その後、多孔材料3の移動によって、図2(b)に示すように紙面上、ノズル1aが貫通孔3aの右側に寄った時には、ノズル1aよりも右側(R)における電界強度がノズル1aよりも左側(L)における電界強度よりも強いため、繊維はより右側に揺られるように飛翔する。このように、多孔材料3の移動によって、繊維は左右に振られながら飛翔するため、目付バラツキの低減した不織布を製造することができる。
【0033】
このように、多孔材料3が移動することによって、貫通孔中におけるノズルの相対的な位置が変化するため、貫通孔3aはノズルの外径よりも大きい。より具体的には、貫通孔3aの直径はノズルの外径よりも5mm以上大きいのが好ましく、10mm以上大きいのがより好ましい。5mm未満であると、多孔材料3の移動範囲を十分に確保できないためである。他方、貫通孔3aの直径が100mmを超えると、電界の変調に基づく繊維の揺れの度合いが小さくなるため、100mm以下であるのが好ましく、50mm以下であるのがより好ましい。特に、後述のように貫通孔3aに気体を通過させる場合には、気流の流速差による繊維の揺れが小さくなるため、貫通孔3aの直径は100mm以下であるのが好ましい。なお、貫通孔の形が円形でない場合には、その面積を円に換算した時の直径をいう。
【0034】
なお、多孔材料3は貫通孔3aをノズルと1対1対応してノズルの数だけ有していても良いし、2つのノズルに対して1つの貫通孔3aを有するなど、1対1対応していなくても良い。しかしながら、各ノズルから吐出されて形成される繊維に対する電界強度の変調の影響を同じにできるように、ノズルと貫通孔3aとは1対1対応しているのが好ましい。同様に、各ノズルから吐出されて形成される繊維に対する電界強度の変調の影響を同じにできるように、貫通孔3aの大きさは全て同じ大きさであるのが好ましく、全て同じ形であるのが好ましく、また、ノズルと貫通孔3aの位置関係がいずれのノズルにおいても同じである貫通孔3aであるのが好ましい。また、貫通孔3aの形状は円形であるのが好ましいが、長円、楕円、又は長方形などの多角形であっても良い。
【0035】
また、図1における多孔材料3は導電性(多孔材料の最も遠い地点同士で測った抵抗値が10Ω以下、好ましくは10Ω以下)で、多孔材料3に第2高圧電源(電圧印加手段)が接続されているため、多孔材料3に電圧を印加することができる。このように第2高圧電源が接続されていると、変調する電界強度を調整できるため、更に目付バラツキを低減した不織布を製造することができる。このような導電性の多孔材料3としては、例えば、金属板を挙げることができる。
【0036】
図1の多孔材料とは異なり、非導電性の多孔材料であっても良い。この場合には、多孔材料に電圧を印加しなくても、紡糸原液に電界を作用させるための第1高圧電源(印加手段)によって、多孔材料は第1高圧電源の電位に近い値まで帯電し、多孔材料を移動させることによって電界強度が変調するため、多孔材料に電圧を印加した場合と同様の作用効果を奏する。このような非導電性の多孔材料としては、例えば、プラスチック板を挙げることができる。なお、多孔材料が導電性である場合であっても、多孔材料に電圧を印加しなければ、非導電性多孔材料の場合と同様の作用効果を奏する。
【0037】
なお、多孔材料3は導電性であれ、非導電性であれ、移動に際し、反ったりすることなく、形態を保持できる厚さであれば良く、厚さは特に限定するものではない。
【0038】
本発明の不織布製造装置においては、図1に示すように、前述の各ノズルが多孔材料3の各貫通孔3aに挿入され、各ノズルの先端が多孔材料3のノズル側面の反対面から突出するように配置されているため、各ノズルから吐出され、形成する繊維を多孔材料3に堆積させることなく、多孔材料3によって変調する電界を、形成した繊維に対して作用させることができる。なお、突出の程度は、ノズル先端と捕集体5との距離、多孔材料3と捕集体5との距離、電界強度、或いはノズル先端と多孔材料3との間の距離、ノズル先端と多孔材料3との間の電界などに依存するため、特に限定するものではないが、変調した電界を作用させやすいように、30mmまでであるのが好ましく、電界の変調を作用させやすく、また、多孔材料3への繊維の付着を防止するために、5〜20mmであるのが最も好ましい。なお、図1とは異なり、各ノズルの先端が多孔材料3のノズル側面の反対面と同じ平面上に存在する位置に配置していても、形成する繊維を多孔材料3に堆積させることなく、多孔材料3によって変調する電界を、形成した繊維に対して作用させることができる。
【0039】
本発明の不織布製造装置は前述の通り、多孔材料3の移動手段を備えていることによって、各ノズルと多孔材料3との間に形成される電界強度の変調を生じさせ、ノズルから吐出されて形成した繊維に作用させて、繊維を揺らしながら捕集体上に集積させることができる。この移動手段による多孔材料3の移動は、例えば、捕集体5の幅方向と直交する方向以外の直線往復移動(捕集体5の幅方向に直線往復移動するのが好ましい)、円状移動、楕円状移動(捕集体5の幅方向と長径方向が一致するのが好ましい)、長円状移動(捕集体5の幅方向と長径方向が一致するのが好ましい)、長方形などの多角形状移動(捕集体5の幅方向と長辺方向が一致するのが好ましい)、などを挙げることができ、例えば、多孔材料3が直線往復移動する場合には、多孔材料の往復方向と同じ方向に揺られながら繊維は飛翔し、多孔材料3が円状移動する場合には、繊維も円状に揺れながら飛翔する。これらの中でも、円状移動であると、多孔材料3が一旦停止せず、一定速度で移動することが容易で、目付バラツキを更に低減できるため好適である。なお、移動手段によって、二次元的に移動させるばかりでなく、三次元的に、つまり、ノズルの長さ方向にも移動させても良い。
【0040】
この移動手段としては、例えば、直線往復移動のような一次元的な移動の場合は、例えば、多孔材料3の一端にボールねじ式の直動装置等を挙げることができ、円状移動のような二次元的な移動の場合は、例えば、2本のアームの一端を動かないように多孔材料3にそれぞれ固定するとともに、前記アームの他端をそれぞれ別の基盤に各基盤が移動可能であるように接続し、それぞれの基盤を同期させて移動させる方法を挙げることができ、三次元的な移動の場合、前述のような移動手段ごとノズルの長さ方向に上下させることによって、実施することができる。
【0041】
図1においては、移動手段によって多孔材料3を移動させているが、多孔材料3に加えて、又は多孔材料3に替えて各ノズルを移動させても良い。しかしながら、各ノズルを速く移動させた場合、各ノズルの先端が真横から相対的に受ける気流の影響によって、ノズル先端の周辺に紡糸原液が付着して紡糸状態を乱したり、ノズル詰りの原因となることがあるため、多孔材料3のみを移動させるのが好ましい。
【0042】
本発明の不織布製造装置においては、図1に示すように、支持供給部材中の紡糸原液に対して第1高圧電源によって電圧を印加できるとともに、ノズル群1と対向し、離間して位置する捕集体5を設置しているため、ノズルと捕集体5との間に電位差が生じ、紡糸原液に電界を作用させて延伸し繊維化することができる。図1においては、支持供給部材中の紡糸原液に電圧を印加するとともに、捕集体5を接地することによって電界を形成しているが、支持供給部材中の紡糸原液をアースするとともに、捕集体に電圧を印加して電界を形成しても良いし、支持供給部材中の紡糸原液と捕集体の両方に電圧を印加するものの、電位差を設けるように印加して電界を形成しても良い。なお、この電界は、繊維径、ノズルと捕集体5との距離、紡糸原液の溶媒、紡糸原液の粘度などによって変化するため、特に限定するものではないが、0.2〜5kV/cmであるのが好ましい。電界強度が5kV/cmを超えると、空気の絶縁破壊が生じやすい傾向があり、0.2kV/cm未満であると、紡糸原液の延伸が不十分で繊維形状となりにくい傾向があるためである。
【0043】
本発明の不織布製造装置においては、図1に示すように、繊維を直接集積できる平板状の捕集体5を備えている。しかしながら、捕集体5は繊維を直接集積できるものであれば平板状である必要はなく、例えば、金属製や炭素などの導電性材料又は有機高分子などの非導電性材料からなる、不織布、織物、編物、ネット、ドラム、或いはベルトを、捕集体5として使用することができる。場合によっては水や有機溶媒などの液体を捕集体5として使用できる。なお、捕集体5を他方の電極として使用する場合、捕集体5は体積固有抵抗値が10Ω・cm以下の導電性材料(例えば、金属製)からなるのが好ましい。一方、ノズル側から見て、捕集体5よりも後方に対向電極として導電性材料を配置する場合には、捕集体5は必ずしも導電性材料からなる必要はない。後者のように、捕集体5よりも後方に対向電極を配置する場合、捕集体5と対向電極とは接触していても良いし、離間していても良い。
【0044】
なお、図1においては図示していないが、ノズル群1、支持供給部材2、多孔材料3、及び捕集体5を容器内に収納することができる。このように容器内に収納した場合、紡糸原液から揮発した溶媒の揮散を防ぎ、場合によっては再利用することができる。また、前記のように容器内に収納するとともに、容器に気体供給装置が接続されていると、所望気体を供給することによって、容器内の環境を所望環境(例えば、所望相対湿度)にすることができるため、繊維径が揃っているなど、所望不織布を製造しやすい。更に、前述のように容器内に収納した場合には、容器に排気装置を接続するのが好ましい。静電紡糸を行っていると、容器内における溶媒蒸気濃度がどんどん高くなり、溶媒の蒸発が抑制され、繊維径のバラツキが発生しやすい傾向があり、最悪の場合には、溶媒の蒸気濃度が飽和に達してしまい、静電紡糸することが困難になるが、気体を排出することによってこのような事態を回避することができる。
【0045】
なお、「気体供給装置」としては、例えば、プロペラファン、シロッコファン、エアコンプレッサー、或いは送風機などを挙げることができ、「排気装置」として、例えば、排気口に設置されたファンを挙げることができ、気体供給装置によって容器へ気体を供給する場合には、単に排気口を設けるだけで供給量と同量の気体を排出することができる。
【0046】
本発明の図1における不織布製造装置は上述のような構成からなるため、次のようにして不織布を製造することができる。まず、紡糸原液貯留部から紡糸原液が支持供給部材2へ供給され、この支持供給部材2を介して各ノズルへ紡糸原液が供給され、各ノズルから吐出される。この際に、紡糸原液には第1高圧電源から電圧が印加されており、しかも捕集体5が設置されていることによって、紡糸原液と捕集体5との間に電界が形成されているため、この電界の作用によって吐出された紡糸原液は延伸され、繊維化する。同時に、多孔材料3は第2高圧電源から電圧が印加されているため、多孔材料3とノズルとの間に電界が形成されるとともに、多孔材料3は移動手段によって移動し、ノズルの貫通孔3aにおける位置が変化するため、多孔材料3とノズルとの間に形成される電界が変調する。そのため、繊維は変調する電界の影響を受けて揺れながら飛翔し、捕集体上に集積することによって、目付バラツキの小さい不織布を製造することができる。前述の通り、移動手段によって、多孔材料3を円状に移動させると、多孔材料3が一旦停止せず、一定速度で移動することが容易であるため、目付バラツキを更に低減できる。
【0047】
なお、貫通孔3aにおけるノズルの移動範囲は、貫通孔3aの中心を中心として、半径2mmの仮想円の円周上か、それよりも外側の領域、かつ貫通孔3aの内周と接しない領域であるのが好ましい。半径2mm未満の移動範囲であると、電界の変調による影響が微々たるものとなり、繊維を揺らすことが困難になる傾向があり、結果として、目付バラツキ低減効果があまりないためである。また、貫通孔3aの内周と接すると、多孔材料3とノズルとの間に電界を生じないためである。
【0048】
また、多孔材料3への第2高圧電源による電圧印加は、吐出され、形成する繊維がノズルと直角方向に揺れて飛翔するように、第1高圧電源と電圧値が異なっているのが好ましい。この第2高圧電源により形成される電圧差は、ノズルと多孔材料3とが最も近づいた時における、ノズルと多孔材料3との間の電界強度が0〜25kV/cmであるのが好ましい。この電界強度が25kV/cmを超えると、気体の絶縁破壊によりスパークしやすくなるからである。なお、電圧差が0Vであっても、ノズルが偏在することによって、ノズルを中心とした周囲の空間(多孔材料3と捕集体5との間の空間)における電界強度が変化し、吐出されて形成した繊維は横方向の力を受け、揺れながら飛翔するため、目付バラツキの小さい不織布を製造することができる。
【0049】
多孔材料3の移動速度は捕集体の移動速度との関係や、ノズルからの紡糸原液の吐出量、更にはノズルと捕集体の捕集面との距離などを考慮して決められるが、一往復又は一周して出発点に戻るのに要する時間を1Hz(ヘルツ)と定義した場合、0.1〜100Hz(ヘルツ)であるのが好ましい。0.1Hz(ヘルツ)よりも遅いと、目付バラツキの低減効果が不十分となる傾向があり、特に、捕集体の移動速度が速い場合に、目付バラツキの低減効果が不十分となる傾向があり、100Hz(ヘルツ)よりも速くても、繊維を揺り動かす効果が低減し、目付バラツキの低減効果が不十分となる傾向があるためで、0.5〜10Hz(ヘルツ)であるのがより好ましい。
【0050】
本発明の別の不織布製造装置及び不織布の製造方法について、図3をもとに説明する。図3は本発明の不織布製造装置の概念的透視断面図である。図3の不織布製造装置は、支持供給部材2と多孔材料3との間を被覆材6で被覆し、支持供給部材2と多孔材料3との間の空間を閉鎖空間とするとともに、前記閉鎖空間へ気体を供給できる気体供給装置を備えていること以外は、図1の不織布製造装置全く同じ構成からなる。このように、図3の不織布製造装置においては、支持供給部材2と多孔材料3との間を閉鎖空間とし、気体を供給できるため、供給された気体は多孔材料3の貫通孔3aのみを通過して捕集体方向へ流れる。この時、ノズル1aが貫通孔3aの一方に偏っていると、気体は隙間の大きい部分を流れやすく、隙間の小さい部分を流れにくいため、気体の流速差が生じるが、多孔材料3の移動によってノズル1aの位置が変化するため、その変化にともなって気流の変調も生じる。したがって、繊維は電界強度の変調に加えて、気流の変調の影響も受けるため、更に目付バラツキの少ない不織布を製造することができる。例えば、多孔材料3が直線状に移動し、図2(a)に示すように、紙面上、ノズル1aが貫通孔3aの左側に寄った場合には、ノズル1aよりも左側(L)における電界強度がノズル1aよりも右側(R)における電界強度よりも強いばかりでなく、気体はノズル1aよりも右側(R)を通過しやすく、左側(L)を通過しにくいため、電界強度と気流の相乗効果によって、繊維はより左側に揺られるように飛翔する。その後、多孔材料3の移動によって、図2(b)に示すように紙面上、ノズル1aが貫通孔3aの右側に寄った場合には、ノズル1aよりも右側(R)における電界強度がノズル1aよりも左側(L)における電界強度よりも強いばかりでなく、気体はノズル1aよりも左側(L)を通過しやすく、右側(R)を通過しにくいため、電界強度と気流の相乗効果によって、繊維はより右側に揺られるように飛翔する。
【0051】
更に、このように貫通孔3aを気体が流れることによって、ノズルの周辺に効率よく気体を供給することができ、紡糸原液から揮発した溶媒を速やかに除去することによって繊維化を促進することができるため、吐出量が多くなり、生産性が向上するという効果も奏する。また、静電紡糸法においては、紡糸雰囲気の温度制御及び湿度制御の重要性が認められているが、ノズルの周囲に効果的に温度及び湿度が制御された気体を供給できるため、温度及び湿度を制御するために要するエネルギーを少なくできるという効果も奏する。
【0052】
この被覆材6は支持供給部材2と多孔材料3との間の空間を閉鎖空間とすることができるものであれば良く、特に限定するものではないが、伸縮性であると、多孔材料3又は各ノズルのいずれか一方のみを移動させることができるため、繊維の飛翔を制御しやすく、目付バラツキを低減した不織布を製造しやすい。特に、多孔材料3のみを移動させると、ノズルの移動による紡糸状態が乱れるのを抑制できるため好適である。このような伸縮性の被覆材6としては、例えば、ゴムのように、材料自体が伸縮性を有するものや、蛇腹構造のように、支持供給部材2と多孔材料3との間の距離よりも長く、余剰の部分が存在することで伸縮性を有するものを挙げることができる。このように、「閉鎖空間」とは多孔材料3の貫通孔3a及び気体供給装置との接続部以外に気体が通過できないことをいう。
【0053】
なお、気体供給装置は前述の閉鎖空間へ気体を供給できるものであれば良く、特に限定するものではないが、例えば、プロペラファン、シロッコファン、エアコンプレッサー、或いは送風機などを挙げることができる。また、気体供給装置から供給される気体は特に限定するものではないが、取り扱い性および生産コストの点から空気であるのが好ましい。また、気体の温度及び湿度を一定に制御することにより、繊維径の揃った不織布を製造することができる。
【0054】
本発明の図3における不織布製造装置は上述のような構成以外は、図1の不織布製造装置と全く同じ構成であることができる。また、図1の不織布製造装置について説明した変形例と全く同じ変形をすることができる。
【0055】
なお、図3における不織布製造装置は被覆材6により支持供給部材2と多孔材料3との間の空間を閉鎖空間とした気体供給手段であるが、このような気体供給手段ではなく、例えば、閉鎖空間としないまでも支持供給部材2と多孔材料3との間の空間をある程度囲った上で、気体供給装置により気体を供給する方法、支持供給部材2と多孔材料3との間の空間を全く囲まないで、気体供給装置により気体を供給する方法、であっても、同様の作用効果を奏する。
【0056】
本発明の図3における不織布製造装置は上述のような構成からなるため、次のようにして不織布を製造することができる。まず、紡糸原液貯留部から紡糸原液が支持供給部材2へ供給され、この支持供給部材2を介して各ノズルへ紡糸原液が供給され、各ノズルから吐出される。この際に、紡糸原液には第1高圧電源から電圧が印加されており、しかも捕集体5が設置されていることによって、紡糸原液と捕集体5との間に電界が形成されているため、この電界の作用によって吐出された紡糸原液は延伸され、繊維化する。同時に、多孔材料3は第2高圧電源から電圧が印加されているため、多孔材料3とノズルとの間に電界が形成されるとともに、多孔材料3は移動手段によって移動し、ノズルの貫通孔3aにおける位置が変化するため、多孔材料3とノズルとの間に形成される電界が変調する。更に、支持供給部材2と多孔材料3との間の空間が被覆材6によって閉鎖空間となっており、この閉鎖空間に気体が供給されるとともに、多孔材料3は移動手段によって移動し、ノズルの貫通孔3aにおける位置が変化するため、気流の流速差が変調する。そのため、繊維は変調する電界及び気流の影響を受けて揺れながら飛翔し、捕集体上に集積することによって、目付バラツキの小さい不織布を製造することができる。移動手段によって、多孔材料3を円状に移動させると、多孔材料3が一旦停止せず、一定速度で移動することが容易であるため、目付バラツキを更に低減できる。
【0057】
なお、多孔材料3の貫通孔3aへの気体の供給は、貫通孔での気体の流速、ノズルから吐出された紡糸原液からの溶媒の蒸発量などを勘案して適宜決めれば良いが、ノズル1本あたり0.1L/分〜50L/分の流量であるのが好ましい。
【0058】
また、貫通孔3aにおけるノズルの移動範囲、多孔材料3への第2高圧電源による電圧印加、及び多孔材料3の移動速度は図1の不織布製造装置を用いた場合と同様であることができる。
【0059】
図1、図3或いはその他の不織布製造装置においては、従来と同様の紡糸原液を用いることができる。例えば、ポリエチレングリコール、部分けん化ポリビニルアルコール、完全けん化ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエチレン、或いはポリプロピレンなどを、水、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,4−ジオキサン、ピリジン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、アセトニトリル、ギ酸、トルエン、ベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、四塩化炭素、塩化メチレン、クロロホルム、トリクロロエタン、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネートなどの溶媒に溶解させたものを使用することができる。なお、粘度は10〜6000mPa・sの範囲であるのが好ましく、20〜5000mPa・sの範囲であるのがより好ましい。粘度が10mPa・s未満であると、溶媒が蒸発せず繊維になりにくい傾向があり、粘度が6000mPa・sを超えると、紡糸原液が延伸されにくくなり、繊維となりにくい傾向があるためである。なお、この「粘度」は、粘度測定装置を用い、温度25℃で測定した、シェアレート100s−1の時の値をいう。
【実施例】
【0060】
以下に本発明の実施例を記載するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0061】
(実施例1)
(紡糸原液の調製)
重量平均分子量約50万のポリアクリロニトリルを、N,N−ジメチルホルムアミドに濃度10.5mass%となるように溶解させた紡糸原液(粘度:1050mP・s)を用意した。
【0062】
(不織布製造装置の準備)
図3に示すような製造装置を用意した。より具体的には、次の構成からなる製造装置を用意した。
(1)紡糸原液貯留部:内容積200mlの定量供給可能なプラスチック製シリンジ。
(2)支持供給部材2:内部に、各ノズルに紡糸原液を供給できる空洞(たて×よこ×高さ=50mm×210mm×5mm)を設けたアルミニウム板。銅線を用いて第1高圧電源と接続。
(3)紡糸原液貯留部と支持供給部材2との接続:内径6mmのポリテトラフルオロエチレン製チューブで接続。
(4)ノズル群1:外径1mm、内径0.4mm、長さ20mmのステンレス製ノズルのみを支持供給部材2に、図4に示すように前後左右に等ピッチで千鳥状に103本固定。
(5)多孔材料3:各ノズルの中心が各貫通孔3aの中心と一致する、直径8mmの円形貫通孔3aのみを103個有する、厚さ5mmのアルミニウムプレート。第2高圧電源は接続せず。アルミニウムプレートに直動装置(=移動手段、オリエンタルモーター社製、モデルEZHS3A−50(商品名:EZ limo)を接続。
(6)多孔材料3の配置:各ノズルの先端が多孔材料3のノズル側面の反対面よりも5mmだけ突出するように、各ノズルを貫通孔3aに挿入。
(7)被覆材6:厚さ0.5mmのクロロプレンゴムシート。
(8)被覆材6の設置:支持供給部材2と多孔材料3とを被覆し、閉鎖空間を形成。
(9)捕集体5:導電性ポリテトラフルオロエチレンで被覆した、幅500mmのコンベア。
(10)捕集体5の設置:各ノズルの先端から100mm離れた位置に捕集体5の捕集表面が位置するように接地して設置。
(11)容器:たて700mm、よこ1500mm、高さ1500mmの直方体状容器内に、ノズル群1を固定した支持供給部材2と多孔材料3を被覆材6で被覆した紡糸部と捕集体5を設置。
(12)空気供給装置:容器の上壁、及び閉鎖空間へ空気を供給できる送風機を接続。
(13)排気装置:容器の底面に排気口を設けて自然排気可能。
【0063】
(不織布の製造)
次の条件で繊維を集積させ、目付が2g/m程度の不織布を製造した。
(イ)1本のノズルあたりの吐出量:0.2cc/分
(ロ)第1高圧電源による印加電圧:15kV(電界強度:1.5kV/cm)
(ハ)第2高圧電源による印加電圧:なし
(ニ)多孔材料3の移動条件:振幅5mm、移動速度2Hz、直線状に捕集体5の幅方向と一致する方向に一次元的に往復移動
(ホ)捕集体5の移動条件:50mm/分
(ヘ)容器への空気供給条件:温度25℃、湿度23%の空気を4m/分で供給。
(ト)閉鎖空間への空気供給:なし
(チ)排気条件:自然排気
【0064】
(実施例2)
不織布を製造する際に、閉鎖空間へ温度25℃、湿度23%の空気を50L/分の流量で供給したこと以外は、実施例1と同様にして目付が2g/m程度の不織布を製造した。
【0065】
(実施例3)
多孔材料3として、アルミニウムプレートに替えて、各ノズルの中心が各貫通孔3aの中心と一致する直径8mmの円形貫通孔3aのみを103個有する、厚さ5mmのアクリル板を使用したこと以外は、実施例1と同様にして目付が2g/m程度の不織布を製造した。
【0066】
(実施例4)
不織布を製造する際に、閉鎖空間へ温度25℃、湿度23%の空気を50L/分の流量で供給したこと以外は、実施例3と同様にして目付が2g/m程度の不織布を製造した。
【0067】
(実施例5)
多孔材料3であるアルミニウムプレートに第2高圧電源を接続するとともに、第2高圧電源により13kVの電圧を印加(ノズルと多孔材料3とが最も近づいた時におけるノズルと多孔材料3との間の電界強度:20kV/cm)したこと以外は、実施例1と同様にして目付が2g/m程度の不織布を製造した。
【0068】
(実施例6)
不織布を製造する際に、閉鎖空間へ温度25℃、湿度23%の空気を50L/分の流量で供給したこと以外は、実施例5と同様にして目付が2g/m程度の不織布を製造した。
【0069】
(実施例7)
1本のノズルあたりの吐出量を0.5cc/分としたこと以外は、実施例2と同様にして目付が5g/m程度の不織布を製造した。
【0070】
(実施例8)
多孔材料3であるアクリル板の貫通孔の中心が半径3mmの円を描くように、移動速度1Hzで二次元的に移動させたこと以外は、実施例4と同様にして目付が2g/m程度の不織布を製造した。なお、多孔材料3の長軸方向の一辺側に、2本の樹脂製アーム(長さ:300mm)の一端を動かないようにそれぞれ固定するとともに、前記アームの他端をそれぞれ別の円盤に、各円盤が回転可能であるように接続し、それぞれの円盤を1個のモーターで完全に同期させて回転させることにより、多孔材料3を二次元的に円移動させた。
【0071】
(実施例9)
多孔材料3であるアルミニウムプレートの貫通孔の中心が半径3mmの円を描くように、移動速度1Hzで二次元的に移動させたこと以外は、実施例6と同様にして目付が2g/m程度の不織布を製造した。なお、多孔材料3の移動は実施例8と同様にして行なった。
【0072】
(実施例10)
多孔材料3に接続されていた直動装置を支持供給部材2に接続し、多孔材料3を固定した状態、かつ支持供給部材2を振幅5mm、移動速度2Hzで、直線状に捕集体5の幅方向と一致する方向に一次元的に往復移動させたこと以外は、実施例1と同様にして目付が2g/m程度の不織布を製造した。
【0073】
(実施例11)
1本のノズルあたりの吐出量を0.5cc/分としたこと以外は、実施例1と同様にして目付が5g/m程度の不織布を製造した。
【0074】
(比較例1)
多孔材料3であるアルミニウムプレートを設置しなかったこと以外は、実施例1と同様にして目付が2g/m程度の不織布を製造した。この不織布の片面から光を透過させ、他面側から不織布を観察すると、たて筋がはっきりと観察できるものであった。
【0075】
(比較例2)
多孔材料3であるアルミニウムプレートを移動させず、固定したままの状態としたこと以外は、実施例1と同様にして目付が2g/m程度の不織布を製造した。この不織布の片面から光を透過させ、他面側から不織布を観察すると、たて筋がはっきりと観察できるものであった。
【0076】
(比較例3)
多孔材料3と被覆材6を取り除いた製造装置を使用したこと以外は、実施例10と同様にして、目付が2g/m程度の不織布を製造した。この不織布の片面から光を透過させ、他面側から不織布を観察すると、たて筋がはっきりと観察できるものであった。
【0077】
(不織布の評価)
実施例1〜11及び比較例1〜3により製造した不織布の中央部分15cmの領域から、捕集体5の進行方向に3cmで、捕集体5の幅方向に1cmの長方形に切断して試料1〜15を採取した後、各試料の質量を測定し、この質量から目付(g/m)に換算し、目付分布を評価した。この結果は表1に示す通りであった。
【0078】
【表1】

【0079】
表1の実施例1と比較例1、2との比較から、多孔材料を移動させることによって、不織布の目付バラツキが小さくなること、実施例1と実施例2との比較から、貫通孔へ気体を供給することによって、更に不織布の目付バラツキが小さくなること、実施例1と実施例5との比較から、多孔材料に電圧を印加することによって、更に不織布の目付バラツキが小さくなること、実施例7から、貫通孔へ気体を供給することによって、紡糸原液の吐出量を増やすことができるため、不織布の生産性を高めることができること、実施例4と実施例8との比較及び実施例6と実施例9との比較から、多孔材料の移動が円形状であることによって、更に不織布の目付バラツキが小さくなること、がそれぞれ分かった。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の不織布製造装置の概念的断面図
【図2】貫通孔とノズルとの位置関係を示す上視図
【図3】本発明の別の不織布製造装置の概念的透視断面図
【図4】実施例1におけるノズルの支持供給部材における配置図
【符号の説明】
【0081】
1 ノズル群
1a ノズル
2 支持供給部材
3 多孔材料
3a 貫通孔
4 不織布
5 捕集体
6 被覆材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(イ)紡糸原液を吐出できる2つ以上のノズル、(ロ)前記ノズルの外径よりも大きい貫通孔を有する多孔材料、(ハ)前記各ノズル及び/又は多孔材料を移動させることのできる移動手段、(ニ)前記紡糸原液に電界を作用させて延伸し繊維化することのできる印加手段、及び(ホ)前記繊維を直接集積できる捕集体を備えた不織布製造装置であり、前記多孔材料は各ノズルが貫通孔に挿入され、各ノズルの先端が多孔材料のノズル側面の反対面と同じ又は突出するように配置されていることを特徴とする不織布製造装置。
【請求項2】
多孔材料が導電性であり、多孔材料への電圧印加手段を更に備えていることを特徴とする、請求項1記載の不織布製造装置。
【請求項3】
各ノズル又は多孔材料を円状に移動させることができる移動手段であることを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の不織布製造装置。
【請求項4】
多孔材料の貫通孔への気体供給手段を更に備えていることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の不織布製造装置。
【請求項5】
気体供給手段が、(1)各ノズルを支持し、各ノズルへ紡糸原液を供給できる支持供給部材、(2)前記支持供給部材と多孔材料との間の空間を閉鎖空間とする被覆材、(3)前記閉鎖空間へ気体を供給できる気体供給装置、とを備えていることを特徴とする、請求項4に記載の不織布製造装置。
【請求項6】
被覆材が伸縮性で、各ノズル又は多孔材料のいずれか一方のみを移動させることができることを特徴とする、請求項5に記載の不織布製造装置。
【請求項7】
請求項1に記載の不織布製造装置を用い、各ノズルから紡糸原液を吐出し、前記紡糸原液に電界を作用させて延伸して形成した繊維を直接集積して不織布を製造する際に、前記各ノズル及び/又は多孔材料を移動させることを特徴とする、不織布の製造方法。
【請求項8】
多孔材料が導電性であり、この多孔材料に電圧を印加することを特徴とする、請求項7記載の不織布の製造方法。
【請求項9】
各ノズル又は多孔材料を円状に移動させることを特徴とする、請求項7又は請求項8記載の不織布の製造方法。
【請求項10】
多孔材料の貫通孔へ気体を供給することを特徴とする、請求項7〜請求項9のいずれかに記載の不織布の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−303503(P2008−303503A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−152154(P2007−152154)
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(000229542)日本バイリーン株式会社 (378)
【Fターム(参考)】