説明

不良ノズル検出装置、印刷装置、不良ノズル検出方法およびコンピュータープログラム

【課題】印刷媒体の送り量が何らかの原因でずれたとしても、精度良く不良ノズルを検出する。
【解決手段】不良ノズル検出装置は、画像データに基づいて、搬送方向に沿った画素位置をそれぞれ異なるオフセット量だけずらした複数の基準画像データを生成する基準画像生成部と、搬送部によって相対移動されている印刷媒体から画像を読み取って読取画像データを生成する読取部と、を備える。不良ノズル検出装置は、複数の基準画像データの中から読取画像データとの比較に用いる基準画像データを選択する。そして、読取画像データと選択された基準画像データとの比較に基づき、複数のノズルの中から不良ノズルを検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置の不良ノズルを検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式の印刷装置では、印刷ヘッドが備えるインク吐出用のノズルに不具合が生じた場合に、印刷媒体上に筋状の印刷不良が発生することがある。例えば、特許文献1に記載の技術では、画像の印刷された印刷媒体を所定の方向に搬送しながらスキャナーで読み取り、その読み取り結果と基準画像とを比較することで不良ノズルを検出している。しかし、印刷媒体が搬送されている状態で画像を読み取ると、搬送機構による印刷媒体の送り量に何らかの原因で誤差が加わった場合には、基準画像との比較を正確に行えず、不良ノズルの検出精度が低下するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−240911号公報
【特許文献2】特開2010−173289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した問題を踏まえ、本発明が解決しようとする課題は、印刷媒体の送り量が何らかの原因でずれたとしても、精度良く不良ノズルを検出可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するために以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]画像データによって表される画像が複数のノズルを備える印刷ヘッドによって印刷され搬送部によって搬送方向に相対移動される印刷媒体に基づき、不良ノズルを検出する不良ノズル検出装置であって、前記画像データに基づいて、前記搬送方向に沿った画素位置をそれぞれ異なるオフセット量だけずらした複数の基準画像データを生成する基準画像生成部と、前記搬送部によって相対移動されている印刷媒体から画像を読み取って読取画像データを生成する読取部と、前記複数の基準画像データの中から前記読取画像データとの比較に用いる基準画像データを選択する選択部と、前記読取画像データと前記選択された基準画像データとの比較に基づき、前記複数のノズルの中から不良ノズルを検出する検出部と、を備える不良ノズル検出装置。
【0007】
このような構成であれば、搬送方向に沿った画素位置がそれぞれ異なる複数の基準画像データを生成して、その中から、読取画像データと比較する基準画像データを選択し、選択した基準画像データと読取画像データとを対比して不良ノズルの検出を行う。そのため、印刷媒体の送り量が何らかの原因でずれたとしたとしても、精度良く不良ノズルの検出を行うことができる。
【0008】
[適用例2]適用例1に記載の不良ノズル検出装置であって、前記基準画像生成部は、前記選択部が選択した基準画像データに対応するオフセット位置を基準位置として、前記複数の基準画像データの生成を行う、不良ノズル検出装置。
【0009】
このような構成であれば、一旦選択された基準画像データに対応するオフセット位置に基づいて、複数の基準画像データを生成するので、読取画像データとの比較を的確に行うことのできる基準画像データを生成することができる。また、このように、読取画像データとの比較が的確に行うことのできる基準画像データを生成することができるので、生成する基準画像データの数を低減することも可能である。
【0010】
[適用例3]適用例1または適用例2に記載の不良ノズル検出装置であって、前記基準画像生成部が生成する基準画像データの数は、想定される前記印刷媒体の搬送のズレ量に基づいて設定される、不良ノズル検出装置。
【0011】
このような構成であれば、想定される印刷媒体の搬送のズレ量が小さい場合には、それだけ、生成する基準画像データの数を低減することができる。
【0012】
[適用例4]適用例1から適用例3までのいずれか一項に記載の不良ノズル検出装置であって、前記基準画像生成部は、前記複数の基準画像データのそれぞれの画素位置を、前記検出部における前記比較において許容可能な前記搬送のズレ量の倍以下ずつ前記搬送方向に沿って段階的にずらして前記複数の基準画像データを生成する、不良ノズル検出装置。
【0013】
このような構成であれば、検出部における比較において許容可能な搬送のズレ量の、倍以下のオフセット量だけ段階的に画素位置をずらした複数の基準画像データを生成するので、読取画像データと基準画像データとが搬送方向に沿って正逆どちらにずれたとしても、これらを的確に比較することが可能になる。
【0014】
本発明は、上述した不良ノズル検出装置としての構成のほか、搬送部を備える不良ノズル検出装置や、印刷ヘッドと不良ノズル検出装置とを備える印刷装置、不良ノズル検出方法、コンピュータープログラムとしても構成することができる。コンピュータープログラムは、コンピューターが読取可能な記録媒体に記録されていてもよい。記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスクやCD−ROM、DVD−ROM、光磁気ディスク、メモリカード、ハードディスク等の種々の媒体を利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例としての印刷装置の概略構成を示す説明図である。
【図2】インク吐出ノズルの配置構成を例示した説明図である。
【図3】読取部による読取解像度を示す説明図である。
【図4】読取解像度の種々の例を示す図である。
【図5】印刷不良の検出原理を示す説明図である。
【図6】印刷媒体の搬送に遅れが生じた場合の差分値の積算値を示す説明図である。
【図7】複数の基準画像データの例を示す説明図である。
【図8】不良ノズル検出ルーチンのフローチャートである。
【図9】搬送ローラーに偏心が生じている例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
A.装置構成:
図1は、本発明の一実施例としての印刷装置10の概略構成を示す説明図である。本実施例の印刷装置10は、インクジェット式のカラープリンターであり、ヘッドユニット200と、搬送部300と、読取部400と、制御部500と、表示部600と、インターフェース700と、を備えている。印刷装置10は、インターフェース700に接続されたコンピューター等から画像データを取得し、搬送部300によって搬送される印刷媒体Pに対し、ヘッドユニット200からインク滴を噴射して画像の印刷を行う。また、印刷装置10は、印刷媒体P上に印刷された画像(以下、単に「印刷画像」ともいう)を読取部400によって読み取る機能を有する。印刷装置10は、本願の「不良ノズル検出装置」に相当する。
【0017】
ヘッドユニット200は、ブラック(K),シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y)の各色のインク毎のインク吐出ノズルを含む噴射ヘッドを備える。噴射ヘッドは、図示しないピエゾ素子の電圧調整によってインク吐出ノズルからインクを噴射する。本実施例では、印刷装置10は、4色のインクにより印刷を行うが、使用する色の種類や色の数ついては上記と異なっていてもよい。
【0018】
図2は、インク吐出ノズル210の配置構成を例示した説明図である。ヘッドユニット200は、印刷媒体Pと対向する面(下面)に複数のインク吐出ノズル210を備えている。ヘッドユニット200の下面には、搬送部300による印刷媒体Pの搬送方向に沿って、各色のインク吐出ノズル210が並んで配置されている。各色のインク吐出ノズル210は、ブラック(K),シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y)ごとに、搬送方向と直行する方向(以下、「原稿幅方向」という)に千鳥状に並んでいる。千鳥状に配置された各色の複数のインク吐出ノズル210は、印刷媒体Pの印刷可能領域と幅が等しくなるように構成されている。すなわち、本実施例に係る印刷装置10は、いわゆるラインプリンターとして構成されている。各色のインク吐出ノズル210は、原稿幅方向において、所定の印刷解像度(例えば、720dpi)でインク滴を吐出できるように配置されている。
【0019】
搬送部300(図1参照)は、搬送ローラー310,320と、搬送ローラー310,320の間に架設された搬送ベルト330と備える。搬送部300は、図示しない駆動モーターにより搬送ベルト330を駆動させることにより、搬送ベルト330上の印刷媒体Pを搬送方向の上流側から下流側に向けて搬送する。搬送部300は、ヘッドユニット200によるインクの吐出により、搬送方向において所定の印刷解像度(例えば、1440dpi)でドットが形成されるよう、搬送速度が調整されている。
【0020】
読取部400は、ヘッドユニット200の搬送方向下流側に配置され、搬送部300により搬送される印刷媒体P上の印刷画像の読み取りをおこなう。読取部400は、図示しないイメージセンサーと光源とを含んでいる。イメージセンサーとしては、例えば、CCDイメージセンサーやCMOSイメージセンサーを用いることができる。光源としては、例えば、白色LEDや白色CCFL(冷陰極蛍光ランプ)を用いることができる。
【0021】
図3は、読取部400による読取解像度を示す説明図である。また、図4は、読取解像度の種々の例を示す図である。図3に示すように、本実施例では、読取部400は、印刷媒体の搬送方向について、印刷画像の解像度(1440dpi)よりも低い解像度(10〜20dpi)によって印刷画像を読み取る。例えば、図4に示すように、印刷媒体Pの搬送速度が254mm/秒で、原稿幅方向の1回の読み取りに要する時間(スキャンレート)が7msであれば、読取部400によって画像を読み取っている間に、印刷媒体Pは、1.78mm搬送される。つまり、読取時における1ライン(1読取ライン)は、この1.78mmに相当する幅となる。例えば、搬送方向の印刷解像度が1440dpiであれば、1.78mmの幅は、図3に示すように、およそ印刷画像の100ドット幅分に相当し、読取解像度としては、14dpiとなる。そのため、読取部400によって1読取ライン分の画像が読み取られると、その画像は、印刷画像に対して、搬送方向の解像度が1/100に圧縮された画像となり、その画素値は、印刷画像の搬送方向における100ドット分の画素値の平均値となる。なお、本実施例では、印刷媒体Pの搬送速度を254mm/秒、スキャンレートを7msとして画像の読み取りを行うが、他の値を適宜適用してもよい。
【0022】
上記のように、本実施例では、搬送方向の読取解像度は印刷解像度よりも低い解像度とするが、原稿幅方向についての読取解像度は、印刷画像の印刷解像度よりも高い解像度とする。例えば、原稿幅方向の印刷解像度が720dpiであれば、図3に示すように、その2倍(1440dpi)以上の解像度で読取を行う。このように、原稿幅方向の解像度を高く読み取れば、筋状の印刷不良を精度良く検出することができる。なお、以下では、印刷画像や読み取られた画像の搬送方向に対応する方向を「縦方向」ともいい、原稿幅方向に対応する方法を「横方向」ともいう。また、読取画像の横方向の各位置を、「読取列」という。読取列は、ヘッドユニット200の各インク吐出ノズル210の位置に対応している。具体的には、インク吐出ノズル210の原稿幅方向の解像度が720dpiで、各読取列の横方向の解像度が1440dpiであれば、隣り合う2つの読取列が、一つのノズルに対応することになる。
【0023】
制御部500(図2参照)は、CPU510や記憶部570を備え、印刷装置10の全体の動作を制御する。CPU510は、記憶部570に記憶された制御プログラム(図示せず)を実行することで、ヘッドユニット200や搬送部300の駆動を制御する印刷制御部520と、読取部400を制御する読取制御部530と、画像処理部540と、不良検出部550と、として機能する。記憶部570は、読取画像バッファー571と、印刷画像バッファー572と、基準画像バッファー573と、元画像バッファー574とを含んでいる。不良検出部550は、本願の「基準画像生成部」と「選択部」と「検出部」と、に相当する。
【0024】
画像処理部540は、インターフェース700に接続されたコンピューター等から画像データ(以下、「元画像データ」という)を取得して、これを元画像バッファー574に格納する。そして、元画像データに対して、RGB値からCMYK値への色変換処理やハーフトーン処理を施して、印刷媒体Pに画像を形成するためのデータ(以下、「印刷画像データ」という)を生成する。画像処理部540は、印刷画像データを記憶部570内の印刷画像バッファー572に格納する。
【0025】
印刷制御部520は、搬送部300を制御して印刷媒体Pを下流に搬送させながら、印刷画像バッファー572に記憶されている印刷画像データに基づき、ヘッドユニット200を制御して、画像の印刷を行う。
【0026】
読取制御部530は、読取部400を制御して、上流側から搬送されてくる印刷媒体P上の印刷画像を1読取ライン毎に読み取る。読取制御部530は、読み取った画像を、読取画像データとして、記憶部570内の読取画像バッファー571に記録する。
【0027】
不良検出部550は、読取画像バッファー571に記録された読取画像データと、後述の方法によって作成する複数の基準画像データとに基づいて、不良ノズルの検出を行う。不良検出部550は、複数の基準画像データを生成する際には、元画像データに対して解像度変換を施すことによって、各基準画像データの解像度を、読取画像データの解像度に一致させる。
【0028】
図5は、不良ノズルの検出原理を示す説明図である。図5(a)には、基準画像の一部を示し、図5(b)には、読取画像の一部を示した。図5(a),(b)に、「1読取ライン」と示した範囲は、読取部400による1回のスキャンで読み取られる範囲を示している。そのため、実際には、この範囲内の画像の縦方向の解像度は、1/100に圧縮され、画素値が平均化される。
【0029】
図5(b)に示した読取画像には、筋状の不良箇所が生じている。そのため、図5(a)に示した基準画像と図5(b)に示した読取画像の対応する画素値の差分を算出すると、図5(c)に示すように、筋状の不良箇所に該当する読取列の差分値が大きくなる。よって、この差分値と、予め定めた閾値とを比較することで、不良の生じている読取列、すなわち、不良ノズルの位置を検出することができる。
【0030】
図6は、印刷媒体Pの送り量に遅れが生じた場合の差分値を示す説明図である。ヘッドユニット200による印刷後、読取部400に印刷媒体Pが搬送されるまでの間に何らかの原因で印刷媒体Pの搬送に遅れが生じた場合には、図6(b),(c)のように、読取画像に位置ズレが生じる。図6(a)には、印刷媒体Pの送り量に遅れが生じていない場合の読取画像を示し、図6(b)には、2ドット分の遅れが生じた場合の読取画像を示した。また、図6(c)には、10ドット分の遅れが生じた場合の読み取り画像を示した。「2ドット」および「10ドット」とは、印刷解像度におけるドット数である。
【0031】
図6(d)には、図6(b)に示した読取画像と、図5(a)に示した基準画像との画素値の差分を示した。このように、印刷解像度において2ドット程度の送り量のズレであれば、差分値が大きく変動することがないため、適切に閾値を設定することで、不良ノズルの位置を検出することができる。これに対して、図6(c)のように、印刷解像度において10ドット程度の送り量のズレがある場合には、図6(e)に示すように、不良箇所以外の差分値も大きくなる。よって、適切に閾値を設定することが困難となり、不良ノズルの発生の有無や不良ノズルの位置の特定も困難になる。
【0032】
不良検出部550は、上述した印刷媒体Pの送り量のズレを考慮し、元画像データから、縦方向のオフセット位置がそれぞれ異なる複数の基準画像データを生成して基準画像バッファー573に記憶しておく。そして、この複数の基準画像データの中から、読取画像データに最も近似した基準画像データを選択し、その選択された基準画像データと、読取画像データとを比較することで、不良ノズルの検出を行う。
【0033】
図7は、不良検出部550が生成する複数の基準画像データの例を示す説明図である。例えば、図6に示したように、許容可能なズレ量が±2ドットであるとすると、本実施例では、縦方向に4ドットずつ段階的に画素位置を変更した基準画像データを用意する。こうすることで、読取画像データが搬送方向に沿って正逆どちらにズレたとしても、最大2ドットの幅に基準画像データと読取画像データとのズレを抑えることができる。よって、例えば、1読取ラインの幅が、図7(a)に示すように100ドットの場合には、図7(b)に示すように、4ドットずつ縦方向の画像の位置をずらした25種類の基準画像データを予め作成することで、読取範囲が完全にズレない限り、読取画像データと基準画像データとの比較が可能になる。なお、図7(a),(b)には、理解の便のために三角形の図形を画像中に示しているが、読取画像データは、縦方向100ドット分の画素値が平均化されるため、1読取ライン幅の中に図形が表れることはない。また、基準画像データについても、読取画像データに合わせて解像度変換がされるため、読取画像データと同様に、縦方向100ドット分の画素値が平均化される。よって、基準画像データ中に、図7(b)に示すような図形が表れることはない。なお、本実施例では、許容可能なズレ量(2ドット)の倍の量(4ドット)だけ縦方向の画素位置をずらした複数の基準画像データを生成するが、ずらす量は、許容可能なズレ量の倍以下の量であれば、より少ない量(例えば、3ドット)であってもよい。
【0034】
B.不良ノズル検出ルーチン:
図8は、不良検出部550が実行する不良ノズル検出ルーチンのフローチャートである。この不良ノズル検出ルーチンは、印刷制御部520によって、印刷媒体Pに画像が印刷されるのと平行して実行される処理である。
【0035】
この不良ノズル検出ルーチンが実行されると、まず、不良検出部550は、読取部400によって読み取られた1ライン分の読取画像データを読取画像バッファー571から取得する(ステップS105)。
【0036】
読取画像データを取得すると、不良検出部550は、基準となるオフセット位置(以下、「基準オフセット位置」という)から、想定されるズレ範囲(以下、「変動範囲」という)内に含まれる複数の基準画像データの生成を行う(ステップS110)。基準オフセット位置は、読取画像データと対比する複数の基準画像データのオフセット位置の代表値を表し、初期値は、「0」である(図7参照)。変動範囲は、想定されるズレの範囲を示す値であり、例えば、図7(b)に示した例では、最大で、−48から+48までとすることができる。例えば、基準オフセット位置が0で、変動範囲が−48から+48までであれば、図7(b)に示すように、不良検出部550は、基準オフセット位置を中心として、縦方向の上方向および下方向それぞれについて4ドットずつオフセット位置を段階的にずらした基準画像データを計25個生成する。
【0037】
上述した変動範囲は、送り量のズレの最大値が予め判明している場合には、その最大値にあわせて設定することが可能である。例えば、図9に示すように、搬送ローラー320の偏芯や変形、周長の誤差によって、送り量のズレが所定の範囲(例えば、±0.5mm)で変動するということが既知であれば、その範囲に相当するオフセット位置の範囲(例えば、−28〜+28)を変動範囲とすることができる。このように、変動範囲を狭く設定すれば、生成する基準画像データの数を削減することが可能になる。なお、図9には、搬送ローラー320の回転の中心を「X」で示し、円の中心を黒丸で示している。
【0038】
変動範囲内の複数の基準画像データを生成すると、不良検出部550は、生成した各基準画像データと読取画像データとを比較し(ステップS115)、読取画像データに最も近似する基準画像データを選択する(ステップS120)。具体的には、各基準画像データについて、基準画像データの各画素の画素値と読取画像データの各画素の画素値との差分を算出し、その差分の絶対値を画像データ全体について合計する。そして、その合計値が最も小さい基準画像データを、読取画像データに最も近似する基準画像データとして選択する。
【0039】
読取画像データに最も近似する基準画像データを選択すると、不良検出部550は、選択した基準画像データに対応するオフセット位置を、基準オフセット位置として設定し、記憶部570に記録する(ステップS125)。こうして記録した基準オフセット位置は、上述したステップS105の処理が次回に実行される際に参照される。
【0040】
基準オフセット位置を設定すると、不良検出部550は、ステップS105で取得した読取画像データと、ステップS115で選択した基準画像データとを比較して、読取画像データ中の不良箇所の検出を行う(ステップS130)。具体的には、基準画像データの各読取列の画素値と読取画像データの各読取列の画素値との差分の絶対値を各読取列についてそれぞれ算出し、その差分の絶対値が所定の閾値を超える読取列を不良箇所として検出する(図5(c)参照)。差分の絶対値と対比される閾値は、本実施例では、許容される印刷媒体Pの搬送ズレ(本実施例では±2ドット)が生じても不良の判別が可能な値に設定されている(図6(d)参照)。この値は、例えば、差分の絶対値が取り得る範囲が0から255までの場合に、20程度とすることができる。このようにして不良箇所の検出を行うと、不良検出部550は、現在の読取ラインについて、検出した不良箇所を記憶部570に記録しておく。
【0041】
上記のように現在の読取画像データについて不良箇所の検出を行うと、不良検出部550は、印刷画像の全ての読取ラインについて不良箇所の検出が終了したかを判断する(ステップS135)。全ての読取ラインについて終了していなければ、ステップS105に処理を戻し、次の読取ラインについて上述したステップS105〜125の処理を繰り返す。一方、全ての読取ラインについて不良箇所の検出が終了すれば、不良検出部550は、読取ラインの各読取列について不良箇所の数を集計する(ステップS140)。
【0042】
不良箇所の数を集計すると、不良検出部550は、その集計値に基づいて、不良ノズルの有無を判断する(ステップS145)。具体的には、集計された不良箇所の数が、所定の閾値を超えている読取列に対応するノズルを、不良ノズルとして判定する。この閾値は、例えば、全読取ラインの数の10%程度の値に設定することができる。
【0043】
不良検出部550は、不良ノズル有りと判断すると、印刷制御部520に指令を与えて印刷を停止させる。そして、不良ノズルを検出した旨と、不良ノズルの位置とを表示部600に表示する(ステップS150)。ユーザーは、この表示を確認した場合に、ヘッドクリーニングや、不良を目立たなくさせる画像処理等の各種回復処理を実行することができる。一方、不良ノズル無しと判断すると、不良検出部550は、当該不良ノズル検出ルーチンを終了する。なお、本実施例では、不良ノズル有りと判断された場合に、印刷を直ちに停止させることとするが、印刷を停止させることなく不良が発生したことのみを表示することとしてもよい。また、不良ノズルを検出した旨と不良ノズルの位置とは、表示部600に限らず、例えば、インターフェース700に接続されたコンピューターのモニターに表示させることとしてもよい。
【0044】
以上で説明した本実施例の印刷装置10では、搬送方向上のオフセット位置が異なる複数の基準画像データを元画像データから生成し、その中から、読取画像データに近似する基準画像データを選択する。そして、選択した基準データと読取画像データとを対比して不良ノズルの検出を行うため、印刷媒体Pの送り量にズレが生じたとしても、精度良く不良ノズルの検出を行うことができる。
【0045】
また、本実施例では、搬送方向の読取解像度を印刷解像度よりも低い解像度によって読取を行うため、読取画像データのデータ量を削減させることができる。また、搬送方向における読取解像度を低下させることができるので、比較的精度の低いイメージセンサーを用いて不良ノズルの検出を行うことができる。よって、印刷装置10の製造コストを低減することが可能になる。なお、このように、搬送方向における読取解像度を低下させたとしても、不良ノズルの発生による印刷不良は、印刷媒体Pの搬送方向に沿って生じることがほとんどである。よって、原稿幅方向(横方向)の解像度が確保されていれば、不良ノズルの検出精度の低下は抑制される。
【0046】
また、本実施例では、印刷を行いながら不良ノズルの検出を平行して行うので、不良ノズルが検出されたら直ちに印刷を停止させることができる。そのため、例えば、印刷装置10が大量の印刷を行う業務用途の印刷装置10である場合であれば、多量の印刷不良が生じることを抑制することができる。
【0047】
C.変形例:
以上、本発明の一実施例について説明したが、本発明はこのような実施例に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の構成を採ることができる。例えば、ソフトウェアによって実現した機能は、ハードウェアによって実現するものとしてもよく、その逆もまた可能である。そのほか、以下のような変形が可能である。
【0048】
上記実施例では、複数の基準画像データを取得する際の「変動範囲」が予め設定されていることとした。これに対して、変動範囲は、一旦、基準オフセット位置が設定された後に、初期の範囲よりも狭い範囲(例えば、初期の変動範囲の半分)に制限してもよい。基準オフセット位置が一度設定されれば、次の読取ラインにおいて急激に基準オフセット位置が変動することはなく、変動範囲を狭く設定したとしてもその中から読取画像データに近似する基準画像データを適切に選択することが可能であるからである。よって、近似する基準画像データのオフセット位置に応じて基準オフセット位置を変更することで、生成する基準画像データの数を削減することが可能になる。
【0049】
上記実施例では、読取部400は、搬送部300によって搬送される印刷媒体Pから画像を読み取っている。これに対して、印刷媒体Pが固定され、読取部400が移動することで画像を読み取ることとしてもよい。つまり、印刷媒体は、読取部400に対して相対的に移動すればよい。
【0050】
上記実施例では、印刷装置10はラインプリンターであることとしたが、シリアルプリンターでもよい。また、印刷装置10は、インクジェット方式に限られず、レーザー方式や熱転写方式であってもよい。
【0051】
上記実施例では、印刷媒体としてロール状の印刷媒体Pを用いたが、印刷媒体は、A4サイズやA3サイズなど、予め裁断された用紙であっても良い。また、印刷媒体は紙に限られず、フィルム状の印刷媒体や樹脂製の印刷媒体など、種々の印刷媒体を適用可能である。
【符号の説明】
【0052】
10…印刷装置
200…ヘッドユニット
210…インク吐出ノズル
300…搬送部
310,320…搬送ローラー
330…搬送ベルト
400…読取部
500…制御部
510…CPU
520…印刷制御部
530…読取制御部
540…画像処理部
550…不良検出部
570…記憶部
571…読取画像バッファー
572…印刷画像バッファー
573…基準画像バッファー
574…元画像バッファー
600…表示部
700…インターフェース
P…印刷媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データによって表される画像が複数のノズルを備える印刷ヘッドによって印刷され搬送部によって搬送方向に相対移動される印刷媒体に基づき、不良ノズルを検出する不良ノズル検出装置であって、
前記画像データに基づいて、前記搬送方向に沿った画素位置をそれぞれ異なるオフセット量だけずらした複数の基準画像データを生成する基準画像生成部と、
前記搬送部によって相対移動されている印刷媒体から画像を読み取って読取画像データを生成する読取部と、
前記複数の基準画像データの中から前記読取画像データとの比較に用いる基準画像データを選択する選択部と、
前記読取画像データと前記選択された基準画像データとの比較に基づき、前記複数のノズルの中から不良ノズルを検出する検出部と、
を備える不良ノズル検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の不良ノズル検出装置であって、
前記基準画像生成部は、前記選択部が選択した基準画像データに対応するオフセット位置を基準位置として、前記複数の基準画像データの生成を行う、不良ノズル検出装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の不良ノズル検出装置であって、
前記基準画像生成部が生成する基準画像データの数は、想定される前記印刷媒体の搬送のズレ量に基づいて設定される、不良ノズル検出装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の不良ノズル検出装置であって、
前記基準画像生成部は、前記複数の基準画像データのそれぞれの画素位置を、前記検出部における前記比較において許容可能な前記搬送のズレ量の倍以下ずつ前記搬送方向に沿って段階的にずらして前記複数の基準画像データを生成する、不良ノズル検出装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の不良ノズル検出装置であって、
前記搬送部を備える、不良ノズル検出装置。
【請求項6】
前記印刷ヘッドと、
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の不良ノズル検出装置と、
を備える印刷装置。
【請求項7】
不良ノズル検出方法であって、
画像データによって表される画像が複数のノズルを備える印刷ヘッドによって印刷された印刷媒体を搬送方向に相対移動させる搬送工程と、
前記画像データに基づいて、前記搬送方向に沿った画素位置をそれぞれ異なるオフセット量だけずらした複数の基準画像データを生成する基準画像生成工程と、
前記搬送部によって相対移動されている印刷媒体から画像を読み取って読取画像データを生成する読取工程と、
前記複数の基準画像データの中から前記読取画像データとの比較に用いる基準画像データを選択する選択工程と、
前記読取画像データと前記選択された基準画像データとの比較に基づき、前記複数のノズルの中から不良ノズルを検出する検出工程と、
を備える不良ノズル検出方法。
【請求項8】
コンピュータープログラムであって、
搬送機構を制御して、画像データによって表される画像が複数のノズルを備える印刷ヘッドによって印刷された印刷媒体を搬送方向に相対移動させる搬送機能と、
前記画像データに基づいて、前記搬送方向に沿った画素位置をそれぞれ異なるオフセット量だけずらした複数の基準画像データを生成する基準画像生成機能と、
前記搬送部によって相対移動されている印刷媒体から画像を読み取って読取画像データを生成する読取機能と、
前記複数の基準画像データの中から前記読取画像データとの比較に用いる基準画像データを選択する選択機能と、
前記読取画像データと前記選択された基準画像データとの比較に基づき、前記複数のノズルの中から不良ノズルを検出する検出機能と、
をコンピューターに実現させるコンピュータープログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−240244(P2012−240244A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110205(P2011−110205)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】