説明

不要波除去受信装置

【課題】従来のアナログ的な不要波除去の手法は、不要波の電力が高いと受信してしまい効果が低下する課題があった。この結果、所望波及び不要波が混在した受信データをソフトウェアで分析し、不要波を除去する必要があり、処理負荷が高くなる課題があった。またアナログ的手法では、必要とする所望波の条件を容易に変更することは不可能であった。
【解決手段】不要波を、受信部100の諸元検出部5にFPGA(Field Programmable Gate Array)等の高集積回路を用いてデジタル的に除去する。諸元検出部5に所望波の周
波数及びパルス幅有効範囲を設定し、受信データが有効範囲外であれば不要波と判定し除去する。信号処理部200では所望波のみ分析するため、処理負荷が軽減される。また諸元検出部5への所望波の設定条件は、テーブルデータ作成部8を持つことにより容易に変更できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、所望波と不要波が混在する電波環境下において、不要波を除き、所要波のみ受信することを可能にした不要波除去受信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のアナログ的な不要波除去の手法は、不要波の電波源に近づくか、または不要波の周波数またはスペクトラムが瞬時受信帯域の周波数に近づくと、不要波の電力が高くなり不要波除去効果が低下するという問題があった。この効果の低下を補うためには、受信データをソフトウェアで分析し、所望波と不要波を切り分ける必要があり、大規模なソフトウェア構成、それに伴う高い処理負荷に対応した部品選定が必要など、多くの問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−224325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来は、不要波を除去する手法として、受信ビームの低サイドローブ化、瞬時受信帯域幅の狭帯域化、またはこれらの組み合わせによる振幅スレッショルドを用いた不要波除去等のアナログ的手法が採用されているが、メインローブ外または瞬時受信帯域外の不要波でも振幅スレッショルドを超える高い電力の場合は効果が得られないという問題点があり、さらにメインビーム内で、且つ瞬時受信帯域内に存在する不要波は所望波と同等に受信されることとなり、ソフトウェアにて受信データを分析し不要波を除去するため、処理負荷が高くなるという問題があった。またアナログ部品を用いて回路を組んでいるため、容易に所望波の条件を変更できないという問題があった。
【0005】
この発明は、このような問題を解決するためになされたもので、簡単な構成で高い不要波除去効果が得られ、しかも容易に所望波の条件を変更可能な不要波除去受信装置を得ようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る不要波除去受信装置は、所望波と不要波が混在している電波環境下において電波を受信する受信部に、受信電波の周波数とパルス幅を別々に算出する周波数・パルス幅算出部と、該周波数・パルス幅算出部から得られた周波数データを予め設定された周波数有効範囲と、また、パルス幅データを予め設定されたパルス幅有効範囲とそれぞれ比較して不要波を判定し除去する諸元検出部とを備え、前記諸元検出部は、所望波の受信データのみを信号処理部へ出力するようにしたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、所望波に不要波が混在することを前提条件とし、周波数データ及びパルス幅データで不要波の判定を行うようにしているので、高い電力の不要波でも除去が可能となる。これにより瞬時受信帯域内の不要波も除去でき、瞬時受信帯域幅の広帯域化が可能となる。また、信号処理部では分析対象が所望波のみとなることによって分析パルス数が減り、処理負荷が軽減される。さらにまた、所望波毎に設定テーブルを持ち、短時間に切り替えることにより複数の所望波を受信することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1に係る不要波除去受信装置の構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1における諸元検出部の構成を示すブロック図である。
【図3】実施の形態1の諸元検出部による不要波除去シーケンスを示す図である。
【図4】実施の形態1における所望波有効条件の変更を説明する図である。
【図5】この発明による不要波除去の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
この発明の実施の形態1に係る不要波除去受信装置を図1を用いて説明する。この発明の不要波除去受信装置は、アンテナ部1と、受信部100と、信号処理部200と、デーブルデータ作成部8と、テーブルデータ記録部9とから構成される。
【0010】
受信部100は、前置増幅部2、周波数変換部3、周波数・パルス幅算出部4、諸元検出部(所望波/不要波判定回路を含む)5、及びデータ蓄積メモリ6を備えている。信号処理部200は、パルス分析・識別処理部7及び制御部10を含む。
【0011】
アンテナ部1で受信された信号は、受信部100の前置増幅器2で増幅され、周波数変換部3で中間周波数に変換される。中間周波数に変換された信号は、次段の周波数・パルス幅算出部4に送られ、信号の周波数とパルス幅が算出される。ここで算出された周波数データとパルス幅データは別々に諸元検出部5に送られる。諸元検出部5では、周波数データ及びパルス幅データが同一パルスのデータであるか一致判定が行われ、さらに、一致と判定されたデータが所望波であるか、または不要波であるか判定され、所望波のみがデータ蓄積メモリ6へ出力される。データ蓄積メモリ6では、蓄積パルス数の上限或いは蓄積時間の上限のどちらかに達すると、蓄積したパルス列のデータがパルス分析・識別処理部7へ転送され、ソフトウェアにて分析が実施される。
【0012】
諸元検出部5で所望波・不要波の判定に使われる周波数有効範囲及びパルス幅有効範囲のデータは、テーブルデータ作成部8で受信目標毎に作成され、テーブルデータ記録部9へ記録される。記録されたテーブルデータは、受信開始前に、制御部10へロードされ、制御部10から諸元検出部5へ送られ、周波数有効範囲設定及びパルス幅有効範囲設定が行われる。
【0013】
次に、諸元検出部5の構成の詳細及び不要波除去シーケンスを図2及び図3を用いて説明する。図2において、諸元検出部5は、例えば、高集積回路FPGA(Field Programmable Gate Array)で構成されており、一致検出部13と所望波/不要波判定回路14からなる。一致検出部13には、前段の周波数・パルス幅検出部4から受信波の周波数データ11とパルス幅データ12が入力される。所望波/不要波判定回路14には、制御部10から周波数有効範囲データ15及びパルス幅有効範囲データ16が加えられ設定が行なわれる。所望波/不要波判定回路14の出力は次段のデータ蓄積メモリ6へ供給される。
【0014】
図3は諸元検出部5の不要波除去シーケンス(パルス毎)を示す図である。図3において、受信部100の周波数・パルス幅算出部4からそれぞれ周波数データ11及びパルス幅データ12が1パルス毎に出力され、諸元検出部5の一致検出回路13でそれぞれのデータ入力タイミングが一致しているかを判定する(ステップS1)。一致する場合(Yes)は所望波/不要波判定回路14へパルスデータ(周波数、パルス幅)として出力される。所望波/不要波判定回路14では、周波数有効範囲データ15を基準に、周波数範囲は有効かを判定し(ステップS2)、有効(Yes)なら、さらにパルス幅有効範囲データ15を基準に、パルス幅範囲は有効かを判定し(ステップS3)、有効(Yes)なら、出力であるパルスデータをデータ蓄積メモリ6へ出力する(ステップS4)。ステップS1〜S3において、判定がNoの場合はデータそのものを破棄する。
【0015】
このように、所望波/不要波判定回路14は、予め受信前に設定された周波数有効範囲及びパルス幅有効範囲から、パルスデータが所望波か不要波か判定し、所望波と判定した場合のみデータ蓄積メモリ6へ出力し、有効範囲外の場合は不要波と判定してデータを破棄する。上記一連のシーケンスは、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の高
集積回路で実現することにより、周波数有効範囲設定及びパルス幅有効範囲設定を容易に変更可能とし、且つ小型化できる。
【0016】
次に、受信したい電波が複数目標の場合、複数目標に対応するための所望波/不要波判定データの変更について図4を用いて説明する。ここでは、図1におけるテーブルデータ作成部8において、受信したい目標毎にテーブルデータを作成し、テーブルデータ記録部9の格納テーブルに記録する。システムから複数目標の受信を命令された場合、該当するテーブルデータをテーブルデータ記録部9から制御部10へロードする。
【0017】
このとき、制御部10では、各目標毎の周波数有効範囲データ及びパルス幅有効範囲データをデータとして持ち、各目標の受信が開始される直前に諸元検出部5へ、目標1の周波数有効範囲及びパルス幅有効範囲を設定する。同様に、目標2へ受信同調が切り替わる際に、この目標に対応した周波数有効範囲及びパルス幅有効範囲に諸元検出部5の設定を切替えて第2の目標の受信へ移行する。以降、同様の処理を繰り返し、目標nの受信完了後に最初の目標1へ順番が戻る。このように目標毎にテーブルデータを持つことによって、所望波の周波数有効範囲設定及びパルス幅有効範囲設定が容易に変更可能となる。
【0018】
図5は周波数データとパルス幅データとの比較により所望波を分離する状況を示したものである。図5(a)は不要波除去前の受信信号パルスの周波数−パルス幅分布を、図5(b)は不要波除去後の受信信号パルスの周波数−パルス幅分布を示している。図5(a)の場合、データ蓄積メモリが不要波パルスデータで飽和してしまうのに対して、図5(b)の場合、所望波パルスデータをデータ蓄積メモリに確実に蓄積できる。
【符号の説明】
【0019】
1 アンテナ部、
2 前置増幅器、
3 周波数変換部、
4 周波数・パルス幅算出部、
5 諸元検出部、
6 蓄積メモリ、
7 パルス分析・識別処理部、
8 テーブル作成部、
9 テーブルデータ記録部、
10 制御部、
11 周波数データ、
12 パルス幅データ、
13 一致検出回路、
14 所望波/不要波判定回路、
15 周波数有効範囲データ、
16 パルス幅有効範囲データ、
100 受信部、
200 信号処理部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望波と不要波が混在している電波環境下において電波を受信する受信部に、受信電波の周波数とパルス幅を別々に算出する周波数・パルス幅算出部と、該周波数・パルス幅算出部から得られた周波数データを予め設定された周波数有効範囲と、また、パルス幅データを予め設定されたパルス幅有効範囲と比較して不要波を判定し除去する諸元検出部とを備え、前記諸元検出部は、所望波の受信データのみを信号処理部へ出力することを特徴とする不要波除去受信装置。
【請求項2】
前記諸元検出部は、所望波/不要波の判定をFPGA(Field Programmable Gate Array)で行うことを特徴とする請求項1に記載の不要波除去受信装置。
【請求項3】
前記周波数有効範囲及びパルス幅有効範囲は、前記FPGAに設定されることを特徴とする請求項2に記載の不要波除去受信装置。
【請求項4】
前記周波数有効範囲及びパルス幅有効範囲は、予めテーブルデータとして作成され、電波の受信に先立って前記諸元検出部に設定されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の不要波除去受信装置。
【請求項5】
前記周波数有効範囲及びパルス幅有効範囲は、テーブルデータ記録部に記録されていることを特徴とする請求項4に記載の不要波除去受信装置。
【請求項6】
前記テーブルデータ記録部は、受信目標が複数あるときは、受信目標毎にテーブルデータを記録していることを特徴とする請求項5に記載の不要波除去受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−2638(P2012−2638A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137242(P2010−137242)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】