説明

両軸受リールのスプール制動装置

【課題】釣りの条件がある程度変化しても、制動力の強弱の設定をし直す必要がないようにする。
【解決手段】スプール制動機構25は、スプールを制動する装置であって、スプール制動ユニット40と、制御部55と、を備えている。制御部55は、第1制動力でスプール制動部を制御し、その後張力検出部で検出された検出張力が参照張力以下になると第2制動力で制動部を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制動装置、特に、リール本体に回転自在に装着されたスプールを制動する両軸受リールのスプール制動装置に関する
【背景技術】
【0002】
両軸受リール、特に、釣り糸の先端に仕掛け等の仕掛けを装着してキャスティングするベイトキャスティングリールには、キャスティング時のバックラッシュを防止するためにスプールを制動するスプール制動装置が設けられている。この種のスプール制動装置において、従来は、遠心力を利用した遠心式のものや磁石で生じる渦電流を用いた磁石式のもの等の機械的なスプール制動装置が用いられている。このような機械式のスプール制動装置では、スプールに作用する制動力の強弱を、リール本体のハンドル装着側と逆側の側面に設けられた調整ダイヤルで調整できる(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、機械式のスプール制動装置では、制動力のキャスティング途中の制動力を自由に制御できない。そこで、最近では、スプールに作用する制動力を電気的に制御可能なものが開発されている(たとえば、特許文献2参照)。
【0004】
従来の電気制御可能な両軸受リールのスプール制動装置は、スプールとリール本体との間に磁石とコイルとからなる発電機構を設け、それを電気的に制御してキャスティング途中の制動力を調整している。
【0005】
従来のスプール制動装置は、スプールに設けられた磁石と、リール本体に設けられたコイルと、釣り糸に作用する張力を検出する張力検出手段と、検出張力から制動開始時期を決定し、コイルに流れる電流を制御する制御機構とを備えている。従来の両軸受リールのスプール制動装置では、キャスティング開始からの張力の変化を検出し、張力が所定値以下になったときに、徐々に制動力が小さくなる制動パターンで制動力を制御している。
【0006】
また、スプールに作用する制動力の強弱を複数段階に制御するために、リール本体のハンドル装着側と逆側の側面に制動力の強弱を調整するための調整用の調整ダイヤルを設けている。調整ダイヤルでは、たとえば制動力の強弱を8段階に設定可能である。この8段階の制動パターンは、基準となる制動パターンを強弱方向にシフトして設定されている。
【特許文献1】特開2001−095443号公報
【特許文献2】特開2004−208630号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記従来の構成では、機械式及び電気制御式のスプール制動装置のいずれにおいても、仕掛けの質量や釣り場の風向き等の釣りの条件に応じて、調整ダイヤルを操作して制動力の強弱を制御する。そして、調整ダイヤルを操作して仕掛けの飛距離が最大となる設定を見つけている。しかし、仕掛けの質量が変わったり風向きが変わったりして釣りの条件が変化すると、飛距離が変化する。したがって、従来のスプール制動装置では、釣りの条件が変化する都度、調整ダイヤルを操作して制動力の強弱の設定をし直す必要がある。
【0008】
本発明の課題は、釣りの条件がある程度変化しても、制動力の強弱の設定をし直す必要がないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明1に係る両軸受リールのスプール制動装置は、リール本体に回転自在に装着され釣り糸を巻付可能なスプールを制動する装置であって、スプール制動部と、第1制動力設定部と、張力設定部と、張力検出部と、第2制動力設定部と、スプール制御部と、を備えている。スプール制動部は、スプールを電気的に制御可能に制動するものである。第1制動力設定部は、時間経過とともに減少する第1制動力を設定するものである。張力設定部は、時間経過とともに少なくとも一部で減少する参照張力を設定するものである。張力検出部は、釣り糸に作用する張力を検出するものである。第2制動力設定部は、第1制動力を基準として制動力を増加させた第2制動力を設定するものである。スプール制御部は、第1制動力でスプール制動部を制御し、その後張力検出部で検出された検出張力が参照張力以下になると第2制動力で制動部を制御する。
【0010】
この両軸受リールのスプール制動装置では、釣り糸がスプールから送出されると、釣り糸に作用する張力を検出する。そして、まず第1制動力によりスプールを制動する。第1制動力による制動開始した後、検出張力が参照張力以下になると、第2制動力でスプールを制動する。この第2制動力は、第1制動力を基準として制動力を増加させた制動力である。
【0011】
このスプール制動装置では、検出張力が予め設定された参照張力以下になると、第1制動力を基準に制動力を増加させた第2制動力でスプールを制動する。このため、比較的強い張力が常に作用する場合には、検出張力が参照張力を超える頻度が高くなり、制動力が比較的弱い第1制動力だけで制動される割合が多くなる。このため、たとえば、重い仕掛けを使用した場合や追い風の場合には、弱い制動力でスプールが制動される。また、弱い張力が作用する場合は、検出張力が参照張力以下になる頻度が高くなり、制動力が比較的強い第2制動力で制動される割合が多くなる。このため、たとえば、軽い仕掛けを使用する場合や向かい風の場合には、強い制動力でスプールが制動される。
【0012】
ここでは、検出張力が参照張力を超えていると、弱い第1制動力で制動し、検出張力が参照張力以下になると第1制動力を基準として制動力を増加させた強い第2制動力でスプールを制動する。したがって、釣りの条件に応じて制動力の強弱が自動的に制御される。このため、釣りの条件がある程度変化しても、制動力の強弱の設定をし直す必要がなくなる。
【0013】
発明2に係る両軸受リールのスプール制動装置は、発明1に記載の装置において、検出張力が参照張力以下になるとスタートするタイマ部をさらに備え、スプール制御部は、タイマ部がタイムアップすると、第2制動力で制動部を制御する。この場合には、タイマ部がスタートしてタイムアップするまでの張力の状態を監視する。そして、タイマ部がタイムアップするまでに、検出張力が参照張力を超えるとそのまま第1制動力で制動する。
【0014】
ここでは、検出張力が参照張力以下になるとただちに制動力が強い第2制動力で制動するのではなく、タイマ部がタイムアップするまで待つので、第2制動力による制動の頻度が減り、頻繁に強い制動力で制動される現象が生じにくくなり、仕掛けをさらに遠くに飛ばすことができる。
【0015】
発明3に係る両軸受リールのスプール制動装置は、発明2に記載の装置において、タイマ部は、キャスティング後の1回目に動作するタイマ値が2回目以降に動作するタイマ値より小さい。この場合には、2回目以降に第2制動力で制動する場合には、1回目より待ち時間が長くなるので、強い第2制動力で制動される現象がさらに頻繁に生じにくくなり、仕掛けをさらに遠くに飛ばすことができる。
【0016】
発明4に係る両軸受リールのスプール制動装置は、発明1から3のいずれかに記載の装置において、スプールの回転速度を検出する速度検出部をさらに備え、スプール制御部は、速度検出部で検出された回転速度の減少に応じて第1制動力を減少させる。この場合には、第1制動力が回転速度に応じて減少するので、減少割合を設定することにより、磁石式の制動装置や遠心式の制動装置などの制動特性に合わせることができる。
【0017】
発明5に係る両軸受リールのスプール制動装置は、発明5に記載の装置において、スプール制御部は、検出された回転速度の二乗に比例して第1制動力を減少させる。この場合には、スプールの回転速度の二乗で第1制動力が減少するので、遠心式の制動装置の特性に合わせた第1制動力を得ることができる。
【0018】
発明6に係る両軸受リールのスプール制動装置は、発明1から5のいずれかに記載の装置において、スプール制動部は、検出張力が所定値以下になると制動制御を開始する。この場合には、キャスティング当初から徐々にスプールの回転が増加するにつれて減少する検出張力が所定値以下になると、制動を開始するので、検出張力が0に近くなるスプールの最大回転数前に制動することができ、糸ふけを確実に防止できる。また、仕掛けを安定して飛ばすことができる。
【0019】
発明7に係る両軸受リールのスプール制動装置は、発明4から6のいずれかに記載の装置において、スプール制御部は、検出された回転速度の減少に応じて参照張力を減少させる。この場合には、キャスティング後に減少する回転速度に応じて参照張力が減少するので、キャスティングの時間経過に伴って減少する検出張力に沿って参照張力を設定できる。
【0020】
発明8に係る両軸受リールのスプール制動装置は、発明1から7のいずれかに記載の装置において、第1制動力設定部及び第2制動力設定部は、制動力が異なる複数の第1制動力及び第2制動力をそれぞれ設定可能であり、複数の第1制動力及び複数の第2制動力のいずれか一つの組み合わせを選択する制動力選択部をさらに備える。この場合には、たとえば釣り糸の種類などの条件に応じて、第1制動力及び第2制動力を変更することができるので、釣り糸の種類等の条件に応じた最適の条件で仕掛けの飛距離を伸ばすことができる。
【0021】
発明9に係る両軸受リールのスプール制動装置は、発明8に記載の装置において、参照張力設定部は、複数の第1制動力に応じた複数の参照張力を設定可能である。この場合には、参照張力を、たとえば釣り糸の種類等に応じて変更することができるので、釣り糸の種類等の条件に応じた最適の条件で仕掛けの飛距離をさらに伸ばすことができる。
【0022】
発明10に係る両軸受リールのスプール制動装置は、発明2から9のいずれかに記載の装置において、第2制動力の時間的な減衰率を設定する減衰率設定部をさらに備え、スプール制御部は、タイマ部がタイムアップした後の弟子間経過に伴って、設定された減衰率で減衰するように第2制動力を減衰させる。この場合には、第2制動力が減衰するので、その減衰率を適宜に選択することにより、強い制動力を作用させる時間を減少させて仕掛けの飛距離をさらに伸ばすことができる。
【0023】
発明11に係る両軸受リールのスプール制動装置は、リール本体に回転自在に装着され釣り糸を巻付可能なスプールを制動する装置であって、第1スプール制動部と、第2スプール制動部と、張力設定部と、張力検出部と、第2制動力設定部と、スプール制御部と、を備えている。第1スプール制動部は、スプールを回転数に応じた第1制動力で制動するものである。第2スプール制動部は、スプールを電気的に制御可能な第2制動力で制動するものである。張力設定部は、参照張力を設定するものである。張力検出部は、釣り糸に作用する張力を検出するものである。第2制動力設定部は、第1制動力より制動力を増加させた第2制動力を設定するものである。スプール制御部は、張力検出部で検出された検出張力が参照張力以下になると第2制動力で第2スプール制動部を制御するスものである。
【0024】
このスプール制動装置では、検出張力が予め設定された参照張力以下になると、第1スプール制動部による第1制動力に加えて第2スプール制動部による第2制動力でスプールを制動する。このため、比較的強い張力が常に作用する場合には、検出張力が参照張力を超える頻度が高くなり、第1制動力だけで制動される割合が多くなる。このため、たとえば、重い仕掛けを使用した場合や追い風の場合には、弱い制動力でスプールが制動される。また、弱い張力が作用する場合は、検出張力が参照張力以下になる頻度が高くなり、第1制動力と第2制動力とで制動される割合が多くなる。このため、たとえば、軽い仕掛けを使用する場合や向かい風の場合には、強い制動力でスプールが制動される。
【0025】
ここでは、検出張力が参照張力を超えていると、弱い第1制動力で制動し、検出張力が参照張力以下になると第1制動力と第2制動力とでスプールを制動する。したがって、釣りの条件に応じて制動力の強弱が自動的に制御される。このため、釣りの条件がある程度変化しても、制動力の強弱の設定をし直す必要がなくなる。
【0026】
発明12に係る両軸受リールのスプール制動装置は、発明11に係る装置において、第1スプール制動部は、スプールと一体回転可能に設けられスプールの回転により生じる遠心力により径方向外方に移動可能な制動シューと、リール本体に制動シューの外周側に設けられ制動シューが接触可能な制動ドラムと、を有する。この場合には、第1制動力が作用すると、遠心力を利用してスプールの回転速度の二乗に比例した制動力でスプールを制動できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、検出張力が設定張力を超えると、弱い第1制動力で制動され、検出張力が設定張力以下になると第1制動力を基準として制動力を増加させた強い第2制動力でスプールを制動するので、釣りの条件に応じて制動力の強弱が制御される。このため、釣りの条件がある程度変化しても、制動力の強弱の設定をし直す必要がなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
〔リールの構成〕
図1及び図2において、本発明の一実施形態による両軸受リールは、ベイトキャスティング用のロープロファイル形の両軸受リールである。このリールは、リール本体1と、リール本体1の側方に配置されたスプール回転用ハンドル2と、ハンドル2のリール本体1側に配置されたドラグ調整用のスタードラグ3とを備えている。
【0029】
ハンドル2は、アーム部2aと、アーム部2aの両端に回転自在に装着された把手2bとを有するダブルハンドル形のものであり、アーム部2aは、図2に示すように、ハンドル軸30の先端に回転不能に装着されており、ナット28によりハンドル軸30に締結されている。
【0030】
リール本体1は、例えばマグネシウム合金などの軽金属製の部材であり、フレーム5と、フレーム5の両側方に装着された第1側カバー6及び第2側カバー7とを有している。リール本体1の内部には糸巻用のスプール12がスプール軸20(図2)を介して回転自在に装着されている。
【0031】
フレーム5内には、図2に示すように、スプール12と、サミングを行う場合の親指の当てとなるクラッチレバー17(図1)と、スプール12内に均一に釣り糸を巻くためのレベルワインド機構18とが配置されている。またフレーム5と第2側カバー7との間には、ハンドル2からの回転力をスプール12及びレベルワインド機構18に伝えるためのギア機構19と、スプール12とハンドル2との連結・遮断するクラッチ機構21と、クラッチレバー17の操作に応じてクラッチ機構21を制御するためのクラッチ制御機構22と、スプール12を制動するドラグ機構23と、スプール12の回転時の抵抗力を調整するためのキャスティングコントロール機構24とが配置されている。また、フレーム5と第1側カバー6との間には、キャスティング時のバックラッシュを抑えるための電気制御式のブレーキ機構(スプール制動装置の一例)25が配置されている。
【0032】
フレーム5は、所定の間隔をあけて互いに対向するように配置された1対の側板8,9と、これらの側板8,9を一体で連結する複数の連結部10aと、を有している。側板8には、円形の開口8aが形成されている。この開口8aには、リール本体1を構成するスプール支持部13が着脱自在に固定されている。スプール支持部13にはスプール12の一端を支持する軸受26aが収納される軸受収納部14が設けられている。スプール支持部13は開口8aに形成された雌ねじ部に螺合する雄ねじ部を有しており、開口8aにねじ込み固定されている。
【0033】
スプール12は、両側部に皿状のフランジ部12aを有しており、両フランジ部12aの間に筒状の糸巻胴部12bを有している。図2左側のフランジ部12aの外周面は、糸噛みを防止するために開口8aの内周側に僅かな隙間をあけて配置されている。スプール12は、糸巻胴部12bの内周側を貫通するスプール軸20にたとえばセレーション結合により回転不能に固定されている。
【0034】
スプール軸20は、たとえばSUS304等の非磁性金属製であり、側板9を貫通して第2側カバー7の外方に延びている。その延びた一端は、第2側カバー7に装着されたボス部7bに軸受26bにより回転自在に支持されている。またスプール軸20の他端は軸受26bにより回転自在に支持されている。スプール軸20の中心には、大径部20aが形成されており、両端に軸受26a,26bに支持される小径部20b,20cが形成されている。なお、軸受26a、26bは転がり部材と内輪及び外輪とがSUS404C製でその表面を改質して耐食性を向上させた転がり軸受である。
【0035】
さらに、図1左側の小径部20cと大径部20aとの間には両者の中間の外径を有する、後述する磁石61を装着するための磁石装着部20dが形成されている。磁石装着部20dには、たとえば、SUM(押出・切削)等の鉄材の表面に無電界ニッケルめっきを施した磁性体製の磁石保持部27がたとえばセレーション結合により回転不能に固定されている。磁石保持部27は、断面が正方形で中心に磁石装着部20dが貫通する貫通孔27aが形成された四角柱状の部材である。磁石保持部27の固定方法はセレーション結合に限定されず、キー結合やスプライン結合等の種々の結合方法を用いることができる。
【0036】
スプール軸20の大径部20aの右端は、側板9の貫通部分に配置されており、そこにはクラッチ機構21を構成する係合ピン29が固定されている。係合ピン29は、直径に沿って大径部20aを貫通しており、その両端が径方向に突出している。
【0037】
クラッチレバー17は、図1に示すように、1対の側板8,9間の後部でスプール12後方に配置されている。クラッチレバー17はクラッチ制御機構22に連結されており、側板8,9間で上下方向にスライドして、クラッチ機構21を連結状態と遮断状態とに切り換える。
【0038】
ギア機構19は、ハンドル軸30と、ハンドル軸30に固定されたメインギア31と、メインギア31に噛み合う筒状のピニオンギア32とを有している。ハンドル軸30は、側板9及び第2側カバー7に回転自在に装着されており、ローラ型のワンウェイクラッチ86及び爪式のワンウェイクラッチ87により糸繰り出し方向の回転(逆転)が禁止されている。ワンウェイクラッチ86は、第2側カバー7とハンドル軸30との間に装着されている。メインギア31は、ハンドル軸30に回転自在に装着されており、ハンドル軸30とドラグ機構23を介して連結されている。
【0039】
ピニオンギア32は、側板9の外方から内方に延び、中心にスプール軸20が貫通する筒状部材であり、スプール軸20に軸方向に移動自在に装着されている。また、ピニオンギア32の図2左端側は、軸受33により側板9に回転自在かつ軸方向移動自在に支持されている。ピニオンギア32の図2左端部には係合ピン29に噛み合う噛み合い溝32aが形成されている。この噛み合い溝32aと係合ピン29とによりクラッチ機構21が構成される。また中間部にはくびれ部32bが、右端部にはメインギア31に噛み合うギア部32cがそれぞれ形成されている。
【0040】
クラッチ制御機構22は、スプール軸20方向に沿って移動するクラッチヨーク35を有している。また、クラッチ制御機構22は、スプール12の糸巻取方向の回転に連動してクラッチ機構21をクラッチオンさせるクラッチ戻し機構(図示せず)を有している。
【0041】
キャスティングコントロール機構24は、スプール軸20の両端を挟むように配置された複数の摩擦プレート51と、摩擦プレート51によるスプール軸20の挟持力を調節するための制動キャップ52とを有している。左側の摩擦プレート51は、スプール支持部13内に装着されている。
【0042】
〔スプール制動機構の構成〕
スプール制動機構(スプール制動装置の一例)25は、図3に示すように、スプール12とリール本体1とに設けられたスプール制動ユニット(スプール制動部の一例)40と、釣り糸に作用する張力を検出するための回転速度センサ(速度検出部の一例)41と、スプール制動ユニット40を後述する4つの制動モードのいずれかで電気的に制御するスプール制御ユニット42と、4つの制動モードを選択するためのモードつまみ(制動力選択部の一例)43とを有している。
【0043】
スプール制動ユニット40は、スプール12を発電により制動する電気的に制御可能なものである。スプール制動ユニット40は、スプール軸20に回転方向に並べて配置された複数(たとえば4つ)の磁石61を含む回転子60と、回転子60の外周側に対向して配置され直列接続された複数(たとえば4つ)のコイル62と、直列接続された複数のコイル62の両端が接続されたスイッチ素子63とを備えている。スプール制動ユニット40は、磁石61とコイル62との相対回転により発生する電流を、スイッチ素子63によりオンオフすることによりデューティ比を変更してスプール12を制動する。スプール制動ユニット40で発生する制動力はスイッチ素子63のオン時間が長いほど(デューティ比が大きいほど)に強くなる。
【0044】
回転子60の4つの磁石61は、周方向に並べて配置され極性が交互に異なっている。磁石61は、磁石保持部27と略同等の長さを有する部材であり、その外側面は断面円弧状の面であり、内側面は平面である。この内側面がスプール軸20の磁石保持部27の外周面に接触して配置されている。
【0045】
図2に示すように、糸巻胴部12bの内周面の磁石61に対向する位置には、たとえば、SUM(押出・切削)等の鉄材の表面に無電界ニッケルめっきを施した磁性体製のスリーブ68が装着されている。スリーブ68は、糸巻胴部12bの内周面に圧入又は接着などの適宜の固定手段により固定されている。このような磁性体製のスリーブ68を磁石61に対向して配置すると、磁石61からの磁束がコイル62を集中して通過するので、発電及びブレーキ効率が向上する。
【0046】
コイル62は、コギングを防止してスプール12の回転をスムーズにするためにコアレスタイプのものが採用されている。さらにヨークも設けられていない。コイル62は、巻回された芯線が磁石61に対向して磁石61の磁場内に配置されるように略矩形に巻回されている。4つのコイル62は直列接続されており、その両端がスイッチ素子63に接続されている。コイル62は、磁石61の外側面との距離が略一定になるようにスプール軸芯に対して実質的に同芯の円弧状にスプール12の回転方向に沿って湾曲して成形されている。このため、コイル62と回転中の磁石61との隙間を一定に維持することができる。コイル62は、後述する回路基板70に取り付けられている
スイッチ素子63は、たとえば高速でオンオフ制御できる並列接続された2つのFET(電界効果トランジスタ)63aを有している。FET63aの各ドレイン端子に直列接続されたコイル62が接続されている。このスイッチ素子63も回路基板70に装着されている。
【0047】
回転速度センサ41は、たとえば、投光部と受光部とを有する投受光型の光電スイッチを用いている。回路基板70に対向するスプール12のフランジ部12aの外側面には、回転方向に間隔を隔てて配置されたに複数のスリットを有する検出筒部12cが一体形成されており、回転速度センサ41は、検出筒部12cを挟んで投光部と受光部とが対向して配置され、スリットを通過する光によりスプール12の回転速度を検出している。
【0048】
モードつまみ43は、4つの制動モードのいずれかを選択するために設けられている。4つの制動モードは、後述する第1制動力及び第2制動力が異なる制動モードであり、Lモード(遠投モード)と、Mモード(中距離モード)と、Aモード(オールラウンドモード)と、Wモード(ウインドモード)の4つのモードである。
【0049】
ここで、Lモードは、比重の軽い釣り糸を使用し、追い風の恵まれた条件においてスプーン、メタルジグ、バイブレーションなどの空気抵抗が少なく重い仕掛け(ルアー)を超遠投するためのロングディスタンスモードである。キャスティング直後のエネルギーを極限まで利用し、最大回転数を可能な限り高め、さらに中盤以降をほとんどフリーにして飛距離を伸ばせるように考慮された制動モードであり、第1制動力が最も小さく設定されている。
【0050】
Mモードは、重心移動式プラグやペンシルベイト、バイブレーションなど空気抵抗の少ない仕掛け(プラグ)で快適に遠投できるように設定された制動モードである。キャスティング直後のオーバーランを抑えつつ、中盤以降を上手く補正してギリギリのところでバックラッシュさせずに飛距離を伸ばせるように設定している。比重の小さいポリアミド樹脂系の釣り糸を使用する場合、このモードを基準に設定するのが好ましい。
【0051】
Aモードは、キャスティング直後のエネルギーを極限まで利用しつつ、後半の伸びを重視したブレーキ設定である。釣り糸や仕掛けの種類、風向きを問わず、ほとんどの状況でオールマイティーに使用可能である。とくに、比重の重いフロロカーボン系の釣り糸を使用する場合、このモードを基準に設定するのが好ましい。
【0052】
Wモードは、完全な向かい風の中で仕掛けの飛行距離が落ちる状況でもバックラッシュを可及的に抑えて飛行距離を伸ばすモードであり、第2制動力が最も大きく設定されている。飛行中に回転して減速しやすい重心固定ミノーやフラットサイドクランクを向かい風に向かって投げる場合に最適な用に設定されている。また、ピッチングやスキッピングなどのライトキャスティングであっても低回転からしっかりとバックラッシュを防止するように設定されている。
【0053】
モードつまみ43は、第1側カバー6に回動自在かつ制動モードに応じた4つの回転位相に位置決め可能に設けられている。モードつまみ43には図示しない磁石が設けられている。回路基板70には磁石が回動する領域に間隔を隔てて配置された2つのホール素子からなるモードつまみ位置センサ45が設けられている。モードつまみ位置センサ45は、磁石の通過による2つのホール素子のオンオフの変化、具体的には、両方オン、一方オン他方オフ、一方オフ他方オン、両方オフにより、後述する制御部55は、モードつまみの回転位相を検出し、4つの制動モードのいずれかを回転位相に応じて設定する。
【0054】
スプール制御ユニット42は、スプール支持部13のスプール12のフランジ部12aに対向する面に装着された回路基板70と、回路基板70に搭載された制御部(スプール制御部の一例)55とを有している。
【0055】
回路基板70は、中心が円形に開口する座金形状のリング状の基板であり、軸受収納部14の外周側でスプール軸20と実質的に同芯に配置されている。回路基板70は、スプール支持部13に相対回動自在に装着されている。また、回路基板70は、開口8aに対して所定の位相で配置されるように位置決めされている。これにより、スプール支持部13を開口8aに対して回して着脱しても回路基板70が一定の位相で配置される。
【0056】
ここでは、回路基板70がスプール支持部13のスプール12のフランジ部12aと対向する面に装着されているので、回転子60の周囲に配置されたコイル62を回路基板70に直接取り付けることができる。このため、コイル62と回路基板70とを接続するリード線が不要になり、コイル62と回路基板70との絶縁不良を軽減できる。しかも、コイル62がスプール支持部13に取り付けられた回路基板70に装着されているので、回路基板70をスプール支持部13に取り付けるだけでコイル62もスプール支持部13に装着される。このため、スプール制動機構25を容易に組み立てできる。さらに、回路基板70がスプール支持部13に相対回転自在に装着され、かつ開口8aに対して所定の位相に位置決めされるので、回路基板70とリール本体1との位相が変化しない。このため、開閉する第1側カバー6に装着されたモードつまみ43に磁石を設け、回路基板70にホール素子を設けても、ホール素子が磁石を常に同じ位置関係で検出できる。
【0057】
制御部55は、たとえばCPU55a,RAM55b,ROM55c及びI/Oインターフェイス55d等が搭載されたマイクロコンピュータから構成されている。制御部55のROM55c(第1制動力、第2制動力設定部及び張力設定部の一例)には、制御プログラムが格納されるとともに、後述する2つの制動処理にわたる第1制動力や第2制動力やタイマなどのデータがそれぞれ4つの制御モードに応じて格納されている。また、各制御モード時の張力の参照張力や開始張力などの設定値なども格納されている。制御部55には、回転速度センサ41と、モードつまみ43の回動位置を検出するためのモードつまみ位置センサ45とが接続されている。また、制御部55には、スイッチ素子63の各FET63aのゲートが接続されている。制御部55は、各センサ41,56からの入力と後述する制御プログラムとにより、スプール制動ユニット40のスイッチ素子63をたとえば周期1/1000秒のPWM(パルス幅変調)信号によりオンオフ制御する。具体的には、制御部55は、選択された制動モードにおいて、回転速度に応じて減少するデューティ比Dでスイッチ素子63をオンオフ制御する。制御部55には電源としての蓄電素子57からの電力が供給される。この電力は回転速度センサ41とつまみ位置検出センサ56にも供給される。
【0058】
電源としての蓄電素子57は、たとえば電解コンデンサを用いており、整流回路58に接続されている。整流回路58はスイッチ素子63に接続されており、回転子60とコイル62とを有し発電機として機能するスプール制動ユニット40からの交流電流を直流に変換しかつ電圧を安定化して蓄電素子57に供給する。
【0059】
なお、これらの整流回路58及び蓄電素子57も回路基板70に搭載されている。この回路基板70に搭載されたコイル62を含む各部は、合成樹脂絶縁体製の絶縁被膜90により覆われている。絶縁被膜90は鍔付き円筒状に形成されており、コイル62と回路基板70と回路基板70に装着された電気部品と、を覆っている。ただし、回転速度センサ41の投受光部分は絶縁被膜90から露出している。
【0060】
〔実釣時のリールの操作及び動作〕
キャスティングを行うときには、クラッチレバー17を下方に押圧してクラッチ機構21をクラッチオフ状態にする。このクラッチオフ状態では、スプール12が自由回転状態になり、キャスティングを行うと仕掛けの重さにより釣り糸がスプール12から勢いよく繰り出される。このキャスティングによりスプール12が回転すると、磁石61がコイル62の内周側を回転して、スイッチ素子63をオンするとコイル62に電流が流れスプール12が制動される。キャスティング時にはスプール12の回転速度は徐々に速くなり、ピークを越えると徐々に減速する。
【0061】
仕掛けが着水すると、ハンドル2を糸巻取方向に回転させて図示しないクラッチ戻し機構によりクラッチ機構21をクラッチオン状態にし、リール本体1をパーミングしてアタリを待つ。
【0062】
〔制御部の制御動作〕
次に、キャスティング時の制御部55の概略のブレーキ制御動作について図4を参照して説明する。なお、図4では、縦軸に制動力の強さを表すデューティ比と張力と回転速度を示し、横軸にキャスティングからの時間経過を示している。また太実線で実際に制御されるデューティ比、つまり制動力が描かれている。
【0063】
キャスティングが開始され、制御部55に電源が投入されると、モードつまみ43の位置に応じて、制動モードに応じた後述する第1制動処理の第1初期制動力(デューティ比D1S)と、第2制動処理の第2初期制動力(デューティ比D2S)と、第2制動力の倍率(たとえば、1.2倍から2.5倍の範囲)と、第2制動力の減衰率RA(たとえば0.2〜0.6)と、補正制動時のタイマTNのタイマ値(たとえば、0.05秒から0.5秒の範囲)と、が制御部55にセットされる。また、検出された張力Fに対する比較対照としての参照張力Frや制動開始時点を決定する開始張力Fsもセットされる。なお、図4では、第2制動力AD1の倍率RAは、たとえば1.5で説明している。
【0064】
続いて、回転速度センサ41からの回転速度ωを読み込み、回転速度ωをもとに張力Fを算出する。
【0065】
ここで、張力Fは、スプール12の回転速度の変化率(Δω/Δt)とスプール12の慣性モーメントJとで求めることができ、キャスティングしているときにスプール12の回転速度が変化すると、このとき、もしスプール12が釣り糸からの張力を受けずに単独で自由回転していた場合の回転速度との差は釣り糸からの張力により発生した回転駆動力(トルク)によるものである。このときの回転速度の変化率を(Δω/Δt)とすると、駆動トルクTは、下記(1)式で表すことができる。
【0066】
T=J×(Δω/Δt)・・・・・(1)
(1)式から駆動トルクTが求められれば、釣り糸の作用点の半径(通常は15〜20mm)から張力を求めることができる。
【0067】
キャスティング開始から徐々に降下する張力が所定値(開始張力Fs)以下になったときに大きな制動力を作用させると、回転速度のピークの手前で仕掛けの姿勢が反転して安定して飛行することを知見した。この回転速度のピークの手前で制動して安定した姿勢で仕掛けを飛行させるために以下の制御を行う。すなわち、キャスティング当初に短時間強い制動力D1を作用させて仕掛けを反転させる第1制動処理を行い、続いて、徐々に弱くなる第1制動力と第2制動力とを組み合わせて徐々に制動していき、所定回転速度ωeまで下がるまでスプール12を制動する。ここで、第1制動力D2は制動開始時の制動力から回転速度の二乗に比例して減少する。また、第2制動力は、第1制動力に所定の倍率MPを掛けた初期値からセットされた減衰率で減少する。
【0068】
この第1制動処理と第2制動処理との2つの制動処理を制御部55は行う。第2制動処理では、少なくとも一部が時間とともに減少するように設定された参照張力Frと検出された検出張力Fとを比較し、検出張力Fが参照張力Fr以下になると、第2制動力でスプール12を制動する。この第2制動力は、第1制動力を基準にして増加させたものであり、減衰率RAに従って減衰する。具体的には、検出張力が参照張力以下になると、タイマTN(N:1,2,3・・・)がその都度作動し、タイマTNがタイムアップすると、そのときの第1制動力D2を基準にして増加した第2制動力AD1により制動する。なお、タイムアップ前に検出張力Fが参照張力Frを超えるとタイマTNはリセットされ、第2制動力AD1による制動は行われない。
【0069】
たとえば、図4では、時間ta1で検出張力Fwが参照張力Fr以下になると、タイマT1がスタートし、タイムアップするまで検出張力Fが参照張力Fr以下であったので、タイマT1がタイムアップした時点でそのときの第1制動力D21を基準に増加させた第2制動力AD1)によりスプール12を制動する。また、時間さta2でもまた検出張力Fが参照張力以下になったが、図4に破線の円内に示すように、タイマT2がタイムアップする前の時間tbで、検出張力Fが参照張力Frを超えたので、第2制動力による制動はキャンセルされている。さらに、時間ta3で再度検出張力Fが参照張力Fr以下になり、かつタイマT2がタイムアップするまでその状態が続いていたので、タイマT2がタイムアップした時点で、第2制動力AD1(=2.5×D21)で制動される。第2制動力が時間経過とともに減衰率RAに応じて減衰する。また、第2制動力AD1は、第1制動力D2以下になることはない。
【0070】
次に、具体的な制御処理について図5及び図6の制御フローチャートを参照して説明する。
【0071】
キャスティングによりスプール12が回転して蓄電素子57に電力が蓄えられ制御部55に電源が投入されると、ステップS1で初期設定が行われる。ここでは、各種のフラグや変数がリセットされる。たとえば、タイマTNの回数を示す変数Nを1にセットする。ステップS2では、後述する制御処理が開始されたか否かを示すフラグCFがオンしているか否かを判断する。まだ制御処理が始まっていない場合は、ステップS3に移行する。ステップS3では、モードつまみ位置センサ45により何れの制動モードBMn(nは1〜4の整数)が選択されたか否かを判断する。ステップS4では、制動モードを選択された制動モードBMnに設定する。具体的には、制御部55内のROM55cから制動モードBMnに応じた第1制動処理の初期制動力D1,第2制動処理の第1制動力の初期値D2S,第2制動力の増加率MP,タイマTNのそれぞれのタイマ値,第2制動力の減衰率RA及び第2制動力で制動する際に使用する参照張力Fr等の制動モードBMn毎の値が読み出されRAM55bにセットされる。なお、初期制動力D1Sは、キャスティング初期の回転速度が10000rpmのときのデューティ比である。したがって、キャスティング初期の回転速度に応じて初期制動力D1は補正される。タイマ値は、タイマTN(N:正の整数)は第2制動処理において第2制動力で制動する際にこの順で使用されるものであり、順にタイマ値が長くなるように設定されている。たとえば、タイマT1のタイマ値は0.05秒であり、タイマT2のタイマ値は0.1秒である。
【0072】
ステップS5では、回転速度センサ41からのパルスによりスプール12の回転速度ωを検出する。ステップS6では、スプール12から繰り出される釣り糸に作用する張力Fを前述したような式に基づいて回転速度ωから算出する。
【0073】
ステップS7では、算出された張力Fが開始張力Fs(たとえば、0.5〜1.5Nの範囲のいずれかの値)以下か否か判断する。開始張力Fsを超えている場合にはステップS5に戻る。
【0074】
張力Fが所定値Fs以下になるとステップS8に移行する。ステップS8では、フラグCFをオンする。ステップS9では、ステップS5で直近に検出した回転速度ωをキャスティング初期の回転速度ω1にセットする。ステップS10では、図6に示す制動処理を行う。ステップS11では、検出した回転速度ωが制御終了となる極低速の終了速度ωeになったか否かを判断する。回転速度ωが終了速度ωeに達すると、ステップS12では全てのフラグをオフし、ステップS13で全てのタイマTNをリセットしてステップS2に戻る。しかし、キャスティングが終わってスプール12の回転が停止すると、電源電圧が下がり蓄電素子57が放電するので制御部55のCPU55aはリセットされる。
【0075】
ステップS2で、フラグCFがオンしており、すでに制動処理が始まっている場合はステップS10にスキップする。
【0076】
ステップS10の制御処理では、図6のステップS20で、検出張力Fが所定値Fs以下になってから時間ts2が経過したか否かを判断する。時間ts2が経過するまではステップS21に移行し、第1制動処理を実行し、ステップS11に戻る。ステップS21の第1制動処理では、図4に示すように、ステップS4でセットされた初期制動力D1をキャスティング初期の回転速度ω1に応じて補正し、一定の制動力で時間ts2の間スプール12を制動する。
【0077】
制動を開始してから時間ts2が経過するとステップS20からステップS22に移行して第2制動処理を実行する。ステップS22では、回転速度ωを検出する。ステップS23では、張力Fを算出する。ステップS24では、フラグSFがオンしているか否かを判断する。このフラグSFは、第2制動処理をすでに開始しているか否かを判断するフラグである。フラグSFがオンしていない場合は、ステップS25に移行してフラグSFをオンする。ステップS26では、ステップS22で検出した回転速度ωを第2制動処理における初期回転速度ω2にセットする。ステップS24でフラグSFがすでにオンしている、すなわち第2制動処理がすでに開始されている場合にはステップS27に移行する。
【0078】
ステップS27では、検出張力Fが参照張力Fr以下になったか否かを判断する。検出張力Fが参照張力Fr以下になると第2制動力を作用させるために、ステップS28に移行する。ステップS28は、タイマTN(最初はタイマT1)がすでにタイムアップしているか否かを判断する。タイムアップしていないときは、ステップS29に移行し、タイマTNがスタートしているか否かを判断する。タイマTNがスタートしていないときは、ステップS30に移行してタイマTNをスタートさせメインルーチンに戻る。タイマTNがすでにスタートしているとは、ステップS30をスキップしてメインルーチンに戻る。
【0079】
タイマTNがタイムアップしているときは、ステップS28からステップS31に移行する。ステップS31では、初めて検出張力Fが参照Fr以下になった補正制動処理であるのか否かを示すフラグTFがオンしているか否かを判断する。フラグTFがオンしていないときは初めての場合であるのでステップS32に移行して次のタイマTN(たとえば、タイマT2)を準備するために変数Nを1インクリメントする。ステップS33では、フラグスTFをオンする。ステップS34では、第2制動力AD1をセットしてメインルーチンに戻る。第2制動力AD1は、図4に示すように、タイマTNがタイムアップしたときの第1制動力D2に倍率MP(たとえば、1.5)を掛けたものを第1制動力に足してセットされる。
【0080】
また、フラグTFがすでにオンしている場合には、ステップS31からステップS35に移行して第2制動力AD1の減衰処理をおこなう。具体的には、そのときの第2制動力AD1から第2制動力AD1に所定の減衰率RAを掛けたものを引いた値を新たな第2制動力AD1にセットする。ステップS36では、第1制動力D2より第2制動力AD1が弱くならないようにするために、減衰された第2制動力AD1が第1制動力D2以下か否かを判断する。第2制動力AD1が第1制動力D2l以下の場合はステップS40に移行して第1制動力D2による制動処理を行う。
【0081】
一方、検出張力Fが参照張力Frを超えている場合は、ステップS27からステップS37に移行する。ステップS37では、フラグTFがオンしているか否か、つまり、補正制動処理がすでになされているか否かを判断する。補正制動処理が行われている場合はステップS38に移行してフラグTFをオフする。補正制動処理が行われていない場合はステップS38をスキップする。ステップS39では、タイマTNをリセットし、タイマTNを初期化する。これにより、タイマTNがリセットする前に検出張力Fが参照張力Frを超えた場合に、タイマTNがタイルアップしないようにして第2制動力による制動処理をキャンセルしている。
【0082】
ステップS40では、第1制動力による制動処理を行いメインルーチンで戻る。第1制動力による制動処理では、第2初期制動力D2Sを回転速度の二乗で減少させたデューティ比(D2=D2S(ω/ω2))でスプール12を制動する。
【0083】
ここでは、検出張力Fが参照張力Frを超えていると、弱い第1制動力D2で制動し、検出張力Fが参照張力Fr以下になると第1制動力D2を基準として制動力を増加させた強い第2制動力AD1でスプール12を制動している。したがって、釣りの条件に応じて制動力の強弱が自動的に制御される。このため、釣りの条件がある程度変化しても、制動力の強弱の設定をし直す必要がなくなる。
【0084】
〔他の実施形態〕
(a)前記実施形態では、釣り糸に作用する張力をスプールの回転速度から算出したが、スプール軸にひずみゲージを装着する等などにより張力を直接検出してもよい。
【0085】
(b)前記実施形態では、発電によりスプールを制動するスプール制動ユニットを開示したが、スプール制動ユニットは、電気的に制御可能なものであればどのような構成でもよい。たとえば、電気的に制御可能なアクチュエータによりブレーキシューやブレーキパッドをドラムやディスクに接触させるようなものでもよい。
【0086】
(c)前記実施形態では、第2制動処理で時間とともに徐々に減衰する第2制動力で制動したが、一定の第2制動力で所定時間制動するようにしてもよい。また、第2制動力を回転速度の二乗に応じて減衰させてもよい。
【0087】
(d)前記実施形態では、一定の制動力で制動する第1制動処理と変化する制動力で制動する第2制動処理とで制動しているが、本発明はこれに限定されず、第2制動処理だけでスプールを制動してもよい。
【0088】
(e)前記実施形態では、電気制御可能なスプール制動機構25で第1制動力と第2制動力を組み合わせて制動しているが、本発明はこれに限定されない。
【0089】
たとえば、図7に示すように、スプール112のハンドル2装着側のフランジ部12aと側板に、遠心力を利用した機械式の遠心制動タイプのスプール制動ユニット(第2スプール制動部の一例)140を設け、スプール制動ユニット(第1スプール制動部の一例)40とでスプール112を制動するようにしてもよい。スプール制動ユニット140は、スプール112と一体回転可能な複数(たとえば6つ)の制動シュー161と、側板109に複数の制動シュー161の外周側に設けられ制動シュー161が接触可能な制動ドラム162と、を有している。制動シュー161は、段付きの複数本(たとえば6本)のガイド軸140bに径方向に移動自在に装着されている。複数のガイド軸140bは、スプール軸120の外周面に、たとえばセレーション結合により固定された装着筒部140aに放射状に立設されている。制動シュー161、スプール112が回転して遠心力が生じると制動ドラム162に接触し、スプール制動ユニット140は、スプール112の回転速度の二乗に比例して減少する第1制動力でスプール112を制動する。
【0090】
また、スプール制動ユニット40及びスプール制御ユニット42は、前記実施形態と同様な構成である。しかし、スプール制御ユニット42は、検出張力が参照張力より低くなったときにだけ、スプール制動ユニット40を制御して第2制動力でスプール112を制動する。すなわち、この実施形態では、キャスティング中は、スプール制動ユニット140でスプールを常時制動し、検出張力が参照張力以下になったときだけに、第2制動力を加えてスプール112を制動する。なお、スプール制動ユニット42での制御による第2制動力は、前記実施形態と同様でもよく、また、たとえば、第2制動力を所定時間だけ作用させるようにして前記実施形態と異ならせてもよい。
【0091】
(f)前記実施形態において、複数の第1制動力に応じた複数の参照張力を設定できるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の一実施形態を採用した両軸受リールの斜視図。
【図2】そのリール本体内部の構成を示す断面図。
【図3】そのスプール制動装置の構成を示すブロック図。
【図4】その制動動作を説明するグラフ。
【図5】そのメインルーチンの制御動作を示すフローチャート。
【図6】その制動処理ルーチンを示すフローチャート。
【図7】他の実施形態の図2に相当する図。
【符号の説明】
【0093】
25 スプール制動機構(スプール制動装置の一例)
40 スプール制動ユニット(スプール制動部及び第1スプール制動部の一例)
41 回転速度センサ(速度検出部の一例)
42 スプール制御ユニット
43 モードつまみ(制動力選択部の一例)
55 制御部(スプール制御部の一例)
55c ROM(第1制動力、第2制動力設定部及び張力設定部の一例)
140 スプール制動ユニット(第2スプール制動部の一例)
161 制動シュー
162 制動ドラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リール本体に回転自在に装着され釣り糸を巻付可能なスプールを制動する両軸受リールのスプール制動装置であって、
前記スプールを電気的に制御可能に制動するスプール制動部と、
第1制動力を設定する第1制動力設定部と、
参照張力を設定する張力設定部と、
前記釣り糸に作用する張力を検出する張力検出部と、
前記第1制動力を基準として制動力を増加させた第2制動力を設定する第2制動力設定部と、
制動開始時は前記第1制動力で前記スプール制動部を制御し、その後前記張力検出部で検出された検出張力が前記参照張力以下になると前記第2制動力で前記スプール制動部を制御するスプール制御部と、
を備えた両軸受リールのスプール制動装置。
【請求項2】
前記検出張力が前記参照張力以下になるとスタートするタイマ部をさらに備え、
前記スプール制御手段は、前記タイマ部がタイムアップすると、前記第2制動力で前記スプール制動部を制御する、請求項1に記載の両軸受リールのスプール制動装置。
【請求項3】
前記タイマ部は、キャスティング後の1回目に動作するタイマ値が2回目以降に動作するタイマ値より小さい、請求項2に記載の両軸受リールのスプール制動装置。
【請求項4】
前記スプールの回転速度を検出する速度検出部をさらに備え、
前記スプール制御部は、前記速度検出部で検出された回転速度の減少に応じて前記第1制動力を減少させる、請求項1から3のいずれか1項に記載の両軸受リールのスプール制動装置。
【請求項5】
前記スプール制御部は、前記検出された回転速度の二乗に比例して前記第1制動力を減少させる、請求項4に記載の両軸受リールのスプール制動装置。
【請求項6】
前記スプール制御部は、前記検出張力が所定値以下になると前記スプール制動部の制御を開始する、請求項1から5のいずれか1項に記載の両軸受リールのスプール制動装置。
【請求項7】
前記スプール制御部は、前記検出された回転速度の減少に応じて前記参照張力を減少させる、請求項4から6のいずれか1項に記載のスプール制動装置。
【請求項8】
前記第1制動力設定部及び第2制動力設定部は、制動力が異なる複数の前記第1制動力及び第2制動力をそれぞれ設定可能であり、
前記複数の第1制動力及び前記複数の第2制動力のいずれか一つの組み合わせを選択する制動力選択部をさらに備える、請求項1から7のいずれか1項に記載の両軸受リールのスプール制動装置。
【請求項9】
前記参照張力設定部は、複数の前記第1制動力に応じた複数の前記参照張力を設定可能である、請求項8に記載の両軸受リールのスプール制動装置。
【請求項10】
前記第2制動力の時間的な減衰率を設定する減衰率設定部をさらに備え、
前記スプール制御部は、前記タイマ部がタイムアップした後の時間経過に伴って前記設定された減衰率で減衰するように前記第2制動力を減少させる、請求項2から9いずれか1項に記載の両軸受リールのスプール制動装置。
【請求項11】
リール本体に回転自在に装着され釣り糸を巻付可能なスプールを制動する両軸受リールのスプール制動装置であって、
前記スプールを回転数に応じた第1制動力で制動する第1スプール制動部と、
前記スプールを電気的に制御可能な第2制動力で制動する第2スプール制動部と、
参照張力を設定する張力設定部と、
前記釣り糸に作用する張力を検出する張力検出部と、
前記張力検出部で検出された検出張力が前記参照張力以下になると前記第2制動力で制動するように前記スプール制動部を制御するスプール制御部と、
を備えた両軸受リールのスプール制動装置。
【請求項12】
前記第1スプール制動部は、
前記スプールと一体回転可能に設けられ前記スプールの回転により生じる遠心力により径方向外方に移動可能な制動シューと、
前記リール本体に前記制動シューの外周側に設けられ前記制動シューが接触可能な制動ドラムと、を有する、請求項11に記載の両軸受リールのスプール制動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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