説明

両面にパイルを有するベルベットリボンの製造方法、この方法を実施するためのリボン織機、およびそれにより製造されたベルベットリボン

両面パイルを有するベルベットリボンを製造するために、上下に相互に離間された3つの布帛(8、10、12)がパイル糸(14)で相互に連結された3層織物を製織する。こうして製織された前記3層織物のパイル糸(14)の中間布帛(8)と第1布帛(10)との間のパイル糸(14)を第1切断装置(36、36a)で切断する。さらに、前記中間布帛(8)と第2布帛(12)との間のパイル糸(14)を第2切断装置(46、46a)で切断すれば、前記中間布帛が両面ベルベットリボン(8)として得られる。そのためのリボン織機(2)は、上下に配置された3段の織成部(31)を有し、この織成部は各1つの緯入れ部材と共通の開口装置(16)とを備えている。中間布帛(8)と第1布帛(12)との間でパイル糸(14a)を切断するための第1切断装置(36)と、中間布帛(8)と第2布帛(10)との間でパイル糸(14b)を切断するための第2切断装置(46)が、下流側に設けられている。こうして製造されたベルベットリボン(8)は両面にパイル(56、58)を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面にパイルを有するベルベットリボンを製造するための請求項1記載の方法、この方法を実施するための請求項5記載のリボン織機、およびそれにより製造された請求項14、15記載のベルベットリボンに関する。
【背景技術】
【0002】
スイス特許第554431号明細書により、シャトルレスのリボン織機を用い、上下に離間されかつ相互にパイル糸で連結された2つの布帛を製織するベルベットリボンの製造方法が公知である。この方法によれば、それぞれの布帛の間の半分の距離でパイル糸を切断することによって、片面にパイルを有する2つのベルベットリボンが得られる。しかし、前記明細書は、両面にパイルを有するベルベットリボンを製造する可能性を何ら指摘していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、両面ベルベットリボンを製造するための方法、およびこの方法を実施するためのリボン織機を明示し、この方法に従ってもしくはこのリボン織機で製造された両面ベルベットリボンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、本発明によれば、
a)ベルベットリボンを製造するための請求項1記載の方法;
b)この方法を実施するための請求項5記載のリボン織機;
c)請求項14もしくは15記載のベルベットリボン;
によって解決される。
【0005】
上下に相互に離間された3つの布帛がパイル糸で相互に連結された3層織物を製織することによって、両面にパイル糸を有する中間布帛と、それぞれ片面にのみパイル糸を有する上側布帛および下側布帛とが得られる。先ず、第1切断装置において中間布帛と第1布帛との間でパイル糸が切断され、次いで、第2切断装置において中間布帛と第2布帛との間でパイル糸が切断される。こうして中間布帛が所望する両面ベルベットリボンを提供する一方、上側布帛と下側布帛は屑として排出される。
【0006】
種々の方法を製造に適用できる。前記3層織物がニードルリボン織機で製造される請求項2記載の方法が特に有利である。リボン織機と独立して3層織物を後加工することも想定される。しかし、請求項3のように、リボン織機で製織された直後にパイル糸が切断されることが有利である。その場合、前後に配置されて相互に独立した2つの切断装置でパイル糸を順次切断することが基本的に可能である。しかし、請求項4のように、第1、第2の切断装置を並べて配置し、第1切断装置で切断して布帛を第2切断装置に戻すことが有利である。それにより切断装置の簡素化と顕著に短い装置構造が可能となる。
【0007】
リボンを製造するためのリボン織機は、請求項5によれば、上下に相互に離間された3つの織成部を有し、前記各織成部が、それぞれ1つの緯入れ部材と、前記各布帛を結合するパイル糸を給糸するために3つの杼口を開口させる共通の開口装置とを備えている。前記織成部の下流側には、前記中間布帛と前記第1布帛との間のパイル糸を切断するための第1切断装置と、前記中間布帛と前記第2布帛との間のパイル糸を切断するための第2切断装置が設けられている。
【0008】
パイル糸の特定のパイル高さでの厳密な切断を可能とするために、請求項6によれば、切断装置にそれぞれ布帛用ガイドが配設され、これらのガイドが高さおよび/または相互距離を調整可能であることが有利である。
【0009】
請求項7のようなリボン織機、すなわち、第1、第2切断装置が並べて配置され、布帛を第2切断装置に戻すための方向転換手段が第1切断装置に付設されているリボン織機が特に有利である。それにより、請求項8のように、両方の切断装置に1つの共通する切断部材を付設することが可能になる。請求項9によれば、切断部材は往復駆動される切断刃として構成できる。請求項10によれば、循環式切断ベルトとして構成された切断部材も可能である。好適には、請求項11のように、スイス特許第554431号明細書により知られている研磨装置が切断部材に付設される。
【0010】
請求項12によれば、一般に屑として除去される切断布帛を排出する排出装置がそれぞれの切断装置に付設されている。
【0011】
種々のリボン織機が本方法を実施するのに適している。しかし、請求項13のように、上下に配置された3つの緯入れ針を有するニードルリボン織機が特に有利である。
【0012】
請求項14または15に従って製造された新規な両面ベルベットリボンは、新しい改善された応用を可能とする。
【0013】
以下、本発明の実施形態を概略図に基づいて詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1に示されるリボン織機2では、上案内板4と下案内板6との間で、中間布帛8、下側布帛10および上側布帛12が製造され、これらの布帛は布帛平面と交差する方向に延びるパイル糸14で相互に結合されている。このため開口装置16では、経糸18は綜絖20によって、3つの杼口22、24、26が生じるように案内され、これらの杼口にそれぞれ緯糸28、30、32が挿入される。各緯糸は、好ましくはリボン織機の図示しない緯針によって挿入される。各緯針は、供給されるべき緯糸28、30、32に対応して上下3段に配置され、相互に連携して一斉に動作する。各緯糸28、30、32は、筬34により、上下3段の織成部31に筬打ちされる。概略的に示された調節装置33、35で案内板4、6の相互距離を変更することにより、各布帛8、10、12相互の距離、すなわちパイル糸14の高さを調整可能である。
【0015】
織成部31の下流側に設けられた第1切断装置36は、ガイド38と切断部材40とを有し、この切断部材は、中間布帛8と上側布帛12との間のパイル糸14aを切断する。上側布帛12は、針ローラ44を有する排出装置42によって屑として排出される。第1切断装置36の下流側に設けられた下側の第2切断装置46も同様にガイド48と切断部材50とを有している。この切断部材は、中間布帛8と下側布帛10との間のパイル糸14bを切断する。下側布帛10は、前記同様に針ローラ54を有する排出装置52によって屑として排出される。残存する中間布帛8は両面パイル56、58を有し、排出装置60を介して排出される。この排出装置も、製造されたベルベットリボン8を確実に排出するための針64を備えた針ローラ62を有することが好ましい。
【0016】
図2〜図4に示される他の実施形態のリボン織機も、基本的には図1に示した第1実施形態のリボン織機と同様に構成されており、同じ部品には同じ符号が付されている。しかし、図1のリボン織機とは異なり、図2〜図4のリボン織機では、切断装置36a、46aが相互に独立して配置されるのではなく、並べて配置され、かつ、1つの共通する切断部材66を有している。この切断部材は切断刃として構成され、駆動装置68によって往復駆動される。
【0017】
織成部31から送出される3層布帛8、10、12は、第1ガイド70の下流側の第1切断装置36aに供給される。この切断装置は2つの案内板72、74を有している。下案内板72は固定されているが、上案内板74は概略的に示された調節装置76によって下案内板72との距離を調整可能である。第1切断装置36aで切り離された下側布帛10は、排出装置42aの針ローラ44aによって下方に排出される。
【0018】
中間布帛8および上側布帛12は、針ローラとして構成される第1方向転換ローラ78に横方向にずらして送れられる。この方向転換ローラは、布帛を後方に方向転換させるとともに横方向にずらし、第1固定ガイド80を介して第2整列ガイド82に供給する。この整列ガイドは、布帛が3層布帛8、10、12と平行に配向されるまで該布帛を方向転換させる。布帛は、2つの方向転換ローラ84、86で折り返されて第2切断装置46aに送られる。この切断装置も前記同様に下案内板88と上案内板90とを有し、案内板は概略的に示された調節装置92、94によって高さ位置および/または相互距離を調整可能である。特に、第2切断装置46aの下案内板88は、第1切断装置の案内板72に対して、中間布帛8が両側で同じパイル高さを有するような高さに調整されねばならない。それは、両方の切断装置36a、46aに共通の切断部材66が使用されるが、パイル高さを含む布帛の厚さが異なる理由による。第2切断装置46aで上側布帛12が中間布帛8から分離され、上側布帛12は前記同様に屑として針ローラ54aを備えた排出装置52aにより除去される。中間布帛8は、両面にパイル56、58を有する両面ベルベットリボンとして、前記同様の針ローラ62を備えた排出装置60によって排出される。
【0019】
この実施形態においては、方向転換装置の方向転換ローラ78と排出装置52aの針ローラ54aとが一体に構成されている。同様に、排出装置42aの針ローラ44aは排出装置60aの針ローラ62aと一体である。
【0020】
各図に示された針ローラは、把持力に優れた表面、例えば粗面化表面を有するか、または、ゴム被覆を備えた表面を有する別のローラに、いずれかまたはすべてを置換することができる。
【0021】
一般に屑として排出される上側布帛や下側布帛は、必要に応じて片面ベルベットリボンとして利用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】両面ベルベットリボンを製造するための第1実施形態のリボン織機を示す側面図である。
【図2】両面ベルベットリボンを製造するための第2実施形態のリボン織機を示す平面図である。
【図3】第2実施形態のリボン織機を示す図2のIII‐III断面図である。
【図4】第2実施形態のリボン織機を示す図2のIV‐IV断面図である。
【符号の説明】
【0023】
2 リボン織機
4 上案内板
6 下案内板
8 中間布帛
10 下側布帛
12 上側布帛
14 パイル糸
14a パイル糸
14b パイル糸
16 開口装置
18 経糸
20 綜絖
22 杼口
24 杼口
26 杼口
28 緯糸
30 緯糸
31 織成部
32 緯糸
33 調節装置
34 筬
35 調節装置
36 第1切断装置
36a 第1切断装置
38 ガイド
40 切断部材
42 排出装置
42a 排出装置
44 針ローラ
44a 針ローラ
46 第2切断装置
46a 第2切断装置
48 ガイド
50 切断部材
52 排出装置
52a 排出装置
54 針ローラ
54a 針ローラ
56 パイル
58 パイル
60 排出装置
62 針ローラ
66 切断部材
68 駆動装置
70 ガイド
72 下案内板
74 上案内板
76 調節装置
78 方向転換ローラ
80 固定ガイド
82 整列ガイド
84 方向転換ローラ
86 方向転換ローラ
88 下案内板
90 上案内板
92 調節装置
94 調節装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両面にパイル(56、58)を有するベルベットリボンの製造方法において、上下に相互に離間された3つの布帛(8、10、12)がパイル糸(14)で相互に連結された3層織物を製織し、さらに、製織された前記3層織物の中間布帛(8)と第1布帛(10)との間のパイル糸(14)を第1切断装置(36、36a)で切断し、その後、前記中間布帛(8)と第2布帛(12)との間のパイル糸(14)を第2切断装置(46、46a)で切断することにより、前記中間布帛を両面ベルベットリボン(8)として得ることを特徴とするベルベットリボン製造方法。
【請求項2】
前記3層織物(8、10、12)をニードルリボン織機(2)で製織することを特徴とする請求項1記載のベルベットリボン製造方法。
【請求項3】
前記パイル糸(14)の切断を、リボン織機(2)で製織した直後に行うことを特徴とする請求項1または2記載のベルベットリボン製造方法。
【請求項4】
前記第1切断装置(36a)と前記第2切断装置(46a)とを並べて配置し、前記第1切断装置(36a)で切断した前記布帛(8、12)を、前記第2切断装置(46a)に戻すことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のベルベットリボン製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法を実施するためのリボン織機において、上下に相互に離間された3つの織成部(31)を有し、前記各織成部が、それぞれ1つの緯入れ部材と、前記各布帛を結合するパイル糸(14)を給糸するために3つの杼口(22、24、26)を開口させる共通の開口装置(16)とを備えており、前記織成部(31)の下流側には、前記中間布帛(8)と前記第1布帛(10、12)との間のパイル糸(14)を切断するための第1切断装置(36、36a)と、前記中間布帛(8)と前記第2布帛(12、10)との間のパイル糸(14)を切断するための第2切断装置(46、46a)が設けられていることを特徴とするリボン織機。
【請求項6】
前記各切断装置(36、36a、46、46a)には、それぞれ布帛(8、10、12)用のガイド(4、6、72、74、90、92)が配設されており、前記各ガイドが高さおよび/または相互距離を調整可能であることを特徴とする請求項5記載のリボン織機。
【請求項7】
前記第1切断装置(36a)と前記第2切断装置(46a)とが並べて配置され、前記第1切断装置(36a)には、前記布帛(8、10)を前記第2切断装置(46a)に戻すための方向転換手段(78、80、82、84、86)が付設されていることを特徴とする請求項5または6に記載のリボン織機。
【請求項8】
前記各切断装置(36a、46a)に共通の1つの切断部材(66)が設けられていることを特徴とする請求項7記載のリボン織機。
【請求項9】
前記切断部材(66)が切断刃で構成され、該切断刃に往復駆動装置(68)が付設されていることを特徴とする請求項8記載のリボン織機。
【請求項10】
前記切断部材が循環式切断ベルトで構成されていることを特徴とする請求項8記載のリボン織機。
【請求項11】
前記切断装置(36、46、36a、46a)の前記切断部材(40、50、66)に研磨装置が付設されていることを特徴とする請求項5〜10のいずれか1項に記載のリボン織機。
【請求項12】
切断した布帛(10、12)を排出するための排出装置(42、46、42a、46a)が前記各切断装置(36、46、36a、46a)に付設されていることを特徴とする請求項5〜11のいずれか1項に記載のリボン織機。
【請求項13】
上下に配置された3つの緯入れ針を有するニードルリボン織機として構成されていることを特徴とする請求項5記載のリボン織機。
【請求項14】
両面にパイル(56、58)を有するベルベットリボンにおいて、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法に従って製造されたことを特徴とするベルベットリボン。
【請求項15】
請求項5〜13のいずれか1項に記載のリボン織機、特にニードルリボン織機(2)で製造されたことを特徴とするベルベットリボン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−507138(P2009−507138A)
【公表日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−528309(P2008−528309)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際出願番号】PCT/CH2006/000144
【国際公開番号】WO2007/025394
【国際公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(500031009)テクスティルマ・アクチェンゲゼルシャフト (22)
【Fターム(参考)】