説明

両面粘着シート

【課題】被着体の凸凹等の形状に沿わせて粘着し、液晶画面用として適切な透明性を有し、且つ特性の異なる2つの被着体の各々に対して十分な粘着力にて貼着可能な両面粘着シートを提供する。
【解決手段】中間支持層を全く省略して、両粘着特性が相違する2つの第1粘着剤層1と第2粘着剤層2とから成る両面粘着シート。更には第1粘着剤層1の外面に第1剥離シート、第2粘着剤層2の外面に第2剥離シートをそれぞれ積層する両面粘着シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は両面粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図7に拡大断面図にて示したように、プラスチックフィルムや不織布等の中間基材層41を間に介して、第1粘着剤層46と第2粘着剤層47を積層し、各々の外面に剥離シート42, 43を、さらに積層した両面粘着シート44が広く知られている。さらには、本出願人がかつて提案したように多数枚の積層シートに於ても、粘着剤層と粘着剤層との間には必ず中間基材を介装していた(特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第4052900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の図7に示したような構造の両面粘着シート44では、以下のような問題点があった。即ち、 (i) 被着体の凹凸等の形状に沿わせて粘着することが困難な場合がある点、 (ii) 透明性が低下し、液晶画面(光学フィルム)用として適切でなくなる点、(iii) 中間基材層41として一般的な高透明ポリエステルフィルムを用いた場合に複屈折率が大きくなり、上記液晶画面(光学フィルム)としてクリアーでなくなる点、等の問題があった。
【0004】
また、従来、図8に示すように、単層の粘着剤層48と、これの両面に積層された剥離シート49, 50から成る両面粘着シート51も公知であるが、当然に上記単層の粘着剤層48の表裏両面48a,48bは同一の粘着特性を示し、以下のような問題点がある。即ち、(i) 性質(特性)の相違した2種類の被着体の間に用いる場合に一方には安定して強固に貼着できても他方には貼着が難しかったり粘着力が弱い場合がある点、 (ii) これに伴って被着体となる材質が限定される点、 (iii) 使用時に、図8の状態からまず一方の剥離シートのみを剥離しようとしても、他方の剥離シートも部分的に剥離を発生しやすく、それによって、粘着剤層48が局部的変形を生じて綺麗に被着体に貼着できなくなる点、等の問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明に係る両面粘着シートは、中間基材層を省略して、粘着特性を相違する第1粘着剤層と第2粘着剤層を積層したものである。
また、中間基材層を省略して、粘着特性を相違する第1粘着剤層と第2粘着剤層を積層すると共に、上記第1粘着剤層の外面に第1剥離シートを、上記第2粘着剤層の外面に第2剥離シートを、各々積層した。
また、上記第1粘着剤層及び第2粘着剤層は、良透明性材質から成る。さらに、上記第1粘着剤層と第2粘着剤層を合わせた全光線透過率は85%以上であり、かつ、Hazeを1.0以下に設定するのが望ましい。
【0006】
また、上記第2粘着剤層の粘着特性を、0.1〜8N/25mmの弱粘着力に設定し、かつ、上記第1粘着剤層の粘着特性を、10N/25mm以上の強粘着力に、設定した。
また、上記第1粘着剤層と第2粘着剤層の粘着力の差を、1N/25mm以上に設定するのが好ましい。
また、上記第1粘着剤層の粘着特性は柔軟性に優れて凹凸追従性が高いように、及び、上記第2粘着剤層の粘着特性は凝集力に優れるように、各々相違させている。あるいは、上記第1粘着剤層の粘着特性は柔軟性に優れて凹凸追従性が高いように、及び、上記第2粘着剤層は被粘着面からのガス発生時にもガス浮きを生じない耐ガス浮き特性を備えている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、被着体の凹凸等の形状に柔軟に対応して密に貼付け可能であり、綺麗に貼着できる。また、複屈折率も小さく、透明性も優れ、液晶画面等を一層クリアーに見ることを可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図示の実施の形態基づき本発明を詳説する。
図1に於て、本発明に係る粘着シートSを例示し、中間基材層を全く省略して、粘着特性を相違した第1粘着剤層1と第2粘着剤層2を(相互に)積層して構成する。この両面粘着シートSは、図5に示すように、対面状の被着体11, 12の間に介在して、両被着体11, 12を相互貼着する。
【0009】
ところで、図1に示した基本構造のみでは、取扱(作業)が困難であるので、図2に示すように、第1粘着剤層1の外面1aに第1剥離シート3を積層し、かつ、第2粘着剤層2の外面2aに第2剥離シート4を積層する。このように、図2に示した他の実施の形態では、第1剥離シート3,第1粘着剤層1,第2粘着剤層2,第2剥離シート4が順次積層一体化された構成である。
なお、本発明に於て、「剥離シート」とは、種々のプラスチック製のシート(フィルム)の場合、及び、いわゆる剥離紙と呼ばれる天然紙や合成紙等の場合の両方を含むものと定義する。
【0010】
そして、上記第1粘着剤層1及び第2粘着剤層2は、良透明性材質から成っている。つまり、第1粘着剤層1と第2粘着剤層2を合わせた(合計した)全光線透過率は、85%以上で、かつ、Hazeを1.0以下に設定する。
そして、第1粘着剤層1と第2粘着剤層2の粘着力の差を、1N/25mm以上に設定する。望ましくは、2N/25mm以上とする。さらに望ましくは、3N/25mm以上とする。
具体的には、上記第2粘着剤層2の粘着特性を、0.1〜8N/25mmの弱粘着力に設定し、かつ、上記第1粘着剤層1の粘着特性を、10N/25mm以上の強粘着力に、設定する。
なお、上述の粘着力の測定は、JIS Z0237 に準じ、貼り付け及び測定雰囲気:23℃50%、2kgゴムロールで1往復圧着、剥離速度 300mm/min 、剥離角 180°、被着体:ステンレスの条件で貼り付け、24時間後の粘着力測定値とする。
【0011】
第2粘着剤層2の粘着力は第1粘着剤層1の粘着力よりも十分に小さく設定したので、図2の未使用状態から、図3に示す貼着作業時のように、第2粘着剤層2のみを剥離させることは、確実かつ容易である。即ち、従来例(図8参照)のような単層の粘着剤層48では、剥離シート49,50の内の一方を剥離せんとすると、他方も部分的に剥離を起こして、美しく粘着剤層48を被着体に貼付けることが困難であったが、本発明では、弱粘着力の側(つまり第2粘着剤層2側)のみから容易に剥離可能であり、図3のように矢印Aにて示すように被着体12に皺や局部的変形を生ずることなく、綺麗に貼付けが可能であり、その後、図4に示すように、第1剥離シート3を矢印Bのように剥離して、次に、図5に示したように、別の被着体11を矢印Cのように押圧すれば、皺や浮上りや局部変形の無い、美しく貼着が可能である。
【0012】
なお、本発明では、図2〜図5における説明の都合で、第2粘着剤層2の粘着力を弱く、第1粘着剤層1の粘着力を強いとして、説明したが、勿論、逆の場合であっても自由である。
【0013】
次に、別の実施の形態について説明すると、図1又は図3、及び、図6に於て、第1粘着剤層1の粘着特性は柔軟性に優れ、凹凸追従性が高い。他方、第2粘着剤層2の粘着特性は、凝集力に優れる。このように、第1粘着剤層1と第2粘着剤層2とは粘着特性を大きく相違させる。第2粘着剤層2は、上述のように凝集力に優れているので、(図6に示すように、)第2粘着剤層2の端縁6からのはみ出し(2点鎖線で示した突出部7参照)が少ない。また、図6に示すように、一方の被着体11に凹凸8が存在する形状であっても、柔軟性に富んだ第1粘着剤層1は、容易に変形しつつ凹凸8に追従する利点がある。
【0014】
ところで、第1粘着剤層1の柔軟性に優れて凹凸追従性が高いとは、次のように定義する。即ち、凹凸追従性を向上させるため、粘着剤の凝集力は高くなく、JIS Z0237 に準じた保持力試験において、40℃雰囲気、1万秒でズレが 0.1mm以上のもので、25℃での貯蔵弾性率G´の値が0.01〜10MPa 、また、25℃での損失正接tanδ(tanδ=損失弾性率/貯蔵弾性率)が 0.1以上である。特に好ましいのは、保持力ズレ 0.2mm以上、25℃での貯蔵弾性率G´の値は0.01〜 0.5MPa で、tanδの値は 0.3以上とする。
【0015】
そして、第2粘着剤層2の凝集力に優れとは、次のように定義する。即ち、JIS Z0237 に準じた保持力試験において、40℃雰囲気、1万秒でズレが 0.2mm未満のもので、JIS Z0237 に準じた傾斜式ボールタックで傾斜角30°におけるボールタックNo.が8以下である。特に好ましいのは、上記保持力においてズレがなく、ボールタックが3以下のものとする。
【0016】
また、本発明のさらに他の実施の形態としては、上記第1粘着剤層1の粘着特性は柔軟性に優れて凹凸追従性が高いように、及び、上記第2粘着剤層2は被粘着面からのガス発生時にもガス浮きを生じない耐ガス浮き特性を備えているように構成するも、好ましい。このように、本発明では、第1粘着剤層1と第2粘着剤層2の粘着特性を相違させて、各種組み合わせる点に特徴を有しているといえる。
【0017】
そして、図6に基づいて説明した実施の形態と、図1〜図5に基づいて説明した実施の形態とを、結合するも、好ましい。ところで、第1・第2粘着剤層1,2の材質としては、光学特性上から屈折率の差が小さいことが望ましく、例えば、アクリル系粘着剤/アクリル系粘着剤とするのが好ましく、また、屈折率の差を 0.1以下とするのが良い。勿論、被着体11, 12の材質や形状や使用条件によっては、アクリル系/ウレタン系、アクリル系/ゴム系等の組合せとするも、望ましい。そして、本発明は、液晶タッチパネル等の用途に好適な両面粘着シートである。
【0018】
以上述べたように、本発明に係る両面粘着シートは、中間基材層を省略して、粘着特性を相違する第1粘着剤層1と第2粘着剤層2を積層して構成したので、被着体11, 12の凹凸等の形状に沿わせて綺麗に貼付けできる。被着体11, 12の被貼着特性が相違していても、各々に最適の粘着特性を選択対応可能となる。このように、用途に合わせて、各々の粘着特性を選択することができる。
また、中間基材層を省略して、粘着特性を相違する第1粘着剤層1と第2粘着剤層2を積層すると共に、上記第1粘着剤層1の外面1aに第1剥離シート3を、上記第2粘着剤層2の外面2aに第2剥離シート4を、各々積層した構成であるので、取扱が容易で、貼着作業も容易となり、さらに、被着体11, 12の凹凸等の形状に沿わせて綺麗に貼付けできる。被着体11, 12の被貼着特性が相違していても、各々の最適の粘着特性を選択対応可能となる。このように、用途に合わせて、各々に粘着特性を選択することができる。また、剥離シート3,4を順序良く剥離することが可能となって、美しく被着体11, 12に貼付けできる。
【0019】
また、上記第1粘着剤層1及び第2粘着剤層2は、良透明性材質から成るので、極めて薄肉化を図ることが可能であると共に、複屈折率の問題も無く、透明性も優れ、光学フィルムとして好適である。
また、上記第1粘着剤層1と第2粘着剤層2を合わせた全光線透過率は85%以上であり、かつ、Hazeを 1.0以下に設定したことにより、一層透明性に優れて、光学フィルムとして好ましい。
【0020】
また、上記第2粘着剤層2の粘着特性を、0.1〜8N/25mmの弱粘着力に設定し、かつ、上記第1粘着剤層1の粘着特性を、10N/25mm以上の強粘着力に、設定したので、貼付作業時に、剥離シート3,4を順序に従って正確に一枚ずつ剥離可能であり、皺や変形等を起こさずに、綺麗に被着体11, 12の外表面形状に沿って貼着できる。
また、上記第1粘着剤層1と第2粘着剤層2の粘着力の差を、1N/25mm以上に設定したので、貼付作業時に、剥離シート3,4を順序に従って正確に一枚ずつ剥離可能であり、皺や変形等を起こさずに、綺麗に被着体11, 12の外表面形状に沿って貼着できる。
【0021】
また、上記第1粘着剤層1の粘着特性は柔軟性に優れて凹凸追従性が高いように、及び、上記第2粘着剤層2の粘着特性は凝集力に優れるように、各々相違させた構成としたので、図6に例示したように、第1粘着剤層1には凹凸8のある被着体11が確実に貼付けられ、他方、第2粘着剤層2によって、端縁はみ出し(図6の符号6参照)を防止できる。
また、上記第1粘着剤層1の粘着特性は柔軟性に優れて凹凸追従性が高いように、及び、上記第2粘着剤層2は被粘着面からのガス発生時にもガス浮きを生じない耐ガス浮き特性を備えているので、(図6に示したように)凹凸8のある第1粘着剤層1に対して強固に貼着可能であり、しかも、第2粘着剤層2は、ガスの発生しやすい材質から成る被着体12であっても、適用可能となる。このように、ガスによる浮上り現象をも防ぎ得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の両面粘着シートの実施の一形態を示す拡大断面図である。
【図2】他の実施の形態を示す拡大断面図である。
【図3】使用状態説明用の拡大断面図である。
【図4】使用状態説明用の拡大断面図である。
【図5】使用状態説明用の拡大断面図である。
【図6】別の実施の形態を示す拡大断面図である。
【図7】従来例を示す拡大断面図である。
【図8】他の従来例を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 第1粘着剤層
1a 外面
2 第2粘着剤層
2a 外面
3 第1剥離シート
4 第2剥離シート





【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間基材層を省略して、粘着特性を相違する第1粘着剤層(1)と第2粘着剤層(2)を積層したことを特徴とする両面粘着シート。
【請求項2】
中間基材層を省略して、粘着特性を相違する第1粘着剤層(1)と第2粘着剤層(2)を積層すると共に、上記第1粘着剤層(1)の外面(1a)に第1剥離シート(3)を、上記第2粘着剤層(2)の外面(2a)に第2剥離シート(4)を、各々積層したことを特徴とする両面粘着シート。
【請求項3】
上記第1粘着剤層(1)及び第2粘着剤層(2)は、良透明性材質から成る請求項1又は2記載の両面粘着シート。
【請求項4】
上記第1粘着剤層(1)と第2粘着剤層(2)を合わせた全光線透過率は85%以上であり、かつ、Hazeを1.0以下に設定した請求項3記載の両面粘着シート。
【請求項5】
上記第2粘着剤層(2)の粘着特性を、0.1〜8N/25mmの弱粘着力に設定し、かつ、上記第1粘着剤層(1)の粘着特性を、10N/25mm以上の強粘着力に、設定した請求項1,2,3又は4記載の両面粘着シート。
【請求項6】
上記第1粘着剤層(1)と第2粘着剤層(2)の粘着力の差を、1N/25mm以上に設定した請求項1,2,3又は4記載の両面粘着シート。
【請求項7】
上記第1粘着剤層(1)の粘着特性は柔軟性に優れて凹凸追従性が高いように、及び、上記第2粘着剤層(2)の粘着特性は凝集力に優れるように、各々相違させた請求項1,2,3又は4記載の両面粘着シート。
【請求項8】
上記第1粘着剤層(1)の粘着特性は柔軟性に優れて凹凸追従性が高いように、及び、上記第2粘着剤層(2)は被粘着面からのガス発生時にもガス浮きを生じない耐ガス浮き特性を備えている請求項1,2,3又は4記載の両面粘着シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−150378(P2010−150378A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−329769(P2008−329769)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000226091)日栄化工株式会社 (17)
【Fターム(参考)】