説明

中和された脂肪酸を含む金属加工液

水性金属加工液(MWF)用添加剤は、アミン、アルカノールアミン及び苛性アルカリの少なくとも1つで中和されたC12‐20脂肪酸を含む。この添加剤は、約7以上のpHを有する及びMWFの質量を基準として約0.10質量%以上の中和されたC12‐20脂肪酸を含む水性MWFに使用するために設計されている。この添加剤は、機械加工中及び機械加工後の鉄及び非鉄金属の汚染を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属加工液に関する。一の態様では、本発明は水性金属加工液(MWF)に関し、一方で別の態様では、本発明はアルミニウム及び他の金属の汚染を防止する水性MWFに関する。また別の態様では、本発明は中和された脂肪酸を含む水性MWFに関し、一方でさらに別の態様では、本発明は該MWFを用いる様々な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水性金属加工液は、それらが非水性金属加工液に優る経済上の、環境保護の及び安全性の利点によって周知であり、また幅広く使用されている。水性MWFは非常に低い可燃性を有し、さらに石油系製品の増え続けるコストのために、それらが非水性MWFに優る経済上の利点はますます大きくなっている。さらに水性MWFは、石油系加工液の使用及び廃棄と同等以上の明確な環境負荷を起こすことはない。ただし、それらの安全性、経済上の及び環境保護の利点の域を越えて、水性MWFは他の性質(例えば、加工対象物を汚染しない)並びに保管中及び使用中の安定性も示す必要がある。
【0003】
主として水性MWFは、典型的には95質量%(wt%)を超える、通常は97質量%(wt%)を超える水を含む。特にMWFが多くの水性MWFに特有の比較的高いpH(例えば9より高い)を有する場合には、水は、典型的な金属加工条件下で、特定の鉄及び非鉄類の加工対象物(特にアルミニウム)を汚染する傾向がある。一方、特定の物質(例えば、ケイ酸ナトリウム及びリン酸エステル)を水性MWFに加えて加工対象物の汚染を遅らせることができるが、通常はそれらの物質に特有の欠陥がある。例えば、ケイ酸塩はMWFの再利用に頻繁に使用される超精密ろ過膜を詰まらせる傾向があり、リン酸エステルは比較的速い細菌による分解の影響を受けやすい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
それ故に、金属加工業界は、機械加工作業中及び機械加工作業後の金属の加工対象物(特にアルミニウムのような非鉄金属の加工対象物)の汚染を減らす又は無くす添加剤及び水性MWF配合物を見出すことに関心を持ち続けている。工業界(特に小型及び中型の注文製作工場)は、彼らが複数の水性MWFを購入して棚卸しをする必要がなくなるので、鉄及び非鉄金属の双方に効果的な添加剤及び配合物に関心を持ち続けている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態では、本発明は水性MWFに用いる中和された脂肪酸の添加剤であり、その添加剤はアミン、アルカノールアミン及び苛性アルカリの少なくとも1つで中和されたC12‐20脂肪酸を含んでいる。別の実施形態では、本発明はその中和脂肪酸の添加剤を含んでいる水性濃縮物である。さらに別の実施形態では、本発明は、約7以上のpHを有し、水性MWFの質量を基準として、アミン、アルカノールアミン及び苛性アルカリの少なくとも1つで中和されたC12‐20脂肪酸を約0.1質量%以上含んでいる水性MWFである。
【0006】
ここでは、「中和された脂肪酸の添加剤」、「脂肪酸の添加剤」及びその類義語とは、基本的に中和された脂肪酸のみを含む基本的に非水性の溶液を意味する。水性MWFの残余を別として調製するのであれば、中和された脂肪酸の形態はこうなる。この形態では、添加剤を包装し、保管し、並びに/又は小売業者及び/若しくはエンドユーザーに販売することができる。
【0007】
「濃縮物」、「マスターバッチ」及びそれらの類義語とは、水、油及び/又は水性MWFの別の官能成分で部分的に希釈された中和脂肪酸を意味する。「部分的に希釈された」とは、水性MWFとして使用準備が整う前に、典型的には水によって濃縮物をさらに希釈する必要があることを意味する。典型的には、この濃縮物は、約1質量%以上の、典型的には約5質量%以上の、時には10質量%以上と同程度の中和脂肪酸を含む。この濃縮物は、典型的には95質量%未満、より典型的には約75質量%未満、さらに典型的には約50質量%未満の水を含む。添加剤から濃縮物を直接製造できる(例えば、水で添加剤を希釈し、所望によりMWFの他の成分を添加する)し、又は混ぜ合わせて濃縮物を製造できる(例えば、脂肪酸及び中和剤を別々に添加することにより中和脂肪酸をその場で製造する)。添加剤と類似している濃縮物は、包装し、保管し、並びに/又は小売業者及び/若しくはエンドユーザーに販売できる。
【0008】
「水性MWF」及びその類義語とは、その成分の全てを含み、使用準備の整ったMWFを意味する。この形態では、水性MWFは完全に希釈されている。すなわち、使用準備が整う前に、水による更なる希釈もいかなる他の成分も必要とせず、また典型的には95質量%以上の水を含んでいる。濃縮物のように、その前駆体(すなわち、典型的には約10〜20以上の希釈係数を有する濃縮物)を希釈して調製するか、個々の成分から直接に調製できる。この第二の調製法では、中和脂肪酸を直接に(すなわち、既に調製した中和脂肪酸の添加剤として)添加するか、その場で調製できる(すなわち、脂肪酸及び中和剤をそれらの適切な量で別々に添加できる)。
【0009】
「中和剤」及びその類義語とは、MWFの他の成分に適合していて、中和された脂肪酸が実質的に溶解したままでMWFの脂肪酸成分を中和できる任意のアミン、アルカノールアミン又は苛性アルカリを意味する。「実質的に溶解した」とは、水性MWFの汚染防止成分としての有効性に関しては中和された脂肪酸のいかなる沈殿も無視できることを意味する。
【0010】
別の実施形態では、本発明は、金属の加工対象物を機械加工する又は加工する方法であり、この方法は約7以上のpHを有し、水性MWFの質量を基準として、アミン、アルカノールアミン及び苛性アルカリの少なくとも1つで中和されたC12‐20脂肪酸を約0.1質量%以上含む水性MWFを用いて加工対象物を機械加工する工程を含む。本発明の水性MWFは、有名な水性MWFと同じように扱われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(i)水性MWF(この中に成分がある)の他の成分と適合していて、(ii)アミン、アルカノールアミン又は苛性アルカリで中和できて、(iii)加工対象物が水性MWFを用いて機械加工される間にアルミニウム加工対象物の汚染を減らす又は無くす任意のC12‐20脂肪酸を本発明の実施に際して利用できる。典型的には、水性MWFの脂肪酸成分は次の一般式で表される。
【0012】
CH−(CH−COOH
【0013】
式中、nは約10以上の、好ましくは約12以上の、より好ましくは約14以上の、また好ましくは約18を超えない、より好ましくは約16を超えない整数である。脂肪酸は、1つ或いは2つ以上の不飽和部位、並びに/又は置換基がある場合には脂肪酸とMWFの他の成分との相溶性を著しく妨げたりしないか、若しくは加工対象物に重大な汚染を与えるであろう1つ或いは2つ以上の置換基を含有できる。そのような置換基としては、芳香族、ヒドロキシル、スルホネート、ハロゲン及びエーテルの基が挙げられる。脂肪酸の構造は直鎖、分岐鎖又は環状でよく、また分岐鎖脂肪酸は直鎖脂肪酸よりも発泡する傾向が少ないから、分岐鎖脂肪酸は本発明の好ましい脂肪酸である。全炭素原子数が18以上である中和された、飽和した、直鎖の脂肪酸は、そのような脂肪酸が更に大量であっても他の脂肪酸によって得られるものと同程度に、いずれにしても同等の汚染の防止を達成しなければならないことが明白なので、本発明の実施に利用できる他の中和脂肪酸よりも不利である。
【0014】
本発明の実施に用いることができる典型的な脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、2‐ヘキシルデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、リシノール酸、2‐シクロヘキセン‐1‐オクタン酸、5‐カルボキシ‐4‐ヘキシル‐オクタン酸、チョールムーグラ酸、イソステアリン酸(混合異性体)、cis‐11‐エイコセン酸、フィタン酸、プリスタン酸、4,8,12‐トリメチルトリデカン酸及びトールオイル脂肪酸が挙げられる。脂肪酸は単独で又はそれぞれを2つ以上併用して使用できる。通常、入手できるC12‐20脂肪酸は混合物であり、これらの混合物は、炭素原子数が12未満である及び/又は炭素原子数が20を超える脂肪酸量を含んでよい。これらの混合物は本発明の実施に際して使用してよく、混合物中のC12‐20ではない脂肪酸の量は、無視できる量(例えば、脂肪酸全量の約10質量%未満)であることが好ましい。
【0015】
中和剤のアミンは、いかなる種類及びいかなる分子量でもよく、単独で、又は1つ或いは2つ以上の他のアミンと併用して、並びに/又は1つ或いは2つ以上のアルカノールアミン及び/若しくは苛性アルカリと併用して使用できる。これらのアミンは1級、2級及び3級アミンを含み、脂肪族(好ましくは、1級若しくは3級アルキル)、脂環式又は芳香族構造のいずれかであり、また置換基がある場合には脂肪酸とMWFの他の成分との相溶性を著しく妨げたりしないか、又は加工対象物に重大な汚染を与えるであろう1つ若しくは2つ以上の置換基を有することができる。そのような置換基としてはエーテル基が挙げられる。典型的なアミンとしては、アンモニア(本発明に関してはアミンと見なされる)、メチル‐、ジメチル‐及びトリメチルアミン、エチル‐、ジエチル‐及びトリエチルアミン、n‐プロピル‐、ジ‐n‐プロピル‐、及びトリ‐n‐プロピルアミン、イソプロピルアミン、n‐ブチル‐、イソブチル‐、sec‐ブチル‐及びtert‐ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、α‐フェニルエチルアミン、β‐フェニルエチルアミン、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、水酸化テトラ(C1‐3アルキル)アンモニウム(例えば、水酸化テトラ(メチル)アンモニウム、水酸化トリ(メチル)エチルアンモニウムなど)、アニリン、メチルアニリン、o‐、m‐及びp‐トルイジン、o‐、m‐及びp‐アニシジン、o‐、m‐及びp‐クロロアニリン並びにベンジジンが挙げられる。
【0016】
特に興味深く実用性のあるものは、アルカノールアミン、特により低い分子量のアルカノールアミンである。アミンのように、アルカノールアミンは、単独で、又は1つ或いは2つ以上の他のアルカノールアミンと併用して、並びに/又は1つ或いは2つ以上のアミン及び/若しくは苛性アルカリと併用して使用できる。アルカノールアミンは、置換基がある場合にはアルカノールアミンとMWFの他の成分との相溶性を著しく妨げたりしないか、又は加工対象物に重大な汚染を与えるであろう1つ若しくは2つ以上の置換基を有することもできる。典型的なアルカノールアミンとしては、モノ‐、ジ‐及びトリエタノールアミン、モノ‐、ジ‐及びトリ‐イソプロパノールアミン、ジグリコールアミン、n‐ブチルエタノールアミン、2‐アミノ‐2‐メチル‐1‐プロパノール(AMP)、並びに2‐アミノ‐2‐エチル‐1,3‐プロパンジオールが挙げられる。
【0017】
ここで、「苛性アルカリ」は、水酸化ナトリウムと類似している任意の化合物であって、脂肪酸と混合して脂肪酸塩を形成したときに、脂肪酸塩が水性MWFに実質的に溶解できるものを包含する。苛性アルカリはいかなる種類でもよく、単独で又は、1つ或いは2つ以上の他の苛性アルカリと併用して、並びに/又は1つ或いは2つ以上のアミン及び/若しくはアルカノールアミンと併用して使用できる。典型的な苛性アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、苛性アルカリアルコール(例えばCONa)、炭酸塩、リン酸塩などが挙げられる。水酸化カリウムは好ましい苛性アルカリである。
【0018】
脂肪酸並びにアミン、アルカノールアミン及び/又は苛性アルカリは、脂肪酸が効果的に中和される量で使用される。カルボキシル基に対する中和基のモル比としては、1より僅かに低い又は高い比を用いて本発明の幾つかの利点を得ることもできるが、典型的には約1である。過剰な中和剤を使用できるが、かなり有益な効果のいずれかを欠く。
【0019】
本発明の一実施形態では、MWFとは別に中和された脂肪酸を調製し、次に包装して、様々な濃縮物及び/又は水性MWF配合物の調製に用いる添加剤として販売する。この実施形態では、脂肪酸及び中和剤を任意の利用しやすい方法で、典型的には大気条件下での撹拌によって混合する。他の実施形態では、包装及び/又は使用の前に、中和脂肪酸を水で希釈する並びに/又は、濃縮物及び/若しくは水性MWFの他の成分と混合することができる。
【0020】
別の実施形態では、中和された脂肪酸をMWFの水性溶媒に添加する前に又はその場で、水性MWFを調製する工程の一部として、中和された脂肪酸を調製する。その調製法にかかわらず、水性MWF中の中和された脂肪酸の量は、典型的には水性MWFの約0.1質量%以上、好ましくは約0.4質量%以上、より好ましくは約0.07質量%である。水性MWF中の中和された脂肪酸の最大量は幅広く変わり得るし、通常は経済面に左右される。典型的には、その最大量は、水性MWFの約1質量%を超えず、好ましくは約0.7質量%を超えず、より好ましくは約0.5質量%を超えない。
【0021】
本発明の水性MWFは、ただ水及び中和脂肪酸を含むことができるが、典型的には、複数の他の成分を含んだ方がよい。これらの他の成分としては、限定されるものではないが、炭化水素及び/又は合成潤滑油、様々な無機塩、界面活性剤、殺生剤、潤滑油、染料、脱泡剤、乳化剤などが挙げられる。これらの他の成分は既知の量及び組み合わせで使用され、典型的には、水性MWFは少なくとも約95質量%以上の水(水道水又は脱イオン水のいずれか)を含む。本発明の実施に際して使用される中和された脂肪酸は、水性MWF配合物の他の成分と適合して所望の性能を最大化する。
【0022】
本発明の水性MWFは、鉄金属(例えば、鉄、鋼鉄及び亜鉛めっき鋼)並びに非鉄金属(例えば、アルミニウム及びアルミニウム合金)の両方に使用するのに適している。金属の加工対象物は既知の及び従来の方法で機械加工され、本発明の水性MWFは、既知の従来の方法で使用される。
【実施例】
【0023】
次の実施例では、全ての部及び百分率(%)は、他に示さない限り質量を基準とする。
【0024】
実施例1
2‐アミノ‐2‐メチル‐1‐プロパノール(AMP)のトールオイル脂肪酸塩を汚染試験に使用した。この試験のために、95%AMPの1%脱イオン水溶液33.5gを0.27%トールオイル脂肪酸の(イリノイ州シカゴの)水道水液300gに添加した。生成した0.34%トールオイル脂肪酸‐AMP塩溶液をガラスジャーの中に入れ、アルミニウム合金Al2024、Al380(鋳造アルミニウム)、Al6061及びAl7075(ともに航空機級のアルミニウム)の試験片をその溶液に半分浸した。対照品は、単なる水道水及び、水酸化カリウムでpH9.5に調整された脱イオン水を用いて調製した。このジャーを大気下で密閉して40℃のオーブンの中に入れた。24時間後、1週間後及び5週間後に試験片を取り出して汚染を観察した。対照系と比べて幾つかの場合には気相での汚染が減少した。Al380以外の全合金については、液相での汚染は基本的に無くなり、Al380に軽度の汚染が発生したが、これは、対照品から得られたものより著しく低い。
【0025】
実施例2
中和剤濃度を調整して9.0のpHにして、シカゴの水道水中で表Ex.2Aに示した塩溶液を調製した。この実施例では、中和されたトールオイルのみが本発明を代表する。
【0026】
【表1】

【0027】
実施例1で説明した手順を用い、上記塩溶液を存在させた状態の汚染試験の結果を下記表Ex.2B〜Eに示す。汚染度(例えば、暗い、中間、明るい、とても明るい及びなし)は主観的であるが、試験片の画像を図1〜4に示す。報告した特定の加工対象物上での汚染度の許容範囲は、加工対象物のユーザーの主観によって左右される。これらの実施例については、許容できる汚染度は、明るい、とても明るい又はなしである。
【0028】
【表2】

【0029】
【表3】

【0030】
【表4】

【0031】
【表5】

【0032】
実施例3
汚染防止剤としての脂肪酸アルカノールアミンの有効性における炭素鎖長の効果を決定するために、ネオデカン酸(上記実施例2参照、炭素原子数が10の分岐鎖モノカルボン酸)から、ベヘン酸(炭素原子数が22の直鎖モノカルボン酸)までの範囲の塩を評価した。水道水中で2‐アミノ‐2‐メチル‐1‐プロパノールを用いてpH9.5に中和された0.3%(又はネオデカン酸の場合には0.4%)の酸の結果を下記表Ex.3及び図5A‐Bに示す。
【0033】
【表6】

【0034】
これらのデータは、鎖長が性能に影響する(恐らく、ある程度は塩の溶解度/分散度に影響する)ことを証明する。ステアリン酸塩及びベヘン酸塩は、他と比べて分散性が低く、これは金属表面を湿潤させることが可能な塩の量に影響する。より多くのステアリン酸ならば、この特定の実験で満足のいく結果を出すことになるであろう。ネオデカン酸塩が有効性を欠くことは説明し辛いが、それがC12‐20酸性塩より水中の溶解度が高いからであろう。
【0035】
実施例4
(直鎖脂肪酸塩とは対照的に)分岐鎖脂肪酸塩の発泡が減少する傾向であったことを証明するためにシカゴの水道水(1部の濃縮物に対して20部の水)を用いて一般的に合成された水性MWFを調製した。合成MWF配合物は次の成分を含んでいた。
【0036】
【表7】

【0037】
希釈標準液を4等分し、その3等分に0.1質量%の下記表Ex.4に示した酸性塩を添加した。正確に50ミリリットル(mL)の希釈液を100mLのコック付きメスシリンダーに入れた。その後にこのシリンダーを1分間振って、初期(時間的にほぼ0分)の泡量を見積もって、次に、その後に選択した時間で泡量を見積もった。表Ex.4のデータは、初期の泡が、直鎖脂肪酸塩を含む液体中より分岐鎖脂肪酸塩を含む液体中で速く崩れることを示す。
【0038】
【表8】

【0039】
実施例5
選択したアルミニウム合金及び亜鉛めっき鋼の試験片の汚染標準品を、pHを制御した水の中で0.1質量%AMPトールオイル脂肪酸を用いて及び用いずに試験した。図6は、この塩をシカゴの水道水(KOHによってpHを9.5に調整している)に添加すると、全試験片の液相接触部分で汚染が完全に除去されたことを示す。この塩が不揮発性なので、気相部分では汚染を除去できない。
【0040】
実施例6
Al2024、380、6061及び7075アルミニウム合金の試験片の汚染について、上記実施例5の手順を用いて、様々な苛性アルカリで中和された脂肪酸及び1つのアミンで中和された脂肪酸を試験した。この結果を下記表Ex.6及び図7に示す。
【0041】
【表9】

表Ex.6及び図7のデータは、本発明の苛性アルカリで中和された及びアミンで中和されたトールオイル脂肪酸が、水性MWF中でのアルミニウム汚染の効果的な防止剤であることを示す。このデータは、苛性アルカリで中和されたイソステアリン酸がアルミニウム汚染の効果的な防止剤であるが、ネオデカン酸(本発明の脂肪酸ではない)は、そのアルカノールアミンで中和された物よりアルミニウム汚染の防止に効果的ではないことも示す。
【0042】
本発明についてかなり詳細に説明したが、この詳細は説明を目的とするものである。特許請求の範囲に記載されている本発明の目的と範囲から逸脱することなく上記の本発明に多くの変化と改良を加えることができる。上述した全ての米国特許及び査定済みの特許出願は、参照によりここに含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】表Ex.2Bで示したAl2024アルミニウム合金試験片の画像である。
【図2】表Ex.2Cで示したAl6061アルミニウム合金試験片の画像である。
【図3】表Ex.2Dで示したAl7075アルミニウム合金試験片の画像である。
【図4】表Ex.2Eで示したAl380アルミニウム合金試験片の画像である。
【図5A】表Ex.3で示したアルミニウム合金試験片の画像である。
【図5B】表Ex.3で示したアルミニウム合金試験片の画像である。
【図6】汚染防止剤を用いたとき及び用いないときに様々な水性MWFに曝露した後のアルミニウム合金及び亜鉛めっき鋼の試験片の画像である。
【図7】表Ex.6で示したアルミニウム合金試験片の画像である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミン、アルカノールアミン及び苛性アルカリの少なくとも1つで中和されたC12‐20脂肪酸を含む水性金属加工液(MWF)用添加剤。
【請求項2】
脂肪酸が分岐鎖である請求項1に記載の添加剤。
【請求項3】
脂肪酸が、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、2‐ヘキシルデカン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、リシノール酸、2‐シクロヘキセン‐1‐オクタン酸、5‐カルボキシ‐4‐ヘキシル‐オクタン酸、チョールムーグラ酸、イソステアリン酸、フィタン酸、プリスタン酸、4,8,12‐トリメチルトリデカン酸及びトールオイル脂肪酸の少なくとも1つである請求項1に記載の添加剤。
【請求項4】
アミンが、アンモニア、メチル‐、ジメチル‐及びトリメチルアミン、エチル‐、ジエチル‐及びトリエチルアミン、n‐プロピル‐、ジ‐n‐プロピル‐及びトリ‐n‐プロピルアミン、イソプロピルアミン、n‐ブチル‐、イソブチル‐、sec‐ブチル‐及びtert‐ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、αフェニルエチルアミン、β‐フェニルエチルアミン、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、水酸化テトラ(メチル)アンモニウム、ヘキサメチレンジアミン、アニリン、メチルアニリン、o‐、m‐及びp‐トルイジン、o‐、m‐及びp‐アニシジン、o‐、m‐及びp‐クロロアニリン並びにベンジジンの少なくとも1つである請求項1に記載の添加剤。
【請求項5】
アルカノールアミンが、モノ‐、ジ‐及びトリエタノールアミン、モノ‐、ジ‐及びトリ‐イソプロパノールアミン、ジグリコールアミン、n‐ブチルエタノールアミン、2‐アミノ‐2‐メチル‐1‐プロパノール、並びに2‐アミノ‐2‐エチル‐1,3‐プロパンジオールの少なくとも1つのである請求項1に記載の添加剤。
【請求項6】
苛性アルカリが、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、苛性アルカリアルコール、炭酸塩及びリン酸塩の少なくとも1つである請求項1に記載の添加剤。
【請求項7】
請求項1に記載の添加剤を含む水性MWF。
【請求項8】
添加剤が約0.1質量%以上を占める請求項7に記載の水性MWF。
【請求項9】
添加剤が約0.3〜1質量%を占める請求項7に記載の水性MWF。
【請求項10】
約7〜10のpHを有する請求項9に記載の水性MWF。
【請求項11】
約8〜9.5のpHを有する請求項9に記載の水性MWF。
【請求項12】
請求項7に記載の水性MWFを用いる工程を含む金属の加工対象物を機械加工する方法。
【請求項13】
加工対象物が非鉄類である請求項12に記載の方法。
【請求項14】
加工対象物がアルミニウムである請求項12に記載の方法。
【請求項15】
加工対象物が鉄である請求項12に記載の方法。
【請求項16】
加工対象物が亜鉛めっき鋼である請求項12に記載の方法。
【請求項17】
請求項1に記載の添加剤を含む水性濃縮物。
【請求項18】
添加剤が約1質量%以上を占める請求項17に記載の濃縮物。
【請求項19】
(i)アミン、アルカノールアミン及び苛性アルカリの少なくとも1つで中和されたC12‐20脂肪酸、並びに(ii)約95質量%未満の水を含む水性金属加工液(MWF)用濃縮物。
【請求項20】
(i)アミン、アルカノールアミン及び苛性アルカリの少なくとも1つで中和されたC12‐20脂肪酸、並びに(ii)約95質量%以上の水を含む水性金属加工液。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−536254(P2009−536254A)
【公表日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−509962(P2009−509962)
【出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際出願番号】PCT/US2007/067462
【国際公開番号】WO2007/130836
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(591252611)アンガス ケミカル カンパニー (32)
【Fターム(参考)】