説明

中性子検出器及び中性子を検出するための方法

【課題】従来のHeガス中性子検出器と比べると、限られた発生源のHeガスを節約し、感度が高い低コスト中性子検出装置を提供する。
【解決手段】本検出器10は、内側体積部30を画定及び封止する外側シェル20と、内側体積部において外側シェルの少なくとも一部分上に配置された、中性子感度が高いボロン被覆部50とを含む。ボロン被覆部及び外側シェルの一方は、カソードとして機能し、内側体積部内に配置された中央構造物38は、アノードとして機能する。本検出器は、中性子感度が高いボロン被覆部に衝突する中性子に応答して、カソードとアノードとの間に電気エネルギーパルスを導く、内側体積部内のガスを含む。ガスは、3Heガスに衝突する中性子に応答してアノードにより受け取られる電気エネルギーパルスを発生させる。本方法は、中性子が3Heガスに衝突することにより、少なくとも1つの中性子を検出するステップを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボロン−10(10B)ライニング中性子検出器を使用した中性子検出に関し、具体的には、第2の中性子感度が高い物質を10B中性子検出器に加えることに関する。
【背景技術】
【0002】
自由中性子を検出するのに、ヘリウム−3(3He)中性子検出器が使用されてきた。2001年9月11日以降、3Heに対する世界的な需要が著しく増大した。3He需要のほぼ半分は、大きい放射線ポータルモニタの配備に後押しされた。2008年には、3Heの世界的供給量は、極めて低くなり、中性子検出用に3Heを必要とする多くのプログラムが延期又は中止された。不都合なことに、3Heの供給は、トリチウムの崩壊(12.3年の半減期を有する)からの副生物としての生成に限定されており、トリチウムは、核兵器用のブースタとなる兵器プログラムの一部として、又は原子炉運転の副生物として生成される。米国内の3Heの主供給者は、米国エネルギー省である。3Heの残りの供給は、優先度の高いプログラムに割り当てられているので、3Heの供給量は、より慎重に使用されている。それに加えて、3Heのコストは、過去数年にわたり著しく増大してきた。10B中性子検出器は、3He中性子検出器用途に対する1つの代替技術とすることができる。しかし、10B中性子検出器は、3He中性子検出器と比べて、中性子に対する感度が低減している可能性がある。その結果、これら及び他の問題に対処するために、中性子検出器技術において継続的に改善する利点が存在する。
【発明の概要】
【0003】
以下の概要は、本明細書に説明するシステム及び/又は方法のいくつかの態様を基本的に理解するために、簡単な概要を示す。本概要は、本明細書に説明するシステム及び/又は方法の広範な概要ではない。主要/重要要素を特定すること、又はそうしたシステム及び/もしくは方法の範囲を示すことを目的としていない。その唯一の目的は、後に示す、より詳細な説明への序章として、いくつかの概念を簡単な形式で示すことである。
【0004】
1つの態様によれば、本発明は、内側体積部を画定及び封止する外側シェルと、内側体積部において外側シェルの少なくとも一部分上に配置された、中性子感度が高いボロン被覆部とを含む10B中性子検出器を用意する。ボロン被覆部及び外側シェルの一方は、カソードとして機能する。10B中性子検出器は、内側体積部内に配置され、アノードとして機能する中央構造物をさらに含む。検出器は、中性子感度が高いボロン被覆部に衝突する中性子に応答して、カソードとアノードとの間に電気エネルギーパルスを導く、内側体積部内のガスを含む。ガスは、中性子衝突に対する感度が高く、3Heガスに衝突する中性子に応答してアノードにより受け取られる電気エネルギーパルスを発生させる、ある量の3Heガスを含む。
【0005】
別の態様によれば、本発明は、中性子を検出する方法を用意する。本方法は、10B中性子検出器を用意するステップを含む。10B中性子検出器は、内側体積部を画定及び封止する外側シェルと、シェルの内側表面において外側シェルの少なくとも一部分上に配置された、中性子感度が高いボロン被覆部とを含む。ボロン被覆部及び外側シェルの一方は、カソードとして機能する。10B中性子検出器は、内側体積部内に配置され、アノードとして機能する中央構造物をさらに含む。検出器は、中性子感度が高いボロン被覆部に衝突する中性子に応答して、カソードとアノードとの間に電気エネルギーパルスを導く、内側体積部内のガスを含む。ガスは、中性子衝突に対する感度が高く、3Heガスに衝突する中性子に応答してアノードにより受け取られる電気エネルギーパルスを発生させる、ある量の3Heガスを含む。本方法は、中性子が3Heガスに衝突することにより、少なくとも1つの中性子を検出するステップを含む。
【0006】
本発明の上述及び他の態様は、添付の図面を参照して以下の説明を読めば、本発明に関連する当業者には明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一態様による、内側体積部内に3Heガスを含む、例示的な10B中性子検出器の概略図である。
【図2】3Heガスを含む内側体積部内に、内側壁及び複数の中央構造物を有する、例示的な10B中性子検出器の概略断面図である。
【図3】3Heガスを含む内側体積部内に、複数の中央構造物、及び複数の区画を形成する内側壁を有する、例示的な10B中性子検出器の概略断面図である。
【図4】3Heガスを含む内側体積部内に、複数の区画を形成しない内側壁を有する、例示的な10B中性子検出器の概略断面図である。
【図5】本発明の一態様による、図1の10B中性子検出器により、中性子を検出する方法の最上位レベル流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の1つ又は複数の態様を含む例示的な実施形態を説明し、図面に示す。これらの図示する例は、本発明を限定するものではない。例えば、本発明の1つ又は複数の態様は、他の実施形態において、また他のタイプの装置においても使用することができる。さらに、本明細書内で、いくつかの用語は、単に便宜のために使用し、本発明を限定するものとしてとらえるべきでない。さらに、図面では、同じ参照番号は、同じ要素を表すために使用する。
【0009】
例示的なB−10(10B)中性子検出器10の概略図を図1内に全体的に示す。図1は、可能性のある構造/構成などの1つの例を示し、他の例を本発明の範囲内で企図することを理解されたい。1つの特定の例では、10B中性子検出器10は、例えば、中性子により誘発される反応で放出される荷電粒子を観測することにより、通過する中性子を検出するために使用される。10B中性子検出器10は、使用済核燃料の放射線監視又は本土治安維持用途などの様々な用途で使用することができる。
【0010】
10B中性子検出器10は、外側シェル20を含む。外側シェル20は、円形の断面を有し、円筒形の外側シェル20を形成する一方、限定されないが、楕円形、方形、長方形などを含む、他の断面形状を企図することもできる。外側シェル20は、ガス又は混合ガスを含む内側体積部30を画定し、封止する、壁24及び2つの端部26を含むことができる。外側シェル20は、限定されないが、ステンレス鋼及びアルミニウムを含む、様々な金属から構成することができる。絶縁体34は、中央構造物38を適切な位置に保持するために、また、中央構造物38と外側シェル20とが直接接触して電荷が通過することがないように、外側シェル20の2つの端部26上に配置することができる。中央構造物38は、内側体積部30内に配置され、電気回路のアノードとして機能する。中央構造物38は、全体的に、外側シェル20の中心軸近傍に配置することができる。中央構造物38は、ワイヤ、又は少なくともワイヤと同様の部分とすることができる。10B中性子検出器10はさらに、中央構造物38のアノードにより集められた信号を伝送するために、絶縁体34の一方に取り付けられた絶縁体60中に電気フィーダを含む。絶縁体60中の電気フィーダは、当業者ならわかる、信号処理用の回路、部品などに続くことができる。中性子感度が高いボロン被覆部50は、内側体積部30において外側シェル20の少なくとも一部分上に配置される。ボロン被覆部50は、壁24の内側表面を覆うことができる。ボロン被覆部50及び外側シェル20の一方は、カソードとして機能する。1つの例では、外側シェル20は、電気回路のカソードとして機能することができる。別の例では、ボロン被覆部50は、電気回路のカソードとして機能することができるが、外側シェル20は、絶縁体として機能する。
【0011】
1つの例では、ボロン被覆部50は、特定の比率のボロン天然存在同位体を含むことができる。ボロンは、2つの天然存在同位体、通常10B約20%と11B約80%の比率で見出される10B及び11Bを有する。1つの例では、ボロン被覆部50は、重量で20%を超える、ボロン総含有量に対する10B同位体の最小比率を有する。他の変数を同じに維持すれば、ボロン総含有量に対する10B同位体の比率は、10B中性子検出器10の効率に直接関係する。したがって、実行達成できるほど高いボロン含有粉末内のボロン総含有量に対する10B同位体の比率を作り出すのが望ましい。ボロン被覆部50は、限定されないが、ボロン含有スラリの刷毛塗り、ボロン含有スラリの浸漬塗り、ボロン粉末の静電噴霧、及び密充填ボロン粉末の壁24表面への加熱拡散を含む、多数の方法により、壁24の内側表面に塗ることができる。
【0012】
従来、10B中性子検出器の内側体積部は、同位体ガスを充填され、付加的なガスが存在することもできる。内側体積部内のガスは、中性子感度が高いボロン被覆部に衝突する中性子に応答して、カソードとアノードとの間に電気エネルギーパルスを導く。通常の10B中性子検出器は、同位体ガスとしてアルゴンを含み、他のいくつかのガスは、内側体積部内で同位体ガスと混合することができる。これら他のガスは、内側体積部内の反応により生成された紫外線光を吸収する多原子ガスであるクエンチガスを含むことができ、10B中性子検出器の性能を調整することもできる。クエンチガスの例は、限定されないが、CO2及びメタンを含む。
【0013】
10B原子核は、3,340バーンの中性子捕獲断面積を有する。バーンは、10-282(100fm2)と定義される。ボロン感度が高い物質の断面積は、中性子を捕獲する確率に直接関係する。したがって、この断面積が大きくなるほど、中性子を捕獲する確率は高くなる。中性子は、壁の内側表面上のボロン被覆部と相互作用し、1.47MeVのエネルギーを有するアルファ粒子、及び0.84MeVのエネルギーを有するリチウムイオンの副生物を生成する。アルファ粒子及びリチウムイオン副生物は、反対方向に進む。これらの副生物の一方は、内側体積部に入り、内側体積部内の同位体ガスを電離することにより、その運動エネルギーを失うことができる。アノードとカソードとの間に電位差が発生すれば、この電離により生成された電子は、この電位差のために中央構造物のアノードに引き寄せられる。この電位差は、アノードをカソードに対して正にバイアスさせた状態で、数百ボルトにすることができる。中央構造物のアノードの近傍の領域で、ガス分子との衝突により、カスケード効果で、より多くの自由電子が生成される。自由電子は、中央構造物のアノード上に集まり、増幅及びデジタル化することができる電子パルスをもたらす。従来の10B中性子検出器は、中性子に対して感度が高い1つの物質のみ、すなわちボロン被覆部を含む。
【0014】
ある量の3Heガスが、10B中性子検出器10の内側体積部30内に供給される。3Heガスは、中性子衝突に対して感度が高く、中性子の3Heガスに対する衝突に応答して、アノードにより受け取られる電気エネルギーパルスを発生させる。3Heガスは、上述のように、同位体ガスとして振る舞う。中性子がボロン被覆部50と相互作用することにより生じたリチウムイオン又はアルファ粒子が、内側体積部30を通過するとき、3Heガスとの衝突から、自由電子が生成される。これらの自由電子は、中央構造物38のアノードの方に引かれ、自由電子は、信号又は電子パルスを生成するために集められる。3Heガスは、内側体積部30を充填することができ、又は、3Heガスは、アルゴンなどの他の同位体ガスと混合することができる。3He混合ガスは、ある量の別の同位体ガスと混合することができる。1つの例では、他の同位体ガスは、アルゴンを含むことができる。別の例では、他の同位体ガスは、アルゴン及びクエンチガスを含むことができる。
【0015】
それに加えて、内側体積部30内の3Heガスは、中性子感度が高い物質としても機能する。3Heガスにより吸着される、通過する中性子は、764keVの結合エネルギーを有するプロトン及びトリトン粒子の副生物を生成する。3Heガス原子核は、5,333バーンの中性子捕獲断面積を有する。プロトン及びトリトン粒子は、同位体ガスを電離し、自由電子を生成する。アノードとカソードとの間に電位差が発生すれば、この電離により生成された電子は、電位差のために中央構造物のアノードに引き寄せられる。この電位差は、アノードをカソードに対して正にバイアスさせた状態で、数百ボルトにすることができる。中央構造物のアノードの近傍の領域で、ガス分子との衝突により、カスケード効果で、より多くの自由電子が生成される。自由電子は、中央構造物のアノード上に集まり、増幅及びデジタル化することができる電子パルスをもたらす。中性子感度が高い物質として、3Heガスを内側体積部30に加えることにより、10B中性子検出器10の効率が増大する。中性子感度が高いボロン被覆部50及びある量の3Heガスにより、10B中性子検出器10は、10Bライニング中性子検出器としても、3Heガス充填中性子検出器としても同時に動作することができる。例えば、自由中性子が壁24の内側のボロン被覆部50により吸着されないとき、内側体積部30内の3Heガスが中性子を吸収し、それにより、中性子を検出し、10B中性子検出器10の効率を改善することができる。これは、ガス中に中性子感度が高い付加的な物質が不足する従来の10B中性子検出器の改善になる。
【0016】
10B中性子検出器の内側のボロン被覆部は、固体状態であり、中性子とのその反応は、イオンを生成する。しかし、ボロン被覆部は、自己遮蔽することができ、ボロン被覆部は、中性子を吸着し、しばしば、ボロン被覆部が極めて厚いので、中性子吸着から生じたリチウムイオン及びアルファ粒子も保持することを示す。この自己遮蔽状態は、電気パルスが中央構造物のアノード上に集められる確率を低減するので、中性子検出器の効率を低減する。しかし、従来の3Heガス充填検出器は、従来の10Bライニング検出器に比べると、通過する中性子に対して、約20倍、感度が高い。いくつかの中性子検出用途には、10Bがもたらすことができるものよりも高い感度が必要である。中性子感度が高い物質として、10B中性子検出器10の内側体積部30に3Heガスを加えることにより、10B中性子検出器10の感度が向上する。10B中性子検出器10の感度の向上は、従来の3Heガス中性子検出器を充填するのに必要な3Heガスの量よりも少ない量の3Heガスを内側体積部30に加えて達成することができる。これは、従来の10B中性子検出器よりも感度が高い10B中性子検出器10をもたらし、従来の3Heガス中性子検出器に比べて、3Heガスの使用を節約する。
【0017】
図2を参照して、複数の中央構造物38が内側体積部30内に配置された、別の例示的な10B中性子検出器10の断面図を示す。中央構造物38は、内側体積部30を画定及び封止する共有の外側シェル20内でアノードとして機能する。内側体積部30は、複数の内側壁66を含むことができる。内側壁66は、内側体積部30内に複数の区画を形成し、これらの区画を互いに気密密閉しないようにすることができる。図2に示す例は、6つの区画を含むが、内側体積部30内に任意の数の区画を形成することができる、様々な数及び構造の内側壁66が企図される。ボロン被覆部50は、壁24の内側表面及び内側壁66の表面を覆うことができる。
【0018】
中央構造物38の分布は、1区画当り1つの中央構造物38、又は1区画当り2つの中央構造物38など、区画間で等しく分割することができる。あるいは、中央構造物38の分布は、区画間で不均等に分割することができ、例えば、内側体積部30の区画は、区画によって、0、1個、2個、又はそれ以上の中央構造物を有することができる。ある量の3Heガスは、内側体積部30の区画を充填することができ、又は、3Heガスは、アルゴンなどの他の同位体ガスと混合することができる。3Heガスは、クエンチガス、又は他の同位体ガスとクエンチガスとの組合せと混合することもできる。
【0019】
別の例では、内側壁66は、互いに、また外側シェル20との間を封止し、区画間で流体連通しないようにすることができる。この例では、1つの特定の区画は、同じ10B中性子検出器10内の他のどの区画の同位体ガスとも異なる同位体ガスを充填することができる。
【0020】
図3を参照して、内側壁66を有する別の例示的な10B中性子検出器10の断面図を示す。壁24を含む共有の外側シェル20及び2つの端部26(1つだけ示す)は、内側体積部30を画定及び封止する。内側壁66により、内側体積部30内に複数の区画が形成され、あらゆる区画に、複数の中央構造物38が分配される。図示する例では、様々な区画が内側壁66により画定され、密充填ハニカム構造を形成するが、様々な構造が企図される。ボロン被覆部50は、壁24の内側表面及び内側壁66の表面を覆うことができる。これらの区画は、必ずしも封止されないが、壁24及び2つの端部26により封止された、より大きい内側体積部30内に含まれた個々の10B中性子検出器として機能することができる。
【0021】
図4を参照して、内側壁66を有する別の例示的な10B中性子検出器10の断面図を示す。1つの例示的な10B中性子検出器10の構造を理解するのを助けるためだけに、外側シェル20の一部分を透明にして示すが、外側シェル20のいかなる材料特性も示さない。壁24を含む外側シェル20及び2つの端部26(1つだけ示す)は、内側体積部30を画定及び封止する。複数の内側壁66は、個々の区画を形成しないパターンで内側体積部30内に配置することができる。ボロン被覆部50は、壁24の内側表面及び内側壁66の表面を覆うことができる。中央構造物38は、外側シェル20の中心軸に配置することができる。
【0022】
3Heガスを加えることで、その感度が向上した10B中性子検出器により中性子を検出する例示的な方法を図5に全体的に示す。本方法は、図1に示す例示的な10B中性子検出器10に関連して実施することができる。本方法は、10B中性子検出器を用意するステップ110を含む。10B中性子検出器は、壁及び2つの端部を含む外側シェルを含み、外側シェルは内側体積部を画定し、外側シェルはカソードとして機能する。外側シェルは、円形、楕円形、方形、長方形、又は表面積拡張機能を含むことができ、もしくは含むことができない他の断面を有することができる。外側シェルは、ガスを含むことができる内側体積部を画定するために壁及び2つの端部を含むことができる。外側シェルは、限定されないが、ステンレス鋼及びアルミニウムを含む、様々な金属から構成することができる。電気回路では、外側シェルは、カソードとして機能することができる。絶縁体は、中央構造物を適切な位置に保持するために、また、中央構造物と外側シェルとが直接接触して電荷が通過することがないように、外側シェルの2つの端部上に配置することができる。中央構造物は、全体的に、外側シェルの中心軸近傍に配置することができる。中央構造物は、ワイヤと同様の部分とすることができ、電気回路ではアノードとして機能することができる。ボロン被覆部は、壁の内側表面を覆う。10B中性子検出器はさらに、中央構造物のアノードにより集められた信号を伝送するために、絶縁体の一方に取り付けられた絶縁体中に電気フィーダを含む。
【0023】
ある量の3Heガスが、10B中性子検出器の内側体積部に加えられる。3Heガスは、上述のように、同位体ガスとして振る舞う。中性子がボロン被覆部と相互作用することにより生じたリチウムイオン又はアルファ粒子が、内側体積部を通過するとき、同位体ガスとの衝突から、自由電子が生成される。これらの自由電子は、中央構造物のアノードの方に引かれ、自由電子は、信号又は電子パルスを生成するために集められる。3Heガスは、内側体積部を充填することができ、又は、3Heガスは、アルゴン及びクエンチガスなどの他の同位体ガスと混合することができる。
【0024】
それに加えて、内側体積部内の3Heガスは、中性子感度が高い物質としても機能する。通過する中性子は、3Heガスにより吸着され、764keVの結合エネルギーを有するプロトン及びトリトン粒子の副生物を生成する。プロトン及びトリトン粒子は、同位体ガスを電離し、自由電子を生成する。アノードとカソードとの間に電位差が発生すれば、この電離により生成された電子は、電位差のために中央構造物のアノードに引き寄せられる。この電位差は、アノードをカソードに対して正にバイアスさせた状態で、数百ボルトにすることができる。中央構造物のアノードの近傍の領域で、ガス分子との衝突により、カスケード効果で、より多くの自由電子が生成される。自由電子は、中央構造物のアノード上に集まり、増幅及びデジタル化することができる電子パルスをもたらす。中性子感度が高い物質として、3Heガスを内側体積部に加えることにより、10B中性子検出器の効率が増大する。例えば、自由中性子が、吸着されることなく、壁の内側のボロン被覆部を通過するとき、中性子は、内側体積部内の3Heガスにより吸着され、それにより、中性子を検出することができる。
【0025】
本方法は、10B中性子検出器を通過する自由中性子を検出するステップ120をさらに含む。中央構造物のアノードは、自由電子を集め、増幅及びデジタル化することができる信号又は電子パルスをもたらす。次に、中性子係数率、並びに、ガンマ粒子誘導パルス、3Heガス誘導パルス、及び10B誘導パルスなどの間の区別などの、いくつかの測定可能な量を決定するために、信号を分析することができる。
【0026】
1つの例では、本方法は、重量で最小約20%の、ボロン総含有量に対する10B同位体の比率を有するボロン被覆部を含むことができる。中性子は、壁の内側表面のボロン被覆部と相互作用し、放射性原子の副生物を生成する。これらの副生物の1つは、内側体積部に入り、内側体積部内の同位体ガスを電離することにより、その運動エネルギーを失うことができる。アノードとカソードとの間に電位差が発生すれば、この電離により生成された電子は、この電位差のために中央構造物のアノードに引き寄せられる。
【0027】
3Heガスを10B中性子検出器の内側体積部に加えることにより、中性子感度が高い物質の組合せを使用し、検出器の総合中性子感度を増大させる装置が用意される。この検出器は、10Bライニング中性子検出器としても、3Heガス充填中性子検出器としても同時に動作するように比例計数管の性能を最適化する構造特徴を含む。
【0028】
3Heガスを10B中性子検出器の内側体積部に加えることにより、中性子感度が高い物質の組合せを使用し、10B中性子検出器の感度を増大させ、従来の3Heガス中性子検出器と比べると、限られた発生源の3Heガスを節約し、感度が高い中性子検出器のコストを低減する装置が用意される。10B中性子検出器内で3Heガスを使用することにより、検出器効率が増大する一方で、従来の3Heガス中性子検出器と比べると、必要とする3Heガスが少ない、効果的な10B中性子検出器が実現される。
【0029】
本発明は、上述の例示的な実施形態を参照して説明してきた。当業者は、本明細書を読み、理解すれば、修正及び変更を想起するであろう。本発明の1つ又は複数の態様を含む例示的な実施形態は、そうした修正及び変更が添付の特許請求の範囲の範囲内にある限り、そうした修正及び変更のすべてを含むものとする。
【符号の説明】
【0030】
10 10B中性子検出器
20 外側シェル
24 壁
26 端部
30 内側体積部
34 絶縁体
38 中央構造物
50 ボロン被覆部
60 絶縁体
66 内側壁
110 内側体積部内にある量の3Heガスを含む10B中性子検出器を用意するステップ
120 10B中性子検出器を通過する自由中性子を検出するステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側体積部を画定及び封止する外側シェルと、
前記内側体積部において前記外側シェルの少なくとも一部分上に配置された、中性子感度が高いボロン被覆部と、
前記内側体積部内に配置され、アノードとして機能する中央構造物と、
前記中性子感度が高いボロン被覆部に衝突する中性子に応答して、前記カソードと前記アノードとの間に電気エネルギーパルスを導く、前記内側体積部内のガスであって、中性子衝突に対する感度が高く、3Heガスに衝突する中性子に応答して前記アノードにより受け取られる電気エネルギーパルスを発生させる、ある量の3Heガスを含むガスと
を含む、10B中性子検出器であって、
前記ボロン被覆部及び前記外側シェルの一方は、カソードとして機能する、10B中性子検出器。
【請求項2】
前記ガスは、ある量の別の同位体ガスと混合された前記3Heガスを含む、請求項1記載の10B中性子検出器。
【請求項3】
前記他の同位体ガスは、アルゴンを含む、請求項2記載の10B中性子検出器。
【請求項4】
前記他の同位体ガスは、アルゴン及びクエンチガスを含む、請求項2記載の10B中性子検出器。
【請求項5】
前記中性子感度が高いボロン被覆部及び前記ある量の3Heガスにより、前記10B中性子検出器は、10Bライニング中性子検出器としても、3Heガス充填中性子検出器としても同時に動作することができる、請求項1記載の10B中性子検出器。
【請求項6】
前記ボロン被覆部は、重量で20%を超える、ボロン総含有量に対する10B同位体の最小比率を有する、請求項1記載の10B中性子検出器。
【請求項7】
前記外側シェルは、円筒形である、請求項1記載の10B中性子検出器。
【請求項8】
前記10B中性子検出器は、前記内側体積部内に配置された複数の中央構造物をさらに含み、前記中央構造物は、内側体積部を画定及び封止する共有の外側シェル内でアノードとして機能する、請求項1記載の10B中性子検出器。
【請求項9】
前記10B中性子検出器は、複数の内側壁をさらに含み、中性子感度が高いボロン被覆部は、前記内側壁の少なくとも1つ上に配置される、請求項1記載の10B中性子検出器。
【請求項10】
内側体積部を画定及び封止する外側シェルと、
前記内側体積部において前記外側シェルの少なくとも一部分上に配置された、中性子感度が高いボロン被覆部と、
前記内側体積部内に配置され、アノードとして機能する中央構造物と、
前記中性子感度が高いボロン被覆部に衝突する中性子に応答して、前記カソードと前記アノードとの間に電気エネルギーパルスを導く、前記内側体積部内のガスであって、中性子衝突に対する感度が高く、3Heガスに衝突する中性子に応答して前記アノードにより受け取られる電気エネルギーパルスを発生させる、ある量の3Heガスを含むガスと、
を含む、10B中性子検出器であって、
前記ボロン被覆部及び前記外側シェルの一方は、カソードとして機能する、10B中性子検出器を用意するステップと、
前記中性子が前記3Heガスに衝突することにより、少なくとも1つの中性子を検出するステップと
を含む、中性子を検出する方法。
【請求項11】
10B中性子検出器を用意する前記ステップは、3Heガスがある量の別の同位体ガスと混合されるようにするステップを含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記他の同位体ガスは、アルゴンを含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記他の同位体ガスは、アルゴン及びクエンチガスを含む、請求項11記載の方法。
【請求項14】
前記10B中性子検出器は、10Bライニング中性子検出器としても、3Heガス充填中性子検出器としても同時に動作する、請求項10記載の方法。
【請求項15】
前記10B中性子検出器は、前記内側体積部内に配置された複数の中央構造物をさらに含み、前記中央構造物は、内側体積部を画定及び封止する共有の外側シェル内でアノードとして機能する、請求項10記載の方法。
【請求項16】
前記10B中性子検出器は、複数の内側壁をさらに含み、中性子感度が高いボロン被覆部は、前記内側壁の少なくとも1つ上に配置される、請求項10記載の方法。
【請求項17】
前記ボロン被覆部は、重量で20%を超える、ボロン総含有量に対する10B同位体の最小比率を有する、請求項10記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−104873(P2013−104873A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−243227(P2012−243227)
【出願日】平成24年11月5日(2012.11.5)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】