中性粒子入射装置におけるセシウムの貯蔵タンク及びセシウムレベルの測定方法
【課題】
現場で手軽に、しかも精度良くセシウムレベルを測定できるセシウムの貯蔵タンクを提供することを、本発明の目的とする。
【解決手段】
セシウムの貯蔵タンクの蓋に電流導入端子、および、ガイド支持部を設け、前記電流導入端子を、そのピンが蓋を貫通するように設置して、ピン下端に直径D が0.01mm<D<0.4mmの金属製の抵抗線を接続し、ピン上端に計測器のリ−ド線を接続したこと、また、ガイド支持部にガイドを取り付け、ガイドの下端にスペーサを取り付け、該スペーサによって、ガイドと抵抗線の間に空間を設け、この状態で、抵抗線をピン下端からスペーサへと、ガイドに沿わせてU字形に配置したこと、さらに、該U字形抵抗線の下部をセシウムに浸して、抵抗線を流れる電流をセシウムで短絡させ、その状態の電気抵抗を測定し、これをセシウムレベルに変換したことを特徴とするセシウムの貯蔵タンク。
現場で手軽に、しかも精度良くセシウムレベルを測定できるセシウムの貯蔵タンクを提供することを、本発明の目的とする。
【解決手段】
セシウムの貯蔵タンクの蓋に電流導入端子、および、ガイド支持部を設け、前記電流導入端子を、そのピンが蓋を貫通するように設置して、ピン下端に直径D が0.01mm<D<0.4mmの金属製の抵抗線を接続し、ピン上端に計測器のリ−ド線を接続したこと、また、ガイド支持部にガイドを取り付け、ガイドの下端にスペーサを取り付け、該スペーサによって、ガイドと抵抗線の間に空間を設け、この状態で、抵抗線をピン下端からスペーサへと、ガイドに沿わせてU字形に配置したこと、さらに、該U字形抵抗線の下部をセシウムに浸して、抵抗線を流れる電流をセシウムで短絡させ、その状態の電気抵抗を測定し、これをセシウムレベルに変換したことを特徴とするセシウムの貯蔵タンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は核融合装置の負イオンビーム中性粒子入射(Negative -ion based - Neutral Beam Injection、以下、N-NBIと略す)装置に係わり, 特に, セシウム導入装置におけるセシウムの貯蔵タンク及びそのセシウムレベルの測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
N-NBI装置において負イオンビームを生成・加速するイオン源には、イオン生成効率を向上させるため、セシウムを導入するセシウム導入装置が設置されている。セシウムはイオン生成部において消費され、消費量は負イオンビーム生成量によって増減する。セシウム導入装置はイオン源の外側にある貯蔵タンクでセシウムを気化させて、その蒸気を、高真空のイオン源に導入する装置である。このイオン源には、多数の電気配線、冷却水配管が接続されており、貯蔵タンクの周囲にもこれらが多数配置されている(特許文献1)。
【0003】
従来のセシウム導入装置は、特許文献1に記載したようにセシウムの貯蔵タンク、弁および導入管などから構成されており、セシウム残量が分かるように、貯蔵タンク内のセシウムレベルが測定できるようになっていた。測定したセシウムレベルをセシウム残重量に変換し、イオン源があと何日運転可能か、予測していた。
【0004】
従来のセシウムレベル測定方法は、貯蔵タンク内に永久磁石を内装した浮子を容れ、これをセシウム表面に浮かべて、貯蔵タンクの外側からガウスメータセンサで永久磁石の位置を検出し、浮子の沈み分を考慮して、セシウムレベルを求めていた。具体的には、ガウスメータセンサを水平にセットし、これを平行に上下させて、ガウスメータ指示値が+から−へ、または、−から+へ反転する位置で貯蔵タンクに刻まれた目盛を、目盛と直角方向から読む方法である。
【特許文献1】特開2000-356695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来例では、現場の測定場所には多数の電気配線、冷却水配管が配置されており、これらの障害物をよけて、ガウスメータセンサをセットするため、ガウスメータセンサを斜めにセットしたり、目盛を斜めから読んだりしていた。また、浮子が傾きやすかった。そのため、測定者によって読み値が異なり、測定誤差が大きく、精度が悪かった。また、従来例は、現場で手軽に測定するという視点について配慮されていなかった。
【0006】
上記課題を解決し、現場で手軽に、しかも精度良くセシウムレベルを測定できるセシウムの貯蔵タンクを提供することを本発明の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、セシウムの貯蔵タンクの上部に蓋を設置し、該蓋に電流導入端子、および、ガイド支持部を設け、該電流導入端子は、そのピンが蓋を貫通するように設置して、ピン下端に抵抗線を接続し、ピン上端に計測器のリ−ド線を接続した。また、該ガイド支持部にガイドを取り付け、ガイドの下端にスペーサを取り付け、該スペーサによって、ガイドと抵抗線の間に空間を設けた状態で、抵抗線をピン下端からスペーサへと、ガイドにそわせてU字形に配置し、該U字形の抵抗線をセシウムに浸した。
【0008】
また、上記目的を達成するために、前記リ−ド線に電圧をかけて通電し、抵抗線を加熱して抵抗線に付着したセシウム滴、又は、セシウム被膜を蒸発、又は、流下除去した後、抵抗線の電気抵抗を測定するようにした。
【0009】
さらに、上記目的を達成するために、前記抵抗線を直径D が0.01mm<D<0.4mmの金属線とした。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、現場で手軽に、貯蔵タンク内に存在するセシウムレベルを電気的手段により精度良く測定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の主な構成要素は貯蔵タンク、蓋、セシウム、抵抗線、ガイド、スペーサ、電流導入端子およびそのピンである。貯蔵タンクはセシウムの容器、蓋は貯蔵タンクにセシウムを封入するための蓋、抵抗線はセシウムに浸した状態で、その電気抵抗を測定するための部材、ガイドは抵抗線をセシウム中に好適に保持する部材、スペーサは抵抗線とガイドとの間に空間を設ける部材、電流導入端子は貯蔵タンク内側の超高真空下の抵抗線をピンにより外側の大気へと引き出す部材である。抵抗線として、鉄クロム(FeCr)、ニッケルクロム(NiCr) 、ステンレス(NiCrFe) 、ニッケル(Ni) 、タングステン(W) 等から成る直径D が0.01mm<D<0.4mmの金属線を用いる。
【0012】
ガイドとスペーサにより、抵抗線とガイドの間に空間を設けた状態で、細い抵抗線をピン下端からスペーサへと、ガイドにそわせてU字形に配置し、貯蔵タンク内の好適な位置に保持し、U字形の抵抗線の下部をセシウムに浸した。この抵抗線に通電して、セシウムにより短絡した状態の電気抵抗を測定する。抵抗線の電気抵抗はセシウムレベルにより変化するので、測定した電気抵抗の変化をセシウムレベル変化に変換することにより、現場で手軽に、しかも精度良くセシウムレベルを測定するという目的を実現した。
【実施例1】
【0013】
以下、本発明の実施例1を図1〜図10により説明する。図1は本発明の全体構成図である。
主な構成要素は、貯蔵タンク1、セシウム2、抵抗線3、ガイド4、電流導入端子5、ガイド支持部6、スペーサ7、蓋8、ピン9、弁10、計測器11である。貯蔵タンク1はセシウム2の容器、セシウム2は融点が約30℃、電気抵抗率が約48μΩ・cmの金属、抵抗線3はセシウム2に浸された状態で電気抵抗を測定される部材であり、抵抗線3として金属線を用いた。ガイド4は抵抗線3をセシウム2中に好適に保持する部材である。電流導入端子5は貯蔵タンク1内側の超高真空下の抵抗線3をピン9により外側の大気へと引き出す部材、ガイド支持部6はガイド4を好適な位置に保持する部材、スペーサ7はガイド4と抵抗線3の間に空間を設ける部材で、抵抗線3をピン下端13からスペーサ7へと、ガイド4に沿わせてU字形に配置する部材、蓋8は上部に電流導入端子5を、下部にガイド支持部6を設置した貯蔵タンク1の蓋である。ピン9はピン上端12を計測器11のリード線14に、ピン下端13を抵抗線3に接続する部材、弁10は貯蔵タンク1に大気を流入させないための弁で、負イオン源に取り付けた後、これを開く。計測器11はピン上端12の電気抵抗を測定する装置である。
【0014】
抵抗線3の端部をピン下端13へ接続し、抵抗線3をスペーサ7により、ぴんと張り、抵抗線3の先端が貯蔵タンク1の底部より僅かに高くなるようにU字形に配置する。また、スペーサ7をガイド4の先端に取り付け、ガイド4およびスペーサ7をガイド支持部6により好適な位置に配置した。
【0015】
本実施例1によれば、リード線14を計測器11に接続するだけで、電気抵抗が手軽に測定できる。通常、電気抵抗は数値表示されるので、測定者による差違は小さい。従って、現場で手軽に、しかも精度良くセシウムレベルを測定することができる。
【0016】
また、本実施例1では、抵抗線3に電圧をかけ、流れた電流、又は、電力を測定し、測定した電圧、電流、又は、電力から電気抵抗に換算することも可能である。電気抵抗への換算式は電圧/電流、又は、電力/(電流)2 を用いる。
【0017】
本発明では、抵抗線3として金属線を用いたが、材質の選定のために、(1). セシウム2に腐食されないこと、(2). セリウムレベルの低下に対して、好適な電気抵抗の変化を得るため、電気抵抗率が大きいことが求められる。
【0018】
電気抵抗率が大きい材質としては、鉄クロム(FeCr);約140μΩ・cm、ニッケルクロム(NiCr) ;約108μΩ・cm、ステンレス(NiCrFe) ;約70μΩ・cm、銅ニッケル(CuNi) ;約140μΩ・cm30、ニッケル(Ni) ;約9μΩ・cm、タングステン(W) ;約5.3μΩ・cm等が順に挙げられるが、セシウム2に腐食されない材質として、実績があるのはステンレス(NiCrFe)である。
【0019】
その他の材質については、実験で、確認しなければならないが、ステンレスの組成Ni、Cr、Feから、鉄クロム(FeCr)、ニッケルクロム(NiCr)、ニッケル(Ni) 等は腐食されないと考えられる。また、タングステン(W)も腐食に強いので、使用できると考えられる。
【0020】
したがって、本実施例1の抵抗線3として、鉄クロム(FeCr) 線、ニッケルクロム(NiCr) 線、ステンレス(NiCrFe) 線、ニッケル(Ni) 線、タングステン(W) 線を用いることができる。
【0021】
抵抗線3の材質を選定した後に課題となるのが、抵抗線3の直径の選定である。金属製の抵抗線3を用いた場合、電気抵抗率がセシウム2と同程度であるので、抵抗線3の直径をかなり小さくしないと、電気抵抗の変化を測定できないことが予想される。したがって、好適な電気抵抗の変化を得るには、抵抗線3の直径をどの程度にしたら良いか、把握しておくことが非常に重要である。そこで、以下に、任意の抵抗線3の直径に対し、セシウムレベルが低下した時、電気抵抗がどの程度変化するかを、計算で求めた。
【0022】
抵抗線3の直径をD、断面積をA、電気抵抗率をκとし、貯蔵タンク1内の任意のセシウムレベルLにおける抵抗線3の電気抵抗をR、初期のセシウムレベルLfullにおける抵抗線3の電気抵抗をRfullとすると、セシウムレベルがLfullからLに (Lfull-L) だけレベル低下すると、電気抵抗は (R-Rfull)だけ増加する。この抵抗増加 (R-Rfull) は式(1)で表せる。
【0023】
(R-Rfull) =2κ/A×(Lfull- L) ・・・・・・・(1)
A = π/4×D2 ・・・・・・・・・・・・・・(2)
いま、ステンレス(NiCrFe) 製の抵抗線3を用い、セシウムレベルが Lfull- L =10mm だけレベル低下した場合、抵抗線3の直径Dの違いによって、抵抗増加 (R-Rfull) がどの位異なるかを示したのが図2である。直径Dが大きくなるにつれて、抵抗増加 (R-Rfull)は直線的に減少する。
【0024】
ここで、抵抗増加は測定精度上、0.1Ω程度が下限であり、さらに小さくなると、抵抗増加が判別できなくなる。その主な原因は、抵抗線3やリード線14の端子における接触抵抗のバラツキと考えられる。なお、抵抗増加が0.1Ωの時の直径Dは約0.4mmであり、これが直径Dの上限値である。また、直径Dが0.01mmになると、髪の毛よりも細くなり、すぐ切れてしまうので、本実施例1には、使用できなかった。したがって、本実施例1によれば、直径0.01mm<D<0.4mmの金属製抵抗線3を使用できる。
【0025】
図3〜図9に部品図を示した。図3に示す様に、蓋8に電流導入端子5、リード線14、ガイド支持部6、ガイド4、スペーサ7を設置し、ガイド4の長さを調節して、抵抗線3をぴんと張った状態にセットする。この蓋8を図4に示す貯蔵タンク1に設置する。貯蔵タンク1の底部には液溜め15を設け、ここに、スペーサ7を保持し、しかも、貯蔵タンク1の底に抵抗線3の下端が接触しないようにガイド4の長さを調節する。
【0026】
したがって、本実施例1によれば、従来の蓋の代わりに、本発明の蓋8を取り付けることができるので、従来の貯蔵タンク1をそのまま使用することができる。
図5は電流導入端子5の取り付け詳細図、図6はガイド支持部6の取り付け詳細図である。蓋8に図6に示す孔22及びピン孔23を設け、これに電流導入端子5及びピン9を挿入して、接合部19で接合し、高真空である蓋8の下側と、大気圧である蓋8の上側とを、絶縁部20によってシールする。また、絶縁部20によって、貯蔵タンク1と抵抗線3を電気的に絶縁する。
【0027】
したがって、本実施例1によれば、貯蔵タンク1内側の超高真空と外側の大気とをシールすることができる。また、貯蔵タンク1と抵抗線3を電気的に絶縁することができる。
抵抗線3の両端に、図7に示す接続部24を接続して、接続部24のもう一方の端部を、ピン下端13に接続し、抵抗線3を交換できる構造とした。また、抵抗線3を接続部24に接続する場合、複数の素線の束である線束26に挟んで、圧着または接合すると、弾力が増して細い抵抗線3が切れ難く、作業性が良いことが分かった。
【0028】
したがって、本実施例1によれば、細い抵抗線3を良好に、接続部24に接続でき、抵抗線3を容易に交換できる。
ガイド4はガイド支持部6に設置した止めネジ21、および、押さえ25により、図8の様に取り付ける。図8は水平断面の拡大図である。止めネジ21と押さえ25によって、ガイド4を着脱、又は、ガイド4の長さを調節することができる。
【0029】
したがって、ガイド4の先端であるスペーサ7を好適な位置に保持できる。また、抵抗線3をピン下端13に取り付ける際に、作業性が良い。
もし、スペーサ7の設置位置が低すぎると、抵抗線3に張力がかかり過ぎて、抵抗線3が切断するおそれがある。また、スペーサ7の設置位置が高すぎると、抵抗線3がたるんで、スペーサ7から脱落したり、貯蔵タンク1内壁に接触するおそれがある。
【0030】
図9に抵抗線3、ガイド4、スペーサ7の位置関係を示した。ガイド4先端に設けたスペーサ7によって、抵抗線3とガイド4の間に空間を設けて、セシウム2が抵抗線3とガイド4の間に留まらないようにした。セシウム2は毛細管現象で、狭い隙間に滞留しやすい。
【0031】
もし、図10の様に、抵抗線3とガイド4の間にセシウム2が滞留し、セシウム被膜27が形成されると、抵抗線3の抵抗増加が小さく測定され、セシウム2のレベル低下を実際より小さく見積もってしまうことになる。
【0032】
したがって、スペーサ7をガイド4先端に設置することにより、セシウムレベルを精度良く測定することができる。
以上本実施例1によれば、現場で手軽に、しかも精度良くセシウムレベルを測定することができる。
【実施例2】
【0033】
以下、本発明の実施例2を図11、図12により説明する。図11は実施例2の全体構成図であり、図12は機能説明図である。
電源28および可変式変圧器29を実施例1に付加し、リード線14に一定電圧をかけて抵抗線3に通電し、抵抗線3を加熱して抵抗線3に付着したセシウム滴、又は、セシウム被膜27を蒸発、又は、流下除去した後、抵抗線3の電気抵抗を測定した。
【0034】
図12に示したように、セシウム滴、又は、セシウム被膜27が抵抗線3に付着すると、抵抗線3の電気抵抗が小さく測定され、セシウム2のレベル低下を実際より小さく見積もってしまうことになる。
【0035】
したがって、実施例2によれば、さらに精度良くセシウムレベルを測定することができる。
なお、本実施例2では、抵抗線3にかけた電圧、電流、又は、電力を測定し、測定した電圧と電流を式(3)に代入することにより、また、電力と電流を式(4)に代入することにより、セシウムのレベル低下(Lfull- L)に換算できる。
(Lfull- L) = (V/I-Vfull/Ifull)/(2κ/A) ・・・・・・・(3)
(Lfull- L) = (P/I2-Pfull/Ifull2)/(2κ/A) ・・・・・・・(4)
ここで、抵抗線の断面積をA、抵抗線の電気抵抗率をκ、貯蔵タンク内の任意のセシウムレベルLにおける抵抗線にかけた電圧をV、電流をI、電力をPとし、初期のセシウムレベルLfullにおける抵抗線にかけた電圧をVfull、電流をIfull、電力をPfullとする
【実施例3】
【0036】
以下, 本発明の実施例3を図13、図14により説明する。図13は本発明の構造の説明図であり、図14は詳細説明図である。
本実施例3では、スペーサ30の両端にスペーサ孔31を2個設け、ピン下端13からの抵抗線3をスペーサ孔31に固定し、2本のI字形抵抗線3をセシウム2中に挿入させた点が実施例1と異なる。
【0037】
本実施例3によれば、抵抗線3下端よりセシウムレベルLが低下した場合、電気抵抗が急激に増大し、∞になる。
したがって、セシウムレベルLが抵抗線3下端より低下し、残量が微量であることを明確に測定できる機能が付加されている。
【実施例4】
【0038】
以下, 本発明の実施例4を図15により説明する。本実施例4では、ネジ山32とナット33でガイド4を固定した点が実施例1と異なる。本実施例4によれば、ガイド4をより確実に固定できる。
【産業上の利用分野】
【0039】
本発明は、核融合装置の負イオンビーム中性粒子入射装置に設けられたセシウム導入装置におけるセシウム貯蔵タンクのセシウムレベルの測定に使用できる。これ以外に、導電性液体を貯蔵する貯蔵タンク中の液面レベルの測定においても使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明のセシウムの貯蔵タンク及びそのセシウムレベルの測定方法を示す図である。
【図2】本発明を実施した場合の性能予測図である。
【図3】本発明の貯蔵タンクに挿入される抵抗線等のレベル測定用部品を示す図である。
【図4】本発明の蓋が取り付けられる前の貯蔵タンクの構造を示す図である。
【図5】本発明のピン及び絶縁部が取り付けられた蓋の構造を示す図である。
【図6】本発明の蓋にガイド支持部を取り付ける構造を示す図である。
【図7】本発明の抵抗線の接続部を示す図である。
【図8】本発明のガイド支持部の長さ調節を示す図である。
【図9】本発明の抵抗線、ガイド及びスペーサの位置関係を示す図である。
【図10】本発明の抵抗線とガイドにおけるセシウムの滞留を示す図である。
【図11】本発明の実施例2の説明図である。
【図12】図11の機能説明図である。
【図13】本発明の実施例3の説明図である。
【図14】図13の詳細説明図である。
【図15】本発明の実施例4の説明図である。
【符号の説明】
【0041】
1…貯蔵タンク、2…セシウム、3…抵抗線、4…ガイド、5…電流導入端子、6…ガイド支持部、7…スペーサ、8…蓋、9…ピン、10…弁、11…計測器、12…ピン上端、13…ピン下端、14…リード線、15…液溜め、16…フランジ、17…Oリング、18…Oリング溝、19…接合部、20…絶縁部、21…止めネジ、22…孔、23…ピン孔、24…接続部、25…押さえ、26…線束、27…セシウム被膜、28…電源、29…可変式変圧器、30…スペーサ、31…スペーサ孔、32…ネジ山、33…ナット
【技術分野】
【0001】
本発明は核融合装置の負イオンビーム中性粒子入射(Negative -ion based - Neutral Beam Injection、以下、N-NBIと略す)装置に係わり, 特に, セシウム導入装置におけるセシウムの貯蔵タンク及びそのセシウムレベルの測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
N-NBI装置において負イオンビームを生成・加速するイオン源には、イオン生成効率を向上させるため、セシウムを導入するセシウム導入装置が設置されている。セシウムはイオン生成部において消費され、消費量は負イオンビーム生成量によって増減する。セシウム導入装置はイオン源の外側にある貯蔵タンクでセシウムを気化させて、その蒸気を、高真空のイオン源に導入する装置である。このイオン源には、多数の電気配線、冷却水配管が接続されており、貯蔵タンクの周囲にもこれらが多数配置されている(特許文献1)。
【0003】
従来のセシウム導入装置は、特許文献1に記載したようにセシウムの貯蔵タンク、弁および導入管などから構成されており、セシウム残量が分かるように、貯蔵タンク内のセシウムレベルが測定できるようになっていた。測定したセシウムレベルをセシウム残重量に変換し、イオン源があと何日運転可能か、予測していた。
【0004】
従来のセシウムレベル測定方法は、貯蔵タンク内に永久磁石を内装した浮子を容れ、これをセシウム表面に浮かべて、貯蔵タンクの外側からガウスメータセンサで永久磁石の位置を検出し、浮子の沈み分を考慮して、セシウムレベルを求めていた。具体的には、ガウスメータセンサを水平にセットし、これを平行に上下させて、ガウスメータ指示値が+から−へ、または、−から+へ反転する位置で貯蔵タンクに刻まれた目盛を、目盛と直角方向から読む方法である。
【特許文献1】特開2000-356695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来例では、現場の測定場所には多数の電気配線、冷却水配管が配置されており、これらの障害物をよけて、ガウスメータセンサをセットするため、ガウスメータセンサを斜めにセットしたり、目盛を斜めから読んだりしていた。また、浮子が傾きやすかった。そのため、測定者によって読み値が異なり、測定誤差が大きく、精度が悪かった。また、従来例は、現場で手軽に測定するという視点について配慮されていなかった。
【0006】
上記課題を解決し、現場で手軽に、しかも精度良くセシウムレベルを測定できるセシウムの貯蔵タンクを提供することを本発明の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、セシウムの貯蔵タンクの上部に蓋を設置し、該蓋に電流導入端子、および、ガイド支持部を設け、該電流導入端子は、そのピンが蓋を貫通するように設置して、ピン下端に抵抗線を接続し、ピン上端に計測器のリ−ド線を接続した。また、該ガイド支持部にガイドを取り付け、ガイドの下端にスペーサを取り付け、該スペーサによって、ガイドと抵抗線の間に空間を設けた状態で、抵抗線をピン下端からスペーサへと、ガイドにそわせてU字形に配置し、該U字形の抵抗線をセシウムに浸した。
【0008】
また、上記目的を達成するために、前記リ−ド線に電圧をかけて通電し、抵抗線を加熱して抵抗線に付着したセシウム滴、又は、セシウム被膜を蒸発、又は、流下除去した後、抵抗線の電気抵抗を測定するようにした。
【0009】
さらに、上記目的を達成するために、前記抵抗線を直径D が0.01mm<D<0.4mmの金属線とした。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、現場で手軽に、貯蔵タンク内に存在するセシウムレベルを電気的手段により精度良く測定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の主な構成要素は貯蔵タンク、蓋、セシウム、抵抗線、ガイド、スペーサ、電流導入端子およびそのピンである。貯蔵タンクはセシウムの容器、蓋は貯蔵タンクにセシウムを封入するための蓋、抵抗線はセシウムに浸した状態で、その電気抵抗を測定するための部材、ガイドは抵抗線をセシウム中に好適に保持する部材、スペーサは抵抗線とガイドとの間に空間を設ける部材、電流導入端子は貯蔵タンク内側の超高真空下の抵抗線をピンにより外側の大気へと引き出す部材である。抵抗線として、鉄クロム(FeCr)、ニッケルクロム(NiCr) 、ステンレス(NiCrFe) 、ニッケル(Ni) 、タングステン(W) 等から成る直径D が0.01mm<D<0.4mmの金属線を用いる。
【0012】
ガイドとスペーサにより、抵抗線とガイドの間に空間を設けた状態で、細い抵抗線をピン下端からスペーサへと、ガイドにそわせてU字形に配置し、貯蔵タンク内の好適な位置に保持し、U字形の抵抗線の下部をセシウムに浸した。この抵抗線に通電して、セシウムにより短絡した状態の電気抵抗を測定する。抵抗線の電気抵抗はセシウムレベルにより変化するので、測定した電気抵抗の変化をセシウムレベル変化に変換することにより、現場で手軽に、しかも精度良くセシウムレベルを測定するという目的を実現した。
【実施例1】
【0013】
以下、本発明の実施例1を図1〜図10により説明する。図1は本発明の全体構成図である。
主な構成要素は、貯蔵タンク1、セシウム2、抵抗線3、ガイド4、電流導入端子5、ガイド支持部6、スペーサ7、蓋8、ピン9、弁10、計測器11である。貯蔵タンク1はセシウム2の容器、セシウム2は融点が約30℃、電気抵抗率が約48μΩ・cmの金属、抵抗線3はセシウム2に浸された状態で電気抵抗を測定される部材であり、抵抗線3として金属線を用いた。ガイド4は抵抗線3をセシウム2中に好適に保持する部材である。電流導入端子5は貯蔵タンク1内側の超高真空下の抵抗線3をピン9により外側の大気へと引き出す部材、ガイド支持部6はガイド4を好適な位置に保持する部材、スペーサ7はガイド4と抵抗線3の間に空間を設ける部材で、抵抗線3をピン下端13からスペーサ7へと、ガイド4に沿わせてU字形に配置する部材、蓋8は上部に電流導入端子5を、下部にガイド支持部6を設置した貯蔵タンク1の蓋である。ピン9はピン上端12を計測器11のリード線14に、ピン下端13を抵抗線3に接続する部材、弁10は貯蔵タンク1に大気を流入させないための弁で、負イオン源に取り付けた後、これを開く。計測器11はピン上端12の電気抵抗を測定する装置である。
【0014】
抵抗線3の端部をピン下端13へ接続し、抵抗線3をスペーサ7により、ぴんと張り、抵抗線3の先端が貯蔵タンク1の底部より僅かに高くなるようにU字形に配置する。また、スペーサ7をガイド4の先端に取り付け、ガイド4およびスペーサ7をガイド支持部6により好適な位置に配置した。
【0015】
本実施例1によれば、リード線14を計測器11に接続するだけで、電気抵抗が手軽に測定できる。通常、電気抵抗は数値表示されるので、測定者による差違は小さい。従って、現場で手軽に、しかも精度良くセシウムレベルを測定することができる。
【0016】
また、本実施例1では、抵抗線3に電圧をかけ、流れた電流、又は、電力を測定し、測定した電圧、電流、又は、電力から電気抵抗に換算することも可能である。電気抵抗への換算式は電圧/電流、又は、電力/(電流)2 を用いる。
【0017】
本発明では、抵抗線3として金属線を用いたが、材質の選定のために、(1). セシウム2に腐食されないこと、(2). セリウムレベルの低下に対して、好適な電気抵抗の変化を得るため、電気抵抗率が大きいことが求められる。
【0018】
電気抵抗率が大きい材質としては、鉄クロム(FeCr);約140μΩ・cm、ニッケルクロム(NiCr) ;約108μΩ・cm、ステンレス(NiCrFe) ;約70μΩ・cm、銅ニッケル(CuNi) ;約140μΩ・cm30、ニッケル(Ni) ;約9μΩ・cm、タングステン(W) ;約5.3μΩ・cm等が順に挙げられるが、セシウム2に腐食されない材質として、実績があるのはステンレス(NiCrFe)である。
【0019】
その他の材質については、実験で、確認しなければならないが、ステンレスの組成Ni、Cr、Feから、鉄クロム(FeCr)、ニッケルクロム(NiCr)、ニッケル(Ni) 等は腐食されないと考えられる。また、タングステン(W)も腐食に強いので、使用できると考えられる。
【0020】
したがって、本実施例1の抵抗線3として、鉄クロム(FeCr) 線、ニッケルクロム(NiCr) 線、ステンレス(NiCrFe) 線、ニッケル(Ni) 線、タングステン(W) 線を用いることができる。
【0021】
抵抗線3の材質を選定した後に課題となるのが、抵抗線3の直径の選定である。金属製の抵抗線3を用いた場合、電気抵抗率がセシウム2と同程度であるので、抵抗線3の直径をかなり小さくしないと、電気抵抗の変化を測定できないことが予想される。したがって、好適な電気抵抗の変化を得るには、抵抗線3の直径をどの程度にしたら良いか、把握しておくことが非常に重要である。そこで、以下に、任意の抵抗線3の直径に対し、セシウムレベルが低下した時、電気抵抗がどの程度変化するかを、計算で求めた。
【0022】
抵抗線3の直径をD、断面積をA、電気抵抗率をκとし、貯蔵タンク1内の任意のセシウムレベルLにおける抵抗線3の電気抵抗をR、初期のセシウムレベルLfullにおける抵抗線3の電気抵抗をRfullとすると、セシウムレベルがLfullからLに (Lfull-L) だけレベル低下すると、電気抵抗は (R-Rfull)だけ増加する。この抵抗増加 (R-Rfull) は式(1)で表せる。
【0023】
(R-Rfull) =2κ/A×(Lfull- L) ・・・・・・・(1)
A = π/4×D2 ・・・・・・・・・・・・・・(2)
いま、ステンレス(NiCrFe) 製の抵抗線3を用い、セシウムレベルが Lfull- L =10mm だけレベル低下した場合、抵抗線3の直径Dの違いによって、抵抗増加 (R-Rfull) がどの位異なるかを示したのが図2である。直径Dが大きくなるにつれて、抵抗増加 (R-Rfull)は直線的に減少する。
【0024】
ここで、抵抗増加は測定精度上、0.1Ω程度が下限であり、さらに小さくなると、抵抗増加が判別できなくなる。その主な原因は、抵抗線3やリード線14の端子における接触抵抗のバラツキと考えられる。なお、抵抗増加が0.1Ωの時の直径Dは約0.4mmであり、これが直径Dの上限値である。また、直径Dが0.01mmになると、髪の毛よりも細くなり、すぐ切れてしまうので、本実施例1には、使用できなかった。したがって、本実施例1によれば、直径0.01mm<D<0.4mmの金属製抵抗線3を使用できる。
【0025】
図3〜図9に部品図を示した。図3に示す様に、蓋8に電流導入端子5、リード線14、ガイド支持部6、ガイド4、スペーサ7を設置し、ガイド4の長さを調節して、抵抗線3をぴんと張った状態にセットする。この蓋8を図4に示す貯蔵タンク1に設置する。貯蔵タンク1の底部には液溜め15を設け、ここに、スペーサ7を保持し、しかも、貯蔵タンク1の底に抵抗線3の下端が接触しないようにガイド4の長さを調節する。
【0026】
したがって、本実施例1によれば、従来の蓋の代わりに、本発明の蓋8を取り付けることができるので、従来の貯蔵タンク1をそのまま使用することができる。
図5は電流導入端子5の取り付け詳細図、図6はガイド支持部6の取り付け詳細図である。蓋8に図6に示す孔22及びピン孔23を設け、これに電流導入端子5及びピン9を挿入して、接合部19で接合し、高真空である蓋8の下側と、大気圧である蓋8の上側とを、絶縁部20によってシールする。また、絶縁部20によって、貯蔵タンク1と抵抗線3を電気的に絶縁する。
【0027】
したがって、本実施例1によれば、貯蔵タンク1内側の超高真空と外側の大気とをシールすることができる。また、貯蔵タンク1と抵抗線3を電気的に絶縁することができる。
抵抗線3の両端に、図7に示す接続部24を接続して、接続部24のもう一方の端部を、ピン下端13に接続し、抵抗線3を交換できる構造とした。また、抵抗線3を接続部24に接続する場合、複数の素線の束である線束26に挟んで、圧着または接合すると、弾力が増して細い抵抗線3が切れ難く、作業性が良いことが分かった。
【0028】
したがって、本実施例1によれば、細い抵抗線3を良好に、接続部24に接続でき、抵抗線3を容易に交換できる。
ガイド4はガイド支持部6に設置した止めネジ21、および、押さえ25により、図8の様に取り付ける。図8は水平断面の拡大図である。止めネジ21と押さえ25によって、ガイド4を着脱、又は、ガイド4の長さを調節することができる。
【0029】
したがって、ガイド4の先端であるスペーサ7を好適な位置に保持できる。また、抵抗線3をピン下端13に取り付ける際に、作業性が良い。
もし、スペーサ7の設置位置が低すぎると、抵抗線3に張力がかかり過ぎて、抵抗線3が切断するおそれがある。また、スペーサ7の設置位置が高すぎると、抵抗線3がたるんで、スペーサ7から脱落したり、貯蔵タンク1内壁に接触するおそれがある。
【0030】
図9に抵抗線3、ガイド4、スペーサ7の位置関係を示した。ガイド4先端に設けたスペーサ7によって、抵抗線3とガイド4の間に空間を設けて、セシウム2が抵抗線3とガイド4の間に留まらないようにした。セシウム2は毛細管現象で、狭い隙間に滞留しやすい。
【0031】
もし、図10の様に、抵抗線3とガイド4の間にセシウム2が滞留し、セシウム被膜27が形成されると、抵抗線3の抵抗増加が小さく測定され、セシウム2のレベル低下を実際より小さく見積もってしまうことになる。
【0032】
したがって、スペーサ7をガイド4先端に設置することにより、セシウムレベルを精度良く測定することができる。
以上本実施例1によれば、現場で手軽に、しかも精度良くセシウムレベルを測定することができる。
【実施例2】
【0033】
以下、本発明の実施例2を図11、図12により説明する。図11は実施例2の全体構成図であり、図12は機能説明図である。
電源28および可変式変圧器29を実施例1に付加し、リード線14に一定電圧をかけて抵抗線3に通電し、抵抗線3を加熱して抵抗線3に付着したセシウム滴、又は、セシウム被膜27を蒸発、又は、流下除去した後、抵抗線3の電気抵抗を測定した。
【0034】
図12に示したように、セシウム滴、又は、セシウム被膜27が抵抗線3に付着すると、抵抗線3の電気抵抗が小さく測定され、セシウム2のレベル低下を実際より小さく見積もってしまうことになる。
【0035】
したがって、実施例2によれば、さらに精度良くセシウムレベルを測定することができる。
なお、本実施例2では、抵抗線3にかけた電圧、電流、又は、電力を測定し、測定した電圧と電流を式(3)に代入することにより、また、電力と電流を式(4)に代入することにより、セシウムのレベル低下(Lfull- L)に換算できる。
(Lfull- L) = (V/I-Vfull/Ifull)/(2κ/A) ・・・・・・・(3)
(Lfull- L) = (P/I2-Pfull/Ifull2)/(2κ/A) ・・・・・・・(4)
ここで、抵抗線の断面積をA、抵抗線の電気抵抗率をκ、貯蔵タンク内の任意のセシウムレベルLにおける抵抗線にかけた電圧をV、電流をI、電力をPとし、初期のセシウムレベルLfullにおける抵抗線にかけた電圧をVfull、電流をIfull、電力をPfullとする
【実施例3】
【0036】
以下, 本発明の実施例3を図13、図14により説明する。図13は本発明の構造の説明図であり、図14は詳細説明図である。
本実施例3では、スペーサ30の両端にスペーサ孔31を2個設け、ピン下端13からの抵抗線3をスペーサ孔31に固定し、2本のI字形抵抗線3をセシウム2中に挿入させた点が実施例1と異なる。
【0037】
本実施例3によれば、抵抗線3下端よりセシウムレベルLが低下した場合、電気抵抗が急激に増大し、∞になる。
したがって、セシウムレベルLが抵抗線3下端より低下し、残量が微量であることを明確に測定できる機能が付加されている。
【実施例4】
【0038】
以下, 本発明の実施例4を図15により説明する。本実施例4では、ネジ山32とナット33でガイド4を固定した点が実施例1と異なる。本実施例4によれば、ガイド4をより確実に固定できる。
【産業上の利用分野】
【0039】
本発明は、核融合装置の負イオンビーム中性粒子入射装置に設けられたセシウム導入装置におけるセシウム貯蔵タンクのセシウムレベルの測定に使用できる。これ以外に、導電性液体を貯蔵する貯蔵タンク中の液面レベルの測定においても使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明のセシウムの貯蔵タンク及びそのセシウムレベルの測定方法を示す図である。
【図2】本発明を実施した場合の性能予測図である。
【図3】本発明の貯蔵タンクに挿入される抵抗線等のレベル測定用部品を示す図である。
【図4】本発明の蓋が取り付けられる前の貯蔵タンクの構造を示す図である。
【図5】本発明のピン及び絶縁部が取り付けられた蓋の構造を示す図である。
【図6】本発明の蓋にガイド支持部を取り付ける構造を示す図である。
【図7】本発明の抵抗線の接続部を示す図である。
【図8】本発明のガイド支持部の長さ調節を示す図である。
【図9】本発明の抵抗線、ガイド及びスペーサの位置関係を示す図である。
【図10】本発明の抵抗線とガイドにおけるセシウムの滞留を示す図である。
【図11】本発明の実施例2の説明図である。
【図12】図11の機能説明図である。
【図13】本発明の実施例3の説明図である。
【図14】図13の詳細説明図である。
【図15】本発明の実施例4の説明図である。
【符号の説明】
【0041】
1…貯蔵タンク、2…セシウム、3…抵抗線、4…ガイド、5…電流導入端子、6…ガイド支持部、7…スペーサ、8…蓋、9…ピン、10…弁、11…計測器、12…ピン上端、13…ピン下端、14…リード線、15…液溜め、16…フランジ、17…Oリング、18…Oリング溝、19…接合部、20…絶縁部、21…止めネジ、22…孔、23…ピン孔、24…接続部、25…押さえ、26…線束、27…セシウム被膜、28…電源、29…可変式変圧器、30…スペーサ、31…スペーサ孔、32…ネジ山、33…ナット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セシウムの貯蔵タンクの蓋に電流導入端子、および、ガイド支持部を設け、前記電流導入端子のピンが蓋を貫通するように、電流導入端子を設置して、ピン下端に抵抗線を接続し、ピン上端に計測器のリ−ド線を接続し、ガイド支持部にガイドを取り付け、ガイドの下端にスペーサを取り付け、該スペーサによって、ガイドと抵抗線の間に空間を設け、この状態で、抵抗線をピン下端からスペーサへと、ガイドにそわせてU字形に配置し、該U字形の抵抗線をセシウムに浸したことを特徴とするセシウムの貯蔵タンク。
【請求項2】
抵抗線の両端に接続端子を設置して、この接続端子をピン下端部に装着又は切り離し、抵抗線を交換できる構造としたことを特徴とする請求項1記載のセシウムの貯蔵タンク。
【請求項3】
ガイド支持部に止めネジおよび押さえを取り付け、前記ガイドの長さを調節、又は着脱できる構造としたことを特徴とする請求項1に記載のセシウムの貯蔵タンク。
【請求項4】
抵抗線を、複数の素線と共に、接続端子に圧着、又は、接続したことを特徴とする請求項1記載の抵抗線の接続方法。
【請求項5】
抵抗線として、鉄クロム(FeCr) 線、ニッケルクロム(NiCr) 線、ステンレス(NiCrFe) 線、ニッケル(Ni) 線、タングステン(W) 線を用いたことを特徴とする請求項1記載のセシウムの貯蔵タンク。
【請求項6】
抵抗線として、直径D が0.01mm<D<0.4mmの金属線を用いたことを特徴とする請求項1記載のセシウムの貯蔵タンク。
【請求項7】
セシウムの貯蔵タンクの蓋に電流導入端子およびガイド支持部を設け、前記電流導入端子を、そのピンが蓋を貫通するように設置して、ピン下端に抵抗線を接続し、ピン上端に計測器のリ−ド線を接続し、ガイド支持部にガイドを取り付け、ガイドの下端にスペーサを取り付け、スペーサの両端にスペーサ孔を設け、ピン下端からの抵抗線をスペーサ孔に固定してガイドと抵抗線の間に空間を設けた状態でガイドに沿わせてI字形に配置し、該I字形の抵抗線2本をセシウムに浸したことを特徴とするセシウムの貯蔵タンク。
【請求項8】
セシウムの貯蔵タンクの蓋に電流導入端子およびガイド支持部を設け、前記電流導入端子のピンが蓋を貫通するように電流導入端子を設置してピン下端に抵抗線を接続し、ピン上端に計測器のリ−ド線を接続し、ガイド支持部にガイドを取り付け、ガイドの下端にスペーサを取り付け、該スペーサによってガイドと抵抗線の間に空間を設け、この状態で抵抗線をピン下端からスペーサへとガイドにそわせてU字形に配置し、該U字形の抵抗線をセシウムに浸すことにより、前記リ−ド線に電圧をかけて通電して抵抗線を加熱し、抵抗線に付着したセシウム滴又はセシウム被膜を蒸発、又は流下除去した後、電気抵抗を測定し、この電気抵抗の変化を変換式によりセシウムレベルの変化に変換することを特徴とする貯蔵タンク内のセシウムレベル測定方法。
【請求項9】
貯蔵タンク内のセシウムレベルに関する前記変換式が下記式で表される請求項8記載の方法。
(Lfull-L) = (Rfull- R)/(2κ/A)
(抵抗線の断面積をA、抵抗線の電気抵抗率をκ、貯蔵タンク内の任意のセシウムレベルLにおける抵抗線の電気抵抗をR、初期のセシウムレベルLfullにおける抵抗線の電気抵抗をRfullとする)
【請求項10】
セシウムの貯蔵タンクの蓋に電流導入端子およびガイド支持部を設け、前記電流導入端子のピンが蓋を貫通するように電流導入端子を設置してピン下端に抵抗線を接続し、ピン上端に計測器のリ−ド線を接続し、ガイド支持部にガイドを取り付け、ガイドの下端にスペーサを取り付け、該スペーサによってガイドと抵抗線の間に空間を設け、この状態で抵抗線をピン下端からスペーサへとガイドにそわせてU字形に配置し、該U字形の抵抗線をセシウムに浸すことにより、前記リ−ド線に電圧をかけて通電して抵抗線を加熱し、抵抗線に付着したセシウム滴又はセシウム被膜を蒸発又は流下除去した後、抵抗線に加えた電圧、流れた電流及び/又は電力を測定し、測定した電圧、電流及び/又は電力を電圧/電流に関する式又は電力/(電流)2に関する式によりセシウムレベルの変化に変換することを特徴とする貯蔵タンク内のセシウムレベル測定方法。
【請求項11】
貯蔵タンク内のセシウムレベルに関する前記電圧/電流に関する式が下記式で表される請求項10記載の方法。
(Lfull- L) = (V/I-Vfull/Ifull)/(2κ/A)
(抵抗線の断面積をA、抵抗線の電気抵抗率をκ、貯蔵タンク内の任意のセシウムレベルLにおいて抵抗線にかけた電圧をV、電流をIとし、初期のセシウムレベルLfullにおける抵抗線にかけた電圧をVfull、電流をIfullとする)
【請求項12】
貯蔵タンク内のセシウムレベルに関する電力/(電流)2に関する式が下記式で表される請求項10記載のセシウムレベル測定方法。
(Lfull- L) = (P/I2-Pfull/Ifull2)/(2κ/A)
(抵抗線の断面積をA、抵抗線の電気抵抗率をκ、貯蔵タンク内の任意のセシウムレベルLにおける抵抗線にかけた電力をP、電流をIとし、初期のセシウムレベルLfullにおける抵抗線にかけた電力をPfull、電流をIfullとする)
【請求項1】
セシウムの貯蔵タンクの蓋に電流導入端子、および、ガイド支持部を設け、前記電流導入端子のピンが蓋を貫通するように、電流導入端子を設置して、ピン下端に抵抗線を接続し、ピン上端に計測器のリ−ド線を接続し、ガイド支持部にガイドを取り付け、ガイドの下端にスペーサを取り付け、該スペーサによって、ガイドと抵抗線の間に空間を設け、この状態で、抵抗線をピン下端からスペーサへと、ガイドにそわせてU字形に配置し、該U字形の抵抗線をセシウムに浸したことを特徴とするセシウムの貯蔵タンク。
【請求項2】
抵抗線の両端に接続端子を設置して、この接続端子をピン下端部に装着又は切り離し、抵抗線を交換できる構造としたことを特徴とする請求項1記載のセシウムの貯蔵タンク。
【請求項3】
ガイド支持部に止めネジおよび押さえを取り付け、前記ガイドの長さを調節、又は着脱できる構造としたことを特徴とする請求項1に記載のセシウムの貯蔵タンク。
【請求項4】
抵抗線を、複数の素線と共に、接続端子に圧着、又は、接続したことを特徴とする請求項1記載の抵抗線の接続方法。
【請求項5】
抵抗線として、鉄クロム(FeCr) 線、ニッケルクロム(NiCr) 線、ステンレス(NiCrFe) 線、ニッケル(Ni) 線、タングステン(W) 線を用いたことを特徴とする請求項1記載のセシウムの貯蔵タンク。
【請求項6】
抵抗線として、直径D が0.01mm<D<0.4mmの金属線を用いたことを特徴とする請求項1記載のセシウムの貯蔵タンク。
【請求項7】
セシウムの貯蔵タンクの蓋に電流導入端子およびガイド支持部を設け、前記電流導入端子を、そのピンが蓋を貫通するように設置して、ピン下端に抵抗線を接続し、ピン上端に計測器のリ−ド線を接続し、ガイド支持部にガイドを取り付け、ガイドの下端にスペーサを取り付け、スペーサの両端にスペーサ孔を設け、ピン下端からの抵抗線をスペーサ孔に固定してガイドと抵抗線の間に空間を設けた状態でガイドに沿わせてI字形に配置し、該I字形の抵抗線2本をセシウムに浸したことを特徴とするセシウムの貯蔵タンク。
【請求項8】
セシウムの貯蔵タンクの蓋に電流導入端子およびガイド支持部を設け、前記電流導入端子のピンが蓋を貫通するように電流導入端子を設置してピン下端に抵抗線を接続し、ピン上端に計測器のリ−ド線を接続し、ガイド支持部にガイドを取り付け、ガイドの下端にスペーサを取り付け、該スペーサによってガイドと抵抗線の間に空間を設け、この状態で抵抗線をピン下端からスペーサへとガイドにそわせてU字形に配置し、該U字形の抵抗線をセシウムに浸すことにより、前記リ−ド線に電圧をかけて通電して抵抗線を加熱し、抵抗線に付着したセシウム滴又はセシウム被膜を蒸発、又は流下除去した後、電気抵抗を測定し、この電気抵抗の変化を変換式によりセシウムレベルの変化に変換することを特徴とする貯蔵タンク内のセシウムレベル測定方法。
【請求項9】
貯蔵タンク内のセシウムレベルに関する前記変換式が下記式で表される請求項8記載の方法。
(Lfull-L) = (Rfull- R)/(2κ/A)
(抵抗線の断面積をA、抵抗線の電気抵抗率をκ、貯蔵タンク内の任意のセシウムレベルLにおける抵抗線の電気抵抗をR、初期のセシウムレベルLfullにおける抵抗線の電気抵抗をRfullとする)
【請求項10】
セシウムの貯蔵タンクの蓋に電流導入端子およびガイド支持部を設け、前記電流導入端子のピンが蓋を貫通するように電流導入端子を設置してピン下端に抵抗線を接続し、ピン上端に計測器のリ−ド線を接続し、ガイド支持部にガイドを取り付け、ガイドの下端にスペーサを取り付け、該スペーサによってガイドと抵抗線の間に空間を設け、この状態で抵抗線をピン下端からスペーサへとガイドにそわせてU字形に配置し、該U字形の抵抗線をセシウムに浸すことにより、前記リ−ド線に電圧をかけて通電して抵抗線を加熱し、抵抗線に付着したセシウム滴又はセシウム被膜を蒸発又は流下除去した後、抵抗線に加えた電圧、流れた電流及び/又は電力を測定し、測定した電圧、電流及び/又は電力を電圧/電流に関する式又は電力/(電流)2に関する式によりセシウムレベルの変化に変換することを特徴とする貯蔵タンク内のセシウムレベル測定方法。
【請求項11】
貯蔵タンク内のセシウムレベルに関する前記電圧/電流に関する式が下記式で表される請求項10記載の方法。
(Lfull- L) = (V/I-Vfull/Ifull)/(2κ/A)
(抵抗線の断面積をA、抵抗線の電気抵抗率をκ、貯蔵タンク内の任意のセシウムレベルLにおいて抵抗線にかけた電圧をV、電流をIとし、初期のセシウムレベルLfullにおける抵抗線にかけた電圧をVfull、電流をIfullとする)
【請求項12】
貯蔵タンク内のセシウムレベルに関する電力/(電流)2に関する式が下記式で表される請求項10記載のセシウムレベル測定方法。
(Lfull- L) = (P/I2-Pfull/Ifull2)/(2κ/A)
(抵抗線の断面積をA、抵抗線の電気抵抗率をκ、貯蔵タンク内の任意のセシウムレベルLにおける抵抗線にかけた電力をP、電流をIとし、初期のセシウムレベルLfullにおける抵抗線にかけた電力をPfull、電流をIfullとする)
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−33116(P2007−33116A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−213990(P2005−213990)
【出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【出願人】(505374783)独立行政法人 日本原子力研究開発機構 (727)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【出願人】(505374783)独立行政法人 日本原子力研究開発機構 (727)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]