説明

中枢神経系に関連する医学的状態の治療のための、および認知機能の向上のためのシステムならびに方法

種々の脳に関連する状態を診断および治療するための、および/または個人の認知、行動、もしくは感情の機能または技能の少なくとも1つを改変するためのシステムならびに方法。脳に関連する状態を診断および治療する方法は:(i)脳に関連する状態と関連付けられる脳領域を少なくとも識別する工程;(ii)少なくとも1つの電気、磁気、電磁気、および光電刺激を用いてその脳領域を刺激する工程;(iii)所望される場合は含んでもよい、その脳領域と関連付けられる少なくとも1つの認知的特徴を刺激する工程;ならびに、(iv)所望される場合は含んでもよい、その脳領域に、細胞置換療法、細胞再生療法、および細胞成長のうちの少なくとも1つを含む治療を施す工程、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、発明の名称が「認知機能を高めるための方法およびシステム、ならびに中枢神経系の医学的影響を治療するためのヘルメット(Method and System for Enhancement of Cognitive Functions and Helmet for Treatment of Central Nervous System Medical Implications)」である2007年10月4日出願の米国特許仮出願第60/960,574号の利益を主張するものであり、その全開示事項は参照することでその全体が本明細書に組み入れられる。本出願は、2008年5月13日出願の米国特許出願第12/153,037号の一部継続出願でもあり、その出願は、2004年11月14日出願の米国特許出願第10/904,505号の継続出願であり、その出願は、さらに、2004年9月13日出願の米国特許仮出願第60/522,286号の利益を主張するものであり、これらの全開示事項も参照することでその全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
本出願は、その全体が参照することで本明細書に組み入れられる、発明の名称が「中枢神経系に関連する医学的状態の評価および治療のための、および認知機能の向上のためのシステムならびに方法(Systems and Methods for Assessing and Treating Medical Conditions Related to the Central Nervous System and for Enhancing Cognitive Functions)」であり本出願と同日出願の代理人整理番号N2222.0008/P008に関連し、この特許非仮出願は、その全開示事項が参照することでその全体が本明細書に組み入れられる、発明の名称が「中枢神経系の医学的影響および徴候を評価、および治療するためのシステム、ならびに方法(System and Method for Assessment and Treatment of Central Nervous System Medical Implications and Indications)」であり2007年10月4日出願の米国特許仮出願第60/960,575号の利益を主張するものである。
【0003】
(技術分野)
本発明は、神経系と関連付けられる医学的状態の診断および治療のための、および個人の認知機能の向上のためのシステムならびに方法に関する。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、神経系と関連付けられる種々の医学的状態を識別および治療するように構成された方法ならびにシステムを提供する。本発明は、個人の認知機能を向上させるためのシステムおよび装置も提供する。
【0005】
本発明のその他の特徴および利点は、添付の図面を参照する以下の本発明の説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1は、本発明の代表的な態様に従う、一体型神経認知システム(integrative neuro−cognitive system)の概略的なブロック図である。
【図2】図2は、図1のシステムの神経診断モジュール(NEURODIAGNOSTICS MODULE)の概略的なブロック図である。
【図3】図3は、図1のシステムの関心領域演算処理モジュール(REGIONS OF INTEREST COMPUTATIONAL MODULE)の概略的なブロック図である。
【図4】図4は、図1のシステムの脳特徴演算処理モジュール(BRAIN TRAIT COMPUTATION MODULE)の概略的なブロック図である。
【図5】図5は、図1のシステムの治療モジュールの概略的なブロック図である。
【図6】図6は、図1のシステムの刺激モジュールの概略的なブロック図である。
【図7】図7は、図6の刺激モジュールの脳刺激装置の概略的なブロック図である。
【図8】図8は、図6の刺激モジュールの脳刺激装置の別の概略的な図である。
【図9】図9は、態様Aのためのシステムを示す。
【図10】図10は、態様Bのためのシステムを示す。
【図11】図11は、態様Cのためのシステムを示す。
【図12】図12は、コンピュータアプリケーションのブロック図である。
【図13】図13は、ENDブロック図である。
【図14】図14は、ISAT、患者間アクロスタイム(Inter−Subject Across Time)のブロック図である。
【図15】図15は、NDA、規範データ分析のブロック図である。
【図16】図16は、EDMIS、エキスパート意思決定双方向システム(Expert Decision Making Interactive System)のブロック図である。
【図17】図17は、ADM、アルツハイマー病診断モジュールのブロック図である。
【図18】図18は、DBLM、疾患脳位置決定モジュール(Diseased Brain Localization Module)のブロック図である。
【図19】図19は、態様Cの刺激装置の拡張されたバージョンを示す。
【図20】図20は、本発明の一体型神経認知システムのジャイロスコープ安定化およびフィードバックシステムの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下で提供される例は、本発明の種々の態様を詳細に述べるものである。この詳細な説明で考察されるもの以上の本発明のその他の特徴、態様、および利点は、当業者にとっては、本明細書で提供される詳細に照らしてより明らかとなるであろう。当業者であれば、本発明の範囲または趣旨から逸脱せずに、多くの変更を本発明に施すことができることは理解されるはずである。
【0008】
本発明は、神経系と関連付けられる種々の医学的状態を識別および治療するように構成された方法ならびにシステムを提供する。本発明は、個人の認知機能を向上させるための方法およびシステムも提供する。
【0009】
本発明は、種々の脳に関連する状態を識別および治療する、ならびに/または個人の認知、行動、もしくは感情の機能または技能のうちの少なくとも1つを評価および改変する(例えば向上させる)ように構成された、システムならびに装置を提供する。このシステムは、少なくとも1つの刺激装置を含んでよい。適切な刺激装置としては、これらに限定されないが、侵襲的および非侵襲的脳刺激装置のうちの少なくとも1つを含んでよい第一の刺激装置、ならびに第一の刺激装置に操作可能に接続される第二の刺激装置が挙げられる。第一の刺激装置は、脳に関連する状態と関連付けられる少なくとも1つの脳領域を、電気、磁気、電磁気、および光電刺激のうちの少なくとも1つを用いて刺激するように構成される。第二の刺激装置は、識別された脳領域と関連付けられる少なくとも1つの認知機能を改変するように構成される。第一および第二の刺激装置は、単一の一体化された装置を形成してよく、または別の選択肢として、装置の別々の部分を形成してもよい。第一および第二の刺激装置は、同時にまたは順次に操作されるように構成される。
【0010】
本発明は、種々の脳に関連する状態を診断および治療する方法、ならびに/または、個人の認知、行動、もしくは感情の機能または技能の少なくとも1つを改変する方法も提供する。脳に関連する状態を診断および治療する方法、または認知機能を高めるための方法は:(i)脳に関連する状態または認知機能と関連付けられる脳領域を少なくとも識別する工程;(ii)電気、磁気、電磁気、および光電刺激などの刺激を用いてその脳領域を刺激する工程;(iii)所望される場合は含んでもよい、少なくとも工程(i)の脳領域と関連付けられる少なくとも1つの認知的特徴を刺激する工程;(iv)所望される場合は含んでもよい、少なくとも工程(i)の脳領域に細胞置換療法、細胞再生療法、および細胞成長のうちの少なくとも1つを含む治療を施す工程;ならびに、(v)所望される場合は含んでもよい、少なくとも工程(i)の脳領域に薬理学的治療を施す工程、を含むことができる。
【0011】
本発明は、種々の脳に関連する疾患を診断および治療するための、ならびに/または、標準的な個人の脳に関連する認知機能における特定の認知、行動、もしくは感情の機能(もしくは技能)を評価しおよびこれを向上させるための、一体型神経認知システムを提供する(構造もしくは機能もしくは認知機能の、対応する統計的な健康もしくは脳疾患の基準との、または認知が向上された機能に対する統計的基準との個人ごとの比較に基づく)。本発明の一体型神経認知システムは、引き続いての神経の電気または電磁気刺激、および個人の識別された疾患脳領域または脳領域の向上度が低い(sub−enhanced)1もしくは複数の認知機能の集中的な(convergent)認知刺激を提供する。
【0012】
本発明は、さらに、特定の脳に関連する1もしくは複数の疾患を有する個人を、個人の特定の機能、構造、または認知異常の詳細と共に鑑別診断するための神経診断演算処理システム(neurodiagnostic computational systems)および方法も提供する。別の選択肢として、本発明は、脳機能に対する認知が向上された基準と比較してさらに向上することができる個人の特定の1もしくは複数の認知機能を識別するための神経診断演算処理システムおよび方法を提供する。さらに、本発明は、識別された疾患に関連する脳の部位(brain loci)の刺激、または識別された認知技能もしくは機能の向上に必要である、正確な個人ごとの脳刺激、および対応する認知刺激パラメータの演算処理を行う装置および方法も提供する。
【0013】
本発明は、さらに、適切な脳領域および対応する認知機能を刺激し、同時に、適切な脳の機能、構造、および対応する認知機能の刺激前後での神経診断測定の比較に基づいて、任意の個人もしくは疾患もしくは特定の認知向上機能に対する脳および認知刺激パラメータの連続的なモニタリングならびに調節を行うための装置、ならびに方法を提供する。
【0014】
本発明は、適切な疾患脳領域、またはそれへの刺激が標準的な個人の1もしくは複数の特定の技能における認知実行(cognitive performance)を改善することができる領域を、電気的または電磁気的に位置決定し、刺激するための方法およびシステムを提供する。電気または電磁気刺激は、同じ脳領域の集中的な認知刺激、および/または、電気もしくは電磁気もしくは認知刺激された同じ脳領域の再生、置換、または成長を引き起こして潜在的な治療もしくは神経可塑性効果(neuroplasticity effect)を最大化する神経可塑的方法(neuroplasticity methodologies)のインビボでの再生もしくは神経移植、または、電磁気刺激または認知刺激などによって刺激された1もしくは複数の同一の脳領域と関連付けられる認知機能の神経可塑性もしくは再生もしくは向上を促進することができる薬理学的な剤または物質、と共に組み合わせてよい。
【0015】
本発明は、1もしくは複数の認知機能が高められた個人と正常な個人との間を区別するための、コンピュータを用いた統計的評価の方法およびシステムにも関する。
【0016】
ここで、同じ要素は同じ符号で表される図面を参照すると、図1〜8は、神経系と関連付けられる医学的状態を診断および治療するように、ならびに/または哺乳類の認知機能を向上させるように構成される本発明のシステム200の種々の構造要素を示す。
【0017】
図1を参照するが、この図は、病理学上の機能的もしくは構造的な脳の特徴、または個人における認知実行の特徴である個人脳領域100を示すものであり、これらの領域は、神経診断モジュール101によって識別される脳に関連する特定の疾患と関連付けられる(図1)。神経診断モジュール101は、機能活性化もしくは構造マップ、または特定の1つの(もしくは複数の)作業に対するもしくは休息時間の間の個人における対応する認知実行を測定する。神経診断モジュール101は、この情報を関心領域演算処理モジュール102へ移し、そこで、その構造、機能、もしくは認知機能が、それらの対応する統計的に確立された健康基準から、または特定の作業における認知的に向上された(cognitively enhanced)実行に対するそれらの対応する統計的な基準から逸脱する個人の特定の脳領域が識別される。
【0018】
関心領域演算処理モジュール102は、任意の個人におけるこれらの識別された統計的に逸脱した、または認知的に向上した脳領域を、脳特徴演算処理モジュール103での分析へと出力する。脳特徴演算処理モジュール103は、これらの識別された脳領域のいずれかが、特定の脳に関連する疾患の公知の構造的、機能的、または認知的病態生理学の範囲内に統計的に適合するかどうかを判定する。別の選択肢として、脳特徴演算処理モジュール103は、これらの識別された脳領域のいずれかが、向上されたもしくは非常に優れた認知または行動実行(特定の作業または1もしくは複数の技能において)に対する確立された基準の範囲内に統計的に適合するかどうかを判定する。従って、例えば、自閉症スペクトラム障害(ASD)の場合、統計的に確立された基準により、自閉症の小児または個人が、左脳半球(LH)の代表的なブローカおよびウェルニッケ言語領域は異常な不完全な活性化(さらには、構造的に低下したサイズ)を見せ、一方反対側(RH)のブローカおよびウェルニッケ領域は異常な過剰活性化(または、構造的に肥大化)を見せることが示される。従って、関心領域演算処理モジュール102が、LHのブローカおよびウェルニッケ言語領域のそのような異常な低活性化(反対側のRHのブローカおよびウェルニッケ領域の過剰活性化を伴っても伴わなくても)を識別する場合、関心領域演算処理モジュール102は、そこでこれらの領域を脳特徴演算処理モジュール103へ出力し、これらの識別された脳領域のいずれかが、自閉症スペクトラム障害(ASD)の公知の構造的、機能的、または認知的病態生理学の範囲内に統計的に適合するかどうかの判定が行われる。
【0019】
別の選択肢として、アルツハイマー病(または、老化、認知症、もしくは軽度認知機能障害(MCI)に起因するその他のいずれかの記憶喪失)の場合、統計的に確立された基準により、このような記憶障害は、海馬およびその他の内側側頭部構造(medial temporal structures)の構造ならびに機能の低下、ならびに、さらには前および後脳領域と顔認識領域(facial recognition regions)との結合性(connectivity)の低下、または小脳の構造的、機能的、もしくは認知的障害(運動協調性障害および意味記憶または発語技能(verbal capability)の喪失を伴う)、または気分および実行機能領域(mood and executive functioning region)(左前頭前部領域、および帯状回、および前頭葉など)の障害、を伴うことが示される。従って、関心領域演算処理モジュール102が、これらの脳構造のそのような異常に低下した構造的または機能的値を識別する場合、これらの脳領域は脳特徴演算処理モジュール103へ出力され、これらの識別された脳領域のいずれかが、アルツハイマー病、MCI、認知症、もしくは老化に関連する記憶喪失、またはその他の老化疾患(aging illnesses)の公知の構造的、機能的、または認知的病態生理学の範囲内に統計的に適合するかどうかの判定が行われる。識別された関心領域または認知実行レベルが、脳疾患と合うか、または特定の1もしくは複数の作業における認知的向上度が低い実行の神経の機能的、構造的、または認知的なレベルと合う場合、治療モジュール104は、機能的、構造的、もしくは認知的疾患指標の改善、または特定の1もしくは複数の作業における実行の向上に必要である識別された個人脳領域100の刺激に必要とされる正確な個人ごとの脳および認知刺激パラメータの演算処理を行う。
【0020】
関心領域演算処理モジュール102は、任意の個人における識別された認知的に向上された脳領域も、脳特徴演算処理モジュール103での分析のために出力し、これらの識別された脳領域のいずれかが、向上されたもしくは非常に優れた認知または行動実行(特定の作業または1もしくは複数の技能において)に対する確立された基準から統計的に逸脱しているかどうかが判定される。従って、例えば、その構造的、機能的、または認知的パターンが、命名(naming)、発音、短期発語記憶(short−term verbal memory)、発語知能の手段(measures of verbal intelligence)、単語連想、語彙、文法、実用言語、意味などを含むがこれらに限定されない標準よりも高いまたは特に優れた認知的言語能力によって示され、およびお向上された機能活性化、または結合性、または効率的な脳活性化パターン、または機能的なもしくは構造的な向上された認知的言語実行能力のその他のいずれかの尺度とも関連付けられる向上された言語能力に対する基準と比べて、統計的に異なることが分かった標準的な個人の場合、これらの識別された向上度が低い脳領域もしくは対応する認知機能に対する認知または電磁気または電気刺激が実施されることになる。識別された関心領域または認知実行レベルが、特定の1もしくは複数の作業における向上度が低い神経機能的または構造的または認知的相関関係(correlates)と合うように演算処理される場合、治療モジュール104は、特定の1もしくは複数の作業における実行を向上させることを目的として機能、構造、または認知を改善するために必要とされる正確な個人ごとの脳および認知刺激パラメータの演算処理を行う。
【0021】
刺激モジュール105は、まとめられた神経認知刺激パラメータを含む個人ごとの脳および認知刺激に関する治療モジュール104からの入力を受ける。さらに、および/または所望される場合は、インビボ刺激装置109を、刺激モジュール105に組み合わせてよい。代表的な態様では、インビボ刺激装置109は、同一の個人脳領域100を標的とする、神経細胞、もしくは組織、もしくは支持細胞(supportive cell)のインビボでの移植、または再生もしくは幹細胞挿入を含んでよい。
【0022】
刺激モジュール105と組み合わせて、および刺激モジュール105の後に、フィードバックを存在させてもよい。フィードバックは、神経診断モジュール101によって行われる刺激後測定を含んでよく、これは、次に、関心領域演算処理モジュール102、脳特徴演算処理モジュール103、治療モジュール104、および刺激モジュール105を含むすべての連続する演算処理工程を受ける。フィードバックの演算処理工程はすべて、脳刺激および対応する認知刺激の適用後の個人における機能、構造、または対応する認知刺激の潜在的な改善に基づく、個人ごとの脳および対応する認知刺激パラメータを連続的にモニタリングおよび調節することを目的としている(例:その個人における臨床的改善を示す、特定の病態生理学的疾患の閾値を超えるまで、または、別の選択肢として、個人における特定の1もしくは複数の認知機能の向上を示す特定の認知的向上の閾値を超えるまで)。
【0023】
図1のコンポーネントの各々(すなわち、神経診断モジュール101、関心領域演算処理モジュール102、脳特徴演算処理モジュール103、治療モジュール104、および刺激モジュール105)は、独立してもしくは別々に、または互いの考えられるいかなる組み合わせで機能してもよい。
【0024】
本発明の1つの態様によると、神経診断モジュール101は、機能的または構造的神経イメージングデータを、統計的に有効である個々の機能活性化パターン、および統計的に有効である個々の構造マップへと翻訳するように構成される。神経診断モジュール101は、個々の認知実行データを統計的に確立された健康基準と比較するようにも構成される。
【0025】
図1のシステム200の神経診断モジュール101の簡略化したブロック図を示す図2をここで参照する。神経診断モジュール101は、機能的神経イメージングデータ110、構造的神経イメージングデータ111、および認知データ112を取得するように構成され、これらのデータは、次に、統計演算処理モジュール114へ送られる。図2に示すように、統計演算処理モジュール114は、個人機能活性化データ116、個人構造マップ118、および個人認知的プロファイル120の演算処理を行うように構成される。
【0026】
機能的神経イメージングデータ110は、特定の認知または行動作業の実行の間の、特定の個人の異なる脳領域にわたる活性化の種々の神経イメージング測定を含む。機能的神経イメージングデータ110の別の考えられる測定は、休息時の特定の個人の神経イメージング測定を含む。このデータは、多くある中でも、様々な磁気共鳴イメージング(MRI)、機能的磁気共鳴イメージング(fMRI)、ポジトロン放出断層撮影(PET)、単一光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)、脳波記録(EEG)、および事象関連電位(ERP)の技術を用いることで得ることができる。
【0027】
構造的神経イメージングデータ110は、個人の脳構造の種々の神経イメージング測定を含む。構造マッピングの限定されない例は、MRIである(もっとも、上記で詳述のように、PETおよびSPECTなどのその他の装置も構造イメージを作り出す能力を持つ)。
【0028】
認知データ112は、広範囲にわたる考えられる認知または行動試験における個人の認知実行の測定を含み、中でも、これらに限定されないが:反応時間、正確性、注意測定(measures of attention)、記憶、学習、実行機能、言語、知能、人格測定、気分、および自尊心を挙げることができる。認知データは、コンピュータによる、紙と鉛筆による、インタビューによる実行試験、または認知もしくは行動試験を施すその他の形態を介して得ることができる。認知データは、種々の形態でコンピュータに入力される口頭、筆記、視覚、または触感による反応を介して得ることができる。
【0029】
図2に示すように、機能的神経イメージングデータ110、構造的イメージングデータ111、および認知データ112は、これらの種類のデータの各々を統計的に確立された基準と比較して個人機能的活性化データ116、個人構造マップ118、および個人認知プロファイル120を決定する、統計演算処理モジュール114へ入力される。このような演算処理および解析を行うための種々の演算処理ソフトウェアが入手可能であり、中でも、ICA、SPM、およびAutoROIなどである。
【0030】
統計的に確立された基準に対する個人の機能的パターンの統計演算処理モジュール114による解析に基づき、個人機能活性化データ116は、特定の認知または行動作業を行っている個人、または休息中の個人の、統計的に確立された基準に対する独特の脳活性化パターンを提供する。
【0031】
同様に、統計的に確立された基準に対する個人の構造的脳イメージの統計演算処理モジュール114による解析に基づき、個人構造マップ118は、個人の独特の脳構造を提供する。
【0032】
統計的に確立された基準に対する個人の認知実行の統計演算処理モジュール114による解析に基づき、個人認知プロファイル120は、その個人の独特の認知的な能力、技能、または機能を含む。
【0033】
神経診断モジュール101は、機能的神経イメージングデータ110、構造的神経イメージングデータ111、認知データ112から、これらを合わせてもしくは別々に、またはこれらのいずれかの組み合わせで、構成されていてよい。しかし、統計演算処理モジュール114は、どのような組み合わせであっても、神経診断モジュール101の一部分である。
【0034】
これらのコンポーネントの考えられる組み合わせに課される制限は、機能的神経イメージングデータ110が個人に元々存在している場合は、個人機能活性化データ116が存在しなければならないこと;構造的神経イメージングデータ111が個人に元々存在している場合は、個人構造マップ118が存在しなければならないこと;および、認知データ112が個人に元々存在している場合は、個人認知プロファイル120が存在しなければならないこと、である。
【0035】
図1のシステム200の関心領域演算処理モジュール102を簡略化して示したものである図3をここで参照する。関心領域演算処理モジュール102は、疾患特有のおよび個人特有の病態生理学的脳領域を識別するように構成される。別の選択肢として、関心領域演算処理モジュール102は、特定の機能的もしくは構造的な脳の部位、または、任意の正常な個人において特定の脳領域と関連付けられる特定の認知技能もしくは機能における優秀性また向上された実行の統計的基準の対応する属性から異なっている対応する認知的特性(cognitive characteristics)、を識別するように構成される。
【0036】
図2の個人機能活性化データ116、個人構造マップ118、および個人認知プロファイル120からの入力、ならびに機能的、構造的、認知的基準データ121は、基準脳領域逸脱解析(STANDARD BRAIN REGIONS DEVIATION ANALYSIS)122が受取り、ここで、機能活性化パターン、構造、または対応する認知実行レベルという点で統計的に確立された健康基準からの逸脱をどの脳領域が示すのかが判定され、関心領域データ124として出力される。別の選択肢として、基準脳領域逸脱解析122は、関心領域データ124として出力される、特定の非常に優れたもしくは向上された認知または行動実行の機能活性化パターン、脳構造、および認知的特徴についての統計的に確立された基準からの逸脱をどの脳領域が示すのかを判定するように構成される。
【0037】
個人機能活性化データ116、個人構造マップ118、および個人認知プロファイル120の3つの各々は、独立してもしくは別々に、または他の2つのモジュールとの可能ないかなる組み合わせで機能してもよい。しかし、これらの3つのモジュールのうちの少なくとも1つは、機能的、構造的、認知的基準データ121および、基準脳領域逸脱解析122を伴い、演算処理を行って関心領域データ124を出力する必要がある(これは、正常集団の分布に対して、または別の選択肢として、機能、構造、もしくは認知実行レベルに対応する向上された認知実行の分布に対して統計的に逸脱した値を示す、特定の機能的、構造的、もしくは対応する認知的脳領域である)。
【0038】
本発明の1つの態様によると、基準脳領域逸脱解析122は、個人の機能活性化パターンを統計的に確立された健康基準(1以上の特定の認知もしくは行動作業の実行時、または休息時の正常な脳の活性化の公知の基準に依存していてよく、または、1以上の特定の認知‐行動作業を実行している正常マッチドコントロール(normal matched controls)の群における機能活性化パターンの十分に大きなサンプルに対するその個人の統計的な比較に依存していてもよい)と比較する統計的演算処理に依存する。個人の機能活性化パターン、脳構造、または認知実行の統計的に確立された健康基準との比較は、個人の認知実行値(ピクセルごともしくは領域ごとの、機能的および構造的、または特定の脳領域)と標準的に分布した健康なコントロール群または集団の対応する値との間の統計的な差異に依存する。
【0039】
本技術分野で公知の種々の統計的手順のいずれか1つの目的は、個人の機能的、構造的、または認知的値(細胞、領域、脳構造、葉、または脳半球のレベルによって解析される)が、正常コントロールにおける対応する機能的、構造的、または認知的値の標準的な分布に属する可能性を判定することである。種々の信頼区間、有意性閾値、およびエラー率低減の手段などを用いて、コントロール群に対して個人において異なっている関心領域を判定することができる。
【0040】
本発明の別の態様によると、基準脳領域逸脱解析122は、平均以上の個人において、または特定の認知機能に対応する領域の脳刺激を高めた後に、または同じ特定の認知機能もしくは技能の認知トレーニングを高めた後に、非常に優れたもしくは向上された特定の認知または行動実行について、個人の機能活性化パターンを統計的に確立された基準と比較する統計的演算処理に依存していてよい。個人の機能活性化パターン、脳構造、または認知実行の、特定の作業または技能において非常に優れた認知実行を示す個人において統計的に確立された機能、構造、または認知実行の基準との比較は、ピクセルごと、もしくは領域ごとの、個人の機能および構造または認知実行値と標準的に分布した健康なコントロール群または集団の対応する値との統計的な差異に依存していてよい。本技術分野で公知の種々の統計的手順のいずれか1つの目的は、個人の機能的、構造的、または認知的値(細胞、領域、脳構造、葉、または脳半球のレベルによって解析される)が、個人の標準的なコントロールからの、またはその特定の機能の認知トレーニングの後の、または対応する脳領域の刺激によるその認知機能の向上を通しての、特定の作業または技能における非常に優れたまたは向上された認知実行の対応する機能的、構造的、または認知的値の(標準的な)分布に属する可能性を判定することである。
【0041】
基準脳領域逸脱解析122は、関心領域データ124、統計的に確立された機能的または構造的脳基準から逸脱する特定の構造的な脳の部位、機能的な脳領域、および認知的特徴、を出力する。別の選択肢として、基準脳領域逸脱解析122は、特定の非常に優れたまたは向上された認知実行の基準に対する統計的に確立された機能的または構造的な脳の基準から異なっている特定の構造的な脳の部位、機能的な脳領域、および認知的特徴を含んでよい関心領域データ124を出力する。
【0042】
アルツハイマー病と関連付けられる異常な機能、構造、または対応する認知実行異常を発症するリスクを有する(またはすでにそれが存在している)個人の場合、考えられる関心領域データ124のいくつかの例は以下の通りである:左前頭部、左前頭前部、ブローカ領域、ウェルニッケ領域、海馬および関連領域、前帯状回、ならびに、さらに、運動、中側頭回、アンスレオナル回(anthreonal gyrus)、小脳、の異常な不完全な活性化、ならびにこれらの領域のいくつかまたはすべての間の機能的結合手段(functional connectivity measures)の低下。さらに、構造的な異常は、これらの構造の体積またはこれらの神経領域間を結合する線維の減少から成る場合もある。自閉症スペクトラム障害(ASD)の場合、構造的な異常は、正常な適合するコントロールに対して、左脳半球LHではなく右脳半球RHが逆に機能的に活性化されるというASD小児(および成人)における言語領域活性化パターンによって裏付けられ、例えば、ASDにおいて、適合するコントロールに対して、LHのブローカ領域、ウェルニッケ領域は低活性化されるが、反対側のRHのこれらの領域は過剰活性化される。「心の理論(Theory of Mind)」については、社会的認知ASD障害(social cognition ASD deficits)、扁桃体、紡錘状回の機能的低活性化、および脳半球間の結合手段の機能不全が発生する可能性がある。さらに、心の理論のパラダイムにおける全体化されたRH過剰活性化として現れ得る、コントロールに対するASD個人における全体化されたRH機能不全が、休息条件また言語パラダイムにおいて発生する可能性がある。
【0043】
図1のシステム200の脳特徴演算処理モジュール103を示す図4をここで参照する。脳特徴演算処理モジュール103は、識別された関心領域データ124が、特定の脳に関連する疾患と関連する特定の機能、構造、または対応する認知障害を個人が持っている可能性を示しているかどうかを判定するように構成される。別の選択肢として、図1の脳特徴演算処理モジュール103は、識別された関心領域データ124が、向上されたもしくは非常に優れた機能、構造、または対応する認知作業実行基準を個人が満たしていない可能性を示しているかどうかを判定するように構成される(例:優れた実行を有する個人のサンプルの対応する値に対する機能的、構造的、または認知的値という点で)。
【0044】
関心領域データ124(機能活性化、構造、もしくは対応する認知実行がコントロール群に対して、または別の選択肢として、認知的に向上された実行のサンプルに対して、個人において統計的に異なっていると判定された脳領域)は、脳特徴閾値演算処理(BRAIN TRAIT THRESHOLD COMPUTATION)126へ入力される。脳特徴閾値演算処理126は、これらの関心領域データ124のどれが、機能活性化、または構造特性、または試験の時点もしくは今後の異なる時点において個人に特定の疾患が存在することに対する高い予想値を有する疾患に特有の統計的閾値と異なっている対応する認知実行値、を有するかを判定する。別の選択肢として、関心領域データ124は、これらの関心領域データ124が、機能活性化、または特に向上された1もしくは複数の認知機能に対する統計的に決定された機能的、もしくは構造的閾値と同一かまたは異なっている構造的値、を有するかどうかを判定する脳特徴閾値演算処理126へ入力される。
【0045】
脳特徴閾値演算処理126は、関心領域(ROI)データ124が、特定の疾患を特徴付けると判定された1もしくは複数の特定の領域の機能的または構造的閾値と同一かまたはこれを超えると判定する場合、ROI閾値データ128および脳状態データ129を出力する。標準的なコントロール集団の統計的に演算処理された値よりも低いと見なされる特定の脳に関連する疾患の機能、構造、または対応する認知実行閾値については、個人の関心領域データ124が上述の疾患に特有の閾値よりも低い場合、脳特徴閾値演算処理126は、脳状態データ129によって指定される特定の脳に関連する疾患に対する閾値より低い領域であるすべての関心領域データ124から構成されるものとして、ROI閾値データ128を出力する。脳特徴閾値演算処理126が、疾患に特有の閾値を超えるか、または別の選択肢として、機能、構造、もしくは対応する認知実行値が標準的なコントロールのそれよりも統計的に低いと判定された場合には疾患に特有の閾値よりも低い、統計的に有意である機能、構造、もしくは対応する認知実行値を個人に検出する場合、脳特徴閾値演算処理126は、どの特定の脳に関連する疾患が、任意の個人におけるこれらの閾値を超える(もしくは上記で説明したように閾値より低い)機能、構造、もしくは対応する認知実行値と統計的に信頼性を持って関連付けられるかについての詳細を含む脳状態データ129をやはり出力する。
【0046】
個人の機能、構造、もしくは対応する認知実行値が、疾患に特有の閾値を超えなかった場合(もしくは、疾患に特有の閾値が正常集団の統計値より低く、個人のROI閾値データ128がこれらの疾患に特有の閾値を超える場合)、脳特徴閾値演算処理126は、相違なしデータ(NO DIFFERENCE DATA)130(例:その個人に、正常個人の統計的分布と異なる機能的、構造的、もしくは認知的パターンが存在しないことを示す)を出力する。この場合、相違なしデータ130は、治療の終了および正常所見の報告(TERMINATE TREATMENT AND REPORT NORMAL FINDINGS)131を開始し、これは、その個人または治療を行っている臨床医へ、その個人がいかなる脳に関連する疾患にも罹患していないと考えられ、従って治療を行う必要性がない、という出力を行って、本発明の診断フェーズを終了する。
【0047】
脳特徴閾値演算処理126は、関心領域データ124が、特定の認知作業もしくは技能において向上された実行または機能を特徴付けると判定された1もしくは複数の特定の領域の機能的または構造的値と同一か、またはこれを超えると判定する場合、ROI閾値データ128および脳状態データ129を出力する。正常コントロール集団の統計的に演算処理された値よりも低いと見なされる特に向上された認知技能もしくは機能と関連付けられる機能的または構造的値については、個人の関心領域データ124が上述の向上された認知的閾値よりも低い場合、脳特徴閾値演算処理126は、閾値より低い領域であるすべての関心領域データ124から成るROI閾値データ128を出力する。脳特徴閾値演算処理126が、認知的に向上された閾値を超えるか、または別の選択肢として、機能的もしくは構造的値が正常コントロールのそれよりも統計的に低いと判定された場合には認知的に向上された閾値よりも低い、統計的に有意である機能的もしくは構造的値を個人に検出する場合、脳特徴閾値演算処理126は、どの特定の認知的に向上された技能もしくは機能が、任意の個人におけるこれらの閾値を超える(もしくは上記で説明したように閾値より低い)機能、構造、もしくは対応する認知実行値と統計的に信頼性を持って関連付けられるかについての詳細を含む脳状態データ129をやはり出力する。
【0048】
脳特徴閾値演算処理126が、ROI閾値データ128および脳状態データ129を出力する場合、ROI閾値データ128に含まれるのは、個人の機能、構造、もしくは対応する認知実行レベルが、個人において疾患に特有の閾値を超えるかまたは疾患に特有の閾値より低いと演算処理された(上記で示したように)対象である、すべてのピクセル、または細胞もしくは領域的(regional)もしくは半球脳領域の識別、ならびにこれらのピクセル、または細胞もしくは領域的もしくは脳半球部位(hemispheric loci)の各々の正確な機能的、もしくは構造的、もしくは認知的値のそれらの対応する疾患に特有の閾値と比較した表示、である。脳特徴閾値演算処理126が、ROI閾値データ128および脳状態データ129を出力し、ROI閾値データ128に含まれるのが、個人の機能、構造、もしくは対応する認知実行レベルが特定の認知作業もしくは機能における向上された認知実行レベルよりも低い(または、上記で示したように、特に向上された認知的閾値よりも低い)と演算処理された対象である、すべてのピクセル、または細胞もしくは領域的もしくは半球脳領域の識別である場合、ROI閾値データ128は、識別されたピクセル、細胞もしくは領域的もしくは脳半球部位の各々での正確な機能的、構造的、もしくは認知的値の指定も、これらの対応する統計的に演算処理された閾値と共に行う。
【0049】
個人の機能、構造、もしくは対応する認知実行値が、疾患に特有の閾値を超えなかった場合(もしくは、疾患に特有の閾値が正常集団の統計値より低く、個人のROI閾値データ128がこれらの疾患に特有の閾値を超える場合)、脳特徴閾値演算処理126は、相違なしデータ130(例:その個人に、正常な個人の統計的分布と異なる機能的、構造的、もしくは認知的パターンが存在しないことを示す)を出力する。この場合、相違なしデータ130は、治療の終了および正常所見の報告131を開始し、これは、その個人または治療を行っている臨床医へ、その個人がいかなる脳に関連する疾患にも罹患していないと考えられ、従って治療を行う必要性がない、という出力を行って、本発明の診断フェーズを終了する。
【0050】
個人の機能的もしくは構造的値が、認知的に向上された閾値を超えなかった場合(もしくは、認知的に向上された閾値が正常集団の統計値より低く、個人のROI閾値データ128がこれらの特定の認知的に向上された閾値を超える場合)、脳特徴閾値演算処理126は、相違なしデータ130(例:その個人に、認知的に向上された機能的もしくは構造的特徴の統計的分布と異なる機能的、構造的、もしくは認知的パターンが存在しないことを示す)を出力する。この場合、相違なしデータ130は、治療の終了および正常所見の報告131を開始し、これは、その個人または治療を行っている臨床医へ、その個人がいかなる認知向上治療(cognitive enhancement treatment)からも恩恵を受けていないと考えられる、という出力を行って、本発明の診断フェーズを終了する。
【0051】
脳特徴閾値演算処理126によって行われる演算処理は、個人の機能活性化、脳構造、または認知実行を、特定の脳に関連する疾患における対応する機能、構造、または認知実行の統計的分布と統計的に比較することに基づいている。別の選択肢として、脳特徴閾値演算処理126によって行われる演算処理は、個人の機能活性化、脳構造、または認知実行を、特に向上された認知技能もしくは機能に対する対応する機能、構造、または認知実行の統計的分布と統計的に比較することに基づいていてもよい。このような統計的比較は、その個人の関心領域データ124を、特定の疾患に対する、または別の選択肢として、特に向上された認知機能に対する対応する統計的な基準と、ピクセルごとに、細胞、領域的、もしくは脳半球にて比較することから成る。正常な機能、構造、または対応する認知実行に対するこのような統計的な基準は、異なるピクセル、細胞、領域的、もしくは脳半球レベルでの、ならびに特定の疾患および特定の疾患の特定のサブ表現型(sub−phenotype)もしくはステージにおける異なる神経イメージングパラダイム(neuroimaging paradigms)にわたっての、機能、構造、または対応する認知実行レベルを定量化する科学的に公開されたデータを平均するメタ分析(またはその他の統計的手順)を通して得ることができる。
【0052】
別の選択肢として、正常な脳の機能、構造、および対応する認知実行に対する統計的に演算処理された基準は、特定の疾患に対する正常個人対疾患個人の十分に大きなサンプルを通し、個人においてその値の上か下かで特定の疾患、特定の疾患のサブ表現型もしくはステージが表されると思われる各ピクセル、細胞、領域、または脳半球に対する具体的な統計的閾値の演算処理が得られることになる、連続する統計的方法を用いての正常コントロール対疾患個人の分布の標準化により得ることができる。別の選択肢として、正常な脳の機能、構造、および対応する認知実行に対する統計的に演算処理された基準は、特定の技能に対する正常個人対1もしくは複数の技能の向上された認知実行の個人の十分に大きなサンプルサイズを通し、個人においてその値の上か下かで具体的な向上された認知実行または1もしくは複数の技能が表されると思われる各ピクセル、細胞、領域、または脳半球に対する具体的な統計的閾値の演算処理が得られることになる、連続する統計的方法を用いての正常コントロール対向上された認知実行の個人の分布の標準化により得ることができる。さらに、特定の脳疾患集団と正常コントロール集団との間の相違をこれらの集団からのサンプルに基づいて定量化する有意水準、信頼区間、検出力、効果量、またはその他の統計的手段を変えることにより、脳関連疾患を正常コントロール値から区別するための異なる統計的(予想的)閾値が得られるようにすることが可能である。
【0053】
その値の上か下かで機能、構造、または対応する認知実行レベルが特定の脳疾患、サブ表現型、または疾患ステージを表すと思われる統計的閾値の脳特徴閾値演算処理126による決定は、正常サンプル対疾患サンプルの分布の解析に依存する。(すなわち、正常サンプルが、疾患サンプルと比較して、特定のピクセル、細胞、領域、もしくは脳半球に対して統計的な信頼性をもってより高い機能的または構造的値をとることが統計的解析によって示された場合、脳特徴閾値演算処理126は、正常集団値に対する演算処理された閾値よりも低いその特定のピクセル、細胞、領域、脳半球などに対する個人の値が、特定の疾患の疾患領域として標識されるように決定する)。従って、例えば、統計的解析により、正常サンプルが、自閉症サンプルの値と比較して、LHのブローカおよびウェルニッケ領域に対して統計的な信頼性をもってより高い機能的または構造的値をとることが示された。従って、これらの特定の脳領域に対する機能活性化、構造体積、または認知的値が、対応する正常集団値に対する演算処理された閾値よりも低いことを示す個人は、その特定の個人における自閉症の疾患領域として標識されるように脳特徴閾値演算処理126により決定される。同様に、統計的解析により、正常サンプルが、アルツハイマー病、またはMCI、または認知症、または老化サンプルと比較して、海馬、内側側頭部構造、前および後脳間の結合性、または顔認識、または小脳、または帯状回の値に対して統計的な信頼性をもってより高い機能活性、構造体積、または認知的値をとることが示された。従って、これらの特定の脳領域に対する機能的、構造的、または認知的値が、対応する正常集団値に対する演算処理された閾値よりも低いことを示す個人は、アルツハイマー病、またはMCI、または老化疾患(aging diseases)の疾患領域として標識されるように脳特徴閾値演算処理126により決定される。
【0054】
逆に、正常サンプルが、疾患サンプルと比較して、特定のピクセル、細胞、領域、もしくは脳半球に対して統計的な信頼性をもってより低い機能的または構造的値をとることが統計的解析によって示された場合、脳特徴閾値演算処理126は、正常集団値に対する演算処理された閾値よりも高いその特定のピクセル、細胞、領域、脳半球などに対する個人の値が、特定の疾患の疾患領域として標識されるように決定する。従って、例えば、統計的解析により、正常サンプルが、自閉症小児のサンプルと比較して、反対側のRHのブローカまたはウェルニッケ領域に対して統計的な信頼性をもってより低い機能活性化または構造体積値をとることが示された。従って、対応する正常集団値に対する演算処理された閾値よりも高い反対側のRHのブローカまたはウェルニッケ領域に対する個人の値が、自閉症スペクトラム障害の疾患領域として標識されるように脳特徴閾値演算処理126により決定される。
【0055】
同様に、特定の1もしくは複数の作業における個人の向上された認知実行を示す機能的、構造的、または対応する値に対する閾値を脳特徴閾値演算処理126が演算処理するために、正常対向上されたサンプルまたは集団の統計的比較が、ピクセルごとの、細胞の、領域的な、もしくは脳半球の機能的、構造的、または対応する認知的測定に対して実施される。向上されたサンプルが、正常サンプルまたは集団と比較して、特定のピクセル、細胞、領域、もしくは脳半球に対して統計的な信頼性をもってより高い機能的または構造的値をとることが統計的解析によって示された場合、脳特徴閾値演算処理126は、向上された集団またはサンプルに対する演算処理された閾値よりも低いその特定のピクセル、細胞、領域、脳半球などに対する個人の値が、これらの細胞、領域的、もしくは脳半球領域がその特定の個人において向上度が低い機能的、構造的、もしくは対応する認知実行レベルを表すことを示すと見なされるように決定する。従って、個人におけるこれらの識別された向上度が低い脳領域の興奮性刺激により、それらの対応する認知実行を向上させることができる。
【0056】
逆に、向上されたサンプルが、正常サンプルまたは集団と比較して、特定のピクセル、細胞、領域、もしくは脳半球に対して統計的な信頼性をもってより低い機能的または構造的値をとることが統計的解析によって示された場合、脳特徴閾値演算処理126は、個人における向上されたサンプルまたは集団の閾値を超える値が、個人における特定の認知的特徴、実行、または技能に対する向上度が低い機能的、構造的、または対応する認知的レベルを表すことができると決定する。従って、個人におけるこれらの識別された向上度が低い脳領域の阻害性刺激により、それらの対応する認知実行を向上させることができる。
【0057】
脳特徴閾値演算処理126は、個人における機能、構造、または対応する認知実行レベルが、正常集団のそれらの対応する値に対して、任意の個人において統計的に「同一」か、または「異なる」か、を決定する。脳特徴閾値演算処理126は、特定の関心領域データ124が疾患に特有の統計的閾値を超えているか、または別の選択肢として、特定の向上された実行閾値よりも低いと決定した場合、脳特徴データ127を出力し、これは、どの脳領域が、機能的に、構造的に、もしくは特に障害のある認知実行とのそれらの関連付けという点で異常であるか、または別の選択肢として、どの脳領域が、神経的にもしくは認知的に刺激されて特定の認知機能もしくは技能を向上させることができるか、を示すものである。
【0058】
脳特徴閾値演算処理126は、脳閾値データ128も出力し、これは、ピクセルごと、細胞、脳領域、もしくは脳半球値、および正常脳機能に対する、もしくは別の選択肢として向上された脳機能に対する認知実行閾値を、有意水準、信頼区間などのこれらの演算処理による閾値と関連付けられる種々の統計的指標、または関心領域データ124の機能的、構造的、もしくは認知的値と正常脳機能に対して統計的に確立された閾値との間の統計的な相違を評価するその他のいずれかの統計的手段と共に含む。一方、関心領域データ124のすべてが、疾患に特有の統計的閾値を超えない、または別の選択肢として、特定の向上された認知実行閾値より低くないとして脳特徴閾値演算処理が決定する場合、脳特徴閾値演算処理126は、相違なしデータ129を出力し、これは、次に、治療の終了および正常所見の報告130へと続く(これは、医療装置の運転を終了し、患者または臨床医へ、その個人が正常であり脳に関連する疾患が見られないこと、または別の選択肢として、その個人が、特定の認知作業の実行が非常に優れており、特定の認知技能の向上を目的とした脳および認知刺激から恩恵を受けることができないこと、を知らせる)。
【0059】
図1のシステム200の治療モジュール104を示す図5をここで参照する。治療モジュール104は、特定の脳に関連する疾患を有する個人に対する正確な脳刺激、認知刺激、および神経認知刺激パラメータを決定するように構成される。別の選択肢として、治療モジュール104は、正常個人に対する正確な脳刺激、認知刺激、および神経認知刺激パラメータを決定して、特定の認知機能を向上させる能力を有する。
【0060】
治療モジュール104は、図4のROI閾値データ128および脳状態データ129を含み、これらは、脳刺激アナライザー133、認知刺激アナライザー134、および神経認知刺激アナライザー136を含む特徴‐閾値逆刺激演算処理(TRAIT−THRESHOLD INVERSE STIMULATION COMPUTATION)132へ入力され、次に、ここで、対応する脳刺激データ138、認知刺激データ140、および神経認知刺激データ140が作製される。
【0061】
特徴‐閾値逆刺激演算処理132は、疾患に特有の閾値を超えるかもしくはこれより低い、または個人における向上された認知実行レベル、およびそれらの対応する機能、構造、もしくは対応する認知実行閾値を超えるかもしくはこれより低いROI閾値データ128の機能、構造、もしくは認知実行レベルと、脳状態データ129をとを比較して、最適な脳刺激、認知刺激、または神経認知刺激パラメータを決定するように構成される。
【0062】
特徴‐閾値逆刺激演算処理132の機能を導く重要な演算処理の原理は、特定の脳に関連する疾患に罹患している個人における機能、構造、もしくは対応する認知実行レベルを改善するために、または別の選択肢として、正常個人における機能、構造、もしくは対応する認知実行レベルを向上させるために、任意の個人における閾値より低いもしくは閾値を超えるレベルと比較して逆興奮性(inverse excitatory)刺激もしくは阻害性刺激の方向へ、特に識別されたROI閾値データ128の領域を刺激する必要があるということである。この方法では、個人の機能、構造、もしくは対応する認知実行レベルが、対応する正常な機能、構造、もしくは認知実行に対する閾値より低い場合、特徴‐閾値逆刺激演算処理132は、全体的な興奮性脳刺激または認知刺激の演算処理を行う。例えば、個人の機能、構造、もしくは対応する認知実行レベルが、対応する正常な機能、構造、もしくは認知実行に対する閾値より低く、自閉症スペクトラム障害におけるLHのブローカおよびウェルニッケ言語領域の、または扁桃体もしくは紡錘状回の低活性化(もしくは異常に小さい構造体積)に属すると特徴付けられた場合、特徴‐閾値逆刺激演算処理132は、これらの脳領域の全体的な興奮性脳刺激または認知刺激の演算処理を行う。同様に、個人の機能、構造、もしくは対応する認知実行レベルが、海馬の低活性化(もしくは異常に小さい構造体積)、内側側頭部構造、前および後脳間もしくは顔認識領域の結合性の障害、または小脳もしくは帯状の機能もしくは構造を通して検出されるアルツハイマー病、老化、認知症、またはMCIに属すると特徴付けられた場合、特徴‐閾値逆刺激演算処理132は、これらの脳領域の全体的な興奮性脳刺激または認知刺激の演算処理を行う。
【0063】
逆に、個人の機能、構造、もしくは対応する認知実行レベルが、対応する正常な機能、構造、もしくは認知実行レベルに対する閾値を超える場合、特徴‐閾値逆刺激演算処理132は、全体的な阻害性脳刺激または認知刺激の演算処理を行う。例えば、個人の機能、構造、もしくは対応する認知実行レベルが、反対側のRHのブローカおよびウェルニッケ領域の低活性化(もしくは異常に小さい構造体積)を特徴とする自閉症スペクトラム障害に属すると特徴付けられた場合、特徴‐閾値逆刺激演算処理132は、これらの脳領域の全体的な興奮性脳刺激または認知刺激の演算処理を行う。
【0064】
同じ特徴‐閾値逆刺激の原理は、認知的向上に対する特徴‐閾値逆刺激演算処理132にも適用される。具体的には、個人の機能、構造、もしくは対応する認知実行レベルが、向上された認知実行の閾値よりも低い場合、特徴‐閾値逆刺激演算処理132は、全体的な興奮性脳刺激または認知刺激の演算処理を行う。逆に、個人の機能、構造、もしくは対応する認知実行レベルが、認知的向上の閾値を超える場合、特徴‐閾値逆刺激演算処理132は、全体的な阻害性脳刺激または認知刺激の演算処理を行う。
【0065】
個人の機能、構造、もしくは対応する認知実行レベルが、対応する向上された機能、構造、もしくは認知実行レベルに対する閾値を超える場合(すなわち、特定の技能または1もしくは複数の機能における向上された認知実行を有する個人のその特定の1もしくは複数の脳領域の活性化の低下とは対照的に、正常な認知実行と関連付けられる特定の脳領域の過剰活性化など)、特徴‐閾値逆刺激演算処理132は、全体的な阻害性脳刺激または認知刺激の演算処理を行う。従って、特徴‐閾値逆刺激の原理は、認知的向上に対する特徴‐閾値逆刺激演算処理132にも適用され、すなわち:個人の機能、構造、もしくは対応する認知実行レベルが、向上された認知実行の閾値よりも低い場合、特徴‐閾値逆刺激演算処理132は、全体的な興奮性脳刺激または認知刺激の演算処理を行う。逆に、個人の機能、構造、もしくは対応する認知実行レベルが、認知的向上の閾値を超える場合、特徴‐閾値逆刺激演算処理132は、全体的な阻害性脳刺激または認知刺激の演算処理を行う。
【0066】
詳細には、脳刺激アナライザー133は、疾患に特有の閾値を超えるかもしくはそれより低い、または特定の認知的向上の閾値を超えるかもしくはそれより低い任意の個人におけるROI閾値データ128の機能的レベルと、それらの対応する機能的閾値とを比較し、同時に、脳状態データ129、特定の脳に関連する疾患または特定の認知的向上の目標、を考慮に入れ、任意の個人における最適な脳刺激パラメータを決定する。例えば、個人の機能的もしくは構造的活性化パラメータが、特定のROI閾値データ128領域における正常閾値よりも低い場合、脳刺激アナライザー133は、興奮性脳刺激パラメータを出力する。逆に、個人の機能的もしくは構造的活性化パラメータが、特定のROI閾値データ128領域における正常閾値を超える場合、脳刺激アナライザー133は、阻害性脳刺激データ138パラメータを出力する。
【0067】
同様に、認知刺激アナライザー134は、疾患に特有の閾値を超えるかもしくはそれより低い、または特定の認知的向上の閾値を超えるかもしくはそれより低い任意の個人におけるROI閾値データ128の認知的レベルと、それらの対応する認知的閾値とを比較し、同時に、脳状態データ129、特定の脳に関連する1もしくは複数の疾患または特定の認知的向上の目標、を考慮に入れ、任意の個人における最適な認知刺激パラメータを決定する。例えば、個人の認知実行レベルが、特定の作業または機能に対する正常閾値よりも低い場合、認知刺激アナライザー133は、興奮性認知刺激パラメータを出力する。逆に、特定の認知機能における個人の認知実行レベルが、正常閾値を超える場合、認知刺激アナライザー133は、阻害性認知刺激データ142パラメータを出力する(すなわち、直接に、またはその逆のもしくはコンプリメンタリー(complimentary)であるもしくはその他の認知機能のトレーニングまたは刺激を通して、異常(もしくは向上度が低い)認知機能を阻害するよう試みる認知刺激パラダイムまたはトレーニング方法であり、これにより、実質的に、特定の異常もしくは向上度が低い認知機能が抑制または縮小される)。
【0068】
同様に、神経認知刺激アナライザー136は、任意の個人における疾患に特有の閾値を超えるかもしくはそれより低い、または特定の認知的向上の閾値を超えるかもしくはそれより低いROI閾値データ128の機能、構造、もしくは対応する認知実行レベルと、それらの対応する機能的閾値とを比較し、同時に、特定の脳に関連する疾患または特定の認知的向上の目標についての脳状態データ129を考慮に入れ、任意の個人における最適な脳刺激パラメータを決定する。しかし、神経認知刺激アナライザー136の場合、演算処理は、最適な神経認知刺激パラメータの識別を目的とする(例:特定の1つ(もしくは複数)の脳領域の興奮性もしくは阻害性である方法による刺激と、同じ1つ(もしくは複数)の脳領域の阻害性もしくは興奮性である方法によるその対応する認知刺激との間の対応という意味での、神経脳刺激と、同じもしくは異なる脳領域の認知刺激との間の一時的な重複または分離、など)。従って、どの特定の1つ(もしくは複数)の脳領域が疾患に特有の閾値もしくは認知的に向上された閾値を超えるかまたはそれよりも低いか、およびそのような閾値を超えるかまたはそれよりも低い個人のレベルがどの脳状態データ129の疾患に属するかを示すROI閾値データ128に基づき、神経認知刺激アナライザー136は、上述の最適な神経認知刺激パラメータの演算処理を行う。
【0069】
脳刺激アナライザー133によって演算処理される脳刺激の具体的な強度、継続時間、位置、間隔、およびその他のパラメータは、上述の特徴‐閾値逆刺激の原理と組み合わせて、脳状態データ129からの入力に基づいて決定される(例:個人のROI閾値データ128の機能的もしくは構造的レベルが、脳状態データ129の疾患閾値もしくは認知的向上の閾値から比較的離れている場合、阻害性または興奮性刺激パラメータは、その強度が高く、継続時間が長く、脳の位置が複数となるなどの方向であり、その逆も同様である)。
【0070】
種々の認知機能または技能を向上させるためには、対応する脳領域の興奮性刺激を行うべきであり、すなわち、記憶もしくは学習の向上に対しては海馬または側頭葉または帯状回(cingulated gyrus)、実行機能、集中、学習、知能に対しては前頭または前頭前皮質;運動機能および協調に対しては運動皮質または小脳、視覚機能の向上に対しては視覚皮質、恐怖および不安の低減に対しては、左前頭部および左前頭前部の興奮性刺激を伴うかまたは伴わない扁桃体の阻害;自尊心、または気分、または幸福の向上は、左前頭前部もしくは左前頭部の興奮性刺激、または右前頭前回(right prefrontal gyrus)の阻害性刺激、である。これらの例すべてにおいて対応する認知刺激を適用することができ、例えば、疾患脳に関連するもしくは認知的な機能の改善または向上、または、所望される1もしくは複数の認知機能の向上が行われる。
【0071】
本発明の代表的な態様は、治療モジュール104の、アルツハイマー病およびASDなどの特定の脳に関連する疾患の脳状態データ129の一時的なROI閾値データ128を包含する。詳細には、アルツハイマー病の場合、ROI閾値データ128は、以下の領域のいずれか1つまたはそれらのいずれかの組み合わせを含むと考えられる:左前頭部、左前頭前部、ブローカ領域、ウェルニッケ領域、海馬および関連領域、前帯状回、ならびにさらに運動、中側頭回、アンスレオナル回、小脳、の異常な不完全な活性化、ならびに、これらの領域のいくつかまたはすべての間の機能的結合手段の低下。構造的な異常も、これらの構造の体積またはこれらの神経領域間を結合する線維の減少として存在する場合がある。
【0072】
自閉症スペクトラム障害(ASD)の場合、ROI閾値データ128は、以下の領域のいずれか1つまたはそれらのいずれかの組み合わせを含むと考えられる:正常マッチドコントロールに対して、左脳半球LHではなく右脳半球RHが逆に機能的に活性化されるというASD小児(および成人)における言語領域活性化パターン(例:ASDにおいて、マッチドコントロールに対して、LHのブローカ領域、ウェルニッケ領域は低活性化されるが、反対側のRHのこれらの領域は過剰活性化される)。「心の理論」については、社会的認知ASD障害、扁桃体、紡錘状回の機能的低活性化、および脳半球間の結合手段の機能不全が発生する可能性がある。さらに、心の理論のパラダイムにおける全体化されたRH過剰活性化として現れ得る、コントロールに対するASD個人における全体化されたRH機能不全が、休息条件また言語パラダイムにおいて発生する可能性がある。
【0073】
従って、本発明のシステムの代表的で単に説明のためのものである態様は、アルツハイマー病の場合、脳刺激データ138、または認知刺激データ142、または神経認知刺激データ140、左前頭部、もしくは左前頭前部、もしくはブローカ領域、もしくはウェルニッケ領域、もしくは海馬および関連領域、もしくは前帯状回、もしくは運動、もしくは中側頭回、もしくはアンスレオナル回、もしくは小脳、もしくはこれらの領域のいくつかもしくはすべての間の機能的結合手段、の興奮性刺激、またはこれらの領域のいずれかの組み合わせの刺激、を含む。同様に、軽度認知機能障害(または、その他の形態のいずれかの老化に関連する記憶喪失もしくは認知症)の軽いケースの場合、これらの脳領域のいくつかまたはすべての同様の刺激が必要であり得る。ASDの場合、本発明のシステムの代表的な態様は、脳刺激データ138、または認知刺激データ140、または神経認知刺激データ140、以下の領域のいずれか1つもしくはそれらのいずれかの組み合わせの興奮性刺激を含み得る:ブローカ領域、もしくはウェルニッケ領域、もしくは扁桃体、もしくは紡錘状回、もしくは脳半球間の結合。さらに、ASDには、脳刺激データ138、または認知刺激データ140、または神経認知刺激データ140、反対側のブローカもしくはウェルニッケRH領域の阻害性刺激、またはRHの全体化された阻害性刺激が必要であり得る。
【0074】
種々の認知機能または技能を向上させるためには、対応する脳領域の興奮性刺激を行うべきであり、すなわち、記憶もしくは学習の向上に対しては海馬または側頭葉または帯状回、実行機能、集中、学習、知能に対しては前頭または前頭前皮質;運動機能および協調に対しては運動皮質または小脳、視覚機能の向上に対しては視覚皮質、恐怖および不安の低減に対しては、左前頭部および左前頭前部の興奮性刺激を伴うかまたは伴わない扁桃体の阻害;自尊心、または気分、または幸福の向上は、左前頭前部もしくは左前頭部の興奮性刺激、または右前頭前回の阻害性刺激、である。これらの例すべてにおいて、対応する認知刺激を適用することができる(例:疾患脳に関連するもしくは認知的な機能の改善または向上、または、所望される1もしくは複数の認知機能の向上を行う刺激)。
【0075】
特徴‐閾値刺激演算処理132の重要な局面は、疾患に特有のまたは認知的向上に特有の神経可塑性演算処理の原理であり、これは、神経認知刺激アナライザー136によって行われる演算処理の基礎となる。この原理は、種々の神経認知刺激パラメータの特定の脳疾患への、または特定の認知的向上プロトコルへの適応を、これらの特定の1もしくは複数の脳疾患、および1もしくは複数の認知的向上プロトコルと関連付けられる特定の神経可塑性の特徴の識別に基づいて具体化する。従って、神経認知刺激アナライザー136は、特定の個人における特定の脳状態データ129、脳疾患または認知的向上の目標を考慮に入れ、ならびに、この情報に基づき、これらのROI閾値データ128および脳状態データ129に関する公知の神経可塑性の情報と組み合わせて、ROI閾値データ128は、最適な神経認知刺激データ140を決定する。
【0076】
神経可塑性刺激パラメータとしては、例えば以下のものを挙げることができる:中でも、脳および対応する認知刺激の強度、それらの持続時間、開始および終了時間、一時的な重複または分離、すべての可能性のある脳刺激位置およびそれらの対応する認知刺激の順序ならびに組み合わせ。これらのパラメータはすべて、刺激後の神経診断モジュール100および関心領域演算処理モジュール102および脳特徴演算処理モジュール103および治療モジュール105に基づいて、動的に変更または調節することができる。
【0077】
そのような神経認知刺激アナライザー136の1つの例は、アルツハイマー病の記憶喪失、またはその他のMCI、認知症、記憶喪失疾患、もしくは記憶増大疾患(memory enhancement disease)の治療のための最適な神経可塑性刺激の演算処理であり、それには、海馬もしくはその他の側頭葉領域、または前頭もしくは前頭前部領域、または帯状回のいずれかの組み合わせでの興奮性の10〜20HzのTMS刺激を挙げることができ、これは、記憶向上、もしくは記銘、もしくは検索、もしくは想起、もしくは認識、もしくは記憶補助、もしくは知覚、もしくは聴覚、もしくは意味記憶向上の認知トレーニングまたは刺激方法と同時に行うことで、記憶の改善と関連する最適な考えられる神経可塑性の変化が得られる(例:これらの特定のROI閾値データ128および脳状態データ129に関連する最大の学習、記憶検索または形成の記銘を可能とする最良の神経可塑性パラメータの演算処理に基づいて)。
【0078】
神経認知刺激アナライザー136による、特定のROI閾値データ128および脳状態データ129に特有の最適な神経可塑性パラメータの決定は、ROI閾値データ128および脳状態データ129のいずれかの特定の組み合わせに関する先行技術の知見から得ることができる。別の選択肢として、これは、上述の神経診断モジュール100、関心領域演算処理モジュール102、脳特徴演算処理モジュール103、治療モジュール105、および刺激モジュール105による、本発明の刺激後動的フィードバックループ(post−stimulation dynamic feedback loop)に基づいて演算処理することができる。後者のフィードバックループ演算処理は、任意の個人において動的なモニタリングおよび調節を行いながら、または、同一のROI閾値データ128および脳状態データ129の組み合わせを有する複数の個人にわたる特定のROI閾値データ128および脳状態データ129に対する種々の神経認知刺激パラメータの効力を解析するための統計メタ分析もしくはその他の統計的方法により、最も効果的な学習曲線、またはROI閾値データ128および脳状態データ129の特定の組み合わせに対する神経認知刺激データ140の演算処理を可能とする。この方法により、神経認知刺激アナライザー136は(上述の刺激後フィードバックループ内に組み込まれ、一体化された場合)、ROI閾値データ128および脳状態データ129のいずれかの任意の組み合わせに対する神経認知刺激パラメータを最適化するための自動学習能力を提供する。
【0079】
本発明の重要な局面は、脳特徴演算処理モジュール103が、試験時における個人に特定の脳に関連する疾患が存在するかどうかをスクリーニング、評価、および診断するための鑑別診断統計ツール(differential diagnostic statistical tool)を提供する能力、または、正常集団またはサンプルにおける対応する機能、構造、もしくは認知実行分布からの関心領域124の統計的な信頼性を有する逸脱に基づいた信頼性のある予測診断ツール(reliable predictive diagnostic tool)を提供する能力である。この方法により、脳特徴演算処理モジュール103は、試験時において、または予測的に、ある程度の確率を予測する能力をもって、個人が特定の脳に関連する疾患に罹患している可能性を評価するための独立した鑑別診断ツールと見なすことができる(例:本発明の神経診断モジュール101、関心領域演算処理モジュール102と組み合わせて、または完全に独立した鑑別診断神経行動ツール(altogether independent differential diagnostic neurobehavioral tool)を構成して)。
【0080】
より詳細には、関心領域演算処理モジュール102が、個人機能活性化データ116、個人構造マップ118、または個人認知プロファイルの3つのうちのいずれか1つを、いずれかの考えられる組み合わせでまたは別々に、機能的、構造的、認知的基準データ121と共に含むことができるため、基準脳領域逸脱解析122は、個人の機能的、構造的、または認知的な統計的に有意な逸脱の特徴として、関心領域データ124を出力する能力を有する。従って、脳特徴閾値演算処理126は、関心領域データ124の機能的、構造的、または認知的な逸脱に基づき(別々に、または一緒にいずれかの考えられる組み合わせで)、個人が特定の脳に関連する疾患に罹患している可能性を鑑別診断する能力を有する。
【0081】
このように、脳特徴演算処理モジュール103は、試験時において、または予測的に、設定された期間において、別々のまたはいずれかの組み合わせの個人機能活性化データ116、個人構造マップ118、または個人認知プロファイル120に基づいて、個人が特定の脳疾患に罹患している可能性を評価するための鑑別診断ツールを提供する能力も有する。従って、脳特徴演算処理モジュール103は、統計演算処理モジュール114によって解析されて個人認知プロファイル120をもたらす単純な認知データ112(種々の認知または行動試験から得られた)に基づいて、または、やはり統計演算処理モジュール114によって解析されて個人機能活性化データ116および個人構造マップ118および上述の認知データ112(いずれかの考えられる組み合わせで)をもたらすより広い機能的神経イメージング108および構造的神経イメージングデータ111に基づいて、いずれかの現存するまたは予測される脳に関連する疾患について(または別の選択肢として、個人の向上された認知実行能力について)大きな集団をスクリーニングする能力を有する別々のもしくは独立した神経行動鑑別診断ツールとしても機能することができる。
【0082】
実際、認知データ112のみが得られる予備スクリーニング試験の低コストを考えると(とは言え、統計演算処理モジュール114および基準脳領域逸脱解析122によって演算処理することができ、それによって統計的に有意である鑑別診断能力または予測診断能力が得られるが)、そのような認知または行動試験を、種々の脳に関連する疾患の発症の存在または可能性についての大集団の初期スクリーニングツールとして用いることができる。特定の1もしくは複数の脳疾患についての一般的な集団に対するそのような低コストの全体化されたスクリーニング試験(普通から良好(fair−to−good)の鑑別診断能力、または予測的な予測診断能力を有する)に続いて、第二レベルの(second−tier)より高度だが高コストである、個人機能活性化データ116、個人構造マップ118、および個人認知プロファイル120(またはこれらのいずれかの組み合わせ)を用いる完全な神経診断モジュール101を用いて、正確性が非常に高い(偽陽性率が低い)特定の脳疾患の鑑別診断を得ることも可能である。
【0083】
本発明の別の重要な局面は、特定の1もしくは複数の技能について個人が才能を有している確率をスクリーニング、評価、および診断するための、または別の選択肢として、個人の特定の1もしくは複数の認知機能を向上させる確率を診断または評価するための予測統計ツールを提供する脳特徴演算処理モジュール103の能力であり、これは、関心領域124を、正常集団もしくはサンプル中における対応する機能、構造、または認知実行分布と統計的に比較することに基づいて演算処理が行われる。脳特徴演算処理モジュール103は、例えば、本発明の神経診断モジュール101、関心領域演算処理モジュール102と組み合わせて、または完全に独立した鑑別診断神経行動ツールを構成して、試験時において、または予測的に、ある程度の確率を予測する能力をもって、個人が特定の1もしくは複数の脳に関連する疾患に罹患している可能性を評価するための独立した鑑別診断ツールと見なすことができる。
【0084】
より詳細には、関心領域演算処理モジュール102が、機能的、構造的、認知的基準データ121と共に、いずれかの考えられる組み合わせでまたは別々に、個人機能活性化データ116、個人構造マップ118、または個人認知プロファイルの3つのうちのいずれか1つである上述の可能性を考えると、基準脳領域逸脱解析122は、認知的に向上された統計的基準からの個人の機能的、または構造的、または認知的な統計的に有意な逸脱の特徴として、関心領域データ124を出力する能力を有する。従って、脳特徴閾値演算処理126は、機能的、構造的、または認知的な逸脱の関心領域データ124に基づき(別々に、または一緒にいずれかの考えられる組み合わせで)、個人が、向上された1もしくは複数の認知機能、または別の選択肢として、特定の1もしくは複数の技能における向上度が低い認知実行を有している可能性を鑑別診断する能力を有する。このように、脳特徴演算処理モジュール103は、別々のまたはいずれかの組み合わせの個人機能活性化データ116、個人構造マップ118、または個人認知プロファイル120に基づいて、個人が特定の1もしくは複数の技能において向上度が低い(または向上された)認知機能を有している可能性を評価するための鑑別診断ツールを提供する能力も有する。従って、脳特徴演算処理モジュール103は、統計演算処理モジュール114によって解析されて個人認知的プロファイル120をもたらす単純な認知データ112(種々の認知または行動試験から得られた)に基づいて、または、やはり統計演算処理モジュール114によって解析されて個人機能活性化データ116および個人構造マップ118および上述の認知データ112(いずれかの考えられる組み合わせで)をもたらすより広い機能的神経イメージング108および構造的神経イメージングデータ110に基づいて、個人が向上された認知実行能力を有しているかどうかを判定する能力を有する別々のもしくは独立した神経行動予測評価統計ツール(neurobehavioral predictive assessment statistical tool)としても機能することができる。
【0085】
実際、認知データ112のみが得られる予備スクリーニング試験の低コストを考えると、とは言えこれは、統計演算処理モジュール114および基準脳領域逸脱解析122によって演算処理することができ、それによって統計的に有意である鑑別予測評価能力(differential predictive assessment capabilities)が得られるのだが、そのような認知または行動試験を、いずれかの特定の1もしくは複数の技能における向上されたもしくは向上度が低い認知機能ついての大集団の初期スクリーニングツールとして用いることができる。特定の1もしくは複数の認知的に向上された技能についての一般的な集団に対するそのような低コストの全体化されたスクリーニング試験に続いて、偽陽性率が低く正確性がさらに非常に高い、特定の脳に関連する認知的向上の特徴の鑑別診断を得るために、第二レベルのより高度だが高コストである、個人機能活性化データ116、個人構造マップ118、および個人認知プロファイル120(またはこれらのいずれかの組み合わせ)を用いる完全な神経診断モジュール101を用いることが可能である場合があり得る。
【0086】
図1のシステム200の刺激モジュール105の詳細を示す図6をここで参照する。刺激モジュール105は、任意の個人における特定の脳領域およびそれらの対応する認知刺激を刺激するように構成される。刺激モジュール105は、図5の脳刺激データ138、認知刺激データ140、および神経認知刺激データ140を含み、これらは、神経認知刺激装置144へ入力される。さらに、神経認知刺激装置144は、脳刺激装置146および認知刺激装置148を含む。詳細には、脳刺激データ138および神経認知刺激データ140が、脳刺激装置146へ入力され、神経認知刺激データ140および認知刺激データ142が、認知刺激装置148へ入力される。脳刺激データ138、認知刺激データ140、および神経認知刺激データ140に基づいて、脳刺激装置146および認知刺激装置148は、個人脳領域100を決定し、これは、識別された1もしくは複数の脳領域の実際の刺激であり、特徴‐閾値逆刺激演算処理132によって決定された特定の刺激パラメータに従う阻害性または興奮性の脳および認知的刺激を含む。
【0087】
神経認知刺激装置144の代表的な態様は、一体化された脳刺激装置146および認知刺激装置148を含み、これは、同じ個人脳領域100を、同時に、または脳部位とこれらの脳部位の対応する認知刺激との間で時間を空けて考えられるいずれかの順番で、刺激することができる。従って、神経認知刺激装置144は、単一もしくは複数の個人脳領域100の部位を、別々のもしくは合わせての脳部位の刺激の各々の強度または持続時間または間隔を変化させ、同時に、別々のもしくは合わせてのこれらの脳部位の各々の「興奮性」または「阻害性」認知刺激も変化させることを含む、興奮性もしくは阻害性脳刺激パラメータにより刺激する(例:特定の部位の脳刺激の興奮性または阻害性の特徴に対応する刺激された脳領域の各々の認知刺激またはトレーニングを提供する)。例えば、個人の気分もしくは幸福を改善または向上させる目的の左前頭前皮質の興奮性10〜20Hz TMSは、ベックに基づく(Beck−based)「積極的思考」のコンピュータによる聴覚的もしくは視覚的表現、または自己構築認知刺激(self−construct cognitive stimulation)もしくはトレーニングパラダイムの変化と連結させることができ、これらはその開始、終了時間、および刺激の長さの間に何らかの時間的間隔を持たせて、いずれかの考えられる順番で互いに並列させることができる。
【0088】
同様に、集中(concentration)または専念(focus)の改善を目的とする帯状回の興奮性10〜20Hz TMS刺激を、または、記憶、実行機能、もしくは集中力の障害を改善するかまたはこれらを向上させるための側頭部、または海馬の興奮性10〜20Hz TMS刺激と組み合わせて、いずれかの時間的順番および長さ、または短期記憶認知訓練(short term memory cognitive exercises)もしくは注意配分訓練(attention allocation exercises)から構成されていてよい興奮性認知刺激もしくはトレーニングの強度で、並列に連結させることができる。別の選択肢として、妄想的な「映像」もしくは「音」と関連付けられる統合失調性疾患の右脳半球の側頭部もしくは頭頂部の阻害性1Hz TMS刺激を、いずれかの順番および時間的な長さまたは強度で、妄覚(false−perceptions)発生の可能性を低減することを目的とする認知刺激またはトレーニングと連結させることができる(例:知覚錯覚パラダイム(perceptual illusion paradigms)もしくはその他の知覚パラダイムにおける知覚標識(perceptual cues)向上などの知覚向上トレーニング(enhanced perceptual training)を通して、または別の選択肢として、正確知覚トレーニング(accurate perception training)の向上を通して、または、注意もしくは注意配分能力を向上させる、または精神物理的判断能力を上げる認知刺激もしくはトレーニングを通して)。
【0089】
別の選択肢として、自閉症に特徴的である機能的、構造的、または認知的異常を有すると特徴付けられた個人を、神経認知刺激装置144により、中でも言語発達、発音、命名、指摘、もしくは共同注意技能(joint attention skills)の向上を目的とする認知刺激または行動刺激と連結される、LHのブローカおよびウェルニッケ領域の興奮性10〜20Hz TMS刺激と異常に過剰活性化された(もしくは構造的に肥大化した)反対側のRHのブローカおよびウェルニッケ言語領域の阻害性1Hz TMSとの組み合わせを通して、刺激することができる。
【0090】
さらに別の代表的な態様では、神経認知刺激装置144は、特定の脳疾患と関連付けられる機能、構造、または対応する認知実行能力の改善を目的とする、または別の選択肢として、単一もしくは複数の個人脳領域100の脳部位の興奮性または阻害性脳刺激であって、「逆方向の」阻害性または興奮性認知刺激と組み合わされる刺激、を通しての特定の1もしくは複数の認知機能の向上を目的とする、神経可塑性の変化を促進することもできる。さらに別の態様では、神経認知刺激装置144は、見かけ上「逆方向の」阻害性または興奮性認知刺激と組み合わされる単一もしくは複数の個人脳領域100の脳部位の興奮性または阻害性脳刺激を通して、特定の1もしくは複数の認知機能を向上することができる。
【0091】
そのような「逆方向の」脳刺激および認知刺激の例としては、休息状態または非社会的認知作業のコンダクタンス(conductance)の最中での、扁桃体または紡錘状回(これらは、顔認識および社会的認知作業の間、または非社会的コミュニケーションパラダイム(non−social communication paradigms)の間、または休息状態においてさえ、ASDの個人において過剰活性化されていることが示された)の阻害性1Hz TMS脳刺激であってよく、これは、集中的社会的認知刺激訓練(focused social cognition stimulation exercises)と連結させることができる(休息状態もしくは非社会的コミュニケーション作業の環の阻害性TMS刺激の前または後)。別の選択肢として、神経認知刺激装置144は、同じもしくは異なる脳部位に対して、同じもしくは異なる時点または間隔で、脳刺激装置146もしくは認知刺激装置148を別々に、または逆の興奮性対阻害性刺激パラメータと共に、作動させることができる。
【0092】
神経認知刺激装置144は、単一もしくは複数の個人脳領域100の脳部位の脳刺激もしくは認知刺激の強度、もしくは間隔を、または単一もしくは複数の脳刺激部位およびそれらの対応する認知刺激の時間的な並列を、神経診断モジュール101による刺激後フィードバック測定、ならびにこれに続く関心領域演算処理モジュール102、脳特徴演算処理モジュール103、および治療モジュール105による演算処理の結果として得ることができる特徴‐閾値逆刺激演算処理132における考えられる変化に基づいて、動的に調節または変更する能力も有する。
【0093】
さらに別の態様では、神経認知刺激装置144、脳刺激装置146、および認知刺激装置144は、単一の一体化された医療装置を形成し、これは、単一もしくは複数の脳の個人脳領域100の部位の脳刺激を、同じ脳部位の認知刺激と合わせて同期させる能力を有し、特徴‐閾値逆刺激演算処理132の出力、脳刺激データ138、認知刺激データ140、および神経認知刺激データ140によって制御することができる。別の選択肢として、神経認知刺激装置144は、同じ特徴‐閾値逆刺激演算処理132により、脳刺激データ138、認知刺激データ140、および神経認知刺激データ140のその出力を通して制御される脳刺激装置146および認知刺激装置148の少なくとも2つの別個の医療装置を含むことができる。
【0094】
認知刺激装置148は、例えば、反応フィードバック要素(例:対象の反応もしくは実行の異なる時点での正確性についての、または用意されている1もしくは複数の作業の種々のセグメントに関してのフィードバックを提供する)を伴うかもしくは伴わない、キー押し反応、音声、筆記、触覚、もしくは視覚誘導(visually guided)反応を含むがこれらに限定されない、いずれかの可能な組み合わせで用いられる種々の反応モダリティと共に、単一もしくは複数の、視覚、聴覚、および触覚などの種々の知覚モダリティ刺激(sensory modality stimulation)を提供することができる。
【0095】
脳刺激装置146は、電磁気的、電気的、磁気的、および/または光電的に、ならびに阻害的または興奮的に、脳特徴閾値演算126によって機能的、構造的、または認知的に疾患に罹患していると見なされた単一もしくは複数の個人脳領域100の脳ピクセル、領域、組織、機能的神経ユニット、または脳半球を、脳刺激アナライザー133の制御、および脳刺激データ138の直接の入力に基づいて刺激する能力を有する医療装置を含むことができる。別の選択肢として、脳刺激装置146は、脳特徴閾値演算126によって機能的にまたは構造的に特定の1もしくは複数の向上度が低い認知機能と関連付けられる単一もしくは複数の脳ピクセル、領域、組織、機能的神経ユニット、または脳半球を、脳刺激アナライザー133の制御、および脳刺激データ138の直接の入力に基づいて、電磁気的、電気的、磁気的、または光電的に刺激する能力を有する医療装置とすることができる。
【0096】
さらに別の態様では、脳刺激装置146は、電気、磁気、電磁気、もしくは光電エネルギー源または刺激の少なくとも2つをいずれかの可能な組み合わせで集中させることにより、単一もしくは複数の脳ピクセル、領域、組織、機能的神経ユニット、または脳半球を電磁気的、電気的、磁気的、および/または光電的に、ならびに阻害的または興奮的に刺激する能力を有する医療装置を含むことができる。これらの単一もしくは複数の電気、磁気、電磁気、または光電気の源は、頭蓋の最上部、または頭皮もしくは顔もしくは首の表面のいずれの地点にも、おおよその境界を定めてまたは耳、鼻、洞、口および喉頭、眼を例とする頭部に位置するいずれかの開口部内に非侵襲的に、配置してよい。さらに、これらの刺激するもしくは受ける電気、磁気、電磁気、または光電気の源の各々は、神経認知刺激装置144により、および詳細には脳刺激データ138からの動的な入力を通して、個別にまたは一括して制御される。
【0097】
ROI神経認知刺激150に続いて、図1に示し上記で詳述したように、神経診断モジュール101、関心領域演算処理モジュール102、脳特徴演算処理モジュール103、治療モジュール104、および刺激モジュール105により、フィードバック測定が行われる。このような「フィードバックループ」(すなわち、刺激モジュール105から神経診断モジュール101へ)を含めることにより、刺激の後、個人の疾患に基づくまたは認知的向上の刺激パラメータを連続的にモニタリングし、調節することが可能となる。これはさらに、治療モジュール104で行われる動的自動学習(dynamic automatic learning)、すなわち、特定の疾患または個人に対する、刺激の前後でのROI閾値データ128と脳状態データ129との比較に基づく特徴‐閾値逆刺激演算処理132の最適化という観点での学習も可能とする(すなわち、特定の脳状態データ129の疾患または特定の認知的向上プロトコルおよび特定のROI閾値データ128に対する脳刺激アナライザー133、認知刺激アナライザー134、または神経認知刺激アナライザー136による刺激前パラメータ出力を変化させることと、刺激後に測定されたROI閾値データ128および脳状態データ129との間の関係を累積的に評価して、最も効果的な脳刺激、認知刺激、および対応する神経認知刺激パラメータを決定する能力を有する統計メタ分析またはその他のいずれかの統計的手順)。
【0098】
図6の脳刺激装置146の詳細を示す図7をここで参照する。脳刺激装置146は、脳刺激データ138および神経認知刺激データ140からの入力に基づいて特定の単一もしくは複数の脳部位を刺激するように構成され、これは、電極可動化モジュール(ELECTRODE MOBILIZATION MODULE)107へ、単一もしくは複数の脳部位を刺激するための電極刺激装置108の配置、部位、刺激の軸、および方向に関する情報を出力する。そして次に、電極可動化モジュール107は、現在の位置決定(localization)、軸、刺激の方向、および脳領域についてのモニタリングを受け、これらは、電極刺激装置108へ入力される。電極配置モジュール(ELECTRODE POSITIONING MODULE)106は、連続的に電極可動化モジュール107を補助して電極(またはその他のいずれかの電気もしくは電磁気刺激装置)を、所定の単一もしくは複数の脳領域、個人脳領域100に対する刺激の位置および軸へ、または刺激の正確な位置決定へと導く。電極可動化モジュール107と電極配置モジュール106との間の連続的な相互作用を通しての決定に従って電極刺激装置108がそのような単一もしくは複数の脳の位置へと配置され、所望の単一もしくは複数の個人脳領域100への刺激が可能となると、電極刺激装置108は、その所望の個人脳領域100を刺激する。
【0099】
電極刺激装置108の物理的な設計または構成は、それが電極可動化モジュール107による物理的な可動化をほとんどもしくはまったく必要とせず、その代わりに、脳刺激データ138に基づいて作動するようにしてよい。そのような態様の例としては、頭皮の最上部、または口、鼻、眼、もしくは耳の腔部内の複数の位置に配置された数多くの複数の電磁気、磁気、電気、および/または光電刺激装置であって、それらの電磁気もしくは電気方向、または刺激の軸、またはそれらの各々によって刺激される1もしくは複数の領域のローテーションを可能とするコンピュータシグナルによってその各々が制御される装置、を含む電極刺激装置108が挙げられる。さらに、電極刺激装置108は、電気、電磁気、磁気、および/または光電シグナル(またはこれらのいずれかの組み合わせ)が電極間で送受信されるように構築してよい。電極刺激装置108は、上述の位置のいずれかに配置され、相互コンピュータ(mutual computer)によって制御される磁気、電気、電磁気、および/または光電刺激装置を含んでもよく、従って、これにより、脳の単一もしくは複数のいかなる地点、部位、領域の集中(convergent)または放出(emission)または受容(receptive)刺激が可能となる。
【0100】
所望の個人脳領域100の継続中のおよび連続する刺激という観点からの脳刺激装置146の機能は、上記で説明し図1で示した本発明に基づいて、同じまたは異なる個人脳領域100を刺激するように連続的に調節することができる。従って、脳刺激装置146は、アルツハイマー病、うつ病、自閉症、およびその他の上述の疾患などの種々の脳に関連する疾患を治療する手段として作用することができ、または正常個人における特定の認知機能または技能を向上させる手段として作用することができる。
【0101】
図6の脳刺激装置146の別の概略図の詳細を示す図8をここで参照する。脳刺激装置146は、単一もしくは複数の脳領域、地点、細胞、葉、または脳半球を刺激する能力を有する電気または電磁気刺激部材(electrical or electromagnetic stimulating agents)である単一もしくは複数の電極刺激装置108を含むヘルメットまたは類似の装置300の形態である(個人の頭部301の少なくとも一部を覆うように図8に概略的に示す)。電極刺激装置108は、図7の脳刺激データ138および神経認知刺激データ142の両方によって制御される。単一もしくは複数の電極刺激装置108の各々は、隣接するまたは付随する電極配置モジュール106によっても評価されており、これは、この刺激の配置もしくは軸にて電極刺激装置108によって刺激することができる人の個人脳構造およびそれらのそれぞれの領域に対するこれらの電極刺激装置108の各々の位置を決定することができる。各電極刺激装置108のこの個人脳に特有である位置決定は、次に、脳刺激データ138からの刺激部材に特有の入力と共に用いられ、神経認知刺激データ142が電極配置モジュール106に出力され、電極可動化モジュール107により、位置決定、刺激の軸もしくは方向の仕様、または領域、細胞、葉、もしくは脳半球、または単一もしくは複数の脳地点または位置のいずれかの仕様が調節される。そして次に、電極可動化モジュール107は、電極配置モジュール106にフィードバックを送り、それによって、電極刺激装置108の各々が決定された単一もしくは複数の個人脳領域100のすべてを刺激する能力を持つように、その各々の正確な位置決定の連続的な調節および最適化が可能となる。これらの電極刺激装置108の各々が、付随する電極配置モジュール106により、対応する脳刺激データ138に基づいて、および神経認知刺激データ142からの入力に基づいて、対応する単一もしくは複数の個人脳領域100を刺激するように適切な配置に位置するように決定されると、単一もしくは複数の電極刺激装置108は、図6の認知刺激装置148と共に、決定された個人脳領域100の刺激を開始する。
【0102】
図8に示されるように、装置300の電極刺激装置108は、頭皮、頭部、顔、首の上、または眼、耳、口、もしくは鼻の腔部もしくは開口部/空間の内部に配置することができ、これは、回転または移動することができ、またはそうでなければ、異なる単一もしくは複数の脳の位置、または領域、または地点の刺激方向を変えることができる。そのような異なる電極刺激装置108によるそれらの集中または放出および受信は、個人の脳内のいずれかの1もしくは複数の立体的地点、細胞、組織、領域、葉、または脳半球の刺激を可能とし、そして、脳刺激データ138からの入力に基づき、および神経認知刺激データ142と組み合わせて、これらの電極刺激装置108の各々に対して独立して制御され、個人におけるいずれかの脳に関連する疾患の治療、またはいずれかの1もしくは複数の認知機能の向上が可能となる。
【0103】
脳刺激装置146の代表的な態様は、電極可動化モジュール107が、これらの特定の電極刺激装置108の各々による電気刺激または電磁気刺激またはこれら2種類の刺激のいずれかの組み合わせの方向の変化、変更、または制御を行うことが可能である方法で、各電極刺激装置108が、そのような刺激をいずれかの単一もしくは複数の脳地点または領域を通して発信、伝送、または受信可能である方法で、人の歯の上に個別に配置される、または口腔内のその他の位置、喉、耳、鼻、眼、および頭皮、顔、首の表面に配置される複数の電極刺激装置108を含み、ここで、複数の電極刺激装置108からの刺激の集中により、または単一もしくは複数のそのような電極刺激装置108による電気または電磁気刺激の放出および受信を通して、刺激のいずれかのライン(line)、またはスライス(slice)、または方向、または領域の正確性をより正確または精密とすることができる。この結果、脳全体が、脳刺激データ138からの入力によって制御され、上述の本発明に基づく単一もしくは複数のそのような電極刺激装置108による集中または放出および受信による刺激の可能性のある数多くの複数の地点、ライン、球、領域、器官、葉、細胞、または脳半球の1つのフィールドとなる。
【0104】
ここで、本発明を、図9〜20および態様A〜C、その変形および拡張、を参照して説明する。
【0105】
態様A
【0106】
態様Aのシステムは、以下の説明および図9〜13を参照して説明する要素を含む。態様Aは、同期されたTMS磁気刺激および認知トレーニング刺激を、医療提供者によって識別された患者の位置、またはアルゴリズム的に識別されたアルツハイマー病の脳領域に提供することができる。このシステムは、コンピュータ、TMS刺激装置(905、907)、患者に適する筐体ユニットをTMSコイル(904)と共に含むことができる。
【0107】
コンピュータは、2つのスクリーン(901、908)およびキーボード(902、908)を含むことができ、一方(908)はオペレータ(909)との対話を可能とし、他方(901)は認知刺激を提供し、実行制御モジュール(Executive Control Module)(ECM)によって制御される。患者(910)は、キーボード(902)を用いてコンピュータ(905)にフィードバックを提供することができる。さらに、コンピュータ(905)は、TMSユニット(907)に命令して、TMS刺激の適用後、予め定められた時間の範囲内で、2つのユニット(911)間の接続を用いるパルスを出力させる。
【0108】
患者(910)は、座り心地の良い椅子(912)に座る。この椅子は、背もたれを立てた状態またはリクライニングの位置で座ることが可能である。患者の頭部は、拘束器具(903)を用いて動きを拘束することができ、筐体ユニット(904)は、適切な固定法を用いて患者にしっかり固定することができる。
【0109】
TMS磁気刺激は、筐体ユニットを用い、TMSコイル(904)を介して患者(910)へ適用される。TMSコイルは、温度制御される。TMS磁気刺激ユニットについては、以下でさらに詳細に考察する。
【0110】
本発明の代表的な態様Aのシステムのためのコンピュータアプリケーション(906、1400)は、以下の機能を提供することができ、好ましいコンポーネントモジュールの詳細は、本明細書にて以下で別々に説明される。実行制御モジュールは、治療セッション(1408)および刺激の適用の順序ならびに状態を管理する役割を有する。END(1404、1505)のISAT(1505)コンポーネントは、一連のMRIイメージを用いて脳の質量または構造の経時での変化を識別する。END(1404、1505)のISAT(1505)コンポーネントは、その他のENDの代替部(NDAまたはADM)のいずれかをも、いずれかの組み合わせで用いることができる。EDMISモジュール(1405)は、認知試験結果、END(1404)からの出力および医療提供者または現場外職員からの入力を用い、保存されたスクリプト(1413)に基づいて、最良の刺激位置およびトレーニング管理体制(training regime)を決定する。認知トレーニングモジュールCSM(1412)は、動的に変更可能であるスクリプト(1413)に基づいて、患者(910)に刺激を適用する。疾患脳位置決定モジュール(Diseased Brain Localization Module)(DBLM)(1406)は、EDMIS(1405)によって識別された位置を取得し、識別された位置を特定の患者の解剖学的構造と相関させ、脳地図(1407)に基づいて正しい刺激位置を検出する。脳共位置合わせコンポーネント(Brain Co−Registration Component)(907、1409)は、患者上の刺激すべき位置の正確な座標を決定し、TMSコイルの位置(904)、適用された磁気パルス、および患者の所望される刺激位置の間の位置合わせを示し、制御する。
【0111】
本発明の別の代表的な態様によると、態様Aへのオプションは、正常個人における認知機能の向上を目的として調整することができ、例えば、EDMISを、向上認知機能決定システム(Enhanced Cognitive Functions Decision Making System)(ECFDM)と称される同等のモジュールと実施的に置き換えることによる。このモジュールは、同様に、1もしくは複数の特定の認知機能または技能を向上させるために刺激するべき1もしくは複数の特定の脳領域を、ENDおよび認知試験モジュールの入力に基づいて識別するものであり、これは、同様に、正常個人における1もしくは複数の特定の認知機能の向上のために刺激されることが必要である、ECFDMに識別された1もしくは複数の脳領域または部位への電磁気刺激および認知刺激の供給の間を次に連係(および同期)させる実行制御モジュールと接続される。
【0112】
態様Aのシステムからの刺激を用いた治療の間、またはいずれかの単一もしくは複数のセッションの後、患者の反応(902)に基づいて、またはEND、ISAT(1505)、NDA(1507)、またはADM(1506)、によって連続的にまたは断続的に測定された患者の脳の構造、機能、神経可塑性、もしくは神経生理などの変化に基づいて、EDMIS(1405)は、その反応に基づいた決定を行い、認知トレーニングの最適化に必要である、オペレータ(909)の変更またはスクリプト(1413)の改変が行われる。
【0113】
本態様では、フィードバックループが、電磁気刺激および/または認知刺激の単一もしくは複数のセッション前、ならびにさらにそのような単一もしくは複数の治療セッションの後に、患者の機能、もしくは構造、もしくは神経可塑性、もしくは神経生理の状態(例:変性性の(degenerative)または刺激後の再生性の/神経可塑性の経時での変化という観点から、ISAT;または、年齢、教育、もしくはその他のパラメータがマッチングする正常集団に対して、NDA;または、アルツハイマー病、もしくはその他のいずれかの脳疾患の集団に対して)を測定する。このフィードバックループは、END(ISAT、NDA、またはADM)による繰り返して行われた測定を用い、EDMISに従って、脳刺激の1もしくは複数の部位、強度、継続時間、頻度などのパラメータを調節し、さらに、これらの電磁気的に刺激された脳領域の対応する認知刺激も調節することができる。
【0114】
態様B
【0115】
態様Aのシステムの機能に対する拡張は、以下の機能:ENDモジュールの全機能、を追加する態様Bのシステムであり、その好ましい態様を以下で詳細に説明する。ENDモジュールは、刺激位置を決定するために1もしくは2つ以上の下記のアルゴリズムを用いる:
【0116】
患者間アクロスタイム(END‐ISAT)(1505、1600)
【0117】
規範データ分析(END‐NDA)(1507、1800)
【0118】
アルツハイマー病診断モジュール(END‐ADM)(1506、2000)
【0119】
態様Bのシステムは、さらに、磁気刺激のコンピュータ制御(1010)を追加することができる。この特徴は、脳共位置合わせの機能を用いることにより、閉ループ法で実行することができる。
【0120】
態様C
【0121】
態様Bのシステムの機能に対する拡張は態様Cのシステムであり、図19に示す刺激装置を含む以下のコンポーネントおよび機能が追加される。図19の刺激装置は、電気的、電磁気的、磁気的、またはこれらのいずれかもしくはすべての組み合わせを用いることによる脳領域の拡張された刺激を提供する。この刺激は、患者の頭部の周囲および患者の頭部の腔部に、侵襲的または非侵襲的に設置された複数のコイル、表面電極、およびインプラントされた神経電極、またはこれらのいずれかもしくはすべての組み合わせを含んで(2501)、特定の脳領域(2505)を標的とする強度を最適化することができる。
【0122】
図19の刺激装置は、刺激位置を正確に自動的に最適化および制御するために、ジャイロスコープ位置センサーおよびジャイロスコープ安定化システム(2501)などの位置フィードバックならびに速度フィードバック(rate feedback)メカニズムを用いるコイル位置制御および安定化を有するヘルメットおよび またはフレーム(2506)を含む。このジャイロスコープコンポーネントは、ヘルメットもしくはフレーム(2506)の磁石または電極の各々の位置およびベクトルの連続的な感知、調節、可動化、制御を行う。
【0123】
図19の刺激装置は、刺激コントローラー(2503)にフィードバックを提供することにより、適用された磁場のベクトルの大きさおよび方向の患者の頭部または脳領域に対する制御を提供し、冷却および熱管理(1105)を含むことができる。さらに、図19の刺激装置は、フィードバックとしての基準またはその他の指標のトラッキングと共に、刺激位置および強度の調節を含む。
【0124】
図19の刺激装置は、刺激コイルおよび電極(2502、1104)、配置アクチュエータ、ならびにセンサーのマニュアルまたはコンピュータ制御を行う能力を有する。コンピュータ制御下(1106)では、このシステムは、刺激位置および強度に対するリアルタイムのフィードバックを提供し、そして必要に応じて補正を行う。
【0125】
態様Cのシステムのコンピュータアプリケーションは、以下の特徴によって拡張される:
【0126】
a.図19の刺激装置を用いる適用された磁場ベクトルを制御するための磁場制御モジュール。
【0127】
b.侵襲的におよび非侵襲的に、電気刺激を制御および適用するための電気刺激パルスモジュール。
【0128】
c.慣性センサーのフィードバックをモニタリングし、図19の刺激装置のジャイロスコープ安定化を制御するジャイロスコープ制御モジュール。
【0129】
d.態様Cのコンピュータアプリケーションによる治療セッション中の認知試験の結果をトラッキングする形での治療セッション中の認知経過モニタリングであり、これにより、EDMISモジュールへのフィードバックを用いて治療セッション中の認知機能のリアルタイムでの評価が可能となる。
【0130】
e.患者の刺激位置の精度、患者の刺激レベル、および認知トレーニングの結果を含む、セッション中に集積されたデータのデータベースの保存および検索。
【0131】
本発明の代表的な態様によると、上述の態様Cのシステムは、以下の態様で述べるサブシステムのすべてを含む。
【0132】
システムサブコンポーネント
【0133】
実行制御モジュール(ECM):
【0134】
ECM(1408)は、興奮性刺激(1411)および認知刺激(1410)の適用を制御するコンピュータアプリケーション(1400)のコンポーネントであってよい。ECMは:(1)DBLM(1406)からの刺激位置の入力データの集積を管理し;(2)DBLM(1406)によって指定された位置における患者に対するTMS適用刺激および認知刺激の適用の順序付けを行い;および/または(3)EDMIS(1405)およびDBLM(1406)の出力を、EDMISおよびDBLMによって決定された治療プロファイルを改変するために、モニタリングすることができる。
【0135】
ECM(1408)は:(4)興奮性刺激(1411)の後に約50から500mSecの認知刺激(1410)の時間を調節し;(5)適用されたTMSパルス(1410)の適用を命令するために、TMSユニットへトリガー出力を提供し;および(6)脳共位置合わせ(1409)モジュールを用いてコイルの理想的な位置(904、1004、および1104)を識別し、TMS刺激(1410)の制御および配置を行うことができる。
【0136】
さらに、ECM(1408)は、コイルの正しくない配置を示すことができるか、またはコンピュータ制御された配置(1010)を用いて、刺激位置を補正し、患者への認知刺激の整理および制御のためにCSM(1412)と通信することができる。
【0137】
ENDモジュール(1500):
【0138】
ENDモジュール(1500)は、アルツハイマー病(AD)の存在を判定するための一連のアルゴリズムを含む。これらのアルゴリズムは、より大きなアプリケーションの一部であってよく、またはEDMIS(1405)と組み合わせて疾患の初期もしくは後期段階の診断に用いることができる別個の診断アプリケーションであってもよい。ENDモジュールは、MRI(1503)もしくはFMRI(1502)データ、エキスパート診断(expert diagnosis)(1501)、または認知試験結果(1504)の形態の入力を受け入れ、AD鑑別診断のための診断出力を出力する(1511、1607、1807、2008)。ENDモジュールは、刺激位置の決定のために、以下のアルゴリズムの1もしくは2つ以上を用いる:
【0139】
患者間アクロスタイム(END‐ISAT)(1505、1600):
【0140】
ISATは、アプリケーション(1400)中のコンピュータアルゴリズムとして実行することができ、アルツハイマー病の徴候である脳組織の質量または構造の変化を判定するために時間間隔を取って経時で取得された複数のMRIイメージ(1601)を用いる。ISATモジュール(1505、1600)は、MRI(1601)を利用し、回転および変倍を行ってイメージ間の最良の相関を達成する。ISATモジュール(1505、1600)は、さらに、脳における構造変化および質量変化を検出するために、イメージの差異、ならびに高域フィルターを通したもしくはエッジ処理した拡張イメージの差異の計算も行う。ISATモジュール(1505、1600)は、ユーザーに対して変化が疑われる位置も示し、それによって、ユーザーは、治療位置の入力(input)、レビュー、および入力(enter)もしくは改変が可能となる。ISATモジュールは、業界標準のMRI設備(1503)からのMRIデータも読み込む。
【0141】
ISATの出力(1606)は、刺激されるべき特定の脳領域を示し、各領域のトラッキングインデックス(tracking index)を含み、それによって、後退か改善かを素早く判定することが可能となる。
【0142】
規範データ分析(END‐NDA)(1800):
【0143】
NDA(1805)は、コンピュータアルゴリズムとして実行され、MRI(1802)およびFMRI(1803)データ、または認知試験結果(1801)を用いる。NDA(1805)は、以下の疾患の指標を、業界で公認された基準または出願者によって確立された基準の分析から得られた規範値(1804)と比較する。NDA規範データ(1804)は、患者に対して年齢マッチされる。NDA(1805)は、内部に保存された同一年齢である正常患者の構造および質量の表示(1806)との比較のために、データの変倍、回転、および標準化を行う。
【0144】
NDA(1804)は、変倍、回転、および強度の標準化を行った適用されたイメージと参照イメージとのデータの差異を計算すること、差異計算を行ったデータを所定の閾値と比較すること、から成るアルゴリズムを用い、この閾値は、標準化された正常患者データと疾患脳組織からの患者データとの比較によって決定される。
【0145】
NDAの疾患判定閾値は、空間の3つの度数の空間閾値であり、4次元の値から成る。NDAは、識別されるべき疾患の種類、または疾患の進行レベルに基づいて、複数の閾値を含む。このようなNDAは、複数の閾値を用いて、出力上にマークすることで、疾患進行の勾配(disease progression gradient)、疾患進行の程度および方向、を算出し、その算出されたインデックスおよび識別された脳の領域をEDMISアルゴリズム(1808)へ示す。NDAの出力データは、それだけを用いて、診断の目的で疾患の進行を識別し、追跡することができる。NDAモジュールは、所望される場合は、認知実行測定からの入力を受けてもよい。
【0146】
アルツハイマー病診断モジュール(END‐ADM)(2000):
【0147】
ADM(2005)は、コンピュータアルゴリズムとして実行することができる。ADM(2005)は、非常に初期の段階、理想的には発症の約4から約10年前に疾患の存在を示す。ADMの出力は、刺激されるべき疾患脳領域である(2006)。ADMは、FMRI(2004)イメージングで集積されたMRI(2003)、FMRI(2004)、および認知試験結果データ(2002)を用いる。ADM(2005)は、アルツハイマー病またはMCI患者に関連付けられる特性(2001)に対しての分析により、疾患脳領域を判定する。ADM(2005)は、内部で整理された疾患対象の構造および質量の表示(2008)との比較のために、データの変倍、回転、および標準化を行う。
【0148】
ADM(2005)は、変倍、回転、および強度の標準化を行った適用されたイメージと参照イメージとのデータの差異を計算すること、差異計算を行ったデータを所定の閾値と比較すること、から成るアルゴリズムを用い、この閾値は、標準化された疾患患者データの比較によって決定される。
【0149】
ADMの疾患判定閾値は、空間の3つの度数の空間閾値であり、4次元の値から成る。ADM(2005)は、識別されるべき疾患の種類、または疾患の進行レベルに基づいて、複数の閾値を含む。このようなADM(2005)は、複数の閾値を用いて、出力上にマークすることで、疾患進行の勾配、疾患進行の程度および方向、を算出し、その算出されたインデックスおよび識別された脳の領域をEDMISアルゴリズム(2007)へ示す。ADM(2005)の出力データは、それだけを用いて、診断の目的で疾患の進行を識別し、追跡することができる(2008)。ADMの基準閾値(ADM norm thresholds)は、ADNIデータベース、外部データベース、またはその他のAD徴候データ(AD indicative data)(2001)から算出される。
【0150】
ADM(2005)の出力は、疾患脳領域(2006)であり、これは、臨床的症状を示す約4年から約10年前までの疾患の診断、またはこれらの疾患脳領域の治療のための刺激に用いることができる。
【0151】
疾患脳位置決定モジュール(DBLM)(2100):
【0152】
DBLM(2100)は、ソフトウェアモジュールまたはコンピュータアプリケーションとして実行することができる。DBLM(2100)は、脳地図(2102)および患者のMRI(2106)に基づいて脳の疾患位置を識別する。DBLM(2100)により、ユーザーは、代表的な脳のイメージ上、または患者からの再構築されたMRIイメージ上でコンピュータの「マウス」をクリックすることができることにより、刺激されるべき脳の位置(2104)を示すことができる。DBLM(2100)は、EDMIS(2105)からの入力を受け、特定の患者に対する治療位置を確立する。DBLM(2100)は、TMS刺激装置とインターフェイス接続し、刺激パルスを適切な位置へ配置する。
【0153】
DBLMは、位置合わせアルゴリズム(2103)を用い、MRIデータ(2106)を用いて患者の正確な位置に脳地図の出力を最適に適合させる(2101)。DBLM位置合わせアルゴリズム(2103)は、イメージの変倍、回転、および標準化を行い、そのイメージを脳地図の内部イメージと比較する(2102)。DBLM(2100)は、表示間の相関を行い、保存脳地図イメージと患者のイメージとの間の補正オフセットとして用いられるオフセットインデックスを検出する。オフセット、変倍、および回転の値を用いて、患者データ中の刺激地点の検出を行う(2104)。
【0154】
DBLM(2100)は、刺激地点の空間座標位置の3つの度数を決定し、それらの位置を刺激のためにECM(1408)へ出力する。DBLM(2100)は、ECMとインターフェイス接続し、所望の刺激適用位置一式全体の順序決定を可能とする。
【0155】
脳地図(1407):
【0156】
脳地図(1407)は、好ましくは、DBLMアプリケーション(1406、2100)のコンポーネントである。脳地図(1407)は、公知の構造的脳領域のデータベースを含む。脳地図(1407)は、脳の複数の表示を含み、入力された患者の日付、年齢、サイズなどに応じた値によって索引付けされている。脳地図(1407)は、DBLM(1406、2100)によって参照され、EDMIS(1405)による任意の結果一式に対する理想的な刺激位置を確立する。
【0157】
エキスパート意思決定双方向システム(EDMIS)(1900):
【0158】
EDMIS(1900)は、ソフトウェアモジュールまたはコンピュータアプリケーションを含み、内部データベース、現場外職員、および/または現場外データベースとインターフェイス接続されている。EDMIS(1900)は、END(1902)の出力、認知試験結果(1903)、およびユーザーからの入力(1901)を用いて最適な刺激位置の決定を行う。EDMISシステム(1900)は、診断目的の情報を出力する(1912)。EDMISシステム(1900)は、治療専門化によるエキスパート診断(1909)に基づいて、ならびに/または、END(1902)および もしくは認知試験(1903)、さらには熟練職員(1901)からの入力を用いるエキスパート決定システム(1906)に基づいて、刺激されるべき領域、さらには治療の特性を決定する。
【0159】
EDMIS(1900)は、1もしくは複数の治療セッションの最中またはその後に、CSM(1412)からの患者フィードバック(1908)を用いて刺激特性の再評価を行い、CSMに対して、治療セッション中のその操作を、データの再分析によって改変するように命令する。EDMIS(1900)は、ENDによる再分析または認知機能(1905)の再検査に基づき、患者を再評価して治療プロファイルへ適切な変更を行うために、治療中(1901)、治療後の結果の入力(1909)、さらにはシステムからの過去の出力の入力を可能とする。EDMISコンピュータアプリケーションまたはモジュールは、ユーザーインターフェイス(1904)を含む。EDMIS(1900)は、患者へ投与されるべき刺激の種類および特性を決定する(1905、1907)。EDMIS(1900)は、治療中に用いるべき認知刺激の種類を決定する(1907)。EDMIS(1900)は、MRIイメージ(2106)によって決定される特定の患者における正確な刺激位置を検出するために(1906)、DBLM(1911)とインターフェイス接続する。
【0160】
脳共位置合わせ(1409):
【0161】
脳共位置合わせ(1409)は、ソフトウェアモジュールまたはコンピュータアプリケーションとして実行することができる。このシステムは、以下の機能の1もしくは2つ以上を実行する既製の脳共位置合わせコンポーネントを用いることができる。脳共位置合わせ(1409)は、コイルの方向付け(coil aiming)もしくは刺激プロセスの間に、TMSコイル(1411)によって刺激されるべきまたは刺激されている脳の領域を決定する。脳共位置合わせ(1409)は、適用された磁場と刺激位置および または強度との間の位置合わせをリアルタイムで評価することができる。脳共位置合わせ(1409)は、予め識別された標的領域に対しての刺激位置を手動または自動で最適化することを可能とする。脳共位置合わせ(1409)は、は、脳の3Dイメージを用いて、刺激を受けている脳の位置をユーザーに示す。脳共位置合わせ(1409)は、カラーコーディング(color−coding)を用いて、刺激の相対強度を示す。
【0162】
認知刺激モジュール(CSM)(1412):
【0163】
CSM(1412)は、態様A〜Cのコンポーネントであり、コンピュータアプリケーションまたは別のアプリケーションのコンポーネントを含むことができ、ECM(1408)によって制御されるスクリプト(1413)によって操作することができる。CSMスクリプト(1413)は、適用すべき認知刺激(1410)、適用された磁気または電気刺激と適用された認知刺激(1410)との間の遅延時間、を示すことができる。スクリプト(1413)は、患者の進行を判断することが可能となる患者フィードバックに対する段階付けされた反応を含むことができ、その反応は、CSMによる患者の進行の判断のためのスコアがタグ付けされている。CSM(1412)は、ECM(1408)およびTMS(1411)が刺激パルスを適用した後に、スクリプトされた刺激(scripted stimuli)を患者のモニターに適用することができる。CSM(1412)は、認知刺激に対する回答または応答の形態での患者フィードバックを受けることができ、それによってリアルタイムで治療方針に関する決定が行われる。
【0164】
磁気刺激装置の態様AおよびB
【0165】
態様AおよびBでの使用に適する代表的なTMS(経頭蓋磁気刺激)(907)は、FDA 510K認可のものが好ましく、臨床試験に、ならびに治療を行う診療所への配備に使用することができる。TMS刺激装置(907)は、脳の選択された領域へ磁気刺激を提供することができ、治療中の患者の頭部へ手で配置することが可能である(904)。患者の頭部へ固定するための適切な締結ベルトが備えられている。
【0166】
治療時間中、TMS刺激装置の位置は一定に維持するべきであり、適用される磁気パルスのタイミングを±5mSecの精度まで可能とするために、ECM(905)インターフェイス接続するべきである。適切な刺激周波数は、刺激される各皮質領に対してのパルスエンベロープ(pulse envelopes)の持続時間を20分程度の長さとする、約1から5秒間で、約1から20Hzであってよい。TMS刺激装置(907)のコイルは、いずれの適用地点においても、40℃を超える温度に患者をさらしてはならない。
【0167】
態様Cのための磁気刺激装置
【0168】
態様AおよびBにも使用可能であるが、態様Cのための代表的な磁気刺激装置(2503)は、患者の頭部の周囲に調節可能に配置することができる複数の磁気刺激コイル(例えば12個のコイル)である(2501)。一体化されたシステムは、複数の磁石および/または電気放出源(electrical emitters)および/または電気チップ(electrical chips)および/または各電磁気/電気刺激装置の電磁気刺激の正確な位置およびベクトルを検出する能力を有する付随するジャイロスコープを組み合わせるものである。さらに、各電磁気/電気刺激装置は、各電磁気/電気刺激装置の、ならびに他の電磁気/電気刺激装置の電磁気刺激の強度およびベクトルを検出する能力を有する付随するセンサーを持ち、それにより、一体化ジャイロスコープ‐センサーシステムは、正確な3次元での単一もしくは複数の皮質または皮質下地点のリアルタイムでの識別、または三角測量(triangulating)を行う能力を有する。
【0169】
追加のセンサーを、頭皮または頭蓋内開口部内の追加の位置に配置してよい。さらに、皮質または皮質下脳位置合わせシステムにより、1もしくは複数の電磁気ベクトルが特定の皮質または皮質下領に適用される場合に、刺激されている皮質または皮質下領の外挿/演算処理が可能となる。さらに、この一体化ジャイロスコープ‐センサー‐皮質‐皮質下位置合わせシステム(gyroscopic−sensor−cortical−sub−cortical registry system)に基づき、どの皮質または皮質下領が、どの強度で刺激されているかをリアルタイムで識別することができる。これらの特徴により、標的とする(単一もしくは複数の)皮質または皮質下領の刺激の最適化が得られるまで、各電磁気/電気刺激装置の刺激パラメータのリアルタイムでの連続的な調節およびモニタリングが可能となる。
【0170】
磁気刺激装置に付随するジャイロスコープコンポーネントおよびセンサーのシステムは、各磁石または電極の位置およびベクトルを連続的に検出、調節、可動化、および制御することができる。さらに、ジャイロスコープ‐センサー連携ベクトル三角測量(gyroscopic−sensor interaction vector triangulation)を用いることによって、磁気刺激の正確な位置を把握することができ、特定の脳領域内のエネルギー集中位置を識別することができる。それぞれの磁気刺激装置の各コイルの強度は、コンピュータ(1107)によって制御可能である。磁気刺激装置(2503)は、鼻挿入用コイル、耳挿入用コイル、ならびに口用および眼用の適切なコイルを含むことができる(2501)。磁気刺激装置(2503)は、上述のように、または市販の脳共位置合わせもしくは類似の装置の使用説明に従い、適用された磁場の正確な配置および強度を制御するために、コイル(2501)の電流を改変する。大型の刺激装置コイル(2501)は、コイルにて約2から3テスラ、約5cmまでの深さでの皮質中では約0.5から0.75テスラを発生させる能力を有する。小型の磁気コイルは、コイルにて約1.5から2テスラ、約3から4cmまでの深さでは約0.1から0.5テスラを発生させる能力を有する。
【0171】
態様Cの磁気刺激装置制御システム(2503)は、磁場の適用されたスルーレートを制御し、約50から2000μSecの磁場立ち上がり時間を作り出す。コンピュータの命令下にある鼻および口用コイル(2501)は、海馬などの脳深部領域まで、磁場勾配(強度)を操作し、最適化することができる。刺激装置コイル(2501)は、患者の頭部に配置されたヘルメットまたは類似の構造またはフレームに搭載することができる(2502)。
【0172】
態様Cの刺激装置(2501)により、単一もしくは複数の脳の皮質または皮質下領を、適用された磁場ベクトルを制御することによって刺激することが可能となる。磁気刺激の位置は、磁場勾配の制御、およびヘルメットもしくはフレーム内でのコイルの自動または慣性の動きの両方により、コンピュータによって制御することができる。態様Cの磁気刺激装置(2501)は、頭部の開口部に位置するアクセサリーコイル(2504、2501)を通した磁場の最適化を提供し、それにより、磁場がより深い位置に、より正確に到達することができる。該当する場合は、コイルの温度制御を行うことができる。
【0173】
態様AおよびBの刺激装置と同様に、態様Cの磁気刺激装置(2503)は、ECM(1408)とのインターフェイス接続を備えることができ、それにより、適用される磁気パルスのタイミングが±5mSecの精度まで可能となり、ならびに約1から5秒間で、約1から20Hzまでの刺激周波数、および刺激される各皮質領に対して約30分までの持続時間のパルスエンベロープの適用が可能となる。
【0174】
態様Cのための電気刺激装置
【0175】
態様Cの電気刺激装置(2503)は、適切に配置された表面または侵襲的電極(2501)、または磁気もしくは電磁気コイル、導電体などを通して適用される電気刺激を用いて脳刺激を提供する。電気刺激装置(2503)は、患者固有のMRI(1403)から得られた脳地図を通して、正確な電極のインプラント位置の詳細を提供する。電気刺激装置(2503)は、ECMとのインターフェイス接続を備え、起動されたパルスの患者の脳への適用を、適用されたTMSパルスと共に、またはそれ単独で、可能とする。電気刺激装置は、表面電極もしくは皮下電極、または患者の脳において内部にもしくは神経的に(neuronally)配置され位置する電極の使用を可能とすることができる。
【0176】
電気刺激装置(2503)は、10から100μAの刺激パルスを供給し、ECM(1408)によって制御される複数の電極(例えば、約20個の電極)を用いることができる。パルスは、約1から20Hzの周波数、約0.5mSecから約10mSecのパルス幅、および約10から200mSecのエンベロープの長さ(envelope duration)を持つことができる。電気刺激装置(2503)は、所望の刺激位置にて電流勾配を最大とするために、刺激電極に適用された電流を制御するべきである。
【0177】
図20は、本発明の一体型神経認知システムのジャイロスコープ安定化およびフィードバックシステム(2700)の代表的な態様を概略的に示す。システム(2700)は、ジャイロスコープ安定化(2701)、モーター(2702)、ならびにジャイロスコープセンサーおよびフィードバックコントローラー(2703)を含む。システム(2700)は、さらに、少なくとも1つの磁気刺激コイル(2704)および搭載フレーム(2705)も含む。
【0178】
本発明を好ましい態様と関連付けて説明したが、当業者であれば多くの改変および変更が明らかとなるであろう。本発明の好ましい態様を上記で説明し示したが、これらは本発明の代表例であり、いかなる形でも限定するものとして見なされるべきものではないことは理解されたい。従って、本発明は、示した態様に限定されることを意図するものではなく、添付の請求項によってのみ限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脳アナライザーおよび認知アナライザーの少なくとも1つを含むアナライザーシステムであって、前記アナライザーシステムは、個人の状態の少なくとも1つの特性を測定して測定された特性を得るように操作可能であり、前記測定された特性は、少なくとも1つの脳領域および少なくとも1つの認知的特徴の少なくとも1つと関連しており、ここで、前記アナライザーシステムは、個人の健康グループもしくは疾患グループの前記少なくとも1つの脳領域または少なくとも1つの認知的特徴からの基準値の算出も行い、前記アナライザーシステムは、前記測定された特性を前記基準値と比較して結果値を提供する、アナライザーシステムと;
前記アナライザーシステムとインターフェイス接続された刺激装置システムであって、脳刺激装置モジュール、ならびに脳刺激装置および認知刺激装置の少なくとも1つを含み、ここで、前記脳刺激装置は、興奮性または阻害性刺激エネルギーを放出することによって少なくとも1つの脳領域における単一もしくは複数の脳部位を選択的に刺激するように操作可能である少なくとも1つの非侵襲的脳刺激装置を含み、前記刺激装置モジュールは、前記結果値に基づいて、前記刺激エネルギーが少なくとも1つの脳領域における単一もしくは複数の脳部位へ指向されるように前記刺激装置を配置するように操作可能であり、ここで、前記脳領域は、左前頭前部領域、前頭葉、帯状回、脳半球、側頭葉、前頭葉、頭頂葉、後頭葉、扁桃体領域、小脳、海馬、アンスレオナル(anthreonal)、ピーボディ(Peabody)、斑(plaques)、もつれ(tangles)、脳幹、髄質(medula)、脳梁(corpus collasum)、皮質下領、皮質、回、白質、および灰白質の範囲内である、刺激装置システムと、
を含み、
前記認知刺激装置は、前記結果値に基づいて、少なくとも1つの認知刺激を提供して前記脳領域と関連付けられる少なくとも1つの認知的特徴を改変するように構成される、
神経医療装置。
【請求項2】
脳アナライザーおよび認知アナライザーの少なくとも1つを含むアナライザーシステムであって、少なくとも1つの脳領域および少なくとも1つの認知的特徴の少なくとも1つと関連する測定された特性を得るように操作可能であり、個人の健康グループもしくは疾患グループの前記少なくとも1つの脳領域または少なくとも1つの認知的特徴からの基準値の算出を行い、結果比較値を提供する、アナライザーシステムと;
前記アナライザーシステムとインターフェイス接続され、興奮性または阻害性刺激エネルギーを放出することによって少なくとも1つの脳領域における単一もしくは複数の脳部位を、少なくとも非侵襲的に、選択的に刺激するように操作可能である刺激装置システムであって、前記刺激装置システムは、刺激エネルギーを放出するためであり、前記結果値に基づいて、左前頭前部領域、前頭葉、帯状回、脳半球、側頭葉、前頭葉、頭頂葉、後頭葉、扁桃体領域、小脳、海馬、アンスレオナル、ピーボディ、斑、もつれ、脳幹、髄質、脳梁、皮質下領、皮質、回、白質、および灰白質の少なくとも1つの範囲内である単一もしくは複数の脳部位へ刺激エネルギーを指向するように配置可能である複数の別々の非侵襲的刺激装置を含む、刺激装置システムと、
を含む、神経医療装置。
【請求項3】
前記脳刺激装置および認知刺激装置が、単一の一体化された装置を形成する、請求項1に記載の医療装置。
【請求項4】
前記単一の一体化された装置が、個人の耳、鼻、頭皮、および口の少なくとも1つと接続された少なくとも1つの電極を含む、請求項3に記載の医療装置。
【請求項5】
前記脳刺激装置が、前記少なくとも1つの脳領域または異なる脳領域へ単一もしくは複数の部位刺激を選択的に提供するように操作可能である少なくとも1つの侵襲的刺激装置を含む、請求項1に記載の医療装置。
【請求項6】
前記脳刺激装置が、電気、磁気、電磁気、および光電刺激の少なくとも1つを提供するように構成される、請求項1に記載の医療装置。
【請求項7】
前記脳刺激装置が、少なくとも1つの電磁気刺激装置および別の神経刺激源を含む、請求項1に記載の医療装置。
【請求項8】
前記アナライザーシステムおよび前記刺激装置システムをインターフェイス接続して、前記脳刺激装置および前記認知刺激装置の少なくとも1つを操作するコントローラーをさらに含む、請求項1に記載の医療装置。
【請求項9】
前記アナライザーシステムと操作可能に接続された治療モジュールであって、前記治療モジュールは、前記結果値に応じて前記刺激装置システムへデータを出力するよう構成される、治療モジュールと;
前記脳領域に細胞置換療法、細胞再生療法、および細胞成長の少なくとも1つを含む治療を施すように構成されるインビボ刺激装置と、
をさらに含む、請求項1に記載の医療装置。
【請求項10】
前記刺激装置が、アルツハイマー病、認知症、自閉症スペクトラム障害、軽度認知障害、記憶喪失、老化、ADHD、パーキンソン病、うつ病、耽溺、薬物乱用、統合失調症、双極性障害、記憶向上(memory enhancement)、知能向上(intelligence enhancement)、集中向上、幸福感または気分の向上、自尊心向上、言語能力(language capabilities)、発語技能(verbal skills)、語彙技能、発音技能(articulation skills)、他我(alterness)、専念(focus)、リラクゼーション、知覚技能、思考、分析技能、実行機能、睡眠向上、運動技能、協調技能、スポーツ技能、音楽技能、対人技能(inter−personal skills)、社会生活技能(social skills)、および感情技能(affective skills)、と関連付けられる脳領域における単一もしくは複数の脳部位に刺激エネルギーを指向させるよう配置可能である、請求項1に記載の医療装置。
【請求項11】
前記刺激装置が、アルツハイマー病と関連付けられる脳領域における単一もしくは複数の脳部位に刺激エネルギーを指向させるよう配置可能である、請求項10に記載の医療装置。
【請求項12】
脳に関連する状態の治療のため、または個人の認知機能の向上のための医療装置であって:
位置決定された脳領域(localized brain region)を少なくとも選択的および非侵襲的に刺激するように構成され、ここで、前記位置決定された脳領域は、前記脳に関連する状態または前記認知機能と関連付けられる、少なくとも1つ脳刺激装置;ならびに、前記位置決定された脳領域と関連付けられる少なくとも1つの認知的特徴を選択的に刺激するよう構成される少なくとも1つの認知刺激装置;ならびに、
前記位置決定された脳領域に細胞置換療法、細胞再生療法、および細胞成長の少なくとも1つを含む治療を施すように構成されるインビボ刺激装置、
を含む、刺激装置システム、
を含む、医療装置。
【請求項13】
脳アナライザーおよび認知アナライザーの少なくとも1つを含むアナライザーシステムであって、前記アナライザーシステムは、前記脳に関連する状態の少なくとも1つの特性を測定して測定された特性を得るように操作可能であり、前記測定された特性は、少なくとも1つの脳領域および少なくとも1つの認知的特徴の少なくとも1つに関連しており、ここで、前記アナライザーシステムは、個人の健康グループもしくは疾患グループの少なくとも1つの脳領域または少なくとも1つ認知的特徴からの基準値の算出も行い、前記アナライザーシステムは、前記測定された特性を前記基準値と比較し、前記刺激装置システムへ結果値を提供する、アナライザーシステムと;
前記アナライザーシステムおよび前記刺激装置システムをインターフェイス接続し、前記脳刺激装置および前記認知刺激装置の少なくとも1つを操作する、コントローラーと、
をさらに含む、請求項12に記載の医療装置。
【請求項14】
前記脳刺激装置システムがヘルメットである、請求項12に記載の医療装置。
【請求項15】
脳アナライザーおよび認知アナライザーの少なくとも1つを含むアナライザーシステムであって、前記アナライザーシステムは、個人の状態の少なくとも1つの特性を測定して測定された特性を得るように操作可能であり、前記測定された特性は、少なくとも1つの脳領域および少なくとも1つの認知的特徴の少なくとも1つに関連しており、ここで、前記アナライザーシステムは、個人の健康グループもしくは疾患グループの少なくとも1つの脳領域または少なくとも1つ認知的特徴からの基準値の算出も行い、前記アナライザーシステムは、前記測定された特性を前記基準値と比較し、結果値を提供する、アナライザーシステムと;
前記アナライザーシステムと操作可能に接続された治療モジュールであって、前記治療モジュールは、前記結果値に応じてデータを出力するよう構成される、治療モジュールと;
興奮性もしくは阻害性刺激を放出するように操作可能であり、前記治療モジュールからデータを受けて、前記少なくとも1つの脳領域を刺激するようにエネルギー放出刺激装置を配置するように構成される第一の刺激装置と;
前記第一の刺激装置に付随する第二の刺激装置であって、前記第二の刺激装置は、前記個人の前記少なくとも1つの認知的特徴を活性化するように構成される、第二の刺激装置と、
を含む医療装置。
【請求項16】
前記第一の刺激装置が、少なくとも1つの非侵襲的脳刺激装置および少なくとも1つの侵襲的脳刺激装置を含み、ここで、前記少なくとも1つの非侵襲的脳刺激装置および前記少なくとも1つの侵襲的脳刺激装置は、前記少なくとも1つの脳領域を選択的に刺激するように構成される、請求項15に記載の医療装置。
【請求項17】
前記非侵襲的脳刺激装置が、電気、磁気、電磁気、および光電電極の少なくとも1つを含む、請求項15に記載の医療装置。
【請求項18】
前記第一の刺激装置が、前記少なくとも1つの脳領域を選択的に刺激するように構成される少なくとも1つの侵襲的脳刺激装置を含む、請求項15に記載の医療装置。
【請求項19】
前記第二の刺激装置が、前記認知的特徴に対して適切な少なくとも1つの認知刺激を提供するよう構成される、請求項15に記載の医療装置。
【請求項20】
前記第一の刺激装置が、非侵襲的刺激エネルギーを提供する、請求項15に記載の医療装置。
【請求項21】
前記第一の刺激装置および前記第二の刺激装置の少なくとも1つへ、前記第一および第二の刺激装置からの刺激に対する反応に基づいてフィードバックを提供するよう構成される評価装置をさらに含む、請求項15に記載の医療装置。
【請求項22】
前記結果値に応じて前記第一および第二の刺激装置を操作するように構成されるコントローラーをさらに含む、請求項15に記載の医療装置。
【請求項23】
認知障害と関連付けられる脳領域を識別する工程と;
前記脳領域に、電気、磁気、電磁気、および光電刺激の少なくとも1つを施す工程と;
同時に、前記脳領域と関連付けられる認知機能を改変する工程と、
を含む、認知障害を治療する方法。
【請求項24】
前記脳領域に、細胞置換療法、細胞再生療法、および細胞成長の少なくとも1つを含む治療を施す工程と;
所望する場合は含んでよい、前記脳領域に薬理学的治療を施す工程と、
をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
障害のある認知機能に対する治療方法であって、前記方法は:
個人の予め定められた脳領域へ、物理的に隣接する脳領域を刺激することなく第一の刺激を提供する工程であって、前記予め定められた脳領域は、障害のある認知機能と機能的に関連付けられる、工程と;
少なくとも1つの認知刺激を前記患者へ提供して、前記障害のある認知機能と関連する反応を引き出す工程と、
を含む、治療方法。
【請求項26】
前記予め定められた脳領域の少なくとも1つの局所的な(local)脳機能を測定して、局所的測定値を得る工程と;
前記局所的測定値を規範値と比較して評価データを得る工程と;
前記評価データに応じて、第一の刺激を提供する前記工程および少なくとも1つの認知刺激を提供する前記工程の少なくとも1つを調節する工程と、
をさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記第一の刺激および前記認知刺激に対する前記反応を測定して認知データを得る工程と;
前記認知データに基づいて、第一の刺激を提供する前記工程および少なくとも1つの認知刺激を提供する前記工程の少なくとも1つを調節する工程と、
をさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
脳アナライザーおよび認知アナライザーの少なくとも1つを含むアナライザーシステムを提供する工程を含み;
前記アナライザーシステムは、個人の状態の少なくとも1つの特性を測定して、少なくとも1つの脳領域および少なくとも1つの認知的特徴の少なくとも1つに関連する測定された特性を取得し;
前記アナライザーシステムは、個人の健康グループもしくは疾患グループの少なくとも1つの脳領域または少なくとも1つの認知的特徴から基準値を算出し;
前記アナライザーシステムは、前記測定された特性値を前記基準値と比較して結果値を提供する、
脳治療の方法。
【請求項29】
少なくとも1つの脳領域の局所的脳機能を測定して、個人の基準値に対する局所的測定値を得る工程と;
個人のグループの規範値に対して前記局所的測定値を評価し、評価データを得る工程と;
前記評価データに応じて、1もしくは2つ以上の非侵襲的刺激装置および1もしくは2つ以上の1つの認知刺激装置の少なくとも1つを調節する工程と;
前記少なくとも1もしくは2つ以上の非侵襲的刺激装置および少なくとも1もしくは2つ以上の認知刺激装置から、前記少なくとも1つの脳領域へ刺激を提供する工程と、
を含む、治療の方法。
【請求項30】
前記刺激に対する反応を測定して認知測定値を得る工程と;
前記認知測定値に応じて前記非侵襲的および認知刺激装置の少なくとも1つを調節する工程と、
をさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
非侵襲的刺激を提供する前記工程は、電磁気刺激および別の形態の神経刺激を提供して、前記少なくとも1つの脳領域を選択的に刺激することを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
認知的症状と機能的に関連付けられる少なくとも1つの脳領域を、隣接する領域を物理的に刺激することなく選択的に刺激する工程と;
前記認知的症状に関連する反応を引き出すように選択される少なくとも1つの認知刺激を提供する工程と、
を含む、疾患の認知的症状のための治療方法。
【請求項33】
前記少なくとも1つの脳領域において局所的脳機能を測定して局所的測定値を得る工程と;
前記局所的測定値を規範値に対して評価して評価データを得る工程と;
前記評価データに応じて、前記脳領域刺激および前記少なくとも1つの認知刺激の少なくとも1つを調節する工程と、
をさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記刺激に対する反応を測定して認知測定値を得る工程と;
前記認知測定値に応じて、前記選択的刺激および前記少なくとも1つの認知刺激の少なくとも1つを調節する工程と、
をさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記少なくとも1つの脳領域が、脳欠損領域である、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記少なくとも1つの脳領域が、記憶機能疾患と関連付けられる、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
前記少なくとも1つの脳領域が、アルツハイマー病と関連付けられる、請求項32に記載の方法。
【請求項38】
脳アナライザーおよび認知アナライザーの少なくとも1つを含むアナライザーシステムを提供する工程であって;
前記アナライザーは、個人の状態の少なくとも1つの特性を測定し、前記測定された特性は、少なくとも1つの脳領域および少なくとも1つの認知的特徴の少なくとも1つに関連し;
前記アナライザーは、個人の健康グループもしくは疾患グループの少なくとも1つの脳領域または少なくとも1つ認知的特徴から基準値を算出し;
前記アナライザーは、前記測定された特性を前記基準値と比較して結果値を提供する、
工程と;
刺激装置システムを提供する工程であって:
1もしくは2つ以上の非侵襲的刺激装置を提供して、前記特性と関連付けられる少なくとも1つの脳領域へ単一もしくは複数部位の刺激を選択的に提供すること;
1もしくは2つ以上の認知刺激装置を提供して、前記少なくとも1つの特性に適する少なくとも1つの認知機能へ認知刺激を選択的に提供すること;ならびに、
コントローラーを提供し、前記コントローラーを前記アナライザーシステムおよび前記刺激装置システムとインターフェイス接続し、前記コントローラーが、前記1もしくは2つ以上の非侵襲的脳刺激装置および1もしくは2つ以上の1つの認知刺激装置の少なくとも1つを操作すること、
を含む工程と、
を含む、神経治療の方法。
【請求項39】
複数の別個のエネルギー放出刺激装置を有するモジュールを提供する工程と;
前記モジュールを患者上へ配置する工程と;
アルツハイマー病、認知症、自閉症スペクトラム障害、軽度認知障害、記憶喪失、老化、ADHD、パーキンソン病、うつ病、耽溺、薬物乱用、統合失調症、双極性障害、記憶向上、知能向上、集中向上、幸福感または気分の向上、自尊心向上、言語能力、発語技能、語彙技能、発音技能、他我、専念、リラクゼーション、知覚技能、思考、分析技能、実行機能、睡眠向上、運動技能、協調技能、スポーツ技能、音楽技能、対人技能、社会生活技能、および感情技能、と関連付けられる脳領域における単一もしくは複数の脳部位に刺激エネルギーを指向させるように前記別個の刺激装置を配置する工程と;
前記関連付けられる単一もしくは複数の脳部位を刺激する工程と、
を含む、神経治療の方法。
【請求項40】
コンピュータおよび所望される場合は含んでよいコントロールモジュールと;
所望される場合はTMS刺激装置を含んでよいユーザーエネルギー刺激モジュールと;
認知刺激モジュールと;
疾患脳位置決定モジュールと;
所望される場合は含んでよい認知試験モジュールと、
を含む、神経の評価および治療のためのシステム。
【請求項41】
認知進行モニタリングモジュールをさらに含む、請求項40に記載のシステム。
【請求項42】
前記コンピュータとインターフェイス接続された付随する比較基準データベースモジュールをさらに含む、請求項40に記載のシステム。
【請求項43】
ユーザーアクセスを持つコンピュータシステムと;
刺激を適用するための同期された磁気および認知トレーニング刺激装置システムと;
治療セッションおよび刺激の適用の順番ならびに状態を管理するための実行制御モジュール(Executive Control Module)と;
患者の反応に基づく意思決定システム(decision making system)であって、その反応に基づいて判定を行い、オペレータを変更するかまたはスクリプトを改変して認知トレーニングを最適化する、意思決定システムと;
アルツハイマー病の存在を判定するためのENDモジュールと、
を含む、医学的治療装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2011−517962(P2011−517962A)
【公表日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527564(P2010−527564)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【国際出願番号】PCT/IB2008/002632
【国際公開番号】WO2009/044271
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(510090759)ニューロニクス エルティーディー. (1)
【氏名又は名称原語表記】NEURONIX LTD.
【Fターム(参考)】