中枢神経系の炎症疾病の血液マーカーとしての切断およびリン酸化されたCRMP2
本発明は、被験体における中枢神経系の炎症疾病のin vitroにおける予知、診断および/またはモニタリングのための方法に関し、前記方法は、被験体からの免疫系細胞の試料中における、チロシン479(Y479)上でリン酸化された、場合によりセリン465(S465)上でさらにリン酸化された、コラプシン応答媒介タンパク質2(CRMP2)の存在を検出することを含み、場合によりセリン465上でさらにリン酸化された、Y479のリン酸化されたCRMP2の存在の検出は、中枢神経系の炎症疾病を示す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、中枢神経系の炎症疾病を予測、診断および/または処置するための方法に関する。
【0002】
発明の背景
神経炎症疾病、すなわち中枢神経系の炎症疾病は、炎症、および通常は脱髄、および軸索損傷に関連した急激な神経障害によって特徴付けられる。これらの疾患では、神経炎症が、脳および脊髄における神経細胞線維を絶縁する髄鞘を損傷し、それが下にある神経に対して広範でしばしば永久的な損傷を引き起こす。神経炎症疾病を患う患者には、感覚機能および運動機能の劇的で時に永久的な低下が起こる。神経炎症疾病に関連した有病率、罹患率および死亡率に因り、それらはかなりの医学的、社会的および経済的重荷を課す。北米においてはこれらの神経学的状態に500万人を超える人が罹患し、そして年間750億米ドルを超える治療費が発生すると推定されている。
【0003】
神経炎症疾病は診断および処置が困難である。残念なことに、不正確な診断により患者に不確実性が生じる。従って、神経炎症症状を寛解しそして神経学的機能を保存するための適切な処置法が確実に実行されるために、神経炎症疾病を診断するための迅速かつ正確な方法が重要である。従って、中枢神経系の炎症疾病を予測、診断および/または処置するための新たな方法が必要とされる。
【0004】
本発明者らは、国際出願WO2003/022298において、免疫系の機能障害に関連した病態の処置、予知または診断のためのコラプシン応答媒介タンパク質2(CRMP2)の可能性ある使用を示した。より具体的には、本発明者らは、CRMP2が、異常免疫病態を患う患者のTリンパ球において高いレベルで存在し、そして高度にリン酸化された型のCRMP2の核移行が、HTLV−1に感染したリンパ球、またはFas/Fasリガンド系に関連した免疫不全を有する患者のTリンパ球において増加したことを示した。
【0005】
CRMPは、中枢神経系(CNS)の軸索成長中の細胞骨格再配列のモデュレーターであることが知られている5つのメンバーのファミリーである。Tリンパ球およびCNSにおいては、CRMP2は、62kDaの完全長型(CRMP2−62)および58kDaの切断型(CRMP2−58)の両方を提示する。4つのリン酸化型のCRMP2がこれまでに記載されている:セリン522上でリン酸化されたCRMP2(pCRMP2−Ser522)、トレオニン509および514上でリン酸化されたCRMP2(pCRMP2−Thr509/514)、トレオニン555上でリン酸化されたCRMP2(pCRMP2−Thr555)およびセリン465上でリン酸化されたCRMP2(Uchida et al. (2005) Genes Cells 10:165-179; Cole et al. (2006) J Biol Chem 281:16581-16588)。
【0006】
本発明者らは、CRMP2の新たなリン酸化部位を同定した:チロシン479(Y479)。本発明者らは、Y479のリン酸化が、CXCL12ケモカインによるTリンパ球の膜CXCR4レセプターの活性化によって誘導され(Varrin-Doyer et al. (2009) J Biol Chem 284:13265-13276)、一方、S465のリン酸化はT細胞レセプター(TCR)の刺激後に誘導されたことを実証した。
【0007】
発明の要約
本発明は、(i)Y479の突然変異が、T細胞極性化およびT細胞遊走速度を含むT細胞遊走能を減少させ、これは、神経炎症過程におけるY479のリン酸化されたCRMP2の重要性を示し、そして(ii)HTLV−1によって誘発される多発性硬化症または脊髄症を患う患者が、高いレベルのSer465のリン酸化され切断されたCRMP2を有する活性化T細胞個体群を提示したという本発明者らによる意外な所見からもたらされる。これらのリン酸化および切断は、患者の免疫細胞におけるウェスタンブロットまたはフローサイトメトリーによって容易に検出できるという利点を有する。
【0008】
従って、本発明は、被験体における中枢神経系の炎症疾病のin vitroにおける予知、診断および/またはモニタリングのための方法に関し、前記方法は、被験体からの免疫系細胞の試料中における、チロシン479(Y479)上でリン酸化されたコラプシン応答媒介タンパク質2(CRMP2)の存在を検出することを含み、Y479のリン酸化されたCRMP2の存在の検出は、中枢神経系の炎症疾病を示す。
【0009】
本発明はまた、チロシン479上でリン酸化されたCRMP2に特異的な抗体、および中枢神経系の炎症疾病の予知、診断および/またはモニタリングにおけるその使用、免疫細胞の遊走を減少させるためのその使用、および中枢神経系の炎症疾病の処置におけるその使用に関する。
【0010】
本発明はまた、チロシン479および/またはセリン465上でリン酸化されたCRMP2を検出するための前記において定義したような抗体に関する。
【0011】
本発明はまた、Tリンパ球の遊走を減少させるために使用するためのCXCR4レセプターのアンタゴニスト、および中枢神経系の炎症疾病の処置における使用に関する。
【0012】
発明の詳細な説明
中枢神経系の炎症疾病
本明細書において使用する「中枢神経系の炎症疾病」または「神経炎症疾病」は、炎症、脱髄、あるいは軸索および/または神経の損傷に関連した、中枢神経系の疾病を示す。中枢神経系(CNS)の炎症疾病は、非感染性または感染性であり得る。炎症病変を引き起こし得る非感染性疾病としては、いくつかの毒素、自己免疫疾病および免疫介在性状態が挙げられる。ウイルス、細菌、真菌、原虫および後生動物寄生虫は全て、CNSの炎症疾病を引き起こし得る。CNSの炎症疾病は特に、WHOによって刊行されている疾病および関連保険問題の国際統計分類(International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems)のコードG00からG09に集められている。CNSの炎症疾病の例としては、髄膜炎、脳炎、脊髄炎、脊髄症または脳脊髄炎;頭蓋内および髄腔内の膿瘍および肉芽腫;頭蓋内および髄腔内の静脈炎および血栓性静脈炎;多発性硬化症;アルツハイマー病およびパーキンソン病を伴うウイルス感染、細菌感染または寄生虫感染が挙げられる。好ましくは、本発明によるCNSの炎症疾病は、髄膜炎、脳炎、脊髄炎、脳脊髄炎、脳炎(encephalititis)または脊髄症、多発性硬化症、パーキンソン病およびアルツハイマー病を伴うウイルス感染または細菌感染からなる群より選択される。より好ましくは、本発明によるCNSの炎症疾病は、脳炎、多発性硬化症、アルツハイマー病およびパーキンソン病を伴うウイルス感染からなる群より選択される。
【0013】
本明細書において使用する「髄膜炎、脳炎、脊髄炎、脊髄症または脳脊髄炎を伴うウイルス感染」としては、レトロウイルス、アデノウイルス、エンテロウイルス、ヘルペスウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、風疹ウイルス、天然痘ウイルス、水痘、水痘帯状疱疹ウイルス、インフルエンザウイルス、サイトメガロウイルス、ポリオウイルス、HTLV−1およびエプシュタン・バーウイルスに因るウイルス感染が挙げられる。好ましくは、本発明によるウイルス感染は、HTLV−1またはHIVに因るウイルス感染からなる群より選択される。
【0014】
本明細書において使用する「髄膜炎、脳炎、脊髄炎、脊髄症または脳脊髄炎を伴う細菌感染」としては、Haemophilis influenzae、Streptococcus pneumoniae、Streptococcus pyogenes、Streptococcus agalactiae、Staphylococcus aureus、Neisseria meningitidis、Escherichia coli、Klebsiella、Friedlander bacillus、Bacillus anthracis、Neisseria gonorrhoeae、Leptospira、Listeria monocytogenes、Borrelia、Treponema pallidum、Salmonella、Mycobacterium tuberculosisおよびSalmonella entericaに因る細菌感染が挙げられる。
【0015】
本明細書において使用する「髄膜炎、脳炎、脊髄炎、脊髄症または脳脊髄炎を伴う寄生虫感染」としては、Trypanosoma、特にTrypanosoma bruceiおよびTrypanosoma cruzi、Toxoplasma gondiiおよびNaegleria fowleriに因る寄生虫感染が挙げられる。
【0016】
CRMP2
本明細書において使用する「コラプシン応答媒介タンパク質2」または「CRMP2」または「ULIP2」は、神経成長円錐の発育(Goshima et al. (1995) Nature 376:509-514; Charrier et al. (2003) Mol. Neurobiol. 28:51-64)および微小管組織を介した神経細胞の遊走において初めて記載されたリン酸化タンパク質を指す。それは、細胞質リン酸化タンパク質のCRMP/TOAD/Ulip/DRPファミリーのメンバーである。好ましくは、CRMP2は、配列番号1のアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。
【0017】
本発明の脈絡において、本発明者らは、CRMP2が、チロシン479(Y479)上でリン酸化され得ることを実証した。さらに、Y479のリン酸化されたCRMP2は、完全長型または切断型のいずれかであり得る。Y479のリン酸化されたCRMP2の完全長型は、完全長型の62kDaのCRMP2(CRMP2−62)に対応するが、切断型は、切断型の58kDaのCRMP2(CRMP2−58)に対応する。より特定すると、CRMP2−58は、CRMP2のアミノ酸489から532の間に位置するRogemond et al.に記載の切断部位におけるCRMP2−62の切断によって得られる(Rogemond et al. (2008) J. Biol. Chem 283:14751-14761)。CRMP2およびY479のリン酸化されたCRMP2、特にその切断型のそれは、セリン465(S465)上でさらにリン酸化され得る。
【0018】
抗体およびその使用
本発明は、チロシン479上でリン酸化されたCRMP2に特異的な抗体に関する。
【0019】
本明細書において使用する「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子およびこれらの免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち、抗原に特異的に結合する抗原結合部位を含む分子を指す。従って、「抗体」という用語は、完全な抗体分子だけではなく、抗体フラグメント並びに抗体の変異体(誘導体も含む)および抗体フラグメントの変異体も含む。本発明による抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であり得る。
【0020】
本明細書において使用する「モノクローナル抗体」は、特異的な抗原に対して作られ、そして例えばB細胞またはハイブリドーマの単一のクローンによって組換えまたは産生され得る、単一のアミノ酸組成の抗体を指す。
【0021】
「抗体フラグメント」は、インタクトな抗体の一部、好ましくはインタクトな抗体の可変領域または抗原結合領域を含む。適切な抗体フラグメントの例としては、Fv、Fab、Fab’、(Fab’)2、Fd、dAb、scFv、dsFv、sc(Fv)2フラグメントおよびディアボディが挙げられる。本発明による抗体はまたラクダ科ナノボディであり得る。本発明による抗体は、改変された抗体であり得る。特に、本発明による抗体は、マーカー部分にコンジュゲーションされ得る。マーカー部分は、例えば、非放射性マーカー部分、例えばフルオロフォア、補酵素、例えばビオチン、タンパク質、ペプチド、炭水化物、脂質、色素、ポリエチレングリコールなどであり得る。
【0022】
「特異的」という用語は、ターゲットへのリガンドの認識または結合を言及する場合、前記リガンドが、ターゲットとの構造的類似性を全く示さない別のターゲットと実質的に相互作用することなく、ターゲットと相互作用することを意味する。特に、前記に定義したようなY479のリン酸化されたCRMP2に特異的な抗体は、CRMP2がチロシン残基479上にリン酸基を有する場合にはCRMP2を特異的に認識し結合するが、CRMP2がチロシン残基479上にリン酸基を有さない場合にはそうではない。好ましくは、前記に定義したようなY479のリン酸化されたCRMP2に特異的な抗体はまた、CRMP2がセリン465上にリン酸基をさらに有する場合にもCRMP2を認識し結合する。
【0023】
本発明はまた、セリン465上でリン酸化されたCRMP2(S465のリン酸化されたCRMP2)に特異的な抗体に関する。特に、前記に定義したようなS465のリン酸化されたCRMP2に特異的な前記抗体は、CRMP2がセリン残基465上にリン酸基を有する場合にはCRMP2を特異的に認識し結合するが、CRMP2がチロシン残基465上にリン酸基を有さない場合にはそうではない。好ましくは、前記に定義したようなS465のリン酸化されたCRMP2に特異的な抗体はまた、CRMP2がチロシン479上にリン酸基をさらに有する場合にもCRMP2を認識し結合する。
【0024】
前記に定義したような抗体は、完全長および/または切断されリン酸化されたCRMP2を認識し結合する。好ましくは、前記に定義したようなS465のリン酸化されたCRMP2に特異的な抗体は、切断されたS465のリン酸化されたCRMP2を認識し結合する。
【0025】
対象の抗原と特異的に反応するポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を産生するための方法は当業者に公知である(例えば、Coligan (1991) Current Protocols in Immunology Wiley/Greene, NY; Harlow and Lane (1989) Antibodies: A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Press, NY; Stites et al. (eds.); Basic and Clinical Immunology (4th ed.) Lange Medical Publications, Los Altos, CA: Goding (1986) Monoclonal Antibodies: Principles and Practice (2d ed.) Academic Press, New York, NY;および Kohler and Milstein (1975) Nature 256:495-497参照)。
【0026】
所望の特異性を有する本発明による抗体を含む抗血清を産生するために、リン酸化されたCRMP2を使用して、適切な動物、例えばマウス、ウサギ、または霊長類を免疫化し得る。標準的なアジュバント、例えばフロイントアジュバントを標準的な免疫化プロトコールに従って使用することができる、試験血を採取し、そして対象の抗原に対する反応性の力価を決定することによって、免疫原調製物に対する動物の免疫応答をモニタリングし得る。抗原に対して特異的に反応性である抗体を濃縮するための抗血清のさらなる分画および抗体の精製を、続いて、当業者に周知の方法を使用して達成することができる。
【0027】
モノクローナル抗体を、当業者によく知られた種々の技術を使用して得ることができる。典型的には、所望の抗原で免疫化された動物からの脾臓細胞を、一般的には骨髄腫細胞との融合によって不死化する(Kohler and Milstein (1976) Eur. J. Immunol. 6:511-519)。不死化の代替的な方法としては、エプシュタイン・バーウイルス、発癌遺伝子もしくはレトロウイルスを用いての形質転換、または当技術分野において周知の他の方法が挙げられる。単一の不死化細胞から生じるコロニーを、抗原に対する所望の特異性および親和性を有する抗体の産生のためにスクリーニングし、そしてこのような細胞によって産生されるモノクローナル抗体の収量は、脊椎動物宿主の腹腔への注射を含む種々の技術によって増強され得る。さらに、Huse et al.(1989) Science 246:1275-1281によって概略が示された一般的なプロトコールに従ってヒトB細胞cDNAライブラリーをスクリーニングすることによって、所望の特異性を有する抗体またはこのような抗体の結合フラグメントをコードする核酸配列が同定されると、モノクローナル抗体はまた組換え産生され得る。モノクローナル抗体はまた、組換えDNA法を使用して(例えば米国特許第4,816,567号参照)またはファージディスプレイによって産生され得る。「ファージディスプレイ」という用語は、本明細書において、バクテリオファージカプシド上に発現されそしてカプシドをコードする遺伝子に挿入された核酸配列によってコードされた、リガンドを選択するための方法を指す。この方法は、当業者には周知であり、そして特にScott and Smith (1990) Science 249:386-390、およびMarks et al. (1991) J. Mol. Biol.222:581-597によって記載されている。
【0028】
特定の態様において、前記に定義した抗体はヒト化モノクローナル抗体である。「ヒト化抗体」は、ヒト抗体とより密接に一致する(アミノ酸配列において)ように改変された非ヒト抗体を指す。特定の態様において、非ヒト抗体の可変領域の抗原結合残基の外のアミノ酸残基が改変される。大部分について、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域からの残基が、所望の特異性、親和性および能力を有するマウス、ラット、ウサギまたは非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域からの残基によって置換されている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。特定の態様において、ヒト化抗体は、ヒト抗体のCDRの全部または一部を、所望の抗原結合特異性を有する非ヒト抗体などの別の抗体からのCDRの全部または一部で置換することによって構築される。特定の態様において、ヒト化抗体は、CDRの全部または実質的に全部が非ヒト抗体のCDRに対応し、そしてフレームワーク領域(FR)の全部または実質的に全部がヒト抗体のFRに対応する、可変領域を含む。特定のこのような態様において、ヒト化抗体はさらに、ヒト抗体の定常領域(Fc)を含む。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体に見られない残基を含み得る。これらの改変は、抗体の性能をさらに洗練させるために行なわれる。さらなる詳細については、Jones et al. (1986) Nature321:522-525; Riechmann et al. (1988) Nature 332:323-329;およびPresta (1992) Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596を参照されたい。ヒト化抗体の使用は、マウス定常領域の免疫原性に関連した潜在的な問題を取り除く。
【0029】
本発明に従って使用する前に、本発明による抗体を精製し得る。抗体精製のための方法は生物医学研究の分野において周知であり、それには精製しようとする抗体の独特な特徴に依拠するものもあり、また、幅広い適用に適した標準的なタンパク質分離技術であるものもある。
【0030】
塩析を最初の工程として使用して、他の望ましくないタンパク質から所望の抗体を分離することができる。好ましい塩は硫酸アンモニウムであり、これはタンパク質混合物中の水の量を効果的に減少させることによってタンパク質を沈降させる。その後、タンパク質は、その溶解度に基づいて沈降する。タンパク質がより疎水性であればある程、より低い硫酸アンモニウム濃度で沈降する可能性が高くなる。典型的なプロトコールは生じる硫酸アンモニウム濃度が20〜30%となるように、タンパク質溶液に飽和硫酸アンモニウムを加えるものである。これは大半の疎水性タンパク質を沈降させる。所望の抗体を、その疎水性により適切な硫酸アンモニウム濃度で沈降させ、そしてその後、必要であれば透析またはダイアフィルトレーションのいずれかを通して過剰な塩を除去しながら緩衝液中で可溶化する。タンパク質の溶解度に依拠する他の方法、例えば冷エタノール沈降法は当業者に周知であり、そしてこれを使用して、血清などのタンパク質混合物から抗体画分を調製し得る。
【0031】
予測される分子量に基づいて、抗体を、種々の孔径のメンブレン(例えばAmiconまたはMilliporeメンブレン)を通した限外濾過を使用してより大きなおよびより小さなサイズのタンパク質から単離することができる。第一工程として、タンパク質混合物(例えば血清または細胞培養上清)を、所望の抗体の予測される分子量よりも小さな分子量カットオフを有する孔径を有するメンブレンを通して限外濾過する。その後、限外濾過の残余分を、所望の抗体の予測される分子量よりも大きな分子量カットオフを有するメンブレンに対して限外濾過する。抗体はメンブレンを通って濾液中へと入り、これをその後、次の工程のカラムクロマトグラフィーで処理することができる。
【0032】
本発明による抗体はまた、そのサイズ、正味の表面荷電、疎水性およびリガンドに対する親和性に基づいて、他の抗体を含む他のタンパク質から分離することができる。カラムクロマトグラフィーは頻繁に使用される方法である。例えば、抗体を、抗体のFc領域中のドメインに結合する細菌細胞壁タンパク質である、プロテインAまたはプロテインGの固定されたカラムを使用して他の非抗体タンパク質から単離することができる。さらに、異なる抗原に対する抗体を、抗体精製のための好ましい形式のカラムクロマトグラフィーのカラムに固定された、これらの抗原に対するその明確に異なる親和性に基づいて分離することができる。これらの全ての方法は当技術分野において周知であり、そしてクロマトグラフィー技術を、任意の規模で、そして多くの異なる製造業者(例えばPharmacia Biotech)からの装置を使用して実施することができることは当業者には明らかであろう。
【0033】
本発明はまた、チロシン479上で、場合によりさらにセリン465上でリン酸化されたCRMP2を検出するための前記に定義したような抗体の使用に関する。前記検出は、抗体の結合を可視化することを可能とする適切な免疫検出技術を使用して実施され得る。このような検出技術は当業者には周知であり、そしてこれには免疫組織細胞化学、免疫蛍光、免疫沈降、ウェスタンイムノブロット、化学発光、比色技術および放射標識技術が挙げられる。
【0034】
好ましい態様において、本発明による抗体の使用は、さらに切断型であるCRMP2を検出するためである。
【0035】
in vitroにおける予知、診断および/またはモニタリングのための方法
本発明は、被験体における中枢神経系の炎症疾病のin vitroにおける予知、診断および/またはモニタリングのための方法に関し、前記方法は、被験体からの免疫系細胞の試料中における、Y479のリン酸化されたCRMP2の存在を検出することを含み、Y479のリン酸化されたCRMP2の存在の検出は中枢神経系の炎症疾病を示す。
【0036】
本発明はまた、被験体における中枢神経系の炎症疾病を検出するためのin vitroにおける方法を記載し、前記方法は、被験体から採取した免疫系細胞の試料中における、Y479のリン酸化されたCRMP2の存在をin vitroにおいて検出することを含み、Y479のリン酸化されたCRMP2の存在の検出は中枢神経系の炎症疾病を示す。
【0037】
本明細書において使用する「診断法」または「診断」は、被験体が病態を患っているかどうかを決定するための方法を指す。
【0038】
本明細書において使用する「予知法」または「予知」は、被験体が病態を発症する可能性があるかどうかを決定するための方法を指す。
【0039】
本明細書において使用する「モニタリング法」は、被験体における病態の発展を決定するための方法を指す。
【0040】
本明細書において使用する「免疫系細胞」は、自然免疫反応および適応免疫反応の細胞、特にTリンパ球およびBリンパ球、樹状細胞、単球およびナチュラルキラー細胞を包含する。
【0041】
本明細書において使用する「試料」は、より大きなセットの一部を指す。好ましくは、本発明による免疫系細胞の試料は、被験体の血液または脳から採取し、および/または特に血液細胞の亜個体群などを含む。好ましくは、本発明による免疫系細胞の試料は、Tリンパ球を含むまたはそれからなる。
【0042】
特定の態様において、前記に定義した方法において、前記のY479のリン酸化されたCRMP2は完全長型である。別の特定の態様において、前記の定義した方法において、前記のY479のリン酸化されたCRMP2は切断型である。これらの態様において、前記のY479のリン酸化されたCRMP2はセリン465上でさらにリン酸化され得る。好ましくは、Y479のリン酸化されたCRMP2が切断型である場合、それはセリン465上でさらにリン酸化される。さらに、CRMP2は、セリン522、トレオニン509、トレオニン514および/またはトレオニン555などの他のリン酸化部位上でさらにリン酸化され得る。
【0043】
本発明の脈絡において、被験体の免疫系細胞の試料中におけるY479のリン酸化されたCRMP2の存在の検出は、タンパク質の存在を可視化することを可能とする任意の適切な技術によって行なわれ得る。特に、CRMP2に対して、より好ましくはY479のリン酸化されたCRMP2に対してまたはS465/Y479のリン酸化されたCRMP2に対して特異的な親和性を提示する化合物を使用して実施することができる。このような適切な化合物としては、特に抗体およびアプタマーが挙げられる。好ましくは、Y479のリン酸化されたCRMP2は、抗体、好ましくは、前記に定義したようなY479のリン酸化されたCRMP2に特異的な抗体を用いて検出される。従って、前記タンパク質の存在を可視化することを可能とする適切な技術は、抗体の結合を可視化することを可能とする任意の免疫検出技術を包含する。このような検出技術は当業者には周知であり、そしてこれには免疫組織細胞化学、免疫蛍光、免疫沈降、ウェスタンイムノブロット、化学発光、比色技術および放射標識技術が挙げられる。
【0044】
本明細書において使用する「被験体」は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物(例えばげっ歯類(マウス、ラット)、ネコ、イヌまたは霊長類)を指す。好ましくは、被験体はヒトである。
【0045】
本発明はまた、中枢神経系の炎症疾病の予知、診断および/またはモニタリングにおいて使用するための前記に定義したような抗体に関する。
【0046】
処置法
本発明はまた免疫細胞の遊走を減少させるために使用するための前記に定義したような抗体に関する。特に、本発明は、免疫細胞の遊走を減少させるために使用するためのチロシン479上でリン酸化されたCRMP2に特異的な抗体に関する。
【0047】
本明細書において使用する「免疫細胞」は、自然免疫反応および適応免疫反応の細胞、特にTリンパ球およびBリンパ球、樹状細胞、単球およびナチュラルキラー細胞を包含する。好ましくは、本発明による免疫細胞はTリンパ球である。
【0048】
本発明の脈絡において、「免疫細胞の遊走」は、リンパ器官からエフェクター部位への免疫細胞の移動を指す。本明細書において使用する「免疫細胞の遊走を減少させること」は、免疫細胞の遊走速度を遅延させること、リンパ器官からエフェクター部位へと遊走する免疫細胞の数を減少させること、またはエフェクター部位への免疫細胞の遊走を阻害することを意味する。好ましくは、本発明の脈絡において、エフェクター部位は脳である。
【0049】
本発明はまた、前記に定義したような中枢神経系の炎症疾病の処置において使用するための前記に定義したような抗体に関する。
【0050】
本発明はまた、治療有効量の前記に定義したような抗体をそれを必要とする被験体に投与することを含む、中枢神経系の炎症疾病の処置法に関する。
【0051】
本明細書において使用する「処置すること」または「処置」という用語は、このような用語を適用する疾患もしくは状態、またはこのような疾患もしくは状態の1つ以上の症状を逆行、軽減、その進行を阻害、または予防することを意味する。
【0052】
本発明によると、「被験体」または「それを必要とする被験体」という用語は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物(例えばげっ歯類(マウス、ラット)、ネコ、イヌまたは霊長類)を意図する。
【0053】
「治療有効量」という用語は、任意の医学的処置に適用可能な妥当なベネフィット/リスク比で、前記疾病を処置するために十分な抗体の量を意味する。しかしながら、本発明の抗体の1日の総使用量は、妥当な医学的判断の範囲内で担当医師によって決定されることが理解される。任意の特定の患者に対する具体的な治療有効投与量レベルは、処置される疾患および疾患の重症度、使用する具体的な抗体の活性、使用する具体的な組成物、患者の年齢、体重、全般的な健康状態、性別および食事、投与時刻、投与経路、および使用する具体的な抗体の排泄速度、処置期間、使用する具体的な抗体と組み合わせてまたは同時に使用する薬物、および医学分野において周知の同様な因子を含む多種多様な因子に依存する。例えば、所望の治療効果を達成するのに必要なレベルよりも低いレベルで化合物の投与量を開始し、そして所望の効果が達成されるまで投与量を次第に増加させることは当業者の技能内において周知である。
【0054】
本発明の抗体を、中枢神経系の炎症疾病を処置するための任意の他の治療戦略と組み合わせて使用し得る。
【0055】
CXCR4レセプターのアンタゴニストおよびその使用
本発明者らは、チロシン479上のCRMP2のリン酸化が、CXCR4レセプターによって制御されたことを実証した。従って、CXCR4レセプターを阻害することで、チロシン479上のCRMP2のリン酸化が妨げられ、従って、免疫細胞の遊走が減少するだろう。
【0056】
従って、本発明はまた、前記に定義したような免疫細胞の遊走を減少させるために使用するためのCXCR4レセプターのアンタゴニストに関する。好ましくは、CXCR4レセプターのアンタゴニストは、Tリンパ球の遊走を減少させるために使用するためのものである。
【0057】
本明細書において使用する「CXCR4レセプター」または「フーシン」は、ストロマ細胞由来因子1(SDF−1、CXCL12とも呼ばれる)に特異的なα−ケモカインレセプターであるCXCケモカインレセプターを指す。
【0058】
本発明の脈絡において、「CXCR4レセプターのアンタゴニスト」は、CXCR4レセプターに結合することによって直接的に、または間接的に、CXCR4レセプターの下流のシグナルカスケードを阻害する化合物を指す。CXCR4レセプターのアンタゴニストの例としては、CXCR4レセプターに特異的な抗体、AMD070、AMD3100(またはプレリキサホル)、AMD3465、4F−ベンゾイル−TN14003(またはT140)、KRH−3955、およびビシクラムが挙げられる。
【0059】
本発明はまた、前記に定義したような中枢神経系の炎症疾病の処置において使用するための前記に定義したようなアンタゴニストに関する。
【0060】
治療有効量の前記に定義したようなCXCR4レセプターのアンタゴニストの、それを必要とする被験体への投与を含む、中枢神経系の炎症疾病の処置法もまた本発明の目的である。
【0061】
本発明のアンタゴニストは、中枢神経系の炎症疾病を処置するための任意の他の治療戦略と組み合わせて使用され得る。特に、本発明のアンタゴニストは、本発明の抗体と組み合わせて使用され得る。
【0062】
本発明は、以下の図面および実施例によってさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1は、CXCL12(100ng/ml)を用いての処理および固定から0、2、5または10分後の極性化CRMP2を有する、コラーゲンIでコーティングされたスライドに付着している、ジャーカット細胞の数(%)を示すヒストグラムを示す。
【図2】図2は、CXCL12(100ng/ml)だけを用いての処理後、またはCXCL12およびCXCR4アンタゴニストのAMD3100を用いての処理後の極性化CRMP2を有する、コラーゲンIでコーティングされたスライドに付着している、ジャーカット細胞の数(%)を示すヒストグラムを示す。
【図3】図3は、CXCL12(100ng/ml)を用いて(+)または用いずに(−)10または30分間かけて処理し、溶解し、そして細胞下分画にかけた、ジャーカット細胞の全細胞溶解液、細胞質画分または細胞骨格画分に対して実施したウェスタンブロットの結果を示す。ウェスタンブロットは、抗CRMP2−pep4抗体または抗CRMP−C−ter抗体を使用して実施された。白抜き矢印は、完全長型のCRMP2を示し、そして黒い矢印は切断型のCRMP2を示す。ウェスタンブロットはまた、抗ビメンチン抗体、抗Erk1/2抗体および抗pErk1/2抗体を用いても実施された。ウェスタンブロットの左の数字は、分子量(kDa)を示す。ウェスタンブロットの下の数字は、非処理細胞を用いて得られたシグナル強度と比較した、処理細胞を用いて得られたシグナル強度の相対値を示す。
【図4】図4は、CXCL12(100ng/ml)を用いて0、2、5、10または30分間かけて処理し、溶解し、そしてリン酸化型の濃縮にかけられた、ジャーカット細胞の全細胞溶解液、非リン酸化タンパク質(素通り画分)またはリン酸化タンパク質(溶出液)に対して実施されたウェスタンブロットの結果を示す。ウェスタンブロットは抗CRMP2−pep4抗体または抗CRMP−C−ter抗体を使用して実施された。白抜きの矢印は完全長型のCRMP2を示し、そして黒い矢印は切断型のCRMP2を示す。ウェスタンブロットはまた、抗Erk1/2抗体および抗pErk1/2抗体を用いても実施された。ウェスタンブロットの左の数字は分子量(kDa)を示す。
【図5】図5は、CXCL12(100ng/ml)を用いて0、1、2、4、6、10、15または30分間かけて処理したジャーカットT細胞の細胞溶解液に対して実施したウェスタンブロットの結果を示す。ウェスタンブロットは、抗CRMP2−pSer522抗体、抗CRMP2−pThr509/514抗体、抗CRMP−C−ter抗体、抗pErk1/2抗体および抗Erk1/2抗体を使用して実施された。ウェスタンブロットの左の数字は分子量(kDa)を示す。ウェスタンブロットの下の数字は、非処理細胞を用いて得られたシグナル強度と比較した、処理細胞を用いて得られたシグナル強度の相対値を示す。
【図6】図6は、CXCL12(100ng/ml)を用いて0、1、2、4、6、10、15または30分間かけて処理したジャーカットT細胞の細胞溶解液に対して実施したウェスタンブロットの結果を示す。ウェスタンブロットは、抗Cdk5−pTyr12抗体、抗Cdk5−pSer159抗体、抗Cdk5抗体、抗GSK−3α−pTyr279抗体、抗GSK−3β−pTyr216抗体、抗GSK−3α抗体および抗GSK−3β抗体を使用して実施された。ウェスタンブロットの左の数字は分子量(kDa)を示す。ウェスタンブロットの下の数字は、非処理細胞を用いて得られたシグナル強度と比較した、処理細胞を用いて得られたシグナル強度の相対値を示す。
【図7】図7は、残基15〜489の切断されたCRMP2の構造のリボンダイアグラムを示す。挿入図は、切断されたCRMP2の表面図を示し、これは残基R467、P470およびP473の表面露出を示す(濃灰色)。
【図8】図8は、CRMP2−GSTまたはGSTに結合したセファロース−4Bビーズと共にインキュベーションした初代Tリンパ球またはDev神経細胞の細胞溶解液に対して実施したウェスタンブロットの結果を示す。ウェスタンブロットは、抗Yes抗体、抗CRMP2抗体および抗GST抗体を使用して実施された。ウェスタンブロットの左の数字は分子量(kDa)を示す。
【図9】図9は、ATPの存在下(+)または非存在下において、活性組換えYesを用いて(+)または用いずに、および組換えCRMP2を用いて(+)または用いずに実施されたin vitroにおけるキナーゼアッセイの結果を示す。ウェスタンブロットは、抗リン酸化チロシン残基抗体および抗CRMP2抗体を使用して実施された。ウェスタンブロットの右の数字は分子量(kDa)を示す。
【図10】図10は、CXCL12(100ng/ml)を用いて0、1、2、4、6、10、15または30分間かけて処理したジャーカット細胞の細胞溶解液に対して実施したウェスタンブロットの結果を示す。ウェスタンブロットは、抗CRMP2−pTyr479抗体、抗CRMP−C−ter抗体、抗CRMP2−pep4抗体、抗Src−pTyr416抗体および抗Src抗体を使用して実施された。白抜きの矢印は完全長型のCRMP2を示し、そして黒い矢印は切断型のCRMP2を示す。ウェスタンブロットの左の数字は分子量(kDa)を示す。ウェスタンブロットの下の数字は、非処理細胞を用いて得られたシグナル強度と比較した、処理細胞を用いて得られたシグナル強度の相対値を示す。
【図11】図11は、CXCL12(100ng/ml)を用いての処理および固定の後に極性化CRMP2を有する、コラーゲンIでコーティングされたスライドに付着している、CRMP2Flag−WT(線入りの棒)またはCRMP2Flag−Y479F突然変異体(白い棒)を用いてトランスフェクションされた、ジャーカット細胞の数(トランスフェクションされた細胞数と比較した%)を示すヒストグラムを示す。CRMP2は、抗Flag抗体を用いて観察された。
【図12】図12は、トランスウェルチャンバーにおいてCXCL12の方向にトランスマイグレーションする、空ベクター(ドットの棒)プラスミド、CRMP2Flag−WT(線入りの棒)プラスミドまたはCRMP2Flag−Y479F(白い棒)プラスミドを用いてトランスフェクションされた、ジャーカット細胞の数を示すヒストグラムを示す。
【図13】図13は、器官型の海馬切片の近くにスポットされると神経組織上において遊走する、CRMP2Flag−WT(線入りの棒)プラスミドまたはCRMP2Flag−Y479F(白い棒)プラスミドを用いてトランスフェクションされた、ジャーカット細胞の数を示すヒストグラムを示す。
【0064】
実施例1
以下の実施例は、チロシン479残基上でのCRMP2のリン酸化がT細胞の遊走において重要であることを実証する。
【0065】
材料および方法
細胞および抗体
ジャーカットT細胞株を、10%ウシ胎児血清の補充されたRPMI1640中で培養した。健康ドナーの血液から選択された初代Tリンパ球を、1〜2週間かけて10%ABヒト血清およびIL2(20U/mL)の補充されたRPMI中で培養した。
【0066】
完全長型および切断型のCRMP2の両方を認識するウサギポリクローナル抗体が、Rogemond et al. (2008) J. Biol. Chem 283:14751-14761に記載されている。C−terおよびpep4の抗血清を生成するために使用されたペプチド配列は、それぞれ、CRMP2配列中のAA557〜572およびAA454〜465に局在していた。抗体を、対応する固定化されたペプチド上でのアフィニティクロマトグラフィーによって精製した。CRMP2−pSer522およびCRMP2−pTyr509/514を認識するヒツジ抗血清はKinasource Limited (Dundee, UK)製であった。本発明者らによって産生されたウサギポリクローナル抗体は、Y479上でリン酸化されたペプチドAA470〜483(CRMP2−pY479)に対して生じ、そして対応する固定されたペプチド上でのアフィニティクロマトグラフィーによって2工程法で精製した(工程1:抗非リン酸化ペプチド抗体の排除、工程2:抗リン酸化ペプチド抗体の精製)。CRMP2−Y479ペプチドおよびCRMP2−pY479ペプチドに対して実施されたELISAは、本発明者らによって産生された抗CRMP2−pY479抗体の特異性を示した。さらに、ホスファターゼCIPを用いてのT細胞溶解液の処理は、ウェスタンブロットにおける陽性シグナルをかなり減少させた。Yesキナーゼに対するウサギポリクローナル抗体はUpstate製であった。マウス抗ビメンチン/LN6抗体はCalbiochem製であった。Cell Signaling製の抗Erk抗体および抗リン酸化Erk抗体は、非リン酸化およびリン酸化p44/42MAPキナーゼ(Erk1およびErk2)を認識した。抗Cdk5抗体、抗CDK5−pTyr15抗体、抗Cdk5−pSer159抗体および抗Src抗体は、Santa Cruz Biotechnology製であった。ウサギ抗リン酸化Srcファミリー抗体はCell Signaling製であり、そしてこれはSrc、Lyn、Fyn、LCK、HckおよびYes上におけるリン酸化Tyr416を認識した。ウサギ抗GSK−3抗体はChemicon International製であった。Upstate Millipore製のマウス抗pGSK−3抗体は、活性型のGSK−3α(pTyr279)およびGSK−3β(pTyr216)を認識した。ホスホ濃縮磁気ビーズ(TALON(登録商標)PMAC)をClontechから購入した。
【0067】
プラスミドおよび構築物
CRMP2−Flag−wtプラスミドは、Rogemond et al. (2008) J. Biol. Chem 283:14751-14761に記載されている。簡潔に言うと、完全長CRMP2をPCRによって増幅し、そしてpCMV2−FLAGベクター(Sigma, l’Isle d’Abeau, France)に一方向に挿入した。
【0068】
突然変異:2工程のPCR手順を使用して、CRMP2−Y479F突然変異体を生成した。最初に、Y479−F突然変異を含むC末端フラグメント(471〜572)を、3’末端にEcoRI部位を導入するリバースプライマー、およびF(TTC)で置換されたコドンY479(TAC)を有するフォワードプライマーを使用して生成した。次に、この突然変異したフラグメントを、リバースプライマーとして2回目のPCR反応において、5’末端にHindIIIを導入する野生型フォワードプライマーと共に使用した。最終のPCR産物を、pCMV2−FlagベクターのHindIII部位およびEcoRI部位にクローニングし、そして突然変異体のDNA配列をシークエンスによって確認した。
【0069】
トランスフェクション:ジャーカットT細胞を、製造業者の指示に従って、Amaxa Nucleofector技術(Koln, Germany)を使用してCRMP2−Flag−wtプラスミド、CRMP2−Flag−Y479Fプラスミドおよび空Flagプラスミドを用いてトランスフェクションした。T細胞をトランスフェクションから18時間後に使用した。トランスフェクションされた細胞を、抗Flag抗体を用いての免疫染色によって可視化した。トランスフェクション率は、大半のFlag構築物において40〜50%に達した。
【0070】
免疫細胞化学
CRMP2型、Yesキナーゼおよび中間径フィラメントのビメンチンを、コラーゲンIでコーティングされたスライド(20μg/ml)に付着させそして処理(アセトン−20℃;10分間)により固定されたジャーカット細胞および初代T細胞に対する間接的な免疫蛍光によって検出した。細胞を特異的な抗体と共に(1時間、37℃)、その後、Alexa488または546にコンジュゲーションした抗マウスまたは抗ウサギまたは抗ヒツジIgG抗体と共に(1時間、37℃)インキュベーションし、そしてAxioplan II蛍光顕微鏡(Carl Zeiss)を使用して調べた。核対比染色を、蛍光DNAインターカレート剤である4’,6’−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI, Boehringer Mannheim)を使用して実施した。
【0071】
タンパク質相互作用アッセイ(プルダウンGST−CRMP2)
前記のように調製した100μlのジャーカット細胞溶解液を、グルタチオン−セファロース4B(Pharmacia Biotech)に結合させた(4℃で1時間)80μlのGST−CRMP2融合タンパク質または80μlのGSTタンパク質のいずれかに加えた。GST−CRMP2ビーズおよびGSTビーズを4回洗浄し(50mMトリス(pH7.4)、1mM EDTA、150mM NaCl、および0.5%NonidetP40)、そしてCRMP−2ビーズにまたはGSTビーズのみに結合したタンパク質を溶出した。GST(GSTビーズにおける)、YesおよびCRMP2(GST−CRMP2ビーズにおける)並びにGST(GSTビーズおよびGST−CRMP2ビーズにおける)をウェスタンブロットによって明らかとした。
【0072】
ウェスタンブロット
CXCL12による処理後、細胞を、ホスファターゼ阻害剤(フッ化Na5mM、ピロリン酸Na1mM、β−グリセロリン酸1mM、オルトバナジン酸1mM)およびプロテアーゼ阻害剤カクテルコンプリートTM(Roche)の補充されたホモジナイゼーション緩衝液(トリス20mM、EDTA1mM、EGTA5mM、スクロース10%、pH7.4)中に溶解した。溶解液を超音波にかけて、細胞凝集物を解離させ、そして全タンパク質をローリーアッセイ(Bio-Rad)によって測定した。タンパク質試料(10〜20μg)を還元条件下でドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)にかけ、そして遮断溶液(PBS、0.1%Tween20、5%無脂肪ドライミルク、1時間)と共に前もってインキュベーションしたニトロセルロースメンブレン(BA85; Schleicher & Schuell Microscience)に転写し、そして特異的な抗体に対してブロッティングし(一晩、4℃)、その後、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)に結合させたウサギおよびヒツジのIgG抗体と共にインキュベーションし(1時間、室温)、そして化学発光(ECL)検出システム(Covalab Lyon, France)を行なった。イムノブロットバンドの濃度定量をImage Quant (Molecular dynamics)を使用して実施し、そしてデータをあらゆる処理の前に検出された量に対する比として表現した。
【0073】
データベースおよび構造分析
予測プログラムPROSITE(http://us.expasy.org/prosite)を使用して、CRMP2上における推定チロシンキナーゼ部位を同定した。CRMP2の構造を、CRMP2のD鎖について入手可能な座標に基づいて(Stenmark et al. (2007) J. Neurochem. 101:906-917) (タンパク質データバンクエントリー2GSE)、Viewerlite/4.2 (Accelrys)を使用してモデリングした。
【0074】
CRMP2のクローニングおよび発現
ヒトCRMP−2に対するコード配列(NM_1386)を、発現ベクターpEt21b(Novagen)にサブクローニングし、その結果、N末端にヘキサヒスチジンタグを有する構築物が得られた。このプラスミドを、Escherichia coli BL21(DE3)細胞に形質転換した。発現のために、細胞を、バブル型フラスコ中の1500mLのTB培地(7%グリセロール、50μg/mlのカナマイシンおよび100μLのBREOXを含む)中で増殖させた。細胞を+37℃で、600nmにおける吸光度が2.5に到達するまで増殖させた。培養液を+18℃まで水浴中で1時間かけて冷却した。CRMP−2の発現を、0.5mmol/LのIPTGの添加によって誘導し、そして発現を+18℃で一晩かけて継続させた。細胞を遠心分離によって収集し、そしてペレットを、コンプリートEDTAフリープロテアーゼ阻害剤(Roche, Basel, Switzerland)および2000Uのベンゾナーゼの補充された溶解緩衝液(20mMトリス、500mM NaCl、1mM DTT、20%グリセロール、0.1%トリトン、10mMイミダゾール)中に懸濁した。溶液を氷上で数サイクルの間、超音波にかけた。試料を14,000gで4℃で30分間遠心分離にかけ、そして上清を、溶解緩衝液(QIAGEN)中に50%再懸濁した1.5mlのNi−NTA樹脂と共に4℃で90分間かけてインキュベーションした。Hisタグのついたタンパク質を、洗浄緩衝液(20mMトリス、500mM NaCl、1mM DTT、20%グリセロール、0.1%トリトン、20mMイミダゾール)中のNi樹脂から精製し、そして溶出緩衝液(洗浄緩衝液+150mMイミダゾール)を用いて1mlの画分ずつ溶出した。画分をSDS−PAGEによって評価した。
【0075】
in vitroにおけるYesキナーゼアッセイ
アッセイ前に、HisタグのついたCRMP2を、製造業者の指示に従って、Float-A-lyzer技術(Interchim)を使用して一晩かけて4℃で緩衝液(40mM MOPS、0.5mM EDTA、5%グリセロール)中で透析した。Yesキナーゼアッセイのために、0.6μgの透析されたHisタグのついたCRMP2を、酵素希釈緩衝液(20mM MOPS pH7、1mM EDTA、0.01%Brij、0.1%β−メルカプトエタノール、5%グリセロール)中に事前に希釈された20ngの組換え完全長ヒトYes(Millipore)と共にインキュベーションした。反応を、50μlの反応緩衝液(8mM MOPS、0.2mM EDTA、30mM MgCl2、2mM EGTA、10mM β−グリセロリン酸、0.4mM Na3VO4、0.4mM DTT、200μM ATP)中で30℃で30分間かけて行なった。反応をローディング緩衝液を用いて停止し、そして混合物をSDS−PAGEゲル上で分離した。
【0076】
トランスマイグレーションアッセイ
T細胞のトランスマイグレーションを、マイクロトランスウェルシステム(Costar Transwell支持体−A)および器官型のマウス脳培養液(B)の両方においてジャーカットT細胞を用いて実施した。
【0077】
A:トランスマイグレーションを、3回、トランスウェルシステム(ボイデンチャンバー、Costar、直径5μmの孔サイズのメンブレン)中でVincent et al. (2005) J. Immunol. 175:7650-7660に記載のように実施した。簡潔に言うと、T細胞調製物(3×105個の細胞/ウェル)を上のチャンバーに加え、そしてCXCL12を下の区画に加えた(10ng/ml)。37℃で2時間インキュベーションした後、下のチャンバー中で遊走している細胞を、顕微鏡下で計測した(少なくとも30か所の視野を調べた)。
【0078】
B:神経組織上におけるT細胞のトランスマイグレーションを、以下のように調製した海馬培養液上でアッセイした。生後(P7)C57BL6マウスの海馬を解剖し、そしてグルコース(6.5mg/ml)の補充された冷ゲイ平衡化溶液中に直ちに入れた。400μmの切片を、McIIwainティッシュチョッパーを使用して海馬の中隔側頭軸に対して垂直に切断した。切片を過剰な組織については注意深く整え、そして6つの切片を、6ウェルプレート中の30mmの半透過性メンブレンインサート(Millicell-CM, Millipore)上に置いた(各々のウェルは1mlの培養培地を含む)。培養培地は、50%最小必須培地(Gibco)、25%ハンク平衡塩溶液、25%熱不活化ウシ血清(Gibco)、1%l−グルタミン200mM(Gibco)および6.5mg/ml D−グルコースから構成された。プレートを37℃および5%CO2でインキュベーションした。培養培地を1週間に2回交換した。ex vivoにおいて生体の蛍光色素カルボキシフルオレセインサクシニミジルエステル/CFSE(1mM、5分間、37℃)を使用して染色されたジャーカットT細胞(1つの切片あたり1×106個の細胞)を、海馬切片(1週間培養液)の近くにスポットした。37℃で18時間接触させた後、切片をD−MEMを用いて十分に洗浄し、エタノールで固定し(10分間、4℃)、そして核対比染色のためにDAPIと共にインキュベーションした。蛍光顕微鏡下で計測された浸潤リンパ球の数は、CRMP2−Y479−Fを用いてトランスフェクションされたT細胞個体群において減少した。
【0079】
統計分析
2つの平均の比較における統計学的有意性は、独立スチューデントt検定を用いて試験され、0.05未満のp値を有意と考えた。遊走試験においては、遊走リンパ球の数を光学顕微鏡(1条件あたり15〜20個の顕微鏡視野、2回または3回の独立した実験)によって計測し、そしてデータを、1視野あたりの遊走リンパ球の平均数として表現した。
【0080】
結果
CXCL12は、Tリンパ球の尾足におけるCRMP2の極性化を誘導する
ケモカインとCRMP2との間の連関を定義するために、本発明者らはまず、CXCL12シグナリング下におけるジャーカットT細胞におけるCRMP2の局在を調べた。本発明者らは、完全長および切断産物のCRMP2を認識する2つの異なる抗CRMP2抗体(抗C−ter抗体および抗pep4抗体)を使用した。非処理T細胞の免疫蛍光研究は、CRMP2が、点状のドットとしてT細胞の細胞質内に見られたことを明らかとした。CXCL12による処理下において、CRMP2は、2分以内に細胞の後縁に移動し、そして10分間の処理後に大半の極性化した細胞において準排他的な尾足における局在を示した。CRMP2極性化のこのような現象は、処理から30分後にも依然として観察された。非処理ジャーカットT細胞は、細胞において非対称的なCRMP2の分布を示したが、CXCL12の処理後に1.6〜2倍の増加が観察された(図1)。同じようなCRMP2の再局在化が、抗pep4抗体染色によっても観察された。さらに、尾足へのCRMP2の分布が、ビメンチンの再局在化と同時に起こり、このビメンチンは極性化しているT細胞の後縁に迅速に再分布した。興味深いことに、CRMP2の再局在化は、CXCL12レセプター(CXCR4)のアンタゴニストであるAMD3100の存在下において非常に大きな程度で逆行し(35%の減少)、結果として、CXCL12誘導応答の特異性が確認された(図2)。これらの結果は、ケモカインが、ビメンチンと協奏して、Tリンパ球において、すなわちフレキシブルな尾足構造へと、CRMP2の動的な再局在化を誘導し得るという意見を支持した。
【0081】
CXCL12は、細胞骨格へのCRMP2の結合をモデュレーションする。
T細胞の尾足にはビメンチンおよび微小管が豊富であり(Serrador et al. (1999) Trends Cell Biol. 9:228-233)、この2つの細胞骨格エレメントは両方共に、CRMP2の結合対(Vincent et al. (2005) J. Immunol. 175:7650-7660; Gu et al. (2000) J. Biol. Chem. 275:17917-17920)並びにTリンパ球の極性化および遊走におけるアクター(Krummel et al. (2006) Nat. Immunol. 7:1143-1149)として記載されていることは周知である。このことから、本発明者らは、CXCL12が、細胞骨格へのCRMP2の結合をモデュレーションして、T細胞の運動性を促進し得ると仮定した。CXCl2による処理後(100ng/ml、10分間および30分間)、細胞下分画をジャーカットT細胞抽出物に対して実施して、細胞骨格エレメントおよび会合タンパク質を細胞質画分から単離した。ビメンチン、チューブリンPARPおよびHsp90に対する抗体を使用する細胞下画分の同定は、細胞骨格画分と細胞質画分との間のコンタミが全くないことを示した。細胞骨格画分は、中間径フィラメントのビメンチンを示したが、チューブリンは含まず、これはおそらく、チューブリンが細胞質に見られるので脱重合に起因する。その後、異なる画分を、抗CRMP2抗体を使用してウェスタンブロットにかけた。非処理細胞の全細胞溶解液において、抗C−ter抗体は、以前に記載された完全長CRMP2(62kDa)に対応するCRMP2バンド、およびより高い分子量を有するバンドを明らかとした(図3)。抗pep4抗体は主に、神経細胞において報告されているような(Rogemond et al. (2008) J. Biol. Chem. 283:14751-14761)、切断型のCRMP2に対応する58kDaバンドを認識した。抗pep4抗体の親和性は、完全長型よりも切断型に対しての方が高かった。CXCL12による処理後、その効率をErk1/2リン酸化によって評価し(図3)、CRMP2発現の差異は全細胞溶解液においては検出できなかった。しかしながら、CRMP2型の分布は調べたT細胞の区画によって異なった。完全長CRMP2およびより高い分子量バンドは細胞質画分に見られた。これらはCXCL12処理下において主な変化を示さなかった。CRMP2はまた、62kDaの完全長型および58kDaの切断型として細胞骨格画分においてより少ない程度で見られた。興味深いことに、両方の型の発現は、CXCL12による処理の後に増強された。切断されたCRMP2の大半が核に見られ、そしてCXCR4による活性化下で改変されなかったことは注記すべきである。これらの結果は、CRMP2がTリンパ球の細胞骨格区画に分布し、そしてCXCL12はこの分布を変化させ、細胞骨格エレメントとCRMP2の会合を増強する能力を有することを示した。
【0082】
CXCL12は、CRMP2のリン酸化を増加させる。
神経細胞におけるCRMP2の機能的調節は主に、特にGSK−3βキナーゼ活性およびCdk5のキナーゼ活性を介する、そのリン酸化状態に依存する(Uchida et al. (2005) Genes Cells 10:165-179)。それ故、本発明者らは、Tリンパ球において、CXCL12が、そのリン酸化のモデュレーションを通して、細胞骨格へのCRMP2の結合を改変し得るかどうかを研究した。CRMP2のリン酸化を評価するために、本発明者らは、CXCL12(100ng/ml)による処理後にジャーカットT細胞の全細胞抽出物に対してリン酸化タンパク質濃縮アッセイ(TALON(登録商標)PMAC Clonetech)を実施し、そして処理から2、5、10および30分後にウェスタンブロットによって非リン酸化画分(素通り画分)およびリン酸化画分(溶出液)に対してイムノブロットを行なった。抗C−ter抗体によって明らかとなった完全長CRMP2型は、非リン酸化画分およびリン酸化画分の両方に存在した(図4)。これに対し、切断型のCRMP2は、リン酸化タンパク質プールにおいてのみ見られ、このことは、この型が、大部分はリン酸化されていることを示す。CXCL12による処理は、CRMP2リン酸化型のレベルを急速に増加させ、処理から2分後にピークに達し、そして依然として30分後にも高かった。リン酸化タンパク質濃縮手順の効率は、リン酸化Erk1/2イムノブロットによって確認され、これは、溶出液中のリン酸化タンパク質の特異的存在、および同時に、CXCL12による処理後の増加を確認した。健康ドナーから単離した初代Tリンパ球に対して実施された類似の実験は類似の観察を示した。CXCL12に応答したCRMP2リン酸化のより正確な評価を、それぞれCdk5キナーゼおよびGSK−3キナーゼによってターゲティングされる2つの部位を認識する、抗CRMP2−pSer522抗体および抗CRMP2−pThr509/514抗体を使用して実施した(図5)。ジャーカット細胞溶解液のイムノブロットは、CRMP2−pSer522およびCRMP2−pThr509/514が、T細胞において完全長62kDaのCRMP2として存在し、そしてケモカイン処理中に種々に発現され、その効率はリン酸化Erk1/2の検出によって確認された。Ser522リン酸化は比較的低いレベルで見られたが、Thr509/514リン酸化は、4分後までに急速に減少し、そしてその後は検出できなかった。これは、Cdk5キナーゼおよびGSK−3キナーゼの活性型である、Cdk−pTyr15、Cdk5−pSer159、GSK−3α−pTyr279およびGSK−3β−pTyr216の検出によって評価される、Cdk5キナーゼおよびGSK−3キナーゼの活性と一致した(図6)。Cdk5は、Tyr15およびSer159上において安定したレベルのリン酸化を示し、Cdk5の保存された活性化レベルを反映した。これに対し、GSK−3は、GSK−3βアイソフォーム上で主に検出された脱リン酸化を示し、これは処理から4分後に始まる低下した活性を反映した。合わせて考えると、これらの結果が初めて、神経細胞において以前に記載されたように、CRMP2残基のSer522およびThr509/514がTリンパ球においてリン酸化され得ることを明らかとした。より重要なことには、それらは、CXCL12が、CRMP2のこれらの残基のリン酸化の異なるモデュレーションをもたらすシグナルカスケードをトリガーし、すなわち、Thr509/514上におけるリン酸化は正味で減少することを実証する。興味深いことに、これらのモデュレーションは主に完全長型CRMP2上で検出されたが、リン酸化タンパク質濃縮アッセイ(図4)は、ケモカイン処理後の切断型のCRMP2の強力なリン酸化を示した。これにより本発明者らは、CXCL12に対するCRMP2の応答におけるさらに他のリン酸化ターゲットの関与を疑った。
【0083】
チロシン479は、CRMP2配列における新たなリン酸化残基である。
CXCL12が、Lck、ZAP−70およびItkを含むチロシンキナーゼの連続的補充および活性化を含む、Tリンパ球におけるチロシンリン酸化カスケードをトリガーすることが知られている(Patrussi et al. (2008) Immunol. Lett. 115:75-82)。それ故、本発明者らは、CRMP2タンパク質配列を分析することによって、ケモカイン処理下でモデュレーションされる可能性のあるチロシンターゲット残基について探索した。572個のアミノ酸のデータベース研究は、残基472〜479内のリン酸化チロシン共通モチーフKxxxDxxY内に位置する、可能性ある新たなリン酸化残基としてチロシン479(Y479)を同定した(図7)。さらに、この領域の検査はまた、Y479の近くの、残基467〜473内のRxxPxxP型の推定SH3結合モチーフの存在を示した。結合タンパク質対へのこれらの配列の近づきやすさを評価するために、本発明者らは、フラグメント15〜489について入手可能な座標に基づいて、CRMP2の既知構造内(図7)におけるY479およびSH3結合モチーフの両方の位置を評価した(Stenmark et al. (2007) J. Neurochem. 101:906-917)。このCRMP2型の表面露出図は、Y479とは対照的に、推定SH3結合モチーフが露出していることを明らかとし、このことは、SH3ドメインを有するタンパク質との結合の可能性を示唆する(図7の挿入図)。SH3ドメイン結合モチーフとの相互作用は、タンパク質コンフォメーション変化を誘導し(Martinez and Serrano (1999) Nat. Struct. Biol. 6:1010-1016)、よって前記タンパク質コンフォメーションがその後のY479の露出の基礎であり得ることが示された。これらの観察は、CRMP2配列内の主要な推定リン酸化チロシンとしてのY479を示唆した。
【0084】
CRMP2のチロシンリン酸化は、SrcファミリーキナーゼYesによって行なわれ、そしてこれはケモカイン処理下で増加する。
潜在的なリン酸化可能な部位Y479に近い推定SH3結合モチーフの存在の観点から、そのSH3ドメインを通したCRMP2とチロシンキナーゼとの間の可能性ある相互作用を研究した。これは、活性コンフォメーションで折りたたまれたままであるいくつかのタンパク質SH3ドメインを有するメンブレンアレイを使用して実施された。10個の異なるリンパ球チロシンキナーゼ(エーベルソンキナーゼ(Abl)、Srcファミリーキナーゼ(Lck、Yes、c−Src、Fyn、Hck、Blk)およびTecファミリーキナーゼ(Itk、Txk、Blk)を含む)がこのアレイに存在した。Hisタグのついた組換えCRMP2のハイブリダイゼーション後、タンパク質−タンパク質相互作用を、抗His抗体を使用して可視化し、そしてスポット強度は相互作用の強度を明らかとした(表1)。
【0085】
表1:SH3タンパク質−CRMP2の相互作用の同定
CRMP2−His組換えタンパク質を、製造業者の指示に従って、38個のタンパク質のSH3ドメインを用いて2回スポットされたメンブレン(TranSignal TM SH3ドメインアレイI-Panomics)と共にインキュベーションした。抗His抗体は、いくつかのチロシンキナーゼタンパク質のSH3ドメインを含む、複数のSH3ドメインとCRMP2との会合を明らかとした。スポット強度(−から+++まで)は、リガンドCRMP2に対するSH3ドメインの結合親和性を示し、そしてCRMP2についての強力なチロシンキナーゼ候補としてのYesを明らかとした。
【0086】
【表1】
【0087】
Yesキナーゼは、CRMP2への強い結合を示したが、BlkおよびAblは弱いシグナルを示した。さらに、Vav1、PLCγ、ITSNおよびPI3βに属する4つの非キナーゼタンパク質SH3ドメインもまた、CRMP2への強い結合を示した。興味深いことに、PLCγおよびITSNは以前に、CRMP2に対する結合対として観察されている(Quinn et al. (2003) J. Neurosci. 23:2815-2823; Buttner et al. (2005) Biochemistry 44:6938-6947)。その後、本発明者らは、CRMP2リン酸化についてのより強力なチロシンキナーゼ候補であるYesに焦点を当てた。
【0088】
Yes/CRMP2相互作用をいくつかのアプローチによって評価した。まず、これらのタンパク質の局在を、コラーゲンIでコーティングされたカバーガラスに付着させ、そしてその後、CXCL12(100ng/ml、5分間)で処理した、初代Tリンパ球およびジャーカットT細胞上で評価した。抗Yes抗体および抗pep4抗体を用いて実施された免疫蛍光は、特に極性化したT細胞の尾足における、CRMP2およびYesの共分布を示した。Yes/CRMP2の相互作用を次に、初代Tリンパ球および神経細胞(Dev細胞株)(CRMP2はまた、中枢神経系(CNS)における運動性にも関与しているため)からの細胞溶解液を使用してGSTプルダウンアッセイによって調べた(図8)。グルタチオン−セファロースビーズ上に固定されたCRMP2を細胞溶解液と共にインキュベーションした。両方の細胞型からの溶出液に対して実施されたウェスタンブロットは、CRMP2−GSTと会合したYesタンパク質の存在は示したが、GSTのみと会合したものは示さなかった。合わせて考えると、これらの結果は、CRMP2に対する強力な結合対としてのYesキナーゼを規定した。この相互作用の機能的意義を評価するために、in vitroにおけるキナーゼアッセイを、活性組換えヒトYesキナーゼおよび基質としてのHisタグのついたCRMP2を使用して実施した(図9)。リン酸化を、イムノブロットによって抗リン酸化チロシン抗体を使用して検出した。対照はCRMP2の非存在下において実施され、これはYesの自己リン酸化を示した。CRMP2のリン酸化に対応するバンドは、ATPの存在下においてのみ検出された。タンパク質リン酸化の結果として、このバンドは、分子量の僅かな増加を示した。
【0089】
T細胞におけるチロシンリン酸化型のCRMP2の存在を確認するために、リン酸化残基Tyr479を含むCRMP2配列のフラグメント(AA470〜483)に対するポリクローナル抗体を生じさせた。この抗体を用いてのイムノブロットは、完全長および58kDaの切断されたタンパク質の両方として検出された、Tリンパ球におけるCRMP2−pTyr479の存在を明らかとした。
【0090】
CXCL12(100ng/ml;0、1、2、4、6、10、15、30分間)を用いて処理したジャーカットT細胞におけるCRMP2−pTyr479の調査は、Tyr479リン酸化の増加を示し(図10)、これは主に処理から8〜14分後に観察された。CRMP2−pTyr479の増加した発現は、CRMP2−Thr509/514の減少と同時に起こり、これはその依存性を示唆する。Tyr479リン酸化のこのピークは、Yesを含むリン酸化Srcファミリーメンバーを認識する抗体である、抗Src−pTyr416抗体を使用したイムノブロットによって示されるように、この時点においてSrc−ファミリーキナーゼの活性化と相関した。その後、免疫蛍光を、リン酸化型および非リン酸化型のCRMP2に対する抗体を使用して、CXCL12で処理した(15分間)ジャーカット細胞に対して実施した。CRMP2−pTyr479についての染色は主に、Tリンパ球における極性化した分布を伴った。ビメンチンとの共局在は、それぞれビメンチンと会合しているまたは会合していないのいずれかである抗pep4抗体および抗C−ter抗体によって認識されるCRMP2型と比較して、リン酸化されたCRMP2−Tyr479は主に、尾を引く極においてビメンチンと共局在することを示した。合わせて考えると、これらの結果は、CXCL12シグナリングによってモデュレーションされ、細胞骨格エレメントと共局在し、そしてSrc−ファミリーキナーゼYesによってターゲティングされ得る、新たな型のリン酸化CRMP2を同定した。
【0091】
CRMP2−Tyr479リン酸化は、ケモカインにより誘導されるT細胞の極性化および遊走に関与する。
Tyr479上におけるCRMP2リン酸化の機能的意義を評価するために、本発明者らは、完全長CRMP2配列上における突然変異Y479−Fを工学操作した。その後、T細胞の極性化に対するTyr479リン酸化障害の作用を、FlagのタグのついたCRMP2−wtおよびCRMP2−Y479−F突然変異体を用いて一過性にトランスフェクションされたジャーカットT細胞において分析した。トランスフェクションから24時間後、T細胞をコラーゲンIでコーティングされたスライドに付着させ、その後、CXCL12で処理し、そして蛍光顕微鏡によって調べた。Flag陽性免疫染色によって可視化されるような、トランスフェクションされたT細胞におけるCRMP2の極性化を、ビメンチンネットワークの共局在化に基づいて調べた。これにより本発明者らは、CRMP2−wtまたはCRMP2−Y479−FのいずれかでトランスフェクションされたFlag陽性T細胞の極性化を評価することが可能となった(全トランスフェクション細胞に対する比率として表現)。CRMP2−wtを用いてトランスフェクションされた非処理ジャーカットT細胞個体群は、約28%の自発的に極性化した細胞を示したが、これは、CRMP2−Y479−F突然変異体を用いてトランスフェクションされたT細胞においては明らかに減少した(図11)。CXCL12による処理後、ビメンチンは、CRMP2−wtでトランスフェクションされたT細胞においては尾足に迅速に再分布した。これに対し、CRMP2−Y479−Fでトランスフェクションされた細胞は、明らかにあまり極性化しなかった(図11)。さらに、CXCL12による処理後の極性化した細胞数の増加は、CRMP2−wtよりもCRMP2−Y479−Fを用いてトランスフェクションされたジャーカットT細胞においての方がより少なく(それぞれ42%vs31%)(図11)、従って、T細胞の極性化に対するTry479リン酸化の影響が確認された。これらの結果は明らかに、Tリンパ球の極性化におけるCRMP2−Tyr479リン酸化の役割を示した。
【0092】
T細胞の極性化は遊走にとって必要条件であるので、本発明者らはさらに、T細胞の遊走に対するTyr479リン酸化の影響を評価した。従って、本発明者らはまず、トランスウェルチャンバーにおいてトランスマイグレーションアッセイを実施することによって、CXCL12の方へと、トランスフェクションされたジャーカットT細胞が遊走する能力を評価した。図12に示したように、CRMP2−Y479−Fでトランスフェクションされた細胞の遊走速度は、CRMP2−wtおよび対照細胞(空ベクター)と比較して劇的に減少した。血管を横切るために必要であるT細胞のトランスマイグレーションを超えて、侵入組織内における遊走もまた、特にCNS内においてはキーポイントである(CNSではCXCL12およびその同族レセプターが構成的に発現されている)。それ故、本発明者らは、Tyr479リン酸化が、神経組織内におけるT細胞の遊走に対して影響を及ぼすかどうかを、マウス海馬器官型培養液を使用して調べた。トランスフェクションされたジャーカットT細胞(40〜50%のトランスフェクション効率)を、生体の色素のCFSEで染色することにより、神経組織上および神経組織中の両方においてそれらを容易に可視化した。その後、細胞を脳切片の近くにスポットし、そして18時間のインキュベーション後に計測した。CRMP2−Y479−Fでトランスフェクションされた細胞は、野生型のトランスフェクション細胞と比較して、神経細胞上を移動する低下した能力を示した(図13)。これらの結果は、神経組織内のT細胞の遊走過程におけるCRMP2−Tyr479リン酸化の役割を実証した。
【0093】
従って、本発明者らは、チロシン479上のリン酸化がT細胞の遊走に対して影響を及ぼし、従って、CNSの炎症疾病の予測マーカーとして使用することができることを実証した。
【0094】
実施例2
本発明者らは、TCR刺激によって媒介されるTリンパ球の活性化が、CRMP2、より特定すると、国際出願WO2003/022298に記載の抗ペプチド4抗体による切断型のCRMP2の検出の増加をもたらしたことを示した。
【0095】
興味深いことに、これらの抗体は、カラムで濃縮されたリン酸化型のCRMP2を強く認識した。さらに、S465のリン酸化されたCRMP2は、CNSに記載されたリン酸化型のCRMP2の中で主要なリン酸化型のCRMP2である。
【0096】
従って、これらの結果は、切断されたS465リン酸化CRMP2の検出が、TCR刺激によって媒介されるTリンパ球の活性化に関連し、そしてこれをTCR活性化の末梢マーカーとして使用することができることを示唆する。
【0097】
実施例3
本発明者らは、HTLV−1感染に関連した多発性硬化症または脊髄症を患う患者において、活性化Tリンパ球の亜個体群(CD69+および/またはHLA−DR+)が、健康被験体よりもより強くCRMP2を発現したことを示した。
【0098】
本発明者らは、この改変が、Tリンパ球の遊走能の増加に関連することを示した。さらに、この増加は、抗CRMP2抗体を使用して阻害され得る。
【0099】
CRMP2の高い発現は、抗ペプチド4抗体を使用して検出された。これらの抗体は特にリン酸化および切断された型のCRMP2を認識するので、この増加した検出はおそらく、CRMP2リン酸化の改変、特に、CRMP2のS465リン酸化に起因する。
【0100】
従って、これらの結果は、CRMP2の切断およびTリンパ球におけるリン酸化CRMP2の過剰発現が(TCR刺激を介するセリン465上およびケモカイン活性化を介するチロシン479上)、神経炎症過程の末梢マーカーであり、そしてこれを中枢神経系の炎症疾病の早期診断、予知またはモニタリングに使用することができることを実証する。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、中枢神経系の炎症疾病を予測、診断および/または処置するための方法に関する。
【0002】
発明の背景
神経炎症疾病、すなわち中枢神経系の炎症疾病は、炎症、および通常は脱髄、および軸索損傷に関連した急激な神経障害によって特徴付けられる。これらの疾患では、神経炎症が、脳および脊髄における神経細胞線維を絶縁する髄鞘を損傷し、それが下にある神経に対して広範でしばしば永久的な損傷を引き起こす。神経炎症疾病を患う患者には、感覚機能および運動機能の劇的で時に永久的な低下が起こる。神経炎症疾病に関連した有病率、罹患率および死亡率に因り、それらはかなりの医学的、社会的および経済的重荷を課す。北米においてはこれらの神経学的状態に500万人を超える人が罹患し、そして年間750億米ドルを超える治療費が発生すると推定されている。
【0003】
神経炎症疾病は診断および処置が困難である。残念なことに、不正確な診断により患者に不確実性が生じる。従って、神経炎症症状を寛解しそして神経学的機能を保存するための適切な処置法が確実に実行されるために、神経炎症疾病を診断するための迅速かつ正確な方法が重要である。従って、中枢神経系の炎症疾病を予測、診断および/または処置するための新たな方法が必要とされる。
【0004】
本発明者らは、国際出願WO2003/022298において、免疫系の機能障害に関連した病態の処置、予知または診断のためのコラプシン応答媒介タンパク質2(CRMP2)の可能性ある使用を示した。より具体的には、本発明者らは、CRMP2が、異常免疫病態を患う患者のTリンパ球において高いレベルで存在し、そして高度にリン酸化された型のCRMP2の核移行が、HTLV−1に感染したリンパ球、またはFas/Fasリガンド系に関連した免疫不全を有する患者のTリンパ球において増加したことを示した。
【0005】
CRMPは、中枢神経系(CNS)の軸索成長中の細胞骨格再配列のモデュレーターであることが知られている5つのメンバーのファミリーである。Tリンパ球およびCNSにおいては、CRMP2は、62kDaの完全長型(CRMP2−62)および58kDaの切断型(CRMP2−58)の両方を提示する。4つのリン酸化型のCRMP2がこれまでに記載されている:セリン522上でリン酸化されたCRMP2(pCRMP2−Ser522)、トレオニン509および514上でリン酸化されたCRMP2(pCRMP2−Thr509/514)、トレオニン555上でリン酸化されたCRMP2(pCRMP2−Thr555)およびセリン465上でリン酸化されたCRMP2(Uchida et al. (2005) Genes Cells 10:165-179; Cole et al. (2006) J Biol Chem 281:16581-16588)。
【0006】
本発明者らは、CRMP2の新たなリン酸化部位を同定した:チロシン479(Y479)。本発明者らは、Y479のリン酸化が、CXCL12ケモカインによるTリンパ球の膜CXCR4レセプターの活性化によって誘導され(Varrin-Doyer et al. (2009) J Biol Chem 284:13265-13276)、一方、S465のリン酸化はT細胞レセプター(TCR)の刺激後に誘導されたことを実証した。
【0007】
発明の要約
本発明は、(i)Y479の突然変異が、T細胞極性化およびT細胞遊走速度を含むT細胞遊走能を減少させ、これは、神経炎症過程におけるY479のリン酸化されたCRMP2の重要性を示し、そして(ii)HTLV−1によって誘発される多発性硬化症または脊髄症を患う患者が、高いレベルのSer465のリン酸化され切断されたCRMP2を有する活性化T細胞個体群を提示したという本発明者らによる意外な所見からもたらされる。これらのリン酸化および切断は、患者の免疫細胞におけるウェスタンブロットまたはフローサイトメトリーによって容易に検出できるという利点を有する。
【0008】
従って、本発明は、被験体における中枢神経系の炎症疾病のin vitroにおける予知、診断および/またはモニタリングのための方法に関し、前記方法は、被験体からの免疫系細胞の試料中における、チロシン479(Y479)上でリン酸化されたコラプシン応答媒介タンパク質2(CRMP2)の存在を検出することを含み、Y479のリン酸化されたCRMP2の存在の検出は、中枢神経系の炎症疾病を示す。
【0009】
本発明はまた、チロシン479上でリン酸化されたCRMP2に特異的な抗体、および中枢神経系の炎症疾病の予知、診断および/またはモニタリングにおけるその使用、免疫細胞の遊走を減少させるためのその使用、および中枢神経系の炎症疾病の処置におけるその使用に関する。
【0010】
本発明はまた、チロシン479および/またはセリン465上でリン酸化されたCRMP2を検出するための前記において定義したような抗体に関する。
【0011】
本発明はまた、Tリンパ球の遊走を減少させるために使用するためのCXCR4レセプターのアンタゴニスト、および中枢神経系の炎症疾病の処置における使用に関する。
【0012】
発明の詳細な説明
中枢神経系の炎症疾病
本明細書において使用する「中枢神経系の炎症疾病」または「神経炎症疾病」は、炎症、脱髄、あるいは軸索および/または神経の損傷に関連した、中枢神経系の疾病を示す。中枢神経系(CNS)の炎症疾病は、非感染性または感染性であり得る。炎症病変を引き起こし得る非感染性疾病としては、いくつかの毒素、自己免疫疾病および免疫介在性状態が挙げられる。ウイルス、細菌、真菌、原虫および後生動物寄生虫は全て、CNSの炎症疾病を引き起こし得る。CNSの炎症疾病は特に、WHOによって刊行されている疾病および関連保険問題の国際統計分類(International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems)のコードG00からG09に集められている。CNSの炎症疾病の例としては、髄膜炎、脳炎、脊髄炎、脊髄症または脳脊髄炎;頭蓋内および髄腔内の膿瘍および肉芽腫;頭蓋内および髄腔内の静脈炎および血栓性静脈炎;多発性硬化症;アルツハイマー病およびパーキンソン病を伴うウイルス感染、細菌感染または寄生虫感染が挙げられる。好ましくは、本発明によるCNSの炎症疾病は、髄膜炎、脳炎、脊髄炎、脳脊髄炎、脳炎(encephalititis)または脊髄症、多発性硬化症、パーキンソン病およびアルツハイマー病を伴うウイルス感染または細菌感染からなる群より選択される。より好ましくは、本発明によるCNSの炎症疾病は、脳炎、多発性硬化症、アルツハイマー病およびパーキンソン病を伴うウイルス感染からなる群より選択される。
【0013】
本明細書において使用する「髄膜炎、脳炎、脊髄炎、脊髄症または脳脊髄炎を伴うウイルス感染」としては、レトロウイルス、アデノウイルス、エンテロウイルス、ヘルペスウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、風疹ウイルス、天然痘ウイルス、水痘、水痘帯状疱疹ウイルス、インフルエンザウイルス、サイトメガロウイルス、ポリオウイルス、HTLV−1およびエプシュタン・バーウイルスに因るウイルス感染が挙げられる。好ましくは、本発明によるウイルス感染は、HTLV−1またはHIVに因るウイルス感染からなる群より選択される。
【0014】
本明細書において使用する「髄膜炎、脳炎、脊髄炎、脊髄症または脳脊髄炎を伴う細菌感染」としては、Haemophilis influenzae、Streptococcus pneumoniae、Streptococcus pyogenes、Streptococcus agalactiae、Staphylococcus aureus、Neisseria meningitidis、Escherichia coli、Klebsiella、Friedlander bacillus、Bacillus anthracis、Neisseria gonorrhoeae、Leptospira、Listeria monocytogenes、Borrelia、Treponema pallidum、Salmonella、Mycobacterium tuberculosisおよびSalmonella entericaに因る細菌感染が挙げられる。
【0015】
本明細書において使用する「髄膜炎、脳炎、脊髄炎、脊髄症または脳脊髄炎を伴う寄生虫感染」としては、Trypanosoma、特にTrypanosoma bruceiおよびTrypanosoma cruzi、Toxoplasma gondiiおよびNaegleria fowleriに因る寄生虫感染が挙げられる。
【0016】
CRMP2
本明細書において使用する「コラプシン応答媒介タンパク質2」または「CRMP2」または「ULIP2」は、神経成長円錐の発育(Goshima et al. (1995) Nature 376:509-514; Charrier et al. (2003) Mol. Neurobiol. 28:51-64)および微小管組織を介した神経細胞の遊走において初めて記載されたリン酸化タンパク質を指す。それは、細胞質リン酸化タンパク質のCRMP/TOAD/Ulip/DRPファミリーのメンバーである。好ましくは、CRMP2は、配列番号1のアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。
【0017】
本発明の脈絡において、本発明者らは、CRMP2が、チロシン479(Y479)上でリン酸化され得ることを実証した。さらに、Y479のリン酸化されたCRMP2は、完全長型または切断型のいずれかであり得る。Y479のリン酸化されたCRMP2の完全長型は、完全長型の62kDaのCRMP2(CRMP2−62)に対応するが、切断型は、切断型の58kDaのCRMP2(CRMP2−58)に対応する。より特定すると、CRMP2−58は、CRMP2のアミノ酸489から532の間に位置するRogemond et al.に記載の切断部位におけるCRMP2−62の切断によって得られる(Rogemond et al. (2008) J. Biol. Chem 283:14751-14761)。CRMP2およびY479のリン酸化されたCRMP2、特にその切断型のそれは、セリン465(S465)上でさらにリン酸化され得る。
【0018】
抗体およびその使用
本発明は、チロシン479上でリン酸化されたCRMP2に特異的な抗体に関する。
【0019】
本明細書において使用する「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子およびこれらの免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち、抗原に特異的に結合する抗原結合部位を含む分子を指す。従って、「抗体」という用語は、完全な抗体分子だけではなく、抗体フラグメント並びに抗体の変異体(誘導体も含む)および抗体フラグメントの変異体も含む。本発明による抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であり得る。
【0020】
本明細書において使用する「モノクローナル抗体」は、特異的な抗原に対して作られ、そして例えばB細胞またはハイブリドーマの単一のクローンによって組換えまたは産生され得る、単一のアミノ酸組成の抗体を指す。
【0021】
「抗体フラグメント」は、インタクトな抗体の一部、好ましくはインタクトな抗体の可変領域または抗原結合領域を含む。適切な抗体フラグメントの例としては、Fv、Fab、Fab’、(Fab’)2、Fd、dAb、scFv、dsFv、sc(Fv)2フラグメントおよびディアボディが挙げられる。本発明による抗体はまたラクダ科ナノボディであり得る。本発明による抗体は、改変された抗体であり得る。特に、本発明による抗体は、マーカー部分にコンジュゲーションされ得る。マーカー部分は、例えば、非放射性マーカー部分、例えばフルオロフォア、補酵素、例えばビオチン、タンパク質、ペプチド、炭水化物、脂質、色素、ポリエチレングリコールなどであり得る。
【0022】
「特異的」という用語は、ターゲットへのリガンドの認識または結合を言及する場合、前記リガンドが、ターゲットとの構造的類似性を全く示さない別のターゲットと実質的に相互作用することなく、ターゲットと相互作用することを意味する。特に、前記に定義したようなY479のリン酸化されたCRMP2に特異的な抗体は、CRMP2がチロシン残基479上にリン酸基を有する場合にはCRMP2を特異的に認識し結合するが、CRMP2がチロシン残基479上にリン酸基を有さない場合にはそうではない。好ましくは、前記に定義したようなY479のリン酸化されたCRMP2に特異的な抗体はまた、CRMP2がセリン465上にリン酸基をさらに有する場合にもCRMP2を認識し結合する。
【0023】
本発明はまた、セリン465上でリン酸化されたCRMP2(S465のリン酸化されたCRMP2)に特異的な抗体に関する。特に、前記に定義したようなS465のリン酸化されたCRMP2に特異的な前記抗体は、CRMP2がセリン残基465上にリン酸基を有する場合にはCRMP2を特異的に認識し結合するが、CRMP2がチロシン残基465上にリン酸基を有さない場合にはそうではない。好ましくは、前記に定義したようなS465のリン酸化されたCRMP2に特異的な抗体はまた、CRMP2がチロシン479上にリン酸基をさらに有する場合にもCRMP2を認識し結合する。
【0024】
前記に定義したような抗体は、完全長および/または切断されリン酸化されたCRMP2を認識し結合する。好ましくは、前記に定義したようなS465のリン酸化されたCRMP2に特異的な抗体は、切断されたS465のリン酸化されたCRMP2を認識し結合する。
【0025】
対象の抗原と特異的に反応するポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を産生するための方法は当業者に公知である(例えば、Coligan (1991) Current Protocols in Immunology Wiley/Greene, NY; Harlow and Lane (1989) Antibodies: A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Press, NY; Stites et al. (eds.); Basic and Clinical Immunology (4th ed.) Lange Medical Publications, Los Altos, CA: Goding (1986) Monoclonal Antibodies: Principles and Practice (2d ed.) Academic Press, New York, NY;および Kohler and Milstein (1975) Nature 256:495-497参照)。
【0026】
所望の特異性を有する本発明による抗体を含む抗血清を産生するために、リン酸化されたCRMP2を使用して、適切な動物、例えばマウス、ウサギ、または霊長類を免疫化し得る。標準的なアジュバント、例えばフロイントアジュバントを標準的な免疫化プロトコールに従って使用することができる、試験血を採取し、そして対象の抗原に対する反応性の力価を決定することによって、免疫原調製物に対する動物の免疫応答をモニタリングし得る。抗原に対して特異的に反応性である抗体を濃縮するための抗血清のさらなる分画および抗体の精製を、続いて、当業者に周知の方法を使用して達成することができる。
【0027】
モノクローナル抗体を、当業者によく知られた種々の技術を使用して得ることができる。典型的には、所望の抗原で免疫化された動物からの脾臓細胞を、一般的には骨髄腫細胞との融合によって不死化する(Kohler and Milstein (1976) Eur. J. Immunol. 6:511-519)。不死化の代替的な方法としては、エプシュタイン・バーウイルス、発癌遺伝子もしくはレトロウイルスを用いての形質転換、または当技術分野において周知の他の方法が挙げられる。単一の不死化細胞から生じるコロニーを、抗原に対する所望の特異性および親和性を有する抗体の産生のためにスクリーニングし、そしてこのような細胞によって産生されるモノクローナル抗体の収量は、脊椎動物宿主の腹腔への注射を含む種々の技術によって増強され得る。さらに、Huse et al.(1989) Science 246:1275-1281によって概略が示された一般的なプロトコールに従ってヒトB細胞cDNAライブラリーをスクリーニングすることによって、所望の特異性を有する抗体またはこのような抗体の結合フラグメントをコードする核酸配列が同定されると、モノクローナル抗体はまた組換え産生され得る。モノクローナル抗体はまた、組換えDNA法を使用して(例えば米国特許第4,816,567号参照)またはファージディスプレイによって産生され得る。「ファージディスプレイ」という用語は、本明細書において、バクテリオファージカプシド上に発現されそしてカプシドをコードする遺伝子に挿入された核酸配列によってコードされた、リガンドを選択するための方法を指す。この方法は、当業者には周知であり、そして特にScott and Smith (1990) Science 249:386-390、およびMarks et al. (1991) J. Mol. Biol.222:581-597によって記載されている。
【0028】
特定の態様において、前記に定義した抗体はヒト化モノクローナル抗体である。「ヒト化抗体」は、ヒト抗体とより密接に一致する(アミノ酸配列において)ように改変された非ヒト抗体を指す。特定の態様において、非ヒト抗体の可変領域の抗原結合残基の外のアミノ酸残基が改変される。大部分について、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域からの残基が、所望の特異性、親和性および能力を有するマウス、ラット、ウサギまたは非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域からの残基によって置換されている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。特定の態様において、ヒト化抗体は、ヒト抗体のCDRの全部または一部を、所望の抗原結合特異性を有する非ヒト抗体などの別の抗体からのCDRの全部または一部で置換することによって構築される。特定の態様において、ヒト化抗体は、CDRの全部または実質的に全部が非ヒト抗体のCDRに対応し、そしてフレームワーク領域(FR)の全部または実質的に全部がヒト抗体のFRに対応する、可変領域を含む。特定のこのような態様において、ヒト化抗体はさらに、ヒト抗体の定常領域(Fc)を含む。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体に見られない残基を含み得る。これらの改変は、抗体の性能をさらに洗練させるために行なわれる。さらなる詳細については、Jones et al. (1986) Nature321:522-525; Riechmann et al. (1988) Nature 332:323-329;およびPresta (1992) Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596を参照されたい。ヒト化抗体の使用は、マウス定常領域の免疫原性に関連した潜在的な問題を取り除く。
【0029】
本発明に従って使用する前に、本発明による抗体を精製し得る。抗体精製のための方法は生物医学研究の分野において周知であり、それには精製しようとする抗体の独特な特徴に依拠するものもあり、また、幅広い適用に適した標準的なタンパク質分離技術であるものもある。
【0030】
塩析を最初の工程として使用して、他の望ましくないタンパク質から所望の抗体を分離することができる。好ましい塩は硫酸アンモニウムであり、これはタンパク質混合物中の水の量を効果的に減少させることによってタンパク質を沈降させる。その後、タンパク質は、その溶解度に基づいて沈降する。タンパク質がより疎水性であればある程、より低い硫酸アンモニウム濃度で沈降する可能性が高くなる。典型的なプロトコールは生じる硫酸アンモニウム濃度が20〜30%となるように、タンパク質溶液に飽和硫酸アンモニウムを加えるものである。これは大半の疎水性タンパク質を沈降させる。所望の抗体を、その疎水性により適切な硫酸アンモニウム濃度で沈降させ、そしてその後、必要であれば透析またはダイアフィルトレーションのいずれかを通して過剰な塩を除去しながら緩衝液中で可溶化する。タンパク質の溶解度に依拠する他の方法、例えば冷エタノール沈降法は当業者に周知であり、そしてこれを使用して、血清などのタンパク質混合物から抗体画分を調製し得る。
【0031】
予測される分子量に基づいて、抗体を、種々の孔径のメンブレン(例えばAmiconまたはMilliporeメンブレン)を通した限外濾過を使用してより大きなおよびより小さなサイズのタンパク質から単離することができる。第一工程として、タンパク質混合物(例えば血清または細胞培養上清)を、所望の抗体の予測される分子量よりも小さな分子量カットオフを有する孔径を有するメンブレンを通して限外濾過する。その後、限外濾過の残余分を、所望の抗体の予測される分子量よりも大きな分子量カットオフを有するメンブレンに対して限外濾過する。抗体はメンブレンを通って濾液中へと入り、これをその後、次の工程のカラムクロマトグラフィーで処理することができる。
【0032】
本発明による抗体はまた、そのサイズ、正味の表面荷電、疎水性およびリガンドに対する親和性に基づいて、他の抗体を含む他のタンパク質から分離することができる。カラムクロマトグラフィーは頻繁に使用される方法である。例えば、抗体を、抗体のFc領域中のドメインに結合する細菌細胞壁タンパク質である、プロテインAまたはプロテインGの固定されたカラムを使用して他の非抗体タンパク質から単離することができる。さらに、異なる抗原に対する抗体を、抗体精製のための好ましい形式のカラムクロマトグラフィーのカラムに固定された、これらの抗原に対するその明確に異なる親和性に基づいて分離することができる。これらの全ての方法は当技術分野において周知であり、そしてクロマトグラフィー技術を、任意の規模で、そして多くの異なる製造業者(例えばPharmacia Biotech)からの装置を使用して実施することができることは当業者には明らかであろう。
【0033】
本発明はまた、チロシン479上で、場合によりさらにセリン465上でリン酸化されたCRMP2を検出するための前記に定義したような抗体の使用に関する。前記検出は、抗体の結合を可視化することを可能とする適切な免疫検出技術を使用して実施され得る。このような検出技術は当業者には周知であり、そしてこれには免疫組織細胞化学、免疫蛍光、免疫沈降、ウェスタンイムノブロット、化学発光、比色技術および放射標識技術が挙げられる。
【0034】
好ましい態様において、本発明による抗体の使用は、さらに切断型であるCRMP2を検出するためである。
【0035】
in vitroにおける予知、診断および/またはモニタリングのための方法
本発明は、被験体における中枢神経系の炎症疾病のin vitroにおける予知、診断および/またはモニタリングのための方法に関し、前記方法は、被験体からの免疫系細胞の試料中における、Y479のリン酸化されたCRMP2の存在を検出することを含み、Y479のリン酸化されたCRMP2の存在の検出は中枢神経系の炎症疾病を示す。
【0036】
本発明はまた、被験体における中枢神経系の炎症疾病を検出するためのin vitroにおける方法を記載し、前記方法は、被験体から採取した免疫系細胞の試料中における、Y479のリン酸化されたCRMP2の存在をin vitroにおいて検出することを含み、Y479のリン酸化されたCRMP2の存在の検出は中枢神経系の炎症疾病を示す。
【0037】
本明細書において使用する「診断法」または「診断」は、被験体が病態を患っているかどうかを決定するための方法を指す。
【0038】
本明細書において使用する「予知法」または「予知」は、被験体が病態を発症する可能性があるかどうかを決定するための方法を指す。
【0039】
本明細書において使用する「モニタリング法」は、被験体における病態の発展を決定するための方法を指す。
【0040】
本明細書において使用する「免疫系細胞」は、自然免疫反応および適応免疫反応の細胞、特にTリンパ球およびBリンパ球、樹状細胞、単球およびナチュラルキラー細胞を包含する。
【0041】
本明細書において使用する「試料」は、より大きなセットの一部を指す。好ましくは、本発明による免疫系細胞の試料は、被験体の血液または脳から採取し、および/または特に血液細胞の亜個体群などを含む。好ましくは、本発明による免疫系細胞の試料は、Tリンパ球を含むまたはそれからなる。
【0042】
特定の態様において、前記に定義した方法において、前記のY479のリン酸化されたCRMP2は完全長型である。別の特定の態様において、前記の定義した方法において、前記のY479のリン酸化されたCRMP2は切断型である。これらの態様において、前記のY479のリン酸化されたCRMP2はセリン465上でさらにリン酸化され得る。好ましくは、Y479のリン酸化されたCRMP2が切断型である場合、それはセリン465上でさらにリン酸化される。さらに、CRMP2は、セリン522、トレオニン509、トレオニン514および/またはトレオニン555などの他のリン酸化部位上でさらにリン酸化され得る。
【0043】
本発明の脈絡において、被験体の免疫系細胞の試料中におけるY479のリン酸化されたCRMP2の存在の検出は、タンパク質の存在を可視化することを可能とする任意の適切な技術によって行なわれ得る。特に、CRMP2に対して、より好ましくはY479のリン酸化されたCRMP2に対してまたはS465/Y479のリン酸化されたCRMP2に対して特異的な親和性を提示する化合物を使用して実施することができる。このような適切な化合物としては、特に抗体およびアプタマーが挙げられる。好ましくは、Y479のリン酸化されたCRMP2は、抗体、好ましくは、前記に定義したようなY479のリン酸化されたCRMP2に特異的な抗体を用いて検出される。従って、前記タンパク質の存在を可視化することを可能とする適切な技術は、抗体の結合を可視化することを可能とする任意の免疫検出技術を包含する。このような検出技術は当業者には周知であり、そしてこれには免疫組織細胞化学、免疫蛍光、免疫沈降、ウェスタンイムノブロット、化学発光、比色技術および放射標識技術が挙げられる。
【0044】
本明細書において使用する「被験体」は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物(例えばげっ歯類(マウス、ラット)、ネコ、イヌまたは霊長類)を指す。好ましくは、被験体はヒトである。
【0045】
本発明はまた、中枢神経系の炎症疾病の予知、診断および/またはモニタリングにおいて使用するための前記に定義したような抗体に関する。
【0046】
処置法
本発明はまた免疫細胞の遊走を減少させるために使用するための前記に定義したような抗体に関する。特に、本発明は、免疫細胞の遊走を減少させるために使用するためのチロシン479上でリン酸化されたCRMP2に特異的な抗体に関する。
【0047】
本明細書において使用する「免疫細胞」は、自然免疫反応および適応免疫反応の細胞、特にTリンパ球およびBリンパ球、樹状細胞、単球およびナチュラルキラー細胞を包含する。好ましくは、本発明による免疫細胞はTリンパ球である。
【0048】
本発明の脈絡において、「免疫細胞の遊走」は、リンパ器官からエフェクター部位への免疫細胞の移動を指す。本明細書において使用する「免疫細胞の遊走を減少させること」は、免疫細胞の遊走速度を遅延させること、リンパ器官からエフェクター部位へと遊走する免疫細胞の数を減少させること、またはエフェクター部位への免疫細胞の遊走を阻害することを意味する。好ましくは、本発明の脈絡において、エフェクター部位は脳である。
【0049】
本発明はまた、前記に定義したような中枢神経系の炎症疾病の処置において使用するための前記に定義したような抗体に関する。
【0050】
本発明はまた、治療有効量の前記に定義したような抗体をそれを必要とする被験体に投与することを含む、中枢神経系の炎症疾病の処置法に関する。
【0051】
本明細書において使用する「処置すること」または「処置」という用語は、このような用語を適用する疾患もしくは状態、またはこのような疾患もしくは状態の1つ以上の症状を逆行、軽減、その進行を阻害、または予防することを意味する。
【0052】
本発明によると、「被験体」または「それを必要とする被験体」という用語は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物(例えばげっ歯類(マウス、ラット)、ネコ、イヌまたは霊長類)を意図する。
【0053】
「治療有効量」という用語は、任意の医学的処置に適用可能な妥当なベネフィット/リスク比で、前記疾病を処置するために十分な抗体の量を意味する。しかしながら、本発明の抗体の1日の総使用量は、妥当な医学的判断の範囲内で担当医師によって決定されることが理解される。任意の特定の患者に対する具体的な治療有効投与量レベルは、処置される疾患および疾患の重症度、使用する具体的な抗体の活性、使用する具体的な組成物、患者の年齢、体重、全般的な健康状態、性別および食事、投与時刻、投与経路、および使用する具体的な抗体の排泄速度、処置期間、使用する具体的な抗体と組み合わせてまたは同時に使用する薬物、および医学分野において周知の同様な因子を含む多種多様な因子に依存する。例えば、所望の治療効果を達成するのに必要なレベルよりも低いレベルで化合物の投与量を開始し、そして所望の効果が達成されるまで投与量を次第に増加させることは当業者の技能内において周知である。
【0054】
本発明の抗体を、中枢神経系の炎症疾病を処置するための任意の他の治療戦略と組み合わせて使用し得る。
【0055】
CXCR4レセプターのアンタゴニストおよびその使用
本発明者らは、チロシン479上のCRMP2のリン酸化が、CXCR4レセプターによって制御されたことを実証した。従って、CXCR4レセプターを阻害することで、チロシン479上のCRMP2のリン酸化が妨げられ、従って、免疫細胞の遊走が減少するだろう。
【0056】
従って、本発明はまた、前記に定義したような免疫細胞の遊走を減少させるために使用するためのCXCR4レセプターのアンタゴニストに関する。好ましくは、CXCR4レセプターのアンタゴニストは、Tリンパ球の遊走を減少させるために使用するためのものである。
【0057】
本明細書において使用する「CXCR4レセプター」または「フーシン」は、ストロマ細胞由来因子1(SDF−1、CXCL12とも呼ばれる)に特異的なα−ケモカインレセプターであるCXCケモカインレセプターを指す。
【0058】
本発明の脈絡において、「CXCR4レセプターのアンタゴニスト」は、CXCR4レセプターに結合することによって直接的に、または間接的に、CXCR4レセプターの下流のシグナルカスケードを阻害する化合物を指す。CXCR4レセプターのアンタゴニストの例としては、CXCR4レセプターに特異的な抗体、AMD070、AMD3100(またはプレリキサホル)、AMD3465、4F−ベンゾイル−TN14003(またはT140)、KRH−3955、およびビシクラムが挙げられる。
【0059】
本発明はまた、前記に定義したような中枢神経系の炎症疾病の処置において使用するための前記に定義したようなアンタゴニストに関する。
【0060】
治療有効量の前記に定義したようなCXCR4レセプターのアンタゴニストの、それを必要とする被験体への投与を含む、中枢神経系の炎症疾病の処置法もまた本発明の目的である。
【0061】
本発明のアンタゴニストは、中枢神経系の炎症疾病を処置するための任意の他の治療戦略と組み合わせて使用され得る。特に、本発明のアンタゴニストは、本発明の抗体と組み合わせて使用され得る。
【0062】
本発明は、以下の図面および実施例によってさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1は、CXCL12(100ng/ml)を用いての処理および固定から0、2、5または10分後の極性化CRMP2を有する、コラーゲンIでコーティングされたスライドに付着している、ジャーカット細胞の数(%)を示すヒストグラムを示す。
【図2】図2は、CXCL12(100ng/ml)だけを用いての処理後、またはCXCL12およびCXCR4アンタゴニストのAMD3100を用いての処理後の極性化CRMP2を有する、コラーゲンIでコーティングされたスライドに付着している、ジャーカット細胞の数(%)を示すヒストグラムを示す。
【図3】図3は、CXCL12(100ng/ml)を用いて(+)または用いずに(−)10または30分間かけて処理し、溶解し、そして細胞下分画にかけた、ジャーカット細胞の全細胞溶解液、細胞質画分または細胞骨格画分に対して実施したウェスタンブロットの結果を示す。ウェスタンブロットは、抗CRMP2−pep4抗体または抗CRMP−C−ter抗体を使用して実施された。白抜き矢印は、完全長型のCRMP2を示し、そして黒い矢印は切断型のCRMP2を示す。ウェスタンブロットはまた、抗ビメンチン抗体、抗Erk1/2抗体および抗pErk1/2抗体を用いても実施された。ウェスタンブロットの左の数字は、分子量(kDa)を示す。ウェスタンブロットの下の数字は、非処理細胞を用いて得られたシグナル強度と比較した、処理細胞を用いて得られたシグナル強度の相対値を示す。
【図4】図4は、CXCL12(100ng/ml)を用いて0、2、5、10または30分間かけて処理し、溶解し、そしてリン酸化型の濃縮にかけられた、ジャーカット細胞の全細胞溶解液、非リン酸化タンパク質(素通り画分)またはリン酸化タンパク質(溶出液)に対して実施されたウェスタンブロットの結果を示す。ウェスタンブロットは抗CRMP2−pep4抗体または抗CRMP−C−ter抗体を使用して実施された。白抜きの矢印は完全長型のCRMP2を示し、そして黒い矢印は切断型のCRMP2を示す。ウェスタンブロットはまた、抗Erk1/2抗体および抗pErk1/2抗体を用いても実施された。ウェスタンブロットの左の数字は分子量(kDa)を示す。
【図5】図5は、CXCL12(100ng/ml)を用いて0、1、2、4、6、10、15または30分間かけて処理したジャーカットT細胞の細胞溶解液に対して実施したウェスタンブロットの結果を示す。ウェスタンブロットは、抗CRMP2−pSer522抗体、抗CRMP2−pThr509/514抗体、抗CRMP−C−ter抗体、抗pErk1/2抗体および抗Erk1/2抗体を使用して実施された。ウェスタンブロットの左の数字は分子量(kDa)を示す。ウェスタンブロットの下の数字は、非処理細胞を用いて得られたシグナル強度と比較した、処理細胞を用いて得られたシグナル強度の相対値を示す。
【図6】図6は、CXCL12(100ng/ml)を用いて0、1、2、4、6、10、15または30分間かけて処理したジャーカットT細胞の細胞溶解液に対して実施したウェスタンブロットの結果を示す。ウェスタンブロットは、抗Cdk5−pTyr12抗体、抗Cdk5−pSer159抗体、抗Cdk5抗体、抗GSK−3α−pTyr279抗体、抗GSK−3β−pTyr216抗体、抗GSK−3α抗体および抗GSK−3β抗体を使用して実施された。ウェスタンブロットの左の数字は分子量(kDa)を示す。ウェスタンブロットの下の数字は、非処理細胞を用いて得られたシグナル強度と比較した、処理細胞を用いて得られたシグナル強度の相対値を示す。
【図7】図7は、残基15〜489の切断されたCRMP2の構造のリボンダイアグラムを示す。挿入図は、切断されたCRMP2の表面図を示し、これは残基R467、P470およびP473の表面露出を示す(濃灰色)。
【図8】図8は、CRMP2−GSTまたはGSTに結合したセファロース−4Bビーズと共にインキュベーションした初代Tリンパ球またはDev神経細胞の細胞溶解液に対して実施したウェスタンブロットの結果を示す。ウェスタンブロットは、抗Yes抗体、抗CRMP2抗体および抗GST抗体を使用して実施された。ウェスタンブロットの左の数字は分子量(kDa)を示す。
【図9】図9は、ATPの存在下(+)または非存在下において、活性組換えYesを用いて(+)または用いずに、および組換えCRMP2を用いて(+)または用いずに実施されたin vitroにおけるキナーゼアッセイの結果を示す。ウェスタンブロットは、抗リン酸化チロシン残基抗体および抗CRMP2抗体を使用して実施された。ウェスタンブロットの右の数字は分子量(kDa)を示す。
【図10】図10は、CXCL12(100ng/ml)を用いて0、1、2、4、6、10、15または30分間かけて処理したジャーカット細胞の細胞溶解液に対して実施したウェスタンブロットの結果を示す。ウェスタンブロットは、抗CRMP2−pTyr479抗体、抗CRMP−C−ter抗体、抗CRMP2−pep4抗体、抗Src−pTyr416抗体および抗Src抗体を使用して実施された。白抜きの矢印は完全長型のCRMP2を示し、そして黒い矢印は切断型のCRMP2を示す。ウェスタンブロットの左の数字は分子量(kDa)を示す。ウェスタンブロットの下の数字は、非処理細胞を用いて得られたシグナル強度と比較した、処理細胞を用いて得られたシグナル強度の相対値を示す。
【図11】図11は、CXCL12(100ng/ml)を用いての処理および固定の後に極性化CRMP2を有する、コラーゲンIでコーティングされたスライドに付着している、CRMP2Flag−WT(線入りの棒)またはCRMP2Flag−Y479F突然変異体(白い棒)を用いてトランスフェクションされた、ジャーカット細胞の数(トランスフェクションされた細胞数と比較した%)を示すヒストグラムを示す。CRMP2は、抗Flag抗体を用いて観察された。
【図12】図12は、トランスウェルチャンバーにおいてCXCL12の方向にトランスマイグレーションする、空ベクター(ドットの棒)プラスミド、CRMP2Flag−WT(線入りの棒)プラスミドまたはCRMP2Flag−Y479F(白い棒)プラスミドを用いてトランスフェクションされた、ジャーカット細胞の数を示すヒストグラムを示す。
【図13】図13は、器官型の海馬切片の近くにスポットされると神経組織上において遊走する、CRMP2Flag−WT(線入りの棒)プラスミドまたはCRMP2Flag−Y479F(白い棒)プラスミドを用いてトランスフェクションされた、ジャーカット細胞の数を示すヒストグラムを示す。
【0064】
実施例1
以下の実施例は、チロシン479残基上でのCRMP2のリン酸化がT細胞の遊走において重要であることを実証する。
【0065】
材料および方法
細胞および抗体
ジャーカットT細胞株を、10%ウシ胎児血清の補充されたRPMI1640中で培養した。健康ドナーの血液から選択された初代Tリンパ球を、1〜2週間かけて10%ABヒト血清およびIL2(20U/mL)の補充されたRPMI中で培養した。
【0066】
完全長型および切断型のCRMP2の両方を認識するウサギポリクローナル抗体が、Rogemond et al. (2008) J. Biol. Chem 283:14751-14761に記載されている。C−terおよびpep4の抗血清を生成するために使用されたペプチド配列は、それぞれ、CRMP2配列中のAA557〜572およびAA454〜465に局在していた。抗体を、対応する固定化されたペプチド上でのアフィニティクロマトグラフィーによって精製した。CRMP2−pSer522およびCRMP2−pTyr509/514を認識するヒツジ抗血清はKinasource Limited (Dundee, UK)製であった。本発明者らによって産生されたウサギポリクローナル抗体は、Y479上でリン酸化されたペプチドAA470〜483(CRMP2−pY479)に対して生じ、そして対応する固定されたペプチド上でのアフィニティクロマトグラフィーによって2工程法で精製した(工程1:抗非リン酸化ペプチド抗体の排除、工程2:抗リン酸化ペプチド抗体の精製)。CRMP2−Y479ペプチドおよびCRMP2−pY479ペプチドに対して実施されたELISAは、本発明者らによって産生された抗CRMP2−pY479抗体の特異性を示した。さらに、ホスファターゼCIPを用いてのT細胞溶解液の処理は、ウェスタンブロットにおける陽性シグナルをかなり減少させた。Yesキナーゼに対するウサギポリクローナル抗体はUpstate製であった。マウス抗ビメンチン/LN6抗体はCalbiochem製であった。Cell Signaling製の抗Erk抗体および抗リン酸化Erk抗体は、非リン酸化およびリン酸化p44/42MAPキナーゼ(Erk1およびErk2)を認識した。抗Cdk5抗体、抗CDK5−pTyr15抗体、抗Cdk5−pSer159抗体および抗Src抗体は、Santa Cruz Biotechnology製であった。ウサギ抗リン酸化Srcファミリー抗体はCell Signaling製であり、そしてこれはSrc、Lyn、Fyn、LCK、HckおよびYes上におけるリン酸化Tyr416を認識した。ウサギ抗GSK−3抗体はChemicon International製であった。Upstate Millipore製のマウス抗pGSK−3抗体は、活性型のGSK−3α(pTyr279)およびGSK−3β(pTyr216)を認識した。ホスホ濃縮磁気ビーズ(TALON(登録商標)PMAC)をClontechから購入した。
【0067】
プラスミドおよび構築物
CRMP2−Flag−wtプラスミドは、Rogemond et al. (2008) J. Biol. Chem 283:14751-14761に記載されている。簡潔に言うと、完全長CRMP2をPCRによって増幅し、そしてpCMV2−FLAGベクター(Sigma, l’Isle d’Abeau, France)に一方向に挿入した。
【0068】
突然変異:2工程のPCR手順を使用して、CRMP2−Y479F突然変異体を生成した。最初に、Y479−F突然変異を含むC末端フラグメント(471〜572)を、3’末端にEcoRI部位を導入するリバースプライマー、およびF(TTC)で置換されたコドンY479(TAC)を有するフォワードプライマーを使用して生成した。次に、この突然変異したフラグメントを、リバースプライマーとして2回目のPCR反応において、5’末端にHindIIIを導入する野生型フォワードプライマーと共に使用した。最終のPCR産物を、pCMV2−FlagベクターのHindIII部位およびEcoRI部位にクローニングし、そして突然変異体のDNA配列をシークエンスによって確認した。
【0069】
トランスフェクション:ジャーカットT細胞を、製造業者の指示に従って、Amaxa Nucleofector技術(Koln, Germany)を使用してCRMP2−Flag−wtプラスミド、CRMP2−Flag−Y479Fプラスミドおよび空Flagプラスミドを用いてトランスフェクションした。T細胞をトランスフェクションから18時間後に使用した。トランスフェクションされた細胞を、抗Flag抗体を用いての免疫染色によって可視化した。トランスフェクション率は、大半のFlag構築物において40〜50%に達した。
【0070】
免疫細胞化学
CRMP2型、Yesキナーゼおよび中間径フィラメントのビメンチンを、コラーゲンIでコーティングされたスライド(20μg/ml)に付着させそして処理(アセトン−20℃;10分間)により固定されたジャーカット細胞および初代T細胞に対する間接的な免疫蛍光によって検出した。細胞を特異的な抗体と共に(1時間、37℃)、その後、Alexa488または546にコンジュゲーションした抗マウスまたは抗ウサギまたは抗ヒツジIgG抗体と共に(1時間、37℃)インキュベーションし、そしてAxioplan II蛍光顕微鏡(Carl Zeiss)を使用して調べた。核対比染色を、蛍光DNAインターカレート剤である4’,6’−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI, Boehringer Mannheim)を使用して実施した。
【0071】
タンパク質相互作用アッセイ(プルダウンGST−CRMP2)
前記のように調製した100μlのジャーカット細胞溶解液を、グルタチオン−セファロース4B(Pharmacia Biotech)に結合させた(4℃で1時間)80μlのGST−CRMP2融合タンパク質または80μlのGSTタンパク質のいずれかに加えた。GST−CRMP2ビーズおよびGSTビーズを4回洗浄し(50mMトリス(pH7.4)、1mM EDTA、150mM NaCl、および0.5%NonidetP40)、そしてCRMP−2ビーズにまたはGSTビーズのみに結合したタンパク質を溶出した。GST(GSTビーズにおける)、YesおよびCRMP2(GST−CRMP2ビーズにおける)並びにGST(GSTビーズおよびGST−CRMP2ビーズにおける)をウェスタンブロットによって明らかとした。
【0072】
ウェスタンブロット
CXCL12による処理後、細胞を、ホスファターゼ阻害剤(フッ化Na5mM、ピロリン酸Na1mM、β−グリセロリン酸1mM、オルトバナジン酸1mM)およびプロテアーゼ阻害剤カクテルコンプリートTM(Roche)の補充されたホモジナイゼーション緩衝液(トリス20mM、EDTA1mM、EGTA5mM、スクロース10%、pH7.4)中に溶解した。溶解液を超音波にかけて、細胞凝集物を解離させ、そして全タンパク質をローリーアッセイ(Bio-Rad)によって測定した。タンパク質試料(10〜20μg)を還元条件下でドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)にかけ、そして遮断溶液(PBS、0.1%Tween20、5%無脂肪ドライミルク、1時間)と共に前もってインキュベーションしたニトロセルロースメンブレン(BA85; Schleicher & Schuell Microscience)に転写し、そして特異的な抗体に対してブロッティングし(一晩、4℃)、その後、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)に結合させたウサギおよびヒツジのIgG抗体と共にインキュベーションし(1時間、室温)、そして化学発光(ECL)検出システム(Covalab Lyon, France)を行なった。イムノブロットバンドの濃度定量をImage Quant (Molecular dynamics)を使用して実施し、そしてデータをあらゆる処理の前に検出された量に対する比として表現した。
【0073】
データベースおよび構造分析
予測プログラムPROSITE(http://us.expasy.org/prosite)を使用して、CRMP2上における推定チロシンキナーゼ部位を同定した。CRMP2の構造を、CRMP2のD鎖について入手可能な座標に基づいて(Stenmark et al. (2007) J. Neurochem. 101:906-917) (タンパク質データバンクエントリー2GSE)、Viewerlite/4.2 (Accelrys)を使用してモデリングした。
【0074】
CRMP2のクローニングおよび発現
ヒトCRMP−2に対するコード配列(NM_1386)を、発現ベクターpEt21b(Novagen)にサブクローニングし、その結果、N末端にヘキサヒスチジンタグを有する構築物が得られた。このプラスミドを、Escherichia coli BL21(DE3)細胞に形質転換した。発現のために、細胞を、バブル型フラスコ中の1500mLのTB培地(7%グリセロール、50μg/mlのカナマイシンおよび100μLのBREOXを含む)中で増殖させた。細胞を+37℃で、600nmにおける吸光度が2.5に到達するまで増殖させた。培養液を+18℃まで水浴中で1時間かけて冷却した。CRMP−2の発現を、0.5mmol/LのIPTGの添加によって誘導し、そして発現を+18℃で一晩かけて継続させた。細胞を遠心分離によって収集し、そしてペレットを、コンプリートEDTAフリープロテアーゼ阻害剤(Roche, Basel, Switzerland)および2000Uのベンゾナーゼの補充された溶解緩衝液(20mMトリス、500mM NaCl、1mM DTT、20%グリセロール、0.1%トリトン、10mMイミダゾール)中に懸濁した。溶液を氷上で数サイクルの間、超音波にかけた。試料を14,000gで4℃で30分間遠心分離にかけ、そして上清を、溶解緩衝液(QIAGEN)中に50%再懸濁した1.5mlのNi−NTA樹脂と共に4℃で90分間かけてインキュベーションした。Hisタグのついたタンパク質を、洗浄緩衝液(20mMトリス、500mM NaCl、1mM DTT、20%グリセロール、0.1%トリトン、20mMイミダゾール)中のNi樹脂から精製し、そして溶出緩衝液(洗浄緩衝液+150mMイミダゾール)を用いて1mlの画分ずつ溶出した。画分をSDS−PAGEによって評価した。
【0075】
in vitroにおけるYesキナーゼアッセイ
アッセイ前に、HisタグのついたCRMP2を、製造業者の指示に従って、Float-A-lyzer技術(Interchim)を使用して一晩かけて4℃で緩衝液(40mM MOPS、0.5mM EDTA、5%グリセロール)中で透析した。Yesキナーゼアッセイのために、0.6μgの透析されたHisタグのついたCRMP2を、酵素希釈緩衝液(20mM MOPS pH7、1mM EDTA、0.01%Brij、0.1%β−メルカプトエタノール、5%グリセロール)中に事前に希釈された20ngの組換え完全長ヒトYes(Millipore)と共にインキュベーションした。反応を、50μlの反応緩衝液(8mM MOPS、0.2mM EDTA、30mM MgCl2、2mM EGTA、10mM β−グリセロリン酸、0.4mM Na3VO4、0.4mM DTT、200μM ATP)中で30℃で30分間かけて行なった。反応をローディング緩衝液を用いて停止し、そして混合物をSDS−PAGEゲル上で分離した。
【0076】
トランスマイグレーションアッセイ
T細胞のトランスマイグレーションを、マイクロトランスウェルシステム(Costar Transwell支持体−A)および器官型のマウス脳培養液(B)の両方においてジャーカットT細胞を用いて実施した。
【0077】
A:トランスマイグレーションを、3回、トランスウェルシステム(ボイデンチャンバー、Costar、直径5μmの孔サイズのメンブレン)中でVincent et al. (2005) J. Immunol. 175:7650-7660に記載のように実施した。簡潔に言うと、T細胞調製物(3×105個の細胞/ウェル)を上のチャンバーに加え、そしてCXCL12を下の区画に加えた(10ng/ml)。37℃で2時間インキュベーションした後、下のチャンバー中で遊走している細胞を、顕微鏡下で計測した(少なくとも30か所の視野を調べた)。
【0078】
B:神経組織上におけるT細胞のトランスマイグレーションを、以下のように調製した海馬培養液上でアッセイした。生後(P7)C57BL6マウスの海馬を解剖し、そしてグルコース(6.5mg/ml)の補充された冷ゲイ平衡化溶液中に直ちに入れた。400μmの切片を、McIIwainティッシュチョッパーを使用して海馬の中隔側頭軸に対して垂直に切断した。切片を過剰な組織については注意深く整え、そして6つの切片を、6ウェルプレート中の30mmの半透過性メンブレンインサート(Millicell-CM, Millipore)上に置いた(各々のウェルは1mlの培養培地を含む)。培養培地は、50%最小必須培地(Gibco)、25%ハンク平衡塩溶液、25%熱不活化ウシ血清(Gibco)、1%l−グルタミン200mM(Gibco)および6.5mg/ml D−グルコースから構成された。プレートを37℃および5%CO2でインキュベーションした。培養培地を1週間に2回交換した。ex vivoにおいて生体の蛍光色素カルボキシフルオレセインサクシニミジルエステル/CFSE(1mM、5分間、37℃)を使用して染色されたジャーカットT細胞(1つの切片あたり1×106個の細胞)を、海馬切片(1週間培養液)の近くにスポットした。37℃で18時間接触させた後、切片をD−MEMを用いて十分に洗浄し、エタノールで固定し(10分間、4℃)、そして核対比染色のためにDAPIと共にインキュベーションした。蛍光顕微鏡下で計測された浸潤リンパ球の数は、CRMP2−Y479−Fを用いてトランスフェクションされたT細胞個体群において減少した。
【0079】
統計分析
2つの平均の比較における統計学的有意性は、独立スチューデントt検定を用いて試験され、0.05未満のp値を有意と考えた。遊走試験においては、遊走リンパ球の数を光学顕微鏡(1条件あたり15〜20個の顕微鏡視野、2回または3回の独立した実験)によって計測し、そしてデータを、1視野あたりの遊走リンパ球の平均数として表現した。
【0080】
結果
CXCL12は、Tリンパ球の尾足におけるCRMP2の極性化を誘導する
ケモカインとCRMP2との間の連関を定義するために、本発明者らはまず、CXCL12シグナリング下におけるジャーカットT細胞におけるCRMP2の局在を調べた。本発明者らは、完全長および切断産物のCRMP2を認識する2つの異なる抗CRMP2抗体(抗C−ter抗体および抗pep4抗体)を使用した。非処理T細胞の免疫蛍光研究は、CRMP2が、点状のドットとしてT細胞の細胞質内に見られたことを明らかとした。CXCL12による処理下において、CRMP2は、2分以内に細胞の後縁に移動し、そして10分間の処理後に大半の極性化した細胞において準排他的な尾足における局在を示した。CRMP2極性化のこのような現象は、処理から30分後にも依然として観察された。非処理ジャーカットT細胞は、細胞において非対称的なCRMP2の分布を示したが、CXCL12の処理後に1.6〜2倍の増加が観察された(図1)。同じようなCRMP2の再局在化が、抗pep4抗体染色によっても観察された。さらに、尾足へのCRMP2の分布が、ビメンチンの再局在化と同時に起こり、このビメンチンは極性化しているT細胞の後縁に迅速に再分布した。興味深いことに、CRMP2の再局在化は、CXCL12レセプター(CXCR4)のアンタゴニストであるAMD3100の存在下において非常に大きな程度で逆行し(35%の減少)、結果として、CXCL12誘導応答の特異性が確認された(図2)。これらの結果は、ケモカインが、ビメンチンと協奏して、Tリンパ球において、すなわちフレキシブルな尾足構造へと、CRMP2の動的な再局在化を誘導し得るという意見を支持した。
【0081】
CXCL12は、細胞骨格へのCRMP2の結合をモデュレーションする。
T細胞の尾足にはビメンチンおよび微小管が豊富であり(Serrador et al. (1999) Trends Cell Biol. 9:228-233)、この2つの細胞骨格エレメントは両方共に、CRMP2の結合対(Vincent et al. (2005) J. Immunol. 175:7650-7660; Gu et al. (2000) J. Biol. Chem. 275:17917-17920)並びにTリンパ球の極性化および遊走におけるアクター(Krummel et al. (2006) Nat. Immunol. 7:1143-1149)として記載されていることは周知である。このことから、本発明者らは、CXCL12が、細胞骨格へのCRMP2の結合をモデュレーションして、T細胞の運動性を促進し得ると仮定した。CXCl2による処理後(100ng/ml、10分間および30分間)、細胞下分画をジャーカットT細胞抽出物に対して実施して、細胞骨格エレメントおよび会合タンパク質を細胞質画分から単離した。ビメンチン、チューブリンPARPおよびHsp90に対する抗体を使用する細胞下画分の同定は、細胞骨格画分と細胞質画分との間のコンタミが全くないことを示した。細胞骨格画分は、中間径フィラメントのビメンチンを示したが、チューブリンは含まず、これはおそらく、チューブリンが細胞質に見られるので脱重合に起因する。その後、異なる画分を、抗CRMP2抗体を使用してウェスタンブロットにかけた。非処理細胞の全細胞溶解液において、抗C−ter抗体は、以前に記載された完全長CRMP2(62kDa)に対応するCRMP2バンド、およびより高い分子量を有するバンドを明らかとした(図3)。抗pep4抗体は主に、神経細胞において報告されているような(Rogemond et al. (2008) J. Biol. Chem. 283:14751-14761)、切断型のCRMP2に対応する58kDaバンドを認識した。抗pep4抗体の親和性は、完全長型よりも切断型に対しての方が高かった。CXCL12による処理後、その効率をErk1/2リン酸化によって評価し(図3)、CRMP2発現の差異は全細胞溶解液においては検出できなかった。しかしながら、CRMP2型の分布は調べたT細胞の区画によって異なった。完全長CRMP2およびより高い分子量バンドは細胞質画分に見られた。これらはCXCL12処理下において主な変化を示さなかった。CRMP2はまた、62kDaの完全長型および58kDaの切断型として細胞骨格画分においてより少ない程度で見られた。興味深いことに、両方の型の発現は、CXCL12による処理の後に増強された。切断されたCRMP2の大半が核に見られ、そしてCXCR4による活性化下で改変されなかったことは注記すべきである。これらの結果は、CRMP2がTリンパ球の細胞骨格区画に分布し、そしてCXCL12はこの分布を変化させ、細胞骨格エレメントとCRMP2の会合を増強する能力を有することを示した。
【0082】
CXCL12は、CRMP2のリン酸化を増加させる。
神経細胞におけるCRMP2の機能的調節は主に、特にGSK−3βキナーゼ活性およびCdk5のキナーゼ活性を介する、そのリン酸化状態に依存する(Uchida et al. (2005) Genes Cells 10:165-179)。それ故、本発明者らは、Tリンパ球において、CXCL12が、そのリン酸化のモデュレーションを通して、細胞骨格へのCRMP2の結合を改変し得るかどうかを研究した。CRMP2のリン酸化を評価するために、本発明者らは、CXCL12(100ng/ml)による処理後にジャーカットT細胞の全細胞抽出物に対してリン酸化タンパク質濃縮アッセイ(TALON(登録商標)PMAC Clonetech)を実施し、そして処理から2、5、10および30分後にウェスタンブロットによって非リン酸化画分(素通り画分)およびリン酸化画分(溶出液)に対してイムノブロットを行なった。抗C−ter抗体によって明らかとなった完全長CRMP2型は、非リン酸化画分およびリン酸化画分の両方に存在した(図4)。これに対し、切断型のCRMP2は、リン酸化タンパク質プールにおいてのみ見られ、このことは、この型が、大部分はリン酸化されていることを示す。CXCL12による処理は、CRMP2リン酸化型のレベルを急速に増加させ、処理から2分後にピークに達し、そして依然として30分後にも高かった。リン酸化タンパク質濃縮手順の効率は、リン酸化Erk1/2イムノブロットによって確認され、これは、溶出液中のリン酸化タンパク質の特異的存在、および同時に、CXCL12による処理後の増加を確認した。健康ドナーから単離した初代Tリンパ球に対して実施された類似の実験は類似の観察を示した。CXCL12に応答したCRMP2リン酸化のより正確な評価を、それぞれCdk5キナーゼおよびGSK−3キナーゼによってターゲティングされる2つの部位を認識する、抗CRMP2−pSer522抗体および抗CRMP2−pThr509/514抗体を使用して実施した(図5)。ジャーカット細胞溶解液のイムノブロットは、CRMP2−pSer522およびCRMP2−pThr509/514が、T細胞において完全長62kDaのCRMP2として存在し、そしてケモカイン処理中に種々に発現され、その効率はリン酸化Erk1/2の検出によって確認された。Ser522リン酸化は比較的低いレベルで見られたが、Thr509/514リン酸化は、4分後までに急速に減少し、そしてその後は検出できなかった。これは、Cdk5キナーゼおよびGSK−3キナーゼの活性型である、Cdk−pTyr15、Cdk5−pSer159、GSK−3α−pTyr279およびGSK−3β−pTyr216の検出によって評価される、Cdk5キナーゼおよびGSK−3キナーゼの活性と一致した(図6)。Cdk5は、Tyr15およびSer159上において安定したレベルのリン酸化を示し、Cdk5の保存された活性化レベルを反映した。これに対し、GSK−3は、GSK−3βアイソフォーム上で主に検出された脱リン酸化を示し、これは処理から4分後に始まる低下した活性を反映した。合わせて考えると、これらの結果が初めて、神経細胞において以前に記載されたように、CRMP2残基のSer522およびThr509/514がTリンパ球においてリン酸化され得ることを明らかとした。より重要なことには、それらは、CXCL12が、CRMP2のこれらの残基のリン酸化の異なるモデュレーションをもたらすシグナルカスケードをトリガーし、すなわち、Thr509/514上におけるリン酸化は正味で減少することを実証する。興味深いことに、これらのモデュレーションは主に完全長型CRMP2上で検出されたが、リン酸化タンパク質濃縮アッセイ(図4)は、ケモカイン処理後の切断型のCRMP2の強力なリン酸化を示した。これにより本発明者らは、CXCL12に対するCRMP2の応答におけるさらに他のリン酸化ターゲットの関与を疑った。
【0083】
チロシン479は、CRMP2配列における新たなリン酸化残基である。
CXCL12が、Lck、ZAP−70およびItkを含むチロシンキナーゼの連続的補充および活性化を含む、Tリンパ球におけるチロシンリン酸化カスケードをトリガーすることが知られている(Patrussi et al. (2008) Immunol. Lett. 115:75-82)。それ故、本発明者らは、CRMP2タンパク質配列を分析することによって、ケモカイン処理下でモデュレーションされる可能性のあるチロシンターゲット残基について探索した。572個のアミノ酸のデータベース研究は、残基472〜479内のリン酸化チロシン共通モチーフKxxxDxxY内に位置する、可能性ある新たなリン酸化残基としてチロシン479(Y479)を同定した(図7)。さらに、この領域の検査はまた、Y479の近くの、残基467〜473内のRxxPxxP型の推定SH3結合モチーフの存在を示した。結合タンパク質対へのこれらの配列の近づきやすさを評価するために、本発明者らは、フラグメント15〜489について入手可能な座標に基づいて、CRMP2の既知構造内(図7)におけるY479およびSH3結合モチーフの両方の位置を評価した(Stenmark et al. (2007) J. Neurochem. 101:906-917)。このCRMP2型の表面露出図は、Y479とは対照的に、推定SH3結合モチーフが露出していることを明らかとし、このことは、SH3ドメインを有するタンパク質との結合の可能性を示唆する(図7の挿入図)。SH3ドメイン結合モチーフとの相互作用は、タンパク質コンフォメーション変化を誘導し(Martinez and Serrano (1999) Nat. Struct. Biol. 6:1010-1016)、よって前記タンパク質コンフォメーションがその後のY479の露出の基礎であり得ることが示された。これらの観察は、CRMP2配列内の主要な推定リン酸化チロシンとしてのY479を示唆した。
【0084】
CRMP2のチロシンリン酸化は、SrcファミリーキナーゼYesによって行なわれ、そしてこれはケモカイン処理下で増加する。
潜在的なリン酸化可能な部位Y479に近い推定SH3結合モチーフの存在の観点から、そのSH3ドメインを通したCRMP2とチロシンキナーゼとの間の可能性ある相互作用を研究した。これは、活性コンフォメーションで折りたたまれたままであるいくつかのタンパク質SH3ドメインを有するメンブレンアレイを使用して実施された。10個の異なるリンパ球チロシンキナーゼ(エーベルソンキナーゼ(Abl)、Srcファミリーキナーゼ(Lck、Yes、c−Src、Fyn、Hck、Blk)およびTecファミリーキナーゼ(Itk、Txk、Blk)を含む)がこのアレイに存在した。Hisタグのついた組換えCRMP2のハイブリダイゼーション後、タンパク質−タンパク質相互作用を、抗His抗体を使用して可視化し、そしてスポット強度は相互作用の強度を明らかとした(表1)。
【0085】
表1:SH3タンパク質−CRMP2の相互作用の同定
CRMP2−His組換えタンパク質を、製造業者の指示に従って、38個のタンパク質のSH3ドメインを用いて2回スポットされたメンブレン(TranSignal TM SH3ドメインアレイI-Panomics)と共にインキュベーションした。抗His抗体は、いくつかのチロシンキナーゼタンパク質のSH3ドメインを含む、複数のSH3ドメインとCRMP2との会合を明らかとした。スポット強度(−から+++まで)は、リガンドCRMP2に対するSH3ドメインの結合親和性を示し、そしてCRMP2についての強力なチロシンキナーゼ候補としてのYesを明らかとした。
【0086】
【表1】
【0087】
Yesキナーゼは、CRMP2への強い結合を示したが、BlkおよびAblは弱いシグナルを示した。さらに、Vav1、PLCγ、ITSNおよびPI3βに属する4つの非キナーゼタンパク質SH3ドメインもまた、CRMP2への強い結合を示した。興味深いことに、PLCγおよびITSNは以前に、CRMP2に対する結合対として観察されている(Quinn et al. (2003) J. Neurosci. 23:2815-2823; Buttner et al. (2005) Biochemistry 44:6938-6947)。その後、本発明者らは、CRMP2リン酸化についてのより強力なチロシンキナーゼ候補であるYesに焦点を当てた。
【0088】
Yes/CRMP2相互作用をいくつかのアプローチによって評価した。まず、これらのタンパク質の局在を、コラーゲンIでコーティングされたカバーガラスに付着させ、そしてその後、CXCL12(100ng/ml、5分間)で処理した、初代Tリンパ球およびジャーカットT細胞上で評価した。抗Yes抗体および抗pep4抗体を用いて実施された免疫蛍光は、特に極性化したT細胞の尾足における、CRMP2およびYesの共分布を示した。Yes/CRMP2の相互作用を次に、初代Tリンパ球および神経細胞(Dev細胞株)(CRMP2はまた、中枢神経系(CNS)における運動性にも関与しているため)からの細胞溶解液を使用してGSTプルダウンアッセイによって調べた(図8)。グルタチオン−セファロースビーズ上に固定されたCRMP2を細胞溶解液と共にインキュベーションした。両方の細胞型からの溶出液に対して実施されたウェスタンブロットは、CRMP2−GSTと会合したYesタンパク質の存在は示したが、GSTのみと会合したものは示さなかった。合わせて考えると、これらの結果は、CRMP2に対する強力な結合対としてのYesキナーゼを規定した。この相互作用の機能的意義を評価するために、in vitroにおけるキナーゼアッセイを、活性組換えヒトYesキナーゼおよび基質としてのHisタグのついたCRMP2を使用して実施した(図9)。リン酸化を、イムノブロットによって抗リン酸化チロシン抗体を使用して検出した。対照はCRMP2の非存在下において実施され、これはYesの自己リン酸化を示した。CRMP2のリン酸化に対応するバンドは、ATPの存在下においてのみ検出された。タンパク質リン酸化の結果として、このバンドは、分子量の僅かな増加を示した。
【0089】
T細胞におけるチロシンリン酸化型のCRMP2の存在を確認するために、リン酸化残基Tyr479を含むCRMP2配列のフラグメント(AA470〜483)に対するポリクローナル抗体を生じさせた。この抗体を用いてのイムノブロットは、完全長および58kDaの切断されたタンパク質の両方として検出された、Tリンパ球におけるCRMP2−pTyr479の存在を明らかとした。
【0090】
CXCL12(100ng/ml;0、1、2、4、6、10、15、30分間)を用いて処理したジャーカットT細胞におけるCRMP2−pTyr479の調査は、Tyr479リン酸化の増加を示し(図10)、これは主に処理から8〜14分後に観察された。CRMP2−pTyr479の増加した発現は、CRMP2−Thr509/514の減少と同時に起こり、これはその依存性を示唆する。Tyr479リン酸化のこのピークは、Yesを含むリン酸化Srcファミリーメンバーを認識する抗体である、抗Src−pTyr416抗体を使用したイムノブロットによって示されるように、この時点においてSrc−ファミリーキナーゼの活性化と相関した。その後、免疫蛍光を、リン酸化型および非リン酸化型のCRMP2に対する抗体を使用して、CXCL12で処理した(15分間)ジャーカット細胞に対して実施した。CRMP2−pTyr479についての染色は主に、Tリンパ球における極性化した分布を伴った。ビメンチンとの共局在は、それぞれビメンチンと会合しているまたは会合していないのいずれかである抗pep4抗体および抗C−ter抗体によって認識されるCRMP2型と比較して、リン酸化されたCRMP2−Tyr479は主に、尾を引く極においてビメンチンと共局在することを示した。合わせて考えると、これらの結果は、CXCL12シグナリングによってモデュレーションされ、細胞骨格エレメントと共局在し、そしてSrc−ファミリーキナーゼYesによってターゲティングされ得る、新たな型のリン酸化CRMP2を同定した。
【0091】
CRMP2−Tyr479リン酸化は、ケモカインにより誘導されるT細胞の極性化および遊走に関与する。
Tyr479上におけるCRMP2リン酸化の機能的意義を評価するために、本発明者らは、完全長CRMP2配列上における突然変異Y479−Fを工学操作した。その後、T細胞の極性化に対するTyr479リン酸化障害の作用を、FlagのタグのついたCRMP2−wtおよびCRMP2−Y479−F突然変異体を用いて一過性にトランスフェクションされたジャーカットT細胞において分析した。トランスフェクションから24時間後、T細胞をコラーゲンIでコーティングされたスライドに付着させ、その後、CXCL12で処理し、そして蛍光顕微鏡によって調べた。Flag陽性免疫染色によって可視化されるような、トランスフェクションされたT細胞におけるCRMP2の極性化を、ビメンチンネットワークの共局在化に基づいて調べた。これにより本発明者らは、CRMP2−wtまたはCRMP2−Y479−FのいずれかでトランスフェクションされたFlag陽性T細胞の極性化を評価することが可能となった(全トランスフェクション細胞に対する比率として表現)。CRMP2−wtを用いてトランスフェクションされた非処理ジャーカットT細胞個体群は、約28%の自発的に極性化した細胞を示したが、これは、CRMP2−Y479−F突然変異体を用いてトランスフェクションされたT細胞においては明らかに減少した(図11)。CXCL12による処理後、ビメンチンは、CRMP2−wtでトランスフェクションされたT細胞においては尾足に迅速に再分布した。これに対し、CRMP2−Y479−Fでトランスフェクションされた細胞は、明らかにあまり極性化しなかった(図11)。さらに、CXCL12による処理後の極性化した細胞数の増加は、CRMP2−wtよりもCRMP2−Y479−Fを用いてトランスフェクションされたジャーカットT細胞においての方がより少なく(それぞれ42%vs31%)(図11)、従って、T細胞の極性化に対するTry479リン酸化の影響が確認された。これらの結果は明らかに、Tリンパ球の極性化におけるCRMP2−Tyr479リン酸化の役割を示した。
【0092】
T細胞の極性化は遊走にとって必要条件であるので、本発明者らはさらに、T細胞の遊走に対するTyr479リン酸化の影響を評価した。従って、本発明者らはまず、トランスウェルチャンバーにおいてトランスマイグレーションアッセイを実施することによって、CXCL12の方へと、トランスフェクションされたジャーカットT細胞が遊走する能力を評価した。図12に示したように、CRMP2−Y479−Fでトランスフェクションされた細胞の遊走速度は、CRMP2−wtおよび対照細胞(空ベクター)と比較して劇的に減少した。血管を横切るために必要であるT細胞のトランスマイグレーションを超えて、侵入組織内における遊走もまた、特にCNS内においてはキーポイントである(CNSではCXCL12およびその同族レセプターが構成的に発現されている)。それ故、本発明者らは、Tyr479リン酸化が、神経組織内におけるT細胞の遊走に対して影響を及ぼすかどうかを、マウス海馬器官型培養液を使用して調べた。トランスフェクションされたジャーカットT細胞(40〜50%のトランスフェクション効率)を、生体の色素のCFSEで染色することにより、神経組織上および神経組織中の両方においてそれらを容易に可視化した。その後、細胞を脳切片の近くにスポットし、そして18時間のインキュベーション後に計測した。CRMP2−Y479−Fでトランスフェクションされた細胞は、野生型のトランスフェクション細胞と比較して、神経細胞上を移動する低下した能力を示した(図13)。これらの結果は、神経組織内のT細胞の遊走過程におけるCRMP2−Tyr479リン酸化の役割を実証した。
【0093】
従って、本発明者らは、チロシン479上のリン酸化がT細胞の遊走に対して影響を及ぼし、従って、CNSの炎症疾病の予測マーカーとして使用することができることを実証した。
【0094】
実施例2
本発明者らは、TCR刺激によって媒介されるTリンパ球の活性化が、CRMP2、より特定すると、国際出願WO2003/022298に記載の抗ペプチド4抗体による切断型のCRMP2の検出の増加をもたらしたことを示した。
【0095】
興味深いことに、これらの抗体は、カラムで濃縮されたリン酸化型のCRMP2を強く認識した。さらに、S465のリン酸化されたCRMP2は、CNSに記載されたリン酸化型のCRMP2の中で主要なリン酸化型のCRMP2である。
【0096】
従って、これらの結果は、切断されたS465リン酸化CRMP2の検出が、TCR刺激によって媒介されるTリンパ球の活性化に関連し、そしてこれをTCR活性化の末梢マーカーとして使用することができることを示唆する。
【0097】
実施例3
本発明者らは、HTLV−1感染に関連した多発性硬化症または脊髄症を患う患者において、活性化Tリンパ球の亜個体群(CD69+および/またはHLA−DR+)が、健康被験体よりもより強くCRMP2を発現したことを示した。
【0098】
本発明者らは、この改変が、Tリンパ球の遊走能の増加に関連することを示した。さらに、この増加は、抗CRMP2抗体を使用して阻害され得る。
【0099】
CRMP2の高い発現は、抗ペプチド4抗体を使用して検出された。これらの抗体は特にリン酸化および切断された型のCRMP2を認識するので、この増加した検出はおそらく、CRMP2リン酸化の改変、特に、CRMP2のS465リン酸化に起因する。
【0100】
従って、これらの結果は、CRMP2の切断およびTリンパ球におけるリン酸化CRMP2の過剰発現が(TCR刺激を介するセリン465上およびケモカイン活性化を介するチロシン479上)、神経炎症過程の末梢マーカーであり、そしてこれを中枢神経系の炎症疾病の早期診断、予知またはモニタリングに使用することができることを実証する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体における中枢神経系の炎症疾病のin vitroにおける予知、診断および/またはモニタリングのための方法であって、前記方法は、被験体からの免疫系細胞の試料中における、チロシン479(Y479)上でリン酸化されたコラプシン応答媒介タンパク質2(CRMP2)の存在を検出することを含み、Y479のリン酸化されたCRMP2の存在の検出は、中枢神経系の炎症疾病を示す、前記方法。
【請求項2】
前記のY479のリン酸化されたCRMP2が切断型である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記のY479のリン酸化されたCRMP2が、セリン465(S465)上でさらにリン酸化されている、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記のY479のリン酸化されたCRMP2が、Y479のリン酸化されたCRMP2に特異的な抗体を用いて検出される、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記の中枢神経系の炎症疾病が、髄膜炎、脳炎、脊髄炎、脳脊髄炎、脳炎(encephalititis)または脊髄症、多発性硬化症、パーキンソン病およびアルツハイマー病を伴うウイルス感染または細菌感染からなる群より選択される、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
チロシン479上でリン酸化されたCRMP2に特異的な抗体。
【請求項7】
セリン465上でリン酸化されたCRMP2に特異的な抗体。
【請求項8】
中枢神経系の炎症疾病の予知、診断および/またはモニタリングにおいて使用するための請求項6または7記載の抗体。
【請求項9】
免疫細胞の遊走を減少させるために使用するための請求項6または7記載の抗体。
【請求項10】
中枢神経系の炎症疾病の処置において使用するための請求項6または7記載の抗体。
【請求項11】
前記の中枢神経系の炎症疾病が、髄膜炎、脳炎、脊髄炎、脳脊髄炎、脳炎(encephalititis)または脊髄症、多発性硬化症、パーキンソン病およびアルツハイマー病を伴うウイルス感染または細菌感染からなる群より選択される、請求項10記載の使用のための抗体。
【請求項12】
チロシン479および/またはセリン465上でリン酸化されたCRMP2を検出するための請求項6または7において定義したような抗体の使用。
【請求項13】
さらに切断型であるCRMP2を検出するための、請求項12記載の使用。
【請求項14】
免疫細胞の遊走を減少させるために使用するためのCXCR4レセプターのアンタゴニスト。
【請求項15】
中枢神経系の炎症疾病の処置において使用するための、請求項14記載の使用のためのアンタゴニスト。
【請求項16】
前記の中枢神経系の炎症疾病が、髄膜炎、脳炎、脊髄炎、脳脊髄炎、脳炎(encephalititis)または脊髄症、多発性硬化症、パーキンソン病およびアルツハイマー病を伴うウイルス感染または細菌感染からなる群より選択される、請求項15記載の使用のためのアンタゴニスト。
【請求項1】
被験体における中枢神経系の炎症疾病のin vitroにおける予知、診断および/またはモニタリングのための方法であって、前記方法は、被験体からの免疫系細胞の試料中における、チロシン479(Y479)上でリン酸化されたコラプシン応答媒介タンパク質2(CRMP2)の存在を検出することを含み、Y479のリン酸化されたCRMP2の存在の検出は、中枢神経系の炎症疾病を示す、前記方法。
【請求項2】
前記のY479のリン酸化されたCRMP2が切断型である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記のY479のリン酸化されたCRMP2が、セリン465(S465)上でさらにリン酸化されている、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記のY479のリン酸化されたCRMP2が、Y479のリン酸化されたCRMP2に特異的な抗体を用いて検出される、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記の中枢神経系の炎症疾病が、髄膜炎、脳炎、脊髄炎、脳脊髄炎、脳炎(encephalititis)または脊髄症、多発性硬化症、パーキンソン病およびアルツハイマー病を伴うウイルス感染または細菌感染からなる群より選択される、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
チロシン479上でリン酸化されたCRMP2に特異的な抗体。
【請求項7】
セリン465上でリン酸化されたCRMP2に特異的な抗体。
【請求項8】
中枢神経系の炎症疾病の予知、診断および/またはモニタリングにおいて使用するための請求項6または7記載の抗体。
【請求項9】
免疫細胞の遊走を減少させるために使用するための請求項6または7記載の抗体。
【請求項10】
中枢神経系の炎症疾病の処置において使用するための請求項6または7記載の抗体。
【請求項11】
前記の中枢神経系の炎症疾病が、髄膜炎、脳炎、脊髄炎、脳脊髄炎、脳炎(encephalititis)または脊髄症、多発性硬化症、パーキンソン病およびアルツハイマー病を伴うウイルス感染または細菌感染からなる群より選択される、請求項10記載の使用のための抗体。
【請求項12】
チロシン479および/またはセリン465上でリン酸化されたCRMP2を検出するための請求項6または7において定義したような抗体の使用。
【請求項13】
さらに切断型であるCRMP2を検出するための、請求項12記載の使用。
【請求項14】
免疫細胞の遊走を減少させるために使用するためのCXCR4レセプターのアンタゴニスト。
【請求項15】
中枢神経系の炎症疾病の処置において使用するための、請求項14記載の使用のためのアンタゴニスト。
【請求項16】
前記の中枢神経系の炎症疾病が、髄膜炎、脳炎、脊髄炎、脳脊髄炎、脳炎(encephalititis)または脊髄症、多発性硬化症、パーキンソン病およびアルツハイマー病を伴うウイルス感染または細菌感染からなる群より選択される、請求項15記載の使用のためのアンタゴニスト。
【図7】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2012−533079(P2012−533079A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520111(P2012−520111)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際出願番号】PCT/IB2009/054212
【国際公開番号】WO2011/007209
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(591100596)アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル (59)
【出願人】(596096180)ユニベルシテ・クロード・ベルナール・リヨン・プルミエ (16)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際出願番号】PCT/IB2009/054212
【国際公開番号】WO2011/007209
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(591100596)アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル (59)
【出願人】(596096180)ユニベルシテ・クロード・ベルナール・リヨン・プルミエ (16)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]