説明

中空シリコーン系微粒子とフルオロアルキル基を有する界面活性剤からなるコーティング組成物

【課題】 本発明のコーティング組成物は、高い空隙率を持ち低い屈折率を示し、生産性も良く、壊れ難く、しかも粒子径分布の狭い体積平均粒子径が1μ以下の中空シリコーン系微粒子とフルオロアルキル基を有する界面活性剤とからなり、透明な合成樹脂フィルムやガラスなどの基材表面に加工性、透明性、耐候性、耐水性、防曇性、耐擦傷性に優れる被膜を形成することが可能なコーティング組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】 有機溶媒を分散媒とし、中空シリコーン系微粒子と、フルオロアルキル基を有する界面活性剤とからなるコーティング組成物により、透明な合成樹脂フィルムやガラスなどの基材表面に加工性、透明性、耐候性、耐水性、防曇性、耐擦傷性に優れる被膜を形成することが可能なコーティング組成物を提供することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング組成物に関するものである。更に詳しくは、合成樹脂フィルムやガラスなどの透明基材の表面に塗布し、加工性、透明性、耐候性、耐水性、防曇性、耐擦傷性に優れるコーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、合成樹脂成形物やガラス等に適用される、コロイダルシリカと各種界面活性剤を含有する表面塗布型コーティング組成物が提案されている(特許文献1および2)。これらのコーティング組成物は、塗布性や防曇性などにおいては優れた効果を示すものの、塗膜の耐候性や透明性、耐擦傷性などに対しては十分な効果は得られていなかった。
【特許文献1】特公昭63−45432号公報
【特許文献2】特開平5−59300号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明のコーティング組成物は、高い空隙率を持ち低い屈折率を示し、生産性も良く、壊れ難く、しかも粒子径分布の狭い1μm以下の粒子径を有する中空シリコーン系微粒子とフルオロアルキル基を有する界面活性剤とからなり、透明な合成樹脂フィルムやガラスなどの基材表面に加工性、透明性、耐候性、耐水性、防曇性、耐擦傷性に優れる被膜を形成することが可能なコーティング組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意検討を重ねた結果、有機高分子粒子および/または有機溶剤からなる粒子を、シリコーン系化合物で被覆したコアシェル粒子の有機高分子および/または有機溶剤を除去して得られる中空シリコーン系微粒子をフルオロアルキル基を有する界面活性剤とともに使用することにより、目的の加工性、透明性、耐候性、耐水性、防曇性、耐擦傷性に優れる透明な被膜を有する基材が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0005】
すなわち本発明は、有機溶媒を分散媒とし、体積平均粒子径が0.001〜1μmの中空シリコーン系微粒子と、フルオロアルキル基を有する界面活性剤とからなるコーティング組成物に関する。
【0006】
好ましい実施形態は、前記中空シリコーン系微粒子が、SiO4/2単位、RSiO3/2単位(式中、Rは、炭素数1乃至18のアルキル基またはハロアルキル基、炭素数6乃至24の芳香族基、ビニル基、γ−(メタ)アクリロキシプロピル基又はSH基をもつ有機基の少なくとも1種を示す)およびRSiO2/2単位(式中、Rは、炭素数1乃至18のアルキル基またはハロアルキル基、炭素数6乃至24の芳香族基、ビニル基、γ−(メタ)アクリロキシプロピル基又はSH基をもつ有機基の少なくとも1種を示す)からなる群より選ばれる1単位又は2単位以上からなり、RSiO2/2単位の割合が20モル%以下、RSiO3/2単位の割合が50モル%以上であるシリコーン系化合物からなる中空粒子であることを特徴とする請求項1に記載のコーティング組成物に関する。
【0007】
好ましい実施形態は、前記中空シリコーン系微粒子が、下記工程(a)-工程(b)から得られる中空シリコーン系微粒子であることを特徴とする、請求項1〜2のいずれか1項に記載のコーティング組成物に関する。
(a)有機高分子微粒子および/または有機溶剤からなる粒子をシリコーン系化合物により被覆したコアシェル粒子を製造する工程
(b)コアシェル粒子中の有機高分子粒子および/または有機溶剤からなる粒子を除去して中空シリコーン系微粒子を製造する工程。
【0008】
さらには、基材と、該基材上に設けられた透明被膜とを有し、該透明被膜が、請求項1〜3のいずれか1項に記載のコーティング組成物を用いて形成されてなることを特徴とする透明被膜付基材に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のコーティング組成物は、高い空隙率を持ち低い屈折率を示し、生産性も良く、壊れ難く、しかも粒子径分布の狭い1μm以下の粒子径を有する中空シリコーン微粒子とフルオロアルキル基を有する界面活性剤とからなり、該コーティング組成物により、加工性、透明性、耐候性、耐水性、防曇性、耐擦傷性に優れる被膜が表面に形成された基材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0011】
本発明に使用する中空シリコーン系粒子の体積平均粒子径は0.001〜1.0μmであればよいが、0.005〜0.5μmの範囲であることが好ましく、更には0.01〜0.2μmの範囲であることがより好ましい。0.001μmより小さい粒子や1.0μmより大きな粒子を合成することは可能であるが、安定的に合成することは難しい傾向がある。
【0012】
中空粒子を構成するシリコーン系化合物は、SiO4/2単位、RSiO3/2単位(式中、Rは、炭素数1乃至18のアルキル基またはハロアルキル基、炭素数6ないし24の芳香族基、ビニル基、γ−(メタ)アクリロキシプロピル基又はSH基をもつ有機基の少なくとも1種を示す)およびRSiO2/2単位(式中、Rは、炭素数1乃至18のアルキル基またはハロアルキル基、炭素数6乃至24の芳香族基、ビニル基、γ−(メタ)アクリロキシプロピル基又はSH基をもつ有機基の少なくとも1種を示す)からなる群より選ばれる、1単位又は2単位以上からなることが好ましい。
【0013】
Rの具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、オクタデシル基などの炭素数1乃至18のアルキル基;パーフルオロアルキル基などの炭素数1乃至18のハロアルキル基;フェニル基などの炭素数6ないし24の芳香族基;ビニル基;γ−メタクリロキシプロピル基などのγ−(メタ)アクリロキシプロピル基をもつ有機基;γ−メルカプトプロピル基などのSH基をもつ有機基、などが挙げられる。複数のRは全て同じであってもよく、各々異なっていても良い。
【0014】
前記SiO4/2単位の原料としては、例えば、四塩化ケイ素、テトラアルコキシシラン、水ガラスおよび金属ケイ酸塩からなる群より選択される1種または2種以上が挙げられる。テトラアルコキシシランの具体例としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、およびそれらの縮合物などが挙げられる。
【0015】
前記RSiO3/2単位の原料としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどを挙げることができる。
【0016】
前記RSiO2/2単位の原料としては、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、エチルフェニルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、エチルフェニルジエトキシシランなど、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン(D6)、トリメチルトリフェニルシクロトリシロキサンなどの環状化合物のほかに、直鎖状あるいは分岐状のオルガノシロキサンや、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン等があげられる。
【0017】
前記各単位の原料は1種または2種以上を組み合わせて適宜使用できる。
【0018】
本発明では、中空シリコーン系微粒子に柔軟性を持たせたい場合等にRSiO2/2単位を少量混入することができる。コアシェル粒子におけるシリコーン系化合物中のRSiO2/2単位の割合は20モル%以下であることが好ましく、さらには10モル%以下であることがより好ましい。RSiO2/2単位の割合が20モル%を越えると中空シリコーン系微粒子が柔軟になり過ぎて形状保持性に問題が起こる場合がある。なお、シリコーン系化合物中のRSiO2/2単位の割合の下限値は0モル%である。
【0019】
本発明のシリコーン系化合物中のRSiO3/2単位の割合は、コアシェル粒子の粒子径分布の安定性の観点から、50〜100モル%であることが好ましく、更には75〜100モル%であることがより好ましい。
【0020】
本発明において、シリコーン系化合物中のSiO4/2単位の割合は、中空シリコーン微粒子の形状保持性と相溶性のバランスの観点から、0〜50モル%であることが好ましく、更に好ましくは0〜25モル%であり、特に好ましくは0〜10モル%である。SiO4/2単位の割合が50モル%を越えると基材との密着性が低下して被膜中で微粒子が凝集し、被膜つき基材の透明性が大きく低下することがある。
【0021】
本発明の中空シリコーン粒子は、有機高分子粒子および/または有機溶剤からなる粒子を、シリコーン系化合物により被覆したコアシェル粒子中の有機高分子および/または有機溶剤を除去することにより製造することが出来る。
【0022】
本発明の有機高分子粒子の組成については限定されるものではなく、例えば、ポリアクリル酸ブチル、ポリブタジエン系、アクリル酸ブチル−ブタジエン共重合体等に代表される軟質重合体に限られず、アクリル酸ブチル−スチレン共重合体、アクリル酸ブチル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸ブチル−スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体等の硬質重合体でも問題なく使用できる。後の凝固工程における除去性の観点から軟質重合体が好ましく、ポリアクリル酸ブチルがより好ましい。
【0023】
本発明の有機高分子粒子の製造法は、特に限定されず、乳化重合法、マイクロサスペンジョン重合法、ミニエマルション重合法、水系分散重合法など公知の方法が使用できる。なかでも、粒子径の制御が容易であり、工業生産にも適する点から、乳化重合法により製造することが特に好ましい。
【0024】
前記有機高分子粒子の重合にはラジカル重合開始剤が用いられうる。ラジカル重合開始剤の具体例としては、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、パラメンタンハイドロパーオキサイドなどの有機過酸化物、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの無機過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリルなどのアゾ化合物などが挙げられる。上記重合を、例えば、硫酸第一鉄−ホルムアルデヒドスルフォキシル酸ソーダ−エチレンジアミンテトラアセティックアシッド・2Na塩、硫酸第一鉄−グルコース−ピロリン酸ナトリウム、硫酸第一鉄−ピロリン酸ナトリウム−リン酸ナトリウムなどのレドックス系で行うと、低い重合温度でも効率的に重合を完了することができる。
【0025】
本発明の有機高分子粒子は、後の段階で行なわれる有機高分子の除去を有機溶媒により行う場合を考慮すると非架橋高分子であることが好ましく、有機高分子粒子の分子量は低い方が好ましい。有機溶剤への溶解性の観点から、重量平均分子量が30000未満であることが好ましく、10000未満であることがより好ましい。有機高分子粒子の重量平均分子量を低くするためには、例えば、連鎖移動剤の使用、高い重合温度に設定、多量の開始剤を使用するなど種々の手段を適宜組み合わせて選択することができる。連鎖移動剤としては、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン等が使用できる。特に、生成する有機高分子粒子の分子量を低下させる観点から、t−ドデシルメルカプタンを有機高分子粒子の原料となる単量体100重量部あたり5〜50重量部使用するのが好ましく、10〜40重量部使用するのがより好ましく、20〜35重量部使用するのが特に好ましい。
【0026】
有機高分子粒子の重量平均分子量の下限値は特に制限されるものではないが、合成の難易度の点から、概ね2000程度である。なお、重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による分析(ポリスチレン換算)によって測定できる。
【0027】
本発明においては、有機高分子粒子の粒子径分布を狭くするためにシード重合法を利用することもできる。なお、ラテックス状態の有機高分子粒子やコアシェル粒子の体積平均粒子径は、光散乱法または電子顕微鏡観察から求められうる。体積平均粒子径および粒子径分布は、例えば、リード&ノースラップインスツルメント(LEED&NORTHRUP INSTRUMENTS)社製のMICROTRAC UPAを用いることにより測定することができる。
【0028】
本発明においては、有機高分子粒子および/または有機溶剤からなる粒子がコアシェル粒子の製造におけるコアとして用いられうる。本発明では最終的に有機高分子および/または有機溶剤を除去するので、有機高分子粒子に対し有機溶剤を併用しても良く、各々の単独使用でも良い。本発明における有機溶剤は、水に溶けず、乳化剤により微粒子を形成できるものであればよく、具体例としては、トルエン、ベンゼン、キシレン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。前記粒子において、有機高分子粒子および有機溶剤を併用する場合の使用割合については、重量比で有機高分子粒子/有機溶剤が100/0〜1/99の範囲が好ましい。
【0029】
本発明では、有機高分子粒子および/または有機溶剤との合計量と、シリコーン系化合物との重量比率は必ずしも制限されるものではないが、2/98〜95/5であることが好ましく、さらには10/90〜50/50がより好ましい。当該比率が2/98より小さいと中空シリコーン系微粒子の空隙率が低くなり過ぎる場合がある。また、逆に比率が95/5より大きいと中空シリコーン系微粒子の強度が不足して加工中に壊れる場合がある。
【0030】
本発明では、例えば、有機高分子粒子および/または有機溶媒と、酸触媒を含む5〜120℃の水に対し、乳化剤、SiO4/2単位の原料、RSiO3/2単位の原料、若しくはRSiO2/2単位の原料と水の混合物をラインミキサーやホモジナイザーで乳化した乳化液を一括あるいは連続的に追加することにより、シリコーン系化合物で被覆されたコアシェル粒子を得ることができる。乳化液の追加は一括でも連続でも構わない。時間的には長くなるがラテックス状粒子の安定性や粒子径分布を重視するなら連続追加を採用することが好ましい。乳化液の追加前に酸触媒を添加して、直ちに加水分解と縮合反応が進む条件で連続追加を行うと、コアシェル粒子は時間とともに大きく成長し、通常のシード重合のように、狭い粒子径分布を示すものを得ることができる。30分ないし1時間の比較的短い時間の連続追加を行うと、比較的良い生産性と狭い粒子径分布を両立することもできる。
【0031】
本発明に使用できる乳化剤としては、アニオン系乳化剤やノニオン系乳化剤が好適に使用されうる。アニオン系乳化剤の具体例としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸ナトリウム、オレイン酸カリウムなどが挙げられるが、特にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好適に用いられる。ノニオン系乳化剤の具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルやポリオキシエチレンラウリルエーテルなどが挙げられる。
【0032】
本発明に用いることのできる酸触媒は、例えば、脂肪族スルホン酸、脂肪族置換ベンゼンスルホン酸、脂肪族置換ナフタレンスルホン酸などのスルホン酸類、および硫酸、塩酸、硝酸などの鉱酸類が挙げられる。これらの中では、オルガノシロキサンの乳化安定性に優れる観点から、脂肪族置換ベンゼンスルホン酸が好ましく、n−ドデシルベンゼンスルホン酸が特に好ましい。
【0033】
コアシェル粒子を製造する際の反応のための加熱は、適度な重合速度が得られるという点で5〜120℃が好ましく、20〜80℃がより好ましい。
【0034】
このようにして得られたコアシェル粒子のラテックスに有機溶剤または無機塩の水溶液を加えて固形分と水分とを分離した後、コアシェル粒子中の有機高分子および/または有機溶剤を除去することにより、本発明の中空シリコーン粒子を得ることが出来る。
ラテックスの固液分離に有機溶剤を使用する場合は、固液分離と有機高分子および/または有機溶剤の除去を同時に行うことも出来る。
【0035】
コアシェル粒子中から有機高分子および/または有機溶剤を除去する方法としては、有機溶剤を用いる方法が好ましい。コアシェル粒子中の有機高分子および/または有機溶剤を除去するのに使用される有機溶剤としては、コアになる有機高分子および/または有機溶剤を溶解し、シェルになるシリコーン系化合物を溶解しないものが好ましい。具体例としては、アセトン、トルエン、ベンゼン、キシレン、n−ヘキサン、メタノール等が挙げられる。
【0036】
本発明に使用するフルオロアルキル基を有する界面活性剤としては特に限定されず、フルオロアルキル基を有する非イオン性、アニオン性、カチオン性および両性界面活性剤がいずれも使用可能である。具体的には、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキルペタイン、パーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物などを挙げることが出来る。
【0037】
本発明のコーティング組成物は、中空シリコーン系微粒子が分散し易く、かつフルオロアルキル基を有する界面活性剤と相溶する溶剤に中空シリコーン系微粒子を分散させ、この分散液とフルオロアルキル基を有する界面活性剤として使用する界面活性剤とを混合することにより得られる。溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノールなどのアルコール系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤等が挙げられる。
【0038】
このコーティング組成物を用いてコート法、スピナー法、ディップ法、スプレー法等を用いて一定膜厚みの被膜を形成することが出来る。中でも、膜厚制御のし易さの観点から、コート法が好ましい。コーティング組成物中の中空シリコーン系微粒子とフルオロアルキル基を有する界面活性剤の合計量に対して、界面活性剤の量が0.1〜40wt%、好ましくは0.2〜10wt%の範囲であることが望ましい。界面活性剤の量が40wt%より多い場合には、得られる塗膜の透明性が低下する傾向を示し、0.1wt%より少ない場合には、塗膜の耐水性や防曇性、耐擦傷性が著しく低下するので好ましくない。なお、本発明のコーティング組成物では、前記2種の成分以外の成分も含有することが出来る。
【0039】
本発明の、中空シリコーン系微粒子とフルオロアルキル基を含有する界面活性剤を含有するコーティング組成物により、加工性、透明性、耐候性、耐水性、防曇性、耐擦傷性に優れる被膜が表面に形成された基材を提供することができ、電気製品、光学製品、建材等の分野で種々の用途に広く使用できる。
【実施例】
【0040】
本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されない。なお、以下の実施例および比較例における測定および試験はつぎのように行った。
【0041】
[体積平均粒子径]
有機高分子粒子、コアシェル粒子の体積平均粒子径をラテックスの状態で測定した。測定装置として、リード&ノースラップインスツルメント(LEED&NORTHRUP INSTRUMENTS)社製のMICROTRAC UPAを用いて、光散乱法により体積平均粒子径(μm)を測定した。
【0042】
[有機高分子の重量平均分子量]
有機高分子の重量平均分子量は、GPC測定データよりポリスチレン標準試料で作成した検量線を用いて換算して求めた。
【0043】
[コアシェル粒子の確認]
ラテックス状態のコアシェル粒子の確認は、ラテックスをエポキシ樹脂に溶解・硬化後、ルテニウムで染色しTEM観察することにより行った。
【0044】
[コアシェル粒子からの有機高分子等の除去の確認]
凝固後のコアシェル粒子を対ラテックス5倍量のアセトンで混合・撹拌・静置・分別を行い、更にn-ヘキサンとメタノールの混合液で洗浄したのち、透明な上澄み液中のポリアクリル酸ブチル量を求めることよりコアの除去を確認した。
【0045】
[塗膜加工性試験]
コーティング組成物を基材の表面にバーコーターで塗布する際に、均一に塗布できるかどうかを目視にて観察した。
○:均一に塗布されたもの
×:塗布中に析出物があるもの
[塗膜透明性試験]
作成した被膜付基材の外観を目視観察およびヘイズメーターにて測定した。
○:全光線透過率が93%以上であり、ヘイズ値が1%以下のもの
△:全光線透過率が93%以上であり、ヘイズ値が1%以上のもの
×:全光線透過率が93%以下であり、ヘイズ値が1%以上のもの
[塗膜耐候性試験]
作成した被膜付基材を、キセノンウェザーメーターにて90時間照射後に基材の亀裂や白化を目視にて観察した。
○:亀裂や白化が認められないもの
×:亀裂や白化が認められるもの。
【0046】
[塗膜耐水性試験]
作成した被膜付基材を25℃の水中に7日間浸漬し、亀裂や白化を目視にて観察した。
○:亀裂や白化が認められないもの。
△:亀裂や白化が若干認められるもの。
×:亀裂や白化が認められるもの。
【0047】
[塗膜防曇性試験]
作成した被膜付基材を、60℃の温水を入れたビーカーの上に蓋としてピッタリと被せ、基材に曇りが生ずるか否かを目視にて確認した。
○:曇りを生じないもの
△:やや曇りを生じるもの。
×:曇るもの。
[塗膜耐擦傷性試験]
往復磨耗試験機HEIDON トライボギアTYPE:30S(新東科学株式会社製)を使用し、被膜付基材の表面を20g荷重、移動速度6000mm/min、移動距離50mmの条件下においてスチールウール(No.0000、日本スチールウール株式会社製)を使用し水平に10回往復させたのち、被膜付基材表面上の擦り傷の量を比較した。
○:大きい切り傷が10本程度発生するもの
△:大きい切り傷が20本程度発生するもの
×:大きい切り傷および小さい擦り傷が多数発生するもの。
【0048】
(実施例1)
撹拌機、還流冷却器、窒素吹込口、単量体追加口、温度計を備えた5口フラスコに、水400重量部(種々の希釈水も含む水の総量)およびドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ(SDBS)2重量部(固形分)をとり混合した後、50℃に昇温し、液温が50℃に達した後、窒素置換を行った。その後、ブチルアクリレート10重量部、t−ドデシルメルカプタン3重量部、パラメンタンハイドロパーオキサイド0.01重量部の混合液を加えた。30分後、硫酸第一鉄(FeSO・7HO)0.002重量部、エチレンジアミンテトラアセティックアシッド・2Na塩0.005重量部、ホルムアルデヒドスルフォキシル酸ソーダ0.2重量部を加えてさらに1時間重合させた。その後ブチルアクリレート90重量部、t−ドデシルメルカプタン27重量部、パラメンタンハイドロパーオキサイド0.1重量部の混合液を3時間かけて連続追加した。2時間の後重合を行い、有機高分子ラテックス(P−1)を得た。このラテックスの体積平均粒子径は0.015μm、重量平均分子量は6000であった。
【0049】
撹拌機、還流冷却器、窒素吹込口、単量体追加口、温度計を備えた5口フラスコに、水500重量部(種々の希釈水も含む水の総量)、ドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA)3重量部、有機高分子(P−1)25重量部(固形分)を混合した。この時のpHは1.8であった。80℃に昇温し、窒素置換を行った。その後、別途純水100重量部、SDBS(固形分)0.5重量部、多摩化学工業製エチルシリケート40(テトラエトキシシランの5量体相当)、メチルトリメトキシシラン(MTMS)の表1に示す量の混合物を5分かけて一定速度で全量を追加した。追加終了後、5時間撹拌を続けた後、25℃に冷却して20時間放置し、ラテックス状のコアシェル粒子を得た。つづいて、ラテックス状のコアシェル粒子100重量部に対し、アセトンをまず50重量部加えて5分間攪拌し、その後アセトン150重量部を加えて25分間攪拌した。30分静置すると凝固粒子層と透明な上澄み層に分離する。上澄み液をデカンテーションにて除いた後、濾紙を用いて凝固粒子層を単離した。濾過した粒子を、メタノール70重量%とヘキサン30重量%との混合溶剤300重量部に加え、同様の操作にて混合・撹拌・濾過を行った。以上の操作により、溶剤によってコアのポリアクリル酸ブチルが除去され中空シリコーン粒子が得られる。この中空粒子をイソプロピルアルコールに分散させ、界面活性剤をコーティング組成物中の中空シリコーン系微粒子と界面活性剤の合計量に対して、0.2wt%になるように加え、更にイソプロピルアルコールで希釈することにより、固形分濃度5%のコーティング組成物を得た。
【0050】
このコーティング組成物を光学用PETフィルム(商品名:テトロンO3、帝人製)にバーコート法で塗布し(装置名:ワイヤーバー)、その後110℃で20分間乾燥し、被膜の厚さが1μmの被膜付基材を得た。
【0051】
この被膜付き基材の加工性、透明性、耐候性、耐久性、防曇性、耐擦傷性を測定した結果を表1に示した。
【0052】
(実施例2)
実施例1において、界面活性剤をコーティング組成物中の中空シリコーン系微粒子と界面活性剤の合計量に対して、5wt%になるように加えた以外は同様の操作を行い、被膜付基材を作成し同様の評価法により評価した。
【0053】
(実施例3)
実施例1において、界面活性剤をコーティング組成物中の中空シリコーン系微粒子と界面活性剤の合計量に対して、15wt%になるように加えた以外は同様の操作を行い、被膜付基材を作成し同様の評価法により評価した。
【0054】
(比較例1)
実施例1において、界面活性剤として非イオン性のポリオキシエチレンラウリルエーテル(商品名:エマルゲン147、花王製)を使用した以外は同様の操作を行い、被膜付基材を作成し同様の評価法により評価した。
【0055】
(比較例2)
実施例1において、界面活性剤を添加しない以外は同様の操作を行い、被膜付基材を作成し同様の評価法により評価した。
【0056】
【表1】

本発明のコーティング組成物を使用した被膜付基材(実施例1〜3)は、該コーティング組成物を使用しない比較例1〜2に対し、加工性、透明性、耐候性、耐水性、防曇性、耐擦傷性に優れる被膜付基材が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒を分散媒とし、体積平均粒子径が0.001〜1μmの中空シリコーン系微粒子と、フルオロアルキル基を有する界面活性剤とからなるコーティング組成物。
【請求項2】
前記中空シリコーン系微粒子が、SiO4/2単位、RSiO3/2単位(式中、Rは、炭素数1乃至18のアルキル基またはハロアルキル基、炭素数6乃至24の芳香族基、ビニル基、γ−(メタ)アクリロキシプロピル基又はSH基をもつ有機基の少なくとも1種を示す)およびRSiO2/2単位(式中、Rは、炭素数1乃至18のアルキル基またはハロアルキル基、炭素数6乃至24の芳香族基、ビニル基、γ−(メタ)アクリロキシプロピル基又はSH基をもつ有機基の少なくとも1種を示す)からなる群より選ばれる1単位又は2単位以上からなり、RSiO2/2単位の割合が20モル%以下、RSiO3/2単位の割合が50モル%以上であるシリコーン系化合物からなる中空粒子であることを特徴とする請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
前記中空シリコーン系微粒子が、下記工程(a)-工程(b)から得られる中空シリコーン系微粒子であることを特徴とする、請求項1〜2のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
(a)有機高分子微粒子および/または有機溶剤からなる粒子をシリコーン系化合物により被覆したコアシェル粒子を製造する工程
(b)コアシェル粒子中の有機高分子粒子および/または有機溶剤からなる粒子を除去して中空シリコーン系微粒子を製造する工程。
【請求項4】
基材と、該基材上に設けられた透明被膜とを有し、該透明被膜が、請求項1〜3のいずれかに記載のコーティング組成物を用いて形成されてなることを特徴とする透明被膜付基材。

【公開番号】特開2009−57448(P2009−57448A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−225395(P2007−225395)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】