説明

中空パネル用補強材および壁体

【課題】施工性が良く、高い強度が得ることが可能な中空パネル用の補強材およびそれを用いた壁体を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の補強材20は、側部に連設部12b、13aを有し、連設部を用いて複数連設することにより壁体を構築する中空パネル10a、10bを補強する補強材20であって、中空パネル10の側部と同じ長さに形成され、正面31、背面32および一対の側部33、34を有する本体30と、本体30の一対の側部33、34のうち少なくとも何れか一方の側部において、中空パネル10aの側方より中空パネル10aの連設部13aに嵌合する第一嵌合部40とを備え、本体30は中空パネル10よりも強度の高い材質により形成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製の中空パネルを補強する補強材およびそれを用いた壁体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、採光を取るための採光外壁材として、合成樹脂製の中空パネルが用いられるようになってきた。合成樹脂製の中空パネルは、ガラスブロック等の採光外壁材と比較すると軽量であるので広い採光壁を実現することができる。
【0003】
図6に、採光外壁材として用いられる合成樹脂製の中空パネルの一例を示す。中空パネル10は、複数の中空パネルを連設することにより壁体を構築する部材であり、淡く着色した透光性樹脂を押し出成形して作製する。中空パネル10は、図6に示すように、板状のパネル本体11と、パネル本体11の両側部に、隣接する中空パネル10と連設するための連設凸部12と連設凹部13とを備えている。中空パネル10のパネル本体11は正面14と背面15とを有し、正面14と背面15との間に縦、横、斜めの隔壁16を設けることによって多数のパネル中空部17が形成されている。
【0004】
連設凸部12は、先端が少し膨張した中空の形状を有しており、中空パネル10の片側の側部において中空パネル10の全長に亘って形成されている。また、連設凹部13は、連設凸部12のある側部の反対側の側部に設けられており、連設凸部12に対応した形状に形成されている。連設凹部13は、隣接する中空パネルの連設凸部12が側方(図6のA方向)から圧入されることにより、隣接する中空パネルの連設凸部12と嵌合することが可能になっている。中空パネル10は、連設凸部12と連設凹部13とを備えることによって、中空パネル同士を簡単に連設でき、それにより様々な寸法の壁体を構築することが可能になっている。
【0005】
しかしながら、合成樹脂製の中空パネル10のみを連設して壁体を構築すると強度が不足する場合があった。そのため、従来は例えば特許文献1に示されるように、補強材をパネル中空部17に、中空パネル10の上方または下方から挿入して中空パネル10やそれにより構築された壁体の強度を向上させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−57116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に示される補強材やその補強方法は、中空パネルの上方または下方の開口部から中空パネルの長さと同じ長さの補強材を挿入する必要があり、特に長尺な中空パネルの場合、補強材の挿入に手間がかかり施工性が良くないという課題があった。
【0008】
また、中空パネルに挿入する補強材を増やすことで、高い強度を得ることが可能であるが、多数の補強材を挿入すると不透光の部分が多くなり、特に、採光外壁材として中空パネルを用いる場合、中空パネルの透光性が低下するという課題があった。
【0009】
また、補強材の大きさや形状は、パネル中空部の大きさや形状によって制限されるので、補強材が必要な強度を得ることができないという課題があった。特に大型の採光外壁を構築する場合、長尺の補強材を必要とするが、その長さに応じた幅や厚さにすることができず、強度を向上させることができない場合があった。
【0010】
そこで、本発明では、施工性が良く高い強度を得ることが可能な中空パネル用の補強材およびそれを用いた壁体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するために、本発明に係る補強材は、側部に連設部を有し、該連設部を用いて複数連設することにより壁を構築する中空パネルを補強する補強材であって、前記中空パネルの側部と同じ長さに形成され、正面、背面および一対の側部を有する本体と、前記本体の一対の側部のうち少なくとも何れか一方の側部において、前記中空パネルの側方より前記中空パネルの連設部に嵌合する第一嵌合部とを備え、前記本体は前記中空パネルよりも強度の高い材質により形成されることを特徴とする。
【0012】
また、上述の目的を達成するために、本発明に係る補強材は、前記本体の他方の側部において、前記第一嵌合部の反対方向に向けて設けられ、前記中空パネルとは別の中空パネルの連設部に、前記別の中空パネルの側方より嵌合する第二嵌合部をさらに備えることを特徴とする。
【0013】
また、上述の目的を達成するために、本発明に係る補強材は、前記中空パネルの連設部が、先端が膨らんだ中空の連設凸部または該連設凸部の形状に対応した連設凹部のうち何れか一方であり、前記第一嵌合部は、前記連設凸部または前記連設凹部と同じ形状を有することを特徴とする。
【0014】
また、上述の目的を達成するために、本発明に係る補強材は、前記中空パネルの連設部が、先端が膨らんだ中空の連設凸部または該連設凸部の形状に対応した連設凹部のうち何れか一方であり、前記第一嵌合部は、前記連設凸部または前記連設凹部と同じ形状を有し、前記第二嵌合部は、前記連設凸部または前記連設凹部と同じ形状を有することを特徴とする。
【0015】
また、上述の目的を達成するために、本発明に係る補強材は、前記本体の正面と背面との間の距離が、前記中空パネルの厚さ以上であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る補強材は、前記本体の正面が、前記中空パネルの前記連設部に前記第一嵌合部が嵌合することで、前記中空パネルの正面と面一になることを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る補強材は、前記本体が中空であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る補強材は、前記本体の中空に挿入して取付けられる、前記補強材の強度を補助する補助部材を、さらに備えたことを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る補強材は、前記中空パネルが、該中空パネルの側部および背面が交わる角部から幅方向外側に向かって延出するパネル側延出部と、該パネル側延出部および前記連設部の間に形成されるパネル側溝部とをさらに備えており、前記本体は、前記第一嵌合部を有する前記側部および前記背面が交わる角部から幅方向外側に向かって延出する第一延出部と、該第一延出部および前記第一嵌合部の間に形成される第一溝部とをさらに備え、前記第一嵌合部が前記中空パネルの前記連設部に嵌合することで、前記パネル側延出部と第一延出部とが対向すると共に離間して配置され、前記パネル側延出部、前記パネル側溝部、前記第一延出部および前記第一溝部により蟻溝部が形成されることを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る補強材は、前記本体の背面に前記本体の長手方向に沿って形成される蟻溝をさらに備えることを特徴とする。
【0021】
また、本発明に係る壁体は、側部に連設部を有する中空パネルと前記補強材とを、前記中空パネルの連設部に前記補強材の前記第一嵌合部を嵌合して、連結することにより構築することを特徴とする。
【0022】
また、本発明に係る壁体は、側部に連設部を有する一対の中空パネルと前記補強材とを、一方の中空パネルの連設部に前記補強材の前記第一嵌合部を嵌合し、他方の中空パネルの連設部に前記補強材の前記第二嵌合部を嵌合して連結することにより構築することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
上述した本発明に係る補強材は、中空パネルの側方から嵌合することが可能であるので、従来ように中空パネルの上下から挿入する補強材と比較して、容易に取付け作業を行うことができ、壁体を構築する際の施工性を良くする。
【0024】
また、補強材は、中空パネルの外部に設けるので、従来のように補強材の大きさ、特に厚さや幅が中空パネルの中空部の大きさに制限されることがない。補強材を大きくすることができるので、容易に強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る補強材の第一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示す補強材と中空パネルとが連結した状態を示す横断面図である。
【図3】図1に示す補強材と中空パネルとを用いて構築した壁体を示す正面図である。
【図4】第一実施形態の変形例1を示す横断面図である。
【図5】第一実施形態の変形例2を示す横断面図である。
【図6】中空パネルの構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る補強材および壁体の好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。但し、本発明の技術範囲はそれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物におよぶ点に留意されたい。
【0027】
図1は、本発明に係る補強材20の第一実施形態を示す斜視図である。また、図2は、図1に示す補強材20と中空パネル10とが連結した状態を示す横断面図である。
【0028】
本実施形態の補強材20は、前述した合成樹脂製の中空パネル10を補強する補強材であって、一対の中空パネル10に連結することができる。以下、一対の中空パネル10を区別するため、図面左より中空パネル10a、10bとし、各中空パネルの構成部材にはそれぞれに対応するアルファベットを付けて説明する。
【0029】
補強材20の構成について説明する。補強材20は、図1に示すように、中空パネル10a、10bの長さLと同じ長さに形成された長尺の本体30と、中空パネル10aの連設凹部13aに嵌合する第一嵌合部40と、中空パネル10bの連設凸部12bに嵌合する第二嵌合部50とを備えている。本体30は、正面31、背面32および一対の側部33、34からなり、第一嵌合部40は、本体30の一方の側部33に位置している。また第二嵌合部50は、本体30の他方の側部34に位置している。
【0030】
また、補強材20は、背面32と側部33とが交わる角部から、幅方向外側に延出する第一延出部41を備えており、第一延出部41と第一嵌合部40との間に第一溝部42が形成されている。詳しくは後述するが、第一延出部41および第一溝部42は、中空パネル10aと補強材20とが連結した場合に、中空パネル10aの側部と合わさることにより建物の構造部に連結するための蟻溝を形成するようになっている。
【0031】
また、補強材20は、背面32と側部34とが交わる角部から、幅方向外側であって且つ第一延出部41の反対方向に延出する第二延出部51を備えており、第二延出部51と第二嵌合部50との間に第二溝部52が形成されている。第二延出部51および第二溝部52は、第一延出部41および第一溝部42と同様に、中空パネル10bの側部と合わさることにより蟻溝を形成するようになっている。
【0032】
なお、厚さ方向とは補強材20の長手方向と垂直に交わる方向であって、正面31から背面32に向かう方向(図1の矢印E参照)を意味する。また、幅方向とは、補強材20の長手方向と直交する方向であって、補強材20の正面31に対して平行な方向(図1の矢印F参照)を意味する。
【0033】
次に、第一嵌合部40について説明する。第一嵌合部40は、図1に示すように、先端部が膨らんだ凸型の形状を有しており、中空に形成されている。この第一嵌合部40の形状は、中空パネル10bの連設凸部12bと同じ形状である。第一嵌合部40は中空に形成されているので、第一嵌合部40は弾性変形することが可能である。そのため、第一嵌合部40を中空パネル10aの連設凹部13aに、中空パネル10aの側方(図1のA方向)から圧入して嵌合することができる。なお、第一嵌合部40が、弾性変形しない場合であっても、中空パネル10aの連設凹部13aが弾性変形することが可能であれば、第一嵌合部40を中空パネル10aの連設凹部13aに、中空パネル10aの側方から圧入して嵌合することもできる。
【0034】
次に、第二嵌合部50について説明する。第二嵌合部50は、図1に示すように、第一嵌合部40の凸型の形状に対応した凹型の形状を有しており、中空パネル10bの連設凸部12bを内包することが可能になっている。この第二嵌合部50の形状は、中空パネル10aの連設凹部13aと同じ形状であり、中空パネル10bの連設凸部12bを側方から圧入して嵌合することができる。なお、第二嵌合部50の根本部分の幅H1は、第二嵌合部50の中央部の幅H2より狭くなっており、連設凸部12bは、一旦嵌合すると先端部の膨らみにより第二嵌合部50から抜け難くなっている。
【0035】
次に、本実施形態の補強材20の本体30について説明する。
【0036】
図2は、補強材20と中空パネル10a、10bとが連結した状態を示す横断面図である。
【0037】
本実施形態の補強材20の本体30には、図2に示すように、中空部36が形成されている。本体30を中空にすることで、補強材20を軽量かつ安価に作製することができる。また、中空部36は、正面31、背面32、側部33、第二嵌合部50および隔壁35により囲まれた空間であり、中空部36に補助部材37を挿入して取付けることによって、補強材20の強度を必要に応じて調整することができる。図2には、補助部材37の一例として断面形状がL字形の部材を取付けた場合を示している。他に、補助部材37として板状の部材または断面形状がU字形の部材を挿入して取付けることができる。また、本体30の中空部36の形状によってはロ字形の部材を挿入してもよい(図4参照)。補強材20の強度を高めるため、本体30は中実であってもよい。
【0038】
補助部材37は、第二嵌合部50の先端部と隔壁35とを嵌挿するネジ38によってネジ止めされている。ネジ38は、第二嵌合部50の内部から螺嵌されるので、第二嵌合部50によってネジ頭は隠され、特に補強材20と中空パネル10bとが連結した後は、外部からネジ頭が見えることがない。そのため、壁体の外観を変更することなく、補助部材37により補強材20の強度を向上させることができる。なお、補助部材37の材質は、特に限定しないが、剛性と加工容易性との観点から金属製、特にアルミニウムが好適である。また、補助部材37は樹脂製でもよい。補助部材37は本体30の中空部36以外にも、例えば補強材20の背面32の外側に設けることができる。この場合、正面側から見た壁体の意匠性が下がることはなく、中空部36に補助部材37を挿入する手間を省くことができるので、特に本体30が長尺の場合に有効である。
【0039】
本実施形態の補強材20は中空パネル10a、10bと連結すると、図2に示すように、補強材20の正面31と、中空パネル10a、10bの正面14a、14bとが段差のない面を形成する。すなわち、補強材20の正面31は、中空パネル10a、10bの正面14a、14bと面一になるよう形成されている。一対の中空パネル10a、10bの間に補強材20を挿入して連結しても段差のない面が構築されるので、補強材20によって壁体の意匠性が下がることがない。
【0040】
本実施の補強材20の厚さ、すなわち本体30の正面31と背面32との間の距離H3は、中空パネル10a、10bの厚さと同じ厚さである。しかしながら、補強材20の強度を向上させるため、補強材20の厚さを中空パネル10a、10bの厚さよりもさらに大きくしてもよい。この場合、補強材20の正面31と中空パネル10a、10bの正面14a、14bとを面一にしつつ、補強材20の背面32が、厚さ方向(図2のC方向)に延びて、中空パネル10a、10bの背面15a、15bより突出るようにしてもよい。また、補強材20を幅方向に大きくしてもよい。
【0041】
次に、補強材20の第一延出部41および第一溝部42について説明する。
【0042】
本実施形態の補強材20が連結する中空パネル10a、10bは、図2に示すように、中空パネルの側部および背面15a、15bの交わる角部から幅方向外側に延出するパネル側延出部18a、18bと、パネル側延出部18a、18bと連設凸部12bまたは連設凹部13aとの間に形成されるパネル側溝部19a、19bとを備えている。本来、一対の中空パネル10a、10bが連設することで、パネル側延出部18a、18bとパネル側溝部19a、19bとにより、断面T字形の蟻溝部が形成されるようになっていた。図2に示す結合部材70は、壁体と建物の構造部とを結合する部材の一例であるが、結合部材70の先端部にある断面T字形の取付け金具72を蟻溝部に挿入することにより、結合部材70と壁体が結合し、壁体を建物の構造部に取付けることができた。
【0043】
本実施形態の補強材20を用いて壁体を構成した場合でも壁体を建物の構造部に取付けることができるよう、補強材20は、補強材20と中空パネル10a、10bとが結合されることによって蟻溝部60a、60bが形成されるようになっている。本実施形態の補強材20は、上述のように、背面32と側部33とが交わる角部から、幅方向外側に延出する第一延出部41を備えており、第一延出部41と第一嵌合部40との間に第一溝部42が形成されている。すなわち、補強材20は、パネル側延出部18aに対向する第一延出部41と、パネル側溝部19aに対応する第一溝部42とを、側部33の長手方向の全体に亘って備えている。中空パネル10aと補強材20とが結合することによって、パネル側延出部18aと第一延出部41とが対向すると共に離間して配置されるようになり、パネル側溝部19a、パネル側延出部18a、第一延出部41および第一溝部42により蟻溝部60aが形成される。
【0044】
また、補強材20は、背面32と側部34とが交わる角部から、幅方向外側であって且つ第一延出部41の反対方向に延出する第二延出部51を備えており、第二延出部51と第二嵌合部50との間に第二溝部52が形成されている。すなわち、補強材20は、パネル側延出部18bに対向する第二延出部51と、第二溝部52とを側部34の長手方向の全体に亘って備えている。中空パネル10bと補強材20とが結合することによって、パネル側延出部18bと第二延出部51とが対向すると共に離間して配置されるようになり、パネル側溝部19b、パネル側延出部18b、第二延出部51および第二溝部52により蟻溝部60bが形成される。
【0045】
上述のように、補強材20が中空パネル10a、10bに連結することによって、二箇所のT字形の蟻溝部60a、60bが形成される。従来と同様、蟻溝部60a、60bのうち何れか一方に、T字形の取付け金具72を挿入することにより、壁体と建物の構造部とが結合してもよい。蟻溝部60a、60bの両方に取付け金具72を挿入して壁体を構造部に結合してもよい。
【0046】
補強材20や本体30の材質は、特に限定しないが、中空パネル10の材質より強度の高い材質で作製するのがよい。剛性と加工容易性との観点から、補強材20は金属製、特にアルミニウム製であることが望ましい。本実施形態では補強材20をアルミニウム材の押出し成形により形成している。
【0047】
なお、本実施形態の補強材20と連結する中空パネル10は合成樹脂製であるが、具体的な合成樹脂として、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、およびこれらの樹脂にガラス繊維を含有させた強化樹脂等の光透過性の合成樹脂が挙げられる。また、中空パネル10は、合成樹脂以外の材料、セメント、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、セラミックス等の無機材料およびこれらの無機材料に鉄筋、ガラス繊維またはアラミド繊維を含有させた材質から形成しても良い。
【0048】
次に、複数の中空パネル10と補強材20とを用いて構築した壁体100について説明する。
【0049】
図3は、複数の中空パネル10と補強材20とを用いて構築した壁体100を示す正面図である。
【0050】
本実施形態の補強材20は、上述のように第一嵌合部40を中空パネル10aの連設凹部13aに圧入して嵌合することにより、中空パネル10aと結合し、中空パネル10aの側部の長手方向の全体に亘って配置される。続いて、補強材20の第二嵌合部50に中空パネル10bの連設凸部12bを圧入して嵌合することにより、補強材20と中空パネル10bとが結合する。このように、複数の中空パネル10と補強材20とを交互に連設していくことにより壁体100を構築する。中空パネル10が補強材20によって補強されることによって、壁体100の強度も向上する。壁体100は、図3に示すように、壁体100の上下左右に枠材81〜84が設けられることによって完成する。補強材20の上下端部は枠材81、83と直接接触するので、補強材20は枠材81、83により挟持されるようになる。補強材20を枠材81、83の外側からビス等を用いて固定することにより、補強材20と枠材81、83とが一体化し、それによって、中空パネル10および壁体100はさらに高い強度を得ることができる。本実施形態では、中空パネル10と補強材20とを交互に連設して壁体100を構築しているが、必ずしも交互に連設する必要はなく、壁体100に要求される強度に合わせて、中空パネル10の間に補強材20を適宜設ければよい。例えば、補強材20を一つ置きに設けてもよい。
【0051】
次に、上述した第一実施形態の変形例1、2について、図を参照しながら以下に説明する。変形例について特に説明しない点については、上述の第一実施形態に関して詳述した説明が適宜適用される。また、同一の構成要素には同一の符号を付してある。
【0052】
図4は、第一実施形態の変形例1の補強材21を示す横断面図である。
【0053】
第一実施形態の変形例1である補強材21は、補強材20と同様に本体31と第一嵌合部40と第二嵌合部50とから構成されている。しかしながら、補強材21の第二嵌合部50は、連結する中空パネル10cの連設凹部13cの形状に合わせて、凸型の形状すなわち連設凸部と同じ形状を有していることが異なっている。このように、本発明による補強材の第一嵌合部40および第二嵌合部50は、両方とも連設凸部と同じ凸型の形状を有してもよい。補強材21は、第二嵌合部50が結合する中空パネル10の連設凹部13cの形状に合わせたものであり、それ以外は上述した補強材20と同様の効果を奏する。
【0054】
図5は、第一実施形態の変形例2の補強材22を示す横断面図である。
【0055】
第一実施形態の変形例2である補強材22は、補強材20と同様に本体30と第一嵌合部40と第二嵌合部50とから構成されている。しかしながら、補強材22の第一嵌合部40は、連結する中空パネル10dの連設凸部12dに合わせて、中空パネル10の連設凹部と同じ凹型の形状を有していることが異なっている。このように、本発明による補強材の第一嵌合部40および第二嵌合部50は、両方とも連設凹部と同じ凹型の形状を有してもよい。また、背面32の中央に蟻溝部60a、60bと同様の断面形状を有する蟻溝部61が長手方向に沿って形成されている。
【0056】
変形例2は、第一嵌合部40および第二嵌合部50ともに凹型の形状を有しているので、補強材22の本体30の幅は、補強材20のそれと比較して広くなっている。そのため幅方向(例えば図5のD方向)に掛かる応力に対しては補強材20より強度が向上している。また、中空部36が3箇所あるので、補強材22を補強する補助部材37をより多く取付けることができ、さらに強度を向上させることができる。また、蟻溝部61を中央に備えることによって、補強材22だけでも建物の構造部と結合部材を介して結合することが可能になっている。
【0057】
以上、本実施形態について図面を用いて説明した。本実施形態の補強材を用いれば、中空パネルの側方から補強材を取付けることが可能である。そのため、従来のように上方または下方から補強材を挿入する補強方法と比較して、容易に中空パネルおよび壁体を補強することが可能になり、壁体を構築する施工性が良くなるという効果を奏する。また、補強材を中空パネルの外部に取付けるので、従来のように中空パネルの中空部に補強材の大きさが制限されることなく、強度の高い補強材を設けることができるようになる。
【0058】
なお、本実施形態の補強材は、互いに反対側を向く二つの嵌合部(第一嵌合部、第二嵌合部)を備えていたが、壁体の端に位置する中空パネルを補強するのであれば、補強材の嵌合部は一つ(すなわち、第一嵌合部のみ)であってもよい。
【符号の説明】
【0059】
10、10a、10b、10c、10d 中空パネル
11 パネル本体
12、12b、12d 連設凸部
13、13a、13c 連設凹部
14 正面
15 背面
16 隔壁
17 パネル中空部
18a、18b、18c、18d パネル側延出部
19a、19b、19c、19d パネル側溝部
20、21、22 補強材
30 本体
31 正面
32 背面
33、34 側部
35 隔壁
36 中空部
37 補助部材
38 ネジ
40 第一嵌合部
41 第一延出部
42 第一溝部
50 第二嵌合部
51 第二延出部
52 第二溝部
60a、60b、61 蟻溝部
81、82、83、84 枠材
100 壁体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側部に連設部を有し、該連設部を用いて複数連設することにより壁体を構築する中空パネルを補強する補強材であって、
前記中空パネルの側部と同じ長さに形成され、正面、背面および一対の側部を有する本体と、
前記本体の一対の側部のうち少なくとも何れか一方の側部において、前記中空パネルの側方より前記中空パネルの連設部に嵌合する第一嵌合部と、を備え、
前記本体は前記中空パネルよりも強度の高い材質により形成される、ことを特徴とする補強材。
【請求項2】
前記本体の他方の側部において、前記第一嵌合部の反対方向に向けて設けられ、前記中空パネルとは別の中空パネルの連設部に、前記別の中空パネルの側方より嵌合する第二嵌合部をさらに備える請求項1に記載の補強材。
【請求項3】
前記中空パネルの連設部は、先端が膨らんだ中空の連設凸部または該連設凸部の形状に対応した連設凹部のうち何れか一方であり、
前記第一嵌合部は、前記連設凸部または前記連設凹部と同じ形状を有する、請求項1に記載の補強材。
【請求項4】
前記中空パネルの連設部は、先端が膨らんだ中空の連設凸部または該連設凸部の形状に対応した連設凹部のうち何れか一方であり、
前記第一嵌合部は、前記連設凸部または前記連設凹部と同じ形状を有し、
前記第二嵌合部は、前記連設凸部または前記連設凹部と同じ形状を有する、請求項2に記載の補強材。
【請求項5】
前記本体の正面と背面との間の距離が、前記中空パネルの厚さ以上である、請求項1から4の何れか一項に記載の補強材。
【請求項6】
前記本体の正面は、前記中空パネルの前記連設部に前記第一嵌合部が嵌合することで、前記中空パネルの正面と面一になる、請求項1から5の何れか一項に記載の補強材。
【請求項7】
前記本体は中空である、請求項1から6の何れか一項に記載の補強材。
【請求項8】
前記本体の中空に挿入して取付けられる、前記補強材の強度を補助する補助部材を、さらに備えた請求項7に記載の補強材。
【請求項9】
前記中空パネルは、該中空パネルの側部および背面が交わる角部から幅方向外側に向かって延出するパネル側延出部と、該パネル側延出部および前記連設部の間に形成されるパネル側溝部とをさらに備えており、
前記本体は、前記第一嵌合部を有する前記側部および前記背面が交わる角部から幅方向外側に向かって延出する第一延出部と、該第一延出部および前記第一嵌合部の間に形成される第一溝部とをさらに備え、
前記第一嵌合部が前記中空パネルの前記連設部に嵌合することで、前記パネル側延出部と第一延出部とが対向すると共に離間して配置され、前記パネル側延出部、前記パネル側溝部、前記第一延出部および前記第一溝部により蟻溝部が形成される、請求項1から8の何れか一項に記載の補強材。
【請求項10】
前記本体の背面に前記本体の長手方向に沿って形成される蟻溝部をさらに備える請求項1から9の何れか一項に記載の補強材。
【請求項11】
側部に連設部を有する中空パネルと請求項1から10の何れか一項に記載の補強材とを、前記中空パネルの連設部に前記補強材の前記第一嵌合部を嵌合して連結することにより構築する壁体。
【請求項12】
側部に連設部を有する一対の中空パネルと請求項2または4に記載の補強材とを、一方の中空パネルの連設部に前記補強材の前記第一嵌合部を嵌合し、他方の中空パネルの連設部に前記補強材の前記第二嵌合部を嵌合して連結することにより構築する壁体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−26926(P2011−26926A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−176567(P2009−176567)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(000108719)タキロン株式会社 (421)
【Fターム(参考)】