説明

中空体の殺菌方法及び殺菌用ノズル

【課題】中空体内を殺菌用加熱液によって迅速かつ適正に殺菌する。
【解決手段】中空体を倒立状態にし、その下向きになった口部4の中心軸に位置する第一の流路から殺菌用加熱液aを中空体1内に噴射して中空体内を殺菌しつつ、上記第一の流路を囲む第二の流路から他の殺菌用加熱液bを口部内に噴射し、この第二の流路から噴射した殺菌用加熱液を口部内で反転させ、上記第一の流路から中空体内に噴射した殺菌用加熱液と合流させて口部の内面に沿って中空体外へと流しつつ口部を殺菌する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボトルやそのプリフォームの内面を殺菌用加熱液で殺菌する方法及びその方法に用いることができる殺菌用ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、PET(ポリエチレンテレフタレート)等のプラスチックで出来たボトルに内容液を充填する際、あらかじめボトル内に熱水等の殺菌用加熱液を噴射してボトル内を殺菌している。
【0003】
熱水をボトル内に噴射する方法としては、ボトルを逆様にしてその下向きになった口部から筒状ノズルを挿入し、ノズルの先端から熱水をボトル内に噴射させることが行われている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、逆様にしたボトル内に口部から二重管ノズルを挿入し、このノズルの内筒から熱水をボトル内に噴射し、外筒から加圧エアをボトル内に噴射することも行われている。熱水によりボトルが熱収縮を来さないように、加圧エアでボトル内を陽圧に保ちながら殺菌を行おうというものである(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−124010号公報
【特許文献2】国際公開WO2007/015586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記前者の筒状ノズルをボトル内に挿入してボトル内を殺菌する方法は、ボトルが例えばブロー成形によるものである場合は、熱水がボトル胴部に接触して温度降下した状態でボトルの口部に接触するので、口部の殺菌が不十分になるおそれがある。ブロー成形ボトルの口部は胴部よりも厚肉であり、昇温し難いためである。
【0007】
口部をも十分に殺菌するには、できるだけ高温の熱水を供給すればよいのであるが、熱水が高温に過ぎるとボトルの薄肉の胴部が熱収縮により変形するおそれがある。特にボトルがPET等の非耐熱性プラスチックで出来ている場合は変形する可能性が高い。
【0008】
また、比較的低温の熱水を長時間供給することも考えられるが、その場合は瓶詰製品の生産性が低下してしまう。
【0009】
後者の二重管ノズルを用いる方法では、加圧エアの噴射によってボトル壁への熱水の接触が妨げられ、殺菌が不十分になるおそれがある。そのためには時間をかけて殺菌すればよいのであるが、その場合は生産性が低下するという問題がある。また、熱水と加圧エアとを用意しなければならないので、瓶詰製品の生産コストが高くなるという問題がある。
【0010】
本発明は、以上のような問題点を解消することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は次のような構成を採用する。
【0012】
なお、本発明を理解しやすくするために参照符号をカッコつきで付するが、これにより本発明が限定されるものではない。
【0013】
すなわち、請求項1に係る発明は、中空体(1)を倒立状態にし、その下向きになった口部(4)の中心軸に位置する第一の流路から殺菌用加熱液(a)を中空体(1)内に噴射して中空体(1)内を殺菌しつつ、上記第一の流路を囲む第二の流路から他の殺菌用加熱液(b)を上記口部(4)内に噴射し、この第二の流路から噴射した殺菌用加熱液(b)を上記口部(4)内で反転させ、上記第一の流路から中空体(1)内に噴射した殺菌用加熱液(a)と合流させて上記口部(4)の内面に沿って中空体(1)外へと流しつつ口部(4)を殺菌する中空体殺菌方法を採用する。
【0014】
請求項2に記載されるように、請求項1に記載の中空体殺菌方法において、上記第一の流路から噴射する殺菌用加熱液(a)の温度よりも、第二の流路から噴射する殺菌用加熱液(b)の温度の方を高くすることも可能である。
【0015】
請求項3に記載されるように、請求項1に記載の中空体殺菌方法において、上記第一の流路から殺菌用加熱液を噴射した後、上記第一の流路から無菌エアを中空体内に噴射することも可能である。
【0016】
請求項4に係る発明は、内外二重の噴射筒(6,7)を有し、内側噴射筒(6)はその吐出口(6a)が中空体(1)の口部(4)から中空体(1)内に入り込んで殺菌用加熱液(a)を中空体(1)内に吐出し得るように形成され、外側噴射筒(7)はその吐出口(7a)が上記口部(4)内に止まって殺菌用加熱液(b)を上記口部(4)内に吐出し得るように形成され、上記外側噴射筒(7)の吐出口(7a)の前方には、上記外側噴射筒(7)の吐出口(7a)から吐出される殺菌用加熱液(b)を上記口部(4)内で反転させる反転部(9)が設けられ、この反転部(9)で反転した殺菌用加熱液(b)と上記中空体(1)内に吐出された殺菌用加熱液(a)との合流したものを上記口部(4)の内面と上記外側噴射筒(7)との間から中空体(1)外へ流出させるようにした中空体殺菌用ノズルを採用する。
【0017】
請求項5に記載されるように、請求項4に記載の中空体殺菌用ノズルにおいて、上記内側噴射筒から殺菌用加熱液を噴射した後、上記内側噴射筒から無菌エアを中空体内に噴射可能にしたものとすることができる。
【0018】
請求項6に記載されるように、請求項4に記載の中空体殺菌用ノズルにおいて、上記反転部(9)を上記内側噴射筒(6)に取り付けられた鍔状突起とすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、中空体(1)を倒立状態にし、その下向きになった口部(4)の中心軸に位置する第一の流路から殺菌用加熱液(a)を中空体(1)内に噴射して中空体(1)内を殺菌しつつ、上記第一の流路を囲む第二の流路から他の殺菌用加熱液(b)を上記口部(4)内に噴射し、この第二の流路から噴射した殺菌用加熱液(b)を上記口部(4)内で反転させ、上記第一の流路から中空体(1)内に噴射した殺菌用加熱液(a)と合流させて上記口部(4)の内面に沿って中空体(1)外へと流しつつ口部(4)を殺菌する中空体殺菌方法であるから、中空体(1)の比較的薄肉の胴部(3)は第一の流路からの殺菌用加熱液(a)によって熱収縮を来すことなく短時間で殺菌することができ、中空体(1)の比較的厚肉である口部(4)は第二の流路からの殺菌用加熱液(b)によって短時間で昇温させ適正に殺菌することができる。また、第一の流路からの殺菌用加熱液(a)と第二の流路からの殺菌用加熱液(b)は同種類の熱水等を用いることができるので、コストアップを招くこともない。
【0020】
また、本発明において、上記第一の流路から殺菌用加熱液を噴射した後、第一の流路から無菌エアを中空体内に噴射するようにした場合は、容器内から殺菌用加熱液を速やかに排出することが可能になり、殺菌工程の時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る殺菌方法により殺菌中のボトルを示す正面図である。
【図2】図1中、要部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明を実施するための形態について説明する。
【0023】
図1中、符号1は殺菌対象の中空体であるボトルを示し、符号2は殺菌用ノズルを示す。
【0024】
ボトル1はプラスチック製ボトルであり、この実施の形態ではPET製である。もちろん、ボトル1はPETに限らずポリプロピレン、ポリエチレン等他のプラスチックを用いて作ったものであってもよい。
【0025】
ボトル1は、加熱したプリフォーム(図示せず)をブロー成形することによって得られる。成形後のボトル1は、飲料等の内容物を収納するための比較的薄肉の胴部3と内容物を胴部3に対し出し入れするための比較的厚肉の口部4とを具備する。
【0026】
厚肉の口部4には、図示しないキャップの雌ネジと螺合する雄ネジ4aや、ボトル1を保持して搬送する際にグリッパ5で把持するサポートリング4bが形成される。
【0027】
殺菌用ノズル2は、図1及び図2に示すように、内外二重の噴射筒6,7を有する。このノズル2は、倒立状態になった上記ボトル1にその口部4から侵入可能であり、ノズル2の外周面と口部4の内周面との間に殺菌用加熱液a,bの流出路8が形成される程度の大きさに構成される。
【0028】
内側噴射筒6は、細長い円筒体として形成され、その中心の空洞が殺菌用加熱液aの流路である第一の流路とされる。内側噴射筒6がボトル1の口部4からボトル1内に入り込んだ際、その先端の開口が殺菌用加熱液aをボトル1内に噴射する吐出口6aとなる。
【0029】
内側噴射筒6から噴射された殺菌用加熱液aは、ボトル1の胴部3の内面に接触し、胴部3の内面を加熱して殺菌する。そして、殺菌用加熱液aはボトル1の胴部3に熱を奪われつつボトル1の口部4へと流れ落ちる。
【0030】
外側噴射筒7は、内側噴射筒6をその外周から囲む円筒体として形成され、内側噴射筒6との間に形成される環状の隙間が殺菌用加熱液bの流路である第二の流路とされる。外側噴射筒7がボトル1の口部4内に入り込んだ際、その先端の環状の開口が殺菌用加熱液bをボトル1の口部4内に噴射する吐出口7aとなる。
【0031】
外側噴射筒7の吐出口7aの前方には、外側噴射筒7の吐出口7aから吐出される殺菌用加熱液bをボトル1の口部4内で反転させる反転部9が設けられる。
【0032】
反転部9は、例えば鍔状突起として形成され、内側噴射筒6の外面に固定される。鍔状突起はボトル1の内面との間にボトル1の胴部3側から流下する殺菌用加熱液aの通路10が形成されるように設けられる。
【0033】
ボトル1の口部4内で外側噴射筒7から吐出された殺菌用加熱液bは、反転部9に衝突して口部4の開口の方に反転する。そして、この反転部9で反転した殺菌用加熱液bと上記内側噴射筒6からボトル1内に吐出された殺菌用加熱液aとが合流したものが、ボトル1の口部4の内周面と外側噴射筒7の外周面との間の流出路8からボトル1外へ流出する。
【0034】
反転部9で反転した殺菌用加熱液bは、外側噴射筒7の吐出口7aから噴出した後直ちにボトル1の口部4の内周面に接触し、口部4の内周面を加熱して殺菌する。殺菌用加熱液bは、ボトル1の口部4を殺菌しつつ熱を奪われて胴部3側から流下する。また、殺菌用加熱液aと合流してボトル1の口部4からボトル1外へと流出する。
【0035】
内側噴射筒6と外側噴射筒7から各々吐出する殺菌用加熱液a,bは共に殺菌された熱水である。両熱水は同じ温度であってもよいが、内側噴射筒6から吐出する熱水は薄肉の胴部3に当たることから胴部3に熱収縮を来さないように例えば70℃のごとく比較的低温度とし、外側噴射筒7から各吐出する熱水は厚肉の口部4をできるだけ速やかに加熱殺菌するため例えば80℃のごとく比較的高温度とすることができる。
【0036】
その他、図2に示すように、内側噴射筒6と外側噴射筒7には各々殺菌用加熱液a,bを供給するための管路11,12が接続され、流量制御弁13,14等が各管路11,12に設けられる。
【0037】
また、管路11には切換え弁15が設けられ、そこから無菌エアの流路となる管路16が分岐する。上記内側噴射筒6から殺菌用加熱水がボトル1内に噴射された後、切換え弁15によって、管路11が管路16に切り替えられると、内側噴射筒6から無菌エアがボトル1内に噴射される。これにより、ボトル1内から殺菌用加熱水及び殺菌用薬液が速やかに排出されることとなり、殺菌工程の時間が短縮される。
【0038】
次に、上記殺菌用ノズル2を用いてボトル1を殺菌する方法について説明する。
【0039】
(1)ボトル1はあらかじめブロー成形されたものが用意され、図1のごとくグリッパ5で口部4を把持され、倒立状態とされる。
【0040】
(2)図1及び図2に示すように、ボトル1の下向きになった口部4からボトル殺菌用ノズル2がボトル1内に所定長さだけ挿入され、内側噴射筒6の吐出口6aがボトル1の胴部3内の口部4に近い位置に停止し、外側噴射筒7の吐出口7aがボトル1の口部4内で停止する。
【0041】
(3)図2に示すように、内側噴射筒6内の第一の流路と外側噴射筒7内の第二の流路に各々殺菌用加熱液a,bが供給され、双方の吐出口6a,7aから同時に殺菌用加熱液a,bが各々吐出される。
【0042】
内側噴射筒6の吐出口6aから吐出された殺菌用加熱液aは、ボトル1の胴部3の内面に接触し、胴部3の内面を加熱して殺菌しつつ胴部3の内面に沿って口部4へと流れ落ちる。また、流れ落ちながら同時に胴部3の内面を洗浄する。
【0043】
外側噴射筒7の吐出口7aからボトル1の口部4内で吐出された殺菌用加熱液bは、反転部9に当たってボトル1の口部4内を開口側へと逆流する。
【0044】
この逆流する殺菌用加熱液bは上記ボトル1の胴部3内に噴射された殺菌用加熱液aと合流し、ボトル1の口部4の内面に沿って流下しつつ口部4の内面を殺菌する。また、同時に口部4の内面を洗浄する。
【0045】
(4)上記内側噴射筒6の吐出口6aから殺菌用加熱液aが吐出され、また、外側噴射筒7から殺菌用加熱液bが噴射され、ボトル1の内面と口部4の内面の殺菌がある程度進行すると、管路11が管路16に切り替えられ、無菌エアが内側噴射筒6からボトル1内に噴射される。この無菌エアによるボトル1内の昇圧により、使用済の殺菌用加熱水a,bがボトル1外に速やかに排出される。
【0046】
(5)ボトル1内に噴射された殺菌用加熱液a,bのすべてがボトル1外に排出された後、ボトル1は正立状態に戻され、必要であれば他の処理を施された後、飲料等の内容物が充填される。そして、ボトル1の口部4にキャップが被せられ、雌雄ネジの螺合によってボトル1が密封される。
【0047】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されることなく種々の形態にて実施可能である。例えば、本発明が適用される中空体であるボトルはPET製に限定されず、種々の材料で出来たボトルに適用することができる。また、本発明を適用しうる中空体は、ボトルに成形される前の予備成型品であるプリフォームであってもよい。また、殺菌用加熱液は熱水に限らず、過酢酸、過酸化水素、アルカリ、オゾン水、次亜塩素酸水、酸性水等の殺菌剤であってもよい。
【符号の説明】
【0048】
1…ボトル
2…殺菌用ノズル
4…口部
6…内側噴射筒
7…外側噴射筒
6a,7a…吐出口
9…反転部
a,b…殺菌用加熱液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空体を倒立状態にし、その下向きになった口部の中心軸に位置する第一の流路から殺菌用加熱液を中空体内に噴射して中空体内を殺菌しつつ、上記第一の流路を囲む第二の流路から他の殺菌用加熱液を上記口部内に噴射し、この第二の流路から噴射した殺菌用加熱液を上記口部内で反転させ、上記第一の流路から中空体内に噴射した殺菌用加熱液と合流させて上記口部の内面に沿って中空体外へと流しつつ口部を殺菌することを特徴とする中空体殺菌方法。
【請求項2】
請求項1に記載の中空体殺菌方法において、上記第一の流路から噴射する殺菌用加熱液の温度よりも、第二の流路から噴射する殺菌用加熱液の温度の方を高くしたことを特徴とする中空体殺菌方法。
【請求項3】
請求項1に記載の中空体殺菌方法において、上記第一の流路から殺菌用加熱液を噴射した後、上記第一の流路から無菌エアを中空体内に噴射することを特徴とする中空体殺菌方法。
【請求項4】
内外二重の噴射筒を有し、内側噴射筒はその吐出口が中空体の口部から中空体内に入り込んで殺菌用加熱液を中空体内に吐出し得るように形成され、外側噴射筒はその吐出口が上記口部内に止まって殺菌用加熱液を上記口部内に吐出し得るように形成され、上記外側噴射筒の吐出口の前方には、上記外側噴射筒の吐出口から吐出される殺菌用加熱液を上記口部内で反転させる反転部が設けられ、この反転部で反転した殺菌用加熱液と上記中空体内に吐出された殺菌用加熱液との合流したものを上記口部の内面と上記外側噴射筒との間から中空体外へ流出させるようにしたことを特徴とする中空体殺菌用ノズル。
【請求項5】
請求項4に記載の中空体殺菌用ノズルにおいて、上記内側噴射筒から殺菌用加熱液を噴射した後、上記内側噴射筒から無菌エアを中空体内に噴射可能にしたことを特徴とする中空体殺菌用ノズル。
【請求項6】
請求項4に記載の中空体殺菌用ノズルにおいて、上記反転部が上記内側噴射筒に取り付けられた鍔状突起であることを特徴とする中空体殺菌用ノズル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−126450(P2012−126450A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287656(P2010−287656)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】