説明

中空成形機のパリソン切断装置及び方法

【課題】本発明は、超音波振動を付加した一対の半円状刃部を用いて一瞬で平坦な切断面としてパリソンを切断することを目的とする。
【解決手段】本発明による中空成形機のパリソン切断装置及び方法は、カッター(3)が一対の切断刃(4,4)の先端のパリソン(1)の周面(1a)と接触する半円状刃部(11)と、各切断刃(4,4)に設けられた超音波ホーン(13,13)及びシリンダ(14,14)と、各切断刃(4,4)に接続された超音波振動発生器(15)と、よりなり、各切断刃(4,4)を超音波振動をかけた状態下でパリソン(1)に同時前進させて切断する構成と方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空成形機のパリソン切断装置及び方法に関し、特に、超音波振動を付加した一対の半円状刃部を用いて一瞬で平坦で水平な切断面としてパリソンを切断するための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種の中空成形機のパリソン切断装置及び方法としては、図3から図5で示されるように、特許文献1の構成を挙げることができる。
すなわち、図3から図5で示される構成において、符号1で示されるものは、図示しない押出機に接続されたクロスヘッド2から押出されて下方へ垂下するパリソンであり、前記クロスヘッド2の下面近傍位置には、カッター3の切断刃4が点線の位置から実線の位置にかけて図示しないシリンダを介して水平移動することができるように配設されている。
【0003】
前述のカッター3によって所定長さに切断された切断後のパリソン1は、前記クロスヘッド2の下方に位置する図示しない金型内か、又は、移送装置によりチャッキングされてクロスヘッド2から離間した位置の金型内に移送されて、所定の中空成形が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−62010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の中空成形機のパリソン切断装置及び方法は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、クロスヘッド2から垂下したパリソン1は上から流れているため、側面から切断刃4を移動させると、切断刃4の切り始めと切り終わりの時点での位置にどうしてもズレが生じ、図5で示されるように切断面10が傾斜した状態となる。
【0006】
さらに、クロスヘッド2から押出されて垂下するパリソン1は、クロスヘッド2の狭い流路を経て垂下するため、非常に柔らかく、かつ、波打っている状態であるため、平坦な傾斜切断面ではなく、図5に見られるように、凹凸状の傾斜切断面となり、この傾斜切断面はピンチ又はバリ部分であるため、成形時の不要な材料部分を減らすことは困難であった。
この傾斜切断面を水平な切断面とするには、切断刃4を極めて高速で移動させることも考えられるが、切断刃4を高速で移動させると、極めて危険で、安全な操業を確保することが難しく、例え、超高速で切断刃4を移動させたとしても、垂下するパリソン1を水平に切断することは、原理上においても困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による中空成形機のパリソン切断装置は、押出機が接続されたクロスヘッドから垂下する円筒状のパリソンをカッターで切断するようにした中空成形機のパリソン切断装置において、前記カッターは、前記パリソンの両側に互いに対向して配設された一対の切断刃と、前記各切断刃の先端の前記パリソンの周面と接触する刃部に形成された半円状刃部と、前記各切断刃に設けられた超音波ホーン及びシリンダと、前記各切断刃に接続された超音波振動発生器と、よりなり、前記各切断刃に超音波振動をかけた状態下で、前記シリンダを介して各切断刃を同時に前進させて前記パリソンに接することにより、前記パリソンが切断される構成であり、また、前記各切断刃の前記半円状刃部の両端に形成された平坦部を有し、前記パリソン切断時には、前記各切断刃の前記各平坦部が互いに当接する構成である。
また、本発明による中空成形機のパリソン切断方法は、押出機が接続されたクロスヘッドから垂下する円筒状のパリソンをカッターで切断するようにした中空成形機のパリソン切断方法において、前記カッターは、前記パリソンの両側に互いに対向して配設された一対の切断刃と、前記各切断刃の先端の前記パリソンの周面と接触する刃部に形成された半円状刃部と、前記各切断刃に設けられた超音波ホーン及びシリンダと、前記各切断刃に接続された超音波振動発生器と、よりなり、前記各切断刃に超音波振動をかけた状態下で、前記シリンダを介して各切断刃を同時に前進させて前記パリソンに接することにより、前記パリソンが切断される方法であり、また、前記各切断刃の前記半円状刃部の両端に形成された平坦部を有し、前記パリソンを切断時には、前記各切断刃の前記各平坦部が互いに当接する方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明による中空成形機のパリソン切断装置及び方法は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、押出機が接続されたクロスヘッドから垂下する円筒状のパリソンをカッターで切断するようにした中空成形機のパリソン切断装置において、前記カッターは、前記パリソンの両側に互いに対向して配設された一対の切断刃と、前記各切断刃の先端の前記パリソンの周面と接触する刃部に形成された半円状刃部と、前記各切断刃に設けられた超音波ホーン及びシリンダと、前記各切断刃に接続された超音波振動発生器と、よりなり、前記各切断刃に超音波振動をかけた状態下で、前記シリンダを介して各切断刃を同時に前進させて前記パリソンに接することにより、前記パリソンが切断されることにより、各切断刃がパリソンに接触した瞬間にパリソンが切断され、平坦で水平な切断面を得ることができる。
また、前記各切断刃の前記半円状刃部の両端に形成された平坦部を有し、前記パリソン切断時には、前記各切断刃の前記各平坦部が互いに当接することにより、各切断刃の切断ストロークを規定することができ、最小限のストロークで切断できるため、生産効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明による中空成形機のパリソン切断装置を示す切断構成図である。
【図2】図1のパリソン切断装置を示す構成図である。
【図3】従来のパリソン切断装置を示す構成図である。
【図4】図3の切断状態を示す平面図である。
【図5】従来のパリソンの切断面を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、超音波振動を付加した一対の半円状刃部を用いて一瞬で平坦で水平な切断面としてパリソンを切断するようにした中空成形機のパリソン切断装置及び方法を提供することを目的とする。
【実施例】
【0011】
以下、図面と共に本発明による中空成形機のパリソン切断装置及び方法の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分には、同一符号を用いて説明する。
図1及び図2において符号1で示されるものは、図示しない押出機に接続されたクロスヘッド2から押出されて下方へ垂下する筒状のパリソンであり、このクロスヘッド2の下方近傍位置には、カッター3が配設されている。
【0012】
前記カッター3は、前記パリソン1を介して互いに対抗配置された一対の切断刃4,4と、各切断刃4,4の先端の内側の刃部に形成された半円状刃部11,11と、各半円状刃部11,11の両端に形成された平坦部12,12と、前記各切断刃4,4の後部に設けられた超音波ホーン13,13及びシリンダ14,14と、前記各超音波ホーン13,13に接続された共通の超音波振動発生器15と、から主として構成され、前記カッター3は、クロスヘッド2の下方位置で図示しない中空成形機の一部に組み込まれている。
【0013】
次に、動作について述べる。まず、前述の構成において、クロスヘッド2から押出されて垂下したパリソン1が所定長さになった時点で、シリンダ14,14を介して超音波振動が付加されている各切断刃4,4を同時に前進させると、パリソン1の周面1aに各半円状刃部11,11が接触すると同時に、一瞬にしてパリソン1が切断され、図示していないが、水平な切断面を得ることができる。
【0014】
前述の場合、各切断刃4,4によってパリソン1を振動と発熱の作用により押し付け力なしに一瞬で切断した瞬間には、各切断刃4,4の各平坦部12,12が互いに当接するため、各切断刃4,4の切断ストロークは、各平坦部12,12の当接によって決められるため、ストッパ等は特になくても各切断刃4,4の位置決めが行われる。
尚、各切断刃4,4の切断ストロークは、各切断刃4,4がパリソン1の周面1aに軽くタッチする程度とし、超音波の周波数及び出力は、パリソン1の粘度及び形状によって種々変更して設定することが可能であり、また、半円状刃部11,11の半径もパリソン1の直径に応じて変更する必要がある。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明による中空成形機のパリソン切断装置及び方法は、中空成形用の単層及び多層、あるいは、直径の大小に拘わらず適用できるものである。
【符号の説明】
【0016】
1 パリソン
1a 周面
2 クロスヘッド
3 カッター
4 切断刃
11 半円状刃部
12 平坦部
13 超音波ホーン
14 シリンダ
15 超音波振動発生器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出機が接続されたクロスヘッド(2)から垂下する円筒状のパリソン(1)をカッター(3)で切断するようにした中空成形機のパリソン切断装置において、
前記カッター(3)は、前記パリソン(1)の両側に互いに対向して配設された一対の切断刃(4,4)と、前記各切断刃(4,4)の先端の前記パリソンの周面と接触する刃部に形成された半円状刃部(11)と、前記各切断刃(4,4)に設けられた超音波ホーン(13,13)及びシリンダ(14,14)と、前記各切断刃(4,4)に接続された超音波振動発生器(15)と、よりなり、
前記各切断刃(4,4)に超音波振動をかけた状態下で、前記シリンダ(14,14)を介して各切断刃(4,4)を同時に前進させて前記パリソン(1)に接することにより、前記パリソン(1)が切断されることを特徴とする中空成形機のパリソン切断装置。
【請求項2】
前記各切断刃(4,4)の前記半円状刃部(11,11)の両端に形成された平坦部(12,12)を有し、前記パリソン切断時には、前記各切断刃(4,4)の前記各平坦部(12,12)が互いに当接することを特徴とする請求項1記載の中空成形機のパリソン切断装置。
【請求項3】
押出機が接続されたクロスヘッド(2)から垂下する円筒状のパリソン(1)をカッター(3)で切断するようにした中空成形機のパリソン切断方法において、
前記カッター(3)は、前記パリソン(1)の両側に互いに対向して配設された一対の切断刃(4,4)と、前記各切断刃(4,4)の先端の前記パリソン(1)の周面(1a)と接触する刃部に形成された半円状刃部(11)と、前記各切断刃(4,4)に設けられた超音波ホーン(13,13)及びシリンダ(14,14)と、前記各切断刃(4,4)に接続された超音波振動発生器(15)と、よりなり、
前記各切断刃(4,4)に超音波振動をかけた状態下で、前記シリンダ(14,14)を介して各切断刃(4,4)を同時に前進させて前記パリソン(1)に接することにより、前記パリソン(1)が切断されることを特徴とする中空成形機のパリソン切断方法。
【請求項4】
前記各切断刃(4,4)の前記半円状刃部(11,11)の両端に形成された平坦部(12,12)を有し、前記パリソン(1)を切断時には、前記各切断刃(4,4)の前記各平坦部(12,12)が互いに当接することを特徴とする請求項3記載の中空成形機のパリソン切断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−224789(P2011−224789A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93800(P2010−93800)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】