説明

中空成形機用パリソン肉厚調整方法及び装置

【課題】本発明は、クロスヘッド内部温度をパリソン設定波形の補正に用い、安定した中空成形品を得ることを目的とする。
【解決手段】本発明による中空成形機用パリソン肉厚調整方法及び装置は、パリソン(8)の肉厚(9)を調整するためのパリソンコントローラ(10)は、クロスヘッド(2)に設けられた温度検出センサ(42)から検出されたクロスヘッド(2)内のクロスヘッド内部温度(40a)を成形条件であるパリソン設定波形(32a)の補正に用いる方法と構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空成形機用パリソン肉厚調整方法及び装置に関し、特に、クロスヘッド内部温度をパリソン設定波形の補正に用い、安定した中空成形品を得るための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種の中空成形機用パリソン肉厚調整方法及び装置としては、例えば、特許文献1〜3に開示された方法を挙げることができる。
まず、代表的な方法として、前述の特許文献1に開示されたパリソン肉厚制御回路及びそれを用いた中空成形機の肉厚調整方法においては、図5及び図6に示されるように、パリソン下端と基準位置間の距離をパリソン長検出用リニアセンサで検出した検出信号を用い、パリソン設定波形の重みを補正することによって得たパリソン設定波形を用いて中空成形機の肉厚調整装置を制御してパリソンのパリソン長を一定に制御するものである。
すなわち、図5において符号1で示されるものは一部を省略した中空成形機であり、この中空成形機1のクロスヘッド2にはコア3を内設したダイ4が設けられている。
前記クロスヘッド2の上部には、エアモータ又は電動モータ等の駆動体からなる肉厚調整装置5が設けられ、この肉厚調整装置5に接続されたコアロッド6によって前記コア3の上下動が自在に行われ、コア3とダイ4との間に形成された輪状の吐出口であるダイギャップ7から押出されるパリソン8の肉厚9を制御することができるように構成されている。
【0003】
前記ダイ4の下方位置には、前記パリソン8のパリソン下端20と床等の基準位置21との間の距離22を検出し、パリソン8の実際の長さ(パリソン長)を直接検出するためのパリソン長検出用リニアセンサ23が設けられており、このパリソン長検出用リニアセンサ23は、例えば、超音波又はレーザ等のセンサで構成されている。尚、前記距離22の検出によりパリソン8の長さが検出できるように予め設定されている。
【0004】
前記パリソン長検出用リニアセンサ23で検出されたパリソン8の長さ(パリソン長)を示す検出信号24は、前記肉厚調整装置5を制御するためのパリソン肉厚指令25を出力するためのパリソン肉厚制御回路10に入力されている。
【0005】
前記パリソン肉厚制御回路10は、パリソン設定値30aを設定するパリソン設定部30と、前記パリソン設定値30aが入力され図5で示されるようにオペレータが操作するパリソン8の波形設定値31(肉厚プロファイル)を設定するためのパリソン波形設定部32と、前記パリソン設定値30aが入力され前記パリソン8の波形設定値31におけるパリソン8の重み設定値33を設定するためのパリソン重み設定部36と、前記重み設定値33が入力される減算部34と、前記減算部34からの減算出力34a及び前記波形設定値31が入力される加算部35と、前記検出信号24を取り込み予め決められた値に対する偏差24aを前記減算部34に入力するための肉厚補正演算部24Aとよりなり、前記加算部35から前記パリソン肉厚指令25が出力されるように構成されている。
【0006】
前記パリソン8は、単位時間毎にカッティングされ、それを中空成形機に組み込まれた金型で挟み成形している。この単位時間当たりの押出しを、1ショットとしている。この1ショットを押出す過程において、時間毎にオペレータがパリソン8の設定を行う。これがいわゆるパリソンコントロールである。
このパリソンコントロールは、時間軸に対し、図2のように、肉厚を可変させるという制御であるが、その設定はオペレータがそれぞれ、肉厚プロファイルと呼ばれるパリソンの波形設定値31(X軸が時間、Y軸が肉厚)を設定し、それに基づき肉厚調整装置5を制御している。
このオペレータの設定したパリソンの波形設定値31は、データとして図示しないメモリに保存され、いつでも読み出すことが可能となっている。
【0007】
従って、成形開始直後は、クロスヘッド2の温度、樹脂圧力、樹脂温度等の影響で、パリソン8の肉厚9は安定しない(再現性がない)。しかし数時間経過後は安定したパリソン8となり、毎ショット安定した肉厚9となる(再現性がある)。よって、安定するまでの数時間は、オペレータがパリソンコントロールを行い、微調整を繰返している。一度設定したパリソンの波形設定値31は、運転開始時には調節するものの、結局は前日設定した波形設定値31通りとなる。
前記クロスヘッド2から出てくる1ショットのパリソン8の量は、ほぼ安定している。従って、肉厚の厚薄によってパリソン長さが変化することになる。肉厚が厚くなるとパリソン長は短く(基準位置21からパリソン下端20までの距離22は長く)、薄くなるとパリソン長は長く(基準位置21からパリソン下端20までの距離22は短く)なる。
このパリソン長さが一定でないと、それを金型で挟み成形した場合、製品とバリ(金型からはみ出した部分)との割合が変わってしまうことになり、成形品が不安定な重量となってしまう。
【0008】
まず、クロスヘッド2のダイ4の下方に設けたパリソン長検出用リニアセンサ23を用いると共に、クロスヘッド2からはパリソン8をある決められた量で押出しを続ける。このパリソン8は一定時間毎(1ショット又は1サイクル)にカッティングされ下方の図示しない金型に挟まれて成形されるが、その1ショット毎のパリソン長を測定して検出信号24が前記肉厚補正演算部24Aに入力される。
【0009】
従って、オペレータがパリソン設定部30で設定したパリソン設定値30aを波形設定値31と重み設定値33に分割して減算部34と加算部35に入力し、前述の偏差24aを用いて重み設定値33を補正し、前記波形設定値31と減算出力34aを用いて得たパリソン肉厚指令25が肉厚調整装置5に入力されてコア3が上下動し、パリソン8の肉厚9が自在に制御される。
尚、オペレータが設定したパリソンの波形設定値31はその特徴が従来のように消されることもなく前記メモリ内に保持され、パリソンコントロールの補正を行うことができる。
【0010】
また、前述の特許文献2に開示されたパリソン肉厚調整方法及び装置においては、図示していないが、パリソン設定波形の補正を1次、2次曲線にて補正を行っていた。
また、前述の特許文献3に開示されたパリソン肉厚調整方法及び装置においては、図示していないが、パリソン設定波形の補正をパリソン上部、中部、下部に3分割して補正することにより、補正の自由度を上げたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−305881号公報
【特許文献2】特開2007−296786号公報
【特許文献3】特開2008−254267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来の中空成形機用パリソン肉厚調整方法及び装置は、以上のように構成されているため、次のような課題が存在していた。
すなわち、前述の特許文献1〜3の方法の場合、何れもパリソン長を一定に保つこと、また、成形中に変化していくパリソン長を補正していくことに着目されている。
しかし、通常成形条件つまり基準位置は試作成形により決定される。そして生産運転は後日行われるため、特許文献1のように、パリソン下端と基準位置間の距離を測定し、パリソン下端と基準位置を合わせる方法では、クロスヘッド内部温度が上昇しきっておらず、1ショット目はパリソンが短く成形が失敗することは明らかである。更に既に押し出されたパリソンのパリソン長を検出するため、パリソン設定波形の補正に時間的誤差が生まれる。また、この方法は押出量が一定であることが前提になっている。つまり、押出量が下がるとパリソン長が短くなる。するとパリソン長を補正するためにパリソン設定波形のウェイトを減らす。これにより、中空成形された成形品としての例えばタンクは肉厚が薄くなり、強度不足等の不良が発生する。また、逆に押出量が上がった場合は、タンクの肉厚は厚くなり、容量不足、重量オーバー等の不良が発生することが考えられる。パリソン設定波形の補正に関する前述の特許文献2及び3の方法では、波形の初期補正についてはオペレータに依存しており個人差が出てしまうことになっていた。
【0013】
また、従来、一般に、クロスヘッドのヒータはクロスヘッドの周りに設けられているため、その中心部になるほど昇温が遅い。また、加熱された溶融樹脂がクロスヘッドを通過することにより、クロスヘッド内部温度は運転中徐々に上昇する。従来、クロスヘッド内部温度は温度管理、異常有無確認のため測定されていたが、クロスヘッド内部温度をパリソン設定波形の補正に使用することは全く行われていなかった。
【0014】
そこで本発明は前述のような従来のものの課題を解決するためになされたもので、パリソン長の変化に大きく影響するドローダウン、つまり樹脂温度に着目し、成形初期から安定期にかけて変化していくクロスヘッド内部温度をパラメータにすることにより、成形初期にオペレータがパリソン設定波形を変更しなくても、安定して成形でき、またそれに伴いオペレータの個人差が中空成形に影響することのないような装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明による中空成形機用パリソン肉厚調整装置は、クロスヘッドの下部のダイとコア間に形成されたダイギャップからパリソンを吐出垂下させる場合に、前記クロスヘッドの上部に設けられパリソンコントローラにより制御される肉厚調整装置によって前記ダイギャップを調整し、前記パリソンの肉厚を変えるようにした中空成形機用パリソン肉厚調整方法において、前記パリソンコントローラは、前記クロスヘッドに設けられた温度検出センサから検出された前記クロスヘッド内のクロスヘッド内部温度を成形条件であるパリソン設定波形の補正に用いる方法であり、また、前記パリソンコントローラは、前記クロスヘッド内部温度をパラメータとした補正式を作成する演算部と、前記演算部に入力するための成形条件決定時のパリソン設定波形を作成するためのパリソン波形設定部と、前記演算部に入力するためのクロスヘッド内部温度を作成するためのクロスヘッド内部温度作成部と、前記演算部の前記クロスヘッド内部温度をパラメータとした補正式に基づいて作成した補正後パリソン設定波形を前記肉厚調整装置に入力するための補正後パリソン波形設定部とからなる方法であり、また、前記クロスヘッド内部温度をパラメータとした前記パリソン設定波形の補正式を前記演算部で作成し、前記演算部で前記パリソンの成形条件を決定した際の前記クロスヘッド内部温度と成形初期のクロスヘッド内部温度との差から前記クロスヘッド内部温度をパラメータとした前記補正式にて計算を行い、前記補正式は、ウェイト補正モード、拡大率補正モード、1次、2次補正モード及び実測値補正モードの何れかである方法であり、また、前記実測値補正モードは、予め設定された2つの異なる設定温度によって前記成形条件を決定し、前記2つの成形条件の前記各クロスヘッド内部温度の差から前記補正式を決定する方法であり、また、本発明による中空成形機用パリソン肉厚調整装置は、クロスヘッドの下部のダイとコア間に形成されたダイギャップからパリソンを吐出垂下させる場合に、前記クロスヘッドの上部に設けられパリソンコントローラにより制御される肉厚調整装置によって前記ダイギャップを調整し、前記パリソンの肉厚を変えるようにした中空成形機用パリソン肉厚調整装置において、前記パリソンコントローラは、前記クロスヘッドに設けられた温度検出センサから検出された前記クロスヘッド内のクロスヘッド内部温度を成形条件であるパリソン設定波形の補正に用いる構成であり、また、前記パリソンコントローラは、前記クロスヘッド内部温度をパラメータとした補正式を作成する演算部と、前記演算部に入力するための成形条件決定時のパリソン設定波形を作成するためのパリソン波形設定部と、前記演算部に入力するためのクロスヘッド内部温度を作成するためのクロスヘッド内部温度作成部と、前記演算部の前記クロスヘッド内部温度をパラメータとした補正式に基づいて作成した補正後パリソン設定波形を前記肉厚調整装置に入力するための補正後パリソン波形設定部とからなる構成であり、また、前記クロスヘッド内部温度をパラメータとした前記パリソン設定波形の補正式を前記演算部で作成し、前記演算部で前記パリソンの成形条件を決定した際の前記クロスヘッド内部温度と成形初期のクロスヘッド内部温度との差から前記クロスヘッド内部温度をパラメータとした前記補正式にて計算を行い、前記補正式は、ウェイト補正モード、拡大率補正モード、1次、2次補正モード及び実測値補正モードの何れかである構成であり、また、前記実測値補正モードは、予め設定された2つの異なる設定温度によって前記成形条件を決定し、前記2つの成形条件の前記各クロスヘッド内部温度の差から前記補正式を決定する構成である。
【発明の効果】
【0016】
本発明による中空成形機用パリソン肉厚調整装置は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、クロスヘッドの下部のダイとコア間に形成されたダイギャップからパリソンを吐出垂下させる場合に、前記クロスヘッドの上部に設けられパリソンコントローラにより制御される肉厚調整装置によって前記ダイギャップを調整し、前記パリソンの肉厚を変えるようにした中空成形機用パリソン肉厚調整方法において、前記パリソンコントローラは、前記クロスヘッドに設けられた温度検出センサから検出された前記クロスヘッド内のクロスヘッド内部温度を成形条件であるパリソン設定波形の補正に用いることにより、クロスヘッド内部温度をパラメータにした補正式を使用することにより、成形初期から安定した成形を行うことができる効果がある。また、オペレータによるパリソン設定波形の調整が無いため、オペレータによる個人差が出ないといった効果もある。更にクロスヘッド内部温度安定、つまりパリソンのドローダウン量が安定した後に押出量が増減しても間違った補正を行うことは無いという効果がある。
【0017】
また、前記クロスヘッド内部温度をパラメータとした前記パリソン設定波形の補正式を前記演算部で作成し、前記演算部で前記パリソンの成形条件を決定した際の前記クロスヘッド内部温度と成形初期のクロスヘッド内部温度との差から前記クロスヘッド内部温度をパラメータとした前記補正式にて計算を行い、前記補正式は、ウェイト補正モード、拡大率補正モード、1次、2次補正モード及び実測値補正モードの何れかであると共に、パリソン設定波形の補正式については、実測値補正モードは2つの異なる設定温度にて成形条件を決定し、2つの成形条件のクロスヘッド内部温度差から波形設定値の補正式を決定するものであるため、パラメータの入力が必要なく経験による調整も必要ないという画期的な効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による中空成形機用パリソン肉厚調整方法及び装置の概略構成図である。
【図2】本発明における補正後パリソン設定波形を示す波形図である。
【図3】本発明における補正式を作る場合の4つの補正モードを示す図式である。
【図4】本発明における補正式の各補正モードのフローを示すフロー図である。
【図5】従来方法を示す概略構成図である。
【図6】図5の従来方法におけるパリソンの波形設定を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、クロスヘッド内部温度をパリソン設定波形の補正に用い、安定した中空成形品を得るようにした中空成形機用パリソン肉厚調整方法及び装置を提供することを目的とする。
【実施例】
【0020】
以下、図面と共に本発明による中空成形機用パリソン肉厚調整方法及び装置の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分については、同一符号を用いて説明する。
図1において符号1で示されるものは一部を省略した概略の中空成形機であり、この中空成形機1のクロスヘッド2にはコア3を内設したダイ4が設けられている。
【0021】
前記クロスヘッド2の上部には、エアモータ又は電動モータ等の駆動体からなる肉厚調整装置5が設けられ、この肉厚調整装置5に接続されたコアロッド6によって前記コア3の上下動が自在に行われ、このコア3とダイ4との間に形成された輪状の吐出口であるダイギャップ7から押出されるパリソン8の肉厚を制御することができるように構成されている。
【0022】
前記肉厚調整装置5には、パリソン8の肉厚9を制御するためのパリソンコントローラ10が接続されており、このパリソンコントローラ10は、成形条件決定時のパリソン設定波形32aを作成するためのパリソン波形設定部32と、前記クロスヘッド2のクロスヘッド内部温度40aをパラメータとした補正式40bを作成するための演算部34と、クロスヘッド2内に設けられた温度検出センサ42からの前記クロスヘッド内部温度40aを蓄積してデータを作成するクロスヘッド内部温度作成部41と、前記演算部34において前記補正式40bにより補正された補正後パリソン設定波形25aを作成して前記肉厚調整装置5に入力するための補正後パリソン波形設定部25と、から構成されている。
【0023】
次に、動作について述べる。まず、図示しない押出機によって溶融・混練された樹脂を、クロスヘッド2によってパリソン8としてダイギャップ7から下方へ吐出させる際、このダイギャップ7の開度をコア3の上下動によって調節することにより、パリソン8の肉厚9に厚薄が生じ、パリソンコントローラ10による肉厚9の制御を行っている。
【0024】
前記パリソン8は、単位時間毎に図示しないカッター装置で一定の長さに切断され、この切断されたパリソン8は中空成形機1に組込まれた金型(図示せず)で挟持されて中空成形される。
前記パリソンコントローラ10によるパリソン8の肉厚制御は、図示していないが、時間軸に対して肉厚を可変させる制御であるが、その設定はオペレータが各々成形条件決定時のパリソン設定波形32aを設定し、このパリソン設定波形32aに基づいて肉厚調整装置5を制御している方法が一般に採用され、このオペレータが設定した前記成形条件決定時のパリソン設定波形32aは、データとして前記演算部34に記憶され、何時でも読み出すことができるように構成されている。
【0025】
次に、本発明の特徴である前記クロスヘッド内部温度40aをパラメータとした補正式40bにおけるクロスヘッド内部温度40aをパラメータとした補正について説明する。
まず、クロスヘッド2内のクロスヘッド内部温度40aを温度検出センサ42によって測定し、このクロスヘッド内部温度40aをパラメータとした補正式40bによって前記成形条件決定時のパリソン設定波形32aを補正する。
前記補正式40bに基づいて前記生計条件決定時のパリソン設定波形32aが補正され、前記補正後パリソン設定波形設定部25において、最終出力パリソン波形である補正後パリソン設定波形25aが形成され、この補正後パリソン設定波形25aが肉厚調整装置5に入力されてパリソン8の肉厚9の制御が行われる。
【0026】
前記パリソン設定波形は、一例を示すと、図3の各ポイントの肉厚指令値H(H,H,H,H,H×1,H×2)によって構成され、この肉厚指令値Hは、波形設定値S、ウェイトW及び拡大率Eから計算され、実際には、図2で示されるように、ポイントとストロークを有する補正後パリソン設定波形25aが形成される。
【0027】
従って、本発明では、成形条件決定時パリソン設定波形32aを前記ウェイトW、拡大率Eによって補正するウェイト補正モード、拡大率補正モード、任意の1次もしくは2次曲線によって補正する1次、2次補正モード、更に2つの異なる設定温度にて成形条件を決定し、2つの成形条件のクロスヘッド内部温度40aの差から波形設定値の補正をする実測値補正モードの4種類のいずれかを使用する。
前記ウェイト補正モード、拡大率補正モード、1次、2次補正モードについては、従来行われてきた補正式にクロスヘッド内部温度をパラメータとして導入し、クロスヘッド内部温度を測定することにより自動的に補正後パリソン設定波形25aが演算されるものである。その際、各々のパラメータをオペレータが入力・微調整する必要がある。
前記実測値補正モードは、2つの異なる設定温度にて成形条件を決定し、2つの成形条件のクロスヘッド内部温度40aの差から補正式を作成し、成形条件決定時パリソン設定波形32aを補正する。そのためオペレータによるパラメータの入力が必要ない。
【0028】
従って、前述のように、クロスヘッド内部温度をパラメータとしたパリソン設定波形32aの補正式40bを作成し、成形条件を決定した際のクロスヘッド内部温度を記憶もしくは入力することにより、成形初期のクロスヘッド内部温度40aとの差により、パリソン設定波形32aを自動補正するものである。
従って、成形初期のクロスヘッド内部温度40aは低いため、パリソン8はドローダウンが減少し、パリソン8上部、中部の肉厚が厚くなり全体的にはパリソン長が短くなる傾向にある。そこで、成形条件決定時のクロスヘッド内部温度40aと成形初期のクロスヘッド内部温度40aの差からクロスヘッド内部温度40aをパラメータとした補正式40bにて計算を行い、パリソン設定波形32aの補正を自動で行うことにより、成形初期にオペレータがパリソン設定波形を変更しなくても安定して成形することができる。またそれに伴いオペレータの個人差が出ず、安定した成形品を打つことができる。
【0029】
また、本発明では、成形条件時のクロスヘッド内部温度40aと成形初期のクロスヘッド内部温度40aの差からクロスヘッド内部温度40aをパラメータとした補正式40bを次の中から選択可能にした。すなわち、前述のウェイト補正モード、拡大率補正モード、1次、2次補正モード、実測値補正モードの4種類である。前述のウェイト補正モード、拡大率補正モード、1次、2次補正モードはこれまで行われてきた補正にクロスヘッド内部温度をパラメータとして導入したものである。実測値補正モードは2つの異なる設定温度にて成形条件を決定し、2つの成形条件のクロスヘッド内部温度差から補正式を決定するものである。
前述のウェイト補正モード、拡大率補正モード、1次、2次補正モードの補正式には、各々パラメータが存在し、パラメータはオペレータにより入力する必要がある。しかし、パラメータの決定には経験による調整が必要になる。しかし、実測値補正モードは2つの成形条件から自動的に補正式が決定するためパラメータの入力が必要なく、経験による調整も必要ない。
【0030】
尚、図4の(A)には前述の実測値補正モードのフローが示され、図4の(B)には前述のウェイト/拡大率/1次、2次補正モードのフローが示されている。
すなわち、図4の(A)の実測値補正モードのフローにおいては、第1ステップ100で2つ以上の設定温度にてパリソン設定波形32aを作成し、第2ステップ101でクロスヘッド内部温度40aを測定し、第3ステップ102で前記クロスヘッド内部温度40aによりパリソン設定波形32aが自動補正され、第4ステップ103でコア3が補正後パリソン設定波形25aにより制御され動作することによって、所定の肉厚9のパリソン8が得られる。
【0031】
また、図4の(B)には、前述のウェイト/拡大率/1次、2次補正モードのフローが示されている。
すなわち、図4の(B)の前述の各モードのフローにおいては、第1ステップ200で、1つの設定温度にてパリソン設定波形32aを作成し、第2ステップ201でパラメータを入力し、第3ステップ202でクロスヘッド内部温度40aを測定し、第4ステップ203で、前記クロスヘッド内部温度40aによりパリソン設定波形32aが自動補正され、第5ステップ204で、コア3が補正後パリソン設定波形32aにより制御されて動作し、第6ステップ205で、パラメータの微調整を行い、以下、前記パラメータが決定するまで、第3ステップ202から第6ステップ305を矢印で示されるように繰り返す。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明による中空成形機用パリソン肉厚調整方法及び装置は、クロスヘッドに設けられた温度検出センサで得られたクロスヘッド内部温度をパラメータにした補正式を使用して成形初期から安定した成形を行うことができ、中空成形の歩留まりを大きく向上できる。
【符号の説明】
【0033】
1 中空成形機
2 クロスヘッド
3 コア
4 ダイ
5 肉厚調整装置
6 コアロッド
7 ダイギャップ
8 パリソン
9 肉厚
10 パリソンコントローラ
25 補正後パリソン波形設定部
25a 補正後パリソン設定波形
32 パリソン波形設定部
32a 成形条件決定時のパリソン設定波形
34 演算部
40a クロスヘッド内部温度
40b 補正式
41 クロスヘッド内部温度作成部
42 温度検出センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロスヘッド(2)の下部のダイ(4)とコア(3)間に形成されたダイギャップ(7)からパリソン(8)を吐出垂下させる場合に、前記クロスヘッド(2)の上部に設けられパリソンコントローラ(10)により制御される肉厚調整装置(5)によって前記ダイギャップ(7)を調整し、前記パリソン(8)の肉厚(9)を変えるようにした中空成形機用パリソン肉厚調整方法において、
前記パリソンコントローラ(10)は、前記クロスヘッド(2)に設けられた温度検出センサ(42)から検出された前記クロスヘッド(2)内のクロスヘッド内部温度(40a)を成形条件であるパリソン設定波形(32a)の補正に用いることを特徴とする中空成形機用パリソン肉厚調整方法。
【請求項2】
前記パリソンコントローラ(10)は、前記クロスヘッド内部温度(40a)をパラメータとした補正式(40b)を作成する演算部(34)と、前記演算部(34)に入力するための成形条件決定時のパリソン設定波形(32a)を作成するためのパリソン波形設定部(32)と、前記演算部(34)に入力するためのクロスヘッド内部温度(40a)を作成するためのクロスヘッド内部温度作成部(41)と、前記演算部(34)の前記クロスヘッド内部温度(40a)をパラメータとした補正式(40b)に基づいて作成した補正後パリソン設定波形(25a)を前記肉厚調整装置(5)に入力するための補正後パリソン波形設定部(25)とからなることを特徴とする請求項1記載の中空成形機用パリソン肉厚調整方法。
【請求項3】
前記クロスヘッド内部温度(40a)をパラメータとした前記パリソン設定波形(32a)の補正式(40b)を前記演算部(34)で作成し、前記演算部(34)で前記パリソン(8)の成形条件を決定した際の前記クロスヘッド内部温度(40a)と成形初期のクロスヘッド内部温度(40a)との差から前記クロスヘッド内部温度(40a)をパラメータとした前記補正式(40b)にて計算を行い、前記補正式(40b)は、ウェイト補正モード、拡大率補正モード、1次、2次補正モード及び実測値補正モードの何れかであることを特徴とする請求項1又は2記載の中空成形機用パリソン肉厚調整方法。
【請求項4】
前記実測値補正モードは、予め設定された2つの異なる設定温度によって前記成形条件を決定し、前記2つの成形条件の前記各クロスヘッド内部温度(40a)の差から前記補正式(40b)を決定することを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の中空成形機用パリソン肉厚調整方法。
【請求項5】
クロスヘッド(2)の下部のダイ(4)とコア(3)間に形成されたダイギャップ(7)からパリソン(8)を吐出垂下させる場合に、前記クロスヘッド(2)の上部に設けられパリソンコントローラ(10)により制御される肉厚調整装置(5)によって前記ダイギャップ(7)を調整し、前記パリソン(8)の肉厚(9)を変えるようにした中空成形機用パリソン肉厚調整装置において、
前記パリソンコントローラ(10)は、前記クロスヘッド(2)に設けられた温度検出センサ(42)から検出された前記クロスヘッド(2)内のクロスヘッド内部温度(40a)を成形条件であるパリソン設定波形(32a)の補正に用いることを特徴とする中空成形機用パリソン肉厚調整装置。
【請求項6】
前記パリソンコントローラ(10)は、前記クロスヘッド内部温度(40a)をパラメータとした補正式(40b)を作成する演算部(34)と、前記演算部(34)に入力するための成形条件決定時のパリソン設定波形(32a)を作成するためのパリソン波形設定部(32)と、前記演算部(34)に入力するためのクロスヘッド内部温度(40a)を作成するためのクロスヘッド内部温度作成部(41)と、前記演算部(34)の前記クロスヘッド内部温度(40a)をパラメータとした補正式(40b)に基づいて作成した補正後パリソン設定波形(25a)を前記肉厚調整装置(5)に入力するための補正後パリソン波形設定部(25)とからなることを特徴とする請求項5記載の中空成形機用パリソン肉厚調整装置。
【請求項7】
前記クロスヘッド内部温度(40a)をパラメータとした前記パリソン設定波形(32a)の補正式(40b)を前記演算部(34)で作成し、前記演算部(34)で前記パリソン(8)の成形条件を決定した際の前記クロスヘッド内部温度(40a)と成形初期のクロスヘッド内部温度(40a)との差から前記クロスヘッド内部温度(40a)をパラメータとした前記補正式(40b)にて計算を行い、前記補正式(40b)は、ウェイト補正モード、拡大率補正モード、1次、2次補正モード及び実測値補正モードの何れかであることを特徴とする請求項5又は6記載の中空成形機用パリソン肉厚調整装置。
【請求項8】
前記実測値補正モードは、予め設定された2つの異なる設定温度によって前記成形条件を決定し、前記2つの成形条件の前記各クロスヘッド内部温度(40a)の差から前記補正式(40b)を決定することを特徴とする請求項5ないし7の何れかに記載の中空成形機用パリソン肉厚調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−245693(P2012−245693A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119024(P2011−119024)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】