説明

中空押出成形物の水冷装置

【課題】成形物の径変化や真円度の低下を防止でき、成形物の歪みも生じにくく、高い寸法精度の中空押出成形品が得られる水冷装置の提供。
【解決手段】押出機Eから押し出される中空押出成形物Mを水W中に通過させて冷却する減圧水冷槽1と、下位に配置した調整水槽2と、調整水槽2内の水Wを給水ポンプP1を介して減圧水冷槽1内へ底部側から供給する給水管路L1と、調整水槽2内の水Wを冷却する冷水器3とを備える。減圧水冷槽1と調整水槽2の間に、減圧水冷槽1の水Wをオーバーフローさせて調整水槽2に流下させる溢流管路L2と、減圧水冷槽1内の水Wをその底部側から調整水槽2へ自然流下させる自然流下管路L3とが接続され、給水手段による給水量が自然流下管路L3による調整水槽への排水量より多く、その差に相当する水Wが溢流管路L2より調整水槽2に流下する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出機より連続的に略水平方向へ押し出される合成樹脂パイプやチューブ等の中空押出成形物を水中に通過させて冷却硬化させるための水冷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、長尺の押出成形品の製造ラインでは、押出機から下流側に順次、水冷槽、引取り機、切断機が配置しており、押出機で加熱溶融した合成樹脂を押出機出口のダイを通して所要の断面形状として連続的に略水平方向へ押し出し、この高温の押出成形物を引取り機を介して引き取りながら、水冷槽の水中を通過させることによって冷却硬化させ、切断機で所定長さに切断して製品化する。
【0003】
しかして、水冷槽の水は、傍らに設けた貯水槽からポンプで供給し、水冷槽内の一定の水位を越える分を溢流管よりオーバーフローさせて該貯水槽へ戻す形で循環させるのが普通であるが、成形速度を高める目的で、溢流管とは別にポンプを介して強制的に貯水槽へ排出させる排出手段を設け、もって循環水量を多くして冷却効率を高めることも提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特許第3514740号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年における押出成形品の用途の広がりに伴い、特に精密機器や医療機器等に用いる合成樹脂パイプやチューブの如き中空押出成形品として、10μm台の高い寸法精度が要求されるようになっており、従来の水冷槽による冷却方式では対応困難になっている。すなわち、押出直後の中空押出成形物は元来より形態的に変形し易い上、このような高い寸法精度では、水冷槽の水中を通過する際の水圧による径変化や真円度の低下と共に、水流、水揺動、波立ち等による歪みまでが問題になる。従って、例えば前記提案のように強制的排水で循環水量を多くする方式では、水圧による径変化や真円度の低下に対処できない上、水流が速くなって水揺動や波立ちも生じ易くなるため、逆に寸法精度が悪化することになる。
【0005】
本発明は、上述の情況に鑑み、中空押出成形物の水冷装置として、水冷槽の水中を通過する際の水圧による成形物の径変化や真円度の低下を防止でき、しかも水流、水揺動、波立ち等による成形物の歪みも生じにくく、高い寸法精度の中空押出成形品が得られるものを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するための手段を図面の参照符号を付して示せば、請求項1の発明に係る中空押出成形物の水冷装置は、押出機Eから連続的に略水平方向へ押し出される中空押出成形物Mを水W中に通過させて冷却する減圧水冷槽1と、該減圧水冷槽1よりも下位に配置した調整水槽2と、この調整水槽2内の水Wを給水ポンプP1を介して前記減圧水冷槽1内へその底部側から供給する給水手段(給水管路L1)と、該調整水槽2内の水Wを冷却する水冷却手段(冷水器3)とを備え、前記減圧水冷槽1及び調整水槽2が密閉式で上部に空気層10,20を有し、これら両槽1,2の空気層10,20同士を連通する通気管路ALが設けられると共に、その空気層10,20を所定の減圧状態に設定する真空吸引手段(真空ポンプVP)が付設され、前記減圧水冷槽1と調整水槽2の間に、減圧水冷槽1の水面が所定高さ越える際に水Wをオーバーフローさせて調整水槽2に流下させる溢流管路L2と、減圧水冷槽1内の水Wをその底部側から調整水槽2へ自然流下させる自然流下管路L3とが接続され、前記給水手段による減圧水冷槽2への給水量が前記自然流下管路L3による調整水槽への排水量より多く、その差に相当する水Wが前記溢流管路L2より調整水槽2に流下するように構成されてなる。
【0007】
請求項2の発明は、前記請求項1の中空押出成形物の水冷装置において、前記真空吸引手段が前記調整水槽2側の空気を吸引するように設定されてなる構成としている。
【0008】
請求項3の発明は、前記請求項1又は2の中空押出成形物の水冷装置において、前記減圧水冷槽1と調整水槽2の少なくとも一方に、真空圧力計PGと、その計測値に応じて作動・停止する真空自動調整弁AVとが付設されてなる構成としている。
【0009】
請求項4の発明は、前記請求項1〜3のいずれかの中空押出成形物の水冷装置において、前記給水手段による調整水槽2から減圧水冷槽1への給水管路L1と、前記の自然流下管路L3とに、それぞれ流量計F1,F2が介装され、これら流量計F1,F2の計測値に基づいて給水手段による給水量を調整するように構成されてなる。
【発明の効果】
【0010】
以下に、本発明の効果について、図面の参照符号を付して説明する。まず、請求項1の発明に係る水冷装置では、押出機Eから連続的に略水平方向へ押し出される中空押出成形物Mを減圧水冷槽1の水W中に通過させて冷却するが、該減圧水冷槽1内の空気層10を真空吸引手段で減圧することにより、中空押出成形物Mに加わる水圧が軽減ないし相殺されると共に、両槽1,2の空気層10,20同士が通気管路ALによって連通しているため、減圧水冷槽1内の空気層10の減圧状態が安定する一方、該減圧水冷槽1と調整水槽2との間の水循環において、ポンプP1による調整水槽2から減圧水冷槽1への給水が該減圧水冷槽1の底部側に導入されると共に、該減圧水冷槽1から調整水槽2への排水が溢流管路L2及び自然流下管路L3による自然流下によって行われるから、該減圧水冷槽1内での水流が穏やかで乱れのない安定したものとなり、波立ちや揺動を生じず、波立ちによる空気層10の圧力変動も発生しない。従って、減圧水冷槽1の水W中を通過する中空押出成形物Mは、中空内部の空気圧で張り詰めた状態になり、もって径変化を生じず高い真円度が得られ、しかも水の流れ、揺動、波立ち、圧力変動等に起因した歪みも抑えられ、高い寸法精度を持つ中空押出成形品となる。
【0011】
請求項2の発明によれば、前記の水冷装置において、前記真空吸引手段が調整水槽2側の空気を吸引することから、その吸引に伴う気流の影響が減圧水冷槽1内の空気層10に直接には及ばず、該空気層10全体が均一な減圧状態に保持され、もって中空押出成形物Mの寸法精度がより向上する。
【0012】
請求項3の発明によれば、前記の水冷装置において、減圧水冷槽1と調整水槽2の少なくとも一方に、真空圧力計PGと、その計測値に応じて作動・停止する真空自動調整弁AVとが付設されているから、減圧水冷槽1内の空気層10を一定の減圧状態を維持するように自動調整できる。
【0013】
請求項4の発明によれば、前記の水冷装置において、給水管路L1と自然流下管路L3に介装された流量計F1,F2の計測値に基づいて、給水手段による給水量を容易に調整できると共に、その給水量調整の自動化も容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の一実施形態に係る中空押出成形物の水冷装置について、図面を参照して具体的に説明する。図1は本発明の水冷装置を適用した中空押出成形物の製造ラインの概略側面図、図2は同水冷装置の配管系統を含む概略縦断側面図、図3は同水冷装置の減圧水冷槽の縦断正面図である。
【0015】
図1に示す中空押出成形物の製造ラインでは、押出機Eから下流側に順次、水冷装置A、引取り機P、切断機Cが配置しており、押出機E内で加熱溶融した合成樹脂を該押出機E出口のダイDを通してパイプやチューブの如き所要の中空断面形状として連続的に略水平方向へ押し出し、この高温の中空押出成形物Mを引取り機Pを介して引き取りながら、水冷装置Cにおける減圧水冷槽1の水中を通過させることによって冷却硬化させ、切断機Cで所定長さに切断して製品化するようになっている。
【0016】
図2に示すように、水冷装置Aは、水平方向に長尺な箱状で密閉式の減圧水冷槽1の下方に、横長直方体形状で密閉式の調整水槽2と、同じく横長直方体形状で上方へ開放した貯水槽4とが配置すると共に、該減圧水冷槽1の側方に、水冷却手段としての冷水器3が配置している。
【0017】
減圧水冷槽1は、槽体11の中空押出成形物Mの入口となる前端壁11aに、該成形物Mの外径を規制するアウトサイジング器12が嵌装されると共に、内部の前部側に、各々上端を開口した溢流パイプ5及び通気パイプ6が内底から垂直に立設されている。しかして、通気パイプ6の上端は溢流パイプ5の上端よりも高位に設定され、減圧水冷槽1内には冷却用の水Wが溢流パイプ5の開口位置で規制される水位で収容され、その上部側が空気層10をなしている。また、減圧水冷槽1の底部には、複数の水導入口13及び水導出口14a,14bが設けてある。更に、この減圧水冷槽1には、槽前部側の水温を測定表示する水温計WT、空気層10に繋がる真空調整弁CV、空気層10の圧力を計測する真空圧力計PG、真空圧力計PGの計測値に応じて作動・停止する自動圧力調整弁OVがそれぞれ付設されている。
【0018】
一方、減圧水冷槽1の出口側である後端には、槽体11の延長部としてシール槽7が一体形成され、該シール槽7と減圧水冷槽1との隔壁7aならびに該シール槽7の後端壁7bには、中空押出成形物Mを液密に通過させるシール材71が嵌装されている。そして、シール槽7内にも、上端を槽頂部近くに開口した溢流パイプ72が内底から垂直に立設されると共に、底部に水導入口73が設けてある。
【0019】
更に図3で詳細に示すように、減圧水冷槽1の内底部には断面T字形のガイド取付レール15が長手方向に沿って配設されており、このガイド取付レール15には略L字形の複数のガイド支持枠16…が所定間隔置きに嵌装されている。そして、各ガイド支持枠16の垂直片16aの上部に、糸巻形のガイドローラー17を回転自在に枢支した水平支軸17aが保持されており、中空押出成形物Mがこれらガイドローラー17…の下側を通って浮上防止されながら該減圧水冷槽1内の水W中を移動するように設定されている。なお、ガイド支持枠16は、下端のコ字枠部16aをガイド取付レール15に摺動自在に嵌合し、固定ねじ15cの締め付けによって任意の位置で固定できると共に、垂直片16aにおける水平支軸17aの保持位置を中空押出成形物Mの外径に応じて上下に調整できる構造になっている。また、溢流パイプ5及び通気パイプ6は、パイプ本体5a,6aの頂部に、上端を斜め切りした短筒状の筒口部材5b,6bが上下摺動自在に外嵌し、これら筒口部材5b,6bを蝶ねじ5c,6cの締め付けによって所定高さで固定するようにしている。
【0020】
減圧水冷槽1の槽体11は、上方に開放しており、その内向きにコ字形に曲成した上縁部11aの上面側に貼着したパッキング18を介して、該槽体11上にガラス製の蓋板19が載ることにより、内部が気密に保持される。しかして、減圧水冷槽1の全長は蓋板19の複数枚でカバーするように構成されており、各蓋板19は、外面側に幅方向に沿って止着した一対の金属帯板19a,19aの各一端側において、槽体11側に固着されたブラケット11bに枢支ピン19bを介して枢着されており、両金属帯板19a,19aの他端間に取り付けた把手19cを利用して開閉できるようになっている。
【0021】
調整水槽2は、図2に示すように、減圧水冷槽1と同様に、所定の水位まで水Wが収容され、内側上部が空気層20を構成している。そして、この調整水槽2の長手方向一端側において、当該調整水槽2内の水Wを給水ポンプP1を介して減圧水冷槽1へ供給する給水管路L1が底部近傍から導出すると共に、上壁部に設けた吸気口21に空気層20の空気を真空ポンプVPを介して吸引する真空吸引管路VLが接続されている。ECは真空ポンプVPに繋がる大気放出器である。
【0022】
そして、給水管路L1は、給水ポンプP1に近い上流側に開閉弁SV及び流量計F1が介装され、下流側では複数に分岐し、その分岐した各管路が開閉弁SVを介して減圧水冷槽1の各水導入口13に接続している。また、真空ポンプVPの出口側には給水管路L1から分岐した注水管路L4を有しており、この注水管路L4が開閉弁SVを介してシール槽7の水導入口73に接続されている。
【0023】
一方、調整水槽2の長手方向他端側の上壁部には、下端が内底近くに開口した2本の導水管22が垂設されると共に、通気口24が設けてある。その導水管22の一本には減圧水冷槽1の溢流パイプ5に繋がる溢流管路L2が接続され、他の一本には減圧水冷槽1の前部側の水導出口14aに繋がる自然流下管路L3が接続され、通気口24には減圧水冷槽1の通気パイプ6に繋がる通気管路ALが接続されている。そして、自然流下管路L3には、上流側に流通・閉止の切換えを行う電磁切換弁EVが介装されると共に、下流側に開閉弁SV及び水流計F2が介装されている。
【0024】
また、調整水槽2の底壁部には、開閉弁SVを介して冷水器3への送水管路L5aに繋がる送水口25と、開閉弁SVを介して該冷水器3からの導水管路L5bに繋がる導水口26と、水抜き用のドレン27とが設けられている。そして、送水管路L5aには送水ポンプP2が介装されており、該送水ポンプP2によって調整水槽2内の水Wを冷水器3へ送り込んで冷却し、その冷却された水Wを調整水槽2内へ戻すようにしている。更に、調整水槽2には吸気口21寄りの位置に水位センサー28が付設され、該水位センサー28により、水位が適正範囲にあるか否かと、槽内の水Wの有無を検知するようになっている。L6は市水(水道水)を調整水槽2へ注水するための注水管路である。
【0025】
貯水槽4は、減圧水冷槽1の後部側の水導出口14bに繋がる排水管路L7aからの排水と、シール槽7の溢流パイプ72に繋がる排水管路L7bからの排水とが、合流排水管路L7を介して流入し、底部のドレン41より外部へ排水するようになっている。
【0026】
上記構成の水冷装置Aにおいて、押出直後の中空押出成形物Mを減圧水冷槽1内の水W中を通過させて水冷硬化させる際、冷水器3によって所要の温度まで冷却した調整水槽2内の水を、給水ポンプP1の稼働により、給水管路L1を通して複数の水導入口13から減圧水冷槽1内へ連続的に分配供給すると共に、自然流下管路L3の電磁切換弁EVを通水状態として、減圧水冷槽1内の水Wを底部側から自然流下管路L3を通して重力によって調整水槽2内へ戻して循環させるが、給水管路L1からの給水量を自然流下管路L3からの排水量よりも若干多くし、その差に相当する水Wが溢流管路L2より調整水槽2に流下するように設定する。この水量設定は、給水管路L1の水量計F1による計測値と、自然流下管路L3の水量計F2による計測値の合量との比較から、給水ポンプP1による送水量を適宜調整すればよい。例えば、排水量が58L/分であるとき、給水量を60L/分に設定すれば、その差の2L/分の水Wが溢流管路L2より調整水槽2に流下する。なお、この水冷稼働中、水抜き管路L7aに繋がる水導出口14aを閉止しておくことは言うまでもない。
【0027】
シール槽7には溢流パイプ72の上端開口にて規制される水位までの量の水Wを収容しておき、中空押出成形物Mの水冷中は管路L4を閉止しておく。また、該水冷稼働中、冷水器3による調整水槽2内の水Wの循環冷却は、水温計WTにて測定される減圧水冷槽1内の水温の高低に基づいて継続・停止を行う。なお、水温設定は、減圧水冷槽1内の前部側の水温で8〜18℃程度、特に10〜15℃の範囲が好適である。
【0028】
また、水冷稼働中、真空ポンプVPを作動させて調整水槽2内を減圧するが、減圧水冷槽1と調整水槽2の空気層10,20同士が通気管路ALを介して連通しているから、減圧水冷槽1内も調整水槽2内と同じ減圧状態になる。しかして、減圧水冷槽1内の空気層10の圧力状態は、真空圧力計PGによって測定されるが、過度の減圧になっている場合は真空調整弁CVによって適正圧力範囲に調整する。また、何らかの要因で適正範囲を越える圧力低下を生じた際は、予め作動条件を入力設定した自動真空調整弁AVの作動により、適量の外気が減圧水冷槽1内に流入して適正な減圧状態に自動復帰する。なお、減圧水冷槽1の空気層10の設定圧力は、中空押出成形物Mの径と肉厚、樹脂種、通過速度、水面からの深さ等によって最適値が異なるが、一般的に大気圧から5〜20MPa程度低い圧力が好ましい。
【0029】
このような水冷装置Aによる中空押出成形物Mの水冷硬化では、減圧水冷槽1内の空気層10が減圧していることから、該中空押出成形物Mは水圧の軽減ないし相殺に伴って中空内部の空気圧で張り詰めた状態になり、もって水圧によるへたりや径変化をを生じず高い真円度が得られると共に、減圧水冷槽1の空気層10と調整水槽2の空気層20の連通によって安定した減圧状態が維持されることに加え、調整水槽2からのポンプP1による給水が減圧水冷槽1の底部側に導入され、しかも該減圧水冷槽1から調整水槽2への排水が溢流管路L2及び自然流下管路L3による自然流下によって行われるから、該減圧水冷槽1内での水流が穏やかで乱れのない安定したものとなり、波立ちや揺動を生じず、波立ちによる空気層10の圧力変動もないから、水Wの流れや揺動、波立ち、圧力変動等に起因した中空押出成形物Mの歪みも抑えられ、高い寸法精度を持つ中空押出成形品が得られる。
【0030】
そして、実施形態のように減圧水冷槽1の後端に水Wをほぼ一杯に収容したシール槽7を設ければ、中空押出成形物Mの出口部分からの気泡の侵入によ減圧水冷槽1の圧力上昇(真空破壊)を防止できる。また、減圧水冷槽1内の減圧はその空気層10から真空ポンプVPで直接吸引して行ってもよいが、実施形態のように調整水槽2側の空気を吸引して減圧水冷槽1を間接的に減圧する方式によれば、その吸引に伴う気流の影響が減圧水冷槽1内の空気層10に直接には及ばず、該空気層10全体が均一な減圧状態に保持されるため、中空押出成形物Mの寸法精度がより向上するという利点がある。
【0031】
なお、給水管路L1からの給水量設定は、該給水管路L1及び自然流下管路L3に介装した流量計F1,F2の計測信号に基づいて、給水ポンプP1の回転速度や給水管路L1に介在させた自動絞り弁の開度等を自動的に調整する自動制御方式で行うようにしてもよい。また、貯水槽4からポンプを介して調整水槽2へ給水する水補給管路を設け、調整水槽2の水位低下に対応して貯水槽4の水を補給する構成としてもよい。
【0032】
その他、本発明の水冷装置Mにおいては、減圧水冷槽1における溢流パイプ5及び通気パイプ6の設置位置、減圧水冷槽1の長さ、水導入口13及び水導出口14a,14bの数と配置構成、減圧水冷槽1と調整水槽2との間の配管構成、各管路に介在する弁の種類と介装位置、冷水器3及び貯水槽4やシール槽7の如き付属設備の構成等、細部構成については実施形態以外に種々設計変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る中空押出成形物の水冷装置を適用した中空押出成形物の製造ラインの概略側面図である。
【図2】同水冷装置の配管系統を含む概略縦断側面図である。
【図3】同水冷装置の減圧水冷槽の縦断正面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 減圧水冷槽
10 空気層
2 調整水槽
20 空気層
3 冷水器(水冷却手段)
5 溢流パイプ
6 通気パイプ
A 水冷装置
AL 通気管路
AV 真空自動調整弁
E 押出機
F1,F2 流量計
L1 給水管路(給水手段)
L2 溢流管路
L3 自然流下管路
M 中空押出成形物
P1 給水ポンプ
PG 真空圧力計
VP 真空ポンプ(真空吸引手段)
W 水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出機から連続的に略水平方向へ押し出される中空押出成形物を水中に通過させて冷却する減圧水冷槽と、該減圧水冷槽よりも下位に配置した調整水槽と、この調整水槽内の水を給水ポンプを介して前記減圧水冷槽内へその底部側から供給する給水手段と、該調整水槽内の水を冷却する水冷却手段とを備え、
前記減圧水冷槽及び調整水槽が密閉式で上部に空気層を有し、これら両槽の空気層同士を連通する通気管路が設けられると共に、その空気層を所定の減圧状態に設定する真空吸引手段が付設され、
前記減圧水冷槽と調整水槽の間に、減圧水冷槽の水面が所定高さ越える際に水をオーバーフローさせて調整水槽に流下させる溢流排水管と、減圧水冷槽内の水をその底部側から調整水槽へ自然流下させる自然流下管路とが接続され、
前記給水手段による減圧水冷槽への給水量が前記自然流下管路による調整水槽への排水量より多く、その差に相当する水が前記溢流管路より調整水槽に流下するように構成されてなる中空押出成形物の水冷装置。
【請求項2】
前記真空吸引手段が前記調整水槽側の空気を吸引するように設定されてなる請求項1に記載の中空押出成形物の水冷装置。
【請求項3】
前記減圧水冷槽と調整水槽の少なくとも一方に、真空圧力計と、その計測値に応じて作動・停止する真空自動調整弁とが付設されてなる請求項1又は2に記載の中空押出成形物の水冷装置。
【請求項4】
前記給水手段による調整水槽から減圧水冷槽への給水管路と、前記の自然流下管路とに、それぞれ流量計が介装され、これら流量計の計測値に基づいて給水手段による給水量を調整するように構成されてなる請求項1〜3のいずれかに記載の中空押出成形物の水冷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−58363(P2010−58363A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−225719(P2008−225719)
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【出願人】(502025439)株式会社サン・エヌ・ティ (5)
【Fターム(参考)】