説明

中空柱状物の補強方法および中空柱状物用鉄筋展開装置

【課題】コンクリート製や鋼製の電柱などの中空柱状物の内側に鉄筋を入れて、中空柱状物を容易に効率よく補強することができるようにする。
【解決手段】鉄筋22の展開中心に位置するガイド棒24と、ガイド棒24に摺動可能に嵌合し最上位に位置する上部リテーナ34と、回動自在に連結された長リンク部材31を有する上部展開リンク機構と、最下位に位置する下部リテーナ44と、鉄筋22のそれぞれの下端部と一端が回動自在に連結され、他端が下部リテーナ44と回動自在に連結された長リンク部材42を有する下部展開リンク機構と、上部展開リンク機構と下部展開リンク機構とを連結し、ガイド棒24に摺動可能に嵌合するスライドシャフト30と、を有し、上部展開リンク機構は短リンク部材32によってスライドシャフト30の上端部と連結され、下部展開リンク機構は短リンク部材43によってスライドシャフト30の下端部と連結される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート製や鋼製の電柱や柱などの中空柱状物を鉄筋コンクリートで補強する方法および補強工事に際して中空柱状物の内部に鉄筋を展開するのに使用する鉄筋展開装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート製の電柱は、鉄筋が腐食していく経年変化によってしだいに劣化していく。このような鉄筋の腐食進行を放置したままにしていると、強風が吹いた時などに電柱が倒れる危険性が増す。このため、電柱を定期的に点検し、必要な補強工事を適宜行っている。
【0003】
従来からある電柱の補強工法としては、電柱の外周部に補強材を取り付けることが一般に行われている。例えば、特許文献1では、コンクリート製電柱の外周面に接着樹脂を塗布し、この接着樹脂の上からコンクリートよりも引張強度が十分に大きい補強繊維シートを補強材として貼り付ける工法が提案されている。
また、特許文献2では、補強材として、鉄筋付きのアラミドロッドをコンクリート製電柱の内部に補助具を用いて配置し、モルタルを注入する工法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−120046号公報
【特許文献2】特開2005−133497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、コンクリート製の電柱では、電柱の土台となっている地中部との境界付近に最も大きな力が加わり、しかも、その部分に腐食も集中する傾向がある。このため、電柱の外周面を補強する工事では、地中部との境界付近を補強するために、電柱の地際の回りを掘り起こす必要がある。
【0006】
ところが、電柱の設置場所によっては、例えば民有地やアーケード街に設置された電柱では、土地所有権との関係で、掘り起こす工事を簡単には実施できないことがある
他方、電柱の内側から補強していく工法の場合は、電柱の地際を掘り起こすことなく補強工事を実施することが可能である。
【0007】
電柱の内側から補強するためには、電柱の被補強部位に複数本の鉄筋を均等に配筋することが必要となる。しかしながら実際問題としては、手の届かないところに鉄筋を配置する配筋作業が非常に困難であった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、前記従来技術の有する問題点を解消し、コンクリート製や鋼製の電柱などの中空柱状物の内側に鉄筋を入れて、中空柱状物を容易に効率よく補強することができる中空柱状物の補強方法を提供することにある。
【0009】
また、本発明の他の目的は、コンクリート製や鋼製の電柱などの中空柱状物を内側から補強するために、鉄筋を被補強部位に簡便に効率良く均等に配筋することができるようにした 中空柱状物用鉄筋展開装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するために、本発明は、
複数本の鉄筋を中空柱状物の内部で周方向に均等に展開配置するための鉄筋展開装置であって、
前記鉄筋の展開中心に位置するガイド棒と、
前記ガイド棒に摺動可能に嵌合し最上位に位置する上部リテーナと、
前記鉄筋のそれぞれの上端部と一端が回動自在に連結され、他端が前記上部リテーナと回動自在に連結された長リンク部材を有する上部展開リンク機構と、
前記ガイド棒に摺動可能に嵌合し最下位に位置する下部リテーナと、
前記鉄筋のそれぞれの下端部と一端が回動自在に連結され、他端が前記下部リテーナと回動自在に連結された長リンク部材を有する下部展開リンク機構と、
前記上部展開リンク機構と下部展開リンク機構とを連結し、前記ガイド棒に摺動可能に嵌合するスライドシャフトと、を有し、
前記上部展開リンク機構は短リンク部材によって前記スライドシャフトの上端部と連結され、前記下部展開リンク機構は短リンク部材によって前記スライドシャフトの下端部と連結されたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、
中空柱状物の側面に鉄筋を挿入する鉄筋挿入口とモルタル注入口を開口する工程と。
【0012】
地際から所定の深さになるまで前記鉄筋挿入口から前記中空柱状部内部に砕石、砂を投入し、底盤を形成する工程と、
複数本の鉄筋を中空柱状物の内部で展開する鉄筋展開装置として、
前記鉄筋の展開中心に位置するガイド棒と、前記ガイド棒に摺動可能に嵌合し最上位に位置する上部リテーナと、前記鉄筋のそれぞれの上端部と一端が回動自在に連結され、他端が前記上部リテーナと回動自在に連結された長リンク部材を有する上部展開リンク機構と、前記ガイド棒に摺動可能に嵌合し最下位に位置する下部リテーナと、前記鉄筋のそれぞれの下端部と一端が回動自在に連結され、他端が前記下部リテーナと回動自在に連結された長リンク部材を有する下部展開リンク機構と、前記上部展開リンク機構と下部展開リンク機構とを連結し、前記ガイド棒に摺動可能に嵌合するスライドシャフトと、を有し、 前記上部展開リンク機構は短リンク部材によって前記スライドシャフトの上端部と連結され、前記下部展開リンク機構は短リンク部材によって前記スライドシャフトの下端部と連結された鉄筋展開装置を用意し、前記鉄筋展開装置を展開しないように束ねた状態で前記鉄筋挿入口から前記中空柱状物の中に挿入する工程と、
前記鉄筋展開装置の束ねた状態を解除し、前記中空柱状部の内部で鉄筋を展開する工程と、
前記鉄筋挿入口をカバーで塞ぎ、モルタルを前記モルタル注入口から注入し前記鉄筋の上までモルタルを充填する工程と、
前記モルタル注入口をモルタル仕上げにより閉塞する工程と、
からなることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態による鉄筋展開装置がコンクリート製の電柱の内部で展開した状態を示す側面図である。
【図2】同鉄筋展開装置がコンクリート製の電柱の内部で閉じている状態を示す側面図である。
【図3】本発明の補強方法が適用される電柱の縦断面図である。
【図4】本発明の補強方法の実施により補強が完了した電柱の縦断面図である。
【図5】鉄筋展開装置が展開した状態を示す電柱の横断面図である。
【図6】本発明の補強方法において、電柱内部に砕石、砂を充填する工程を示す電柱の縦断面図である。
【図7】本発明の補強方法において、電柱の側面にあけた鉄筋挿入口から鉄筋展開装置を挿入する工程を示す電柱の縦断面図である。
【図8】本発明の補強方法において、電柱の内部に鉄筋展開装置を展開中心位置に位置決めした状態を示す電柱の縦断面図である。
【図9】本発明の補強方法において、電柱の内部で鉄筋展開装置を展開した状態を示す電柱の縦断面図である。
【図10】本発明の他の実施形態による補強方法において、電柱の最上部から鉄筋展開装置を吊り、補強位置に位置決めした状態を示す電柱の縦断面図である。
【図11】本発明の他の実施形態による補強方法において、電柱の最上部から鉄筋展開装置を吊って補強位置で展開した状態を示す電柱の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明による中空柱状物の補強方法および鉄筋展開装置の一実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
本実施形態は、中空柱状物の代表例として、コンクリート製の電柱を補強する工事に本発明を適用した実施形態である。
【0015】
まず、図3は、補強の対象となる電柱の縦断面図である。参照番号10はコンクリート製の電柱を示す。参照番号12は地面を示している。この種の電柱では、地面12との境目(以下、地際という)の付近が最も腐食や荷重超過にさらされて強度が低下するので、鉄筋を入れモルタルやコンクリートを流し込んで地際の部分を補強することになる。
【0016】
図4は、電柱10の内部に、鉄筋展開装置20で鉄筋を配筋してモルタルを流し込んだ状態を示している。この鉄筋展開装置20は、複数本の鉄筋22を閉じた状態で電柱10の内部に入れ、その後、図5に示すように鉄筋22を均等に展開して配筋するための装置である。
【0017】
そこで、図1に、鉄筋展開装置20の構成を示す。この図1では、電柱10の内部で鉄筋22を展開した状態の鉄筋展開装置20が示されている。
この鉄筋展開装置20の構成要素は、大きく分けると、鉄筋22の展開中心に位置するガイド棒24と、鉄筋22の上端部が連結されている上部展開リンク機構26と、鉄筋22の下端部が連結されている下部展開リンク機構28と、これら上部展開リンク機構26と下部展開リンク機構28とを連結するスライドシャフト30と、を主要な構成要素としている。
【0018】
本実施形態による鉄筋展開装置20では、図5に示されるように、6本の鉄筋22が用いられている。このうち、図1には、2本の鉄筋22が示されている。なお、鉄筋22の本数は6本に限定されるものではなく、4本、8本、10本、あるいは偶数本ではなく奇数本であってもよい。
【0019】
上部展開リンク機構26では、長リンク部材31と短リンク部材32とが対をなして、これらによりそれぞれ1本の鉄筋22の上端部を支持するようになっている。ガイド棒24には、長リンク部材31の基端部を枢支する上部リテーナ34が摺動可能に嵌合している。この上部リテーナ34では、ピン35を介して長リンク部材31の基端部が回動自在に連結されている。
【0020】
図1に示されるように、長リンク部材31の先端が当接する電柱10の内周面よりも所定距離Aだけ内側の位置を連結位置として、鉄筋22が長リンク部材31に連結されている。鉄筋22の上・下端部にはそれぞれ継手部22a、22bが形成されており、この継手部22aの先端部は長リンク部材31とピン36を介して連結されている。なお、鉄筋22の継手部22aには長孔37が形成されており、ピン36は長孔37に係合するようになっている。
【0021】
次に、短リンク部材32は、長リンク部材31とスライドシャフト30とを連結するリンクである。スライドシャフト30の上端部には、リテーナ38が取り付けられ、短リンク部材32の一端はリテーナ38にピン39を介して回動自在に連結されている。短リンク部材32の他端は、長リンク部材31の中間位置でピン40を介して連結されている。
【0022】
同様に、下部展開リンク機構28は、長リンク部材42と短リンク部材43とが対をなしたリンクによりそれぞれ1本の鉄筋22の下端部と連結されている。ガイド棒24の下端には、長リンク部材42の基端部を枢支する下部リテーナ44が固定されている。この下部リテーナ44では、ピン45を介して長リンク部材42の基端部が回動自在に連結されている。
【0023】
長リンク部材42の先端が当接する電柱10の内周面よりも所定距離A‘(長リンク部材31と鉄筋22との連結位置を特定する所定距離Aとの関係では、A<A’である。電柱は一般に上に向かって徐々に径が小さくなっているからである。)だけ内側の位置を連結位置として、鉄筋22が長リンク部材42に連結されている。鉄筋22の下端部の継手部22bの先端部は長リンク部材42とピン46を介して連結されている。なお、鉄筋22の継手部22bには長孔47が形成されており、ピン46は長孔47に係合するようになっている。
【0024】
スライドシャフト30の下端部には、リテーナ48が取り付けられ、短リンク部材43の一端はリテーナ48にピン49を介して回動自在に連結されている。短リンク部材43の他端は、長リンク部材42の中間位置でピン50を介して連結されている。
【0025】
本実施形態による鉄筋展開装置20は、以上のように構成されるものであり、次に、鉄筋展開装置20の展開動作について説明する。
【0026】
図2は、鉄筋展開装置20が閉じている状態を示し、図1は鉄筋展開装置20が開いて鉄筋22を展開させた状態を示す。
【0027】
図2において、鉄筋展開装置20が閉じている状態では、鉄筋22の重量は下部展開リンク機構28の長リンク部材42にかかっており、長リンク部材42は、鉄筋22の重量を支えている。他方、上部展開リンク機構26では、例えば図示しない番線等によって長リンク部材31が束ねられているため、展開しないようになっている。なお、図2に示すように、ガイド棒24の上端にアイナット52を取り付け、この34にワイヤを連結して、このワイヤを上方に引っ張り鉄筋展開装置20の重量を支え、さらに上部リテーナ34に別のワイヤを連結し、このワイヤを引っ張ることによって、鉄筋展開装置20を開かないようにしてもよい。
【0028】
そこで、上部展開リンク機構26を結束している図示しない番線を外すと、鉄筋22の自重で下部展開リンク機構28の長リンク部材42は開く方向に回動する。そうすると、鉄筋22の下端は長リンク部材42にピン連結されているので、鉄筋22は下がりながら次第に開いていくことになる。また、長リンク部材42とスライドシャフト30のリテーナ48とが短リンク部材43によって連結されているので、スライドシャフト30も次第に下がっていくことになる。
【0029】
このような下部展開機構28における展開動作と並行して、上部展開リンク機構26は、次のように展開動作を進行する。
鉄筋22が下がりながら、スライドシャフト30も下降していくと、このスライドシャフト30の上端と連結されている短リンク部材32は、図2において開く方向に回動しようとする。さらに同時に、鉄筋22の下降とともに上部リテーナ34も下がってくるが、上部リテーナ34の下がる度合いの方が大きいので、リテーナ38と上部リテーナ34の距離が縮まりながら、図1に示すように鉄筋22を開かせるように長リンク部材31と短リンク部材32が展開することになる。
【0030】
図1に示すように、下部展開機構28の長リンク部材42の先端が電柱10の内面に当接し、同様に、上部展開機構28の長リンク部材31の先端も電柱10の内面に当接すると、展開動作は完了する。
【0031】
なお、本実施形態の鉄筋展開装置20では、鉄筋22の継手部22a、22bには長孔37、47を形成し、これらの長孔37、47を介して長リンク部材31、42とピン連結して遊びを設けているので、電柱10のように内径が上に向かって徐々に変化する構造のものでも、円滑な展開動作を確保することができる。
【0032】
こうして、鉄筋展開装置20が展開すると、図5に示されるように、全ての鉄筋22は、電柱10の内面の周方向に均等に配置され、しかも、電柱10の内面から所定の距離分だけ半径方向に離れた位置(一定のかぶりを確保するため)に確実に配置されることになる。
【0033】
次に、以上のような鉄筋展開装置20を使用して実施する電柱の補強工法について説明する。
【0034】
まず、図6は、鉄筋展開装置20を入れる前の電柱10を示している。電柱10の本体には、古い鉄筋が残っているので、鉄筋探知器を用いて鉄筋の位置を予め確認しておく。鉄筋展開装置20を入れるための挿入口を鉄筋が邪魔になることなくあけられる位置を選定する。そして、図6に示すように、グラインダーや電動ハツリ機などの道具を用いて、鉄筋挿入口60を開口する。この鉄筋挿入口60は、電柱10の軸方向に細長く開口する穴である。鉄筋挿入口60の上には、さらに、モルタル注入口62をグラインダーや電動ハツリ機を用いて開口する。このモルタル注入口62は、鉄筋を展開した後にモルタルあるいはコンクリートを注入する穴である。
【0035】
次いで、鉄筋挿入口60を利用して、地際から所定の深さに達するまで(例えば、約800mm)、砕石63、砂64の順に投入する。さらに、鉄筋挿入口60から急結セメント65を流し込み、アース線口66を塞ぎここからのモルタル流出を防止する。
【0036】
次に、図7に示すように、鉄筋挿入口60から鉄筋展開装置20を電柱10の内部に投入する。このとき、鉄筋展開装置20の上端部には番線68を巻いておいて、挿入する際に鉄筋展開装置20が展開しないように結束してから投入する。
【0037】
図8は、鉄筋展開装置20を電柱10の内部に同軸に位置決めした状況を示す。図8において、作業員は鉄筋挿入口60から手を入れて、鉄筋展開装置20を持ち上げた状態にして、別の作業員が鉄筋挿入口60からさらに砂69を所定の深さまで投入する。
【0038】
次に、図9は、鉄筋展開装置20を電柱10の内部で展開した状態を示す。それまで、鉄筋展開装置20が展開しないように束ねていた番線を外すと、鉄筋22の自重により展開し、図5に示すように、鉄筋22が円周方向に均等に配置にされる、
このようにして、鉄筋22を均等に配筋した後、図4において、鉄筋挿入口60の回りに目地材を貼り付けてからカバー70を取り付けて鉄筋挿入口60を塞いでおく。その後、モルタル注入口62からモルタル72を注入し、モルタル注入口62の下までモルタル72を充填し、展開した鉄筋22をモルタル72中に浸漬させる。最後に、モルタル注入口62をモルタル仕上げして施工完了となる。
【0039】
以上のようにして、電柱10の内側から、電柱の被補強部位に必要な数の鉄筋22を均等に配筋して補強する施工工事を効率的に行うことができる。
【0040】
次に、他の実施形態による電柱の補強工法について、図10、図11を参照して説明する。
【0041】
この実施形態は、信号柱のように、高さが比較的低い電柱で、上部に障害物がないような電柱に最上部から鉄筋展開装置20を吊り下げて配筋するようにした実施の形態である。
【0042】
まず、図10において、電柱10の最上部にある蓋を取り外し、開口部80から砕石、砂、急結セメント65、砂69を順に投入する。その後、開口部80から鉄筋展開装置20を第1のワイヤーローブ82を使って吊り降ろす。この場合、第1ワイヤーローブ82の下端はアイボルト52に連結されている。この第1のワイヤーロープ82とは別に、鉄筋展開装置20の上部展開リンク機構26には展開制御用の第2のワイヤーロープ83を連結しておく。この第2のワイヤーロープ83で上部展開リンク機構26を引っ張っているかぎり、鉄筋22は展開することがない。
【0043】
次いで、図11に示すように、鉄筋展開装置20が補強位置まで到達したら、第1のワイヤーロープ82で鉄筋展開装置20を支持したまま第2のワイヤーロープ83を緩めると、自重で鉄筋が展開することになる。この状態で、電柱10の最上部の開口部80からモルタル(あるいはコンクリート)を内部に注入し、展開した鉄筋22の上までモルタルを充填する。最後に最上部の蓋を復旧して施工完了となる。
【0044】
以上、本発明について、コンクリート製の電柱の補強工事を例にして、好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は、電柱以外にもコンクリート製の柱、鉄製の柱などの柱状物にも適用可能である。
【符号の説明】
【0045】
10…電柱、20…鉄筋展開装置、22…鉄筋、24…ガイド棒、26…上部展開リンク機構、28…下部展開リンク機構、30…スライドシャフト、31…長リンク部材、32…短リンク部材、34…リテーナ、42…長リンク部材、43…短リンク部材、60…鉄筋挿入口、62…モルタル挿入口、82…第1のワイヤーローブ、83…第2のワイヤーロープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の鉄筋を中空柱状物の内部で周方向に均等に展開配置するための鉄筋展開装置であって、
前記鉄筋の展開中心に位置するガイド棒と、
前記ガイド棒に摺動可能に嵌合し最上位に位置する上部リテーナと、
前記鉄筋のそれぞれの上端部と一端が回動自在に連結され、他端が前記上部リテーナと回動自在に連結された長リンク部材を有する上部展開リンク機構と、
前記ガイド棒に摺動可能に嵌合し最下位に位置する下部リテーナと、
前記鉄筋のそれぞれの下端部と一端が回動自在に連結され、他端が前記下部リテーナと回動自在に連結された長リンク部材を有する下部展開リンク機構と、
前記上部展開リンク機構と下部展開リンク機構とを連結し、前記ガイド棒に摺動可能に嵌合するスライドシャフトと、を有し、
前記上部展開リンク機構は短リンク部材によって前記スライドシャフトの上端部と連結され、前記下部展開リンク機構は短リンク部材によって前記スライドシャフトの下端部と連結されたことを特徴とする中空柱状物用鉄筋展開装置。
【請求項2】
中空柱状物の側面に鉄筋を挿入する鉄筋挿入口とモルタル注入口を開口する工程と。
地際から所定の深さになるまで前記鉄筋挿入口から前記中空柱状部内部に砕石、砂を投入し、底盤を形成する工程と、
複数本の鉄筋を中空柱状物の内部で展開する鉄筋展開装置として、
前記鉄筋の展開中心に位置するガイド棒と、前記ガイド棒に摺動可能に嵌合し最上位に位置する上部リテーナと、前記鉄筋のそれぞれの上端部と一端が回動自在に連結され、他端が前記上部リテーナと回動自在に連結された長リンク部材を有する上部展開リンク機構と、前記ガイド棒に摺動可能に嵌合し最下位に位置する下部リテーナと、前記鉄筋のそれぞれの下端部と一端が回動自在に連結され、他端が前記下部リテーナと回動自在に連結された長リンク部材を有する下部展開リンク機構と、前記上部展開リンク機構と下部展開リンク機構とを連結し、前記ガイド棒に摺動可能に嵌合するスライドシャフトと、を有し、 前記上部展開リンク機構は短リンク部材によって前記スライドシャフトの上端部と連結され、前記下部展開リンク機構は短リンク部材によって前記スライドシャフトの下端部と連結された鉄筋展開装置を用意し、前記鉄筋展開装置を展開しないように束ねた状態で前記鉄筋挿入口から前記中空柱状物の中に挿入する工程と、
前記鉄筋展開装置の束ねた状態を解除し、前記中空柱状部の内部で鉄筋を展開する工程と、
前記鉄筋挿入口をカバーで塞ぎ、モルタルを前記モルタル注入口から注入し前記鉄筋の上までモルタルを充填する工程と、
前記モルタル注入口をモルタル仕上げにより閉塞する工程と、
からなることを特徴とする中空柱状物の補強工法。
【請求項3】
前記鉄筋展開装置には、該鉄筋展開装置の重量を保持し上下位置を位置決めする第1のワイヤーロープと、前記鉄筋の開閉をコントロールする第2のワイヤーローブを連結し、前記鉄筋挿入口から前記鉄筋展開装置を挿入する代わりに、前記中空柱状部の最上部の開口から前記第1のワイヤーロープによって前記鉄筋展開装置を吊り下げ、所定の位置に位置決めしてから前記第2のワイヤーローブを操作して前記鉄筋展開装置を展開させることを特徴とする請求項2に記載の中空柱状物の補強工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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