説明

中空糸膜モジュール、及びろ過方法

【課題】中空糸膜の寿命を延ばし、安定して良好な水質の水を継続的に生成できる中空糸膜モジュール、およびろ過方法を提供することを目的とする。
【解決手段】中空糸膜束3を収容するハウジング5と、中空糸膜束3の両端部をハウジングに接着固定する接着固定層7A,7Bとを備えた中空糸膜モジュールであって、中空糸膜束3の両端部内に配置されたクロス板25A,25Bと、中空糸膜束3の両端部をそれぞれ囲む整流筒27,28と、を備え、クロス板25A,25Bは接着固定層7A,7Bに内包され、整流筒27,28の一部は接着固定層7A,7Bに固定され、接着固定層7A,7B内においてクロス板25A,25Bと整流筒27,28とは中空糸膜束3の長手方向で離間している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川水や地下水などの比較的清澄な原水、又は超純水などの被処理水を対象として除濁、除菌を行うためのろ過用モジュールに関し、特に、超純水ラインにおける保安用フィルターとして好適な中空糸膜モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体や表示素子等の電子・電気部品の製造で用いられる超純水を製造するラインにおいては、精密ろ過膜やイオン交換樹脂、逆浸透ろ過膜を用いて製造した超純水をユースポイントに供給する直前に精密ろ過膜又は限外ろ過膜を用いてろ過している。この精密ろ過膜又は限外ろ過膜は、保安用フィルターとしての機能を担っている。この用途のろ過膜モジュールとしては、中空糸膜の外側に原水を供給してろ過する外圧式ろ過膜モジュールが主に使用されている。
【0003】
一方近年、製造規模の拡大と共に使用する超純水量が多くなっており、超純水製造設備も大型化する傾向にあり、該製造設備をコンパクトにする要求が強くなっている。このような状況において、高いろ過性能を有するモジュール、すなわち、1モジュールあたりのろ過流量が大きく、かつ、単位容積あたりのろ過流量が大きいモジュールが求められている。
【0004】
しかし、従来の外圧式ろ過膜モジュールにあっては、供給水量を多くして単位時間あたりの処理量を増大させた場合、モジュール内を水が高速で流れることになり、それによって中空糸膜が激しく振動する現象が起こる。これは長時間ろ過を継続するうちに中空糸膜同士や中空糸膜とモジュール内の構成部材とが擦れることにより膜表面の細孔が閉塞して透水性能が低下したり、中空糸膜が破損してろ過水の水質が低下したりする原因となる。このような水流による中空糸膜のダメージを防止する方法として、ハウジングと中空糸膜束の間に保護用の整流筒を設ける方法が提案されている(特許文献1〜3を参照)。
【0005】
また、複数本の中空糸膜を束ねて中空糸膜束を形成し、ハウジング内に中空糸膜束を収容して両端を接着層で固定した場合、中空糸膜の密度分布に偏りが生じ易く、大きな偏りを持ったまま中空糸膜モジュールを形成してしまうと処理能力の個体差が大きくなって品質の管理が難しくなる。このような中空糸膜の密度分布の偏りを防止するために、例えば、特許文献4には、補強用リブ(挿入物)を中空糸膜束の端部に挿入することで中空糸膜の密度分布を均一した中空糸膜モジュールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−204804号公報
【特許文献2】特公平07−102307号公報
【特許文献3】特開2000−37616号公報
【特許文献4】国際公開第97/10893号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、中空糸膜束の端部に補強用リブなどを挿入し、更に、上記のような整流筒を装着して中空糸膜モジュールを形成した場合には、高い流量で継続的にろ過を行うと、中空糸膜の破損などで、ろ過水の水質が低下してしまう場合があった。
【0008】
本発明は、以上の課題を解決することを目的としており、中空糸膜の寿命を延ばし、安定して良好な水質の水を継続的に生成できる中空糸膜モジュール、およびろ過方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の中空糸膜の破損の原因を究明すべく鋭意研究を重ね、検証を行った。その結果、例えば、従来の挿入物を中空糸膜束の端部に挿入し、その端部を従来の整流筒で取り囲んで接着した場合、接着層から整流筒内に露出している中空糸膜の根本部分で主に破損が生じていることが確認された。さらに、従来の中空糸膜モジュールでは、接着層に内包されている挿入物から中空糸膜の根本部分までの距離が非常に短いために、中空糸膜の根本部分で挿入物の影響を受けた隙間が生じ、この隙間に面した中空糸膜に破損が生じているとの知見を得て本発明に想到した。
【0010】
すなわち、本発明は、両端に開口を有する複数本の中空糸膜からなる中空糸膜束と、中空糸膜束を収容するハウジングと、中空糸膜束の両端部をハウジングに接着固定すると共に、中空糸膜の開口が露出する第1の領域と中空糸膜を挟んで第1の領域に連通する第2の領域とを区画する接着固定層と、ハウジングに設けられた流体の出入口と、を備えた中空糸膜モジュールであって、複数本の中空糸膜の密度分布の偏りを低減するために中空糸膜束の少なくとも一方の端部内に配置された偏り規制部材と、中空糸膜束の端部側の一部を囲む整流筒と、を備え、偏り規制部材は接着固定層に内包され、整流筒の一部は接着固定層に固定され、接着固定層内において偏り規制部材と整流筒とは中空糸膜束の長手方向で離間していることを特徴とする。
【0011】
本発明では、中空糸膜束の一方の端部に偏り規制部材が配置されているので、少なくとも一方の端部では中空糸膜の密度分布の偏りを低減でき、また、中空糸膜束の端部側の一部を整流筒で囲むことで中空糸膜を強い振動から保護することができる。また、従来の中空糸膜モジュールでは、整流筒内で接着層から突き出した中空糸膜の根本部分と挿入物との距離は極めて短くなり、挿入物を挟んで隣接する中空糸膜の端部同士の隙間が接着層内で吸収されず、中空糸膜の根本部分にまで現れて中空糸膜の密度が部分的に疎になる隙間が生じる。すると、この隙間を流れる被処理水の流量が局所的に増えてハウジング内での流れが不均一(偏流)となり、隙間近傍の中空糸膜に過度の負荷をかけ、結果としてろ過流量を大きくした際の破損を誘発する。これに対して本発明によれば、接着固定層内において偏り規制部材と整流筒とは中空糸膜束の長手方向で離間しているので中空糸膜の根本部分と偏り規制部材との距離を伸ばし易く、従って偏り規制部材の配置に起因した隙間が中空糸膜の根本部分に現れ難くなり、ろ過流量を大きくしても破損が生じ難くなる。その結果として、中空糸膜の寿命を延ばし、安定して良好な水質の水を継続的に供給できる。
【0012】
さらに、接着固定層は、中空糸膜の開口が露出する中空糸膜束の端面に面一となる外端面と、整流筒内に形成された内端面とを有し、偏り規制部材は、中空糸膜束の長手方向に沿って延在すると共に、外端面に面一となる外端部と接着固定層内に配置された内端部とを有し、偏り規制部材の外端部から内端部までの長さは、その内端部から接着固定層の内端面までの長さよりも小さいと好適である。接着固定層内の領域において、偏り規制部材が配置された外端面寄りの領域に比べて中空糸膜の根本部分に近い内端面寄りの領域の方が厚みは大きくなり、結果的に偏り規制部材の配置に起因した隙間が中空糸膜の根本部分で生じないような十分な距離を確保し易くなるので、中空糸膜の根本部分での破損を効果的に抑え易くなる。
【0013】
さらに、偏り規制部材の高さを接着固定層の厚みで割った値が0.1倍以上で、且つ0.5倍よりも小さいと好適である。この値が、0.5倍以上であると、偏り規制部材の影響を受けてハウジング内の流れが不均一(偏流)になる可能性が推察され、一方で、0.1倍未満では、製造特に、偏り規制部材としての機能を十分に発揮できなくなって中空糸膜束がハウジング内でばらついていたり、また、モジュール組立時に中空糸膜束を所定のサイズで保持し難くなる。
【0014】
さらに、中空糸膜束の両端部に形成された両方の接着固定層には、それぞれ偏り規制部材が内包されると共に、それぞれ整流筒の一部が固定され、両方の接着固定層内において偏り規制部材と整流筒とは、それぞれ中空糸膜束の長手方向で離間していると好適である。両方の偏り規制部材によって中空糸膜束の両端部での中空糸膜の偏りが低減されると共に、両方の整流筒によって中空糸膜を強い振動から保護できる。さらに、両方の接着固定層内において偏り規制部材と整流筒とは、それぞれ中空糸膜束の長手方向で離間しているので、中空糸膜束の両端部において中空糸膜の根本部分の破損を効果的に抑えることができる。
【0015】
さらに偏り規制部材は中空糸膜束の長手方向に沿って延在する平板状であると好適である。平板状なので、複数本の中空糸膜を面で仕切易くなり、複数本の中空糸膜を均等な本数に分割し易くなって偏りを効果的に低減できる。
【0016】
さらに中空糸膜束の外周に装着されたネット状の偏流抑制部を更に備えると好適である。中空糸膜束の外周に偏流抑制部を装着することで、複数本の中空糸膜同士の隙間が小さくなり、ハウジング内の偏流を抑制できる。
【0017】
さらに、偏流抑制部は、中空糸膜束の外周に巻かれて成り、その巻数は一重であると好適である。巻数を最低限の一重とすることでサイズの拡大を抑えることに有効である。
【0018】
さらに、整流筒には、出入口との対面側を避け、且つ周方向に沿って複数の流路孔が形成されていると好適である。出入口との対面側に流路孔を形成すると、その流路孔を通って液体が高速で流れ易い状態になり、中空糸膜へのダメージが大きくなると想定されるが、上記構成のように、出入口との対面側を避け、且つ周方向に沿って複数の流路孔を形成することで、出入口から出入りする流体が迂回して各流路孔から出入りし易くなり、流体が局所的に高速になってしまうことを防ぐことができる。
【0019】
さらに、偏り規制部材は、出入口との対面側を避けて接着固定層内に配置されていると好適である。偏り規制部材が出入口との対面側に設けられている場合に比べて、流体が局所的に高速になって中空糸膜にダメージを与えてしまうことを抑止できる。
【0020】
また、本発明は、上記の各中空糸膜モジュールを用いたろ過方法であって、第1の領域及び前記第2の領域の少なくとも一方の領域に被処理水を導入し、中空糸膜を透過した後のろ過水を他方の領域から排出することを特徴とする。本発明によれば、中空糸膜の寿命を延ばし、安定して良好な水質の水を継続的に生成することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、中空糸膜の寿命を延ばし、安定して良好な水質の水を継続的に生成できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る中空糸膜モジュールを示す断面図である。
【図2】本実施形態に係る中空糸膜モジュールの上端部を拡大して示す断面図である。
【図3】本実施形態に係る中空糸膜モジュールの下端部を拡大して示す断面図である。
【図4】中空糸膜束の上端面を拡大して示す図である。
【図5】中空糸膜束の下端面を拡大して示す図である。
【図6】中空糸膜モジュールを製造するために事前に組み立てるモジュール前躯体の分解斜視図である。
【図7】中空糸膜モジュールの分解斜視図である。
【図8】ろ過装置を模式的に示す図である。
【図9】本実施形態に係る中空糸膜モジュールと比較例に係る中空糸膜モジュールとを模式的に示す断面図であり、(a)は本実施形態に係る中空糸膜モジュールの下部を示す縦断面図、(b)は(a)のb−b線に沿った断面図、(c)は従来の中空糸膜モジュールの下部を示す縦断面図、(d)は(c)のd−d線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施形態に係る中空糸膜モジュールについて図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明を具現化する態様が広く含まれる。
【0024】
本実施形態に係わる中空糸膜モジュール(図1参照)1は、超純水製造用のろ過装置(図8参照)100にて利用される。例えば、中空糸膜モジュール1は、精密ろ過膜やイオン交換樹脂、逆浸透ろ過膜を用いて製造した超純水をユースポイントに供給する直前に行う外圧式ろ過に利用され、保安用フィルターとしての機能を担っている。また、中空糸膜モジュール1は、設備のコンパクト化のために、高いろ過性能が要求され、すなわち、一台当たりのろ過流量が大きく、かつ、単位容積あたりのろ過流量が大きなモジュールである。
【0025】
図1〜図3に示されるように、中空糸膜モジュール1は、両端に開口P(図4参照)を有する複数本の中空糸膜2からなる中空糸膜束3と、中空糸膜束3を収容するハウジング5と、中空糸膜束3の両端部をハウジング5に接着固定すると共に、中空糸膜2の開口Pが露出する第1の領域A1と中空糸膜2を挟んで第1の領域A1に連通する第2の領域A2とを区画する接着固定層7A,7Bと、を備えている。
【0026】
ハウジング5は、筒状のハウジング本体9と、ハウジング本体9の上端に取り付けられた配管接続キャップ(以下、「ヘッダキャップ」という)10と、ハウジング本体9の下端に取り付けられた配管接続キャップ(以下、「ボトムキャップ」という)11と、を備えている。
【0027】
ハウジング本体9は、ヘッダキャップ10が取り付けられるヘッダ部15と、ボトムキャップ11が取り付けられるボトム部17と、ヘッダ部15とボトム部17との間に配置され、ヘッダ部15とボトム部17とに接着一体化される胴部13と、を備えている。ヘッダ部15には流体の出入り用の上部ノズル(流体の出入口)19が設けられ、ボトム部17には流体の出入り用の下部ノズル(流体の出入口)21が設けられており、上部ノズル19と下部ノズル21とは、ハウジング本体9の軸線SLに直交する方向に突き出すように設けられている。
【0028】
ヘッダキャップ10には、流体の出入り用の管路(流体の出入口)10aが設けられており、袋ナット23の締め付けによってハウジング5の上端に固定されている。また、ボトムキャップ11にも同様に、流体の出入り用の管路(流体の出入口)11aが設けられており、袋ナット23の締め付けによってハウジング本体9の下端に固定されている。
【0029】
ハウジング5内に収容された中空糸膜束3の下端部、及び上端部の内部には、複数本の中空糸膜2の密度分布の偏りを低減するために、偏り規制部材25A,25Bが配置されている。偏り規制部材25A,25Bは、例えば、板状または棒状(柱状)を適宜に選択できる。本実施形態では中空糸膜束3の両端部に偏り規制部材25A,25Bが挿入されており、中空糸膜束3の両端部において中空糸膜2の密度分布の偏りを低減している。なお、偏り規制部材25A,25Bは、中空糸膜束3のいずれか一方の端部にのみ挿入された態様も可能であり、その態様であっても、いずれか一方に挿入された偏り規制部材25A,25Bにより、中空糸膜束3の一方側の端部で中空糸膜2の密度分布の偏りを低減する。
【0030】
本実施形態では、板状の偏り規制部材の一例として二枚の矩形平板が直交するように交差して形成された断面X字状のクロス板25A,25Bを例に説明する。クロス板25A,25Bは、二枚の矩形平板の交線部分25bが中空糸膜束3の長手方向に沿うように配置されている。クロス板25A,25Bは、交線部分25bから放射状に突き出た四枚の板片部25a(図4、及び図5参照)を備えており、中空糸膜束3の上端部、または下端部は四枚の板片部25aによって略均等に四分割されており、中空糸膜2の密度分布の偏りが是正されている。
【0031】
なお、クロス板25A,25Bは、上部ノズル19または下部ノズル21との対面側を避けて接着固定層7A,7B内に配置されている。具体的には、各板片部25aの側縁25cは、上部ノズル19または下部ノズル21の中心線CLからずれて配置されている。
【0032】
中空糸膜束3の両端部には、それぞれ整流筒27,28が装着されている。整流筒27,28は、上部ノズル19または下部ノズル21の近傍において中空糸膜束3とハウジング本体9の内面との間隔を保持するために設けられる。整流筒27,28は、中空糸膜束3の外周を囲むように設けた筒状体であり、一部分が接着固定層7A,7Bに埋設されて固定されている。本実施形態では、中空糸膜束3の両端部を整流筒27,28で囲んでおり、ろ過時に生じる強い振動から中空糸膜2の両端部を保護することができる。なお、整流筒27,28は、中空糸膜束3のいずれか一方にのみ配置した態様も可能であり、その態様の場合、いずれか一方に配置された整流筒27,28により、中空糸膜2の一方側の端部で強い振動から保護することができる。
【0033】
上端部側の整流筒27のハウジング本体9の軸線SLに沿った方向(中空糸膜束3の長手方向)の長さは、接着固定層7Aの内端面74から上部ノズル19の内側の開口19aを越える下方位置まで延びていることが好ましく、開口19aに対面することで流体の流れに干渉する程度の長さを有することが好ましい。同様に、下端部側の整流筒28の長さは、接着固定層7Bの内端面72から下部ノズル21の内側の開口21aを越える上方位置まで延びていることが好ましく、開口21aに対面することで流体の流れに干渉する程度の長さを有することが好ましい。なお、以下の説明では、上部ノズル19側の整流筒は通常目皿27として説明し、下部ノズル21側のスカート目皿28として説明する。
【0034】
通常目皿27は円筒状であり、一方の端部にはフランジ部27aが形成されている。フランジ部27aは、通常目皿27をハウジング本体9内の所定位置にセッティングするために、ヘッダ部15に形成された段差部15aに当接して係止される。また、通常目皿27には、流体が通過する複数の流路孔27bが周方向に沿って形成されている。複数の流路孔27bは、通常目皿27の周方向の一部領域(閉鎖領域)27cを避けて形成されている。
【0035】
具体的には、通常目皿27の横断面において、全周(360度)に対して一定の角度θの範囲(60度〜120度)には流路孔27bが形成されずに閉鎖壁部27cが形成されている。通常目皿27は、閉鎖壁部27cが上部ノズル19の内側の開口19aに対面し、閉鎖壁部27cの中心付近が上部ノズル19の中心線CLに略一致するように配置される。その結果、通常目皿27の流路孔27bは、上部ノズル19との対面側を避け、且つ周方向に沿って複数形成された態様を具現化している。上部ノズル19に対面する位置に閉鎖壁部27cを配置することで、被処理水は迂回しながら上部ノズル19から排出されるようになり、局所的な高速流れの発生を抑え、中空糸膜2に対するダメージを効果的に抑えて寿命を延ばすことが可能になる。
【0036】
図3に示されるように、スカート目皿28は円筒状であり、下端部が接着固定層7B内に埋設されて固定されている。
【0037】
また、図1、及び図6に示されるように、中空糸膜束3の長手方向の中央部分の外周にはネット状の偏流抑制部29が巻き付けられて装着されている。偏流抑制部29の巻数は一重であり、液体の偏流を抑制する一方で、過度の流速抵抗が生じないように配慮されている。また、一重巻きにすることで、サイズの拡大を抑えることにも有効である。
【0038】
図1〜図3に示されるように、ハウジング5内には、上下の位置にそれぞれ接着固定層7A,7Bが形成されている。上側の接着固定層7Aは、中空糸膜束3の上端部の中空糸膜2同士、及びクロス板25Aを内包して固着一体化し、さらに通常目皿27の上部を埋設一体化してヘッダ部15ハウジング本体9の内面に固定している。下側の接着固定層7Bは、中空糸膜束3の下端部の中空糸膜2同士、及びクロス板25Bを内包して固着一体化し、さらにスカート目皿28の下部を埋設一体化してボトム部17の内面に固定している。
【0039】
上側の接着固定層7Aと下側の接着固定層7Bとにより、ハウジング5内は、三つの空間に区画されている。この三つの空間のうち、ヘッダキャップ10内に形成された空間とボトムキャップ11内に形成された空間は、中空糸膜2の端部の開口Pが露出する第1の領域A1であり、下側の接着固定層7Bと上側の接着固定層7Aとの間に形成されたハウジング本体9内の空間は、中空糸膜2を挟んで第1の領域A1に連通する第2の領域A2である。
【0040】
本実施形態に係る中空糸膜モジュール1では、外圧ろ過を想定しており、例えば、下部ノズル21は被処理水の導入口として利用され、下部ノズル21を介して第2の領域A2内に被処理水を受け入れる。また、上部ノズル19は、被処理水の循環用或いは被処理水の濃縮用の排出口として利用され、第2の領域A2内を通る被処理水をハウジング本体9から排出する。一方で、中空糸膜2を透過したろ過水は第1の領域A1に抜け、ヘッダキャップ10及びボトムキャップ11の各管路10a,11aから排出される。
【0041】
次に、本実施形態に係る中空糸膜モジュールの製造方法について図6、図7を参照して説明する。図6は、中空糸膜モジュールを製造するために、事前に組み立てられるモジュール前躯体の分解斜視図であり、図7は中空糸膜モジュールの分解斜視図である。
【0042】
モジュール前躯体50は、ハウジング本体9を形成するための接着固定層形成容器51を備えている。接着固定層形成容器51は、円筒状の本体容器51aと、本体容器51aの上部に液密に固定される上部容器(以下、「ヘッダ容器」という)51bと、本体容器51aの下部に液密に固定される下部容器(以下、「ボトム容器」という)51cと、を備えている。ヘッダ容器51bには上部ノズル19が設けられ、ボトム容器51cには下部ノズル21が設けられている。ヘッダ容器51bは通常目皿27を収容した状態で本体容器51aの上端部に液密に接着固定され、ボトム容器51cはスカート目皿28を収容した状態で本体容器51aの下端部に液密に接着固定される。
【0043】
中空糸膜束3は、複数本の中空糸膜2を束ねることで形成される。中空糸膜束3の両端部には、センタリング用の挿入体53が差し込まれている。挿入体53は断面X字状であり、複数本の中空糸膜2の密度分布の偏りを是正するという機能も有している。上下に挿入された挿入体53は所定の位置で切断され、その結果、中空糸膜エレメント4が製造された際にはクロス板25A,25Bになる。
【0044】
中空糸膜束3の外周には、ネット状の偏流抑制部29が巻き付けられる。中空糸膜束3は、挿入体53が両端部に挿入され、偏流抑制部29が巻き付けられた状態で接着固定層形成容器51に挿入される。接着固定層形成容器51の両端には、それぞれPキャップ55があてがわれており、Pキャップ55に中空糸膜束3の両端が当接してセッティングされる。
【0045】
Pキャップ55には、接着剤を注入するための孔(接着剤注入口)55aが形成されており、所定の接着剤が接着剤注入口55aから注入されて接着層が形成される。接着層は、所定の位置で切断されて中空糸膜エレメント4が製造された際には接着固定層7A,7Bになる。
【0046】
接着剤の注入・硬化は遠心力を利用した、いわゆる遠心接着法で行ってもよいし、静置下で強制的に接着剤を注入して硬化させる所謂、静置接着法で行うこともできる。遠心接着法で行う方が、接着固定層7A,7Bを形成した場合の内側表面における中空糸膜2の外表面の被覆層が均一にでき、膜破断を起こし難いので好ましい。なお、遠心接着法の場合には、ノズルを上向きにした状態で水平にして回転させることが定法として行われている。また、遠心接着法の場合には、接着剤が流動化しなくなる程度まで硬化反応が進んだ段階で回転を停止し、次いで、オーブン等で加温して実用的な硬化状態まで反応を完了させることが好ましい。
【0047】
ヘッダ容器51b側に形成された接着層の界面は、上部ノズル19の近傍で、上部ノズル19の内側の開口19aに進入しない位置に形成される。また、ボトム容器51c側に形成された接着層の界面は、下部ノズル21の近傍で、下部ノズル21の内側の開口21aに進入しない位置に形成される。ヘッダ容器51b側に形成された接着層の界面は、中空糸膜エレメント4が製造された際には、接着固定層7Aの下端面74になる。また、ボトム容器51c側に形成された接着層の界面は、中空糸膜エレメント4が製造された際には、接着固定層7Bの上端面72になる。
【0048】
なお、本実施形態では、ヘッダ容器51bとPキャップ55とが別体として構成され、ボトム容器51cとPキャップ55とが別体として構成された例に説明したが、ボトム容器とPキャップ部分(端部容器部分)、またはヘッダ容器とPキャップ部分(端部容器)とが一体として形成された容器状を成していてもよい。また、接着剤は、端部容器部分に接着剤注入口を設けておき、その注入口から注入してもよいし、ボトム部やヘッダ部の中空糸膜束の中央寄りの開口端から直接注入することもできる。また、ボトム容器やヘッダ容器に設けられているノズルから直接注入することも可能である。
【0049】
接着剤の硬化により、中空糸膜束3の端部、挿入体53、及び各整流筒27,28は一体化され、さらに接着層を介して接着固定層形成容器51の内面に固定されてモジュール前躯体50が形成される。その後、モジュール前躯体50の両端を所定の位置で部分的に切断し、中空糸膜2の端部の開口Pを形成して中空糸膜エレメント4を完成させる。
【0050】
なお、本実施形態では、接着固定層形成容器51に接着層が固着されて、そのままハウジング本体9となる態様を説明しているが、例えば、カートリッジ型モジュール用の中空糸膜エレメントの場合には、接着固定層形成容器51を硬化後の接着剤との接着力が弱い材質で構成し、かつ、剥離可能な構造としておくことによって、接着剤を硬化させた後に接着固定層形成容器51を剥離除去するように構成させることも可能である。
【0051】
図7に示されるように、中空糸膜エレメント4の両端部には、袋ナット23が螺合する雄ねじが形成されている。中空糸膜エレメント4の両端部のそれぞれには、配管と接続するためのボトムキャップ11またはヘッダキャップ10が、Oリングなどのシール部材12を介して装着され、袋ナット23によって締結固定されて中空糸膜モジュール1が完成する。なお、本実施形態に係る中空糸膜モジュール1は、外表面スキン層にて微粒子を捕捉する外圧ろ過に用いられ、また、ろ過方式は、デッドエンドろ過(全量ろ過)、クロスフローろ過のいずれも使用できる。
【0052】
次に、本実施形態に係る中空糸膜モジュール1を超純粋製造用のろ過装置100に設置した態様の一例について図8を参照して説明し、さらに、本実施形態に係る中空糸膜モジュール1を用いたろ過方法について説明する。なお、この超純粋製造用のろ過装置100において、外圧ろ過でのクロスフローろ過方式を想定している。
【0053】
図8に示されるように、ろ過装置100は、例えば、超純水の保安用フィルター用途であり、下部ノズル21から中空糸膜2の外側である第2の領域A2に被処理水を供給し、中空糸膜2の内部(中空部)側にろ過し、中空糸膜束3の両端部側である第2の領域A1からろ過水(超純水)を排出する。また、循環水(濃縮水)は上部ノズル19を通じて第2の領域A2から排出される。
【0054】
ろ過装置100は、中空糸膜モジュール1の下部ノズル21に接続されて被処理水を供給する供給配管101と、上部ノズル19に接続されて循環水を送り出す循環配管102とを備えている。さらに、供給配管101や循環配管102の途中には、圧力計や各種弁101a,102aなどが配設されている。また、ろ過装置100は、ろ過水の流路となる上部ろ過水排出管103と下部ろ過水排出管104とを備えている。上部ろ過水排出管103や下部ろ過水排出管104はろ過水の合流管105に接続されており、合流管105は外部の配管(図示せず)に連絡している。なお、合流管105には、圧力計や各種弁105aなどが配設されている。
【0055】
中空糸膜モジュール1は通常目皿27が収容された上部ノズル19側が上になるように縦に配置され、上部ノズル19が循環配管102に接続され、また、ヘッダキャップ10の管路10aが上部ろ過水排出管103に接続される。また、下部ノズル21は供給配管101に接続され、ボトムキャップ11の管路11aが下部ろ過水排出管104に接続される。
【0056】
超純粋などの被処理水は、供給配管101から下部ノズル21を通じて所定の圧力で中空糸膜モジュール1の第2の領域(1次側の領域)A2に導入される。ハウジング本体9内では、導入された被処理水の一部が中空糸膜2でろ過されて中空部に至り、ろ過水として上方または下方に移動する。上方または下方に移動したろ過水は、中空糸膜2の端部の開口Pからヘッダキャップ10またはボトムキャップ11内の第1の領域(2次側の領域)A1に抜け、各管路10a,11a、上部ろ過水排出管103、または下部ろ過水排出管104を通って合流管105に排出され、外部配管を通じて採取される。一方で、中空糸膜2を透過せずにハウジング本体9内の第2の領域A2を上昇する被処理水は、循環水として上部ノズル19から排出され、循環配管102に送り出される。
【0057】
上記のろ過方法により、中空糸膜2の破損を起こすことなく良好な水質のろ過水を長期間安定して得ることができる。また、供給した水量の約2〜5%を上部ノズル19から循環水として流出させながらろ過運転を行うのが好ましい。このようにすると、中空糸膜2によって排除された微粒子等が中空糸膜モジュール1外に排出されるので、膜面の閉塞を起こし難くなり一層長期間にわたって安定したろ過水量を得ることができる。
【0058】
また、ボトムキャップ11に接続された下部ろ過水排出管104はエルボで立ち上がり、ヘッダキャップ10に接続された上部ろ過水排出管103に合流している。上下両方の整流筒(スカート目皿28、通常目皿27)が同一構造ではないので、ろ過水の中空糸膜モジュール1内での流動抵抗と各ろ過水排出管103,104での流動抵抗とがバランスし、結果として上部ろ過水排出管103からのろ過水量と下部ろ過水排出管104からのろ過水量とがほぼ同量になる。従って、ヘッダキャップ10、およびボトムキャップ11から流出するろ過水量をバランスさせるために各ろ過水排出管103,104に流量調整用弁を設ける必要が無くなり、結果として弁の数を減らせるメリットもある。なお、超純水のファイナルフィルター用途において、配管中に空気溜まりができないように下側から被処理水を供給し、ろ過水を上側に導出する方法であってもよい。
【0059】
次に、本実施形態に係る中空糸膜モジュール1の下端部及び上端部の構成について更に詳しく説明し、さらに中空糸膜モジュール1の効果について説明する。
【0060】
図2に示されるように、上側の接着固定層7Aは、中空糸膜2の内部に連通する開口Pが露出する中空糸膜束3の端面に面一となる上端面(外端面)73と、通常目皿27内に形成された下端面(内端面)74とを有する。通常目皿27の上部は接着固定層7Aに固定され、クロス板25Aは接着固定層7Aに内包されている。そして、接着固定層7A内においてクロス板25Aと通常目皿27とは中空糸膜束3の長手方向で離間している。この離間寸法d1は、例えば、接着固定層7Aの厚みが55mm程度の一般的な中空糸膜モジュール1の場合には、1mm〜50mmであればよく、特に、20mm〜45mmが好ましい。
【0061】
さらに、クロス板25Aは、上側の接着固定層7Aに内包された状態で中空糸膜束3の長手方向に沿って延在しており、接着固定層7Aの上端面73に面一となる上端部(外端部)25sと接着固定層7A内に配置された下端部(内端部)とを有する。そして、クロス板25Aの上端部25sから下端部25tまでの長さL1は、クロス板25Aの下端部25tから接着固定層7Aの下端面74までの長さL2よりも小さくなっている。
【0062】
図3に示されるように、下側の接着固定層7Bは、中空糸膜束3の端面に面一となる下端面(外端面)71と、スカート目皿28内に形成された上端面(内端面)72とを有する。スカート目皿28の下部は接着固定層7Bに固定され、クロス板25Bは接着固定層7Bに内包されている。そして、接着固定層7B内においてクロス板25Bとスカート目皿28とは中空糸膜束3の長手方向で離間している。この離間寸法d2は、例えば、接着固定層7Bの厚みが 55mm程度の一般的な中空糸膜モジュール1の場合には、1mm〜50mmであればよく、特に、20mm〜45mmが好ましい。
【0063】
さらに、クロス板25Bは、下側の接着固定層7Bに内包された状態で中空糸膜束3の長手方向に沿って延在しており、接着固定層7Bの下端面71に面一となる下端部(外端部)25kと接着固定層7B内に配置された上端部(内端部)25mとを有する。そして、クロス板25Bの下端部25kから上端部25mまでの長さL3は、クロス板25Bの上端部から接着固定層7Bの上端面72までの長さL4よりも小さくなっている。
【0064】
さらに、本実施形態では、クロス板25A,25Bの高さ(中空糸膜束3の長手方向における長さ)を接着固定層7A,7Bの厚みで割った値、つまり、偏り規制部材高さ/接着固定層7A,7B厚が0.1倍以上で、且つ0.5倍よりも小さい範囲であることが好ましい。
【0065】
次に、接着固定層7A,7Bや、通常目皿27、スカート目皿28に対するクロス板25A,25Bの寸法や配置を上記のように構成することで奏せられる効果について図9を参照して説明する。なお、図9は、本実施形態に係る中空糸膜モジュール1と、従来型を想定した比較例に係る中空糸膜モジュール200とを示しており、(a)は下側の接着固定層7Bを模式的に示す縦断面図であり、(b)は(a)のb−b線に沿った模式的な断面図である。また、(c)は比較例に係る中空糸膜モジュール200の下側の接着層を模式的に示す縦断面図であり、(d)は(c)のd−d線に沿った模式的な断面図である。
【0066】
本発明者らは、比較例に係る中空糸膜モジュール(以下「比較例」という)200を超純水製造用のろ過装置に設置し、外圧ろ過によって所定の水処理を実施したところ、比較的短期間で中空糸膜201の破断が生じてしまうことを見出した。そこで、本発明者らは、この破断箇所Bを検証したところ、挿入物202(偏り規制部材25A,25B)が中空糸膜束内に挿入されている態様において、中空糸膜201の破断箇所Bは不規則に生じるものではなく、整流筒203内で接着固定層7Bから突き出した中空糸膜201の根本部分で発生していることが判明した(図9(c)参照)。さらに、破断箇所Bは、丁度、棒状または板状の挿入物202が配置されている真上(または真下)の近傍であることが判明した(図9(d)参照)。
【0067】
そして、この原因を究明すべく比較例200を検証したところ、比較例200では、挿入物202の寸法が長いために、その上端が整流筒203の近傍にまで達しており、その結果、中空糸膜201の根本部分と挿入物202との距離は極めて短くなっていることが判明した。更に、この距離が短いことに起因し、比較例200では、挿入物202を挟んで隣接する中空糸膜201同士の隙間が接着固定層205内で吸収されず、中空糸膜201の根本部分にまで現れて中空糸膜201の密度が疎になる隙間SLが生じていることが判明した。そして、本発明者らは、外圧ろ過時に整流筒203内に入りこんでろ過される被処理水のうち、この隙間SLを流れる流量が局所的に増え、その結果としてハウジング内での流れが不均一(偏流)となり、隙間SL近傍の中空糸膜201の振れが大きくなって過負荷がかかり、ろ過流量を大きくした際に破損が生じ易くなるのではないかと推察した。
【0068】
ここで、上記の中空糸膜201の根本部分と挿入物202との距離を伸ばすために接着層205を厚くすることは、中空糸膜201の透過性能にも影響を与えるので実質的には難しい。また、通常、挿入物202は、複数本の中空糸膜201の偏りを低減するという効果に加え、接着剤の投入量を減らせるという効果があるので当業者による一般的な考えでは、挿入物202の寸法を短くするという発想は生まれない。
【0069】
しかしながら本発明者らは、上記の課題を着想したことに起因して逆転の発想を行い、図9(a)、(b)に示されるように、クロス板(偏り規制部材)25A,25Bの寸法を短くし、更に、接着固定層7A,7Bや整流筒27,28に対する偏り規制部材25A,25Bの寸法や配置を工夫したところ、ろ過処理能力を落とさずに中空糸膜2の根元部分の破断を解消でき、更に、中空糸膜2の寿命を飛躍的に向上させることができた。
【0070】
つまり、本実施形態に係る中空糸膜モジュール1では、下部側の接着固定層7B内において偏り規制部材25Bとスカート目皿(整流板)28とを中空糸膜束3の長手方向で離間させる構成であり、または上部側の接着固定層7A内において偏り規制部材25Aと通常目皿(整流板)27とを中空糸膜束3の長手方向で離間させる構成なので、中空糸膜2の根本部分と偏り規制部材25A,25Bとの距離を伸ばし易くなり、従って偏り規制部材25A,25Bの配置に起因した隙間が中空糸膜2の根本部分に現れ難くなり、ろ過流量を大きくしても破損が生じ難くなる。その結果として、中空糸膜2の寿命を延ばし、安定して良好な水質の水を継続的に供給できる。
【0071】
さらに、本実施形態では、接着固定層7A,7B内の領域において、偏り規制部材25A,25Bが配置された外端面71,73寄りの領域の厚みは、中空糸膜2の根本部分に近い内端面72,74寄りの領域の厚みよりも小さくなり、結果的に偏り規制部材25A,25Bの配置に起因した隙間が中空糸膜2の根本部分で生じないような十分な距離を確保し易くなるので、中空糸膜2の根本部分での破損を効果的に抑え易くなる。
【0072】
なお、本実施形態では、偏り規制部材25A,25Bの高さを接着固定層7A,7Bの厚みで割った値、つまり、偏り規制部材高さ/接着固定層厚が0.1倍以上で、且つ0.5倍よりも小さい範囲である。ここで、偏り規制部材高さ/接着固定層厚が0.5倍以上であると、偏り規制部材25A,25Bの影響を受けてハウジング5内の流れが不均一(偏流)になる可能性が推察され、一方で、0.1倍未満では、製造特に、偏り規制部材25A,25Bとしての機能を十分に発揮できなくなって中空糸膜束3がハウジング5内でばらついていたり、また、モジュール組立時に中空糸膜束3を所定のサイズで保持し難くなる。
【0073】
また、本実施形態では、下側及び上側の両方の接着固定層7A,7Bにおいて、それぞれ偏り規制部材25A,25Bが内包されると共に、それぞれ整流筒27,28の一部が固定され、両方の接着固定層7A,7B内において偏り規制部材25A,25Bと整流筒27,28とは、それぞれ中空糸膜束3の長手方向で離間している。従って、両方の偏り規制部材25A,25Bによって中空糸膜束3の両端部での中空糸膜2の偏りが低減されると共に、両方の整流筒27,28によって中空糸膜2を強い振動から保護できる。さらに、両方の接着固定層7A,7B内において偏り規制部材25A,25Bと整流筒27,28とは、それぞれ中空糸膜束3の長手方向で離間しているので、中空糸膜束3の両端部において中空糸膜2の根本部分の破損を効果的に抑えることができる。
【0074】
さらに本実施形態に係る偏り規制部材25A,25Bは中空糸膜束3の長手方向に沿って延在する平板状のクロス板25A,25Bなので、中空糸膜2を面で仕切易くなり、複数本の中空糸膜2を均等な本数に分割し易くなって偏りを効果的に低減できる。
【0075】
さらに、本実施形態に係る中空糸膜モジュール1は、中空糸膜束3の外周に装着されたネット状の偏流抑制部29を備えているので、複数本の中空糸膜2同士の隙間が小さくなり、ハウジング5内の偏流を抑制できる。特に、偏流抑制部29は中空糸膜束3の外周に巻き付けられて装着されており、その巻数は、最低限の一重であるために、サイズの拡大を抑えることに有効である。
【0076】
さらに、本実施形態に係る通常目皿27には、上部ノズル(出入口)19との対面側を避け、且つ周方向に沿って複数の流路孔27bが形成されている。例えば、上部ノズル(出入口)19との対面側に流路孔27bを形成すると、その流路孔27bを通って液体が高速で流れ易い状態になり、中空糸膜2へのダメージが大きくなると想定される。しかしながら、本実施形態では、上部ノズル19(出入口)19との対面側を避け、且つ周方向に沿って複数の流路孔27bを形成することで、通常目皿27内から被処理水が迂回して各流路孔27bを通って上部ノズル19から排出されるようになるので、被処理水が局所的に高速になってしまうことを防ぐことができる。
【0077】
さらに、本実施形態に係る偏り規制部材25A,25Bは、下部ノズル(出入口)21または上部ノズル(出入口)19と対面側を避けて接着固定層7A,7B内に配置されている。この態様によれば、被処理水が、局所的に高速で流れて中空糸膜2にダメージを与えてしまうことを抑止できる。
【0078】
次に、本実施形態に係る中空糸膜モジュールを構成する各要素、および、その変形例について、更に詳しく説明する。
【0079】
(中空糸膜)
中空糸膜としては、逆浸透膜、ナノろ過膜、限外ろ過膜、及び精密ろ過膜を用いることができる。中空糸膜の素材は特に限定されず、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチルペンテン)、エチレン−ビニルアルコール共重合体、セルロース、酢酸セルロース、ポリフッ化ビニリデン、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられ、また、これらの複合素材も使用できる。
【0080】
また、中空糸膜の形状としては、好ましくは内径50μm〜3000μm、より好ましくは500〜2000μmであり、外径に対する内径の比(内/外径比)が0.3〜0.8のものが好適に使用される。
特にろ過能力はより高い方が良く、ろ過速度を早めるため、0.8ml/min/cm at 0.1MPa、25℃以上のろ過能力を有する中空糸膜を用いることが好ましい。なお、破裂強度、圧縮強度が高い材質のもので、0.5MPa以上の耐圧性を有するものが好ましい。
【0081】
(偏り規制部材)
上記の実施形態では、クロス板25A,25Bからなる偏り規制部材を例示するが、本来、偏り規制部材については、例えば、断面形状が円形や楕円形、または四角形、六角形等の多角形、あるいは星型形状や板状を採用でき、円形や楕円形の場合には、中空糸膜に接触したときに中空糸膜に損傷を与え難い点で有利である。
【0082】
また、偏り規制部材の太さは、円形、楕円、または多角形の場合には、中空糸膜の外径の5倍以上20倍以下であることが、中空糸膜の密度分布を制御し易い点から好ましい。なお、ここでいう「太さ」とは、偏り規制部材の長さ方向においてその断面積が最も大きい部分の円相当直径を意味する。ここで、中空糸膜の外径は0.6mm〜2.5mmが一般的であるので、具体的には3mm〜50mmの範囲から選ばれるが、3mm〜30mmの範囲が好ましく、5mm〜20mmの範囲が特に好ましく用いられる。
【0083】
また、偏り規制部材が板状の場合には、中空糸膜の密度分布を制御し易いという上記と同様の理由でその平均厚みが中空糸膜の外径の3倍以上15倍以下であることが好ましい。なお、偏り規制部材の先端部分を錐状にするなどして中空糸膜束3内に挿入しやすい形状にしておくと好適である。
【0084】
偏り規制部材の材質としては、高分子材料、無機材料、金属材料等を広く用いることができて特に限定されないが、接着固定層を構成する接着剤との相性が良くて十分な接着効果を期待でき、かつ、接着剤と同等又はそれ以上の引張弾性率を有するのが好ましく用いられる。
【0085】
(偏流抑制部)
中空糸膜束を被覆するネット状の偏流抑制部に関しては、素材は特に限定されず、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチルペンテン)、エチレン−ビニルアルコール共重合体、セルロース、酢酸セルロース、ポリフッ化ビニリデン、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体等が挙げられ、また、これらの複合素材も使用できる。
【0086】
なお、中空糸膜束への装着を考慮すると、偏流抑制部は、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体等が好ましい。
【0087】
(接着固定層)
接着固定層は、所定の接着剤の注入・硬化によって形成される。この接着剤としては、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、エポキシアクリレート樹脂、シリコン樹脂等の高分子材料が好ましい。中でも、超純水用途に用いるので、ろ過水の水質(接着剤の溶出物由来の異物やトータル有機物成分(一般的に言われるTOC成分)より、エポキシ樹脂が特に好ましい。
【0088】
また、これらの接着剤によって形成される接着固定層7A,7Bは、使用中に生じる差圧に耐え得る耐圧性を有することが必要であり、そのためには適度な硬さを有していることが望ましい。一方、物理洗浄時等の流体の流れによる中空糸膜の破断をより長期間確実に防止するために、適度な柔らかさを有した接着剤を使用することが望ましい。
【実施例】
【0089】
以下の実施例及び比較例においては、中空糸膜としてポリスルホン製限外ろ過膜とモジュールケースを使用した。その特性を以下に示す。
【0090】
[ポリスルホン製限外ろ過膜について]
内径/外径:0.6mm/1.0mm、
外表面積換算短糸透水量:500LMH(膜有効長5cmでの測定値)、
破断強度:5.5MPa、
破断伸度:80%。
中空糸膜の透水量は、25℃の限外ろ過水を長さ50mmの中空糸膜の内面から外面へ透過させたときのろ過水の量(LMH)である。透水量の計算にあたり有効膜面積は外面で換算した。中空糸膜の破断強度及び破断伸度は、(株)島津製作所製のオートグラフAGS−5Dを使用し、サンプルの長さ30mm、引っ張りスピード50mm/分で測定した。
破断強度(MPa)は、中空糸膜1本当たりの破断時の荷重を、引っ張る前の膜の断面積で割ることによって算出される値である。破断伸度(%)は元の長さに対する破断に至るまでに伸びた長さの比である。
【0091】
[中空糸膜モジュール作製に用いたケースサイズ]
筒状ケースとして、以下の示す仕様の透明ポリスルホン製のものを使用した。
ろ過領域における円筒部内径/外径:154mm/170mm、
ノズル部における円筒部内径/外径:162mm/183mm、
ノズルの内径:58mm、
筒状ケースの長さ/ノズルの中心間距離:1050mm/872mm。
【0092】
[ろ過評価方法とリークチェック方法]
図1に示すろ過装置を用いて、外圧ろ過にて運転を行った。評価を実施する前には、リーク検査を以下のようにして行った。
すなわち、両端の配管接続用キャップを取り外した後、モジュールを水槽に浸漬して内部を純水で満たした。次いで片側のノズルには栓を施して密閉状態とし、他のノズルには空気配管を接続した。0.1MPaまで徐々に空気圧を印加し、モジュール両端を観察して中空部から気泡が継続して出てこないかどうかを確認した。
【0093】
[実施例1]
ポリスルホン製の中空糸膜11600本を、PE製ネット(タキロン製、商標名トリカルネット)で、全部を1束化とし、透明なポリスルホン製ハウジングに収納し、両端部をエポキシ樹脂で固定した中空糸膜モジュールを使用してろ過運転を行った。
【0094】
中空糸膜束の端部には偏り規制部材として、接着固定層を形成させるエポキシ樹脂と同一組成のものを、高さ63mm、幅138mm、厚み5mmのクロス形状(クロス板)として用いた。また、クロス板は、下部ノズルまたは上部ノズルとの対面側を避けて接着固定層内に配置した。
なお、クロス板と整流筒との離間距離は22mm、接着層内のクロス板の高さは23mmであり、接着固定層の内端面からクロス板までの距離は28mmであった。
【0095】
ろ過装置の所定の配管に中空糸膜モジュールを取り付け、非処理水として超純水をろ過した。該超純水は、河川水を精密ろ過膜と逆浸透膜およびイオン交換樹脂による処理、並びにUV殺菌処理を施して製造した。
【0096】
このとき、中空糸膜モジュールへの被処理水の供給流量はポンプ出口弁の開度を調整して流量が25m/hになるようにした。
【0097】
1ヶ月間ろ過運転を行った時点で運転を停止し、エアーを用いて、外圧にてリークチェックを実施したが(0.1MPa/2分間保持)、モジュール切断端面からのエアー漏れは観察されなかった。
【0098】
該モジュールを解体して中空糸膜を取り出し、外表面をSEMで観察したところ、擦過傷等の異常は観られなかった。また、単糸透水量を測定したところ、480L/h/m/100kPaであり殆ど変化が無かった。
また、接着固定層の界面部(内端面)近傍の中空糸膜束を毟り取り、界面を観察したが、中空糸束がクロス板の痕跡を残していない事(影響を受けていない事)を確認した。
【0099】
なお、接着固定層を半分に分割し、偏り規制部材高さ/接着固定層厚を測定したところ、23/55=0.42倍であった。
【0100】
[実施例2]
実施例1と同様のポリスルホン製の中空糸膜を11600本用いて、PE製ネットで全部を1束化とし、透明なポリスルホン製ハウジングに収納し、両端部をエポキシ樹脂で固定した中空糸膜モジュールを作製してろ過運転を行った。
中空糸膜束の端部には偏り規制部材として、接着固定層を形成させるエポキシ樹脂と同一組成のものを、高さ48mm、幅138mm、厚み5mmのクロス形状として用いた。また、クロス板は、下部ノズルまたは上部ノズルとの対面側を避けて接着固定層内に配置した。
なお、クロス板と整流筒との離間距離は47mm、接着層内のクロス板の高さは8mmであり、接着固定層の内端面からクロス板までの距離は52mmであった。
【0101】
ろ過装置の所定の配管に中空糸膜モジュールを取り付け、非処理水として超純水をろ過した。該超純水は、河川水を精密ろ過膜と逆浸透膜およびイオン交換樹脂による処理、並びにUV殺菌処理を施して製造した。
【0102】
このとき、中空糸膜モジュールへの被処理水の供給流量はポンプ出口弁の開度を調整して流量が25m/hになるようにした。
【0103】
1ヶ月間ろ過運転を行った時点で運転を停止し、エアーを用いて、外圧にてリークチェックを実施したが(0.1MPa/2分間保持)、モジュール切断端面からのエアー漏れは観察されなかった。
【0104】
該モジュールを解体して中空糸膜を取り出し、外表面をSEMで観察したところ、擦過傷等の異常は観られなかった。また、単糸透水量を測定したところ、480L/h/m/100kPaであり殆ど変化が無かった。
また、接着固定層の界面部(内端面)近傍の中空糸膜束を毟り取り、界面を観察したが、中空糸束がクロス板の痕跡を残していない事(影響を受けていない事)を確認した。
なお、接着固定層を半分に分割し、偏り規制部材高さ/接着固定層厚を測定したところ、8/55=0.15倍であった。
【0105】
[比較例1]
中空糸膜束の端部には柱状の挿入物として、接着固定層を形成させるエポキシ樹脂と同一組成のものを、高さ85mm、幅138mm、厚み5mmのクロス形状として用いた以外は、実施例1と同様な中空糸膜モジュールを使用して該モジュールの下側端面からのみ原水を供給してろ過を行った。
なお、クロス板と整流筒との離間距離は10mm、接着層内のクロス板の高さは45mmであり、接着固定層の内端面からクロス板までの距離は15mmであった。
【0106】
1ヶ月間ろ過運転を行った時点でフラッシング操作を行った後に運転を停止した。エアーを用いて、外圧にてリークチェックを実施したが(0.1MPa/2分間保持)、モジュール切断端面からのエアー漏れが多数(30本)観察された。
【0107】
該モジュールを解体して中空糸膜を取り出し、外表面をSEMで観察したところ、擦過傷等の異常は観られなかった。また、単糸透水量を測定したところ、480L/h/m/100kPaであり殆ど変化が無かった。
【0108】
また、接着固定層の界面部(内端面)近傍の中空糸膜束を毟り取り、界面を観察したところ、中空糸束が柱状挿入物の痕跡を残している事を確認した。なお、接着固定層を半分に分割し、挿入物高さ/接着固定層厚を測定したところ、45/55=0.82倍であった。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の中空糸膜モジュール及びこれを用いた外圧ろ過方法によれば、構成部材や製造プロセスをほとんど変更しないので生産コストがアップすることがないにも係わらず、長寿命化が可能となる中空糸膜モジュールが提供される。この中空糸膜モジュールを用いた外圧ろ過方法によれば、優れた水質のろ過水を長期にわたって安定的に製造可能となり、特に超純水製造設備に用いる保安用フィルターとして好適である。また、当該中空糸膜モジュールは、注射用水製造設備に用いるパイロジェン除去用フィルターとしても使用可能である。
【符号の説明】
【0110】
1…中空糸膜モジュール、2…中空糸膜、P…中空糸膜の開口、3…中空糸膜束、5…ハウジング、7A,7B…接着固定層、19…上部ノズル(流体の出入口)、21…下部ノズル(流体の出入口)、10a,11a…管路(流体の出入口)、25A,25B…クロス板(偏り規制部材)、25k,25s…偏り規制部材の外端部、25m,25t…偏り規制部材の内端部、27…通常目皿(整流筒)、27b…流路孔、28…スカート目皿(整流筒)、29…偏流抑制部、71,73…接着固定層の外端面、72,74…接着固定層の内端面、A1…第1の領域、A2…第2の領域、d1,d2…偏り規制部材と整流筒との離間幅。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端に開口を有する複数本の中空糸膜からなる中空糸膜束と、前記中空糸膜束を収容するハウジングと、前記中空糸膜束の両端部を前記ハウジングに接着固定すると共に、前記中空糸膜の前記開口が露出する第1の領域と前記中空糸膜を挟んで前記第1の領域に連通する第2の領域とを区画する接着固定層と、前記ハウジングに設けられた流体の出入口と、を備えた中空糸膜モジュールであって、
前記複数本の中空糸膜の密度分布の偏りを低減するために前記中空糸膜束の少なくとも一方の端部内に配置された偏り規制部材と、
前記中空糸膜束の前記端部側の一部を囲む整流筒と、を備え、
前記偏り規制部材は前記接着固定層に内包され、
前記整流筒の一部は前記接着固定層に固定され、
前記接着固定層内において前記偏り規制部材と前記整流筒とは前記中空糸膜束の長手方向で離間していることを特徴とする中空糸膜モジュール。
【請求項2】
前記接着固定層は、前記中空糸膜の開口が露出する前記中空糸膜束の端面に面一となる外端面と、前記整流筒内に形成された内端面とを有し、
前記偏り規制部材は、前記中空糸膜束の長手方向に沿って延在すると共に、前記外端面に面一となる外端部と前記接着固定層内に配置された内端部とを有し、
前記偏り規制部材の前記外端部から前記内端部までの長さは、前記内端部から前記接着固定層の前記内端面までの長さよりも小さいことを特徴とする請求項1記載の中空糸膜モジュール。
【請求項3】
前記偏り規制部材の高さを前記接着固定層の厚みで割った値が0.1倍以上で、且つ0.5倍よりも小さいことを特徴とする請求項1または2記載の中空糸膜モジュール。
【請求項4】
前記中空糸膜束の両端部に形成された両方の前記接着固定層には、それぞれ前記偏り規制部材が内包されると共に、それぞれ前記整流筒の一部が固定され、両方の前記接着固定層内において前記偏り規制部材と前記整流筒とは、それぞれ前記中空糸膜束の長手方向で離間していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の中空糸膜モジュール。
【請求項5】
前記偏り規制部材は前記中空糸膜束の長手方向に沿って延在する平板状であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の中空糸膜モジュール。
【請求項6】
前記中空糸膜束の外周に装着されたネット状の偏流抑制部を更に備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載の中空糸膜モジュール。
【請求項7】
前記偏流抑制部は、前記中空糸膜束の外周に巻かれて成り、その巻数は一重であることを特徴とする請求項6記載の中空糸膜モジュール。
【請求項8】
前記整流筒には、前記出入口との対面側を避け、且つ周方向に沿って複数の流路孔が形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項記載の中空糸膜モジュール。
【請求項9】
前記偏り規制部材は、前記出入口との対面側を避けて前記接着固定層内に配置されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項記載の中空糸膜モジュール。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項記載の中空糸膜モジュールを用いたろ過方法であって、
前記第1の領域及び前記第2の領域の少なくとも一方の領域に被処理水を導入し、前記中空糸膜を透過した後のろ過水を他方の領域から排出することを特徴とするろ過方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−45453(P2012−45453A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187575(P2010−187575)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】