説明

中空糸膜モジュール、膜分離方法及び水処理装置

【課題】効果的にエアスクラビングを行い且つ中空糸膜の損傷を抑制させることで、膜分離における透過性能の低下を抑制しうる中空糸膜モジュール、膜分離方法及び水処理装置を提供することを課題としている。
【解決手段】上下方向に延在させた複数本の中空糸膜と、該中空糸膜の上下端部をそれぞれ固定する上部固定部材及び下部固定部材と、前記中空糸膜に散気し得る散気機構とを備えた水中に浸漬して用いられる中空糸膜モジュールであって、前記散気機構が、前記上部固定部材及び前記下部固定部材に両端部が固定されて前記上部固定部材及び前記下部固定部材の間に延設された管状体を備え、該管状体の周面に管内の気体を前記中空糸膜へ散気可能な散気孔が形成されていることを特徴とする中空糸膜モジュールと、該中空糸膜モジュールを用いた膜分離方法と、前記中空糸膜モジュールが設けられた水処理装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜分離に用いられる中空糸膜モジュールと、膜分離方法及び水処理装置とに関し、特には、例えば、河川水、湖沼水、地下水、海水などの浄水処理、あるいは下水、工業廃水処理などの膜分離処理などに用いられる中空糸膜モジュール、膜分離方法及び水処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
河川水、湖沼水、地下水、海水などの浄水処理、あるいは下水、工業廃水を処理する水処理装置などにおいて、近年、被処理水中に、中空糸膜を上下方向に延在させて保持した起立姿勢にて浸漬させて、中空糸膜内部を吸引することにより被処理水の膜分離を実施して透過水を得る中空糸膜モジュールが用いられるようになってきている。
【0003】
この種の被処理水の膜分離に用いられる中空糸膜モジュールは、被処理水中の浮遊性固形物や粘着性有機化合物などの付着物が中空糸膜に付着することで中空糸膜の透過性能を低下させやすく、中空糸膜の透過性能が低下すると水処理装置の運転効率をも低下させることとなるため、従来、この透過性能の低下を抑制させる方法が広く検討されている。
【0004】
この透過性能の低下を抑制させる方法として、中空糸膜を上下方向に延在させて膜分離を実施する中空糸膜モジュールにおいては、中空糸膜の下端部側で散気を実施することによって発生させた気泡で中空糸膜表面の付着物を除去するエアスクラビングと呼ばれる方法が知られている。
例えば、上下に離間されて配された固定部材に中空糸膜の両端部をそれぞれ固定させてこの下部側の固定部材の上面側から気泡を発生させて同様に付着物を除去しながら膜分離を実施する方法が知られている。
このような散気を実施するための散気機構を有する中空糸膜モジュールとしては、下記特許文献1、2に記載のものが知られている。
【0005】
この特許文献1、2に記載の中空糸膜モジュールは、複数本の中空糸膜を起立姿勢にて保持させ得るように、中空糸膜の両端部の内の一端部(上端部)を固定する上部固定部材と、他端部(下端部)を固定する下部固定部材とが備えられており、この下部固定部材側から被処理水中に気泡を発生させて中空糸膜にエアスクラビングを実施し得るように散気機構を有する。
【0006】
しかし、この特許文献1、2に記載のエアスクラビングの場合、下部固定部材から気泡を発生させるために、下から上への上昇方向の気泡の流れしか作ることができない。
従って、中空糸膜が延設されている方向と平行にしか気泡が移動せず、中空糸膜の付着物を十分に除去できない場合もある。
【0007】
一方、中空糸膜モジュールの上下両側から透過水を導出する濾過装置が特許文献3に記載されている。
この特許文献3に記載の中空糸モジュールは、中空糸膜の上下端部が開口している集水部を介して、ポンプによって処理液取出管から透過水を導出するものである。
このように上下両側から透過水を導出できるため、上側からのみ透過水を導出する水処理装置比べて効率よく透過水を回収できるという利点がある。
この上下両側に集水部を設けた水処理装置においてエアスクラビングを実施しようとすると、前記のように下部固定部材側にも集水部が設けられているため、下部固定部材から気泡を発生させて中空糸膜に気泡を散気させることが難しい。
そのため、特許文献3には、中空糸膜に水平方向から中空糸膜の間を縫うように管状体を差し込み、該管状体の先端部から気泡を散気させることでエアスクラビングを行う水処理装置が記載されている。
【0008】
しかし、中空糸膜の間に前記のような管状体を挿入した場合には、管状体の先端部が露出しているため、先端部が中空糸膜に接触することで中空糸膜が損傷する可能性がある。
このように管状体との接触により中空糸が損傷した場合には、破損部分から懸濁物質を吸い込んでしまい、その結果、良質の処理水が得られず、特に上水処理分野には不適となるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−326140号公報
【特許文献2】国際公開WO2004/112944号公報
【特許文献3】特開2006−305443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記従来の問題点に鑑み、本発明は、効果的にエアスクラビングを行い膜分離における透過性能の低下を抑制しつつ、中空糸膜の損傷を抑制させうる中空糸膜モジュール、膜分離方法及び水処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
中空糸膜モジュールのエアスクラビングにおいて、中空糸膜に先端部が接触しない散気機構によって中空糸の損傷を抑制しうること、及び異なる方向へ流れる気泡を発生させることで中空糸膜を効果的に揺らして付着物除去効果や懸濁物等の付着抑制効果を向上させうることを見出して本発明を完成させるにいたった。
【0012】
すなわち、中空糸膜モジュールに係る本発明は、上下方向に延在させた複数本の中空糸膜と、該中空糸膜の上下端部側をそれぞれ固定する上部固定部材及び下部固定部材と、前記中空糸膜に散気し得る散気機構とを備えた水中に浸漬して用いられる中空糸膜モジュールであって、前記散気機構が、前記上部固定部材及び前記下部固定部材に両端部側が固定されて前記上部固定部材及び前記下部固定部材の間に延設された管状体を備え、該管状体の周面に管内の気体を前記中空糸膜へ散気可能な散気孔が形成されていることを特徴としている。
【0013】
また、前記中空糸膜モジュールに係る本発明において、前記中空糸膜の上下端部が開口し、前記中空糸膜の開口した端部から中空糸膜を透過した透過水が収容される上部集水部及び下部集水部を備え、該上部集水部及び下部集水部に収容された透過水を導出する導出機構を備えたことが好ましい。
【0014】
また、前記中空糸膜モジュールに係る本発明において、前記上部固定部材及び下部固定部材に両端部側が固定された支持部材を備え、該支持部材が前記管状体であることが好ましい。
【0015】
また、膜分離方法に係る本発明は、上下方向に延在させた複数本の中空糸膜と、該中空糸膜の上下端部側をそれぞれ固定する上部固定部材及び下部固定部材と、前記中空糸膜に散気し得る散気機構とを備えた水中に浸漬して用いられる中空糸膜モジュールを用いた膜分離方法であって、前記散気機構が、前記上部固定部材及び前記下部固定部材に両端部側が固定されて前記上部固定部材及び前記下部固定部材の間に延設された管状体を備え、該管状体の周面に形成された散気孔から管内の気体を前記中空糸膜へ散気することを特徴としている。
【0016】
また、水処理装置に係る本発明は、上下方向に延在させた複数本の中空糸膜と、該中空糸膜の上下端部側をそれぞれ固定する上部固定部材及び下部固定部材と、前記中空糸膜に散気し得る散気機構とを備えた中空糸膜モジュールが水中に浸漬されて膜分離が実施される水処理装置であって、前記散気機構が、前記上部固定部材及び前記下部固定部材に両端部側が固定されて前記上部固定部材及び前記下部固定部材の間に延設された管状体を備え、該管状体の周面に管内の気体を前記中空糸膜へ散気可能な散気孔が形成されている中空糸膜モジュールが用いられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明の中空糸モジュールの散気機構は、前記上部固定部材及び下部固定部材に両端部側が固定されて前記上部固定部材と下部固定部材の間に延設された管状体を備えているため、該管状体の両端の先端部が中空糸膜と接触することがなく、中空糸膜の損傷を抑制できる。
また、前記管状体の周面に中空糸膜へ散気可能な散気孔が形成されているため、散気孔付近で水平方向の気泡の流れができ、さらに浮力により気泡はその後上方へ流れることになる。よって、気泡が中空糸膜に接触する場所によって気泡の流れる方向は異なり、中空糸膜を効果的に揺らすことができ、エアスクラビングによる中空糸膜の付着物除去効果や懸濁物等の付着抑制効果を向上させることができる。
【0018】
以上より、本発明によれば中空糸膜の損傷を抑制しながら、且つ効果的なエアスクラビングによる中空糸膜の付着物除去効果や懸濁物等の付着抑制効果を向上させて膜分離における透過性能の低下を抑制できる。
【0019】
また、前記中空糸膜の上下に、前記上部固定部材と下部固定部材に露出した膜端部から中空糸膜を透過した透過水が収容される上部集水及び部下集水部がそれぞれ設けられ、該上部集水及び部下集水部に収容された透過水を導出する導出機構が形成されている中空糸膜モジュールにおいて、前記のような散気機構を設けた場合には、エアスクラビングのための散気機構が下端側からの集水を邪魔することがないため、中空糸膜の上下両端側から透過水の集水を容易に行うことができ、より透過効率を高めることができる。
また、同一長さの中空糸膜を使用した場合に、片端部側から集水する片端集水中空糸膜と両端部側から集水する両端集水中空糸膜を比較すると、膜面を透過した水が集水される端部へ到達するまでの最大移動距離は両端集水中空糸膜の方が短いので、中空糸内を集水端へ流れる透過水の通水抵抗は両端集水中空糸膜の方が小さくて済む。
その結果、両端集水中空糸膜では、より小さい圧力で吸水を行えるためポンプ動力を低減できるというメリットもある。
【0020】
さらに、前記上部固定部材及び下部固定部材に両端部側を固定された支持部材を備え、該支持部材が前記管状体である場合には、管状体を中空糸膜の支持部材と兼ねることができ、中空糸膜を支持する部材を別途設ける必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の中空糸膜モジュールの第一の実施形態の構成を示す一部断面図。
【図2】図1における中空糸膜モジュールの上面を示す平面図。
【図3】図1における上部固定部材の取り付け構造を示す断面図。
【図4】(a)透過水出口付近の構造の一例を示す断面図、(b)透過水出口付近の構造の他の一例を示す断面図。
【図5】図1における下部固定部材の取り付け構造を示す断面図。
【図6】図1における管状体の取り付け構造を示す断面図。
【図7】気泡の散気状態を示す平面図。
【図8】管状体の取り付け構造の他の一例を示す断面図。
【図9】管状体の取り付け構造の他の一例を示す断面図。
【図10】本発明の水処理装置の一実施形態を示す構成説明図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
図1は本発明の一実施形態の中空糸膜モジュールを起立状態にさせた様子を側面方向から見た一部断面図であり、図2は図1の中空糸モジュールを上部からみた平面図である。
図中の符号10が中空糸膜モジュールを表している。
本実施形態の中空糸膜モジュール10は縦長円筒状に形成されており、その上下方向中間部に複数本の中空糸膜11が露出する状態で備えられている。
本実施形態の中空糸膜モジュール10は、複数本の中空糸膜11の両端部の内の一端部を下部側で固定する下部固定部材20と、他端部を上部側で固定する上部固定部材30の2つの固定部材が用いられている。
【0023】
すなわち、複数本の中空糸膜11は、両端部が揃えられた状態でその長さ方向を上下方向に延在させて中空糸膜モジュール10に備えられている。
なお、中空糸膜モジュール10を構成する中空糸膜11としては、精密ろ過膜又は限外濾過膜等が用いられうる。
【0024】
前記上部固定部材30は、円筒体31と、透過水出口32aおよび中央部に設けられた管状体取り付け孔32bを有して前記円筒体31上側に取り付けられる円形上板32が備えられている。
図3は、上部固定部材30の一部を拡大した断面図であり、この図3に示すように前記円筒体31の下端周縁部にはフランジ部31aが形成されている。
前記上部固定部材30の内側には板状部34が備えられている。
板状部34は、接着剤が固化されて板状に形成されたものであり、前記中空糸膜11はその端部を前記板状部34の下面側から上面側に貫通させて板状部34に固定されている。
【0025】
板状部34の下端周縁部にはフランジ部34aが形成されており、板状部34のフランジ部34aと前記上部固定部材30の円筒体31のフランジ部31aが図3に示すようにOリング36aを介して密着状態で接合されている。
さらに、円筒体31の内周面と板上部34の外周面もOリング36bを介して密着状態で接合され、該接合部分の外側に環状固定部材37を嵌めて、上部固定部材30と板状体34がシールされた状態で固定されている。
【0026】
前記中空糸膜11は、そのすべてが一束となるように束ねられた状態で前記接着剤により固定されており、その上端縁が前記板状部34の上面34bと面一となるように固定されている。
従って、前記板状部34の上面側には、前記接着剤によって形成された接着剤部分と、前記中空糸膜11の端部が開口する部分とが比較的均一に分散された状態で形成されており、しかも、前記板状部34の上面34b全面に形成されている。
また、前記中空糸膜11を固定する接着剤が、板状部34の上面側から下面側に向けて略一定の深さに充填固化されることにより、前記板状部34が略一定の厚みに形成されている。
【0027】
前記上部固定部材30内の上部且つ前記板状部34の上方側には、透過水が収容される上部集水部35が形成されており、該上部集水部35は、各中空糸膜11の上端部の開口に連通している。
上部集水部35に繋がる透過水出口32aには、中空糸膜モジュール10外部に設置された吸引ポンプに連結されている配管が接続される。
上記のように、上部固定部材30と板状部34はそれぞれのフランジ部31a、34aと円筒体31の内周面と板上部34の外周面をOリング36a,36bを介して密着して取り付けられているため、上部集水部35は、中空糸膜11の開口および透過水出口32aを除いて外部とは隔離された空間となっている。
【0028】
前記透過水出口32aと配管の接続手段は任意の接合手段が採用できるが、例えば、図4(a)に示すようなソケットSを介して接続することができる。ソケットSを透過水出口32aの外周に嵌めて、透過水出口32aの外周面32cとソケットS内周面を接着することで、シールされた状態で配管と接続することができる。
あるいは、図4(b)に示すようなバルブソケットBSを介して配管を接続してもよい。バルブソケットBSの一方の開口外周にはネジ山が形成されており、このネジ山部分を前記透過水出口32a内に螺合させて、透過水出口32aとバルブソケットBSを取り付ける。この場合には透過水出口32a内周面32dにネジ溝を形成しておく必要がある。
【0029】
下部固定部材20は、上部固定部材30の円筒体31と同一寸法の内径を持つ円筒体21と、円筒体21内の下端側に取り付けられた円板状をなす円形下板22とを有している。
図5は下部固定部材20の一部を拡大した断面図であるが、この図5に示すように前記上部固定部材30と同様に、前記円筒体21上端周縁部にはフランジ部21aが形成され、下部固定部材20の内側には板状部24が備えられている。
該板状部24は、接着剤が固化されて板状に形成されたものであり、前記中空糸膜11は、その下端部を前記板状部24の上面側から下面側に貫通させて板状部24に固定されている。
【0030】
下部固定部材20と、板状部24の取り付け方法は、前記上部固定部材30と板状部34の取り付け手段と同様取り付けられている。
すなわち、図5に示すように、板状部24の上端周縁部にはフランジ部24aが形成されており、該板状部24のフランジ部24aと前記下部固定部材20の円筒体21のフランジ部21aが図4に示すようにOリング26aを介して密着状態で接合され、さらに、円筒体21の内周面と板上部24の外周面もOリング26bを介して密着状態で接合され、該接合部分の外側に環状固定部材27を嵌めて、下部固定部材20と板状体24がシールされた状態で固定されている。
尚、前記上部固定部材30及下部固定部材20の円筒体31、21、円形上板32、22は金属や樹脂などの任意の材質から成形や削り出しなど公知の方法により一体的に形成することができる。
【0031】
前記下部固定部材20内の下部には、前記板状部24の下方側に透過水が収容される下部集水部25が形成されており、下部集水部25は、各中空糸膜11の下端部の開口に連通している。
【0032】
中空糸膜モジュール10には、上部の板状部34及び下部の板状部25を貫通してそれぞれの上下端部が前記上部集水部35と前記下部集水部25に開口する透過水管40が3本設けられている。
3本の透過水管40a,40b,40cは中空糸膜11と平行に上下方向に延設され、その端部は図2に示すように、上部固定部材30側から見た場合に、板状体32の径方向中心を中心とする放射線上(それぞれ120度のひらき角となる3本の放射線L1〜L3上)に、板状部32の径方向中心から等距離となるように配置されている。
尚、透過水管40の本数と配置はこれに限定されるものではなく、例えば板状体24、34の外部に設置してもよい。
【0033】
尚、前記下部集水部25内は上記のように、板状部24と円筒体21がそれぞれのフランジ部21a、24aと、円筒体21の内周面と板状24の外周面をOリング26a,26bを介して密着して取り付けられているため、中空糸膜11の下端部及び透過水管40の開口部を除いて外部とは隔離された空間となっている。
【0034】
前記上部集水部35に配管を介して接続された吸引ポンプによって中空糸膜11内部が吸引されて中空糸膜11が被処理水の膜分離を行う。
膜分離によって中空糸膜11を透過した透過水は中空糸膜11上端部からは上部集水部35に回収される。
一方、中空糸膜11の下部からも前記透過水管40を介して吸引ポンプによって吸引されるため、前記下部集水部25に透過水が回収される。
さらに、この下部集水部25に回収された透過水は透過水管40を介して伝わる吸引ポンプの吸引力によって上部集水部35に移送され、ここで上部集水部35に回収された透過水と合流されて透過水出口32aから中空糸膜モジュール10の外へ導出される。
【0035】
さらに、中空糸膜モジュール10には、前記上部固定部材30と前記下部固定部材20の間に延設された管状体51が設けられている。
該管状体51は、金属或いは合成樹脂等のある程度強度のある材質から形成され、且つその上端部が前記板状体32の管状体取り付け孔32bに挿入され、下端部が下部固定部材20の板状体24に埋設されて固定されることで、中空糸膜11の中心部に配置されている。
【0036】
管状体51の上端部が挿入された前記管状体取り付け孔32bには、中空糸膜モジュール10の外部に設けられたブロアから管状体51内部にエアを供給可能な空気供給ラインが接続されており、中空糸膜11へ散気するための散気機構50を構成している。
前記管状体51の下方の周面には、ブロアから管状体51内に送られてきたエアを中空糸膜11に向かって気泡として接触させる散気孔52が形成されている。
【0037】
前記管状体51は、その上端部を上部固定部材30の管状体取り付け孔32bに挿入され、且つ下端部を下部固定部材20の板状体24に埋設されて固定されているため、上下端部が空糸膜11に接触することはない。
また、前記管状体は、金属或いは合成樹脂等のある程度強度のある材質から形成され且つその上下端部が上部固定部材及び下部固定部材に固定されているため、中空糸膜11を支える支持部材としても機能する。
【0038】
管状体51を板状体32の管状体取り付け孔32bに取り付ける方法は適宜従来の取り付け方法を採用しうるが、例えば、図6に示すように、管状体51の嵌合部分の外周面に設けられたネジ溝部分51aにシールテープTを巻きつけて、板状体32の管状体取り付け孔32bに該シールテープを介して螺合することで、管状体51を管状体取り付け孔32bにシールされた状態で取り付けることができる。
【0039】
なお、管状体51に散気孔52を設ける位置は任意に設定でき、例えば中空糸膜11の全体にわたって有効にエアスクラビングしうるべく下方側の周面に設けることや、あるいは中空糸上部の付着物除去を重視して上方側に設けることが可能である。
【0040】
前記散気機構50の管状体51から気泡を散気することでエアスクラビングを行う。
図7に管状体51から気泡を散気する状態を示した。
前記管状体51内のエアは前記ブロアによって前記散気孔52から気泡として散気されるが、管状体51は上下方向に延設されているため、管状体51の周面に形成されている散気孔52より気泡は水平方向に散気される。気泡は浮力によって下から上に向かって上昇し、また気泡の上昇に伴って水流が形成される。
従って、中空糸膜11へ接触する気泡および水流による中空糸膜11の揺動により、エアスクラビングが効果的に行われる。
【0041】
散気孔52を設ける個数については、中空糸膜11全体に気泡がいきわたるような個数を適宜設定できる。
散気孔52を複数形成する場合には、各散気孔を形成する位置は適宜任意に設定できるが、例えば、管状体の径方向に放射状に散気されるように、管状体51の周面に散気孔が形成されていてもよい。この場合には、色々な方向に気泡を散気することができるためより中空糸膜11の広い方向に気泡をいきわたらせることができる。
【0042】
散気孔52の開口面積については、開口面積を小さくして、散気孔52を通過する空気の流速を高めることによって、中空糸膜11の表面に勢い良く気泡を接触させることができ高い付着物除去効果を得ることができる。
一方で、散気孔52の開口面積を小さくすると、散気を停止させている間等において散気孔52の目詰まりを発生させるおそれがある。
このような点において、散気孔52は、例えば散気孔の形状が円形の場合は、直径3〜25mmとなるように形成されていることが好ましい。
【0043】
さらに、中空糸膜11の有効長さ(中空糸膜が水に接触する部分の長さ)は、中空糸膜の内径等にもよるが800〜5000mmが好ましく、例えば、中空糸膜の内径が0.5〜1.2mmである場合においては、透過効率の観点から、1000〜3000mmが好ましい。
【0044】
なお、本実施形態の中空糸膜モジュール10には、上記例示の態様に加え種々の改良が加えられたものを採用することができる。
【0045】
例えば、上記中空糸膜モジュール10において、透過水管40の本数は、透過水を集水する量などにあわせて3本に限らず任意に設定でき、2本又は4以上の複数本、又は1本であってもよい。
さらに、透過水管40の管の内径も、集水量及び透過水管の本数にあわせて適宜設定できる。
【0046】
また、管状体51の管状体取り付け孔32bへの取り付け手段についても管状体51をシールされた状態で管状体取り付け孔32bへ取り付けることが可能な手段であればどのような手段であってもよい。
例えば、図8に示すように、あらかじめ管状体取り付け孔32b内部にコーキング剤Cを充填しておき、管状体51のネジ部51aを孔の内部に螺合させてシールされた状態に取り付けてもよい。このようにコーキング剤Cを使用する場合には、コーキング剤を管状体取り付け孔32b内部充填した後に負圧状態にしながら管状体51を螺合させることで、コーキング剤Cが管状体取り付け孔32bと管状体51間に隙間なく充填される。
あるいは図9に示すように、管状体51を管状体取り付け孔32bに挿入して、パッキングPを介してナットNを取り付けることでシールされた状態に取り付けてもよい。
【0047】
さらに、管状体51の本数も任意に設定でき、1本であることに限られず、2本以上設けられていてもよい。
さらに、中空糸膜モジュールの形状も任意に設定でき、縦長円筒状であることに限られず、例えば、三角柱状、四角柱状、六角柱状等の多角柱状であってもよい。
【0048】
また、管状体取り付け孔32bを上部固定部材30に形成することにも限定されない。
例えば、前記下部固定部材20の円形下板22に管状体取り付け孔を設け、ブロアからの空気を下部固定部材20側から管状体51内に吹き込んでもよい。
【0049】
さらに、本実施形態では、上下両側に上部集水部35、下部集水部25を設け、且つ両端部が上下集水部に開口している透過水管40を設け、中空糸膜11の上下両端側から透過水を回収する構成にしたが、透過水の回収も上下どちらか一方からのみ回収することでもよい。
【0050】
次に、図10を参照しつつ、水処理装置およびこの水処理装置において実施される膜分離方法について説明する。
図10は、前記実施形態の中空糸膜モジュール10が用いられた水処理装置の一実施形態を示す構成説明図である。
【0051】
図10に示すように、水処理装置60には、被処理水供給ライン61からの被処理水が供給される被処理水槽62が備えられている。
また、本実施形態の水処理装置60には、この被処理水槽62内の被処理水中に起立姿勢で浸漬されて配置された複数の中空糸膜モジュール10と、これらの中空糸膜モジュール10に接続され、吸引ポンプ63aを有して該吸引ポンプ63aによって中空糸膜内部を吸引することにより被処理水の膜ろ過による固液分離を行って透過水を導出するための透過水取出しライン63を有する膜分離装置が備えられている。
さらに、本実施形態の水処理装置60には、中空糸膜モジュール10の管状体51にエアを送るためのブロア64aと、被処理水槽62内の沈殿物を排出するための沈殿物排出ライン65とを備えている。
【0052】
前記透過水取出しライン63は、各中空糸膜モジュール10の透過水出口32aに接続された集水管63b、各集水管63bに連通する集水ヘッダー管63c、透過水取出し管63dを備えている。
【0053】
また、前記ブロア64aには、該ブロア64aによって加圧された空気を供給する空気輸送管64bが接続され、該空気輸送管64bは、各中空糸膜モジュール内部に上下方向に挿入されている管状体51と空気供給配管64cを介して接続されている。
前記管状体51の下端部は各中空糸膜モジュール10の下部固定部材24内に埋設されて固定されている。
なお、各中空糸膜モジュール10は、その上部固定部材30全体が水面より下方に位置するように設置されている。
【0054】
このような水処理装置60の膜分離装置においては、通常、前記吸引ポンプ63aによって中空糸膜内部を吸引することにより中空糸膜で被処理水を膜分離(ろ過)して、透過水を透過水取出しライン63を通じて導出させる膜分離が実施されうる。
一方、前記水処理装置60において、前記ブロア64aから送られる空気によって、前記中空糸膜の表面に付着した懸濁物等を除去するエアスクラビングが実施されうる。
さらに、水処理装置60の被処理水槽62内の沈殿物は、前記沈殿物排出ライン65から排出される。
【0055】
より具体的に説明すると、前記膜分離装置においては、前記吸引ポンプ63aによって中空糸内部を吸引すると、中空糸膜で被処理水を濾過し、透過水は中空糸膜モジュール11の上下位置に設けられた前記上下部集水部35,25(図1に示す)にそれぞれ回収される。
下部集水部25に収容された透過水は、前記透過水管40によって上部集水部35に移送され、上部集水部35に回収された透過水とともに前記透過水出口32aに取り付けられた前記集水管63bから集水ヘッダー管63cを経て透過水取出し管63dを通って取り出される。
このように中空糸膜モジュール10の上下側から透過水を回収できるため、効率よく膜分離を行うことができる。
【0056】
一方、前記ブロア64aから、空気輸送管64bを通じて中空糸膜モジュール10内に延設されている管状体51の下方に空気が供給され、前記散気孔52から中空糸膜11へ気泡が散気される。
このとき、散気孔52は管状体51の周面に形成されているため散気孔52付近では水平方向に気泡の流れが生じ、その後は浮力によって上昇する方向に気泡の流れは変化していく(図7に示す)。
すなわち、中空糸膜11は気泡と接触する位置によって、色々な方向に流れる気泡に揺らされることになり、より効果的にエアスクラビングが行われる。
【0057】
本実施形態の水処理装置は、前記のように中空糸膜の上下両側から透過水を回収でき且つ透過水の集水を邪魔することなく中空糸膜11へ散気可能であるため、効果的にエアスクラビングができる。
【符号の説明】
【0058】
10:中空糸膜モジュール、11:中空糸膜、20:下部固定部材、21、31:円筒体、21a、31a:フランジ部、22:円形下板、24、34:板状体、24a、34a:フランジ部、25:下部集水部、26a、26b、36a、37b:Oリング、27、37:環状固定部材、30:上部固定部材、32:円形上板、32b:管状体取り付け孔、32a:透過水出口、32c:透過水出口外周面、35上部集水部、40(40a,40b,40c):透過水管、51:管状体、52:散気孔、60:水処理装置、61:被処理水供給ライン、62:被処理水槽、63:透過水取出しライン、63b:集水管、63c:集水ヘッダー管、63d:透過水取出し管、63a:吸引ポンプ、64b:空気輸送管、64c:空気供給配管、64a:ブロア、65:沈殿物排出ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延在させた複数本の中空糸膜と、該中空糸膜の上下端部側をそれぞれ固定する上部固定部材及び下部固定部材と、前記中空糸膜に散気し得る散気機構とを備えた水中に浸漬して用いられる中空糸膜モジュールであって、
前記散気機構が、前記上部固定部材及び前記下部固定部材に両端部側が固定されて前記上部固定部材及び前記下部固定部材の間に延設された管状体を備え、該管状体の周面に管内の気体を前記中空糸膜へ散気可能な散気孔が形成されていることを特徴とする中空糸膜モジュール。
【請求項2】
前記中空糸膜の上下端部が開口し、前記中空糸膜の開口した端部から中空糸膜を透過した透過水が収容される上部集水部及び下部集水部を備え、該上部集水部及び下部集水部に収容された透過水を導出する導出機構を備えた請求項1記載の中空糸膜モジュール。
【請求項3】
前記上部固定部材及び下部固定部材に両端部側が固定された支持部材を備え、該支持部材が前記管状体である請求項1又は2記載の中空糸膜モジュール。
【請求項4】
上下方向に延在させた複数本の中空糸膜と、該中空糸膜の上下端部側をそれぞれ固定する上部固定部材及び下部固定部材と、前記中空糸膜に散気し得る散気機構とを備えた水中に浸漬して用いられる中空糸膜モジュールを用いた膜分離方法であって、
前記散気機構が、前記上部固定部材及び前記下部固定部材に両端部側が固定されて前記上部固定部材及び前記下部固定部材の間に延設された管状体を備え、該管状体の周面に形成された散気孔から管内の気体を前記中空糸膜へ散気することを特徴とする膜分離方法。
【請求項5】
上下方向に延在させた複数本の中空糸膜と、該中空糸膜の上下端部側をそれぞれ固定する上部固定部材及び下部固定部材と、前記中空糸膜に散気し得る散気機構とを備えた中空糸膜モジュールが水中に浸漬されて膜分離が実施される水処理装置であって、
前記散気機構が、前記上部固定部材及び前記下部固定部材に両端部側が固定されて前記上部固定部材及び前記下部固定部材の間に延設された管状体を備え、該管状体の周面に管内の気体を前記中空糸膜へ散気可能な散気孔が形成されている中空糸膜モジュールが用いられていることを特徴とする水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−110496(P2011−110496A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−269142(P2009−269142)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(000192590)株式会社神鋼環境ソリューション (534)
【Fターム(参考)】