説明

中空糸膜モジュールユニット、水処理装置および水処理方法

【課題】回転によって中空糸膜の表面に堆積した固形分が洗浄、除去されやすく、かつ回転時の抵抗が低く抑えられた回転式の中空糸膜モジュールユニット、これを用いた水処理装置および水処理方法を提供する。
【解決手段】回転軸22を有する集水部材20と、集水部材20に連結し、かつ回転軸22から離間して回転軸22の周囲に配置された筒状の中空糸膜モジュール30とを有する中空糸膜モジュールユニット10;処理槽と、処理槽内に配置された中空糸膜モジュールユニット10と、中空糸膜モジュールユニット10の回転軸22に接続された回転駆動手段とを有する水処理装置;回転軸22を回転させ、中空糸膜モジュール30を回転移動させながら、処理槽内の被処理液を中空糸膜モジュール30で濾過する水処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空糸膜モジュールユニット、該膜モジュールユニットを備えた水処理装置および該水処理装置を用いた水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機性の汚水等の被処理液を処理する方法としては、被処理液を活性汚泥により生物処理した後、汚泥と被処理液とを固液分離する方法が知られている。固液分離の方法としては、分離膜によって被処理液を濾過する方法がある。しかし、分離膜によって被処理液を濾過した場合、分離膜の表面に被処理液中に含まれる固形分等が堆積しやすく、濾過圧力がしだいに上昇する。そのため、長時間安定して濾過を行うことができない。
【0003】
分離膜の表面に固形分等が堆積しにくい濾過方法としては、下記の方法が提案されている。
断面矩形の細長いハウジングに、シート状に集束した中空糸膜を固定した中空糸膜モジュールを用い、該中空糸膜モジュールのハウジングの片端を回転体(管体)に取り付け、ハウジングから下方に垂れた中空糸膜を回転移動させながら被処理液を濾過する方法(特許文献1)。
【0004】
該方法によれば、回転移動する中空糸膜の表面と被処理液との間のせん断力により、中空糸膜の表面の固形分を洗浄、除去できる。しかし、該方法には、下記の問題がある。
(i)回転体から中空糸膜までの距離に応じて中空糸膜の移動速度に大きな差が生じるため、移動速度が極端に低くなる回転体に近い中空糸膜では、回転移動による洗浄効果がほとんど期待できない。その結果、濾過圧力の上昇を十分に抑えることができない。
(ii)中空糸膜が回転移動方向に直交する方向に一列に並んでいるため、回転体の回転時の中空糸膜による抵抗が大きくなる。その結果、モータ等の回転駆動手段への負担が大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−253764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、回転によって中空糸膜の表面に堆積した固形分が洗浄、除去されやすく、かつ回転時の抵抗が低く抑えられた回転式の中空糸膜モジュールユニット、濾過圧力の上昇を十分に抑えることによって長時間安定して濾過を行うことができ、かつモータ等の回転駆動手段への負担が抑えられた水処理装置および水処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の中空糸膜モジュールユニットは、回転軸を有する集水部材と、集水部材に連結し、かつ回転軸から離間して回転軸の周囲に配置された筒状の中空糸膜モジュールとを有することを特徴とする。
【0008】
本発明の水処理装置は、処理槽と、処理槽内に配置された本発明の中空糸膜モジュールユニットと、中空糸膜モジュールユニットの回転軸に接続された回転駆動手段とを有することを特徴とする。
複数の中空糸膜モジュールユニットが処理槽内に配置される場合、各中空糸膜モジュールユニットの回転軸が平行になるように配置されることが好ましい。
【0009】
本発明の水処理方法は、本発明の水処理装置を用いた水処理方法であって、回転軸を回転させ、中空糸膜モジュールを回転移動させながら、処理槽内の被処理液を中空糸膜モジュールで濾過することを特徴とする。
複数の中空糸膜モジュールユニットが、回転軸が平行になるように処理槽内に配置された場合、各回転軸を同方向に回転させ、各中空糸膜モジュールユニットの中空糸膜モジュールを同方向に回転移動させることが好ましい。
【0010】
本発明の水処理方法においては、回転軸の回転方向を定期的に反転させることが好ましい。
本発明の水処理方法においては、中空糸膜モジュールによる被処理液の濾過を断続的に行い、濾過停止時の回転軸の回転速度を、濾過時の回転軸の回転速度よりも高くすることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の中空糸膜モジュールユニットは、回転によって中空糸膜の表面に堆積した固形分が洗浄、除去されやすく、かつ回転時の抵抗が低く抑えられる。
本発明の水処理装置によれば、濾過圧力の上昇を十分に抑えることによって長時間安定して濾過を行うことができ、かつモータ等の回転駆動手段への負担が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の中空糸膜モジュールユニットの一例を示す斜視図である。
【図2】中空糸膜モジュールの一例を示す斜視図である。
【図3】本発明の中空糸膜モジュールユニットの他の例を示す斜視図である。
【図4】本発明の中空糸膜モジュールユニットの他の例を示す斜視図である。
【図5】中空糸膜モジュールの他の例を示す斜視図である。
【図6】中空糸膜モジュールの他の例を示す斜視図である。
【図7】本発明の水処理装置の一例を示す概略構成図である。
【図8】本発明の水処理装置の他の例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<中空糸膜モジュールユニット>
〔第1の実施形態〕
図1は、本発明の中空糸膜モジュールユニットの一例を示す斜視図である。
中空糸膜モジュールユニット10は、集水部材20と、これに連結した複数の中空糸膜モジュール30とを有する。
【0014】
(集水部材)
集水部材20は、回転軸22と、回転軸22に直交する方向に回転軸22から放射状に延びる複数の集水管24からなる集水管群26とを有する。図1における集水管群26は、回転軸22方向に離間して、かつ回転軸22に沿う方向から見て集水管24が重なり合うように、回転軸22の2箇所に設けられている。
【0015】
回転軸22および集水管24は、管状体からなり、その内部には集水路が形成されている。また、集水管24の集水路の基端部は、回転軸22の集水路と連通状態にあり、末端部は、蓋体27によって封止されている。集水管24を通過して集水された濾過水は回転軸22を介して中空糸膜モジュールユニット10の外に放出される。
【0016】
集水部材20の材料としては、被処理液に対する耐久性を有し、かつ濾過時の圧力に耐え得るものであればよく、ポリカーボネート、ポリスルフォン、ポリオレフィン、変性ポリフェニレンエーテル、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル、ステンレス鋼等が挙げられる。
【0017】
(中空糸膜モジュール)
中空糸膜モジュール30の一方の端部が、一方の集水管群26の集水管24の末端部近傍に、中空糸膜の内部と集水管24の集水路とが連通するように連結し、かつ中空糸膜モジュール30の他方の端部が、他方の集水管群26の集水管24の末端部近傍に、中空糸膜の内部と集水管24の集水路とが連通するように連結することによって、中空糸膜モジュール30は、回転軸22に平行に、かつ回転軸22から等距離に離間して回転軸22の周囲に配置される。
【0018】
中空糸膜モジュール30は、図2に示すように、複数の中空糸膜32を集束した状態で、両端部をそれぞれ円筒状のモジュールケース34内に収納し、樹脂36でポッティングした後、ポッティング部分をモジュールケース34ごと一部切断して中空糸膜32の両端部開口を端面に露出させた円筒状のものである。中空糸膜モジュール30の外径、長さ、中空糸膜32の本数等は、特に限定されない。
【0019】
中空糸膜32の材料としては、セルロース、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、ポリスルフォン、フッ素樹脂(ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等)等が挙げられる。
中空糸膜32の孔径、空孔率、膜厚、外径等は、特に限定されず、例えば、孔径は0.1〜1000nm、空孔率は10〜90%、膜厚は5〜500μm、外径は200〜3000μmである。
【0020】
モジュールケース34の材料としては、濾過や薬品洗浄に耐え得るうるものであればよく、ポリオレフィン(ポリプロピレン、ポリエチレン等)、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリスルフォン、ポリアセタール、ポリイミド、変性ポリフェニレンエーテル、フッ素樹脂(ポリテトラフロオロエチレン等)、ステンレス鋼等が挙げられる。
【0021】
樹脂36としては、熱硬化性樹脂の硬化物、熱可塑性樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0022】
〔第2の実施形態〕
図3は、本発明の中空糸膜モジュールユニットの他の例を示す斜視図である。
第2の実施形態において、第1の実施形態と同じ構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0023】
(集水部材)
集水部材20は、回転軸22と、回転軸22に直交する方向に回転軸22から外方に拡がる集水板28とを有する。図3における集水板28は、回転軸22方向に離間して回転軸22の2箇所に設けられている。
【0024】
集水板28は、円板からなり、その内部には集水路が形成されている。また、集水板28の集水路は、回転軸22の集水路と連通状態にある。集水板28を通過して集水された濾過水は回転軸22を介して中空糸膜モジュールユニット10の外に放出される。
【0025】
(中空糸膜モジュール)
中空糸膜モジュール30の一方の端部が、一方の集水板28の周縁部近傍に、中空糸膜の内部と集水板28の集水路とが連通するように連結し、かつ中空糸膜モジュール30の他方の端部が、他方の集水板28の周縁部近傍に、中空糸膜の内部と集水板28の集水路とが連通するように連結することによって、中空糸膜モジュール30は、回転軸22に平行に、かつ回転軸22から等距離に離間して回転軸22の周囲に配置される。
【0026】
〔第3の実施形態〕
図4は、本発明の中空糸膜モジュールユニットの他の例を示す斜視図である。
第3の実施形態の中空糸膜モジュールユニット10は、第2の実施形態の中空糸膜モジュールユニット10を回転軸22の方向に4つ直列に連結した4段の中空糸膜モジュールユニットである。
第3の実施形態において、第1の実施形態および第2の実施形態と同じ構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
第3の実施形態のような複数の中空糸膜モジュールユニットを回転軸22の方向に直列に連結した構造は、回転駆動手段の1つあたりの膜面積が増加するため、好ましい。
【0027】
〔他の形態〕
なお、本発明の中空糸膜モジュールユニットは、回転軸を有する集水部材と、集水部材に連結し、かつ回転軸から離間して回転軸の周囲に配置された筒状の中空糸膜モジュールとを有するものであればよく、図示例の中空糸膜モジュールユニット10には限定されない。
【0028】
例えば、図1の中空糸膜モジュールユニットにおける集水管群26の数は、図示例の2つに限定はされず、1つであってもよく、3つ以上であってもよい。
また、図3の中空糸膜モジュールユニットにおける集水板28の数も、図示例の2枚に限定はされず、1枚であってもよく、3枚以上であってもよい。
また、図1における集水管群26の1つあたりの集水管24の数も、図示例の5本に限定はされず、1本であってもよく、2〜4本であってもよく、6本以上であってもよい。
また、図1、3における中空糸膜モジュールユニットの1段あたりの中空糸膜モジュールの数も、図示例の5つに限定はされず、1つであってもよく、2〜4つであってもよく、6つ以上であってもよい。
また、図4の多段の中空糸膜モジュールユニットの段数も、図示例の4段に限定はされず、2または3段であってもよく、5段以上であってもよい。段数は、処理槽の容積、被処理液の量、液質、回転動力等により任意に設定できる。
【0029】
また、中空糸膜モジュールは、図示例のように集水管または集水板を介して回転軸に保持されることが好ましいが、集水管または集水板とは別に保持機構を設けてもよい。また、回転軸とは別に濾過水の排出経路を設けてもよい。
また、中空糸膜モジュールは、片端部のみを集水管または集水板に連結してもよい。
また、中空糸膜モジュールは、回転軸と平行に設けられることが好ましいが、装置構成および運転上に影響のない範囲であれば、回転軸と平行でなくてもよい。
また、各中空糸膜モジュールは、図示例のように回転軸から略等距離に配置されていることが好ましいが、本発明の効果を損なわない範囲で、各中空糸膜モジュールと回転軸との距離が全部または一部で異なっていてもよい。
【0030】
中空糸膜モジュールの形状は、図示例のような円筒状に限定はされず、角筒状であってもよい。
また、中空糸膜モジュール30は、図5に示すように、複数の中空糸膜32を集束した状態で、一方の端部のみを円筒状のモジュールケース34内に収納し、樹脂36でポッティングした後、ポッティング部分をモジュールケース34ごと一部切断して中空糸膜32の一方の端部開口を端面に露出させたものであってもよい。
【0031】
また、中空糸膜モジュール30は、図6に示すように、複数の中空糸膜をシート状に集束した中空糸膜シート40とシート状のスペーサ42とを重ねた状態でロール状に巻き回し、端部を円筒状のモジュールケース34内に収納し、樹脂でポッティングした後、ポッティング部分をモジュールケース34ごと一部切断して中空糸膜の端部開口を端面に露出させたものであってもよい。
中空糸膜シート40の間にスペーサ42が介在することによって、中空糸膜モジュール30内への固形物の侵入を低減でき、さらに薬品洗浄による洗浄効果を増大できる。また、中空糸膜シート40の間にスペーサ42が介在することによって、中空糸膜モジュール30内に固形物が侵入した場合であっても、固形物の排出経路が確保されるため、薬液洗浄による洗浄効果が増大する。
【0032】
また、中空糸膜モジュール30は、図6に示すように、外周面を格子状の保護カバー44により被覆したものであってもよい。
保護カバー44により被覆することによって、濾過中においても中空糸膜モジュール30の形状を維持できる。その結果、中空糸膜モジュール30内の中空糸膜の間隔が維持され、被処理液中の固形分濃度が高い場合であっても、中空糸膜モジュール30内への固形分の侵入を最小にできるような中空糸膜の充填率が維持されるため、中空糸膜モジュール30内への固形物の侵入が最小となり、安定した濾過運転を継続できる。
【0033】
スペーサ42および保護カバー44の材料としては、濾過処理や薬品洗浄に耐え得るものであればよく、ポリオレフィン(ポリプロピレン、ポリエチレン等)、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリスルフォン、ポリアセタール、ポリイミド、変性ポリフェニレンエーテル、フッ素樹脂(ポリテトラフロオロエチレン等)、ステンレス鋼等が挙げられる。
【0034】
以上説明した本発明の中空糸膜モジュールユニットにあっては、下記の作用効果を発揮する。
(i)筒状の中空糸膜モジュールを用いているため、回転体から中空糸膜モジュールの各中空糸膜までの距離に大きな差が生じにくい。そのため、中空糸膜の移動速度に大きな差が生じることなく、中空糸膜モジュール全体にほぼ均一な洗浄効果が期待できる。
(ii)中空糸膜モジュールを回転軸から離間して配置しているため、移動速度が極端に低くなる回転軸近傍に中空糸膜モジュールが配置されることがない。そのため、十分な回転移動による洗浄効果が期待できる。
(iii)中空糸膜モジュールを回転軸から離間して配置しているため、中空糸膜モジュールと回転軸との間に隙間が生じる。そのため、回転軸の回転時の中空糸膜モジュールによる抵抗が抑えられ、モータ等の回転駆動手段への負担が抑えられる。
【0035】
また、本発明の中空糸膜モジュールユニットにあっては、下記の効果も期待できる。
(iv)中空糸膜を集束した筒状の中空糸膜モジュールは、被処理液中の固形物が中空糸膜モジュールの表面に堆積し、中空糸膜モジュール内に侵入しにくい構造となっている。
(v)そして、該中空糸膜モジュールの表面に堆積した固形物を、回転軸の回転により生じる中空糸膜モジュールの表面と被処理液との間のせん断力により洗浄するため、散気による洗浄を行う必要はない。または、散気を併用する場合でも、従来の浸漬型膜分離装置よりも少ない散気量で洗浄を行うことができる。
(vi)処理槽における処理方式が、嫌気処理または無酸素処理である場合、散気を行わないことによって、処理槽内を嫌気処理または無酸素処理に適した溶存酸素濃度に維持できる。
【0036】
<水処理装置、方法>
〔第4の実施形態〕
図7は、本発明の水処理装置の一例を示す概略構成図である。
水処理装置50は、被処理液が貯留された処理槽52と、被処理液に浸漬するように処理槽52内に、回転軸22が水面に対して垂直になるように配置された、本発明の中空糸膜モジュールユニット10と、中空糸膜モジュールユニット10の回転軸22に回転伝達手段51を介して接続された回転駆動手段53と、回転駆動手段53等に電気的に接続する制御手段(図示略)と、処理槽52に被処理液を供給する供給ライン54と、処理槽52から汚泥等を排出する排出ライン56と、生物反応に要する空気を供給するために中空糸膜モジュールユニット10の下方に配置された散気管58と、散気管58に空気を供給する、処理槽52外に設置されたブロワ60と、回転継ぎ手62を介して回転軸22の上端に接続された濾過水管64と、濾過水管64の途中に設けられた濾過ポンプ66とを有する。
【0037】
回転伝達手段51としては、プーリー等が挙げられる。
回転駆動手段53としては、モータ等が挙げられる。
制御手段は、処理部(図示略)とインターフェイス部(図示略)とカレンダータイマ(図示略)とを具備する。
インターフェイス部は、回転駆動手段53、濾過ポンプ66等の各機器と処理部との間を電気的に接続するものである。
処理部は、カレンダータイマに記憶されたスケジュール等に基づいて回転駆動手段53、濾過ポンプ66等の各機器の運転を制御するものである。
【0038】
なお、該処理部は専用のハードウエアにより実現されるものであってもよく、また、該処理部はメモリおよび中央演算装置(CPU)によって構成され、処理部の機能を実現するためのプログラムをメモリにロードして実行することによりその機能を実現させるものであってもよい。
また、制御手段には、周辺機器として、入力装置、表示装置等が接続されるものとする。ここで、入力装置とは、ディスプレイタッチパネル、スイッチパネル、キーボード等の入力デバイスのことをいい、表示装置とは、CRT、液晶表示装置等のことをいう。
【0039】
図7の水処理装置50を用いた水処理は、例えば、下記のように行われる。
処理槽52に供給ライン54から被処理液を供給する。
回転駆動手段53を作動させ、回転軸22を任意の回転速度で回転させ、中空糸膜モジュールユニット10を構成する中空糸膜モジュールを回転移動させながら、濾過ポンプ66を作動させ、中空糸膜の内部を減圧にし、被処理液を濾過する。
中空糸膜を通過した濾過水は、集水管または集水板、回転軸22、濾過水管64を順に通過し、装置外に放出される。
【0040】
回転軸22が回転することによって中空糸膜モジュールユニット10の中空糸膜モジュールが被処理液中で回転移動しているため、中空糸膜モジュールの表面に被処理液によるせん断力が与えられ、中空糸膜モジュールの表面が洗浄される。中空糸膜モジュールは中空糸膜を集束したものであり、被処理液中の固形物は中空糸膜モジュールの表面に堆積し、中空糸膜モジュール内に侵入しにくい構造となっている。そのため、回転移動によるせん断力を与えることによって、中空糸膜モジュールの表面に堆積した固形物は洗浄され、濾過圧力の上昇が抑えられる。
【0041】
このとき、ブロワ60を作動させ、中空糸膜モジュールユニット10の下方に配置された散気管58から、空気を散気することによって、中空糸膜モジュールユニット10を構成する中空糸膜モジュールに気液混合流による上昇流速を与えることもできる。これにより、中空糸膜モジュールの表面をより効果的に洗浄し、濾過圧力の上昇がさらに抑えられる。
【0042】
回転軸22の回転速度は、常時一定であってもよく、制御手段によって連続的または断続的に変化させてもよい。回転速度が増加することによって、中空糸膜モジュールの表面に与えられるせん断力が増加し、中空糸膜モジュールの表面の洗浄効果がさらに増大する。また、被処理液中の固形物濃度が増加した場合等、被処理液の水質に応じて回転軸22の回転速度を増加させることにより、より効果的な洗浄が行なわれ、濾過圧力の上昇がさらに抑えられる。
【0043】
回転軸22の回転方向は、任意に反転させてもよく、制御手段のカレンダータイマに記憶されたスケジュールに基づいて定期的に反転させることが好ましい。回転軸22の回転方向が常時一定であると、中空糸膜モジュールの表面の位置によって、中空糸膜モジュールの回転移動により与えられるせん断力に偏りが生じてしまう。すなわち、中空糸膜モジュールの回転移動方向側の表面だけが洗浄される状態が継続される。回転軸22の回転方向を定期的に反転させることにより、回転移動によりせん断力が与えられる中空糸膜モジュールの表面の位置が定期的に変化し、中空糸膜モジュールの表面が均等に洗浄されるため、より効果的な洗浄が行なわれ、濾過圧力の上昇がさらに抑えられる。
【0044】
また、回転軸22の回転方向を反転させることにより、中空糸膜モジュールの回転移動によって生じていた処理槽52内の撹拌流も反転するため、処理槽52内の撹拌が促進され、処理槽52内の固形物の濃度分布差が解消される。被処理液が活性汚泥を含む場合等は、処理槽52内の固形物の濃度分布差が解消されることによって、活性汚泥による生物処理が効果的に行なわれ、処理液質が向上し、中空糸膜モジュールユニット10の濾過圧力の上昇がさらに抑えられる。
【0045】
通常、分離膜による固液分離においては、分離膜の表面に固形分がしだいに堆積し、ケーキ層が形成されるため、定期的に濾過を停止し、濾過停止による分離膜の表面へのケーキ層の凝着力が低下する現象を利用して、散気管等の散気手段により、ケーキ層を剥離させている。
本発明においては、中空糸膜モジュールによる被処理液の濾過を制御手段のカレンダータイマに記憶されたスケジュールに基づいて断続的に行い、制御手段によって濾過停止時の回転軸22の回転速度を、濾過時の回転軸22の回転速度よりも高くすることによって、濾過停止によって中空糸膜モジュールの表面へのケーキ層の凝着力を低下させると同時に、回転軸22の回転速度を増加させ、中空糸膜モジュールの表面に与えるせん断力を増加させることによって、ケーキ層をより効果的に剥離できる。
【0046】
また、筒状の中空糸膜モジュールは、被処理液中の固形物が中空糸膜モジュールの表面に堆積し、中空糸膜モジュール内に侵入しにくい構造となっているが、長期間運転を継続することによって、被処理液中の固形物がしだいに中空糸膜モジュール内に侵入し、中空糸膜モジュール内の中空糸膜が閉塞することによって濾過圧力が増加することがある。
中空糸膜モジュール内の中空糸膜が閉塞した場合、中空糸膜の内側から薬液を通液すること(薬液洗浄)によって、固形分を分解、排出できる。薬液洗浄を定期的に実施することによって、中空糸膜モジュールユニット10の濾過圧力を低下させ、安定した運転を継続できる。
【0047】
薬液の種類および濃度は、洗浄する中空糸膜の材質、濾過の目的(被処理液の種類)、中空糸膜の閉塞状況に応じて適宜選択することが好ましい。
薬液としては、酸化力を有する化合物(次亜塩素酸塩、過炭酸塩、過酸化水素等)の水溶液、アルカリ類(水酸化ナトリウム等)の水溶液、酸類(塩酸、硫酸、シュウ酸、クエン酸等)の水溶液、界面活性剤の水溶液、アルコール等が用いられる。
【0048】
〔第5の実施形態〕
図8は、本発明の水処理装置の他の例を示す概略構成図である。
図8の水処理装置50は、複数の中空糸膜モジュールユニット10を回転軸22が平行になるように処理槽52内に配置した例である。
第5の実施形態において、第4の実施形態と同じ構成、操作については、説明を省略する。
【0049】
水処理装置50においては、回転軸22の回転を継続すると、中空糸膜モジュールユニット10の周囲に存在する被処理液が、中空糸膜モジュールの回転移動方向に回り出す現象(共回り現象)が発生することがある。特に、図8のように、中空糸膜モジュールユニット10を複数配置した場合、隣接する中空糸膜モジュールユニット10の回転軸22の回転方向が逆方向であると、共回り現象が顕著になる。共回り現象が発生すると、中空糸膜モジュールの表面に与えられる流速が低下し、中空糸膜モジュールの表面の洗浄効果が低減してしまう。
【0050】
共回り現象を抑制するため、図8の水処理装置50においては、制御手段によって隣接する中空糸膜モジュールユニット10の回転軸22を同方向に回転させながら運転することが好ましい。各回転軸22の回転方向を同方向とすることによって、中空糸膜モジュールの回転移動によって発生する被処理液の共回りの流速は、中空糸膜モジュールユニット10の隣接部分で相殺され、共回り流速が低下し、中空糸膜モジュールの表面に十分なせん断力が与えられることによって、中空糸膜モジュールの表面の洗浄が効果的に行われる。
【0051】
このとき、回転軸22の回転方向を反転させる上述の操作を併用することによって、被処理液の共回り現象をさらに抑制できる。隣接する中空糸膜モジュールユニット10の回転軸22の回転方向が同方向となるように回転させ、かつ回転軸22の回転方向を定期的に反転させる操作を併用することによって、被処理液が撹拌され、乱流が生じるため、中空糸膜モジュールの表面に発生する濃度分極を低減でき、より安定した濾過運転を行うことができる。
【0052】
〔他の形態〕
なお、本発明の水処理装置は、処理槽と、処理槽内に配置された、本発明の中空糸膜モジュールユニットと、中空糸膜モジュールユニットの回転軸に接続された回転駆動手段と を有するものであればよく、図示例の水処理装置50には限定されない。
また、本発明の水処理方法は、本発明の中空糸膜モジュールユニットの回転軸を回転させ、本発明の中空糸膜モジュールユニットの中空糸膜モジュールを回転移動させながら、処理槽内の被処理液を中空糸膜モジュールで濾過する方法であればよく、水処理装置50を用いた方法には限定されない。
【0053】
例えば、図示例の水処理装置50においては、中空糸膜モジュールユニット10の回転軸22が水面に対して垂直であるが、処理槽や装置の構成によっては、中空糸膜モジュールユニット10の回転軸22は水平であってもよい。
また、被処理液が活性汚泥を含まず、空気を供給する必要がない場合、または、処理槽における処理方式が嫌気処理または無酸素処理である場合には、散気管58は設置しなくてもよい。
また、図示例の水処理装置50においては、中空糸膜モジュールユニット10の中空糸膜の内部を減圧にし、被処理液を濾過する減圧濾過方式を採用していたが、中空糸膜モジュールユニット10を圧力容器内に収納し、圧力容器内を加圧することによって濾過を行う、加圧濾過方式を採用してもよい。
【0054】
以上説明した本発明の水処理装置および水処理方法にあっては、回転によって中空糸膜の表面に堆積した固形分が洗浄、除去されやすく、かつ回転時の抵抗が低く抑えられた本発明の中空糸膜モジュールユニットを用いているため、濾過圧力の上昇を十分に抑えることによって長時間安定して濾過を行うことができ、かつモータ等の回転駆動手段への負担が抑えられる。
【0055】
また、中空糸膜モジュールの洗浄のために、散気を併用してもよいが、上述した理由により、従来の浸漬型膜分離装置よりも少ない散気量で洗浄を行うことができる。また、処理槽における処理方式が、嫌気処理または無酸素処理である場合、散気を行わないことによって、処理槽内を嫌気処理または無酸素処理に適した溶存酸素濃度に維持できる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の膜モジュールユニットは、産業排水等の有機性の汚水等を活性汚泥により生物処理する際の固液分離に有用である。
【符号の説明】
【0057】
10 中空糸膜モジュールユニット
20 集水部材
22 回転軸
30 中空糸膜モジュール
50 水処理装置
52 処理槽
53 回転駆動手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を有する集水部材と、
集水部材に連結し、かつ回転軸から離間して回転軸の周囲に配置された筒状の中空糸膜モジュールと
を有する、中空糸膜モジュールユニット。
【請求項2】
処理槽と、
処理槽内に配置された、請求項1に記載の中空糸膜モジュールユニットと、
中空糸膜モジュールユニットの回転軸に接続された回転駆動手段と
を有する、水処理装置。
【請求項3】
複数の中空糸膜モジュールユニットが、回転軸が平行になるように処理槽内に配置された、請求項2に記載の水処理装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の水処理装置を用いた水処理方法であって、
回転軸を回転させ、中空糸膜モジュールを回転移動させながら、処理槽内の被処理液を中空糸膜モジュールで濾過する、水処理方法。
【請求項5】
請求項3に記載の水処理装置を用いた水処理方法であって、
各回転軸を同方向に回転させ、各中空糸膜モジュールユニットの中空糸膜モジュールを同方向に回転移動させながら、処理槽内の被処理液を中空糸膜モジュールで濾過する、水処理方法。
【請求項6】
回転軸の回転方向を定期的に反転させる、請求項4または5に記載の水処理方法。
【請求項7】
中空糸膜モジュールによる被処理液の濾過を断続的に行い、
濾過停止時の回転軸の回転速度を、濾過時の回転軸の回転速度よりも高くする、請求項4〜6のいずれかに記載の水処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−5433(P2011−5433A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−152263(P2009−152263)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】